JP2005260212A - 有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びにそれらを用いたスイッチング素子 - Google Patents

有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びにそれらを用いたスイッチング素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供し、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果有機薄膜トランジスタを提供すると共に、スイッチング素子への利用の道を開くこと。
【解決手段】 分子構造中に下記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
Figure 2005260212

【選択図】なし

Description

本発明は、有機半導体材料及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタ並びに有機薄膜トランジスタ、電界効果有機薄膜トランジスタを用いたスイッチング素子に関する。
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用ディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、情報化の進展に伴い、これまで紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増えつつある。薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
平板型のディスプレイ装置は、液晶、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、このような表示媒体は、画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するため、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)を利用したアクティブ駆動素子が主流になっている。例えば、コンピュータディスプレイは、一般にガラス基板上にTFTを用いたアクティブ駆動素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
近年、高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。特に、有機半導体材料をチャネル部分に用いた電界効果トランジスタは、容易に大面積を得られるディスプレイなどの駆動用として期待されている。
有機半導体材料は、有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、有機レーザー発振素子(例えば、非特許文献1参照。)や、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタへの応用が期待されている(例えば、非特許文献2参照等)。
有機半導体材料として、これまでに検討されてきたものとしては、以下のような文献を挙げることができる。例えば、ペンタセンやテトラセンといったアセン類が開示されているもの(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物が開示されているもの(例えば、特許文献2参照。)、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマーや、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物が開示されているもの(例えば、特許文献3、非特許文献3参照。)等が挙げられる。
しかしながら、これらの化合物は、実用化という観点に立つとキャリア移動度が十分高くないという問題がある。したがって、高いキャリア移動度を示す新規な有機半導体材料の開発が待望されている。
環境酸素によるドーピングを起こしにくく、溶液処理によって経済的に加工可能な有機半導体材料を用いたTFT等のエレクトロニックデバイスを提供するもの(例えば、特許文献4参照。)や、有機半導体材料として、2,5−チエニレンから誘導されるポリチオフェンが開示されているものがある(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、開示されているポリチオフェンは、酸素に対する耐候性が十分とは言えず、時間経過により電流オン/オフ比特性が低下するといった問題がある。
また、合成するのが容易であり、高い電荷可動性、良好な加工性および改善された酸化安定性を有する、半導体または電荷移動物質としてジチエノピリジン環を有する化合物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)ものがある。
しかし、ポリチオフェンと同様に、酸素に対する耐候性は十分とは言えず、時間経過により電流オン/オフ比特性が低下するといった問題点があった。
また、上記特許文献等に記載されている有機半導体材料は、いずれもキャリア移動度が十分ではなく、有機半導体材料を電界効果有機薄膜トランジスタのチャネル層に用いてもドレイン電流を増大させることができない。また、時間経過によりキャリア移動度や電流ON/OFF比特性といった特性が低下する傾向(経時劣化)が認められ、改良の余地がある。
特開平5−55568号公報 特開平5−190877号公報 特開平8−264805号公報 特開2003−292588号公報 特開2003−155289号公報 「サイエンス」(Science)誌289巻599ページ(2000) 「ネイチャー」(Nature)誌403巻521ページ(2000) 「アドバンスド マテリアル」(Advanced Material)誌2002年第2号99ページ
本発明はこのような問題点に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供し、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果トランジスタを提供すると共に、スイッチング特性の良好なスイッチング素子を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の構成1〜15により達成された。
(請求項1)
分子構造中に下記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
Figure 2005260212
〔式中、A1及びA2は、各々置換基を有してもよい炭素原子、窒素原子、硫黄原子または酸素原子を表し、A3、A4及びA5は、各々置換基を有してもよい炭素原子または窒素原子を表す。〕
(請求項2)
前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項3)
前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項4)
分子構造中に下記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
Figure 2005260212
〔式中、A6、A7、A8及びA9は、各々−N=または−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)を表し、A10は−S−、−O−または−N(R2)−(R2は水素原子または置換基を表す)を表す。〕
(請求項5)
前記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項6)
前記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項7)
前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位が、置換基を有してもよいベンゾチオフェン環であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
(請求項8)
前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物が、下記一般式(5)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
一般式(5)
A−B−R
〔式中、Aは、複素環基または芳香族複素環基を表し、Bは、ヘテロアリーレン基を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。〕
(請求項9)
前記複素環基が、ベンゾチエニル基であることを特徴とする請求項8に記載の有機半導体材料。
(請求項10)
分子構造中に下記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
Figure 2005260212
〔式中、A11及びA12は、各々−O−、−S−または−N(R3)−(R3は水素原子または置換基を表す)を表す。〕
(請求項11)
前記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項12)
前記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
(請求項13)
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
(請求項14)
ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタであって、前記半導体層として請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする電界効果有機薄膜トランジスタ。
(請求項15)
請求項13に記載の有機薄膜トランジスタまたは請求項14に記載の電界効果有機薄膜トランジスタを用いることを特徴とするスイッチング素子。
本発明により、高いキャリア移動度を有し、その経時劣化が改良された有機半導体材料を提供し、電流ON/OFF比特性が大きく、経時劣化が改善された電界効果トランジスタを提供すると共に、スイッチング特性の良好なスイッチング素子を提供することができた。
本発明の有機TFT材料においては、請求項1〜12のいずれか1項に規定される構成により、薄膜トランジスタ用途に有用な有機半導体材料を得ることが出来た。また、該有機半導体材料を用いて作製した有機薄膜トランジスタ(以下、有機TFTともいう)、電界効果トランジスタは、キャリア移動度が高く、良好なON/OFF特性を示す等、優れたトランジスタ特性を示しながら、且つ、高耐久性であることがわかった。
更に、該有機TFTまたは該電界効果トランジスタを用いて作製されたスイッチング素子は良好なスイッチング特性を示すことが判った。
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
《一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物》
本発明の有機半導体材料は、分子構造中に下記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含有するものである。
Figure 2005260212
式中、A1及びA2は、各々置換基を有してもよい炭素原子、窒素原子、硫黄原子または酸素原子を表し、A3、A4及びA5は、各々置換基を有してもよい炭素原子または窒素原子を表す。
本発明においては、前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位としては、下記一般式(2)〜(4)のいずれか一つで表されるヘテロ環単位が好ましい。また、一般式(1)、(2)または(3)のいずれか一つで表されるヘテロ環単位としては、ベンゾチオフェン環が好ましい。前記ベンゾチオフェン環は、後述する置換基を有していてもよい。
Figure 2005260212
一般式(2)及び(3)においては、A6、A7、A8及びA9は、各々−N=または−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)を表し、A10は−S−、−O−または−N(R2)−(R2は水素原子または置換基を表す)を表す。又、一般式(4)においては、A11及びA12は、各々−O−、−S−または−N(R3)−(R3は水素原子または置換基を表す)を表す。
本発明の有機半導体材料としては、一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を有する化合物が好ましい。また、一般式(2)または(3)において、A7、A8及びA9が−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)であり、A6が−N=または−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)であり、A10が−S−、−O−または−N(R2)−(R2は水素原子または置換基を表す)の場合が好ましい。より好ましくは、A6、A7、A8及びA9が−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)であり、A10が−S−、−O−または−N(R2)−(R2は水素原子または置換基を表す)の場合である。
前記R1、R2及びR3で表される置換基としては、置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、等が挙げられる。
これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましい置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキル基で置換されたアミノ基、アルキルカルバモイル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数5以上、20以下のアルキル基、もしくは同じ範囲の原子数を有する直鎖状アルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数5以上、10以下の直鎖アルキル基である。中でも、本発明では、R1、R2及びR3としては、水素原子またはアルキル基が好ましい。
以下に一般式(2)〜(4)で表されるヘテロ環単位の代表的な構造例を示す。
Figure 2005260212
分子構造中に前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位(具体的には前記一般式(2)〜(4)で表されるヘテロ環単位)(以下、特に断りのない限り、本発明に係るヘテロ環単位という)を有する化合物は、本発明に係るヘテロ環単位を分子構造中に少なくとも1個有すればよい。本発明においては、分子構造中に本発明に係るヘテロ環単位を有する化合物は、好ましくはポリマーまたはオリゴマーであり、特に好ましくはポリマーである。
ポリマーとしては、本発明に係るヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーが好ましい。
ポリマーの分子量としては、5,000〜200,000の範囲が好ましく、更に好ましくは10,000〜100,000の範囲であり、特に好ましくは20,000〜80,000の範囲である。
本発明においては、分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)である。なお、GPCによる分子量の測定は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
モノマーセグメント中のDは二価結合基であるが、飽和部分または不飽和部分を含む。飽和部分としては、アルキレン基、−O−X−O−、−S−X−S−、−NH−X−NH−(式中、Xはアルキレン基またはアリーレン基である)等が挙げられる。また、不飽和部分としては、アリーレンまたはヘテロ芳香族等が挙げられる。Dとして、特に好ましい基はπ電子共役系が広がったものであり、例えば、各々置換基を有してもよい2,5−チエニレン、フェニレン、ビフェニレン、カルバゾールジイル、ジベンゾフランジイル、ジベンゾチオフェンジイル、フェナントレニレン、N−エチレンカルバゾール、アントラセンジイル等を挙げることができる。
以下に代表的な例を挙げるが、これらに限定されない。
Figure 2005260212
モノマーセグメント中の本発明に係るヘテロ環単位の数と二価結合基Dの数の割合は、前記記載の範囲であれば特に制限はない。しかしながら、本発明の効果をより発揮するという観点から、モノマーセグメント中において、本発明に係るヘテロ環単位の数は30%以上であることが好ましい。最も好ましい態様としては、二価結合基Dの数がゼロ、すなわち、本発明に係るヘテロ環単位からなるポリマーである。この場合、本発明に係るヘテロ環単位は、同じ単位であっても、異なる単位であってもよい。
オリゴマーとしては、本発明に係るヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1を0〜5個(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)有する有機半導体材料が好ましい。本発明におけるオリゴマーとは、繰り返し単位の数が2以上20以下であり、分子量が5,000未満であるものを示す。
上記の分子量は、前記ポリマーと同様に、GPC測定から得られる重量平均分子量(Mw)である。
オリゴマーにおけるヘテロ環単位は、繰り返し単位の中に含まれるものが好ましいが、繰り返し単位に含まれず末端基として存在してもよい。この場合、本発明に係るヘテロ環は一価の基となるので、ヘテロ環の2位または4位は水素原子または一価の置換基となる。一価の置換基としては前記R1における基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。そして、このように本発明に係るヘテロ環単位が末端基となるオリゴマーの場合は、D1で表される二価結合基が繰り返し単位となる。
二価結合基D1としては、前記Dで説明した各基が挙げられる。また、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、前記Dで説明した各基を一価としたものであり、例えば、フェニレン基のようなアリーレン基であれば、フェニル基のようなアリール基となる。
以下に、本発明の有機半導体材料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005260212
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更に、本発明の有機半導体材料に係る、前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物の好ましい態様としては、前記一般式(5)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
以下、一般式(5)で表される部分構造を有する化合物について説明する。
《一般式(5)で表される部分構造を有する化合物》
一般式(5)
A−B−R
一般式(5)において、Aで表される複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等が挙げられる。
一般式(5)において、Aで表される芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)等が挙げられる。
本発明では、一般式(5)で表される部分構造としては、芳香族複素環基が好ましく、中でも、ベンゾチエニル基が好ましい。
上記の基はいずれも、前記R1、R2及びR3で表される置換基として挙げられた各基を更に有していてもよい。
一般式(5)において、Bで表されるヘテロアリーレン基としては、例えば、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリン環ともいい、カルボリン環を構成する炭素原子のひとつが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される2価の基等が挙げられる。
これらのヘテロアリーレン基は、更に、前記R1、R2及びR3で表される置換基として挙げられた各基を更に有していてもよい。
一般式(5)において、Rで表される置換基は、前記R1、R2及びR3で表される置換基と同義である。
以下、一般式(5)で表される部分構造を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005260212
Figure 2005260212
本発明の有機半導体材料となる化合物は、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾ[1,3]ジチオール環、ベンゾ[1,3]ジオキソール環、ジヒドロベンゾイミダゾール環、チエノピリジン環、フロピリジン環、イミダゾピラジン環などを含むオリゴマーやポリマーあるいは環状π電子共役系高分子化合物に常用の合成法を参照して合成できる。
以下に、合成例の一例を示すが、その他の化合物についても同様な合成手法により得ることができる。
《合成例》
合成例1(化合物1−2の合成)
窒素雰囲気下、Rieke Zinc(アルドリッチ社製、5g/100ml)のテトラヒドロフラン溶液14.4ml(11mmol)に、撹拌下に化合物1−2a(Heterocycles,23,9,1985,2391−2400記載化合物)3.1g(10mmol)のテトラヒドロフラン溶液20mlを滴下し、室温で1時間撹拌した。次に、塩化1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンニッケル(II)(NiCl2(dppe)と略す)0.05g(0.1mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液20mlをゆっくりと添加し、反応混合物を60℃で3時間過熱後、2mol/Lの塩酸−メタノール溶液中に注いだ。沈殿物をろ過し、加温したテトラヒドロフランに再溶解し、2mol/lのアンモニア−メタノール溶液に注ぎ再沈殿させた。この操作を2回繰り返し、真空中、室温で一晩乾燥した。得られた沈殿物のGPC測定による分子量は43000であり、スペクトル特性、目的物の構造と一致した。
原料の化合物である化合物1−2aの構造式と上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
合成例2(化合物2−2の合成)
スキーム1(化合物2−2bの合成)
窒素雰囲気下で200mlの3つ口フラスコに化合物2−2a(Pharm.Pharmacol.Commun.,6,2,2000,61−66記載化合物)2.3g(10mmol)のテトラヒドロフラン60mlを添加し、−70℃以下に冷却した。次に、n−ブチルリチウム(1.5mol/lヘキサン溶液)7.4ml(11mmol)を滴下し、同温度で2時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル2.2g(21mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mlを滴下し、同温度で2時間撹拌した。さらに、室温で2時間撹拌し、その後濃塩酸5mlを添加し、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をエタノールで再結晶し、白色結晶1.5gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
原料の化合物である化合物2−2aの構造式と化合物2−2bの構造式、及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
スキーム2(化合物2−2dの合成)
200mlの3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.2g及び化合物2−2b1.5g(7.8mmol)を加え系内を窒素置換した。さらに、テトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−2c(J.Amer.Chem.Soc.,74,1952,2185−2187記載化合物)1.8g(7.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.0gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−2c及び化合物2−2dの構造式、及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
スキーム3(化合物2−2eの合成)
100mlの3つ口フラスコに化合物2−2d2.0g(6.8mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)1.2g(6.8mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体2.4gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−2eの構造式、及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
スキーム4(化合物2−2fの合成)
200mlの3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.2g及び化合物(2−2b)1.2g(6.4mmol)を加え系内を窒素置換した。さらに、テトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物2−2e2.4g(6.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液10ml及び2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色固体2.5gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−2fの構造式、及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
スキーム5(化合物2−2gの合成)
100mlの3つ口フラスコに化合物(2−2f)2.5g(5.7mmol)及びクロロホルム50mlを添加し、反応系を5℃以下まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(NBSと略す)1.0g(5.7mmol)を少量ずつ添加した。添加終了後、室温で1時間撹拌し、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色固体2.5gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
化合物2−2gの構造式、及び上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
スキーム6(目的化合物2−2の合成)
200mlの3つ口フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34と略す)0.2g及び化合物(2−2b)0.92g(4.8mmol)を加え系内を窒素置換した。さらに、テトラヒドロフラン40mlを添加し、撹拌下、化合物(2−2e)2.5g(4.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液20ml及び2mol/lの炭酸ナトリウム水溶液10mlを添加し、10時間加熱還流した。反応終了後、室温にてケイソウ土ろ過を行い、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色固体2.0gを得た。1H−NMR及び質量スペクトルで目的物と一致したことを確認した。
上記の反応スキームを下記に示す。
Figure 2005260212
本発明の有機半導体材料は、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタの半導体層に用いることにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができた。
電界効果有機薄膜トランジスタは、支持体上に半導体層からなるチャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。本発明においては、いずれの型においても好適に適用できる。
本発明の有機半導体材料を半導体層からなるチャネルに設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできる。また、適切な有機溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液を、キャストコート法、スピンコート法などにより塗布した後、必要に応じてアブレーション法などを適用してパターニングすること、印刷法、インクジェット法などにより直接パターニングしながら基板上に設置することもできる。本発明においては、有機溶剤に溶解して形成する方法が好ましい。この場合、本発明の有機半導体材料を溶解する有機溶剤としては、適切な濃度の有機半導体溶液を調製できるものであれば、任意の有機溶剤を用いることができる。具体的には、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、二硫化炭素等を挙げることができる。
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。ドーピング等で導電性を向上させた導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、フォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写法やインクジェット法等によりレジスト層を形成した後にエッチングして電極を形成する方法、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液ないしは導電性微粒子分散液をインクジェット法によりパターニングして電極を形成する方法などがある。また、塗工膜からフォトリソグラフ法やレーザーアブレーション法などにより電極を形成してもよい。その他に、導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインクないしは導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングして電極を形成する方法もある。
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいものは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。また、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
無機酸化物皮膜の形成方法としてドライプロセスとウェットプロセスがある。本発明においては、いずれの方法でもよい。ドライプロセスとしては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などがある。ウェットプロセスとしては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷法やインクジェット法などのパターニングによる方法などがある。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
本発明においては、ドライプロセスとしては大気圧下でのプラズマ製膜処理(大気圧プラズマ法ともいう)が好ましく、ウェットプロセスとしてはゾルゲル法が好ましい。
大気圧プラズマ法による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法である。代表的は大気圧プラズマ法については、特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている。大気圧プラズマ法を採用することによって、高機能性の絶縁膜を生産性高く形成することができる。
有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。有機化合物皮膜の形成方法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は、積層して併用することができる。また、これら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
支持体としては、ガラスやフレキシブルな樹脂シートで構成することができる。フレキシブルな樹脂シートとしては、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
さらにこれらのプラスチックフィルムには、トリオクチルホスフェートやジブチルフタレート等の可塑剤を添加してもよく、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。また、テトラエトキシシラン等の無機高分子の原料を添加し、化学触媒や熱、光等のエネルギーを付与することにより高分子量化する、いわゆる有機−無機ポリマーハイブリッド法を適用して作製した樹脂を原料として用いることもできる。
以下に、ゲート電極、ゲート絶縁層、本発明に係わる有機半導体材料を用いた半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタについて説明する。
図1は、本発明の有機半導体材料を、半導体層からなるチャネルに用いた電界効果トランジスタの概略構成例を示す図である。図1(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2、ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成し、その上にゲート絶縁層5を形成し、さらにその上にゲート電極4を形成して電界効果トランジスタを形成したものである。
図1(b)は、本発明の有機半導体材料からなる半導体層1を、コート法等を用いてソース電極2及びドレイン電極3並びに支持体6の表面全体を覆うように形成したものである。
図1(c)は、支持体6上にコート法等を用いて、本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成し、その後にソース電極2、ドレイン電極3、ゲート絶縁層5、ゲート電極4を形成したものである。
図1(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2及びドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機半導体材料からなるチャネル1を形成したものである。その他、図1(e)、図1(f)に示すような構成を取ることもできる。
以上のように構成された電界効果有機薄膜トランジスタについて、その動作を説明する。ソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極4、本発明の有機半導体材料からなるチャネル1に挟まれたゲート絶縁層は、コンデンサと同様に、印加した電圧によって両側に電荷を生じる。ゲート電圧によってチャネル1における本発明の有機半導体材料中に誘起されたキャリアは、ソース・ドレインの電圧によって、ドレイン電流となって流れる。
ここで、有機半導体材料がp型であれば正孔(ホール)が励起され、n型であれば電子が励起される。
本発明の有機半導体材料はキャリア移動度が高いので、電界効果トランジスタのドレイン電流が大きい。また、経時劣化も小さいことから長期間の保存にも耐える電界効果トランジスタが得られる。また、本発明に係る電界効果トランジスタはスイッチング素子として有用であり、近年注目されている電子ペーパーなどに容易に適用することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1の作製》
ゲート電極としての比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000オングストロームの熱酸化膜(SiO2)を形成してゲート絶縁層とした後、オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行った。オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行ったゲート絶縁層上に、比較の有機半導体材料として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regio regular、アルドリッチ社製、重量平均分子量89000)(以下、比較有機半導体1という)のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することにより有機半導体膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施し、有機半導体層からなるチャネルを形成した。
次いで、このチャネルの表面にマスクを用いて金を蒸着してソース電極及びドレイン電極を形成した。このようにして、ソース電極及びドレイン電極が、各々幅100μm、厚さ200nm、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料1)を作製した。
《比較の電界効果有機薄膜トランジスタ2の作製》
上記の電界効果有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較有機半導体1を比較有機半導体2(米国特許出願公開第2003/0164495号明細書に記載の例示化合物3)に変更した以外は同様にして、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ2(比較試料2ともいう)を作製した。
Figure 2005260212
《本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ1〜4の作製》
比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較有機半導体1を表1に記載の有機半導体材料(化合物)に変更した以外は、比較試料1と同様の方法で、本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ1〜4(本発明試料1〜4)を作製した。
《電界効果有機薄膜トランジスタの評価》
以上のようにして作製した電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料1〜2、本発明試料1〜4)ついて、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求めた。半導体材料のキャリア移動度の算出は、「半導体デバイス物理特性及び技術」(Sze、S.M.,pp.30−35,200−207(1985))に記載されている。また、電界効果トランジスタの特性である電流ON/OFF比を求めた。これは、ゲート電圧がドレイン電圧と等しいかそれ以上であるときの飽和ソースドレイン電流と、ゲート電圧がゼロのときのソースドレイン電流との比である。ここでは、ドレイン電圧を−50Vとし、ゲート電圧を−50V及び0Vとした。
更に、各試料(比較試料1〜2、本発明試料1〜4)を大気中で1ヶ月放置し、再度、キャリア移動度とON/OFF比を求めた。電流−電圧特性は、Agilent 4145B 半導体パラメータ・アナライザ(Agilent Technologies社製)を用いて得た。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2005260212
比較の試料に比べて、本発明の試料は、pチャネルのエンハンスメント型電界効果トランジスタの動作特性を示した。また、表1から、本発明試料は、キャリア移動度及び電流ON/OFF比が良好であることが判る。更に、1ヶ月経過後であっても、本発明試料は、試料作製直後において得られた性能をほぼ維持しており、経時劣化が大幅に改善されていることが判る。
実施例2
《比較の電界効果有機薄膜トランジスタ3の作製》
実施例1の比較試料1の作製において、比較有機半導体1を比較有機半導体3(ペンタセン;アルドリッチ社製の市販試薬を昇華精製したもの)に変更した以外は、比較試料1と同様にして、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料3)を作製した。
Figure 2005260212
《本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ5〜8の作製》
比較の電界効果有機薄膜トランジスタ3の作製において、比較有機半導体3を表2に示した有機半導体材料(化合物)に変更した以外は同様にして、本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ5〜8(本発明試料5〜8)を各々作製した。
《電界効果有機薄膜トランジスタの評価》
以上のようにして作製した電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料3、本発明試料5〜8)について、実施例1と同様にして試料作製直後及び大気中で1ヶ月放置のキャリア移動度と電流ON/OFF比を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 2005260212
本発明の試料5〜8は、pチャネルのエンハンスメント型電界効果トランジスタの動作特性を示した。また、比較の試料に比べて、本発明の試料は、キャリア移動度及び電流ON/OFF比が比較試料に比べて大きい。さらには、1ヶ月経過後であっても、本発明試料は、試料作製直後において得られた性能をほぼ維持しており、経時劣化が大幅に改善されていることが確認された。
実施例3
《比較の電界効果有機薄膜トランジスタ21の作製》
実施例1の比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物(1)を比較化合物(3)(ペンタセン:アルドリッチ社製の市販試薬を昇華精製して用いた)に変更した以外は同様にして、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ21を作製した。
《本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ22〜25の作製》
実施例1の比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1の作製において、比較化合物(1)を表3に記載の化合物に各々変更した以外は同様にして、本発明の電界効果有機薄膜トランジスタ22〜25を各々作製した。
《電界効果有機薄膜トランジスタの評価》
以上のようにして作製した電界効果有機薄膜トランジスタ(比較試料21、本発明試料22〜25)について、実施例1と同様にして試料作製直後及び大気中で1ヶ月放置のキャリア移動度と電流ON/OFF比を求めた。また、比較試料として、実施例1で作製した、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1を追加で評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005260212
表3から、比較の電界効果有機薄膜トランジスタ1、21と比べて、本発明の試料は、pチャネルのエンハンスメント型FETの良好な動作特性を示した。更に、本発明の試料は、キャリア移動度及び電流ON/OFF比が良好であることが判る。更に、1ヶ月経過後であっても、本発明試料は、試料作製直後において得られた性能をほぼ維持しており、経時劣化が大幅に改善されていることが判る。
本発明の有機半導体材料を、半導体層からなるチャネルに用いた電界効果有機薄膜トランジスタの概略構成例を示す図である。
符号の説明
1 チャネル
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
6 支持体

Claims (15)

  1. 分子構造中に下記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
    Figure 2005260212
    〔式中、A1及びA2は、各々置換基を有してもよい炭素原子、窒素原子、硫黄原子または酸素原子を表し、A3、A4及びA5は、各々置換基を有してもよい炭素原子または窒素原子を表す。〕
  2. 前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  3. 前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  4. 分子構造中に下記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
    Figure 2005260212
    〔式中、A6、A7、A8及びA9は、各々−N=または−C(R1)=(R1は水素原子または置換基を表す)を表し、A10は−S−、−O−または−N(R2)−(R2は水素原子または置換基を表す)を表す。〕
  5. 前記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  6. 前記一般式(2)または(3)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  7. 前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位が、置換基を有してもよいベンゾチオフェン環であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  8. 前記一般式(1)で表されるヘテロ環単位を有する化合物が、下記一般式(5)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
    一般式(5)
    A−B−R
    〔式中、Aは、複素環基または芳香族複素環基を表し、Bは、ヘテロアリーレン基を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。〕
  9. 前記複素環基が、ベンゾチエニル基であることを特徴とする請求項8に記載の有機半導体材料。
  10. 分子構造中に下記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
    Figure 2005260212
    〔式中、A11及びA12は、各々−O−、−S−または−N(R3)−(R3は水素原子または置換基を表す)を表す。〕
  11. 前記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を1〜10個及び二価結合基Dを0〜5個有するモノマーセグメントを繰り返し単位として有するポリマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  12. 前記一般式(4)で表されるヘテロ環単位を1〜20個及び二価結合基D1(ただし、D1がオリゴマーの末端基になる場合は、D1は一価の基を表す)を0〜5個有するオリゴマーを含むことを特徴とする有機半導体材料。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
  14. ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層からなるチャネルで連結されたソース電極及びドレイン電極を有する電界効果有機薄膜トランジスタであって、前記半導体層として請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする電界効果有機薄膜トランジスタ。
  15. 請求項13に記載の有機薄膜トランジスタまたは請求項14に記載の電界効果有機薄膜トランジスタを用いることを特徴とするスイッチング素子。
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