JP2005223238A - 有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びにそれらを用いたスイッチング素子 - Google Patents

有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びにそれらを用いたスイッチング素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供し、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果有機薄膜トランジスタを提供すると共に、スイッチング素子への利用の道を開くこと。
【解決手段】 分子構造中に下記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなる有機半導体材料。
【化1】
Figure 2005223238

式中、Rは水素原子又は置換基を表し、XはーO−又はーN(R1)ー(R1は水素原子又は置換基を表す)を表す。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びに有機薄膜トランジスタ、電界効果薄膜トランジスタを用いたスイッチング素子に関する。
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用ディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、情報化の進展に伴い、これまで紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増えつつある。薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
平板型のディスプレイ装置は、液晶、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、このような表示媒体は、画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するため、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)を利用したアクティブ駆動素子が主流になっている。例えば、コンピュータディスプレイは、一般にガラス基板上にTFTを用いたアクティブ駆動素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
近年、高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。特に、有機半導体材料をチャネル部分に用いた電界効果トランジスタは、容易に大面積を得られるディスプレイなどの駆動用として期待されている。
有機半導体材料は、有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、例えば非特許文献1等において論じられているような有機レーザー発振素子や、例えば非特許文献2等の多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタへの応用が期待されている。
有機半導体材料として、これまでに検討されてきたものとしては、以下のような文献を挙げることができる。例えば、特許文献1には、ペンタセンやテトラセンといったアセン類が開示されている。特許文献2には、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物が開示されている。特許文献3には、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマーや、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物(これらの多くは非特許文献3に記載されている)が開示されている。
しかしながら、これらの化合物は、実用化という観点に立つとキャリア移動度が十分高くないという問題がある。したがって、高いキャリア移動度を示す新規な有機半導体材料の開発が待望されている。
特許文献4には、環境酸素によるドーピングを起こしにくく、溶液処理によって経済的に加工可能な有機半導体材料を用いたTFT等のエレクトロニックデバイスを提供するものである。有機半導体材料としては、2,5−チエニレンから誘導されるポリチオフェンが開示されている。しかしながら、開示されているポリチオフェンは、酸素に対する耐候性が十分とは言えず、時間経過により電流オン/オフ比特性が低下するといった問題がある。
特許文献5は、TFTに適した有機半導体材料として、チオフェン環単位を繰り返し単位として有するポリマーが記載されている。しかし、ポリチオフェンと同様に、酸素に対する耐候性は十分とは言えず、時間経過により電流オン/オフ比特性が低下するといった問題がある。
特開平5−55568号公報 特開平5−190877号公報 特開平8−264805号公報 特開2003−292588号公報 特開2003−119255号公報 「サイエンス」(Science)誌289巻599ページ(2000) 「ネイチャー」(Nature)誌403巻521ページ(2000) 「アドバンスド マテリアル」(Advanced Material)誌2002年第2号99ページ
上記特許文献等に記載されている有機半導体材料は、いずれもキャリア移動度が十分ではなく、有機半導体材料を電界効果有機薄膜トランジスタのチャネル層に用いてもドレイン電流を増大させることができない。また、時間経過によりキャリア移動度や電流ON/OFF比特性といった特性が低下する傾向(経時劣化)が認められ、改良の余地がある。
本発明はこのような問題点に鑑み成されたものであり、その目的とするところは、高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供し、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果トランジスタを提供すると共に、スイッチング素子への利用の道を開くことにある。
請求項1記載の有機半導体材料は、分子構造中に下記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなるものである。
Figure 2005223238
式中、Rは水素原子又は置換基を表し、Xは−O−又は−N(R1)−(R1は水素原子又は置換基を表す)を表す。
請求項2記載の有機半導体材料は、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基Dを0〜10個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーからなるものである。
請求項3記載の有機半導体材料は、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜10個有するオリゴマーからなるものである。
請求項4記載の有機薄膜トランジスタは、請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とするものである。
請求項5記載の電界効果有機薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタであって、前記半導体層として請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機半導体材料を用いることを特徴とするものである。
請求項6記載のスイッチング素子は、請求項4記載の有機薄膜トランジスタ又は請求項5記載の電界効果有機薄膜トランジスタを用いたものである。
本発明によれば、高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供することができた。また、これらの有機半導体材料を電界効果トランジスタのチャネル部分に適用することにより、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果トランジスタを得ることができ、スイッチング素子としての利用の道が開けた。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機半導体材料は、分子構造中に前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなるものである。式中、Rは水素原子又は置換基を表す。置換基としては、化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環に置換可能な任意の基を挙げることができる。置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等の各基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル等の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル等の各基)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等の各基)、ヘテロ環基(例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、フタラジル、ピロリジル、イミダゾリジル、モルホリル、オキサゾリジル等の各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等の各基)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等の各基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ、ドデシルチオ等の各基)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ等の各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等の各基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等の各基)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、オクチルアミノスルホニル、ドデシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、ナフチルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等の各基)、アシル基(例えば、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、オクチルカルボニル、2−エチルヘキシルカルボニル、ドデシルカルボニル、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、ピリジルカルボニル等の各基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ等の各基)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、ジメチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、ペンチルカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ、オクチルカルボニルアミノ、ドデシルカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ等の各基)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、オクチルアミノカルボニル、2−エチルヘキシルアミノカルボニル、ドデシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、ナフチルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等の各基)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、オクチルウレイド、ドデシルウレイド、フェニルウレイド、ナフチルウレイド、2−ピリジルアミノウレイド等の各基)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル、2−ピリジルスルフィニル等の各基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル等の各基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等の各基)、アミノ基(例えば、アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ等の各基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等の各原子)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル等の各基)、シアノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジエチルシリル等の各基)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によってさらに置換されていてもよく、また、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。好ましい置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキル基で置換されたアミノ基、アルキルカルバモイル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数5以上、20以下のアルキル基、もしくは同じ範囲の原子数を有する直鎖状アルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数5以上、10以下の直鎖アルキル基である。
本発明においては、Rとして、水素原子又はアルキル基が好ましい。
1は、Rと同義である。
分子構造中に前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなる有機半導体材料は、化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を分子構造中に少なくとも1個有すればよい。本発明においては、分子構造中に前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなる有機半導体材料としては、好ましくはポリマー又はオリゴマーである。特に好ましくはポリマーである。
ポリマーとしては、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基Dを0〜10個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーからなる有機半導体材料が好ましい。ポリマーの分子量としては、特に制限はないが、概ね5,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは20,000〜80,000である。本発明においては、分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した質量平均分子量(Mw)である。なお、GPCによる分子量の測定は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
モノマーセグメント中のDは二価結合基であるが、飽和部分又は不飽和部分を含む。飽和部分としては、アルキレン基、−O−R2−O−、−S−R2−S−、−NH−R2−NH−(式中、R2はアルキレン基又はアリーレン基である)等が挙げられる。また、不飽和部分としては、アリーレン又はヘテロ芳香族等が挙げられる。Dとして、特に好ましい基はπ電子共役系が広がったものであり、例えば、それぞれ置換基を有してもよい2,5−チエニレン、フェニレン、ビフェニレン、カルバゾールジイル、ジベンゾフランジイル、ジベンゾチオフェンジイル、フェナントレニレン、N−エチレンカルバゾール、アントラセンジイル等を挙げることができる。以下に代表的な例を挙げるが、これらに限定されない。
Figure 2005223238
モノマーセグメント中の前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位の数と二価結合基Dの数の割合は、前記記載の範囲であれば特に制限はない。しかしながら、本発明の効果をより発揮するという観点から、モノマーセグメント中において、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位の数は30%以上であることが好ましい。最も好ましい態様としては、二価結合基Dの数がゼロ、すなわち、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位からなるポリマーである。この場合、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位は、同じ単位であっても、異なる単位であってもよい。
オリゴマーとしては、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1を0〜10個(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)有する有機半導体材料が好ましい。本発明におけるオリゴマーとは、繰り返し単位の数が2以上20以下であり、分子量が概ね5,000未満であるような重合体をいう。ここでの分子量は、前記ポリマーと同様に、GPCで測定した質量平均分子量(Mw)である。
オリゴマーにおける前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位は、繰り返し単位の中に含まれるものが好ましいが、繰り返し単位に含まれず末端基として存在してもよい。この場合、前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環は一価の基となるので、含窒素ヘテロ環の2位又は5位は水素原子又は一価の置換基となる。一価の置換基としては前記Rにおける基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。そして、このように前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位が末端基となるオリゴマーの場合は、D1で表される二価結合基が繰り返し単位となる。
二価結合基D1としては、前記Dで説明した各基が挙げられる。また、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、前記Dで説明した各基を一価としたものであり、例えば、フェニレン基のようなアリーレン基であれば、フェニル基のようなアリール基となる。
以下に、本発明の有機半導体材料となる化合物を例示するが、これらに限定されるものでない。
Figure 2005223238
Figure 2005223238
Figure 2005223238
Figure 2005223238
Figure 2005223238
Figure 2005223238
本発明の有機半導体材料となる化合物は、オキサゾール環やイミダゾール環を含むオリゴマーやポリマーあるいは環状π電子共役系高分子化合物に常用の合成法を使用して有利に調製することができる。以下に、合成例の一例を示すが、その他の化合物についても同様な合成手法により得ることができる。
(合成例)
合成例1(化合物1−3の合成)
窒素雰囲気下、Rieke Zinc(アルドリッチ社製、5g/100ml)のテトラヒドロフラン溶液14.4ml(11mmol)に、撹拌下に化合物1−3a(Org.Lett.,4,17,2002,2905〜2908に記載の化合物)3.0g(10mmol)のテトラヒドロフラン溶液20mlを滴下し、室温で1時間撹拌した。次に、塩化1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンニッケル(II)(NiCl2(dppe)と略す)0.05g(0.1mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液20mlをゆっくりと添加し、反応混合物を60℃で3時間加熱後、2mol/Lの塩酸−メタノール溶液中に注いだ。沈殿物をろ過し、加温したテトラヒドロフランに再溶解し、2mol/Lのアンモニア−メタノール溶液に注ぎ、再沈殿させた。この操作を2回繰り返し、真空中、室温で一晩乾燥した。得られた沈殿物のGPC測定による質量平均分子量(Mw)は33,000であり、スペクトル特性は、目的物と一致したことを確認した。
原料の化合物である化合物1−3aの構造式と及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
合成例2(化合物1−16の合成)
化合物1−16a(Macromolecules,36,4,2003,1047〜1053に記載の化合物)4.6g(10mmol)及び化合物1−16b(ランカスター試薬)3.0g(10mmol)をトルエン(80ml)に溶解し、窒素雰囲気下においてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.15g、Aliqart336(アルドリッチ試薬)2.0gのトルエン溶液20ml、及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液30mlを加えた。この混合液を激しく撹拌し48時間加熱還流した。粘稠な反応液をメタノール500mlに注ぎ沈殿物を得た。この沈殿物をろ過し、トルエンを用いたソックスレー抽出で精製し、メタノールから再沈殿させ、真空オーブンにて60℃で一晩乾燥させた。得られた沈殿物のGPC測定による質量平均分子量(Mw)は28,000であり、スペクトル特性は目的物と一致したことを確認した。
原料の化合物である化合物1−16aの構造式及び化合物1−16bの構造式、並びに上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
合成例3(化合物2−1の合成)
化合物2−1bの合成
窒素雰囲気下で200ml3つ口フラスコに化合物2−1a(Zh.Obshch.Khim.,32,1962,2348−2353記載化合物の類似体)1.81g(10mmol)のテトラヒドロフラン60mlを添加し、−70℃以下に冷却した。次に、リチウムジイソプロピルアミド(LDAと略す)(2.0mol/Lヘプタン/テトラヒドロフラン/エチルベンゼン混合溶液)5.5ml(11mmol)を滴下し、同温度で2時間撹拌した。次いで、ホウ酸トリメチル((CH3O)3B)2.20g(21mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mlを滴下し、同温度で2時間撹拌し、さらに室温で2時間撹拌した。その後、濃塩酸5mlを添加し、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をエタノールで再結晶し、白色結晶1.80gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
原料の化合物である化合物2−1aの構造式及び化合物2−1bの構造式、並びに上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1cの合成
100ml3つ口フラスコに化合物2−1a1.81g(10mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)1.80g(10mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.50gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−1cの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1dの合成
200ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.20g及び化合物2−1b1.80g(8.0mmol)を加え系内を窒素置換した。さらに、テトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−1c2.10g(8.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.30gを得た。
100ml3つ口フラスコに前記白色固体2.30g(6.4mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)1.10g(6.4mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.50gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−1dの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1eの合成
200ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.20g及び化合物2−1d2.50g(5.7mmol)を加え系内を窒素置換した。さらに、テトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−1b1.30g(5.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.50gを得た。
100ml3つ口フラスコに前記白色固体2.50g(4.6mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)0.80g(4.6mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.60gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−1eの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1fの合成
200ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.20g及び化合物2−1e2.60g(4.2mmol)を加え系内を窒素置換した。さらにテトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−1b0.95g(4.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.40gを得た。
100ml3つ口フラスコに前記白色固体2.40g(3.3mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)0.60g(3.3mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.40gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−1fの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1gの合成
200ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.20g及び化合物2−1f2.40g(3.0mmol)を加え系内を窒素置換した。さらにテトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−1b0.68g(3.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色固体2.10gを得た。
100ml3つ口フラスコに前記淡黄色固体2.10g(2.3mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)0.42g(2.3mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色固体2.00gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−1gの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−1の合成
200ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.20g及び化合物2−1g2.00g(2.0mmol)を加え系内を窒素置換した。さらにテトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−1b0.46g(2.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色固体1.76gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
合成例4(化合物2−9の合成)
化合物2−9bの合成
500ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.50g及び化合物2−9a(Macromolecules,36,4,2003,1047−1053記載化合物)9.1g(20.0mmol)を加え系内を窒素置換した。さらにテトラヒドロフラン200mlを添加し、撹拌下、4−ビフェニルボロン酸(アルドリッチ社製試薬)4.0g(20.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液50ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液50mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体5.20gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
原料の化合物である化合物2−9aの構造式及び化合物2−9bの構造式、並びに上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
化合物2−9の合成
500ml3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.50g及び化合物2−9b5.20g(9.8mmol)を加え系内を窒素置換した。さらにテトラヒドロフラン200mlを添加し、撹拌下、4,4’−ビフェニルジボロン酸(ランカスター社試薬)1.00g(4.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液20ml及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液20mlを添加し48時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、橙色固体2.10gを得た。1H−NMR及びmassスペクトルで目的物と一致したことを確認した。
上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005223238
本発明の有機半導体材料は、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタにおける半導体層に用いることにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができる。
電界効果有機薄膜トランジスタは、支持体上に半導体層からなるチャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。本発明においては、いずれの型においても好適に適用できる。
本発明の有機半導体材料を半導体層からなるチャネルに設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできる。また、適切な有機溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液を、キャストコート法、スピンコート法などにより塗布した後、必要に応じてアブレーション法などを適用してパターニングすること、印刷法、インクジェット法などにより直接パターニングしながら基板上に設置することもできる。本発明においては、有機溶剤に溶解して形成する方法が好ましい。この場合、本発明の有機半導体材料を溶解する有機溶剤としては、適切な濃度の有機半導体溶液を調製できるものであれば、任意の有機溶剤を用いることができる。具体的には、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、二硫化炭素等を挙げることができる。
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。ドーピング等で導電性を向上させた導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、フォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写法やインクジェット法等によりレジスト層を形成した後にエッチングして電極を形成する方法、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液ないしは導電性微粒子分散液をインクジェット法によりパターニングして電極を形成する方法などがある。また、塗工膜からフォトリソグラフ法やレーザーアブレーション法などにより電極を形成してもよい。その他に、導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインクないしは導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングして電極を形成する方法もある。
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいものは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。また、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
無機酸化物皮膜の形成方法としてドライプロセスとウェットプロセスがある。本発明においては、いずれの方法でもよい。ドライプロセスとしては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などがある。ウェットプロセスとしては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷法やインクジェット法などのパターニングによる方法などがある。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
本発明においては、ドライプロセスとしては大気圧下でのプラズマ製膜処理(大気圧プラズマ法ともいう)が好ましく、ウェットプロセスとしてはゾルゲル法が好ましい。
大気圧プラズマ法による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法である。代表的は大気圧プラズマ法については、特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている。大気圧プラズマ法を採用することによって、高機能性の絶縁膜を生産性高く形成することができる。
有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。有機化合物皮膜の形成方法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は、積層して併用することができる。また、これら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
支持体としては、ガラスやフレキシブルな樹脂シートで構成することができる。フレキシブルな樹脂シートとしては、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
さらにこれらのプラスチックフィルムには、トリオクチルホスフェートやジブチルフタレート等の可塑剤を添加してもよく、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。また、テトラエトキシシラン等の無機高分子の原料を添加し、化学触媒や熱、光等のエネルギーを付与することにより高分子量化する、いわゆる有機−無機ポリマーハイブリッド法を適用して作製した樹脂を原料として用いることもできる。
以下に、ゲート電極、ゲート絶縁層、本発明に係わる有機半導体材料を用いた半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタについて説明する。
図1は、本発明の有機半導体材料を、半導体層からなるチャネルに用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す図である。図1(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2、ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成し、その上にゲート絶縁層5を形成し、さらにその上にゲート電極4を形成して電界効果トランジスタを形成したものである。
図1(b)は、本発明の有機半導体材料からなる半導体層1を、コート法等を用いてソース電極2及びドレイン電極3並びに支持体6の表面全体を覆うように形成したものである。
図1(c)は、支持体6上にコート法等を用いて、本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成し、その後にソース電極2、ドレイン電極3、ゲート絶縁層5、ゲート電極4を形成したものである。
図1(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2及びドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成したものである。その他、図1(e)、図1(f)に示すような構成を取ることもできる。
以上のように構成された電界効果有機薄膜トランジスタについて、その動作を説明する。ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極4、本発明の有機半導体材料からなるチャネル1に挟まれたゲート絶縁層は、コンデンサと同様に、印加した電圧によって両側に電荷を生じる。ゲート電圧によってチャネル1における本発明の有機半導体材料中に誘起されたキャリアは、ソース・ドレインの電圧によって、ドレイン電流となって流れる。
ここで、有機半導体材料がp型であれば正孔(ホール)が励起され、n型であれば電子が励起される。
本発明の有機半導体材料はキャリア移動度が高いので、電界効果トランジスタのドレイン電流が大きい。また、経時劣化も小さいことから長期間の保存にも耐える電界効果トランジスタが得られる。また、本発明に係る電界効果トランジスタはスイッチング素子として有用であり、近年注目されている電子ペーパーなどに容易に適用することができる。
(実施例1)
ゲート電極としての抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000オングストロームの熱酸化膜(SiO2)を形成してゲート絶縁層とした後、オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行った。オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行ったゲート絶縁層上に、比較の有機半導体であるポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、質量平均分子量89000)(以下、比較有機半導体1という)のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することにより有機半導体膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施し、有機半導体層からなるチャネルを形成した。
次いで、このチャネルの表面にマスクを用いて金を蒸着してソース電極及びドレイン電極を形成した。このようにして、ソース電極及びドレイン電極が、それぞれ幅100μm、厚さ200nm、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの挙げ有機薄膜トランジスタ(比較試料1)を作製した。
比較有機半導体1を比較有機半導体2(米国特許公開第2003/0164495号明細書例示化合物3)に代えた以外は、上記の比較試料1と同様の方法で、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料2)を作製した。
Figure 2005223238
また、比較有機半導体1を表1に示した本発明の例示化合物に代えた以外は、比較試料1と同様の方法で、本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ(本発明試料1〜4)を作製した。
以上のようにして作製した電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料1〜2、本発明試料1〜4)ついて、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求めた。半導体材料のキャリア移動度の算出は、「半導体デバイス物理特性及び技術」(Sze、S.M.,pp.30−35,200−207(1985))に記載されている。また、電界効果トランジスタの特性である電流ON/OFF比を求めた。これは、ゲート電圧がドレイン電圧と等しいかそれ以上であるときの飽和ソースドレイン電流と、ゲート電圧がゼロのときのソースドレイン電流との比である。ここでは、ドレイン電圧を−50Vとし、ゲート電圧を−50V及び0Vとした。さらに、各試料(比較試料1〜2、本発明試料1〜4)を大気中で1ヶ月放置し、再度、キャリア移動度とON/OFF比を求めた。電流−電圧特性は、Agilent 4145B 半導体パラメータ・アナライザ(Agilent Technologies社製)を用いて得た。
結果を表1に示す。
Figure 2005223238
比較試料1及び本発明試料1〜4は、pチャネルのエンハンスメント型電界効果トランジスタの動作特性を示した。表1の結果から明らかなように、本発明試料は、キャリア移動度及び電流ON/OFF比が比較試料に比べて大きい。さらには、1ヶ月経過後であっても、本発明試料は、試料作製直後において得られた性能をほぼ維持しており、経時劣化が大幅に改善されていることが確認された。
(実施例2)
実施例1における比較試料1において、比較有機半導体1に代えて、比較有機半導体3(ペンタセン;アルドリッチ社製の市販試薬を昇華精製したもの)を用いた以外は、比較試料1と同様の方法で、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料3)を作製した。
Figure 2005223238
また、比較有機半導体3を表2に示した本発明の例示化合物に代えた以外は、比較試料3と同様の方法で、本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ(本発明試料5〜8)を作製した。
以上のようにして作製した電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料3、本発明試料5〜8)について、実施例1と同様にして試料作成直後及び大気中で1ヶ月放置のキャリア移動度と電流ON/OFF比を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 2005223238
本発明試料5〜8は、pチャネルのエンハンスメント型電界効果トランジスタの動作特性を示した。また、本発明試料は、キャリア移動度及び電流ON/OFF比が比較試料に比べて大きい。さらには、1ヶ月経過後であっても、本発明試料は、試料作製直後において得られた性能をほぼ維持しており、経時劣化が大幅に改善されていることが確認された。
本発明の有機半導体材料を、半導体層からなるチャネルに用いた電界効果有機薄膜トランジスタの概略構成例を示す図である。
符号の説明
1 チャネル
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
6 支持体

Claims (6)

  1. 分子構造中に下記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を有する化合物からなる有機半導体材料。
    Figure 2005223238
    式中、Rは水素原子又は置換基を表し、Xは−O−又は−N(R1)−(R1は水素原子又は置換基を表す)を表す。
  2. 前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基Dを0〜10個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーからなる有機半導体材料。
  3. 前記化学式(1)で表される含窒素ヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜10個有するオリゴマーからなる有機半導体材料。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
  5. ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果薄膜トランジスタであって、前記半導体層として請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする電界効果有機薄膜トランジスタ。
  6. 請求項4記載の有機薄膜トランジスタ又は請求項5記載の電界効果有機薄膜トランジスタを用いたスイッチング素子。
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