JP2005230482A - 眼内レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】生体眼は患者個々でサイズが異なるので、支持部上で縫着位置を選べ、生体組織に順応性のより高い眼内レンズを提供すること。支持部に突起物の無い折りたたみ可能な毛様溝縫着用眼内レンズを提供すること。
【解決手段】眼内レンズLのループ状支持部Hの縫着糸をかける部分Wを帯状に細くし、縫着位置に幅を持たせる。支持部は、通常直径0.1〜0.15mm位の太さであるが、この太さの2〜5割程度細くする。尚、その支持部の細くする位置は眼球で輪状である毛様溝の接線に位置する所に設ける。その細くする支持部上の帯状の長さ、縫着糸のかかる幅は約0.5〜2.0mm位が良い。支持部の細い部分への縫着方法は一般的にカウヒッチ結びが多く、本発明の支持部にも対応される。ループ状の支持部が二本ある場合、その両方に縫着糸をかける部分を細くする。
【選択図】図1

Description

本発明は、白内障患者の白内障摘出手術後に視力矯正のために患者の眼内に移植される眼内レンズに関する。
ヒト水晶体は加齢や外傷により白濁し、白内障となり、一般にその多くは白内障手術により眼内透明性を得た後、視力矯正のため眼内レンズが元の水晶体の位置に移植される。移植される眼内レンズ(人工水晶体)は水晶体嚢内に移植されるのが最良の結果となると考えられている。しかしながら、水晶体嚢及び嚢を支えるチン小帯に損傷があると眼内レンズを水晶体嚢内に移植できない。このとき、毛様溝縫着用眼内レンズが移植される。このときチン小帯の損傷の範囲が狭い時には、水晶体嚢内固定用眼内レンズがそのまま毛様溝に移植される。毛様溝は虹彩後方に位置している。チン小帯の損傷の程度が強い場合や、水晶体との境界膜(硝子体膜)が破損した場合には、毛様溝縫着用眼内レンズが移植される。
しかし、水晶体嚢内固定用眼内レンズがそのまま毛様溝縫着用眼内レンズとして移植される場合がある。この時、眼内レンズのループ状の支持部(ハプティック)は毛様溝に外部強膜より縫着される。
特許番号第2792588号は強膜等に縫合するための眼内レンズを開示している。ループ状支持部の途中に中腹部を設け、中腹部の中央に切り欠き部を設けている。切り欠き部に縫合糸をかけて強膜に縫合する。切り欠き部を設けるために支持部中腹部は太くなっている。
解決しようとする問題点は第一に、水晶体嚢内固定用眼内レンズを毛様溝に縫着する時、縫着糸のループ状の支持部にかける位置が決めづらく、又、縫着手術後眼球は絶えず動いているため縫着糸より支持部がずれ、眼内レンズの偏位や傾きの原因となり、患者視力の低下をもたらす。
第二に、従来のループ状の支持部に小さな輪状ループを設けた毛様溝縫着用眼内レンズや特許番号第2792588号で開示しているような眼内レンズでは支持部の柔軟性が低くなり、本来の柔軟性を求めている支持部の機能を損ね、副作用の誘因となる可能性がある。又、小さな輪状ループや切り欠き部に縫合糸をかけ毛様溝に支持部を縫着すると、眼球は絶えず動いているため小さな輪状ループや切り欠き部のある中腹部の毛様体組織との接触面が増えた分、その部位の炎症の度合いが増す。
その上、小さな輪状ループや切り欠き部のある中腹部が接触している毛様体組織と癒着している時、これら眼内レンズを何らかの理由で摘出しなければならなくなった場合、小さな輪状ループや切り欠き部のある中腹部を毛様体組織から分離が出来ず、これら眼内レンズの摘出が難しくなり、患者の視力回復が困難となる。
その上、小さな輪状ループを設けた毛様溝縫着用眼内レンズや特許番号第2792588号で開示されている眼内レンズの縫着箇所はそれぞれ、輪状ループでは支持部側1点と切り欠き部支持部側1点のみであり、縫着位置が動かせない。生体眼は患者個々でサイズが異なるので、縫着位置を患者の眼球サイズに合わせて調節できれば安定感が増す。患者眼軸長は凡そ20〜30mmと、個々に異なる。
第三に、折りたたんだり丸めたりして眼内レンズを眼内に挿入する手術の場合、従来の毛様溝縫着用眼内レンズはその突起物が邪魔となり折りたたんだり丸めたり出来ず、切開創を大きく取らざるを得なかった。眼内に折りたたんだり丸めたり出来る毛様溝縫着可能な眼内レンズを開発すること。現在、折りたたんだり丸めたり出来る毛様溝縫着用に適し、或いは開発された眼内レンズは無い。
光学部とループ状の支持部が一体となった眼内レンズにおいて、支持部の途中に帯状に細い部分を設け、患者眼球の大きさにより毛様溝への支持部の縫着位置をその支持部の細くした部分の任意の位置に選べることを特徴とした眼内レンズ。そして、任意に選んだ縫着位置が支持部の途中で眼内レンズ長径近位にあり、支持部前後より帯状に細く、縫着位置をその細くなった支持部上で任意にずらして選べる眼内レンズを提供する。
更に、任意に選べる縫着位置が0.5〜2.0mmの範囲内である眼内レンズを提供すること。細くなった支持部のその太さは支持部の太さより20〜50%細くした眼内レンズを提供すること。この本発明の手段により、折りたたんだり丸めたりして眼内に挿入出来る眼内レンズを可能にする。
つまり、本発明は、支持部に縫着糸をかける部分を帯状に細くすること、及び縫着位置をずらせる幅を持たせることにより課題を解決する。本発明の支持部は、例えば通常直径0.10〜0.15mm位の太さであるが、縫着部位はこの太さの2〜5割程度帯状に細くする。尚、その支持部の細くする位置は眼球で輪状である毛様溝の接線に位置する所に設ける。その細くする支持部上の長さ、縫着糸のかかる帯状の幅、は約0.5〜2.0mm位が良い。支持部の細い部分への縫着方法は一般的にカウヒッチ結び(牛の鼻輪にロープを簡便に結わえる方法)が多く、本発明の支持部にも対応される。
本発明は、ループ状の支持部が二本ある場合、その両方に縫着糸をかける部分を細くすることにより課題を解決する。本発明のループ状の支持部は毛様溝に縫着している時は動かず、眼内レンズの摘出の必要性が生じても縫着糸を切れば支持部の毛様溝よりの抜き取りが簡単で眼内レンズの摘出が容易に操作できる。
本発明のループ状の支持部に縫着糸をかける部分を帯状に細くした眼内レンズは、水晶体嚢内固定、毛様溝固定及び毛様溝縫着用眼内レンズとして使用され、使用者(術者)にとってそれぞれ区別する必要がない。このことは手術医師にとって、或いは手術準備の混乱を回避できることとなる。
本発明のループ状の支持部に縫着糸をかける部分を帯状に細くした眼内レンズでは、縫着糸を支持部に結びつける時にその任意の部位にしっかりと固定できるため、支持部から縫着した糸がずれにくく、外れにくい。そして術者が術中に支持部上の縫着位置を選択できる。つまり患者が小さめの眼球であれば、図1で説明すると眼内レンズの長径Aが狭まり、縫着位置は部分Wの支持部付け根側、大き目の眼球であれば長径Aに近くなり、部分Wの支持部先端E側に縫着場所を選べる。
本発明は、ループ状の支持部が二本ある場合、その両方に縫着糸をかけ、毛様溝に縫着することにより従来よく起こるその眼内レンズの上下左右への偏位や前後への傾きが軽減される。手術医師が水晶体嚢内固定用眼内レンズを毛様溝に縫着したい時、二本の支持部にかけた糸(その位置、糸の引っ張り強さなど)の確認、及び眼内レンズ位置などの調整が必要であったが、本発明の眼内レンズの使用により糸の調整が容易になり、眼内レンズの偏位や傾きが改善される。これらのことは患者の術後視力維持及び術中医師のストレスを大きく軽減することとなる。
本発明の眼内レンズの白内障患者への移植によりループ状の支持部が毛様溝に縫着されている時はレンズ偏位を起こさず、仮に眼内レンズの摘出の必要性が生じても縫着糸を切れば支持部の毛様溝よりの抜き取りが簡単で眼内レンズの摘出が容易に操作可能となる。このことも患者の術後視力維持及び術中医師のストレスを大きく軽減することとなる。
本発明の眼内レンズの白内障患者への移植により支持部は毛様溝に縫着されている時は、図3の従来のループ状の支持部に小さな輪状ループや図4の中腹部に切り欠き部を設けた毛様溝縫着用眼内レンズに比べて生体組織に接触する面積及び体積が小さく柔軟で、縫着部位の術後炎症の軽減ができる。支持部が柔軟であると折りたたみが出来、眼内レンズ移植のための切開創を小さく出来る。このことは患者視力維持、投薬の軽減、などに貢献することとなる。
本発明の眼内レンズの白内障患者への移植による利点をまとめると、患者の視力向上及び維持、手術医師の術中ストレス軽減、投薬の軽減、各種眼内レンズ予備ストックの軽減、手術関係者の眼内レンズ採用・取り扱いの簡便化が計れる。
本発明は、図1で示すように支持部Hと呼ばれるループ状の支持部を持つ眼内レンズのその支持部Hの一部Wを帯状に細くし、患者眼球内の毛様溝に眼内レンズを縫着する。図2のように縫着には縫合糸Kを用いて支持部の細くした部分Wにカウヒッチ結びし、支持部Hを毛様溝に縫着する。本発明では図2のように通常操作されるカウヒッチ結びで説明しているが、他の結び方法でも良い。そして結び目は細い部分Wのどこでも患者眼球サイズにより場所を選べる。
本発明は、従来より一般的に移植されている支持部を持つ後房眼内レンズであれば支持部の一部を図1のWのように細くし、ポリメチルメタクリレートやアクリル系樹脂及びシリコーン樹脂などの素材を問わず本発明の施行が可能である。尚、支持部Hが複数本あればその複数本共に一部を帯状に細くした本発明の眼内レンズを縫着すればよりよい安定が得られる。
図1の本発明の支持部Hの一部を帯状に細くするその部分Wは毛様溝と接すると良く、角膜周囲円状の毛様溝の接線となる位置に設ける。しかしながら患者により眼球の大きさが異なるので本発明の支持部Hの一部を細くするその部分Wの長さは約0.5〜2.0mm位がよく、支持部Hの帯状に細い部分Wに縫着された糸はその長さの範囲外の支持部HのレンズL側或いは先端E側に逃げられない。本発明の支持部Hの一部を細くするその部分Wの幅は、毛様溝の位置は患者固有のものであり患者により異なるが、最大でも2.0mm位あれば殆どの大きさの眼球に対応可能となる。
本発明は、ループ状支持部Hに縫着糸をかける部分Wを帯状に細くする。支持部Hは例えば、通常直径0.1〜0.15mm位の太さであるが、部分Wではその太さの2〜5割程度細くする。いったん縫着糸を部分Wの選んだ任意の位置で締めると糸は左右にはずれにくくなる。
図3や図4は既に開示されている毛様溝縫着用眼内レンズを示している。説明のため図3は光学部Lの支持部Hに小さな輪状ループを設けた眼内レンズの上半分の図であり、図4は光学部Lの支持部Hの中腹部に切り欠き部を設けた眼内レンズの下半分の図である。これら二例の支持部Hは従来の突起物の無い眼内レンズや本発明の眼内レンズに比べて柔軟性が減少する。柔軟性が乏しくなると生体組織と馴染まず炎症度合いが増える危険性がある。又、図3や図4では支持部Hの輪状ループRや中腹部切り欠き部Cの突起物分の面積がその分増え、生体組織との接触面積が増えることになり、炎症度合いが増す。更に、それら突起物RやCに生体組織が癒着した時、この眼内レンズを何らかの原因で摘出しなければならなくなった時、突起物RやCと生体組織との分離ができず、この眼内レンズの摘出が困難となり、患者の視力回復が難しくなる可能性がでてくる。更に、縫着箇所は輪状ループRに通糸及び切り欠き部に糸をかけるので、共にループ先端Eより縫着糸は外れないものの、予め決められた一箇所で固定され、患者眼球の異なる大きさに対応していない。
図1の様な眼内レンズを作成し、図2の様に糸を結んだ。眼内レンズは長径12.5mm、光学部直径6mm、ループ状の支持部太さ1.3mm、全体ポリメチルメタクリレート製を作成した。支持部Hの細い部分Wは0.9mmの太さで帯状の長さは2.0mmにした。この2.0mmの両側、先端部Eと支持部根元側、に0.2mmづつ緩やかな傾斜をつけ太さ0.9mmから1.3mmに戻した。先端部Eから細い部分Wの中央までは2.0mmとした。図2の様に支持部の部分Wには9−0ポリプロピレン縫合糸(太さ約0.035mm)を用いた。
顕微鏡下で縫合糸の支持部上でのずれ具合を見たが、糸はしっかりと固定されていた。肉眼では糸のあるなしに拘わらず、ほとんど支持部に加工がしてない様にみえた。しかしながら、顕微鏡下では当然支持部の太さの違いが分かった。サイズ直径10.0, 10.5, 11.0, 11.5mmの四つの円形プラスチックケースで、この図1の様に作成した長径Aが12.5mmの眼内レンズの支持部の帯状の細い部分が外周円上に接するか試験したところ、例えば、11.5mmのケースでは支持部先端Eに近い部分が接し、いずれの場合でも帯状の2.0mmの細い部分が上手く外周円上に接していた。支持部は柔軟性も良く、水晶体嚢内、毛様溝ともに上手く適合するように考えられた。毛様溝に接触する面積は明らかに従来のものと比べて、或いは参考図、図3や図4で示した小さな輪状ループや中腹部に切り欠き部のある支持部に比べて小さく、引っかかり等の突起物がなくスムーズな形状の支持部を呈していた。このことは本発明の眼内レンズが折りたたみを可能にしていることを示唆している。
実施例1で製作した眼内レンズの二本の支持部Hの細い部分Wに9−0ポリプロピレン糸でカウヒッチ結びし、レンズの縫合糸結び具合を試験した。図2の用にカウヒッチされた糸は一旦締められると左右に動かず、支持部先端Eよりぬける心配は無かった。糸のカウヒッチされた結び目は支持部の太さ1.3mmを越えることなく、なんら突起状のものが無く、スムーズであった。二つの縫合糸の結び目の外を切断し、鈎で結び目をそっと押さえループを抜いてみると少ない引っ掛かりでスムーズに抜けた。
産業上の利用の可能性
本発明の眼内レンズは哺乳類、特に犬や猫等の動物にも適用できる。
は、本発明の支持部に縫着糸をかける部分を細くした眼内レンズの正面図である。 は、図1で示した支持部に縫着糸をかける部分の拡大図であり、縫着糸がカウヒッチ結びされている正面図である。 支持部に小さな輪状ループが設けられている参考図で、眼内レンズ上半分のみの図であり支持部の小さな輪状ループに縫着糸をかける目的の従来より使用されている毛様溝縫着用眼内レンズの参考図である。 は、特許番号第2792588号で開示された眼内レンズの下半分の図であり、ループ状支持部中腹部に切り欠き部がある毛様溝縫着用眼内レンズの説明のための参考図である。
符号の説明
A.....眼内レンズの長径
L.....眼内レンズの光学部(レンズ)
H.....支持部(レンズ支持ループ部、ハプティック)
W.....支持部に縫合糸をかけるために帯状に細くした部分
E.....支持部先端
R.....支持部に縫合糸をかけるための小さな輪状ループ
C.....支持部に縫合糸をかけるための中腹部の切り欠き部

Claims (4)

  1. 光学部とループ状支持部が一体となった眼内レンズにおいて、支持部の途中に帯状に細い部分を設け、患者眼球内毛様溝への支持部の縫着位置をその支持部の帯状に細くした部分の任意の位置に選べることを特徴とした眼内レンズ。
  2. 任意の位置に選べる縫着位置が支持部の途中で眼内レンズ長径近位にあり、支持部前後より帯状に細く、縫着位置がその細くなった支持部上で任意に選べる請求項1に記載の眼内レンズ。
  3. 任意に選べる縫着位置が0.5〜2.0mmの範囲内であることを特徴とした請求項1に記載の眼内レンズ。
  4. 支持部の帯状に細い部分の太さが本来の支持部の太さの20〜50%細くしたことを特徴とした請求項1に記載の眼内レンズ。
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