JP2005240776A - 部品運用計画作成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高額かつ寿命管理が行われている部品に対して効率的な部品運用計画を作成する。
【解決手段】 寿命管理が行われている部品に対して部品運用計画を作成する方法であり、複数企業等の複数の所有者が各々所有している部品を前記所有者間で共有し、前記部品の廃却損が最小となる全体の部品運用計画を作成し、且つ前記部品運用計画の作成においてOSフリーのプログラムを採用したことを特徴とする。
【選択図】 図14

Description

本発明は、例えばガスタービン高温部品のように、複数台のガスタービンユニットおよび予備品グループで部品をローテーションにより使用する場合の部品管理を適切なものにするものである。
ガスタービンのように高温で運転される機器の部品については、耐熱合金等の高価な材料が使用されている。しかし、これらの材料を用いても、部品には短時間にき裂や減肉等の劣化損傷事象が発生するため、点検毎に検査や補修が必要である。通常これらの部品は、メーカが推奨する寿命に到達するまで無補修で使用されることはなく、補修を繰り返しながら寿命到達まで使用される。補修には数ヶ月の日数が必要であるため、ガスタービンの点検期間を考慮して、複数台のガスタービンユニットの部品および予備品によるローテーションで運用されている。この際、ガスタービンは部品数が多いため、通常は、部品種別毎にガスタービン1台分の部品数を1グループとした部品運用が行われている。ローテーションを行う場合には、あるガスタービンユニットが次回点検に至るまでに、当該ユニットに取り付けられた部品グループが寿命に到達しないことが必要である。このローテーションは、通常は1つの発電所内の同機種ユニット間で行われているもので、その発電所内でその部品の残寿命に見合った運転計画を持つユニットが存在しなくなった場合に、部品は廃棄され、新たな部品が購入される。特許文献1に示されているように、ローテーション計画を作成する上で、以下の式で定義される部品廃却損を最小化することが、効率的な部品運用の目安となる。
<数式1>
部品廃却損=部品購入時の価格×(部品廃却時の残寿命/部品の計画寿命)
これまでに、特許文献2や特許文献3に記載されているように、部品ローテーション計画を効率的に作成するシステムが検討されている。
特開2002-195056号 特開2003-58234 特開平10-196403
しかしながら、単一発電所内のみで部品ローテーションを行う限りは、部品取り付け対象ユニットが限られるため、部品廃却損の低減には限界があり、必ずしも、部品を寿命まで使い切ることができなかった。また、単一発電所内において予備部品を所有しておく必要があるため、部品の購入、保管、管理にコストが生じていた。また、1グループ内の個別部品は必ずしも同じ使用履歴を持つとは限らず、さらに、管理寿命が異なる部品が混在する場合もあり、寿命消費量を念頭に置いた個別部品の寿命管理は非常に煩雑であった。
そこで本発明は、高額かつ寿命管理が行われている部品に対して効率的な部品運用計画を作成する方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、寿命管理が行われている部品に対して部品運用計画を作成する方法であり、複数企業等の複数の所有者が各々所有している部品を前記所有者間で共有し、前記部品の廃却損が最小となる全体の部品運用計画を作成し、且つ前記部品運用計画の作成においてOSフリーのプログラムを採用したことを特徴とする。
また、請求項2記載の部品運用計画作成方法は、部品を共有する対象全体で、ある時期に部品を余寿命順に配列し、再グルーピングを行うことで、1つの部品グループ内の部品余寿命を揃えることを特徴とする。
また、請求項3記載の部品運用計画作成方法は、部品共有参加企業のグループから成る部品の貸与市場を形成し、グループ全体として部品に関わるコストを低減して、貸与元企業に対してインターネットを介した一元管理による公平な利益還元を行うことを特徴とする。
従って、同機種のガスタービンが複数の発電所や企業に設置されている場合に、複数の発電所間や企業間で部品を共有し、あたかも単一の発電所内で部品をローテーションしている様に部品運用を行うことで、部品を効率的に使用し、部品廃却損の低減を図る。この場合、発電所または企業相互のネットワークにより部品情報を共有し、部品運用計画の作成を行う。具体的には、各発電所や企業のコンピュータにOSフリーのプログラミング言語で作成したプログラムを導入し、部品情報や、ガスタービンの運用計画案等を入力する。それらの情報をネットワークにより、任意の場所に設置したサーバへ送り、サーバで部品共有する対象全体としての部品運用計画を作成し、各発電所や企業に配信する。各発電所では配信された計画に従って部品移動および部品運用を行う。
部品運用計画の作成においてOSフリーのプログラムを採用することで、計算機環境の異なる企業間でも、インターネットを介したプログラム配信および部品共有が可能となり、遠隔に位置する複数発電所や企業をも含めて、部品を共有する母数(ユニット数、発電所数、企業数等)を効果的に増やすことが可能となる。この結果、部品を寿命まで使い切ることが容易となり、単一発電所のみで部品を使用する場合よりも効果的に廃却損を低減させることが可能となり、部品を共有する対象全体での部費購入に関わる費用が削減できる。
また、ある時期に全共有対象部品を寿命消費量順ではなく、余寿命順に配列し、再グルーピングを行うことで、1グループ内の部品余寿命を揃える。この操作により、それまでの部品使用履歴や個別部品の管理寿命の相違を考慮しなくてもよくなる。この結果、その後の部品寿命までの管理が容易となり、効率的に個別部品の寿命を使い切ることが可能となる。
各発電所や企業でガスタービンの運用形態が異なるため、部品の取り付け対象が増加し、部品を寿命近くまで使用することが可能となり、部品廃却損の低減が図れる。また、部品を共有する発電所数や企業数が増加するに従って部品廃却損の低減効果が大きくなる。
さらに、この考え方は、ガスタービンに限らず、高額かつ寿命管理が行われている部品をローテーションにより使用する他の場合にも適用可能である。
本発明について更に説明する。
発電所には、同じ型式のガスタービンが複数台設置されている。また、ガスタービンの各部品については予備の部品が準備されており、定期点検等でガスタービンの部品交換を行う場合、予備部品と交換することで工期の短縮化を図っている。交換で取り外した部品は、修理等が可能であれば修理等を行った後、再使用の為に予備部品として保管する。一方、再使用できない部品や、余寿命が次の点検時期まで保たない部品については廃棄し、新しい部品を予備部品として補充する。このように、複数のガスタービンと複数の予備部品との間で部品を交換しローテーションしながら使用している。
従来、このような部品のローテーションを1つの発電所の中で行っていた。しかしながら、同じ型式のガスタービンは、違う発電所にも設置されている。このため、複数の発電所について、同じ型式のガスタービンの部品のローテーションを行うことで、より効率的なローテーションを行うことができる。
ガスタービンの運用は発電所毎に決められており、同じ発電所内では各ガスタービンを同じように運用している。ガスタービンの運用は発電所毎に異なることもあり、別の発電所では、例えば運転時間が長かったり、起動回数が多くなったりする。このため、異なる発電所間で部品のローテーションを行うことで、寿命がくるまで部品を効率的に使うことができる。ガスタービンの部品は高価であり、部品をできるだけ寿命近くまで使用することは重要である。そのため、複数の発電所間で部品のローテーションを行うことは極めて有意義である。
寿命が尽きるまで即ち最後まで部品を使うことができれば最も良い。部品交換の為にはガスタービンを停止する必要があるので、たいてい定期点検(1年毎、2年毎など)のときに部品交換を行う。したがって、従来、次の点検時期まで寿命が保たない部品は、その段階で使用不能の部品と判断され廃棄されていた。しかしながら、上述したように別の発電所ではガスタービンの運用が異なることもあるので、発電所間で部品のローテーションを行い部品を融通し合うことで、たとえ一の発電所では次の点検時期まで寿命が保たない部品であっても、運用条件がより短い別の発電所では次の点検時期まで寿命が保つこともあり、高価な部品をより効率的に使うことができる。即ち、各発電所間で部品のローテーションを行うことで部品を共有し、高価な部品をより効率よく使用することができる。
このように部品を共有するシステムでは、例えば、所定の場所にサーバを設置し、各発電所にクライアントコンピュータを設置し、これらをインターネットを介して接続し、各部品の情報を共有する。どのような部品があって、どのぐらいの余寿命があって、どのような運用計画があるのか等の情報をサーバーで統合し、これに基づいて各発電所に最適の部品を振り分けていく。
そのとき、各発電所でクライアントコンピュータのOSが異なることがある。その場合であっても障害なく部品情報の共有ができるように、OSフリー(ジャバなど)の言語でプログラムを作り、そのプログラムを各発電所に配信し、クライアントコンピュータのOSの違いに影響されることなく部品情報を共有する。
このような部品を共有するシステムは、同じ電力会社内の複数の発電所間で構築しても良いが、異なる電力会社間で構築しても良い。つまり、異なる電力会社が同じ型式のガスタービンを設置することがあるので、各電力会社間で部品を共有して良い。このようにすることで、部品を共有するガスタービンの数がより一層多くなり、部品の融通の機会がより増えるので、より効率的な運用が可能になる。各電力会社毎にクライアントコンピュータのOSが異なっていても、OSフリーの言語でプログラムを作ることで、クライアントコンピュータのOSの種類の違いに影響されることなく部品を共有することができる。
ガスタービンには多数の部品が使用されている。多数の部品に対してグループという概念が使用されている。例えばガスタービンの燃焼器という部品を例に説明すると、例えば20個の部品(燃焼器)が1セットになって1つのガスタービンに取り付けられているとすると20個を1つのグループとする。この場合、20個の部品の余寿命が異なることがある。グループ内の部品の余寿命が異なる場合、余寿命の一番短い部品にそのグループ全体の余寿命が左右されてしまう。そのため、グループ内の部品の余寿命が大きく異なる場合、グループ全体としての余寿命が尽きると、グループ内にはまだ十分使える部品があるにもかかわらず、グループ全体で廃棄することになる。これに対し、グループ内の部品の余寿命をできるだけ揃えることで、まだ十分使える部品の廃棄防止を図ることができ、部品の効率的な使用が可能になる。
また、例えば同じ種類の部品でも違う寿命が設定されていることがある(例えば、ある部品に5万時間という寿命が設定されているが、同じ部品に高価なコーティングを施すことで寿命が6万時間に延びる場合など)。この場合、寿命で部品を管理すると、同じグループの部品について、ある部品は5万時間、別の部品は6万時間といったばらばらの時間で管理することになる。これに対し、余寿命という考え方でグループ分けを行うことで、余寿命がだいたい揃った部品を1つのグループとして管理、運用を行うことができる。多数のガスタービン、多数の発電所で使用される多数の同じ部品について、適宜(例えば点検の度に)、最適の組合せにグループ分けし直すことで、グループ内の全ての部品の余寿命を揃えることができ、廃棄される部品の余寿命を少なくすることができる。
複数の電力会社間で部品を融通し合う場合、部品の売買でも貸与でも良い。貸与であれば、一般に売買よりも必要な金額が低いと考えられるので、電力会社にとって低コストで部品の融通が可能になり、発電コストを下げることができる。例えば、インターネットで部品の情報管理を行って、部品を借りた者が貸した者には対し対価を支払うようにする。部品の融通ごとに決算し対価の授受を行うようにしても良く、一定期間の部品の融通をまとめて決算し、対価の授受を行うようにしても良い。また、部品の融通を金額に対応させても良いし、部品の融通をポイントに換算し、累積したポイント(貸すことでポイントをプラスし、借りることでポイントをマイナスする等)を最終的に金額に対応させるようにしても良い。
ガスタービンを運転する場合、最初は1つのグループ内では各部品の余寿命は揃っており、ガスタービンの運転に伴い各部品の余寿命は同様に消費される。しかしながら、例えばグループ内の1つの部品が壊れた場合、これを修理したり、新しいものと交換したりすると、その部品だけ余寿命が違うものとなり、1つのグループの中で異なる余寿命の部品が混在することになる。このように運転を継続すると、上述のようなことが繰り返され、1つのグループのなかでどんどん部品ごとの余寿命が異なっていく。
グループ分けし直すことで、グループ内の部品の余寿命を揃えることができる。例えばガスタービンが5台あった場合、例えば100個(ガスタービン1台で20個×5台)の部品を余寿命の長い順に並べ、長い方の20個を1つのグループとし、次に長い方の20個を次の1つのグループとし、これを5回繰り返して5つのグループを作り直す。このようにすることで、グループ分けし直した一つのグループのなかの各部品の余寿命を揃えることができる。グループ内の各部品は次の点検まで同じように使用されるので、同じように寿命が消費されていくことになり、最終的には部品を寿命まで使い切るところが一緒になるので、グループ全体が寿命を迎えることになる。
たとえば動翼では、100個近くの部品が使われている。ガスタービンの頻繁に損傷をうける部品は、たいてい10個とか100個単位で使われるものである。その部品がガスタービンに一緒に取り付けられ、次の点検まで(例えば1年間)一緒に使用される。したがって、1つのグループの中の部品は同様に次の点検まで使われる。
それぞれの部品に対して異なる寿命が設定されているし、寿命の消費率が違う値に設定されている。部品の寿命の消費は、単純に運転時間だけではなく、起動回数等の影響も受ける。このため等価運転時間という概念を使用する。等価運転時間は各部品で異なる値に設定されている。例えばガスタービンを1年間運転した場合、燃焼器については例えば8000時間という等価運転時間が消費されたとし、翼についてはたとえば1万時間という等価運転時間が消費されたとする。即ち、例えばEOH(等価運転時間)=運転時間+a×起動回数。ここで、aは部品毎に違う値に設定された係数とする。一般にガスタービンで使用される部品は等価運転時間で管理されている。運転時間と起動回数は1つのガスタービンでは同じであるが、部品毎にaの値が異なるので、同じ時間運転しても、それぞれの部品で等価運転時間が異なる。本発明では、例えば燃焼器だけではなく、等価運転時間で管理されている部品に対して上述のグループ分けをし直すことを行い、全て部品を最適の組合せで使う。
グループ分けは、例えば1台のガスタービンの初段動翼に例えば100枚のブレードがあるとすると、100枚のブレードを1つのグループにする。ここで初段動翼のブレードと静翼のブレードとを1つのグループにすることはなく、これらは別々のグループにする。
グループ分けでは、1つのグループに属する部品の余寿命は正確に一致することは稀であると考えられるので、より近い余寿命のものを同じグループにする(例えば100個の部品を余寿命の長い順に並べ、順番に20個ずつグループ分けしていく等)。グループ全体の余寿命は、そのグループの中の余寿命が一番短い部品の余寿命になる。グループ分けしても部品1個ずつ余寿命を管理する。
グループ分けし直す時期は、ユーザーが任意に設定しても良い。例えば1年毎に行う簡易点検のときや、2年毎に行う本格点検のときなどに部品交換を行う。グループ分けし直すのは、管理上(書類上)においてグループ分けし直すのであって、例えば5台のガスタービンを実際に同時に止めて部品交換を行うのではない。例えば5台のガスタービンがあったとすると、5台のガスタービンを同時に点検するのではなく、通常、発電の負荷を分散するために、5台のガスタービンの点検時期はずらしている。点検については将来の計画(例えば10年分くらい)を立てているので、実際に部品を交換することについても計画を立てておくことで、将来のある時点ではどの部品の余寿命がどの位になっているのか予想が付くから、点検の為にガスタービンを停止させた時に、停止させたガスタービンの部品について部品交換計画に従って部品を取り外して交換を行う。
本発明により、部品廃却損を低減できるとともに、新規部品の購入時期を遅らせることが可能となり、部品購入に係わるコスト低減が可能となる。また、部品在庫を豊富に所有する企業にとっては、遊休部品の貸与により利益を得ることができるようになる。さらに、部品破損等により、急遽、部品の貸与の必要が生じた場合には、代替部品を、共有グループ全体から成る豊富な在庫の中から検索し、借受けることで、事故後の復旧を早期化できる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図14は本発明に係わるシステム構成の概略を示す。本発明システムは、サーバと、各発電所に設置されたクライアントPCとで構成され、サーバとクライアントPCとはネットワーク(例えばインターネット)を介して接続されている。サーバ1は、OSフリーのプログラム(例えばOSフリーのプログラミング言語であるJava(商標)で作成したプログラム)を各発電所に設置されたクライアントPCに配信する(図14のS1)。各発電所のクライアントPCは、ガスタービンユニットの運転計画や部品残寿命などのデータをサーバ1に送信する(S2)。サーバ1では、部品運用の最適化計算を行い(S3)、部品廃却損等の計算を行って(S4)、部品運用計画を作成し、当該作成した部品運用計画を各発電所のクライアントPCに送信する(S5)。その後、部品運用計画に基づいて、各発電所間で部品の移動が行われる(S6)。各発電所でのガスタービン運転条件(運転時間や起動回数など)が異なることから、複数の発電所間で部品を共有することで、部品を共有する母数が増加し、例えば一発電所内の部品ローテーションでは廃棄せざるを得なかった余寿命の短い部品を、例えば運転時間の短い他の発電所のガスタービンに使用する、といったことが可能となり、廃却損の削減が可能となり、部品を共有する全体としての予備品購入費の削減が可能であり、中古部品や遊休部品の有効活用が可能となり、新たな市場が開拓される。
最初にOSフリーのプログラムを各発電所にインターネットにより配信しておく事が前提となる。図1に実績データの入力フローを示す。まず、図2により共有対象となる部品種類を選択する。次に、図3により部品を共有する発電所やユニットを設定する。その後、インターネットにより収集した各発電所の各ユニットの運転実績や個別部品の情報を図4のように入力し、図5のように複数の発電所の各ユニットを1つの発電所内のユニットに見立てた部品ローテーション実績を表示する。
次に、将来のローテーション計画作成フローを図6に示す。まず、インターネットにより収集した各発電所の各ユニットの将来運転計画を図7により入力する。次に、図8により各種コストの変動を設定する。また、計画の途中で、部品の再グルーピングを行う場合はその条件を設定する。さらに、図9により部品をユニットに組み込むためのアルゴリズムを設定する。設定した条件に従って、図10のように部品廃却損が計算され、図11のようにローテーション計画が表示される。この部品廃却損の比較により、コスト低減効果が確認できる。手動で計画を変更する場合は、図12や図13により、部品グループ単位または個別部品単位で交換し、その時点から後の計画を再計算し表示する。最終的なローテーション計画が作成された段階で、部品を共有する各発電所にローテーション計画を配信し、実際に部品を移動させる。
上記システムで実行される処理を更に詳述する。先ず、前処理として、図1に示す実績データの入力を行う。図1の実績データの入力フローでは、システム起動後、先ず、部品共有発電所グループの初期設定を行う(図1のS101)。これにより、部品共有を行う発電所を設定する。ここでは「発電所グループ名」「機種」「部品種類」の入力を行う。図2に「発電所グループ新規登録」画面の一例を示す。この画面により、「発電所グループ名」、ガスタービンの型式を表す「ユニットタイプ」、燃焼器、静翼、動翼などの「部品カテゴリー」、部品共用対象となる「管理対象部品種類」の入力を行う。これにより、どの部品を共有するか選択できる。次に、部品共有発電所グループの設定を行う(S102)。ここでは「ユニット数」「予備品数」の入力を行う。図3に「発電所データ登録」画面の一例を示す。この画面により、部品共有を行う各発電所の「ユニット数」「予備品数」の入力を行う。次に、個別部品仕様の設定を行う(S103)。ここでは各部品ごとに定められる「仕様番号」「仕様名称」「購入費用」「修理費用」「修理期間」「修理時期」「修理判定値」「コーティング材料」「材質」などの入力を行う。次に、等価運転時間計算式の設定を行う(S104)。ここでは等価運転時間計算式の「計算式名」、等価運転時間計算式の各「係数」の入力を行う。次に、各発電所のガスタービンの運転実績情報が記述されたファイルの読み込むを行う(S105)。ここでは、「部品情報」として「部品グループ名」「シリアル番号」「管理寿命」、等価運転時間計算式の「計算式名」の入力を行い、「ユニット情報」として「点検開始日」「点検終了日」「点検種別(例えば本格点検であるのか簡易点検であるのか等)」「運転履歴」「取付部品グループ名」の入力を行う。図4に「運用実績の入力画面」の一例を示す。次に、表示の設定を行う(S106)。ここでは「発電所グループ」「部品種類」「表示年度」の入力を行う。その後、ローテション図を表示する(S107)。図5に部品ローテーションの実績を表す図を示す。例えば図5では、部品グループ「A−1」は、当初神田発電所K1−1で使用されていたが、点検時に取り出され、予備品として保管、修理等され、その後、神田発電所K1−3で使用され、さらにその後の点検時に取り出され、予備品として保管、修理等され、その後、市ヶ谷発電所l3−2で使用され、さらにその後の点検時に取り出され、寿命と判断され、部品グループ「A−1」の次世代の部品グループ「A−2」が、神田発電所K1−1で使用される。
次に、上記前処理で入力された実績に基づいて、図6に示すように将来のローテーション計画を作成する。シミュレーション設定が開始されると、先ず、点検予定日の設定を行う(図6のS201)。ここでは「予定点検開始日」「予定点検終了日」の入力を行う。次に、予定運転条件の設定を行う(S202)。ここでは「予定運転時間」「予定起動回数」「予定ピーク運転時間」の入力を行う。図7に、「運転計画の設定画面」の一例を示す。この画面により、「予定運転時間」「予定起動回数」「予定ピーク運転時間」の入力を行う。次にコスト変化の設定を行う(S203)。ここでは「部品購入費」「修理費の上昇幅」などの入力を行う。図8に「コストの設定画面」の一例を示す。また、計画の途中で、部品の再グルーピングを行う場合は、部品のリグルーピング方法の設定を行う(S204)。次に、部品のローテーション計画作成にあたり、部品の配置を決めるための(換言すれば各ガスタービンにどの部品を割り当てるか決めるための)アルゴリズムを設定する(S205)。図9に、「アルゴリズムの設定画面」の一例を示す。「予備品期間に基づく方法」は、予備品として待機している時間が長い部品から使用していくアルゴリズムを示す。また、「余寿命に基づく方法」は、余寿命が短い部品から使用していくアルゴリズムを示す。また、分岐法やラグランジュ緩和法など既存の最適割り当てアルゴリズムを利用することもできる。次に、廃却損を出力する(S206)。図10に廃却損の表示画面の一例を示す。廃却損の大小により上記選択したアルゴリズムによる部品ローテーション計画の良し悪しを判断できる。次に、最適ローテーション計画を出力する(S207)。図11に部品ローテション計画図の一例を示す。上記アルゴリズムに基づいて自動出力されるローテーション計画は、必ずしもユーザのニーズに適合したものとなっているとは限らないので、必要に応じて手動で計画を変更(部品の交換(配置・割当の入れ替え)、追加、削除)することも可能としている(S208)。部品追加の場合は、「シリアル番号」「仕様番号」「管理寿命」「計算式名」を入力する。部品交換は、例えば図12に示すように、部品グループ単位で行う(換言すればローテーション計画上の部品グループ全体で入れ替えを行う)こともできるし、図13に示すように部品グループの中の個別部品単位で行うこともできる。上記計画変更を行った場合は、当該計画変更により当該変更箇所以後の計画の辻褄が合わなくなってしまうので、ローテーション計画の再計算を行う(S209)。以上により、最適な部品運用計画が作成され、当該作成された部品運用計画が各発電所のクライアントPCに送信される。
図44に部品リグルーピングのフローチャートを示す。先ず、ある任意の時期(例えば1年に1回の定めた日)に、部品共有の対象となる全ての個別部品の余寿命時間データをクライアントからサーバに伝達する(S301)。これに対しサーバは余寿命時間順に部品を配列する(S302)。サーバで余寿命の多い順または少ない順にガスタービン1台分の部品数で部品をリグルーピングする(S303)。例えば、余寿命の長さをキーとして共有部品データを昇順または降順にソートし、部品グループの構成数ごとに、ソートした列の上または下からグルーピングしていく。但し、あるガスタービンの部品交換時(即ち当該ガスタービンの点検時)に、稼動中である他のガスタービンからは部品をとってくることはできないので、上記リグルーピングの対象となる部品は、「部品交換時に稼動中のガスタービンに使用されている部品は除く」または「部品交換時に予備品となっている部品に限る」との条件により絞られる。そして、部品共有を行う各ガスタービンユニットの将来運転計画を基に、部品廃却時の余寿命が最も少なくなるように、リグルーピングした部品グループを各ユニットに配置する(S304)。そして、サーバからクライアントに部品のリグルーピング計画と部品の移動計画を配信する(S305)。この移動計画に基づいて、部品の移動および組み込みが行われる(S306)。
図15は、サーバと各発電所に設置されたクライアントPCとの間で送受されるデータ内容の一例を示すシーケンスフローチャートを示す。サーバは、部品を共有するガスタービンの型式、部品種類、ユニット数、予備品数の入力を各発電所のクライアントPCに要求する(S401)。これに対し、各発電所のクライアントPCは、インターネットを介してサーバのデータベース(マスターデータベースのコピー)にアクセスし、ガスタービンの型式、部品種類毎に、ユニットの今後数年分の運用計画と部品の余寿命のデータを入力する(S402)。これに対し、サーバは、ガスタービンの型式、部品種類毎に、今後数年分の部品運用計画を作成する(S403)。そしてサーバは、完成した部品運用計画を各発電所のクライアントPCに送信する(S404)。これに対して、各発電所のクライアントPCは、部品運用計画の確認通知をサーバに送信する(S405)。その後、部品運用計画に従って、実際の部品移送が行われる(S406)。また、各発電所のクライアントPCは、インターネットを介してサーバのデータベース(マスターデータベースのコピー)にアクセスし、ガスタービンの型式、部品種類毎に、各ユニットへの取り付け実績をデータ入力する(S407)。これに対し、サーバは、部品運用マスターデータベースの更新を行う(S408)。以後、上記S401〜S408の処理が繰り返される。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、部品共有参加企業のグループから成る部品の貸与市場を形成し、グループ全体として部品に関わるコストを低減し、貸与元企業に対してインターネットを介した一元管理による公平な利益還元を行うようにしても良い。この場合、例えば「部品の購入価格/寿命時間」の値から部品を使用する単位時間あたりのコストを計算し、部品貸与時間に応じて貸与元企業に利益還元を行うようにしても良い。さらに、同一部品に対しては部品共有参加企業間で共通の標準価格を設定し、「部品の標準価格/寿命時間」の値から部品を使用する単位時間あたりのコストを計算するようにしても良い。また、部品貸与に伴う利益をポイント制として、部品貸与により溜まったポイントを利用して逆に部品を借り受けたり、ポイントを換金できるようにしても良い。
また、クライアントとサーバ間でWWWブラウザやインタネット電子メールを利用して、部品運用計画等のデータを送受するようにしても良い。この場合も、クライアントがブラウザやメール環境を備えてさえいれば、クライアントのOSに依存することはない。さらにサーバ側で、情報入力用のウェブページまたは電子メールをクライアントに提示する機能、当該ウェブページに入力された情報またはクライアントから電子メールで受信した情報をデータベースに蓄積する機能を備えていれば、クライアント側にブラウザやメールソフト以外の特殊な専用ソフトをインストールする必要がない。
1. まえがき
近年の電力自由化導入の動きにより、今後、電力各社や電力事業への新規参入者の間での競争が激しくなると予想され、ガスタービン複合発電設備においても各種コストの更なる低減が望まれている。特に高温ガス通路に位置する燃焼器や動静翼等の高温部品は、過酷な使用条件のため、補修を頻繁に行う必要があり、その保守コストの低減が望まれている。また、高温部品はニッケルやコバルト等の希少な金属を材料とし、高度な冷却構造や各種コーティングを採用しており、部品自体が高額である。このため、効率的な部品運用や部品の寿命延伸を図ることが大きなコストダウンに繋がり得る。
ガスタービンが導入されている発電所では、複数台のガスタービンが設置されるとともに、設置台数に応じた数の予備部品のセットを部品毎に所有している。また、1台のガスタービンに取り付けられる高温部品の数は大量であるため、部品管理の観点から、部品種類毎にガスタービン1台分の部品数を1グループとしたグループ管理が行われている。例えば、ある機種の燃焼器の場合はガスタービン1台分の数量である10缶で1グループが形成され、このグループを基準として寿命管理や補修が行われている。通常は、ガスタービンの設置台数分の部品グループといくつかの予備品グループによりグループ単位でのローテーションが行われている。
部品グループの適切なローテーションを行うためには、綿密な部品ローテーション計画の作成が必要である。計画の作成に当たっては、まず、部品種類毎に部品寿命、予備品数、年間の寿命消費率、補修期間、各種コスト等を考慮する必要があり、次に、部品の寿命延伸計画や、年度毎のコスト平準化等、発電所毎の事情に対応する必要がある。この作業は、部品種類や部品グループ数が多いことや、前述のような細かな事情への対応のために、自動化が困難であり、熟練した保守担当者の手作業で行っている場合が多く、多大な労力が必要であった。また、危急時には、通常よりもさらに短時間で新たなローテーション計画を再作成する必要があり、計画作成の自動化や短時間での計画作成が望まれていた。
このような背景の下、当研究所では、保守業務支援を目的に、複雑な部品ローテーション計画作成を自動化し、フレキシブルな計画作成条件設定機能により様々のニーズへの対応が可能な、「ガスタービン高温部品保守最適化支援プログラム」を既に開発した。
本報告書では、更なる保守コスト低減を目的に、上記プログラムの機能に、新たなコンセプトによる機能を加えて開発した「ガスタービン高温部品管理支援システム」の概要について述べる。また、高温部品のローテーション計画作成のための最適化手法について調査し、有望な手法の選定を行った。
2. 既開発プログラムの概要
当研究所では、高温部品のローテーション計画の最適化により、保守コストの低減を図ることが可能な「ガスタービン高温部品保守最適化支援プログラム」(以下、既開発プログラムと称する)を開発した。この既開発プログラムは、Windows(商標)パソコン上で動作可能であり、ユーザが指定した部品ローテーションの規則に従い、短時間に高温部品のローテーション計画を作成することが可能であった。
既開発プログラムは、汎用のコアプログラムと、各ユーザに特有のガスタービン運転履歴データベース、部品使用履歴データベース、部品寿命データベース、各種コストデータベースから構成されている。コアプログラムについては、各ユーザが共通に使用可能であるが、各データベースへのデータ入力については各ユーザで個別に行う必要がある。運転履歴データベースには、各ユニットの点検間の運転時間、起動回数、トリップ回数、負荷遮断回数等の運転記録が保存される。部品の消費寿命を計算する場合は、このデータベースを基に、部品使用開始時からの等価運転時間の累積値を計算することになる。部品使用履歴データベースには、各高温部品がいつ、どのユニットで使用されていたかといった使用履歴や、個々の部品が属していた部品グループの情報が保存される。部品寿命データベースには、部品購入時の設計寿命、等価運転時間計算時の各種換算係数の情報が保存される。使用中に部品寿命の延長や等価運転時間換算係数の見直しが行われた場合には、このデータベースの書き換えで対応可能である。各種コストデータベースは、部品個別の購入コストおよび修理コスト、開放点検コスト等のコストデータが保存される。
また、機能としては、計画作成機能、コスト計算機能、部品管理機能、部品廃却損最小化機能の4つの機能を有している。計画作成機能は、ユーザが指定した規則に従って、部品ローテーション計画を自動的に作成する機能である。コスト計算機能は、作成されたローテーション計画を基に、部品購入コスト、修理コスト、点検コストをそれぞれ計算し、グラフ化して表示する機能である。部品管理機能は、保守計画作成後の部品の状態を確認する機能であり、「使用中」や「廃棄済み」といった部品状態や、その時点での部品余寿命を表示することができる。部品廃却損最小化機能は、以下に示す式2で定義される廃却損を最小化させる機能であり、標準的な部品ローテーション計画では、定期検査と定期検査の真中で実施される燃焼器点検の実施時期を任意の日数で前後に移動させ、効率的な部品寿命の消費を図る機能である。
<数式2>
部品廃却損 =(廃却時の余寿命/設計寿命)×部品購入価格
前報での試算例では、この操作により、標準のローテーション計画と比較して、最大で5%程度のコストダウンが可能であることを明らかにしている。本報で報告する「ガスタービン高温部品管理支援システム」では、これらの機能を踏襲するとともに、システム全体に関わる新たなコンセプトの下、さらに新たな機能もいくつか追加しており、以下にその詳細を示す。
3. ガスタービン高温部品管理支援システムの基本コンセプト
以下示すコンセプトの下、ガスタービン高温部品管理支援システム(以下、本システムと称する)の開発を行った。
3−1 マルチサイト化
既開発プログラムでは、1つの発電所内に設置された複数の同型ガスタービンに対する部品ローテーションを想定していた。しかし、実際には、同型ガスタービンが複数の発電所(マルチサイト)に設置される場合もあり得る。このため、本システムでは、マルチサイトで同型ガスタービンの部品を共有し、あたかも1つの発電所内の同型ガスタービン台数が増加したかの様に部品のローテーション計画を作成することで、部品寿命消費の観点から、より効率的な部品運用を可能とした。
マルチサイトでの部品ローテーション計画を効率的に作成するためには、ネットワークを利用した発電所間のデータ通信による部品データの共有が有効と考えられる。このため、各発電所にクライアント端末を設置し、部品ローテーション計画の統括部署にサーバを設置する構成を想定した。データの流れとしては、まず、ある時期に、各発電所で各自が保有する部品データを本システムに入力し、統括部署に送信する。次に、統括部署で各発電所からの部品データを取りまとめ、マルチサイトでの最適な部品ローテーション計画を作成する。最後に、統括部署から各発電所に個別の部品ローテーション計画を送信し、実際の部品運用を行うことになる。
3−2 シリアル番号ベースの管理機能
1台のガスタービンに全て新品の部品グループを組み込んだ場合、使用開始後しばらくは全ての部品が同じ使用履歴を持つことになる。しかし、時間の経過に伴い、損傷劣化等による個別部品の入れ替えにより、同じ部品グループの中でも使用履歴、つまり余寿命が異なる部品が混在することになる。既開発プログラムでは、部品管理の煩雑さを無くすため、グループでの部品寿命管理およびローテーションを基本としていた。この場合、ある部品グループの寿命は、グループ中で最短の余寿命を持つ部品の寿命と一致し、その寿命到達時がグループ全体の寿命と判断されていた。つまり、部品グループの寿命と判断された時点で、グループ内に、まだ十分な余寿命を有する部品が存在する場合でも、プログラム上では、グループ全体の部品を廃棄して、新品の部品グループを購入する計画が作成されていた。このため、本システムでは、部品の寿命管理およびローテーションをシリアル番号ベースで行い、個々の部品の寿命消費を効率的に行うことを考慮した部品ローテーション計画の作成が可能となるようにした。
3−3 最適化アルゴリズムの柔軟化
既開発プログラムでは、まず、予備品として待機している期間が長いグループから順に、ユニットに組み込むという単純なアルゴリズムにより、部品グループのローテーション計画を作成する。その後、通常は定期検査と次回定期検査の中間に実施される燃焼器点検の実施時期を任意に移動させることにより、部品廃却損を最小化する機能を有していた。しかし、前述のマルチサイト化やシリアル番号ベースの部品管理に対応するためには、発電所を跨いだローテーション機能と部品グループ内の個別部品の入れ替え機能を組み合わせた、より複雑な最適化アルゴリズムが必要となる。このため、5章に示す高度な複数の最適化アルゴリズムを、今後システムに組み込むことが可能な構造とした。
3−4 モジュール化
既開発プログラムは、汎用の基本プログラムと各ユーザ特有のデータベースから成り立っていた。しかし、本システムでは、機能毎に各プログラムをモジュール化し、複数の個別モジュールの組み合わせにより1つのシステムとなる構造を採用した。モジュール化の採用により、機能の追加、改良、削除が容易になり、各ユーザのニーズに沿った専用システムを容易に構築する事が可能になる。
3−5 プラットフォームフリー化
既開発プログラムは、単独の発電所内におけるスタンドアロンでの使用を想定しており、プログラミングはVisual Basic(商標)で行っていた。しかし、マルチサイトでの使用を想定した場合、システムのプラットフォームフリー化により、端末とサーバとで異なるOSが使用される場合等、より広範囲での使用が可能になると考えられる。このため、本システムでは、OSに依存しないJava(商標)で全てのプログラミングを行った。
以上に述べた、既存システムと本システムとの相違点を表1にまとめている。
次に、本システムの機能概要を以下に示す。
4. ガスタービン高温部品管理支援システムの概要
4-1 初期条件設定
初期条件設定の入力手順を図16に示す。最初に、図17に示す発電所グループ新規登録画面により、部品を共有する発電所グループの名称、機種、部品種類を入力する。発電所グループは、各機種の部品種類毎に設定可能である。次に、図18に示す発電所グループ登録画面により、各発電所の該当するガスタービンユニットの台数、予備品のグループ数をそれぞれ登録する。なお、本システムには、代表的な1100℃級および1300℃級ガスタービンの高温部品が予め設定されている。このため、機種を選択した段階で管理対象の高温部品が選択できるようになっている。
2番目に、図19に示す部品仕様設定画面により、各部品の仕様を入力する。入力項目は、仕様番号、仕様名称、購入費用、修理費用、修理期間、修理時期、修理判定値、コーティング材料、材質である。修理時期は、(1)予備品になった時、(2)管理寿命に対する割合指定、(3)時間指定、の3種類が選択可能であり、(2)または(3)を選択した場合は、その値を指定できる。
3番目に、図20に示す計算式設定画面により、各部品の寿命消費を計算するための等価運転時間計算式の設定を行う。本システムでは、デフォルトとして、以下の式3が等価運転時間計算式として設定されており、この式中の各係数の値を部品種類毎に設定し、部品種類毎に計算式名を付ける。
<数式3>
EOH=H+a1×(N+a2×T+a3×S+a4×K)+a5×(F−N)+a6×P
ここで
EOH:等価運転時間
H:実運転時間
N:起動回数
T:トリップ回数
S:負荷遮断回数
K:負荷急変回数
F:F2バーナ着火回数
P:ピークモード運転時間
a1:起動回数から等価運転時間への換算係数
a2:トリップ回数から起動回数への換算係数
a3:負荷遮断回数から起動回数への換算係数
a4:負荷急変回数から起動回数への換算係数
a5:F2バーナ着火回数から等価運転時間への換算係数
a6:ピークモード運転時間から等価運転時間への換算係数
4番目に、予めCSV形式で作成しておいた実績ファイルをシステムに読み込む。このファイルに入力が必要な項目は、各部品グループに対しては、グループ名称、グループ内の個別部品のシリアル番号、図19で設定した仕様番号、管理寿命、図20で設定した等価運転時間の計算式名、どのユニットで使用されてきたかという使用履歴である。また、各ユニットに対しては、各点検の開始日、終了日、点検種別(定期点検、中間点検、燃焼器点検)、各点検間の運転履歴(運転時間、起動回数、トリップ回数等)である。ファイルを読み込んだ結果は図21に示す運用計画・運用実績の編集画面に表示される。次回入力時からは、この画面により運用実績と運用計画を入力する。
以上の初期条件設定後、発電所グループ名、部品種類、表示年度を指定して図22に示すローテーション表を表示する。ローテーション表の縦軸は、部品を共有する発電所のユニット名と予備品グループ名を表しており、表中に部品グループ名が表示される。また、逆にローテーション表の縦軸を部品グループ名とし、表中にユニット名または予備品グループ名を表示することで、部品グループ毎の移動履歴を確認する機能を追加することも可能である。さらに、部品グループの等価運転時間をローテーション表中に表示する機能を追加することも可能である。
本システムでは、このローテーション表からほとんどの操作を行うことを想定しており、ローテーション表中の該当部分の右マウスクリックまたはメニューバーを操作することで、以下に述べる様々な機能を使用することができる。
4-2 計画作成機能
計画作成のための入力手順を図23に示す。本システムでは、ユーザが指定した部品運用規則に従い部品ローテーション計画の自動シミュレーションを行うことが可能である。まず、図21の運用計画・運用実績の編集画面でシミュレーション対象年度までの点検開始日と点検終了日の予定がユニット毎に記入されていることを確認し、図24に示す運転計画の設定画面により、シミュレーション対象年度までの運転計画をユニット毎に設定する。
2番目に、図25に示すコストの設定画面により、部品購入費および部品修理費について、年度毎の変動を設定する。年度毎の変動については、(1)部品仕様のまま固定、(2)変動率(%/年)、(3)変動額(円/年)の3種類があり、(2)または(3)を選択した場合は、任意の値が設定できる。
3番目に、部品のリグルーピングの設定画面により、部品グループ内の部品の再構成(リグルーピング)規則についての条件を設定する。例えば、3年に1度、余寿命順に全ての対象部品を配列し、余寿命の長い部品から順にリグルーピングを行うといった機能を組み込むことが可能であり、この操作により、各グループ内の部品余寿命の均等化を図ることが可能になる。この操作を定期的に行うことで、各部品グループ内の個別部品の寿命到達を同時期とする部品運用が可能になる。
4番目に、図26に示す一般条件設定の画面により、部品ローテーションの最適化アルゴリズムを選定し、シミュレーションを実行すると指定した期間の部品ローテーション計画が表示される。例えば使用可能なアルゴリズムは、以下の通りである。
(1)予備品グループとして待機している時間が長い順番にユニットに組み込む。
(2)部品グループとしての余寿命が短い順番にユニットに組み込む。(グループ構成部品の中で最も余寿命が短い部品に依存する。)
図27に上記のアルゴリズム(1)による廃却損の計算結果の表示画面を示す。また、図28に計算結果により作成したローテーション表を示す。この他にも、さらに高度な最適化アルゴリズムを追加することが可能であり、この詳細については5章で述べる。
また、本システムでは、ユーザの多様なニーズに対応するために、最適化アルゴリズムによるシミュレーション結果を手動で変更することが可能である。部品を交換する場合は、ローテーション表で該当する部品グループを選択し、図29に示す部品グループ交換画面によるグループ単位での交換と、図30に示す部品交換画面によるグループ対グループでの個別部品の交換が可能である。また、図31の部品データ登録画面により個別部品を登録しておくことで、個別部品との交換も可能である。寿命に到達した部品を取り外す場合は、その部品が属する部品グループが予備品となっている時点で、該当する部品を代わりの部品と交換する。
予備品グループの数が、途中で増加する場合は、図32に示す部品グループ新規追加画面により追加可能であり、また、その逆に削除することも可能である。部品を追加する場合に入力が必要な項目は、シリアル番号、仕様番号、管理寿命、等価運転時間計算式名である。部品グループの名称は、部品グループを表すアルファベットと部品の世代を表す世代番号の組み合わせで表される。寿命到達によりその部品グループが取り外され、代わりに新たな部品グループが導入された段階で、世代番号の数字のみが増えていき、アルファベットは引継ぐことになる。
さらに、部品の交換、追加、削除の結果を将来のシミュレーションに反映させるため、本システムには、最適化計算のリスタート機能が設定されており、ある時点以前の計画に対して手動で部品を交換、追加、削除した時点からの自動による再計算が可能である。
4-3 コスト計算機能
本システムでは、ユーザの判断を支援するために、計画の自動シミュレーション機能により作成された部品ローテーション表を基に、様々なコスト計算を行うことが可能である。初期条件設定で入力済みの部品購入費、修理費を基に、指定された年度内で、部品種類毎に必要なコストを計算し、計算結果をグラフに出力する。計算結果の出力図としては、発電所グループ単位および発電所単位での単年度毎のコスト内訳の棒グラフ(図33)、指定した年度内のコストの折れ線グラフ(図34)がある。また、計算結果は、CSV形式のファイルとして出力し、市販の表計算ソフトによって、ユーザが自前で処理や作図を行うための便宜を図っている。
ある機種に対するトータルコストを計算する場合は、その機種の部品種類毎の最適ローテーション計画から部品種類毎のコストを計算後、計算結果をファイルに出力し、それらの結果を統合したものに、点検時の開放点検コスト等を加えることになる。
4-4 部品管理機能
本システムには、大量に存在する部品の管理を容易にするための機能が整備されている。ローテーション表中の任意の部品グループを指定することで、そのグループに含まれる個別部品の現在の状況を図35や図36の様に確認することが可能である。
修理が行われる部品は、図37に示す部品入出庫管理画面により出庫日、入庫日、修理回数が記録される。また、修理時にコーティングなどの部品仕様の変更や、部品の管理寿命の変更等が行われた場合には、図38に示す部品データ変更画面でそれらの情報を変更することが可能である。この画面により、変更可能な項目は、仕様番号、管理寿命、余寿命、等価運転時間計算式名、修理回数である。
また、図39に示す部品の検索機能が整備されており、シリアル番号、累積等価運転時間、修理回数、仕様番号による検索が可能である。
さらに、ローテーション表中で任意の期日を指定することで、図40に示す部品グループ状態表示画面により、その期日における部品の状態を確認する機能を追加することが可能である。ただし、この画面に表示される累積等価運転時間や余寿命は、前回点検終了日と次回点検開始日の部品状態から内挿した計算値となる。
なお、取付け部品や在庫部品の使用履歴についてはCSV形式のファイルとして出力することが可能である。
5. 部品廃却損最小化のための最適運用計画手法の調査
高温部品の最適なローテーション計画(以下、最適運用計画と称する)に利用可能な計算手法の調査を行った。ここで言う最適化とは、部品を寿命まで使い切るローテーション計画により、部品購入コストの最小化を図ることである。
時間軸上で資源(高温部品)の割当てを行うという意味において、高温部品の最適な運用計画を求める問題も、スケジューリング問題の一種と考えることができる。スケジューリング問題の代表的な解法は、数理計画法、メタ戦略(メタヒューリスティクス)、発見的手法の3種類に大別されるが、高温部品の最適運用計画にも、これら手法の応用が可能と考えられる。以下では、これら3種類の手法の概要について述べる。手法の詳細については既存の文献などを参照されたい。
5-1 数理計画法(Mathematical programming method)
スケジューリング問題に適用される代表的な数理計画手法には、分枝限定法、ラグランジュ緩和法、ダイナミック・プログラミングの3種類がある。
5-1-1 分枝限定法(Branch and bound method)
分枝限定法は問題をいくつかの小規模な問題に分割し、これらの小規模な問題を解くことで、等価的にもとの問題の解を得る手法である。問題の分割は一部の変数の値を固定することで行われる。ここでは、下記に示す割当問題を例に、分枝限定法による解の探索過程を説明する。
<例題:割当問題>
2ヶ月の利益が最大となる、一台の機械への仕事の割当てを求める。この機械で処理可能な仕事は4つあり、それぞれの仕事を完了した時に得られる利益と、この仕事を完了するのに必要となる作業時間は下表のようになっている。また、2ヶ月の機械の稼働時間は900時間以内に制限される。
=1で仕事iを機械に割り当てることを、x=0で仕事iを機械に割り当てないことを表すと、一部の変数を固定しつつ、最適な割当てを探索する過程は図41の分枝木で表現できる。図41の端点(○)はそれぞれ1つの部分問題を表しており、分枝限定法ではそれぞれの端点が表す小規模問題の解を順次調べていく。
ただし、すべての端点を調べるわけではなく、探索の過程で最適解が存在しないことが判明した部分問題は探索の対象から除外されていく。例えば、図41の分枝木でx=x=1とした場合には、この段階で機械の稼動時間は1100時間となり、x,xの値に関わらず稼動時間の制約を満たさない。このため図41の点線で囲った端点に相当する部分問題は探索の対象から除外される。分枝限定法では、図41に示す分枝木の全ての端点について、探索が終了するか、最適解が存在しないことが判明するまで探索を続ければ、必ず元の問題の厳密な最適解を求めることができる。先の例題では仕事2,4を割り当てるのが最適解となり、この時の利益は1900万円となる。
5-1-2 ラグランジュ緩和法(Lagrange relaxation method)
ラグランジュ緩和法は問題の最適値の上界と下界を求めながら、この情報を用いて効率的に解の探索を行っていく手法であり、スケジューリング問題への応用も盛んに行われている。
ラグランジュ緩和法では、制約条件にラグランジュ乗数を掛けたものを目的関数に組み込んで,ラグランジュ関数を作る。例えば、数式4で表される問題では、ラグランジュ乗数u≧0を導入して、数式5となるラグランジュ関数を作る。
つぎにu={u,u,∧,u}の初期値を適当に決め、L(x,u)を最小とする xの値を求める。xは必ずしも制約条件(g(x)≦0)を満たすとは限らないので、L(x,u)の値は元の問題の最適値の下界となる(元の問題の最適値はL(x,u)以上となる)。またxに制約条件を満たすように修正を加えた変数値をx’とすると、x’ は最適解とは限らないのでf(x’)の値は元の問題の最適値の上界となる(元の問題の最適値はf(x’)以下となる)。このf(x’)とL(x,u)の値の差は双対ギャップと呼ばれ、ラグランジュ緩和法では、この双対ギャップが小さくなるようにラグランジュ乗数uを更新しながら、上述の手続きを繰り返していく。双対ギャップはもとの問題の最適解に対するf(x’)の誤差を表しているので、双対ギャップが十分に小さくなったところで計算を終了すれば良い。また、もし双対ギャップが0となるx’が求まれば、それは必ず元の問題の最適解となる。
5-1-3 ダイナミック プログラミング(Dynamic programming)
ダイナミック プログラミングは解の列挙のプロセスを状態間の推移として捉え、列挙の手間を省いた探索を行う手法である。前述の単純な割当問題を例に、ダイナミック プログラミングによる解の探索手順を示すと以下のようになる。
f(i,j)で仕事{1,2,∧,i}の中からいくつかを選んで,稼働時間の上限がj時間である機械に割り当てた場合の利益の最大値を表すとすると、f(i,j)は以下の漸化式で表すことができる。
ここでaは仕事iの作業時間を、cは仕事iを完了した時に得られる利益を表す。この漸化式を基にi=1,2,3,4の順にj=1,2,∧,9に対するf(i,j)を求めていくと、最終的に4つの仕事の中から、稼働時間の上限が900時間の機械に仕事を割り当てた場合の利益の最大値f(4,9)=1900万円を求めることができる。
5-2 メタ戦略(Metaheuristics)
近年、スケジュール問題をはじめとする複雑な問題の解法として、メタ戦略が広く用いられるようになっている。代表的なメタ戦略には、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッド・アニーリング、タブーサーチ、アント法がある。
5-2-1 遺伝的アルゴリズム(Genetic algorithm)
遺伝的アルゴリズムは生物の進化過程を模した解の探索手法であり、1つの解候補を1つの個体として捉え、個体の集合に遺伝的操作を加えることで、より優れた個体(解)を進化させていく。
遺伝的アルゴリズムで最適な解を探索する手順を示すと以下のようになる。まずは染色体にランダムに値を割り当てた個体を、あらかじめ決めた数だけ作成する。ここで染色体とは解の情報がコード化されたものであり、先の割当問題では、例えば、図42のような数字の並びが染色体となる。
次に、各個体の適合度(割当問題の例では、利益と制約条件の充足度から計算される値)を計算し、その適合度の高さに比例した確率で個体を一定数選択し、選択した個体集合に交叉と突然変異の遺伝的操作を加える。交叉とは2つの個体ペアを選び出し、染色体の一部を交換する操作である。また突然変異とは、各個体の染色体の遺伝子情報を一定の確率で他の値へとランダムに置き換える操作である。そして、新しく作られた個体を含めた個体集合の中から、適合度の高い個体を次の世代へと生き残させる。
遺伝的アルゴリズムでは、上記の操作をある世代数に達するまで繰り返し、その時点で得られている最良の個体を最適解として採用するのが一般的である。
5-2-2 シミュレーテッド アニーリング(Simulated annealing)
シミュレーテッド アニーリングは,物質の温度を徐々に冷却して低エネルギーの状態に落ち着かせる、加熱炉内の固体の「焼きなまし」過程をシミュレートした組み合わせ最適化問題の近似解法である。局所探索を実行する過程に確率的な振る舞いを加えることで、局所最適解に陥らないような工夫がなされている。
現在得られている解の近傍を探索し、もし評価値が改善される解が見つかれば解を置き換える一般的な局所探索手法では、局所的な最適解(x)に陥った場合、ここから抜け出すことはできない。これに対しシミュレーテッド アニーリングでは、「温度」と呼ばれるパラメータを導入し、評価値が悪化する方向への移行を認めることで、大域的な最適解(x)へたどり着く確率を向上している(図43)。
シミュレーテッド アニーリングでは「温度」が高いときには評価値がある程度改悪される場合にも、その解に置き換える確率を大きくし、「温度」が低いときは改悪の程度がわずかであってもその解に置き換える確率を小さくする。「温度」は探索過程の初期においては高く設定され、徐々に下げられる。このため探索過程が進むにつれ、評価値が改悪される方向への移行は行われなくなっていき、最終的には1つの解に収束する。
5-2-3 タブーサーチ(Tabu search)
前述のシミュレーテッド アニーリングと同様、評価値が改悪される方向への移行を認めることで、局所最適解に陥る確率を抑える探索手法である。タブーサーチのもっとも単純な使い方は、解の近傍を系統的に取り上げて評価し、最良の評価値を持つ近傍解に解を置き換える手続きを、終了条件が満たされるまで繰り返すものである。ただし、この場合には今までに探索した解を再び探索し、同じ領域の探索を繰り返してしまう可能性がある。そこでタブーサーチでは、最近訪れた解を「タブーリスト」と呼ばれるリストに保有しておき、タブーリストに保有されている解への移行を禁止することで、同じ領域を繰り返し探索する危険性を防いでいる。リストの内容は探索の進行につれて更新される。
5-2-4 アント法(Ant colony optimization)
アント法とは蟻の採餌行動を模した探索手法である。蟻は自分が通ったあとにフェロモンを残しつつ、巣から餌を取りに行き、再びもとのルートをたどって巣に戻るという行動を繰り返す。蟻が残すフェロモンは量が多ければ多いほど、より多くの蟻を引き付け、また時間とともに薄くなっていくという性質を持っている。蟻の歩く速度が同じだとすると、短いルートを通った蟻の方が速く往復できるので、短いルートの方がより多くのフェロモンが蓄積されていく。このため、より多くの蟻がそのルートに引き付けられるようになり、さらに多くのフェロモンが蓄積される結果となるので、最終的には短いルートだけが選択されるようになる。このフェロモンによる情報の交換と、正のフィードバック効果をモデル化したのがアント法と呼ばれる探索方法である。
5-3 発見的方法(Heuristics)
解決対象の問題がもっている構造、あるいは性質を考慮して作られた方策を用いて、短時間で良好な解を求める方法や方策のことを発見的方法と呼ぶ。
たとえば前述の機械の稼動時間に上限がある割当問題を考えると、なるべく利益を多くするには、作業時間当たりの利益が高い仕事から優先して割り当てるのが有利になると考えられる。そこで、単純な発見的手法の例として、利益/作業時間の大きな仕事から割当てを行っていく方法が考えられる。実際にそれぞれの仕事の利益/作業時間を計算すると表3のようになり、この発見的手法に従えば、仕事3と仕事1が機械に割り当てられる結果となる(この例では最適解は得られず、利益は1600万円となる)。
既開発プログラムでは、待機時間の長い予備品グループから、次の点検の際に交換するというルールを基本に運用計画を決めているが、これも発見的手法の一種と言える。
5-4 各手法の比較
上述の3種類の手法のうち、いずれが高温部品の最適運用計画に適しているかを判断するため、(1)運用計画を求めるまでの計算時間、(2)得られる解の精度、(3)運用ルールの変更などに対する柔軟性の3つの視点から、それぞれの手法の性能を定性評価した(表4)。
計算時間の観点から評価すると、問題の構造・性質を最大限に活用して解を探索する発見的手法が、一般的にはもっとも計算時間を必要としない。これに対し、問題の構造にもよるが、一般的には数理計画法がもっとも長い計算時間を必要とする。
得られる解の精度の面から評価すると、数理計画法がもっとも優れている。分枝限定法を用いれば、計算時間はかかるものの、どのような問題でも厳密な最適解を得ることが可能である。また、ラグランジュ緩和法では、双対ギャップをもとに得られた解の精度を評価することが可能である。発見的手法については、問題によっては得られる解の精度を理論的に保証できる可能性があり、実際、最適解が得られることが理論的に保証された発見的手法が存在する問題もある。メタ戦略については、メタ戦略の枠組みの中だけで、得られる解の精度を保証することはできない。また確率的な探索を基本とするメタ戦略では、実行の度に常に同じ解が得られるとは限らない。
最後に柔軟性の観点から評価すると、メタ戦略は問題の構造や性質には依存しない方法であり、運用ルールの変更などにもっとも柔軟に対処できる。一方、問題の構造や性質を最大限に使う発見的手法は、運用ルール等が変化した場合には、手法そのものの見直しを行わなければならなくなる可能性が高い。また、数理計画法については、実用的な計算時間で解を求めるためには、運用ルール等がある程度単純であることが求められ、運用ルール等が複雑となった場合には、これを単純化するモデル化を行う必要が出てくる。
このように3つの手法はそれぞれに一長一短があり、一概にどの手法が優れているかを現時点で判断することはできない。また、例えばメタ戦略と発見的手法など、 2つの手法を組合せて使うことで、両者の長所が活かされたより性能の高い手法が得られることも多い。そこで、今後は、数理計画法、メタ戦略、発見的手法の3種類の手法それぞれについて、具体的な高温部品の最適運用計画への適用の検討を進め、いくつかの手法の組み合わせを含め、最も適した手法の選択を行っていきたい。また、ある程度の時間的余裕を持って定期的な計画を作成する場面、危急時などの対処で突発的に計画の見直しを行う場面など、それぞれの場面に応じて、本システムの中から、利用する計画手法を選択できるようにしておくことも、より実用性の高いシステムを構築するうえで重要になると考えている。
6. あとがき
今後は、本システムに、前述の最適化手法を組み込む予定である。さらに、リスクベース保守(RBM)への対応を図る予定である。RBMへの対応により、現在はメーカから推奨された部品寿命までしか使用していなかった部品に対して、寿命にあるバラツキを与え、ある範囲内での使用を許容することで更なるコスト低減が図れる可能性がある。
また、本報で報告したシステムは、汎用であるため、ユーザのニーズに応じて、各ユーザ専用のモジュールプログラムを開発することができる。
実績データの入力フローの一例を示すフローチャートである。 共有部品の設定画面の一例を示す図である。 発電所グループの設定画面の一例を示す図である。 運転実績の入力画面の一例を示す図である。 ローテーション実績の一例を示す図である。 計画作成のための入力フローの一例を示すフローチャートである。 運転計画の設定画面の一例を示す図である。 コストの設定画面の一例を示す図である。 部品ローテーションのアルゴリズムの設定画面の一例を示す図である。 廃却損の表示画面の一例を示す図である。 ローテーション計画の一例を示す図である。 部品グループ交換画面の一例を示す図である。 個別部品交換画面の一例を示す図である。 本発明方法を実現するシステム構成の一例を示す概念図である。 サーバと各発電所に設置されたクライアントPCとの間で送受されるデータ内容の一例を示すシーケンスフローチャートである。 初期条件設定の入力手順を示すフローチャートである。 発電所グループ新規登録画面を示す図である。 発電所グループの登録画面を示す図である。 部品仕様の設定画面を示す図である。 等価運転時間計算式の設定画面を示す図である。 運用計画・運用実績の編集画面を示す図である。 ローテーション表を示す図である。 計画作成のための入力手順を示すフローチャートである。 運転計画の設定画面を示す図である。 コストの設定画面を示す図である。 アルゴリズムの設定画面を示す図である。 廃却損の表示画面を示す図である。 シミュレーション結果を示す図である。 部品グループ交換画面を示す図である。 部品変更交換画面を示す図である。 個別部品の登録画面を示す図である。 部品データの登録画面を示す図である。 単年度のコスト内訳を示す図である。 指定年度範囲のコストを示す図である。 部品取り付け状態(燃焼器の例)を示す図である。 部品取り付け状態(動翼の例)を示す図である。 部品入出庫管理画面を示す図である。 部品データ変更画面を示す図である。 部品検索画面を示す図である。 部品グループ状態表示画面を示す図である。 分枝木表現を表す概念図である。 染色体へのコード化を表す概念図である。 シミュレーテッド・アニーリングによる解の探索を表す概念図である。 部品リグルーピングを行う処理の一例を示すフローチャートである。
符号の説明
1 部品運用計画を作成するサーバ

Claims (3)

  1. 寿命管理が行われている部品に対して部品運用計画を作成する方法であり、複数企業等の複数の所有者が各々所有している部品を前記所有者間で共有し、前記部品の廃却損が最小となる全体の部品運用計画を作成し、且つ前記部品運用計画の作成においてOSフリーのプログラムを採用したことを特徴とする部品運用計画作成方法。
  2. 部品を共有する対象全体で、ある時期に部品を余寿命順に配列し、再グルーピングを行うことで、1つの部品グループ内の部品余寿命を揃えることを特徴とする請求項1記載の部品運用計画作成方法。
  3. 部品共有参加企業のグループから成る部品の貸与市場を形成し、グループ全体として部品に関わるコストを低減して、貸与元企業に対してインターネットを介した一元管理による公平な利益還元を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の部品運用計画作成方法。
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