JP2005212286A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Shozo Kikukawa
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Abstract

【課題】インク室内のインクを加熱し、気泡の膨張・収縮作用によってノズルより吐出されるインク滴量がノズル内の容積で決まるインクジェットヘッドにおいて、1.5pl以下の微小インク滴を吐出する場合に、ノズルプレートの強度低下による変形や破壊のおそれがなく、高精度のインク吐出が可能なインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】インク室2内に配置された電気・熱変換素子3によってインクを加熱し、インク内に発生する気泡の膨張・収縮作用によって、ノズルプレート4に形成されたノズル5よりインク滴を吐出し、該インク滴量が前記ノズル5内の容積で決まるインクジェットヘッドにおいて、前記インク滴量が1.5pl以下であり、且つ、前記ノズル5におけるインク滴吐出側の端面の周囲に前記ノズルプレート4表面から凹設された窪み部6が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【選択図】 図1

Description

本発明はインクジェットヘッドに関し、詳しくは、インク室内に配置された電気・熱変換素子によってインクを加熱し、インク内に発生する気泡の膨張・収縮作用によってノズルプレートに形成されたノズルよりインク滴を吐出する、所謂サーマル方式のインクジェットヘッドであって、そのインク滴量がノズル内の容積で決まるインクジェットヘッドに関する。
サーマル方式のインクジェットヘッドのインクの吐出原理は、インク室内に配置されたヒータ(電気・熱変換素子)を加熱すると、膜沸騰現象によってインク内で気泡が発生し、その気泡の膨張作用によってノズル内のインクをノズルから押し出し、気泡が消泡して収縮すると、押し出されたインク柱の後端にインクをインク室側に引き戻す力が働き、一方、押し出されたインク柱の先端は慣性により押し出され続けるので、インク室内のインクと千切れてインク滴が吐出する。
かかるインクジェットヘッドには、サイドシューターとトップシューターの二種類がある。サイドシューターとは、図6(a)に示すように、ヒータ100の横にあるノズル101からインク滴102を吐出する。吐出されるインク滴102とインク室内に残るインク103が切り離されずに繋がっているため、僅かなインク温度の変動でも吐出量が変化し、印刷濃度を一定に保つために色々な制御手段が必要であり、好ましくない。
一方、トップシューターとは、図6(b)に示すように、ヒータ100の真上に配置されたノズル101からインク滴102を吐出する方式である。サイドシューターよりもヒータ100とノズル101の間の距離が短いので、吐出に有利である。このようなトップシューターでは、膨張した気泡がインク室の天井の壁に接触して、吐出されるインクとインク室内に残るインクを完全に切り離すことが可能となり、吐出インク量は、ノズル内に存在するインクだけとなり、吐出量がノズルの設計寸法で決まり、インク粘度、インク温度の影響を受けなくなる利点がある。
これを図7を用いて示すと、インク室内にインクが満たされた状態(図7(a))で、ヒータ上で発生した気泡が膨張すると、押しのけられたインクはメニスカスから盛り上がり、気泡の先端がノズルの入口に達すると、吐出されるインクとインク室内に残るインクとが気泡によって切断される(図7(b))。ヒータの通電が絶たれて気泡が収縮を開始すると、ノズルから押し出されたインク柱の後端が引き戻される(図7(c))。気泡が完全に消失すると、インク室内から押し出されたインク柱の後端が更にインク室内に引き戻されるが(図7(d))、ノズル内にあったインク柱は慣性で押し出され続け、最後にインク室内のインクから引き千切られて、インク滴として吐出する(図7(e))。このため、このようなトップシューターのインクジェットヘッドでは、インクの吐出量はノズル内の容積で決まることになる。
従って、例えば、ノズルプレートの板厚を25μm、ノズル径を10.2μmとすると、ノズル形状がその入口から出口にかけてストレートな形状である場合、そのインクの吐出量は、3.14×(5.1×10-42×(25×10-4)=2plとなる。この吐出滴を球と考え、これが記録媒体上に着弾した後、径が2倍に広がると仮定すると、ドット径は30〜40μm程度になるが、人間の目がドットを見分けられなくなるには、ドット径20μm以下が必要なため、1.5pl以下の微小インク滴を吐出できることが好ましい。
トップシューターのインクジェットヘッドにおいて、このように1.5pl以下のインク滴を吐出できるようにするためには、ノズルプレートの板厚を薄くするか、または、ノズル径を小さくする方法が考えられる。そこで、ノズル径を同じ10.2μmとしてノズルプレートの板厚を変えると、3.14×(5.1×10-42×(18.4×10-4)=1.5plであることから、ノズルプレートの板厚を18.4μm以下とする必要がある。また、ノズルプレートの板厚を同じ25μmとすると、3.14×(4.35×10-42×(25×10-4)=1.49plであることから、ノズル径を8.7μm以下とする必要がある。
しかし、ノズル径は目詰まりの問題を考慮すると、10μmより小さくすることは好ましくない。また、ノズルプレートの板厚を薄くする場合も好ましいことではない。ノズルプレートは一般に合成樹脂で作成されるものが多く、1.5plのインク滴を吐出させるために18.4μm以下のノズルプレートの板厚とすると、ノズルプレートは極端に薄くなり、強度の低下によって、吐出時の圧力でノズルプレートが変形し、ノズルから吐出されるインク滴の飛翔方向が乱れ、高精度の吐出ができなくなる問題があるためである。また、外部からの衝撃等により破壊してしまうおそれもある。
特許文献1では、カラーインクと黒インクとで異なるインク滴の大きさとする場合に、ノズル径を大きく変えることなく吐出できるようにするため、ノズルプレートの板厚を変えることによって対応している。しかし、インク種毎に異なるノズルプレートを使用する必要があり、これは極めて面倒であると共に、上記のように1.5plの微小インク滴を吐出させるには、ノズルプレートが薄くなることによる弊害が大きい。
特開2002−154208号公報
そこで、本発明の課題は、インク室内に配置された電気・熱変換素子によってインクを加熱し、インク内に発生する気泡の膨張・収縮作用によって、ノズルプレートに形成されたノズルよりインク滴を吐出し、該インク滴量が前記ノズル内の容積で決まるインクジェットヘッドにおいて、1.5pl以下の微小インク滴を吐出する場合に、ノズルプレートの強度低下による変形や破壊のおそれがなく、高精度のインク吐出が可能なインクジェットヘッドを提供することにある。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
請求項1記載の発明は、インク室内に配置された電気・熱変換素子によってインクを加熱し、インク内に発生する気泡の膨張・収縮作用によって、ノズルプレートに形成されたノズルよりインク滴を吐出し、該インク滴量が前記ノズル内の容積で決まるインクジェットヘッドにおいて、前記インク滴量が1.5pl以下であり、且つ、前記ノズルにおけるインク滴吐出側の端面の周囲に前記ノズルプレート表面から凹設された窪み部が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
請求項2記載の発明は、前記窪み部の深さは、2μm〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
請求項3記載の発明は、前記ノズルの吐出側の端面の中心から前記窪み部のエッジまでの距離の最小値は、前記ノズルの吐出側の端面の半径をdμmとしたとき、(d+1)μm〜(d+10)μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドである。
請求項4記載の発明は、前記窪み部のエッジと前記ノズルの吐出側の端面との間には丸みが形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッドである。
請求項5記載の発明は、同一色のインクを吐出する複数のノズルを千鳥状に配置し、各ノズルに前記窪み部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項6記載の発明は、同一色のインクを吐出する複数のノズル全体に亘って連続する共通の窪み部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項7記載の発明は、インク滴量の異なるインクを吐出する複数のヘッド部を有し、各ヘッド部において前記窪み部の深さを異ならせることにより、ノズルから吐出されるインク滴量をヘッド部毎に異ならせたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項8記載の発明は、駆動周波数が20kHz以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項9記載の発明は、前記ノズル形状は、ノズル入口から出口に亘ってストレート形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項10記載の発明は、前記ノズルプレートが合成樹脂であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
請求項11記載の発明は、少なくとも前記ノズルプレートの表面は撥インク性の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
本発明によれば、ノズルにおけるインク滴吐出側の端面の周囲にノズルプレート表面から凹設された窪み部を形成したことにより、ノズルの容積を窪み部の凹設深さによって調整することができるため、ノズルの容積を1.5pl以下とする場合にも、ノズルプレート全体の厚みを厚くして強度を十分に確保することができ、ノズルプレートの強度低下による変形や破壊のおそれがなく、インクの飛翔方向の安定性がよく、高精度のインク吐出が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1(a)は本発明に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの部分断面図、(b)はその部分平面図である。
基板1には、インク流路となるインク室2が凹設されており、インク室2の底部に、電気・熱変換素子であるヒータ3が、半導体プロセスを用いて配設されている。
インク室2の上部は、ノズルプレート4によって塞がれている。ノズルプレート4には、インク室2に対応するノズル5が開穿されており、該ノズル5がインク室2内のヒータ3のほぼ真上に配置するように位置合わせされて、基板1に貼着されている。
なお、図1では1つのインク室2及びノズル5を示しているが、インクジェットヘッドには、通常、複数のインク室2及びノズル5が形成されており、各インク室2は図示していない共通インク室と連通し、該共通インク室からインクが供給されるようになっている。
ここで、インク室2にインクが満たされているとき、ヒータ3に通電を行うと、該ヒータ3に接しているインクの膜沸騰現象により気泡が発生して膨張する。この気泡の膨張作用によりインク室2内のインクはノズル5に向けて押しのけられてメニスカスが盛り上がり、気泡の先端がノズル5の入口(インク室2側の端部)5aに達すると、ノズル5内のインクとインク室2内に残るインクが切断される。更にヒータ3の通電が絶たれて気泡が収縮すると、気泡の収縮作用によりノズル5内にあったインクは、インク室2内のインクから千切れてインク滴として吐出する。従って、ノズル5内の容積(ノズル入口5aから出口5bの間の容積)でインクの吐出量が決まるが、本発明において、このノズル5内の容積は、1.5pl以下のものとする。
かかるインクジェットヘッドにおいて、ノズルプレート4には、ノズル5におけるインク滴吐出側の端面である出口5bの周囲に、ノズルプレート4の表面から凹設された窪み部6が形成されている。すなわち、ノズル5は、この窪み部6の底部に、その出口5bが開口している。
これにより、このノズル5内の容積が1.5pl以下となるように形成する場合、ノズル5内の容積をノズル径、ノズルプレート4の板厚及びノズル5の軸方向長さh(図1(a)参照)の3つのパラメータによって規定することができ、従来のように、ノズル径とノズルプレートの板厚とによってのみ規定されるものに比べ、ノズル製造上の制約を減らすことができる。
従って、ノズル径を目詰まりの問題を回避できる程度の大きさのノズル径に規定しても、ノズルプレート4の板厚ではなく、ノズル5の軸方向長さhによってノズル5内の容積が1.5pl以下となるように規定することが可能である。このとき、ノズル5の軸方向長さhが小さく、これによりノズル5の周囲が薄肉となるが、この薄肉部分はノズルプレート4の板厚に応じて窪み部6の凹設深さを調整することによって形成されることになるため、ノズルプレート4全体としての厚みは十分に確保することが可能であり、微小インク滴の吐出とノズルプレート4の強度確保との両立が可能となる。例えば、ノズルプレート4の板厚を25μm、ノズル径を10.2μmで、ノズル5が入口5aから出口5bにかけてストレート形状である場合、ノズル5の出口5bの周囲に6.6μmの深さで窪み部6を凹設すると、ノズル5内の容積は窪み部6を凹設しないものに比べて74%に減少するので、1.5plのインク滴を吐出可能となる。また、6.6μm以上の深さにすれば、1.5pl以下のインク滴が吐出可能となる。
なお、ここで、ノズル径とは、ノズルのインク吐出側先端の最長径を指す。ノズルが真円の場合は、ノズルの直径がノズル径となる。
このようにノズル5内の容積を1.5pl以下としても、窪み部6を凹設することによりノズルプレート4全体としての厚みを十分に確保することが可能であるため、ノズルプレート4の強度低下による変形や破壊のおそれが解消されてインクの飛翔方向を安定化させることができ、高精度のインク吐出が可能となると共に、ノズル径を小さくせずとも、窪み部6の凹設深さを調整してノズル5の軸方向長さhを小さくすることで1.5pl以下の微小インク滴を吐出することができるので、ノズル5の目詰まりの問題を低減することができ、ノズル抵抗の減少により、インクの吐出効率も向上する。
また、1.5pl以下の微小インク滴を吐出する場合は、気流の影響によるインク滴の飛翔方向の乱れが顕著になるが、インク滴の吐出側に窪み部6が配置しているので、このような気流の影響によるインク滴の飛翔方向の乱れも緩和できる。
ノズル5の容積が1.5pl以下となるようにするには、ノズル径は10μm〜20μmとすることが好ましい。インク滴量とノズル径に合わせて、ノズル5の軸方向長さhを調整することで、目詰まりの発生がない良好なインク吐出が可能なノズル形成が可能である。
窪み部6の凹設深さ、すなわちノズル5の出口5bからノズルプレート4の表面までの高さHは、2μm〜10μmとすることが好ましい。2μmよりも浅すぎると、1.5plのインク滴を吐出する容積に形成されたノズル5を有するノズルプレート4全体の厚みが薄くなって強度向上効果が十分に得られ難くなる。また、10μmよりも深すぎると、ノズルプレート4の表面に付着したインクをゴム等の弾性部材からなるブレードによってふき取ることによってクリーニングする際に、ノズル5の周辺部分のインクの除去が困難となってクリーニング性が劣るようになる。
また、この窪み部6は、図1(b)に示すように、ノズル5の吐出側の端面である出口5bの中心からその窪み部6のエッジ(窪み部6のノズルプレート4表面側の端面)6aまでの距離の最小値Lを、ノズル5の出口5bの半径をdμmとしたとき、(d+1)μm〜(d+10)μmとすることが好ましい。(d+1)μmよりも小さすぎると、ノズル5から吐出したインク滴が窪み部6のエッジ6aと接触してインク滴の飛翔方向が乱れるおそれがある。また、(d+10)μmよりも大きすぎると、ノズルプレート4におけるノズル5周辺の薄板状の部分の面積が大きくなって、ノズルプレート4の強度向上効果が十分に得られ難くなる。なお、ここで半径とは、ノズルの最長径の1/2である。
窪み部6には、図1(a)に示されるように、そのエッジ6aとノズル5の吐出側の端面である出口5bとの間に丸み6bが形成されていることが好ましい。これにより、窪み部6のエッジ6aとノズル5の出口5bとは滑らかな曲面によって連続するようになり、窪み部6を凹設することによるノズルプレート4の強度低下を抑えることができると共に、ブレードによってクリーニングする際に窪み部6内のインクが除去され易くなる。
窪み部6の平面形状は、図示する円形状に限らず、楕円形状や長方形、正方形等の矩形状であってもよく、特に限定されない。
ノズルプレート4に形成されるノズル5の形状は、図示するように、ノズル5の入口5aから出口5bに亘ってストレート形状であることが好ましい。ノズル形状が、ノズルの入口径が出口径よりも拡がっているコニカルノズルを使用する場合では、図8に示すように、ヒータ上で発泡して膨張した気泡が、ノズルの入口側の壁面に接する前に収縮するので、吐出されるインクとインク室内に残るインクが繋がったままの状態になり易く、吐出量がインク粘度の影響を大きく受けて、吐出量が一定しないおそれがあるが、ストレート形状のノズル5とすることで、ヒータ3に通電して膜沸騰現象によって発生した気泡が収縮する前にノズル5の入口5a側の壁面に接触するにより、ノズル5内の吐出されるインクとインク室2内に残るインクを確実に切り離すことが可能となり、インク滴量の設計が容易となる。
ノズルプレート4にこのようなノズル5と窪み6を形成するには、1枚のノズルプレート4に両者を一体に連続して形成するものに限らず、図2に示すように、ノズル5のみを開穿した第1のプレート41と、窪み部6となる開口を形成した第2のプレート42とに分け、第1のプレート41におけるノズル出口5b側に、第2のプレート42を積層することにより、窪み部6内にノズル5の出口5bが開口するノズルプレート4を構成するようにしてもよい。これによりノズル5の軸方向長さhを第1のプレート41の板厚のみによって規定できるので、ノズル5内の容積の設計が容易となる。
ノズルプレート4を作成する材料は、合成樹脂の他、金属、セラミック、ガラス等により形成することができる。特に、合成樹脂により作成されるものでは、他の材料に比べて強度が低いことから、インク滴の飛翔曲がりの発生等が目立つようになるが、本発明によれば、1.5pl以下の微小インク滴を吐出する場合でもノズルプレート4の強度を十分に確保できることから、本発明の効果が顕著に発揮されるようになる。
ノズルプレート4は、その表面が撥インク性の合成樹脂であることが好ましい。ノズルプレート4の表面は、インクの付着を避けるため、一般に撥インク処理されるが、窪み部6を形成した後に均一に撥インク処理することは困難である。従って、予め撥インク性を有する合成樹脂によりノズルプレート4を作成することで、窪み部6を有するノズルプレート4でも、その表面に撥インク性を持たせることができる。撥インク性を有する合成樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン〜六フッ化プロピレン共重合樹脂等の含フッ素高分子樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエステル等が挙げられる。
また、図2のように2枚のプレート41、42を積層して1枚のノズルプレート4を構成する場合は、第1のプレート41、第2のプレート42のそれぞれで異なる材料としてもよく、この場合、少なくとも表面に位置する第2のプレート42を上記のように撥インク性を有する合成樹脂により作成すれば、表面に撥インク性を付与することができる。
本発明に係るインクジェットヘッドは、駆動周波数が20kHz以上である場合に特に顕著に効果を発揮する。すなわち、駆動周波数が20kHz以上となるような高周波駆動を行う場合、インク滴の吐出間隔が短くなり、ノズルプレート4にはインク滴吐出のための圧力による負荷が繰り返し与えられるようになり、ノズルプレート4の変形による飛翔方向の乱れが顕著に見られるようになるためである。本発明によれば、ノズル5内の容積により1.5pl以下の微小インク滴を吐出するノズルプレート4であっても、十分な強度を確保できるため、駆動周波数が20kHz以上であっても、このようなインク滴の飛翔方向の乱れの問題はない。
同一色のインクを吐出するノズル5を複数有するインクジェットヘッドの場合、図3に示すように、ノズル5をノズルプレート4に千鳥状に配置するようにすると、隣接するノズル5の間のピッチを大きくとることができるので、ノズル数の多い高密度化されたインクジェットヘッドの場合にも窪み部6の形成が容易となる。なお、図3は複数のノズル5を有するインクジェットヘッドをノズルプレート4側から見た部分平面図である。
また、同様に同一色のインクを吐出する複数のノズル5を有するインクジェットヘッドの場合、図4(a)に示すように、複数のノズル5の全体に亘って連続する共通の窪み部60を設けるようにしてもよい。すなわち、各ノズル5は、1つの窪み部60の底部に全て開口している。本発明のように微小インク滴を吐出するノズル5は、ノズル間のピッチも小さくなるので、複数のノズル5の全体に亘って連続する共通の窪み部60を設けることで、窪み部の形成が容易となる。
また、同一色のインクジェットヘッドにおける複数のノズル5の全てで1つの窪み部60を形成するものに限らず、図4(b)に示すように、同一色のインクを吐出する複数のノズル5の全てをそれぞれ複数のノズル5からなる複数の組に分け、各組それぞれに複数のノズル5の全体に亘って連続する共通の窪み部61、61・・・を形成するようにしてもよい。
なお、図4(a)(b)はこのようなインクジェットヘッドをノズルプレート4側から見た平面図であるが、窪み部60、61の平面形状は図示するものに限定されず、複数のノズル5に亘って連続する形状であれば任意である。
ところで、一般に、カラーインクは1.5pl以下、好ましくは0.5pl以上1.5pl以下のインク滴量で吐出することが望まれる。その理由は、カラーの一次色であるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)は、1ピクセル当たり1ドットを吐出するが、二次色であるB(ブルー)、G(グリーン)、R(レッド)は、一次色を2滴吐出して作るので、二次色の粒状性を目立たなくするために、一次色は1.5pl以下のインク滴量で吐出することが望まれるためである。
これに対して、黒画像を作る方法は2種類あり、Y、M、Cの各インクを1滴ずつ重ねて作るコンポジットブラックと、カーボンブラック1滴で作るリアルブラックとがある。画像のハイライト部は、粒状性が特に目立つので、Y、M、Cと馴染みのよいコンポジットブラックの微小インク滴が使用される。しかし、シャドー部や黒文字は、粒状性が問題にならないので、画像濃度を高めるため、カーボンブラックからなるリアルブラックの大滴が使用される。このリアルブラックのインク滴量は、画像を形成する効率を高くするため、5pl〜30plが望まれる。
このように、インクジェットヘッドから吐出されるインク滴は、カラー画像の粒状性を良くする観点では、1.5pl以下の微小インク滴とすることが望まれる一方、ハイライトのシャドー部や黒文字部分では、5pl〜30plの大インク滴とすることが印刷効率を高めるために望まれる。また、ブラックについても、高精細な画像を記録するために1.5pl以下の微小インク滴を吐出する必要もある。Y、M、C等のカラーインクについてもベタ部では、5〜30plの大インク滴が望まれる。従って、インクジェットヘッドは、1.5plから30plまでのインク滴が吐出できることが好ましいといえるが、例えば25μmのノズルプレートの板厚では、ノズル径を8.7μmから39μmまで形成する必要がある。しかし、ノズル径が異なると、ヒータの大きさもそれに合わせなくてはならないので、ヒータ面積が異なることによって駆動回路も複雑となり、好ましい方法ではない。
そこで、図5に示すように、インク滴量の異なるインクを吐出する複数(図示例では2つを示すが、特に限定されない。)のヘッド部A、Bを有する場合には、窪み部6を凹設する深さをそれぞれに異ならせることにより、インク滴量を異ならせることが好ましい。
すなわち、図5では、ヘッド部Aは、基板1Aにインク室2Aが凹設され、インク室2Aの底部にヒータ3Aが配設されている。一方、ヘッド部Bにも、基板1Bにインク室2Bが凹設され、インク室2Bの底部にヒータ3Bが配設されている。
各インク室2A、2Bの上部は、1枚の共通のノズルプレート4によって塞がれている。このノズルプレート4は、インク室2Aに対応するノズル5Aとインク室2Bに対応するノズル5Bとが開穿されており、該ノズル5A、5Bが各ヒータ3A、3Bのほぼ真上に配置するように位置合わせされて、各基板1A、1Bに亘って貼着されている。
ここで、ヘッド部Aは、例えばリアルブラックのインクを吐出するヘッド部とされており、そのノズル5Aの容積は、その軸方向の距離aがノズルプレート4の板厚と同じ、すなわち窪み部の凹設深さを0とし、一方、ヘッド部Bは、例えばその他のカラーインクを吐出するヘッド部とされており、ノズルプレート4の表面から上述のように窪み部6が凹設されていることにより、ノズル5Bの軸方向の距離bは、ノズル5Aの距離aに比べて短くなっている。従って、相対的にノズル5Aは大インク滴、ノズル5Bは小インク滴を吐出する。
このようなインクジェットヘッドによれば、1枚の共通のノズルプレート4を使用しても、ノズル5Aとノズル5Bとからそれぞれ吐出されるインク滴量を異ならせることができる。しかも、このように各ヘッド部Aとヘッド部Bとでインク滴量が異なっても、ノズルプレート4の表面は同一面とすることができるので、ノズルプレート4の表面にインク吸引のためのキャップを密着させる場合でも、キャップを平坦面に密着することができ、密着性を損なうこともない。
なお、ここではヘッドAのノズル5Aの周囲の窪み部の凹設深さを0としたが、ヘッド部Aのノズル5Aとヘッド部Bのノズル5Bとで窪み部の凹設深さを異ならせればよいのであって、窪み部の凹設深さを0とするものに限らないことはもちろんである。
(a)は本発明に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの部分断面図、(b)はその部分平面図 ノズルプレートの他の態様を示すインクジェットヘッドのノズルプレートの部分断面図 窪み部の他の態様を示すインクジェットヘッドをノズルプレート側から見た部分平面図 (a)は複数のノズルの全体に亘って共通する窪み部を設けた態様を示すインクジェットヘッドをノズルプレート側から見た平面図、(b)は複数のノズルを複数の組に分けて各組内の複数のノズルに亘って共通する窪み部を設けた態様を示すインクジェットヘッドをノズルプレート側から見た平面図 複数のヘッド部でインク滴量を異ならせる態様を示すインクジェットヘッドの部分断面図 (a)はサイドシューター方式のインクジェットヘッドを示す部分断面図、(b)はトップシューター方式のインクジェットヘッドを示す部分断面図 (a)〜(e)はトップシューター方式のインクジェットヘッドにおけるインク吐出の様子を示す説明図 (a)〜(e)はノズル形状がコニカルノズルの場合のインク吐出の様子を示す説明図
符号の説明
1:基板
2:インク室
3:ヒータ(電気・熱変換素子)
4:ノズルプレート
41:第1のプレート
42:第2のプレート
5:ノズル
5a:入口
5b:出口
6:窪み部
6a:エッジ
6b:丸み
A、B:ヘッド部

Claims (11)

  1. インク室内に配置された電気・熱変換素子によってインクを加熱し、インク内に発生する気泡の膨張・収縮作用によって、ノズルプレートに形成されたノズルよりインク滴を吐出し、該インク滴量が前記ノズル内の容積で決まるインクジェットヘッドにおいて、
    前記インク滴量が1.5pl以下であり、且つ、前記ノズルにおけるインク滴吐出側の端面の周囲に前記ノズルプレート表面から凹設された窪み部が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記窪み部の深さは、2μm〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記ノズルの吐出側の端面の中心から前記窪み部のエッジまでの距離の最小値は、前記ノズルの吐出側の端面の半径をdμmとしたとき、(d+1)μm〜(d+10)μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記窪み部のエッジと前記ノズルの吐出側の端面との間には丸みが形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
  5. 同一色のインクを吐出する複数のノズルを千鳥状に配置し、各ノズルに前記窪み部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 同一色のインクを吐出する複数のノズル全体に亘って連続する共通の窪み部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  7. インク滴量の異なるインクを吐出する複数のヘッド部を有し、各ヘッド部において前記窪み部の深さを異ならせることにより、ノズルから吐出されるインク滴量をヘッド部毎に異ならせたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  8. 駆動周波数が20kHz以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  9. 前記ノズル形状は、ノズル入口から出口に亘ってストレート形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  10. 前記ノズルプレートが合成樹脂であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  11. 少なくとも前記ノズルプレートの表面は撥インク性の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
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