JP2005219075A - 熱間圧延鋼板の製造ライン及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第一の冷却装置10と、形状矯正装置30との間に第二の冷却装置20が設置されていることを特徴とする、熱間圧延鋼板の製造ライン100を設ける。
【選択図】 図1
Description
平坦度不良の原因としては、圧延中に発生した平坦度不良の残存と、オンラインによる加速冷却後の鋼板内に存在する温度ムラとが考えられており、これら二つの中でも特に問題が多いのは、後者の温度ムラである。この温度ムラに起因する平坦度不良には、長手方向の温度ムラによるものと、板幅方向の温度ムラによるものとが存在し、現実の平坦度不良は、これらが複雑に絡み合って起こると言われている。温度ムラに起因する平坦度不良は、鋼板の形状矯正後における放冷中に発生するものが多く、かかる平坦度不良を改善する為には、冷間レベラやプレス矯正等による余分な工程を要する。
1)冷却装置出側に設置された温度計により多数の鋼板における温度ムラを測定し、かかる温度ムラと形状矯正後における鋼板の平坦度不良との関係を調査した結果、「平坦度不良が発生する限界温度ムラ」の値と「鋼板の板幅/鋼板の板厚」の値との間に相関があること。
ここで、限界温度ムラとは冷却装置による冷却直後における鋼板内の温度ムラをいう。
2)鋼板内の温度ムラの値が一定値を超える鋼板を形状矯正装置により矯正すると、形状矯正後の放冷過程において、鋼板の平坦度不良が発生する。
3)鋼板内の温度ムラの値を、「鋼板の板幅/鋼板の板厚」の2次関数により与えられる式の値以下とすることにより、形状矯正後の放冷過程においても良好な平坦度を有する鋼板を得ることが可能であること。
ここで、冷却制御機能とは、鋼板板幅方向の中央部及び/又は端部等、鋼板板幅方向における少なくとも一部分を重点的に冷却し得る機能をいう。
ここで、第二の冷却装置(20)において使用する冷却媒体は、気体、流体、又は混合流体等から適宜選択することが可能であるが、流体、特に水が好ましい。
鋼板の板幅W(mm)と板厚t(mm)とにより与えられる下記(式1)の値をf、
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220 (式1)
形状矯正装置(30)により形状矯正を行う前の鋼板表面の最高温度と最低温度との差をΔT(℃)、とするとき、
(1) ΔT>f、であるときは、
形状矯正装置(30)による鋼板の形状矯正終了時までに、ΔT≦f となるように、第一の冷却装置(10)及び/又は第二の冷却装置(10)により鋼板を冷却し、
(2) ΔT≦f、であるときは、
形状矯正装置(30)により鋼板の形状を矯正する、熱間圧延鋼板の製造方法により、前記課題を解決しようとするものである。
1.製造ライン
図1は、本発明における鋼板の製造ライン100の実施形態例を示す図である。本発明の製造ライン100は、第一の冷却装置10と、温度計50と、第二の冷却装置20と、誘導加熱装置40と、形状矯正装置30とが、この順で設置され、鋼板1は図の左から右方向へとライン中を送られる。本発明の製造ライン100では、第一の冷却装置10と、形状矯正装置30との間に第二の冷却装置20が設置されていることを必須とする。
本発明において使用する第一の冷却装置10の形式は、特に限定されるものではなく、通常の冷却装置等を好適に使用することができる。
冷却媒体として水を使用する場合、鋼板上面の冷却においては、板幅端部に噴射された水が板幅中央部へと流れることを防ぐため、板幅方向の内側から外側へ向けて水を噴射させるのが効果的であり、また、板幅中央部における冷却水を鋼板の長手方向後端部より流出させるため、鋼板の長手方向と平行に水を噴射するのが効果的である。
本発明において使用する形状矯正装置30の形式は、特に限定されず、ローラレベラやテンションレベラ等を好適に使用することができる。
本発明において、誘導加熱装置40は、冷却装置10、20による冷却後における鋼板の温度ムラの値があまり小さくない場合に、当該鋼板に誘導加熱を施し、かかる温度ムラを低減させるために設置する。そのため、当該誘導加熱装置40によって鋼板に強力な加熱を施すことは稀であることから、この装置40による電力消費量を抑えることが可能になる。
本発明において使用する温度計50の形式は、特に限定されず、鋼板の板幅方向全般に渡って測定するタイプの放射温度計や、CCDカメラや赤外線サーモグラフィー等による画像解析等を好適に使用することができる。
2.1.温度ムラ
本発明の鋼板の製造方法において、製造方法選択の判断基準となる温度ムラΔTにつき、以下に定義する。
温度ムラΔTは、鋼板のエッジ部各々20mm及び鋼板の先後端1mを除いた部分の鋼板面における、最高温度と最低温度との差とした。鋼板のエッジ部及び鋼板の先後端を除くのは、かかる部分は過冷却され特異値となるためである。
ここで、温度ムラΔTは、冷却装置の出側にスキャン温度計を設置して測定しても良いし、CCDカメラ、赤外線サーモグラフィー等の画像解析により温度ムラΔTを算出しても良い。
本発明者らは、鋼板に平坦度不良が起こる温度ムラΔTの限界値を、鋼板の板幅及び板厚で整理したところ、「平坦度不良を起こす温度ムラΔTの限界値」と「鋼板の板幅/鋼板の板厚」との間に、一定の関係があることを見出した。図2に、鋼板内温度ムラと鋼板の平坦度との関係を示す。図2の各測定点では、製造現場における実際の各種サイズの鋼板を用いて調査した。図2の縦軸である「加速冷却後の温度ムラΔT」は、冷却装置により冷却した直後における鋼板の温度ムラである。冷却装置における鋼板出側に鋼板の幅方向における温度差を測定可能な放射温度計を設置し、この温度計により、0.2秒毎に鋼板幅方向の温度差を鋼板のほぼ全長に渡って測定した。
上記温度ムラは、この測定結果から、最大温度差を計算することにより特定した。一方、鋼板の平坦度は、鋼板の製造ラインの側面にうねり高さ測定目盛りを設置して運転席から目視で確認しても良いし、平坦度計による鋼板の急峻度測定によりうねり高さを測定しても良いし、板幅と同程度の長さを有する直尺を鋼板の表面に当てて目視又は隙見ゲージにより測定しても良いが、図2における鋼板の平坦度は、製造現場の最終検査場において、板幅と同程度の長さを有する直尺を鋼板の表面に当てて隙間ゲージで測定することにより特定した。図2において、「平坦度良好」とは、鋼板の平坦度が10mm以下である場合を指し、「平坦度不良」とは、同平坦度が10mmを超える場合を指す。
なお、鋼板の平坦度については、板厚が15〜30mm、板幅が2000〜4000mmである鋼板において反りが発生したものを選び、データを採取した。また、鋼板の平坦度不良は、鋼板の長手方向にも生じるが、水冷された鋼板においては、特に鋼板の幅方向における平坦度が悪いため、かかる方向の平坦度を測定した。
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220
鋼板の温度ムラΔTが当該許容値の範囲内である場合、すなわち、ΔTの値が上記fの値以下である場合には、次工程(冷却床)における放冷過程において平坦度不良が発生しないため、鋼板の平坦度不良抑制を目的とした冷却は不要である。一方で、鋼板温度ムラが当該許容値の範囲外である場合、すなわち、ΔTの値が上記fの値を超える場合には、ΔTの値をfの値以下とする冷却をすれば次工程における放冷過程において鋼板の平坦度不良を抑制することが可能であるため、鋼板内の温度ムラがかかる値以下とする冷却が必要となる。
以下に、本発明における熱間圧延鋼板の製造方法の詳細を示す。
形状矯正装置30により形状を矯正する前における鋼板の板幅及び板厚が、それぞれW(mm)及びt(mm)であり、この鋼板は、ΔT(℃)の温度ムラを有しているとする。この時、当該鋼板は、「Wの値及びtの値を下記(式1)に代入して得られるfの値と、ΔTの値との間における大小関係」に応じて、以下に示す2通りの方法により、その形状を矯正される。
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220 (式1)
「ΔT>f」である場合、鋼板は、形状矯正装置30による形状矯正が終了するまでに、ΔT≦f となるように、第一の冷却装置10及び/又は第二の冷却装置20により冷却された後、次工程へと送られる。
この冷却方法を採る場合において、温度測定の結果を冷却装置に反映させる方法は、特に限定されず、計算機からの指示をオンラインで冷却装置へと送ることにより反映させても良いし、オペレータが温度計50の指示値を見て、手動で冷却装置を操作することにより結果を反映させても良い。
なお、各ユニットの冷却ヘッダーは1本の場合もあるが、複数本の場合もある。
「ΔT≦f」である場合、鋼板は、形状矯正装置30により、その形状を矯正された後、次工程へと送られる。
この場合は、「ΔT≦f」であるため、形状矯正装置30による形状矯正後の放冷過程において、鋼板1の温度ムラに起因する平坦度不良は発生しない。したがって、冷却装置による再度の冷却は不要である。
本発明の実施例及び比較例のシミュレーションにおいて用いた鋼板は、JIS SM490A相当材とした。鋼板サイズは、板厚25mm×板幅3200mm×長さ37mとし、鋼板製造ラインにおける冷却装置入り側の鋼板温度は780℃、冷却装置出側の鋼板温度は400℃とした。ここで、鋼板の板厚25mmと、同板幅3200mmとから、fは、
f=0.004×(3200/25)2−1.8×(3200/25)+220=55.136
となり、本発明の実施例及び比較例において使用した鋼板の限界温度ムラは約55℃であった。
本実施例では、表1に示す鋼板製造ラインaを使用した。本実施例において、加速冷却装置による冷却(以後、本実施例において、この冷却を「一度目の冷却」という。)後における鋼板温度を、温度計により測定したところ、鋼板中央部及び鋼板端部の温度は、それぞれ430℃及び370℃であり、f=55.136であることから、ΔT>f となった。したがって、本実施例における鋼板は上記ケースAに該当するため、引き続き、第2の冷却装置により冷却(以後、本実施例において、この冷却装置による冷却を「二度目の冷却」という。)した。
鋼板の平坦度は、製造現場の最終検査場において、鋼板の幅方向に全長2mの直尺を当て、隙間ゲージにより鋼板のうねり高さを確認することにより特定した。ここで、「平坦度良好」とは、鋼板のうねり高さが10もしくは8mm以下である場合を指し、「平坦度不良」とは、うねり高さが10もしくは8mmを超える場合を指す。
本実施例では、表1に示す鋼板製造ラインbを使用した。本実施例において、加速冷却装置による冷却(以後、本実施例において、この冷却を「一度目の冷却」という。)後における鋼板温度を、温度計により測定したところ、鋼板中央部及び鋼板端部の温度は、それぞれ450℃及び350℃であり、f=55.136であることから、ΔT>f となった。したがって、本実施例における鋼板は上記ケースAに該当するため、当該鋼板は加速冷却装置の前まで逆送され、再び、加速冷却装置により冷却し、引き続き、冷却装置により冷却(以後、本実施例において、この冷却を「二度目の冷却」という。)した。
なお、本実施例では、逆送後における加速冷却装置による冷却を1回のみとしたが、実際には、この回数を適宜変更することが可能であり、冷却回数は2回以上であっても良い。
本比較例では、表1に示す鋼板製造ラインcを使用した。本比較例において、加速冷却装置による冷却後における鋼板温度を、温度計により測定したところ、鋼板中央部及び鋼板端部の温度は、それぞれ430℃及び370℃であり、f=55.136であることから、ΔT>f となった。したがって、本比較例における鋼板は上記ケースAに該当するが、鋼板製造ラインcは、加速冷却装置以外の冷却装置を有しないため、引き続き、形状矯正装置によりその形状を矯正した。
したがって、熱間圧延鋼板の製造ラインでは、加速冷却装置と形状矯正装置との間に第二の冷却装置に相当する冷却装置及び/又は誘導加熱装置を設置し、形状矯正装置による形状矯正前に、鋼板の温度ムラをΔT≦f とする製造方法を採ることが必要であるという結果が得られた。
10 第一の冷却装置
20 第二の冷却装置
30 形状矯正装置
40 誘導加熱装置
50 温度計
100 熱間圧延鋼板の製造ライン
Claims (5)
- 第一の冷却装置と、形状矯正装置との間に、第二の冷却装置が設置されていることを特徴とする、熱間圧延鋼板の製造ライン。
- 前記第二の冷却装置が、鋼板板幅方向における冷却制御機能を具備することを特徴とする、請求項1に記載の熱間圧延鋼板の製造ライン。
- 前記第二の冷却装置と、前記形状矯正装置との間に、誘導加熱装置が設置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱間圧延鋼板の製造ライン。
- 前記第一の冷却装置の後に、温度計が設置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間圧延鋼板の製造ライン。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間圧延鋼板の製造ラインにおいて鋼板を製造する方法であって、
鋼板の板幅W(mm)と板厚t(mm)とにより与えられる下記(式1)の値をf、
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220 (式1)
前記形状矯正装置により形状矯正を行う前の前記鋼板表面の最高温度と最低温度との差をΔT(℃)、とするとき、
(1) ΔT>f、であるときは、
前記形状矯正装置による前記鋼板の形状矯正終了時までに、ΔT≦f となるように、前記第一の冷却装置及び/又は前記第二の冷却装置により前記鋼板を冷却し、
(2) ΔT≦f、であるときは、
前記形状矯正装置により前記鋼板の形状を矯正する、熱間圧延鋼板の製造方法。
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