JP2001122717A - 魚類の抗寄生虫抗微生物剤 - Google Patents

魚類の抗寄生虫抗微生物剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】魚類の生息する環境を汚染することなく、ま
た、耐性菌が出現することもなく、更に、魚肉料理を食
べても、魚肉に残留して人体に影響を与えない抗寄生虫
抗微生物剤を提供する。 【解決手段】南瓜子、並びに、桂皮、ガジュツ、枇杷
葉、及び、ビンロウジからなる群から選ばれた1種以上
の生薬を含有することを特徴とする魚類の抗寄生虫抗微
生物剤

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚類、特に養殖さ
れているブリ、ヒラメ、ハマチ,鯛、鰻等に、ベネデニ
ア、ヘテラキシネ、鰓吸虫等の寄生虫が寄生するのを防
除して、寄生虫病を予防し治療することができ、また、
類結節症、ビブリオ病、イリドウィルス病、パラコロ等
を予防し治療することができる魚類の抗寄生虫抗微生物
剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、鰻等が養殖されてきたが、最
近、高級魚の養殖技術が開発されたのにともない、鯛、
ハマチ、ブリ、ヒラメ等も養殖されるようになった。そ
して、養殖技術の進歩にともない、これら養殖魚の高密
度飼育や急速育成が行われるようになった。その結果、
これらの魚類は、本来の自然の生息環境とはかけ離れた
環境の中で飼育されることになり、ストレス状態におか
れ、魚対も弱化して、抵抗性を失い、容易に、ウィル
ス、細菌、原虫に侵され、種々の病気にかかり、死亡す
るものも多く、また、出荷される魚体の品質も劣化する
という問題が発生するようになった。そして、その一つ
の対応策として、抗生物質等の種々の薬品が使用される
ようなった。
【0003】一方、魚類は水中で生息しているため、抗
菌剤等の薬品を水中に投入すれば、単に生息環境を擾乱
させるだけでなく、魚体にも摂取される。また、抗生物
質等の薬品を餌に混入して投与すれば、食べ残した餌か
ら水中に拡散し、一部は溶解して、耐性菌の出現等生息
環境に悪影響を与える。そして、このようにして魚体に
摂取された薬品や抗生物質は、魚肉料理を通して人体に
摂取されることから、抗生物質等の薬品の使用が厳しく
制限されるようになった。その対応策として、生薬を使
用することも考えられる。しかしながら、どのような生
薬が、魚類にどのような薬効を有するか、全く知られて
いない。単に、特許第2857894号公報に開示され
たように、芳香性や辛味性がある植物の果実、樹皮、
根、葉、種子等を粉砕したものや精油が、水産動物の摂
餌・誘引活性物質として使用されることが知られている
に過ぎない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、魚類の生息する水中環境を汚染することな
く、また、耐性菌が出現することもなく、更に、魚肉料
理を食べても魚肉に残留して人体への影響が全くない新
しい魚類の病気を予防し又は治癒させる抗寄生虫抗微生
物剤を開発することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前述の課題
を解決するに当たって、先ず、漢方薬局に常備されてい
る約200種の生薬について、高等動物から下等動物ま
で共通して生体防御を担っているマクロファージに作用
してインターフェロンを生産させるインターフェロン・
インジューサーに注目して調査し、南瓜子とガジュツに
高い活性があることを見いだし、更に、この南瓜子とガ
ジュツが、食品に分類される自然食品であり、単にイン
ターフェロンを生産させるだけでなく、マイクロファー
ジ自身を活性化し、マイトジェン活性、アジュバンド活
性、IgE抗体生産抑制効果を有していること見いだ
し、本発明に到達したものである。
【0006】本発明は、南瓜子、並びに、桂皮、ガジュ
ツ、枇杷葉、及び、ビンロウジからなる群から選ばれた
1種以上の生薬を含有することを特徴とする魚類の抗寄
生虫抗微生物であって、魚体表面の粘液量やリゾチーム
量を増加させることにより種々の防御機能を発揮させる
ものと考えられるものであり、単に抗寄生虫作用を有す
るだけでなく、抗微生物作用を発揮するものである。
【0007】本発明において、南瓜子は、古来から生薬
として知られている南瓜の種子であって、ククルビチン
等を含み、人や家畜等の条虫や回虫や住血吸虫の駆除に
効果があるとされているが、魚類の寄生虫についての駆
虫作用は知られていない。桂皮は、古来から生薬として
知られているクスノキ科の植物の樹皮であり、けいひア
ルデヒド等を含み、芳香を有し、人や家畜等について、
鎮静、発汗解熱、局所麻酔、鎮痙作用等の多くの薬効を
有することが知られているが、魚類についての薬効は知
られていない。ガジュツは、古来から知られている生姜
科の植物の根であって、セスキテルペン類を含み、僅か
に芳香を有し、鎮静作用や抗菌作用があるとされている
が、魚類ついての薬効は知られていない。枇杷葉は、古
来から生薬として知られている枇杷の葉であって、アミ
グダリン、ウルソル酸等を含み、鎮咳作用があるとされ
ているが、魚類についての薬効は知られていない。ビン
ロウジ(檳榔子)は、シュロ科の檳榔の種子であり、ア
ルカロイドの一つであるアレコリン等を含み、人や家畜
の条虫や回虫等の駆除に効果があるとされているが、魚
類に対する駆虫作用は知られていない。
【0008】
【実施例】1.ブリの養殖 南瓜子末2.0kg、桂皮末0.5kg、ふすま3.5
kg、及び、脱脂米糠4.0kgを混合して抗寄生虫抗
微生物剤を作成した。更に、ブリ育成用の飼料とするす
るためにに、この抗寄生虫抗微生物剤をフィードオイル
に懸濁させ、配合飼料(N配合飼料(株)製)に吸着さ
せて、抗寄生虫抗微生物剤0.1重量%を含有するブリ
育成用飼料(以下「試験飼料1」という)作成した。ま
た、比較のため、同量の食用油だけを配合飼料(N配合
飼料(株)製)に吸着させたブリ育成用飼料(以下「比
較飼料1」という)を作成した。一方、3×3×5mの
海面イケスを2区画を設定し、試験区と比較区として、
それぞれの区画に、ブリの当才魚(平均体重201g)
200尾を放流し、試験区には試験飼料1を、比較区に
は比較飼料1を、それぞれ、定量給与して、8週間飼育
した。その期間の水温は23〜27℃であった。また、
この期間中、毎日、水質変化、遊泳行動、摂餌状況、体
色、死亡尾数を観察した。また、4週目と8週目に各区
からそれぞれ20尾を釣り上げ、体重の測定、寄生虫の
検査、粘液量とリゾチーム含量の測定を行った。なお、
リゾチーム量は、M.lysodeikticusを基
質とする比濁法により測定した。それらの結果は、表
1、表2、及び、表3のとおりであった。なお、比較区
のブリには、5日目より類結節症が散見されてきたの
で、直ちにアンピシリン20mg/kgを5日間投与し
た。試験区のブリには、体色に黒味も帯びず、目に白濁
も見られず、病変は全く見られなかった。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2】
【0011】
【表3】
【0012】表1に見られるように、本発明に係わる抗
寄生虫抗微生物剤を供与した試験区のブリは、比較区の
ブリと比較して、死亡率が低く、体重増加率が高く、飼
料要求率が低くなっている。なお、比較区のブリの死亡
は、第1週から第5週に集中し、大部分に類結節症の特
徴的な病変が観察された。従って、本発明に係わる抗寄
生虫抗微生物剤は、類結節症にも効果があるといえる。
また、表2に見られるように、寄生虫のベニデニア(B
enedenia s.−はだむし)、及び、ヘテラキ
シネ(Heteraxine h.−えらむし)につい
ては、比較区のブリと比較して、本発明に係わる抗寄生
虫抗微生物剤を供与した試験区のブリに、著しい駆除効
果が認められた。また、表3に見られるように、体表1
cm当たりの粘液量については、比較区のブリは横ば
い状態であるのに対して、試験区のブリには若干の増加
がみられる。また、体表1cm当たりのリゾチーム量
については、比較区のブリに対して、本発明に係わる抗
寄生虫抗微生物剤を供与した試験区のブリに、大幅の増
加の傾向が見られる。このような諸結果から、本発明に
係わる抗寄生虫抗微生物剤を市販飼料に添加することに
より、生体防御機能の一つである体表粘液及びそれに含
まれる溶菌酵素リゾチームを増加させ、外界からの細菌
や寄生虫等の侵入を防御することができるようになると
考えられる。
【0013】2.マダイの養殖 南瓜子末2.0kg、桂皮末0.5kg、枇杷葉末0.
5kg、ビンロウジ末0.1kg、ふすま2.9kg、
及び、脱脂米糠4.0kgを混合して抗寄生虫抗微生物
剤を調製し、更に、マダイの飼料とするため、市販のマ
ダイ用ドライペレット(S飼料(株)製)に、この抗寄
生虫抗微生物剤を0.1重量%添加混合して試験飼料
(以下「試験飼料2」という)を作成した。一方、5×
5×5mの大きさで、上面を黒い寒冷紗で覆ったイケス
で、1000尾の2年魚のマダイを、4月間試験飼料2
を給与して飼育した。給餌は1日2回朝夕80%食とし
た。その結果は第4表のとおりである。
【0014】
【表4】
【0015】表4に見られるように、生存率の99.3
%は、マダイ2年魚養殖の平均的な値であり、増肉係数
が2.0より低い値を得たことは、過食をさけ80%食
としては良い値である。鰓吸虫(Microcotyl
e tai)はなく、また、この期間中、ビブリオ病や
イリドウィルス病の発生もなく、他の業者より良い成績
を収めた。また、外見上も目すれもなく、商品価値の高
いものであった。
【0016】3.ウナギの養殖 南瓜子末2.0kg、桂皮末0.5kg、ガジュツ末
0.1kg、ふすま3.4kg、及び、脱脂米糠4.0
kgを混合して抗寄生虫抗微生物剤を調製し、更に、ウ
ナギ用飼料とするため、養鰻用飼料(N飼料(株)製)
に、この抗寄生虫抗微生物剤を0.1重量%添加混合し
て練餌(以下「試験飼料3」という)を製造した。一
方、通常の養鰻池を使用して、稚魚の運動空間を増やす
ため、その池の通常の養殖尾数の15%減にして、3
0,000尾の13±2gのウナギ稚魚を放流し、春か
ら夏にかけて150日間飼育した。池には止水式ビニー
ル加温施設を敷設し、水温はボイラーで加温して26〜
30℃に維持した。酸素は水車で暴気して供給した。池
の換水率は2日に1回とし、給餌回数は1日朝夕の2回
とした。その結果は表5のとおりである。
【0017】
【表5】
【0018】養鰻は水の影響を大きく受けるので、水の
管理には特に注意をはらった。そのためか、生存率は9
9.96%と好成績であった。また、10尾の死亡原因
は、病気によるものではなく、物理的事故によるもので
あった。更に特筆すべきことは、近隣の同業者とは異な
り、また、例年とは異なり、鰓病や内外寄生虫病やパラ
コロ病等の疾病の発生がなかった。また、味も、養殖魚
にみられるような水っぽさがなく、脂肪分が少なく、身
がしまっており、天然産に近かった。
【0019】4.ヒラメの養殖 南瓜子末2.0kg、桂皮末0.5kg、ガジュツ末
0.2kg、枇杷葉末0.5kg、ふすま3.0kg、
及び、脱脂米糠3.8kgを混合して抗寄生虫抗微生物
剤を調製し、更に、ヒラメ飼料とするため、ヒラメ育成
用ドライペレット(N社製)に、この抗寄生虫抗微生物
剤0.1重量%を、添着剤としてハマチエードフォルテ
0.1重量%を使用して、添加混合してヒラメ飼料(以
下「試験飼料4」という)を作成した。一方、比較のた
め、ヒラメ育成用ドライペレット(N社製)に、添着剤
としてハマチエードフォルテ0.1重量%だけを添加混
合してヒラメ飼料(以下「比較飼料2」という)製造し
た。一方、広さ8×8mで収容密度11.7kg/m
の陸上水槽を2基準備し、試験水槽及び比較水槽とし、
それぞれに、底に200kgの砂を入れ、平均体重25
0gの小型のヒラメ2,000尾を放流し、試験水槽の
ヒラメには試験飼料4を、比較水槽のヒラメには比較飼
料2を、1日3回給餌して3月間飼育した。その間の水
温は14.7〜24.1℃であった。魚の状態観察は1
日に2回行い、死んでいなくても、おかしいと思われる
個体は除去した。その結果、生存率は、比較水槽では8
4%であったが、試験水槽では95%と良い成績であっ
た。また、ネオベデニア症(寄生虫病)は比較水槽では
5尾発見されたが、試験水槽では寄生虫が寄生した個体
は1尾も発見されなかった。また、試験水槽のヒラメ
は、従来の養殖魚にくらべても、発育と色合いが良かっ
た。
【0020】5.ハマチの養殖 前述のブリの養殖に使用した抗寄生虫抗微生物剤を使っ
てハマチの本養殖をおこなった。ハマチの飼料には、ハ
マチ市販飼料にこの抗寄生虫抗菌剤を0.05重量%を
混合したものを使用し、平均体重11.3gのハマチの
稚魚約10,000尾を5月から9月30日までの13
0日間飼育した。その結果、この地区の同業者の歩留り
は約72%であったのに対して、本発明に係わる抗寄生
虫抗菌剤を使って本養殖したハマチの歩留りは、89.
4%であり、飼料効率も63.3%であった。また、こ
の本養殖で得られたハマチには、ベネデニア、セリオラ
(はだむし)の寄生は全くなく、アキシネ、ヘテロセル
カ(えらむし)の寄生は散見されたが、例年に比べて非
常に少なかった。また、健康状態の良さを示す黄色体側
線も現れていた。
【0021】
【発明の効果】本発明に係わる抗寄生虫抗微生物剤は、
前述のように、食用ともなる生薬から構成され、魚の寄
生虫や細菌等による病気に対して優れた作用を有するの
で、単に、魚の養殖業において、魚体の健康を維持し、
かつ、収量を上げて、漁業の振興に貢献するだけでな
く、日常的に養殖魚を摂食する国民の健康の維持に大き
く貢献するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C088 AB12 AB19 AB33 AB51 AB81 AB83 AC04 AC05 AC06 BA07 CA01 MA07 MA52 NA14 ZB37 ZC61 4H011 AA02 AC08 BA01 BB22 BC20 DA03 DA15 DA17 DC05 DD01 DG05 DG13

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 南瓜子、並びに、桂皮、ガジュツ、枇杷
    葉、及び、ビンロウジからなる群から選ばれた1種以上
    の生薬を含有することを特徴とする魚類の抗寄生虫抗微
    生物剤
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