JP2005207663A - 誘導加熱式乾留炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】炉本体の乾留ガスによる侵食を防止するとともに、放熱ロスを減少させる。
【解決手段】不活性ガス雰囲気を形成する耐火物の炉本体1内に被乾留物を入れる乾留槽が設置され、炉本体の外側に配置された加熱コイル3で乾留槽を誘導加熱することにより、被乾留物を乾留処理する誘導加熱式乾留炉において、炉本体の壁面に断熱材9を装着するものとする。断熱材の装着により炉壁からの放熱ロスが減るとともに、その分、耐火物の厚さを小さくできるので、炉重量が小さくなり、かつ加熱コイルによる加熱効率が高くなる。また、断熱材を炉本体の内側に装着することにより、炉本体を構成する耐火物を乾留ガスによる侵食から保護することができる。
【選択図】図1

Description

この発明は、塗料、樹脂などの高分子化合物を含む廃棄物を誘導加熱により乾留処理するバッチ式の誘導加熱式乾留炉に関する。
バッチ式の誘導加熱式乾留炉については、例えば特許文献1に記載されているが、図4に従来の乾留炉の概略図を示す。図4において、耐火物の炉本体1内に磁性材(鉄)からなる乾留槽2が設置され、炉本体1の外側に加熱コイル3が配置されている。炉本体1は断熱材の蓋4で閉塞されている。乾留槽2に飲料缶などの被乾留物5を入れ、炉内に窒素ガスなどの不活性ガスを充填して不活性ガス雰囲気とし、加熱コイル3に通電して乾留槽2を誘導加熱する。被乾留物5は炉体1からの輻射や熱伝導よって加熱され、所定の温度まで到達した後、その温度で一定時間保持されることにより乾留処理される。加熱中は昇温効率を上げるために、炉内に設けたファン7により炉内ガスを強制的に対流させている。ファン7により送り出された炉内ガスは、炉本体1と乾留槽2との間を矢印で示すように流れて循環する。
その場合、炉内は400℃以上の高温雰囲気となり、また被乾留物5から発生した塩素などを含む乾留ガスが存在する。従って、炉本体1は高温で使用でき、かつ乾留ガスが大気に漏れないようにする必要がある。また、乾留槽2を誘導加熱する場合には、炉本体1は電磁誘導を生じさせないために絶縁物とする必要がある。更に、炉本体1は乾留槽の躯体として構造上の強度が必要である。これらの理由から、炉本体1には一般に緻密質のアルミナ系耐火物が使用されている。
特開平10−43714号公報
上記した乾留炉において、従来は次のような問題があった。まず、乾留ガスに晒される炉本体の耐火物は、乾留ガスに含まれる塩素などと反応して侵食されやすい。耐火物は型に流し込んで成型するため、損傷すると修復に大掛かりな工事が必要となる。次に、炉壁からの放熱ロスを抑えるためには耐火物を厚くする必要があり、炉重量が増加する結果、設置に際しての建屋耐荷重が大きくなり工費がかさむ。
更に、炉壁が厚くなると、その外側に設けられる加熱コイルと炉内の乾留槽とのギャップが大きくなり加熱効率が悪くなる。ちなみに、図5は加熱コイル3の磁束分布を示し、図5(A)は乾留槽2と加熱コイル3との間のギャップが小さい場合、図5(B)はギャップが大きい場合である。図示の通り、乾留槽2と加熱コイル3とのギャップが大きくなると磁束線のギャップが広くなり、乾留槽2と鎖交する磁束は少なくなって、乾留槽2の発熱量が減少する。図6は、乾留槽2と加熱コイル3とのギャップの大小による、乾留槽2の各高さ位置(縦軸)での発熱量(横軸)の比較を示したものである。
この発明の課題は、耐火物からなる炉本体の乾留ガスによる侵食を防止するとともに、放熱ロスを減少させ、更に炉壁の厚さを小さくして軽量化と加熱効率の向上を図ることにある。
上記課題を解決するために、この発明は、不活性ガス雰囲気を形成する耐火物の炉本体内に被乾留物を入れる乾留槽が設置され、前記炉本体の外側に配置された加熱コイルで前記乾留槽を誘導加熱することにより、前記被乾留物を乾留処理する誘導加熱式乾留炉において、前記炉本体の壁面に断熱材を装着するものとする(請求項1)。請求項1の発明によれば、断熱材の装着により炉壁からの放熱ロスが減るとともに、その分、耐火物の厚さを小さくできるので、炉重量が小さくなり、かつ乾留槽と加熱コイルとの間のギャップが小さくなって加熱効率が高くなる。
請求項1の発明において、前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層の順で2層構造にすれば、耐火物の内側を断熱材で被覆して乾留ガスによる耐火物の侵食を防止することができる(請求項2)。
請求項1の発明において、前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層の順で3層構造にすれば、耐火物の内側の断熱材で耐火物の侵食を防止することができるとともに、耐火物の外側の断熱材で炉壁からの放熱損を減らして断熱効果を高めることができる(請求項3)。
請求項1の発明において、前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層、耐火物層の順で4層構造にすれば、炉壁の最外周に強度の大きい耐火物を配置し、この耐火物で加熱コイルの支持及び横方向(径方向)の位置決めを行って、コイル支持構造を簡素化することができる(請求項4)。
請求項2〜請求項4のいずれの発明においても、最内層の前記断熱材の温度は乾留ガスの凝縮温度以上に設定するのがよい(請求項5)。耐火物の内側に配置した断熱材の温度は耐火物との境界部分で低くなる。一方、断熱材は気孔率が大きいため、乾留ガスが断熱材内部に浸透することが考えられる。そのため、耐火物との境界部分近傍で断熱材の内部に温度が乾留ガス中の油分の沸点より低い場所が生じると、その場所で乾留ガスが凝縮する。そこで、耐火物より内側の断熱材の温度は乾留ガスの凝縮温度以上とし、乾留ガスの凝縮を防ぐようにする。それ以上の断熱は、耐火物の外側の断熱材で行う。
この発明によれば、炉本体の壁面に熱伝導率及び密度の小さい断熱材を装着することにより、炉壁からの放熱ロスが減るので耐火物の厚さを小さくすることができ、加熱コイルと乾留槽とが接近して加熱効率が高まるとともに、乾留炉が軽量化されて建屋耐荷重が軽減される。また、断熱材で耐火物の内側を被覆することにより、乾留ガスによる耐火物の侵食がなくなり炉寿命が長くなる。
以下、図1〜図3に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。なお、従来例と対応する部分には同一の符号を用いるものとする。
図1は、この発明の実施例1を示す乾留炉の炉本体部分の一部断面図で、図1の右側が乾留炉の内側である。図1において、炉本体1の内側の壁面に断熱材9が貼り付けられ、炉壁は炉本体1の内側から、断熱材層、耐火物層の順で2層構造に構成されている。耐火物10は断熱材9で内側が被覆されるため、乾留ガスから遮られて侵食が抑えられる。
一方、断熱材9の熱伝導率λは、例えば0.1W/(m・K)、耐火物10の熱伝導率λは、例えば1W/(m・K)で、断熱材9の熱伝導率λは耐火物10の約1/10と小さい。従って、耐火物層と等価な断熱効果を得るための断熱材層の厚さは約1/10でよい。また、断熱材9の密度ρは、例えば130kg/m3程度、耐火物10の密度ρは、例えば2500kg/m3程度で、断熱材9の密度ρは耐火物10の約1/20と小さい。従って、断熱材9は乾留炉の軽量化に寄与する。更に、断熱材9は耐火物10に比べて熱容量が小さいので、乾留炉内を所定の温度まで昇温させるための立上げ時間が短縮される。
図2は、この発明の実施例2を示すもので、炉本体1の炉壁は内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層の順で3層構造に構成されている。耐火物の内側に厚い断熱材を配置すると、外気との温度差をほとんど断熱材層で負担することになるため、断熱材層の温度は耐火物層との境界部分で低くなってしまう。また、断熱材は気孔率が大きいため、乾留ガスが断熱材層内部に浸透することがあり得る。そのため、乾留ガスに含まれる油分の沸点を350℃程度とすると、断熱材の温度が350℃以下のところまで乾留ガスが浸透した場合、その位置で凝縮する恐れがある。それを避けるために、耐火物より内側の断熱材層の温度は乾留ガスの凝縮温度以上、例えば350〜400℃以上とし、乾留ガスの凝縮を防ぐようにするのがよい。それ以上の断熱は、図2に示すように、耐火物10の外側の断熱材9で行う。耐火物10の外側にも断熱材9を設けることにより、炉壁からの放熱損を減らして断熱効果を高めることができる。
図2において、内側断熱材9の厚さを決めるための炉壁温度は数1により算出できる。
Figure 2005207663
ここで、
q=熱量[kcal/m2h]
θf1,θf1=流体温度[℃]
λ=熱伝導率[kcal/mh℃]
α=熱伝達率[kcal/mh℃]
K=熱通過率
δ=断熱層の厚み[m]
図3は、この発明の実施例3を示すもので、炉本体1の炉壁は内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層、耐火物層の順で4層構造に構成されている。誘導加熱式乾留炉では炉壁の外周に加熱コイル3が配置されるため、炉壁最外周に強度の大きい耐火物層を設け、耐火物10で加熱コイル3の支持及び横方向(径方向)の位置決めを行うことにより、コイル支持構造を簡素化することができる。
図3において、炉本体1の内側から、断熱材9を50mm、耐火物10を50mm、断熱材9を100mm、耐火物10を50mmの厚さにすることにより、数1で算出した各層境界部分での温度を図示の通りとなる。最内層の断熱材9の温度が350℃以上になるようにし、断熱材9の内部に乾留ガスが浸透した場合でも油分が凝縮しないようにしている。この最内層の断熱材9により、耐火物10を乾留ガスによる侵食から保護することができる。図示実施例3の場合、2層の断熱材層を設けたことにより炉壁の厚さは1/6程度になり、それだけ炉重量が軽量化されるとともに、乾留槽2と加熱コイル3が接近し、加熱効率及び力率が向上する。耐火物層間に設けた断熱材9は最内層の断熱材9より温度が低く、また乾留ガスに晒されることもないので、安価な材料を用いて断熱材費用を節減することができる。
この発明の実施例1を示す乾留炉の炉壁の一部断面図である。 この発明の実施例2を示す乾留炉の炉壁の一部断面図である。 この発明の実施例3を示す乾留炉の炉壁の一部断面図である。 従来例を示す乾留炉の縦断面図である。 乾留槽と加熱コイルとの間のギャップによる磁束分布の相違を示す図で、(A)はギャップが小さい場合、(B)はギャップが大きい場合である。 乾留槽と加熱コイルとの間のギャップが小さい場合と大きい場合の乾留槽の発熱量の相違を示す線図である。
符号の説明
1 炉本体
2 乾留槽
3 加熱コイル
5 被乾留物
9 断熱材
10 耐火物

Claims (5)

  1. 不活性ガス雰囲気を形成する耐火物の炉本体内に被乾留物を入れる乾留槽が設置され、前記炉本体の外側に配置された加熱コイルで前記乾留槽を誘導加熱することにより、前記被乾留物を乾留処理する誘導加熱式乾留炉において、前記炉本体の壁面に断熱材を装着したことを特徴とする誘導加熱式乾留炉。
  2. 前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層の順で2層構造にしたことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式乾留炉。
  3. 前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層の順で3層構造にしたことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式乾留炉。
  4. 前記炉本体の内側から、断熱材層、耐火物層、断熱材層、耐火物層の順で4層構造にしたことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式乾留炉。
  5. 最内層の前記断熱材の温度が乾留ガスの凝縮温度以上となるように設定したことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の誘導加熱式乾留炉。

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