JP2005230007A - 魚類寄生虫症に有効な飼料、飼料添加物、油脂並びに薬浴剤 - Google Patents

魚類寄生虫症に有効な飼料、飼料添加物、油脂並びに薬浴剤 Download PDF

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衛藤英雄
Tomokazu Kojima
小嶋智一
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徳満寛之
Kazuaki Miyamoto
宮本和明
Kazue Aoyanagi
青柳和恵
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Abstract

【課題】養殖家にとっても消費者にとっても安全で安心できる食用の天然物を利用して、
養殖魚で問題となっている薬剤に頼らずに、寄生虫感染の予防及び駆虫をおこなうことが
できる。
【解決手段】ジンゲロール類、ショウガオール類及びクルクミンの内一種又は二種以上の
成分、又はそれら成分を有するショウガ科植物又はその抽出物を、飼料に適当な比率で添
加する、又は抽出物を溶解した飼育水に魚を浸漬することにより、魚類寄生虫の駆虫及び
予防をおこなう。
【選択図】なし

Description

本発明は、魚類寄生虫を駆虫又は予防するための手段として、ジンゲロール類、ショウ
ガオール類及びクルクミンの内一種又は二種以上の成分、またはそれら成分を有するショ
ウガ科植物又はその抽出物を用いた養魚用配合飼料、飼料添加物、養魚用油脂並びに薬浴
剤に関するものである。
養殖経営における疾病対策は、成長を維持し、歩留まりを高めるうえで重要である。と
くに魚類寄生虫が養殖魚に寄生すると、直接斃死に至ることはもちろんであるが、寄生虫
により養殖魚の体力が減退し、細菌性疾病やウイルス病などに感染しやすくなることはよ
く知られている。死に至らないまでも摂餌不良となり、成長を重視する養殖経営にとって
は多大な損害を及ぼす。
これまで魚類寄生虫の駆虫には、抗寄生虫剤などの水産用医薬品が用いられてきたが、
こうした医薬品は高価なうえ、対象となる寄生虫も限られているなど使用のための制約も
多い。
近年、寄生虫駆虫のために使用する薬剤に関して、環境への悪影響などが懸念されてお
り、一方では食材としての養殖魚に対し安全性を求める消費者の声も高まっている。
こうした背景から薬剤を使用しないで寄生虫を駆虫する方法として、海産魚にあっては
淡水浴が、淡水魚にあっては塩水浴が行われているが、十分な効果が得られているとは言
えない。
魚類寄生虫に効果のある天然生理活性物質に関しても検討が行われており、カプサイシ
ン、オイゲノール、シネオール、シトロネラール、メントール、リナリールアセテートな
どが開示されている。
特開2000−281568号公報 特開2001―69922号公報 特開平1−224326号公報 特開平2―4711号公報 特開平8―40970号公報
解決しようとする問題点は、現在魚類寄生虫の駆虫及び予防を、従来実施されてきた薬
剤による方法に頼らず、自然界に広く存在する成分により実施しようとするものである。
本発明は、ジンゲロール類、ショウガオール類及びクルクミンの内一種又は二種以上の
成分、又はそれら成分を有するショウガ科植物又はその抽出物を、飼料に適当な比率で添
加する、又は抽出物を溶解した飼育水に魚を浸漬することにより、魚類寄生虫の駆虫及び
予防に効果を有することを主な特徴とする。
本発明者らは、ジンゲロール類、ショウガオール類及びクルクミンが、魚類寄生虫を減
耗又は死滅させることを見出し、さらにそれら成分を含むショウガ科植物又はその抽出物
においても効果が認められることを発見し、本発明を完成した。
ジンゲロール類、ショウガオール類に関しては、人に感染するアニサキス症に効果があ
ることが知られているが、本発明で示す養殖分野において直接魚類に作用させ多様な寄生
虫駆除に利用した例は無く、新しい魚類寄生虫の駆虫方法である。
本発明におけるショウガ科植物とは、ジンゲロール類、ショウガオール類、クルクミノ
イドを含有するすべてのショウガ科植物を示し、代表的なものとしてショウガやウコンが
挙げられる。
ショウガ科植物抽出物中には、6-ジンゲロール、8-ジンゲロールなどのジンゲロール類
、6-ショウガオール、8-ショーガオール等のショウガオール類が含まれる。、これを構成
するフェノール性水酸基は反応性に富み、タンパク質に結合してそのタンパク質を変成さ
せる能力を有する。
さらにショウガ科植物であり別名ウコンとも呼ばれているターメリックには、クルクミ
ンを初めとするクルクミノイドが含まれており、その化学構造中にジンゲロール類、ショ
ウガオール類の2倍のフェノール性水酸基が存在する。
ショウガ科植物からの抽出方法としては、圧搾法、水蒸気蒸留法、アルコール抽出法、
有機溶媒抽出法、超臨界抽出法などがあるが、とくにアルコール抽出法及び有機溶媒抽出
法がとくに有効である。
本発明は、食用の天然物又は自然界に広く存在する成分を利用して、養殖魚の寄生虫感
染の予防及び駆虫をおこなうものであり、養殖経営を手助けできるばかりでなく、環境に
やさしく、しかも安全な食材として養殖魚を消費者に提供できる。
本発明を用いて、魚類寄生虫の感染を防除することで、2次的に引き起こされる細菌性
疾病なども軽減できることから、抗生物質などの使用量も削減され、薬剤に頼らない養殖
が可能となる。
本発明は、主に養殖魚種の寄生虫を対象とするが、魚種の代表的なものとして、海産魚
ではブリ、カンパチ、トラフグ、シマアジ、マダイ、スズキが、淡水魚ではニジマス、ア
ユ、アマゴ、イワナ、アユ、ウナギなどである。
一方、魚類寄生虫の代表的なものには、繊毛虫類である白点虫(イクチオフチリウス)
、トリコディナ、キロドネラ、エピスチリス、クリプトカリオン、扁形動物単生類である
ギロダクチルス、シュードダクチロギルス、ベネデニア、ヘテロボツリウム、ネオヘテロ
ボツリウム、ビバギナ、テトラオンクスなどがある。本発明で得られた成分はいずれの寄
生虫に対しても有効である。
本発明の使用方法には経口投与法と薬浴法(浸漬法とも呼ぶ)がある。経口投与法は、
飼料及び油脂などに有効成分を添加し魚の摂餌を通じて寄生虫に作用させるものであり、
薬浴法は、飼育水中に有効成分を散布し直接的に寄生虫に作用させる。本発明で得られた
成分は、経口投与法及び薬浴法のいずれにも有効である。
とくに薬浴法においては、環境水中で有効成分を作用させるために抽出物又はその成分
を用いることが好ましい。
本発明を経口投与法で使用する場合には、ショウガ科植物乾燥物として飼料に対し0.01
%〜20%(抽出物及び成分量として0.00025%〜0.5%)、好ましくは1%〜5%(同0.025%〜0.12
5%)添加する。
本発明を薬浴で使用する場合には、抽出物又は成分量として飼育水に対し0.1ppm〜200p
pm散布する。
本発明は、経口投与法であっても薬浴法であっても、この量に制限されるものではない
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、この実施例に
限定されるものではない。
扁形動物単生類であるシュードダクチロギルスの感染を確認したウナギ(平均体重200g
)の鰓を採取し、あらかじめ顕微鏡で虫体数を計数した鰓を試験サンプルとした。
試験成分として、6-ジンゲロール、クルクミンは和光純薬製試薬を用い、6-ショウガオ
ール、8-ジンゲロール、8-ショウガオールについてはジンゲロンよりヘキサナール、オク
タナールをそれぞれ反応させて合成し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製したも
のを用いた。抽出物はアセトン抽出の後、減圧乾固したものを用いた。
試験に用いた浸漬液は、上記成分及び抽出物(試験区)をジメチルスルホキシドに溶解
させた後、所定量となるように水で溶解して作製した。対照区は水にジメチルスルホキシ
ドのみを添加したものを用いた。
各々の浸漬液をシャーレに入れ、そこに試験サンプルの鰓を収容した後、10分後に萎縮
して動かなくなった虫体(萎縮個体)を計数した。半数以上が萎縮個体である場合に有効
とした。
対照に萎縮個体は見られなかったが、試験区ではほとんど全ての虫体が萎縮個体で、試
験区のどの成分においても有効と判断された。
表1.
繊毛虫類であるトリコディナに感染したアユを60リットルの飼育水に収容し、所定量の
抽出物をエタノールに溶解させた後添加した。
7時間及び24時間後の体表寄生虫数(片面)を、カバーグラスで粘液ごと掻き取り、顕
微鏡を用いて計数した。トリコディナ判定は0〜50個体を±、50〜100個体を+、100〜200
個体を++、200個体以上を+++とした。
抽出物1ppm区では24時間後でも虫体が観察されたが、その数は対照区に比べ大幅に減少
していた。5ppm及び10ppm区ではショウガ抽出物区で7時間後に若干の虫体が観察されたが
、24時間後には両抽出物区とも5ppm以上の区では虫体は全く観察されなかった。
表2.
扁形動物単生類であるハダムシ(ベネデニア、体長5mm以上)に感染したハマチ2尾を
200リットルの飼育水に収容し、50ppmショウガ抽出物をエタノールに溶解させた後、添加
した。24時間後の体表に残存したハダムシ数及び水槽中に落ちだハダムシ数を計測し、駆
虫率を求めた。
24時間後の観察で、抽出物を添加しなかった対照区では虫体の剥離は認められなかった
が、ショウガ抽出物を添加した試験区ではほぼ完全に体表より剥離して水槽内に落ちてい
た。試験実施中、対照区及び試験区の魚の遊泳行動に異常は認められなかった。この結果
から、ショウガ抽出物がハダムシに対して効果があることが確認された。
表3.

富士製粉(株)製ニジマス用市販飼料を対照飼料とし、クルクミンを0.15%添加した試
験飼料を作製した。200リットル水槽2面に、繊毛虫である白点虫(イクチオフチリウス)
が寄生した平均体重6.0gのニジマスを各70尾放養し、飼育試験を行った。
飼育開始後14日目に各区10尾づつサンプリングし、片側の体表粘液を掻き取り検鏡した
。クルクミン添加区は対照区に対して白点虫の平均寄生数が少なく、経口投与でのクルク
ミンの駆虫効果が確認された。

富士製粉(株)製ニジマス用市販飼料を対照飼料とし、ターメリック粉末を1%、5%、
ショウガ粉末を2%、5%それぞれ添加した試験飼料を作製した。200リットル水槽5面に、
繊毛虫である白点虫(イクチオフチリウス)が寄生した平均体重5.5gのニジマスを各90尾
放養し、飼育試験を行った。
飼育開始後16日目に各区5尾づつサンプリングし、片側の体表粘液を掻き取り検鏡した
。ショウガ粉末添加区、ターメリック粉末添加区どちらも対照区に対して白点虫の寄生数
が少なく、経口投与においても本発明成分の駆虫効果が確認された。
シュードギロダクチルスによる寄生虫症が発症した50トン池のウナギ(平均体重200g
、約2750尾放養)に、ショウガの油脂混合物(フィードオイルにショウガ粉末を15%添加
。)を富士製粉(株)製ウナギ用飼料に8%の割合で混合し、給餌した。
給餌前と給餌4日目のウナギを6尾づつサンプリングし、片方の鰓4枚中に寄生している
シュードダクチロギルスの数を顕微鏡で計数した。
油脂混合物を投与する前のシュードダクチロギルスの寄生数に対して投与4日後の寄生
数は平均寄生数で半分以下となり、本発明の効果が油脂混合物としても発揮される事を確
認した。
実施例5で用いた飼料のうち、ショウガ粉末5%添加飼料及びターメリック粉末5%添加飼
料を選定し、実施例4と同様の方法で飼育試験を行った。白点虫が寄生したニジマスの生
残率低下は、ショウガ粉末、ターメリック粉末の添加により抑えられた。
このことから、これら成分が駆虫又は寄生虫の感染を予防し、斃死を軽減することで魚
の歩留まり向上に効果があることが確認された。
養殖経営にとって防除が不可欠な魚類寄生虫疾病に対して、養殖家にとっても消費者に
とっても安全で安心できる食用の天然物を利用して、感染の予防及び駆虫をおこなうこと
ができる。寄生虫の感染を防除することで、2次的に引き起こされる細菌性疾病なども軽
減できることから、抗生物質などの使用量も削減され、現在課題となっている養殖魚のト
レーサビリティーの問題解決につながる。
飼料に添加したショウガ及びターメリック粉末による白点虫(イクチオフチリウス)駆虫試験。(実施例5) ショウガ、ターメリック粉末投与試験での白点虫に感染したニジマスの生残率の推移。(実施例7)

Claims (6)

  1. ジンゲロール類、ショウガオール類の内一種又は二種以上の成分を用いた魚類寄生虫の駆
    虫方法及び感染予防方法。
  2. クルクミンを用いた魚類寄生虫の駆虫方法及び感染予防方法。
  3. ショウガ科植物又はその抽出物を用いた魚類寄生虫の駆虫方法及び感染予防方法。
  4. 請求項1,2,3の記載物を用いた養魚用配合飼料又は飼料添加物。
  5. 請求項1,2,3の記載物を用いた養魚用油脂。
  6. 請求項1,2,3の記載物を用いた薬浴剤。
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