JP2005207885A - 放射性廃棄物の固化処理用ガラス、放射性廃棄物含有ガラス固化体、並びに放射性廃棄物の固化処理方法 - Google Patents

放射性廃棄物の固化処理用ガラス、放射性廃棄物含有ガラス固化体、並びに放射性廃棄物の固化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 多量の廃棄物を固化できる、水に対する浸出率が小さい、廃棄物中のリン酸成分が多くても良い、ナトリウム溶出量が少ない等の特徴を併せ持つ放射性廃棄物の固化処理用ガラス、および放射性廃棄物の固化処理方法を提供することである。
【解決手段】 MgOとP25とが、モル比(MgO/P25)0.25〜2.35で含有されるリン酸マグネシウム系ガラスからなることを特徴とする放射性廃棄物の固化処理用ガラスであり、混合物中の放射性廃棄物含有率が5〜60質量%となるように放射性廃棄物と当該ガラスとを混合した後、当該混合物を加熱溶融し、次いで冷却固化することを特徴とする放射性廃棄物の固化処理方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リン酸マグネシウム系ガラスからなる放射性廃棄物の固化処理用ガラスに関する。また、本発明は、上記ガラスを用いる放射性廃棄物含有ガラス固化体、および放射性廃棄物の固化処理方法に関する。
原子力発電には、使用済み燃料を処理しエネルギーを再利用する(再処理)という大きな利点がある一方で、その工程に関与する種々の放射性廃棄物が不可避的に発生するという問題点もある。
こうした放射性廃棄物の中でも、再処理時に取り出される高レベル放射性廃棄物に関しては、放射能レベルが高くかつ半減期の長い放射性物質を多く含んで発熱を伴うため、セメント、ガラス等を用いて安全な固体に処理する方法の研究開発が進められており、現在は、減容化が可能で化学的に最も安定性の高いガラス固化体にした後に、地下300m以深の安定した地層中に隔離する「地層処分」を行うことになる。
ガラスが用いられるのは、廃棄物にはイオン半径の異なる種々の放射性物質が含まれるためこれらを封じ込めるには原子配列が不規則な網目構造を有するガラスが好都合であり、また、ガラスは容積の小さな固化体にできて取り扱いが容易であり、さらにガラスは、本来、水に対して溶出しがたい安定な物質だからである。
ガラス化できる無機物には、ホウ素・ケイ素・リン・ゲルマニウム等の酸化物、塩化物、硫黄化物などがある。中でもSiO2は最もガラスを生成し易い酸化物の1つであるが、SiO2の溶融には1800℃以上の高温を必要とし、しかも粘性が高く成形加工が難しいという問題点があるため、現在は、SiO2にホウ素を加えることによって溶融温度を下げたホウケイ酸塩ガラス(成分比B23/SiO2が約0.3)が、放射性廃棄物の固化処理用ガラスとして広く用いられている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
かかるホウケイ酸塩ガラスは、溶融温度が低い、化学薬品に対する耐食性が優れる、熱や放射線に対する抵抗が高い、廃棄物含有量が比較的高い、特にガラス構造になじみ難いと言われているモリブデンの固溶に対する許容性が比較的高い等の長所がある。
しかしながら、ホウケイ酸塩ガラスには、多量の廃棄物の固化が困難、水に対する浸出率が十分でないこと、廃棄物中にリン酸成分が多い場合における問題点が指摘されている。
例えば、ホウケイ酸塩ガラスによるガラス固化処理においてはガラス原料75%、廃棄物25%が一般的であり廃棄物に対してガラスが多量に使用されている。これは廃棄物成分を多量に含有させるとMoを主成分とする析出物が生成する相分離現象が起こり、固化ガラスの封じ込め機能が著しく低下すること、廃棄物中の核分裂生成物の崩壊熱による発熱が常時あるため、ガラス固化体中の廃棄物含有率を高くすると固化体中心部の温度が上昇し固化ガラスの性質を変えてしまうからである。
また、廃棄物中のリン酸(P25)濃度が増加するとガラスが分相して安定性が低下するため、P25濃度を1〜3質量%となるように廃棄物の含有量を制限する必要がある。
さらに、ナトリウムの溶出量が多くなるいわゆる「ナトリウム効果」と言った問題点が残されている。
一方、リン酸塩ガラスは、ホウケイ酸塩ガラスと同様に融点が低く成形加工し易い、より多くの種類の元素を取り込めるといった長所があるため、現在、鉄系、鉛系のリン酸塩
ガラスの放射性廃棄物固化処理への適用が検討されている。しかし、鉄系、鉛系リン酸塩ガラスでは腐食され易い、ナトリウム溶出量が高いという問題点が未だ解決されていない。
従って、多くの元素を含み危険性の大きい高レベル放射性廃棄物を多量に且つ安定的に固化可能なガラスの提供が要望されているのが現状である。
特開昭57−197500号公報 特開平8−233993号公報 特開平9−72998号公報
本発明の課題は、従来技術における上記のような問題点を解決し、(a)廃棄物の含有率を高め多量の廃棄物を固化できる、(b)水に対する浸出率が小さい、(c)廃棄物中のリン酸成分が多くても安定性が良い、(d)ナトリウム溶出量が少ない等、の特徴を併せ持つ放射性廃棄物の固化処理用ガラス、および放射性廃棄物の固化処理方法を提供することにある。
本発明者らは、現在の固化処理に汎用されているホウケイ酸塩ガラスとは全く組成が異なったリン酸塩ガラスにおいても、溶融温度が低い、ガラス化範囲が極めて広い、鎖状・短鎖状構造・オルト塩において多量の網目修飾イオンの導入が可能、また網目修飾イオンが増加するにつれて一般的に化学的耐久性が向上する、といった特徴を有していることに着目して鋭意研究を行った結果、多くのリン酸塩の中でもマグネシウムとの塩であって特定のマグネシウム含有量のリン酸塩ガラスが、上記の従来技術における問題点を解決可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、MgOとP25とが、モル比(MgO/P25)0.25〜2.35で含有されるリン酸マグネシウム系ガラスからなることを特徴とする放射性廃棄物の固化処理用ガラスである。
また、本発明は、放射性廃棄物がガラスに封じ込められた放射性廃棄物ガラス固化体において、上記固化処理用ガラスが使用され且つ放射性廃棄物の含有率が5〜60質量%であることを特徴とする放射性廃棄物含有ガラス固化体である。
さらに、本発明は、放射性廃棄物を溶融ガラスと混合してガラスに封じ込めるガラス固化処理において、混合物中の放射性廃棄物含有率が5〜60質量%となるように放射性廃棄物と上記固化処理用ガラスとを混合した後、当該混合物を加熱溶融し、次いで冷却固化することを特徴とする放射性廃棄物の固化処理方法である。
本発明の放射性廃棄物の固化処理用ガラスおよび固化処理方法によれば、多量の廃棄物を取り込めることができ、しかも、化学的安定性、耐久性に優れ、水に対する浸出率が小さく、廃棄物中のリン酸成分含有量の制限を受けることがなく、さらにナトリウム溶出量が極めて低い。
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)リン酸マグネシウム系ガラス
本発明のリン酸マグネシウム系ガラス(MgO−P25系ガラス)は、リン酸と酸化マグネシウムとをモル比(MgO/P25、すなわちMgOのモル数をP25のモル数で除
した値)で0.25〜2.35、好ましくは0.65〜1.5、特に好ましくは0.8〜1.25含有するものである。当該モル比が0.25未満であると吸湿性が大きくなりガラスの安定性が低下し、一方、2.35を超過するとガラス化せずに失透するので好ましくない。
本発明のリン酸マグネシウム系ガラスの原材料に関しては、リン(P)源として正リン酸(H3PO4)、五酸化二リン(P25)、リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)などのリン化合物を例示でき、一方、マグネシウム(Mg)源として酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、塩化マグネシウム(MgCl2)などのマグネシウム化合物を例示できる。これらの原材料の中でも、取り扱いが容易で製造中に有毒ガスが発生しない安全性の観点から、正リン酸と酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムとの組み合わせが好ましく、特に正リン酸と酸化マグネシウムとの組み合わせが好ましい。なお、かかる原材料であるリン化合物とマグネシウム化合物とを反応させて得られるガラスはいずれもMgO・P25からなるリン酸マグネシウム系ガラスである。
本発明の固化処理用ガラスは以下のようにして製造することができる。
すなわち、製造後のガラスに含まれるリン酸(P25)と酸化マグネシウム(MgO)とが上記のモル比となるように原材料のリン化合物およびマグネシウム化合物それぞれをホッパースケール等の秤量機で秤量してミキサー等で混合し、次いでタンク炉、るつぼ炉、電気炉等の溶融炉に入れて900〜1600℃、好適には熱対流による撹拌効果と成分の揮発量減少の観点から1300℃程度の温度条件下で30分間〜48時間、好適には撹拌効果と成分の揮発量減少の観点から3時間程度、加熱溶融した後、急冷しガラス化させて作製することができる。
後述する放射性廃棄物の固化処理においては、廃棄物と均一に混ざるようにするため作製したガラスを塊状化または粉末化して使用する。
さらに、化学的耐久性や強度などの機械的性質を向上させる目的で、上記以外の成分として窒素を含有させることができる。また、放射線に対する抵抗の向上などを目的として、酸化鉄や酸化鉛を添加することもできる。
(2)放射性廃棄物
本発明におけるガラス固化の対象は、放射性廃棄物、中でも高レベル放射性廃棄物であり、これは原子力発電所で使用した使用済燃料の再処理工程における溶媒抽出分離の際に排出された廃液、或いはその廃液を乾燥させて得られる固化体である。
すなわち、使用済燃料が再処理工程で硝酸に溶解された後、有機溶媒のトリブチルリン酸(TBP)によってウランとプルトニウムが抽出される工程から排出されるもので、核分裂生成物の大部分と、ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)等アクチノイド元素を含み、高いレベルの放射能を有し大きな崩壊熱を発生するものである。
日本においては、かかる液体状の高レベル放射性廃棄物をガラス材料とともに溶融してステンレス製容器(キャニスタ)に入れて冷やして固め、30〜50年間、冷却のため貯蔵され、最終的に地層処分に付される。
ガラス固化体中では高レベル放射性廃棄物を構成する放射性物質は、ガラスの不規則な網目構造中に均質かつ安定的に取り込まれ、ガラス成分と放射性物質とが一体化するのでガラス固化体が壊れても放射性物質の流失は防止される。
なお、後述のとおり、本願明細書の実施例においては、安全かつ簡便にガラスの評価を行うため、実際の高レベル放射性廃棄物の代わりに、実物と同様に多種類の元素(Na, Sr, La, Mo, Mn, Fe, Te)を含み非放射性の模擬廃棄物をガラス固化の対象とした。
(3)固化処理方法
上述したリン酸マグネシウム系ガラスを、ミキサー(粉砕機)等で粉砕して塊状化または粉末化する。次いで、このガラス粉砕物と塊状もしくは粉末状の固体状廃棄物または液体状廃棄物とを混合する。
混合物中の放射性廃棄物の含有率が5〜60質量%、好ましくは15〜50質量%、特に好ましくは25〜45質量%となるように放射性廃棄物とリン酸マグネシウム系ガラス粉末とアルミナ、白金、ステンレス、あるいはグラスライニングなどでできた撹拌容器に入れ、ミキサーを用いて、廃棄物がガラス粉末中に均一に分散するまで混合する。廃棄物の含有率が5質量%未満だと固化ガラスの安定性(化学的耐久性)が低下するという問題が生じ、一方、60質量%を超過すると、分相が起こる、ガラス化せずに失透してしまう、化学的耐久性が低下するといった問題が生じる。
次いでガラス・廃棄物混合物を900〜1600℃、好適には1300℃程度で、30分間〜48時間溶融し、それから−50〜100℃、好適には室温付近までに急冷してガラス固化させて放射性廃棄物含有ガラス固化体が得られる。
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<A> 模擬高レベル放射性廃棄物の調製
本発明の固化処理用ガラスおよび固化処理方法を評価するための模擬高レベル放射性廃棄物を、M. Ishida, T. Yanagi and R. Terai, Journal of Nuclear Science and Technology, 24[5] (May 1987) 404-408を参考にして調製した。具体的には、表1記載の廃棄物元素を含む各原料を所定量混合して調製した。
Figure 2005207885
<B> リン酸マグネシウム系ガラスの作製
(1)MgO:P25=45:55(モル比0.82)のガラスの作製
酸化マグネシウムとリン酸とをモル比で、MgO:P25=45:55になるように秤量し、ビーカー中で酸化マグネシウムを水に懸濁させてからリン酸と混合した。生成物はマントルヒーターを用いて水分をある程度除去してから白金るつぼに入れ、電気炉中600℃で3時間加熱してさらに水分を除去させた。得られたバッチをさらに1250℃で、1 時間溶融後、ステンレス板上に流し出して急冷(室温の空気中で自然放冷)し、リン酸マグネシウム系ガラスを作製した。このガラスを「45M55P」と略記する。
(2)MgO:P25=55:45(モル比1.22)のガラスの調製
リン酸と酸化マグネシウムをモル比で、MgO:P25=55:45になるように秤量し混合した以外は、上記45M55Pと同様にしてリン酸マグネシウム系ガラスを得た。このガラスを「55M45P」と略記する。
<C> 擬似放射性廃棄物含有ガラス固化体の作製
作製した45M55Pガラスをステンレス乳鉢を用いて大きさが約10meshの粉末状にした。次いで、表1に記載の模擬廃棄物を含有率が25質量%となるように混合した後、アルミナるつぼに入れ1250℃で2時間溶融後、急冷(室温の空気中で自然放冷)して廃棄物含有ガラス固化体(「45M55P25W」と略記する)を作製した。
また、45M55Pガラスを用い模擬廃棄物含有率が45質量%になるように混合した後、同様の条件で廃棄物含有ガラス固化体(「45M55P45W」と略記する)を得た。
さらに、55M45Pガラスを用いて同様の条件で、模擬廃棄物含有率がそれぞれ25質量%、45重量%の廃棄物含有ガラス固化体(それぞれ「55M45P25W」、「55M45P45W」と略記する)を得た。
<D> リン酸マグネシウム系ガラスおよび擬似放射性廃棄物ガラス固化体の物性評価
前記<C>で得られた模擬廃棄物含有ガラス固化体および廃棄物を含有しない基材ガラスの合計6つの試料について、密度の測定、X線回折法(XRD)による定性分析、示差熱分析(DTA)を行った。
(1)密度の測定
試料の密度は室温でアルキメデス法を用いて測定した。
浸液としてケロシンを用い、まずピクノメーター法で下記式(I)からケロシンの密度(d0)を求めた(補正後のピクノメーター容積は24.999cm3)。
次いで、アルキメデス法により下記式(II)から試料の密度(d)を求めた。
0=(W1−W0)/24.999 式(I)
〔式中、W0はケロシンの重量、W1はピクノメーターの重量を表す〕
d =[W/(W−W’)] × d0 式(II)
〔式中、Wは空気中の試料の重量、W’は液体中の試料の重量を表す〕
測定した結果を表2に示す。
Figure 2005207885
MgO−P25系ガラスはメタ組成(MgO:P25=50:50(モル比 1))の密度が極小値(約2.20(g/cm3))を取ることが知られている(リン酸異常現象)。モル比0.82のガラスでは、廃棄物含有量が増加してもガラス固化体の密度がほぼ一定であるのに対して、モル比1.22のガラスでは、廃棄物含有量が増加するとガラス固化体の密度は上昇し、55M45P45Wの試料では、2.88(g/cm3)となった。これは、モル比1.22のガラスの方が、モル比0.82のガラスよりも、廃棄物中の各元素をガラスの網目構造中に安定的に封じ込めていることを示す。
(2)X線回折法(XRD)による分析
ガラス固化体の粉末X線回折は、作製した試料と、それらを500℃で2時間加熱処理した試料についてそれぞれ行い、結晶質か非晶質かを判断した。表3に回折結果を示す。非晶質特有のハローパターンが見られたものに〇印を、結晶化ピークが見られたものには×印を付した。
一般に、ガラスは結晶化すると水溶解性が高まり、水に対する浸出率が増加する結果、廃棄物の封じ込め機能を低下させるので好ましくないが、モル比0.82のガラスでは廃棄物含有率が25質量%でも非晶性を保っており、モル比1.22のガラスでは廃棄物含有率が45%でも非晶性である。
Figure 2005207885
なお、上記XRD測定は、測定機器として理学電機(株)製「RINT2000」を使用し、下記の測定条件で行った。
Figure 2005207885
(3)示差熱分析(DTA)
ガラス固化体の熱的性質を調べるためDTA 測定を行った。測定機器は、理学電機(株)製「Rigaku Thermoflex TAS-200 TG8101D」を使用し、以下の条件で行った。
Figure 2005207885
DTA測定結果は、図1のとおりである。図1において、(a)は試料45M55P0Wを、(b)は45M55P25Wを、(c)は45M55P45Wを、(d)は55M45P0W を、(e)は55M45P25Wを、 (f)は55M45P45Wをそれぞれ示す。図中、「Exo.」は発熱、「Endo.」は吸熱を表す。
表6は、各試料の結晶化開始温度(Tx)、ガラス転移点(Tg)およびガラスの安定性の指標となるそれらの温度差(Tx−Tg)である。一般に、ガラス転移点が高いほどガラスは熱的に安定であり、温度差(Tx−Tg)が大きいほどガラスの安定性が高い。
本発明のリン酸マグネシウム系ガラスの場合は表6から明らかなように、モル比0.82のガラスでは、廃棄物含有量の増加につれて(Tx−Tg)の値は次第に小さくなり、固化ガラスの安定性は低下していく。モル比1.22のガラスでは、廃棄物を含有しない基材ガラスの55M45P0W(Tx−Tg=128℃)に比べて、廃棄物を25質量%含有した55M45P25W(Tx−Tg=57℃)の安定性は低下するものの、さらに廃棄物含有量を増加させて45質量%とした55M45P45W(Tx−Tg=80℃)の安定性は上昇した。これは、モル比1.22のガラスの方が、モル比0.82のガラスよりも、廃棄物中の各元素をガラスの網目構造中に安定的に封じ込めていることを示す。
Figure 2005207885
比較例として、同様の条件で測定した、リン酸鉄系ガラス(組成は、P25:60.06質量%、Fe23:25.74質量%、CeO2:9.70質量%、Li2O:4.50質量%)を用いた廃棄物含有ガラス固化体のDTA測定結果を表7に示す。
かかるリン酸鉄(P25−Fe23−CeO2−Li2O)系ガラスは、原料となる(NH4)2HPO3、Fe23、CeO2、Li2CO3を磁性乳鉢で1時間混合し、混合した粉末をアルミナるつぼに移し、電気炉中、1250℃で2時間溶融し、溶解後ステンレス板に流し出し冷却して作製した。
また、廃棄物含有ガラス固化体は、作製したガラスをステンレス乳鉢で粉末状にし、所定量の前記表1記載の模擬廃棄物とアルミナ乳鉢で混合し、電気炉中、1250℃で2時間溶融し、溶解後ステンレス板に流し出し冷却して作製した。
Figure 2005207885
比較例のリン酸鉄系ガラスでは、廃棄物含有率が0%から45%に上昇した場合にTx−Tg温度差が167℃から59℃に急激に小さくなるのに対して、本発明のリン酸マグネシウム系ガラスの場合は温度差は104℃から62℃に、又は128℃から80℃に低下するがそれほど激しいものではなく、また温度差自体も大きいので、より安定的であると言える。
<E> 化学的耐久性
廃棄物含有ガラス固化体の水への溶出をICP発光分光分析で測定した。
比表面積をそろえるためにステンレス乳鉢を用いて10〜20meshの大きさになるように粉砕したガラス固化体試料を約1g秤量し、ステンレス製のスクリュー缶に入れ、純水50ml に浸し、当該スクリュー缶を乾燥器中90℃で20日間保持した後、ろ過した試料を乾燥させ、再び秤量した。
また、ガラス固化体からの溶出分を含む濾液は、ICP発光分光分析装置(セイコー電子工業(株)製「誘導結合プラズマ発光分光分析装置 SPS 7000」)を用いて定性・定量分析を行った。結果を表8に示す。
なお、ガラスが水に触れている部分の表面積Sは下式によって求めた。
S=W・S0/ρ
〔式中、Wは水に浸したガラス固化体の量、S0は比表面積、ρはガラスの密度を表す〕
Figure 2005207885
表8から明らかなように、廃棄物の含有量が増加するにつれて浸出率は低下する傾向が見られ、モル比1.22のガラスで模擬廃棄物を45質量%含有させたガラス固化体(55M45P45W)の浸出率が最も低かった。模擬廃棄物を含有していないガラス試料(45M55P0W、55M45P0W)の浸出率はいずれも高く、ガラス試料自体の水に対する化学的耐久性は高くないことがわかる。
次に、ろ液をICP発光分光分析装置で定性・定量分析した結果を表9に示す。
Figure 2005207885
表9から明らかなように、どのガラス固化体もガラスの主成分であるMgおよびPの浸出率が高かった。また模擬廃棄物のみに注目してみると、NaとMoの浸出率が高かった。
上記各試料の中で最も優れたガラス固化体は、水に対する浸出率が低くガラスの安定性が比較的高いモル比1.22のガラスで模擬廃棄物を45質量%含有させた55M45P45Wであった。これはリン酸マグネシウムガラスの構造に深い関係があると考えられる。
モル比0.82、すなわちMgO:P25=45:55のガラス構造は、テトラメタリン酸イオンを含む構造である。一方、モル比1.22、すなわちMgO:P25=55:45で模擬廃棄物を45質量%含有させたもののガラス構造は、ピロリン酸イオンを含んでいると考えられる。そのため二次元的な環状構造を含むモル比0.82で模擬廃棄物を45質量%含有させたもののガラスよりも、一次元的な鎖状構造が多いモル比1.22で模擬廃棄物を45質量%含有させたガラスの方が様々なイオンを多く導入することが可能である。
また、リン酸塩ガラスの化学的耐久性は網目修飾イオンが増加するにつれて向上するという特性があるため、モル比1.22のガラスの中でも模擬廃棄物の含有量が多い45質量%の55M45P45Wの化学的耐久性が高くなったと考えられる。
次に走査型電子顕微鏡(SEM;(株)日立製作所製「S-2380N」)による観察結果を示す。図2はSEM写真であり、図中、(a)は試料45M55P25Wを、(b)は45M55P45Wを、(c)は55M45P25Wを、 (d)は55M45P45Wをそれぞれ示す。XRDの測定結果と同様に、(a)と(d)ではガラス状態が観察され、(b)と(c)では結晶の生成が観察された。また、(a)と(d)を対比すると浸出率が最も低かった(d)は単一相であるのに対して、(a)では分相が認められた。
SEM写真からもガラス固化体の中でもモル比1.22で模擬廃棄物を45質量%含有させた55M45P45Wが最も優れていることが明らかである。
実際に核燃料サイクル機構で採用されているホウケイ酸塩ガラスはガラス転移点が500℃前後、水に対する浸出率が2.5×10-5(g/cm2・day)であるので、本発明に係るモル比1.22で模擬廃棄物を45質量%含有させたガラス固化体(55M45P45W)が優れた特性を有していることがわかる。
比較例として、リン酸鉛系ガラス(組成は、P25:58.5質量%、PbO:27.3質量%、CeO2:9.7質量%、Li2O:4.5質量%)の廃棄物固化能力を示す。
評価対象のリン酸鉛系ガラスは、11.70gの(NH3)2HPO4、2.73gのPbO、0.97gのCeO2、0.45gのLi2CO3を混合し、950℃で1.5時間溶融した後、室温の空気中で自然放冷して作製した。
次いで、作製したリン酸鉛系ガラスの粉末と前記表1に記載の模擬放射性廃棄物とを廃棄物含有率が25%となるように混合し1150℃で2時間溶融し、廃棄物含有ガラス固化体を得た。また、同様にして廃棄物含有率がそれぞれ30%、35%、45%の廃棄物含有ガラス固化体を作製した。
作製したガラス固化体の相分離の有無を、実体顕微鏡(カートン光学(株)製「実体顕微鏡 SPH-40L」)で観察した。また、結晶相の有無をX線回折で測定した。X線回折の測定については、作製したガラス固化体をステンレス乳鉢で粉砕しさらにメノウ乳鉢で細かく粉砕した試料を試料ホルダーに入れ、理学電機(株)製「ミニフレックス普及型X線回折装置」を用いて粉末X線回折測定を行った。結果を表8に示す。
Figure 2005207885
表10のとおり、リン酸鉛(P25−Pb−CeO2−Lii2O)系ガラスでは、廃棄物含有率が25%を超えると相分離し、結晶相が生成するので廃棄物含有率の限界値は25%である。
ガラス固化体試料の示差熱分析(DTA)測定値を記したグラフであり、横軸は温度を縦軸は熱量を表す。 ガラス固化体試料の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (3)

  1. MgOとP25とが、モル比(MgO/P25)0.25〜2.35で含有されるリン酸マグネシウム系ガラスからなることを特徴とする放射性廃棄物の固化処理用ガラス。
  2. 放射性廃棄物がガラスに封じ込められた放射性廃棄物含有ガラス固化体において、請求項1記載のガラスが使用され且つ放射性廃棄物の含有率が5〜60質量%であることを特徴とする放射性廃棄物含有ガラス固化体。
  3. 放射性廃棄物を溶融ガラスと混合してガラスに封じ込めるガラス固化処理において、混合物中の放射性廃棄物含有率が5〜60質量%となるように放射性廃棄物と請求項1記載のガラスとを混合した後、当該混合物を加熱溶融し、次いで冷却固化することを特徴とする放射性廃棄物の固化処理方法。



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