JP2005203690A - 電極とはんだとの接続方法及び検査装置 - Google Patents

電極とはんだとの接続方法及び検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 基板を破壊することなく、バンプ形成する電極上のUBMの表面状態を迅速に把握できるようにして、生産工程に遅れをもたらすことなく、その後の処理を最適化できる電極とはんだとの接続方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】 電子機器又は半導体デバイスの電極に、はんだボールを接続材料として接続する電極とはんだとの接続方法であって、はんだボールと電極との濡れ性を確保するために、接続作業直前に電極表面を検査する手順を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ボールバンプ形成用の電極とはんだとの接続方法、及びその接続方法に使用して好適な検査装置に関する。
半導体実装のためのボールバンピングでは、基板となるウェハ又はチップに形成された電極表面のアンダーバンプメタル(UBM: Under Bump Metal)上に、フラックス塗布後はんだボールを搭載し、リフローすることにより、はんだバンプを形成している。
その際に、はんだボールがウェハ上のUBMに接合しないボール抜け確率(バンプ形成不良確率)が、同一ロット内で大きく異なる場合がある。また、ロット間で差が出ることも多く、バンピング工程の品質管理上大きな問題となっている。このバンプ形成不良率の大きなばらつきは、それが同一ウェハロット間からでも起きることから、回路及び電極の形成中や形成後に、ウェハの表面に起こる何らかの条件の違いが原因であると考えられる。その原因と考えられるのは、UBM表面の酸化膜、表面ゴミ、油分汚れ、残存レジスト、金属膜の欠陥、フラックス中のゴミ、搭載導電性ボール表面の酸化膜、汚れ、等が考えられる。
特表2001−501366号公報
ウェハ等の基板上の全電極表面を何らかの手法で検査して、バンプ形成不良箇所を検出し、不良発生率をバンプ形成工程前に予測することができれば、その基板全体或いは一部について前処理を施して、バンプ形成不良が起こらないような対策を取ることができ、工程管理上有利になることは明らかである。この対策としては、例えば、酸化膜及び有機物残渣を除去するような薬液でウェハ全体或いは一部を処理することが考えられる。
しかしながら、例えば真空機器分析装置による表面検査工程をバンピング工程に組み込むことは、スループットの大幅な劣化につながり、採算が取れなくなり、非実用的である。なお、バンプ形成前の受入検査を実施することは一般的に行われているが、バンプ形成直前の電極の表面状態を詳細に受入検査で実施することを記述した先行文献は見あたらない。
本発明は、上記従来技術の状況を鑑みてなされたものであり、基板を破壊することなく、バンプ形成する電極上のUBMの表面状態を迅速に把握できるようにして、生産工程に遅れをもたらすことなく、その後の処理を最適化できる電極とはんだとの接続方法及び検査装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)電子機器又は半導体デバイスの電極に、はんだボールを接続材料として接続する電極とはんだとの接続方法であって、はんだボールと電極との濡れ性を確保するために、接続作業直前に電極表面を検査する手順を有することを特徴とする電極とはんだとの接続方法。
(2)電子機器又は半導体デバイスの電極に、はんだボールを接続材料として接続する電極とはんだとの接続方法であって、はんだボールと電極との濡れ性を確保するために、接続作業直前に電極表面を光学的に検査する手順と、上記検査結果に応じて上記電子機器又は半導体デバイスの全面又は部分的に表面改質処理を行ってから接続作業を実施する手順とを有することを特徴とする電極とはんだとの接続方法。
(3)上記表面改質処理の後に、電極表面を光学的に再検査をする手順を有することを特徴とする(2)に記載の電極とはんだとの接続方法。
(4)光学的検査方法として、波長が1μmの赤外から波長0.2μmの紫外までの範囲の光を用い、表色系解析法及び偏光解析法のすくなくともいずれか一方を用いることを特徴とする(2)又は(3)に記載の電極とはんだとの接続方法。
(5)表色系解析法において、L*a*b*表色系を用いて解析し、b*が基準の値から1.0以上変化したときに、当該電極の表面改質を行ってから、はんだとの接続作業を実施することを特徴とする(4)に記載の電極とはんだとの接続方法。
(6)表面改質を必要とする電極を特定するために電極の位置を特定する手段と、上記特定された電極の位置を検出する手段と、電極表面を光学的に検査するための白色照明光源と、電極からの反射光を解析する解析手段と、画像解析を行うコンピュータから構成されることを特徴とする検査装置。
本発明によれば、例えばボールバンプ形成用の電極構造が形成されたウェハ等の基板に、波長1μmの赤外から波長0.2μmの紫外までの波長範囲の光を照射し、電極部分から反射又は散乱された光を検知する光学的手法を用いることにより、バンプ形成不良の起こる可能性のある電極箇所を予測することができる。そして、該不良箇所に前処理する等のバンプ形成前に改善処置を施すことが可能となるため、バンプ形成時の不良発生率を著しく低減させることができ、また、バンプ形成後の補修作業が不要となることから、バンプ形成工程のスループットが極めて向上する。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。上述のように、バンプ形成不良の発生を防止するためには、電極の表面分析が有効であるが、真空機器分析装置を用いた分析法では、事実上、時間やコストの面で工程管理に用いるには非現実的である。
本発明は、この不具合を解決し、作業性に優れ、迅速、非破壊で、基板に形成された電極上のUBMの表面濡れ性を予測し、必要に応じてその表面を改質した上で電極とはんだとを接続する方法及び検査装置を提供するものである。なお、本発明で用いる基板とは、電極が形成された基板を意味し、プリント基板、半導体ウェハ、半導体チップ等を対象とする。
先ず、本発明の検査方法について説明する。表面の非破壊的迅速検査法の一つとして、一連の光の吸収、反射を用いた分析法がある。光の吸収、反射を用いる分析法は、電子を用いる分析法と異なり、試料を真空中に保持する必要がないので、手間が掛からず迅速であり、また、通常の光強度では、試料を破壊・変質させることがないので、本発明で対象としている処理工程前の試料のチェックには最適と考えられる。ただし、光の吸収、反射を用いた分析法では、原子の内殻電子まで励起することができないので、元素分析は原理的に難しく、表面膜の透過率、反射率、屈折率等の物性値が得られるのみである。したがって、光の吸収、反射を用いた分析法は、迅速で非破壊という長所を用いながらも、そのまま自動的に、材料表面の原子組成を求めることはできない。
本発明の電極表面の検査方法では、表面の有機物残渣、酸化物皮膜量等、原子組成に関わる量を定量的に知ることが必要なので、光の吸収、反射を用いる分析法で得られる情報から原子組成に関わる量を見積もる知見が必要である。本発明はこのような知見を与えるものである。
電極表面にバンプを形成する方法は、これまでに数多く提案されているが、ここでは、上記特許文献1に代表される、低融点金属ボールを用いたバンプ形成法に沿ったバンプ形成法における本発明の有効性を説明する(図1を参照:2は半導体チップ、3は低融点金属ボール、8は電極)。即ち、本発明で目的とする情報が、低融点金属と電極表面の濡れ性が良好な表面と不良な表面での光学的挙動を比較することで、光の吸収、反射を用いる分析法で得られることを説明する。
Siウェハに形成された電極上に、UBM膜を作成する。UBM膜の最上膜は、種々の金属を用いることが可能であるが、ここでは、Cu金属膜を形成した。まず、成膜直後のUBM膜(以下、膜Aと呼ぶ)の上に、はんだボールを置き、非酸化性雰囲気下で加熱して、バンプを形成した。洗浄後のバンプ形成不良率が50ppm以下であったので、この膜Aは濡れ性が良好であるとした。ここでは、錫-銀-銅合金のはんだ(Pbフリー系)を用いたが、はんだは、Pb系でもPbフリー系でもいずれでも良い。
次に、上記UBM膜を同じ条件で成膜後大気中で2時間放置したもの(以下、膜Bと呼ぶ)と24時間放置したもの(以下、膜Cと呼ぶ)について、同様にバンピング過程を施し、洗浄後のバンプ形成不良率は、それぞれ50ppm以上、100ppm以上であった。
およそ100ppm以上のバンプ形成不良が発生すると、個別のリペアの時間が連続操業の経過時間に影響するようになり、スループットの低下が起こるため、24時間放置の膜Cをもって、濡れ性不良の閾値となる厚さの酸化膜が成長したUBMとした。このUBM膜の表面の酸化膜厚を偏光解析法及びオージェ電子分光法で調べると、およそ10nmであった。これから、本実験の系では、10nm以上の膜厚の酸化銅が成長しているときに、ボール抜け個数が閾値を超える「濡れ性不良UBM膜」となることがわかった。
このようにバンプ濡れ性が良好な表面と不良な表面を、光の吸収、反射を用いた非破壊で迅速な分析法で、同様に差が検知できることを以下のように確認した。
電極上のUBM膜表面は、この場合、鏡面状の銅に薄い透明酸化皮膜が形成しているものなので、光はほぼ正反射する。そこで、可視光範囲の反射スペクトルを測定した。膜Aと膜Cでは、正反射率の波長依存性に差が認められ、波長600〜700nmの範囲で、膜Cの反射率の方が1%以上大きかった。これにより、本発明の目的である濡れ性不良を原理的に予知できることが確認された。
そこで、まず、容易に表面の光学的性質を解析できる偏光解析法を適用することを検討した。偏光解析法での表面測定を説明する。Jobin-Yvon社製の可視、近紫外分光エリプソメータ「UVISEL」を用い、入射角70°、波長範囲0.48〜0.83μmで、偏光解析パラメータのデルタ及びプサイを測定する。ここで、デルタ(Δ)及びプサイ(Ψ)は、偏光解析法で常に共通して使われる便宜的パラメータで、測定対象の表面に対して、P偏光状態(電場の振動方向が入射面に平行)とS偏光状態(同垂直)の二つの状態の入射光の反射率から決定されるものである。それらは、P偏光の複素反射率をr(P)、S偏光のそれをr(S)として、両者の比である複素数r(P)/r(S)を極座標表示した場合に、実数部分がtan(Ψ)、位相部分がexp(iΔ)になるものとして定義される。数式では下式により表わされる。
Figure 2005203690
このΔ及びΨの波長依存性のデータから、酸化銅の膜厚を求める。数学的には「薄膜構造の各物質の光学定数と膜厚」のセットからΔ及びΨを計算することは容易であるが、逆にΔ及びΨから「薄膜構造の各物質の光学定数と膜厚」を直接計算することはできないことがわかっている。そこで、ここでは、偏光解析法で普通に使われるフィッティング法を用いる。即ち、モデル構造として、金属銅の上に酸化銅の薄膜が堆積した構造を仮定し、銅及び酸化銅の光学定数と膜厚からΔとΨを計算する過程をコンピュータで繰り返し試み、実測値と最も近くなる仮定膜厚の値をもって、データから解析した膜厚の値とする。この手法は、偏光解析法の分野では古くから周知である。
実際のウェハ等の基板検査では、直径100μm程度の微小領域の電極を問題とするため、アパチャを用いて、入射光であるキセノンランプ白色光を径10μmに絞り、測定する。この測定をすることによって、非接触で迅速な方法でバンプ濡れ性の予測が可能である。Jobin-Yvon社製の可視、近紫外分光エリプソメータ「UVISEL」をはじめ、近年の偏光変調型エリプソメータは、信号の取り込み速度が速く、数秒で一波長の測定、Δの計算を完了する。また、この種の装置では、照射する光のビーム径を50μm程度に絞っても十分な感度が得られるので、最小で径50μm程度の電極表面にビーム径を絞って分析をすることができる。したがって、短時間で完了することを目標とするウェハ受入検査工程では、ウェハ中のおよそ10点程度の電極表面状態を1分間程度で分析することも可能である。これによって、電極の平均的な酸化膜厚が知られ、さらにその情報を過去の知見と照らし合わせることによって、ウェハ全体でのバンプ形成不良箇所の個数の期待値を知ることができる。
以上述べたような偏光解析法を用いる検査方法では、表面の酸化膜厚や有機物残渣量について、定量的な絶対値データが直接得られる反面、一度に一点しか測定できないため、ウェハ全体で最大数十万個程度存在する電極部分を全数個別に調べることは、検査工程の限られた時間内では不可能である。ただし、ウェハ上の任意の数点〜10点程度を選んでの抜き取り検査は、可能である。
そこで、本発明が提供するもう一つの検査手法は、ウェハ全体をデジタル画像としてカラー撮影し、個々の電極の色調を過去の知見と照らし合わせることによって、一つ一つの電極についての不良バンプ形成確率を予測するものである。
近年のCCD素子及びデジタルカメラの高分解能化は著しく、画素数は1000万を超えるものが出ており、さらに高画素数の装置も製作可能である。したがって、電極サイズに応じたカラーCCD素子を用いて、バンプ形成前のウェハ全体を撮影すると、100μmφ程度の電極でも一つ一つについて、CCD素子の少なくとも一つの画素が、その電極の色調のみ(即ち、電極周辺の影響を受けずに)を測光するようにできる。
一方で、表面酸化物皮膜の厚さ及び有機物残渣と表面の色調の間には、密接な関係がある。これは、日常的に経験する、水面上に広がった油膜や石鹸膜が光の緩衝作用で虹色に着色して見えること等から、光の屈折の法則を用いた古典的な光学の解析で説明されるものであり、膜厚と発現される色調の関係を定量的に予想することもできる。したがって、例えば、UBM膜最表面にどの程度の酸化膜厚が形成されたときに、色調がどのように変化するかを、予めシミュレーション計算及び実験で求めておけば、この知見と実際の基板で撮影した画像の色調から、バンプ形成不良の発生する確率の高い電極を特定することが可能である。
色調を表わすのに、工業的に広く用いられているJISのL*a*b*表示法を用いると、定量的に色調変化を扱うことができる。デジタルカメラ等で作成したカラー画像が、例えば、ピクセル毎のRGB値で表されている場合、これをL*a*b*値に変換する方法は周知であるので、必要に応じて変換する。この表示法の内、L*は色相に関わらず「明るさ」を示すパラメータであるので、金属の反射色の場合は、照明によって変化するものであり、本発明では考慮しない。残りのa*とb*値の組で色調が表される。例えば、酸化膜の成長してない銅の色調は、a*=5.2、b*=0.7と表される。この値は測定装置によって多少異なる。上述したように、およそ10nmの酸化銅薄膜が表面に成長すると、ボール搭載抜けの問題が顕在化することが判っているが、この厚みの酸化膜成長に際しては、a*値は殆ど変化せず、b*値が約0.3増加することが、上記偏光解析法と同様のシミュレーション計算によって予測できた。従って、b*値が1.0を超えた場合には、バンプ形成不良の発生し易い電極材料と判断することができた。
また、既に説明した偏光解析法と画像解析法の両手法を組み合わせることによって、より精度の高い予測が可能になる。例えば、より迅速な手法である画像解析法によって何らかの異常と判断された電極箇所を、次に偏光解析法で調べることによって、その異常がどのような薄膜成分(酸化膜、レジスト残渣等)によって生じたのか等、より詳細な情報を得ることができる。
以上、酸化物薄膜が電極表面に存在する場合について、偏光解析法及び画像処理法での濡れ不良予測方法を説明したが、これは、レジスト残りのような他の種類の透明性皮膜が電極上に存在する場合にも、全く同じ原理で適用することができる。また、銅以外のUBMに用いられる金属、例えば、金である場合も同様に全く同じ原理で適用することができる。
詳細に説明した上述の方法を実現する装置としては、例えば図2に示すように、バンプ形成用電極が形成された基板を保持する保持機構101と、該保持機構101を面方向に操作する試料移動機構102と、白色照明光源103と、偏光解析装置104、又は、デジタルカラー写真撮影装置105の一方又は双方と、及び画像解析用コンピュータ106の一方又は双方と、から少なくとも構成される検査装置がある。
例えば、保持機構101は定盤上に配置したX−Y自動ステージとし、ウェハを二次元方向に走査することによって、各電極部分の画像取得或いは偏光反射データが取得できるようなものとする。白色照明光源103は、試料に対して垂直な方向からウェハ全面に均一に光をあてられるものであることが重要で、これは面光源発光体或いは複数の光源とハーフミラーを用いた構造等とする。さらに、偏光解析装置104としては、入射光径を50μmφ相当以下に絞り込める、近紫外及び可視分光エリプソメータ、等を用いる。また、デジタルカラー写真撮影装置105としては、電極サイズに応じた画素数を有する必要がある。
画像解析を行うためには、デジタルカラー写真撮影装置105から得られた情報を、L*a*b*表色系、L*u*v*表色系、XYZ表色系等の表色系に変換する機能が必要である。
これにより、バンプ形成前に基板上の電極表面について、事前にバンプ形成の可否を基板毎に電極全数について推定することが可能となり、必要な表面改質処理を行うことで、基板毎のバンプ形成歩留りが向上すると共に、そのばらつきが減少するため、高いスループットを維持できる。
表面改質処理としては、酸化皮膜については、酢酸、塩酸、硫酸等の酸類或いはそれらの混合物で、常温或いは加熱条件で処理することが挙げられる。
レジスト残渣等の有機物の残留を除去する表面改質処理としては、有機溶媒類(メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン等)を用いたセットプロセスによる洗浄、或いは、レジストの種類にもよるが一般のレジスト剥離プロセス、及び、RIE(反応性イオンエッチング)やオゾンプラズマ等のドライプロセスも利用することができる。
(実施例1)
電極を形成したSiウェハから切り出した半導体チップ上の電極(チップサイズ7mm角、電極数625個)の全数に対し、スパッタ装置を用いて、UBM膜として厚さ1μmのCu膜を作製した。
まず、製膜直後の膜(以下、膜Iと呼ぶ)の上に、錫-銀-銅合金(組成:96.5質量%Sn-3.0質量%Ag-0.5質量%Cu)のはんだボール(300μm直径)を載置し、非酸化性雰囲気下260℃で5分間加熱すると、はんだボールの濡れ拡がり直径は590μmと大きく拡がり、濡れ性が良好であることを確認した。また、別の電極が形成されたSiウェハを用いて、膜Iと同じ条件でUBM膜を作製し、大気中で24時間放置したもの(以下、膜IIと呼ぶ)について、同様の試験をすると、濡れ拡がり直径は360μmと小さく、濡れ性は劣化していた。
次に、これら試料のボール搭載電極に隣接する電極を切り出して、オージェ電子分光法でボール未搭載部の表面状態を分析したところ、膜I、IIのどちらも、最表面には酸化物由来の酸素が見られた。アルゴンで表面をスパッタしながら分析を続けると、酸化膜をCuOと近似したときの酸化膜厚は、試料Iで0.7nm、試料IIで8.8nmであり、表
面酸化の進行度がバンプ濡れ性を変化させているとの仮定を裏付ける結果が得られた。
以上の実験で、バンプ濡れ性が良好な表面と不良な表面が目的どおり製作でき、また、その不良原因が表面酸化膜厚の差異にあることが明らかとなったので、光の吸収、反射を用いた分析法でこの差が検知できるかどうかを検討した。
次に、偏光解析法で表面を測定した。Jobin-Yvon社製の可視、近紫外分光エリプソメータ「UVISEL」を用い、入射角70°、波長範囲0.48〜0.83μmで偏光解析パラメータのデルタ及びプサイを測定すると、プサイの値は試料Iと試料IIであまり変化がなかったが、デルタには可視光の領域でおよそ5°の差が認められた。実際のウェハ検査では、直径100μm程度の微小領域の電極を問題とするため、アパチャを用いて入射光であるキセノンランプ白色光を径10μmに絞り、減少した光量でも測定が可能かどうかを検証した。図3が、その結果である。図3において、1p及び1dは、それぞれ試料Iの偏光パラメータであるプサイ及びデルタであり、53p及び53dは、同じく試料IIのプサイ及びデルタである。この図から明らかなように、可視光を含む広い領域で、試料I、IIのデルタ
の値には2°程度の明確な差が検知されるので、この測定をすることによって、非接触で迅速な方法でバンプ濡れ性の予測が可能であることがわかる。
続いて、この手法をウェハレベルに適用した。電極のUBM膜として、上記と同様に薄膜形成後直ぐのもの(ウェハa)と、薄膜形成後24時間大気中で放置したもの(ウェハb)を用意した。ボール搭載前に、偏光解析法でウェハ全面からランダムに選んだそれぞれ1000ヶ所について酸化膜の測定を行うと、ウェハaの平均膜厚は2.1nm、ウェハbの平均膜厚は5.9nmであった。また、ウェハbでは、10nmを超える膜厚の点が2点あった。このことから、ウェハbでは、数百〜数千個程度のボール搭載抜けが発生することが予想された。
次に、これらのウェハ上に、錫-銀-銅合金のはんだボールを載置し、非酸化性雰囲気下260℃で5分間加熱した。洗浄後ボール抜け数を数えると、ウェハaで4個、ウェハbで363個であった。したがって、本発明の手法によって、効率よくボール抜けが予測できることが示された。
(実施例2)
表色系解析法について説明する。8インチ(200mm)ウェハ上に電極(最表層は銅UBM膜)を約58000個配置したものを2種用いた。UBM膜形成直後のもの(ウェハc)と、上記実施例の結果からボール抜け数で問題が発生すると予測される、薄膜形成後24時間大気中で放置したもの(ウェハd)を使用した。
ボールバンプ形成用の電極構造が形成されたウェハ全体を、デジタルカメラでカラー撮影した。用いたカメラは、画素数で約630万のものを用いた。
電極構造は、径300μmの銅系電極部が格子状に電極間間隔300μm(電極の中心間間隔600μm)で並んでいるものを用いた。このサイズは、現在、実製品のボールバンプ形成で典型的に見られるサイズの一つである。8インチ(200mm)ウェハ内の総電極数は約58000である。図4において、丸は径300μmの電極、四角は一辺100μmの画素を表す。上記デジタルカメラは、短辺の分解能が2048であるので、典型的な径200mmのウェハを短辺方向の素子視野一杯に撮影すると、単一画素の撮影領域は一辺100μmの正方形となる。図4に示した4つの正方形は、隣接する4画素を示している。図から明らかなように、電極の直径が100μm×80.5≒282μmよりも大きければ必ず、電極付近のいずれか一つ以上の画素は電極部分のみを含み、電極以外の部分を含まないことがわかる。
ボールバンプ形成用の電極構造が形成された200mmウェハを、上記デジタルカメラとマクロ光学系を用いて、素子視野のなるべく大きな部分でウェハ全体が撮影されるように調整して、カラー撮影を行った。撮影に際しては、演色性に優れるメタルハライドランプの光で、ハーフミラーを用いて上方から照明し、カメラ自体の影や反射像の映り込みを防止するとともに、ウェハ全面に均一な照明光が当たるように工夫した。得られた画像をビットマップ形式で保存し、通信ケーブルを用いてパーソナルコンピュータに転送して、以降の解析を行った。
画像の解析には、自作の計算プログラムを用いた。まず、ディスプレイ上に画像を表示し、10倍に拡大した。これによって、電極部分と画素の位置的対応関係が肉眼で識別し易くなる。
初めに、表面濡れ性が正常と思われるウェハcの電極の色調を求めた。電極部分のみを写している画素を選び、画素の色調の(JIS)L*a*b*値を求めた。同様に、ウェハdについても行った。上述のように、この内のb*の値を、酸化膜成長程度を示すパラメータとして用いることとした。ウェハcのb*の平均値は0.723、ウェハdは0.724となり、平均値での差は殆ど見られなかった。しかしながら、b*値が1.0を超える点の数は、ウェハcで13、ウェハdでは145と大きく異なっていた。b*値が1.0を超える電極の全位置をここで記録した。
次に、これらのウェハ上に、錫-銀-銅合金(組成:96.5質量%Sn-3.0質量%Ag-0.5質量%Cu)のはんだボール(300μm直径)を載置し、非酸化性雰囲気下260℃で5分間加熱した。洗浄後ボール抜け数を数えると、ウェハcで7個、ウェハdで108個であった。
ここで、先に記録しておいた、b*値が1.0を超える電極の全位置と、ボール抜けの発生した電極位置を照合した。記録されたウェハcの電極位置の内、b*値が1.2を超える電極は6点あり、この6点はすべてボール抜けの発生した点であった。また、記録されたウェハdの電極位置のうち、b*値が1.2を超える電極は106点あり、そのうち89点はボール抜けの発生した点であった。従って、本手法によってバンプ形成不良がおこる電極箇所を事前に高い確率で知ることができることが明らかになった。
また、不良と予測した箇所に前処理をすることによって、不良率が改善されるかどうかを確認するため、ウェハdと同じく薄膜形成後24時間大気中で放置したウェハeを作成した。ウェハeについて上述の色調を測定すると、ウェハdとほぼ同様の結果が得られた。ここでウェハeにウェハdと同じ上記の条件ではんだボールを載置すると、ウェハdの結果と同様に100個を超えるボール抜けが発生してしまうことが予測される。そこで、酢酸水溶液でウェハeを1時間処理した。処理直後に色調測定を行うと、b*値が1.2を超える電極は3点となった。その後、上記と同じ条件ではんだボールを載置すると、洗浄後のボール抜け数は3個であった。しかも、b*値が1.2を超える電極でボール抜けが発生していた。従って、不良の多数発生することが本発明の解析方法によって予測されたウェハに対しては、酸洗浄のような付加的な前処理を施すことによって、不良率を改善することができることが示された。
(実施例3)
上記実施例1で示した偏光解析法による不良点の解析法は、上記実施例2で示した画像解析法による不良点の解析法に比べて、酸化皮膜の生成による不良点の発生を特異的に検知できる特徴がある。なぜなら、画像解析法において酸化皮膜成長による色調変化と同様の色調変化を引き起こす別の要因がある可能性があり、その場合画像解析法では区別ができないからである。一方、偏光解析法は電極点一つ一つについて個別に測定を行うため、測定に時間がかかる短所がある。実施例1において、全電極点のうちの一部の点についてのみ測定をおこなったのも、全電極点について解析を行うことは時間的に困難だったためである。そこで、偏光解析法と画像処理法を組み合わせて、精度の高い検出をより効率よく行うことを試みた。
ウェハdと同じく薄膜形成後24時間大気中で放置したウェハfを作成した。ここでウェハfにウェハdと同じ上記の条件ではんだボールを載置すると、ウェハdの結果と同様に100個を超えるボール抜けが発生してしまうことが予測される。ウェハfについて、実施例2と同様に写真撮影と画像処理によって色調の(JIS)b*値を全電極点について求めると、b*値が1.0を超える点の数は、151点であった。b*値が1.0を超える電極の全位置をここで記録した。
次に、この151点のみについて偏光解析法で詳細な解析を行った。偏光解析データを各点について取得し、金属銅の上に生成した酸化銅として解析すると、全151点の内、酸化皮膜の厚さが10nm以上として解析される点が99点、同じく10nm未満として解析される点が46点、酸化銅として解析ができない点が6点であった。これらの電極点の位置を再び記録した。
続いて、次に、これらのウェハ上に、錫-銀-銅合金(組成:96.5質量%Sn-3.0質量%Ag-0.5質量%Cu)のはんだボール(300μm直径)を載置し、非酸化性雰囲気下260℃で5分間加熱した。洗浄後ボール抜け数を数えると、102個であった。先に記録した、酸化皮膜の厚さが10nm以上として解析される点99点と、このはんだボール抜け点を照合すると、抜け点102の内、98点は酸化皮膜の厚さが10nm以上として解析された点であった。従って、偏光解析法と画像処理法を組み合わせることによって、はんだボール抜け発生点のより精度の高い予測を、より効率よく行うことができることが確認できた。
低融点金属ボールを用いたバンプ形成法を示す図である。 検査装置の構成例を示す図である。 電極表面の酸化膜(実線:試料A、破線:試料B)を偏光解析した結果を示す図である。 電極と画素の関係を説明するための図である。
符号の説明
101 保持機構
102 試料移動機構
103 白色照明光源
104 偏光解析装置
105 デジタルカラー写真撮影装置
106 画像解析用コンピュータ

Claims (6)

  1. 電子機器又は半導体デバイスの電極に、はんだボールを接続材料として接続する電極とはんだとの接続方法であって、
    はんだボールと電極との濡れ性を確保するために、接続作業直前に電極表面を検査する手順を有することを特徴とする電極とはんだとの接続方法。
  2. 電子機器又は半導体デバイスの電極に、はんだボールを接続材料として接続する電極とはんだとの接続方法であって、
    はんだボールと電極との濡れ性を確保するために、接続作業直前に電極表面を光学的に検査する手順と、
    上記検査結果に応じて上記電子機器又は半導体デバイスの全面又は部分的に表面改質処理を行ってから接続作業を実施する手順とを有することを特徴とする電極とはんだとの接続方法。
  3. 上記表面改質処理の後に、電極表面を光学的に再検査をする手順を有することを特徴とする請求項2に記載の電極とはんだとの接続方法。
  4. 光学的検査方法として、波長が1μmの赤外から波長0.2μmの紫外までの範囲の光を用い、表色系解析法及び偏光解析法のすくなくともいずれか一方を用いることを特徴とする請求項2又は3に記載の電極とはんだとの接続方法。
  5. 表色系解析法において、L*a*b*表色系を用いて解析し、b*が基準の値から1.0以上変化したときに、当該電極の表面改質を行ってから、はんだとの接続作業を実施することを特徴とする請求項4に記載の電極とはんだとの接続方法。
  6. 表面改質を必要とする電極を特定するために電極の位置を特定する手段と、
    上記特定された電極の位置を検出する手段と、
    電極表面を光学的に検査するための白色照明光源と、
    電極からの反射光を解析する解析手段と、
    画像解析を行うコンピュータから構成されることを特徴とする検査装置。

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