JP2005203575A - シリコンウェーハおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
ウェーハ製造工程の各高温熱処理時のスリップの伸長だけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップの伸長も抑制可能なシリコンウェーハおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
予めシリコンウェーハB、Cの内部に1×103個/cm2以上のバルク積層欠陥cを形成させるので、後のウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップbだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップbに対する伸長も抑制できる。シリコンウェーハB、Cには、スリップbがほとんど発生せず、デバイス工程での過酷な高温熱処理時にもスリップbを抑制できる。
【選択図】図1
ウェーハ製造工程の各高温熱処理時のスリップの伸長だけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップの伸長も抑制可能なシリコンウェーハおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
予めシリコンウェーハB、Cの内部に1×103個/cm2以上のバルク積層欠陥cを形成させるので、後のウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップbだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップbに対する伸長も抑制できる。シリコンウェーハB、Cには、スリップbがほとんど発生せず、デバイス工程での過酷な高温熱処理時にもスリップbを抑制できる。
【選択図】図1
Description
この発明はシリコンウェーハおよびその製造方法、詳しくはウェーハの内部にバルク積層欠陥を形成することにより、耐スリップ性を高めるシリコンウェーハおよびその製造方法に関する。
シリコンウェーハをウェーハボートの挿填溝に挿填して高温熱処理するとき、特にウェーハ直径が200mm、300mmという大口径ウェーハになると、ウェーハボートとの接触部分に発生したボート跡を起点とし、ウェーハの裏面から表面に貫通するスリップが顕著化し易い。これは、シリコンウェーハの自重、および、ウェーハ面内の温度差から生じた熱応力による。スリップはデバイス工程で成長し、それがデバイス工程での不良の原因となり、歩留りを低下させる要因の一つとなっていた。
このようなスリップの発生、成長を抑制する方法として、熱処理中に酸素析出物を核として成長したOSF(Oxidation Induced Stacking Fault:酸化誘起積層欠陥)が注目されている。例えば、特許文献1には、シリコンウェーハの最外周部にOSF領域を存在させ、スリップを抑制させる方法が記載されている。また、特許文献2には、シリコンウェーハの全面にOSFを存在させ、これを高温熱処理の前にプレアニールし、シリコンウェーハ中に酸素析出物を意図的に成長させる方法が記載されている。いずれもOSF領域に存在する大きいサイズの酸素析出物が、高温熱処理時に伸長するスリップを塞き止めると記載されている。
再公表特許WO01/34882号公報
特開2003−243404号公報
しかしながら、熱処理中に成長する酸素析出物の大きさには限界がある。そのため、小さいサイズの酸素析出物を含有するシリコンウェーハでは、熱処理中に酸素析出物をスリップの伸長を抑制可能なサイズまでに成長させることは難しい。その結果、小さいサイズの酸素析出物では、高温熱処理時に伸長するスリップを完全に止めることはできない。また、故意に析出物サイズを大きくするために炉内で長時間の熱処理を施すと、析出物自体からのスリップ発生・伸長が生じ、その結果、デバイスプロセス中でのウェーハの割れ、欠けが生じ、スリップ抑制の効果とは逆に、デバイスの歩留まりを大幅に落とす要因にもなる。仮にスリップを発生させる直前の大きさに析出物を成長させたとしても、デバイス工程中の過酷な熱処理条件ではスリップの伸長を完全に止めることは難しい。
さらに、特許文献1のように、OSFリング領域が外周部に存在するシリコンウェーハでは、OSFリングの内側に酸素析出物の密度が非常に少ない領域が存在する。この領域は、特異な熱履歴により点欠陥の凝集・成長が抑制される領域である。したがって、析出物核密度が非常に低くなり、酸素析出物密度も低くなる。そのため、仮に酸素析出物の密度が非常に低い領域がシリコンウェーハのボート支持部分に該当したときには、必要なサイズ以上の酸素析出物をシリコンウェーハのボート支持部分に十分に存在させることができず、結果的には高温プロセス中でのスリップの伸長を完全に止めることはできないおそれがある。
そこで、発明者らは、特に直径200mm以上の大口径ウェーハの高温熱処理時に生じるスリップについて、鋭意研究を重ねた。その結果、スリップ伸長が抑制される要因には、このような酸素析出物のサイズの問題のほか、高温熱処理中に成長する酸素析出物を基体にして形成されるバルク中の積層欠陥(以下、バルク積層欠陥(BSF);Bulk Stacking Fault)が関与することを知見した。
バルク積層欠陥は、シリコンウェーハの表面酸化により形成されるOSFとは形成過程が異なる。すなわち、バルク積層欠陥とは、高温熱処理時にシリコンウェーハ中で酸素析出物が成長される過程において、酸素析出物の周りの歪み場と、酸素析出物自体から吐き出された格子間シリコンとが結合して形成される帯状の二次欠陥である。したがって、適切な熱処理を施せば、ウェーハ表面だけではなく、シリコンウェーハの内部(バルク)の全域にバルク積層欠陥を高密度に形成させることが可能になる。
バルク積層欠陥は、シリコンウェーハの表面酸化により形成されるOSFとは形成過程が異なる。すなわち、バルク積層欠陥とは、高温熱処理時にシリコンウェーハ中で酸素析出物が成長される過程において、酸素析出物の周りの歪み場と、酸素析出物自体から吐き出された格子間シリコンとが結合して形成される帯状の二次欠陥である。したがって、適切な熱処理を施せば、ウェーハ表面だけではなく、シリコンウェーハの内部(バルク)の全域にバルク積層欠陥を高密度に形成させることが可能になる。
また、スリップ抑制効果について、酸素析出物とバルク積層欠陥とを比較した場合、酸素析出物は大きいサイズのものでも200nm程度しかない。これに対して、バルク積層欠陥は帯状ではあるが、数μm〜数百μmと酸素析出物よりも大型である。したがって、スリップが欠陥に衝突する確率を考慮すれば、酸素析出物とバルク積層欠陥とが同密度の場合はもちろん、酸素析出物の密度がバルク積層欠陥の密度より1桁大きい場合でも、スリップ抑制にはバルク積層欠陥の方がはるかに有利となる。
以上のことから、発明者らは、酸素析出物を成長させるプロセスではスリップ抑制効果が得られないシリコンウェーハでも、適切な高温熱処理を行ってバルク積層欠陥を形成させれば、ウェーハ製造工程の熱処理中だけでなく、デバイス工程の熱処理中に発生するスリップの伸長もそれぞれ抑制できることに想到し、この発明を完成させた。
以上のことから、発明者らは、酸素析出物を成長させるプロセスではスリップ抑制効果が得られないシリコンウェーハでも、適切な高温熱処理を行ってバルク積層欠陥を形成させれば、ウェーハ製造工程の熱処理中だけでなく、デバイス工程の熱処理中に発生するスリップの伸長もそれぞれ抑制できることに想到し、この発明を完成させた。
この発明は、ウェーハ製造工程の各高温熱処理時に発生するスリップの伸長だけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップの伸長もそれぞれ抑制することができるシリコンウェーハおよびその製造方法を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、ウェーハ熱処理時に、ウェーハの内部に形成される所定長さを有する帯状のバルク積層欠陥が1×103個/cm2以上存在したシリコンウェーハである。
請求項1に記載の発明によれば、ウェーハの内部には、1×103個/cm2以上の多量のバルク積層欠陥が存在する。バルク積層欠陥の欠陥サイズは、数μm〜数百μmと酸素析出物よりも大型である。したがって、その後のウェーハ高温加熱時では、ウェーハの内部で伸長中のスリップの先端がバルク積層欠陥に衝突して塞き止められ、スリップの伸長が停止する。このように、予めウェーハの内部に所定量のバルク積層欠陥を形成させておけば、その後、ウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップに対する伸長もそれぞれ抑制することができる。
シリコンウェーハとしては、単結晶シリコンウェーハを採用することができる。また、ウェーハ表面にエピタキシャル層が成長されたエピタキシャルウェーハでもよい。
シリコンウェーハの大きさは限定されない。ただし、この発明は、直径が200mm、300mmまたはそれ以上の大口径ウェーハに対して効果が顕著になる。
バルク積層欠陥とは、シリコンウェーハを熱処理し、シリコンウェーハの内部に形成される酸素析出物に起因した帯状の積層欠陥である。バルク積層欠陥は、シリコンウェーハの内部だけでなく、シリコンウェーハの表裏面に露出したものを含む。バルク積層欠陥は、ウェーハ面内の全域に形成した方が好ましい。
バルク積層欠陥の好ましい密度は、1×104〜1×106個/cm2である。バルク積層欠陥が1×103個/cm2未満では、スリップと欠陥とが衝突する確率が低下する。これにより、スリップの抑制効果も小さくなる。バルク積層欠陥の長さは、数μm〜数百μm、好ましくは10〜50μmである。数μm未満では、欠陥が小さすぎて、熱処理時に良好にスリップを防止することができない。また、数百μmを超えると、熱処理中にウェーハ表面に突き出す。
シリコンウェーハの大きさは限定されない。ただし、この発明は、直径が200mm、300mmまたはそれ以上の大口径ウェーハに対して効果が顕著になる。
バルク積層欠陥とは、シリコンウェーハを熱処理し、シリコンウェーハの内部に形成される酸素析出物に起因した帯状の積層欠陥である。バルク積層欠陥は、シリコンウェーハの内部だけでなく、シリコンウェーハの表裏面に露出したものを含む。バルク積層欠陥は、ウェーハ面内の全域に形成した方が好ましい。
バルク積層欠陥の好ましい密度は、1×104〜1×106個/cm2である。バルク積層欠陥が1×103個/cm2未満では、スリップと欠陥とが衝突する確率が低下する。これにより、スリップの抑制効果も小さくなる。バルク積層欠陥の長さは、数μm〜数百μm、好ましくは10〜50μmである。数μm未満では、欠陥が小さすぎて、熱処理時に良好にスリップを防止することができない。また、数百μmを超えると、熱処理中にウェーハ表面に突き出す。
請求項2に記載の発明は、表面側にDZ層が形成された請求項1に記載のシリコンウェーハである。
請求項2に記載の発明によれば、シリコンウェーハの表面側にシリコン単結晶からなるDZ層(無欠陥領域)が存在する。そのため、汎用タイプのシリコンウェーハの場合と同じように、デバイス工程では高純度なシリコンの表層にデバイスを形成させることができる。その結果、多量のバルク積層欠陥を有するシリコンウェーハでも、デバイス性能が従来のシリコンウェーハに比べて劣ることはない。
シリコンウェーハの表面側に、DZ層を形成するための高温熱処理条件は限定されない。シリコンウェーハの表面から酸素が効率よく外方拡散する温度、処理時間で行う。
DZ層の厚さは限定されない。例えば10〜100μm、好ましくは20〜100μmである。10μm未満では、客先のデバイス工程でリーク不良が生じる。また、100μmを超えると必然的に酸素析出物密度が低くなり、ゲッタリング能不足という不都合が生じる。
DZ層の厚さは限定されない。例えば10〜100μm、好ましくは20〜100μmである。10μm未満では、客先のデバイス工程でリーク不良が生じる。また、100μmを超えると必然的に酸素析出物密度が低くなり、ゲッタリング能不足という不都合が生じる。
請求項3に記載の発明は、窒素を1×1012〜1.0×1015atoms/cm3含有した請求項1または請求項2に記載のシリコンウェーハである。
請求項3に記載の発明によれば、シリコンウェーハ中に1×1012〜1.0×1015atoms/cm3の窒素が存在する。これにより、初期の酸素析出物サイズが大きくなり、酸素析出物からバルク積層欠陥が形成され易くなる。しかも、シリコンウェーハの機械的強度も高まる。
窒素の好ましい添加量は、1×1013〜1×1015atoms/cm3である。窒素濃度が1×1012atoms/cm3未満では、シリコン単結晶の育成時に発生するCOP(Crystal Originated Particle)が大きくなり過ぎるため、DZ熱処理後でも表面に溶存してしまい、デバイスの歩留まりを落とす要因になる。COPとは、シリコン単結晶の育成時の結晶欠陥に起因してウェーハ洗浄時に顕在化するピットである。また、窒素濃度が1.0×1015atoms/cm3を超えると、窒素の低い偏析係数から、単結晶引き上げ中の転位発生率が上がり、その結果、シリコン結晶のコストが高騰する。これにより、シリコン単結晶インゴットから形成されるウェーハ1枚当たりのコストが高くなり過ぎてしまい、量産化には不向きとなる。
請求項4に記載の発明は、チョクラルスキー法に則って行われ、酸素濃度が10×1017atoms/cm3以上となるCOP発生領域を含むシリコン単結晶の育成と、この育成により得られたシリコン単結晶インゴットに対するウェーハ加工とを順次施し、該シリコン単結晶インゴットのうち、前記COP発生領域を含む結晶部位をスライシングしてシリコン単結晶からなるウェーハを得るウェーハ作製工程と、該ウェーハを熱処理し、該ウェーハの内部に形成される酸素析出物に起因した所定長さを有する帯状のバルク積層欠陥を、前記ウェーハの内部に1×103個/cm2以上形成させるプレアニール工程とを備えたシリコンウェーハの製造方法である。
請求項4に記載の発明によれば、COP発生領域(酸素濃度10×1017atoms/cm3以上)を含む結晶部位からなるウェーハに所定の熱処理を施すと、ウェーハの内部に1×103個/cm2以上の多量のバルク積層欠陥が形成される。このバルク積層欠陥の欠陥サイズは、前述したように数μm〜数百μmと、酸素析出物よりも大型である。したがって、その後のウェーハ高温熱処理時では、ウェーハの内部で伸長中のスリップの先端がバルク積層欠陥に達して塞き止められ、スリップの伸長が停止する。したがって、予めウェーハの内部に所定量のバルク積層欠陥を形成させておけば、その後、ウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップに対する伸長も、それぞれ抑制することができる。
チョクラルスキー(CZ)法によるシリコン単結晶の育成方法は、まずシリコン単結晶引き上げ装置のルツボ内に所定量の多結晶高純度シリコンを投入し、その後、CZ引き上げ装置のチャンバ内を所定のガスの雰囲気とし、ルツボ内で多結晶シリコンをヒータにより加熱して溶融状態とする。次に、シードチャックに取り付けた種結晶を、シリコン単結晶の融液に浸積する。その後、ルツボおよび引き上げ軸を回転させながら、種結晶を上方に所定速度で引き上げる。これにより、シリコン単結晶インゴットが育成される。
好ましい酸素濃度は、10×1017〜18×1017atoms/cm3である。さらに好ましくは12×1017〜16×1017atoms/cm3である。酸素濃度が10×1017atoms/cm3未満では、酸素析出物のシリコンウェーハ内での単位体積当たりの形成数が不足する。これにより、酸素析出物を中心として形成されるバルク積層欠陥を1×103個/cm2以上形成することは難しくなる。
COP発生領域は、ウェーハの少なくとも一部に有していればよい。例えば、ウェーハの外周部のうち、ウェーハボートとの接触部付近だけでもよい。
COP発生領域は、ウェーハの少なくとも一部に有していればよい。例えば、ウェーハの外周部のうち、ウェーハボートとの接触部付近だけでもよい。
また、COP発生領域を有したシリコン単結晶インゴットの製造方法では、まずシリコン単結晶の引き上げ時、その引き上げ速度および結晶内温度勾配の平均値を制御して育成する。具体的には、引上速度をVmm/minとする。また、シリコン融点から1300℃までの引上軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG℃/mmとする。この時に、V/Gで表される比を、リング状の酸化誘起積層欠陥が結晶中心で消滅するV/G比(臨界値)よりも大きくなるように結晶成長を制御すれば、COP発生領域だけのシリコン単結晶を育成することが可能になる。その後、シリコン単結晶インゴットに対して、所定のウェーハ加工を施す。
ウェーハ加工としては、例えばシリコン単結晶インゴットの外周を整える外周研削、外周の一部にノッチを形成するノッチ加工、シリコン単結晶インゴットが所定長さに切断されるブロック切断後、インゴットブロックがワイヤソーなどを用いて多数枚のシリコン単結晶ウェーハにスライスされる。その後、得られたウェーハには面取り、ラッピング、エッチング、研磨などが順次施され、製品化される。
プレアニール工程のアニール条件は限定されない。ウェーハの内部(ウェーハ面内のほぼ全域)に1×103個/cm2 以上のバルク積層欠陥を形成させることができればよい。
ウェーハ加工としては、例えばシリコン単結晶インゴットの外周を整える外周研削、外周の一部にノッチを形成するノッチ加工、シリコン単結晶インゴットが所定長さに切断されるブロック切断後、インゴットブロックがワイヤソーなどを用いて多数枚のシリコン単結晶ウェーハにスライスされる。その後、得られたウェーハには面取り、ラッピング、エッチング、研磨などが順次施され、製品化される。
プレアニール工程のアニール条件は限定されない。ウェーハの内部(ウェーハ面内のほぼ全域)に1×103個/cm2 以上のバルク積層欠陥を形成させることができればよい。
請求項5に記載の発明は、前記プレアニール工程では、前記シリコン単結晶からなるウェーハを900〜1100℃で、30分以上熱処理する請求項4に記載のシリコンウェーハの製造方法である。
この温度に設定した理由は以下に挙げられる。すなわち、過去の知見から、バルク積層欠陥を電子顕微鏡(TEM)で観察すると、積層欠陥の中央部には酸素析出物が必ず存在する。これは、バルク積層欠陥の形成に、酸素析出物核が必要不可欠であることを示している。
ところが、熱処理後のウェーハに含まれるバルク積層欠陥密度と酸素析出物の密度を比較すると、圧倒的に酸素析出物密度が高い。このことは、熱処理することで、すべての酸素析出物がバルク積層欠陥になるというわけではなく、ある条件を満たしたときのみ、酸素析出物を起点にしてバルク積層欠陥が形成されることを意味している。
その条件として、一つは酸素析出物周りの歪み場の存在である。一般に析出物は母相であるシリコンとの界面で酸素原子とシリコン原子が出入りすることで成長・収縮する。その際に出入りする原子の体積が異なるため、成長前後での体積変化が生じ、その結果、析出物の周りに歪み場が生じる。この歪み場の大きさは析出物のサイズと形態に依存し、酸素原子は析出物のサイズが大きいほど、歪み場も大きくなる。また、シリコン原子は多面体析出物よりも板状析出物の方が、歪みが大きい。これは板状であると、析出物の長さの縦横比が大きいため、成長レートが縦横で異なり、その結果、析出物の周囲に大きな引っぱり応力と圧縮応力が生じるためである。さらに析出物は、周囲の温度により形態が変化する。すなわち、板状の析出物は1100℃以上の温度で多面体へと変化する。一度多面体に形態変化した析出物は、板状には戻らない。
もう一つの条件は、過剰な格子間シリコンの存在である。積層欠陥は析出物の周りの歪み場(膨張場)に、格子間シリコンが引き寄せられて成長する。したがって、過飽和な格子間シリコンが存在しないと積層欠陥は形成されない。過飽和な格子間シリコンを形成する方法としては、析出物を成長させる方法が良い。析出物は成長にともなって、シリコン原子を周囲に放出させるからである。したがって、高密度に析出物が存在すれば、熱処理により、より多くの過剰な格子間シリコンを結晶中に存在させることが可能となる。
以上をまとめると、高密度に積層欠陥(バルク積層欠陥を含む)を形成させる効率の良い方法とは、高密度に析出核が存在するシリコンウェーハを用いて、請求項5に示すように、900℃以上1100℃以下の温度領域で、ゆっくりと析出物を成長させる熱処理方法である。1100℃以下の温度領域に設定したのは、析出物の形態が多面体に変化する温度に達しないからである。また、900℃未満の温度領域では、酸素の拡散速度が低く、析出物が成長しないからである。
この温度に設定した理由は以下に挙げられる。すなわち、過去の知見から、バルク積層欠陥を電子顕微鏡(TEM)で観察すると、積層欠陥の中央部には酸素析出物が必ず存在する。これは、バルク積層欠陥の形成に、酸素析出物核が必要不可欠であることを示している。
ところが、熱処理後のウェーハに含まれるバルク積層欠陥密度と酸素析出物の密度を比較すると、圧倒的に酸素析出物密度が高い。このことは、熱処理することで、すべての酸素析出物がバルク積層欠陥になるというわけではなく、ある条件を満たしたときのみ、酸素析出物を起点にしてバルク積層欠陥が形成されることを意味している。
その条件として、一つは酸素析出物周りの歪み場の存在である。一般に析出物は母相であるシリコンとの界面で酸素原子とシリコン原子が出入りすることで成長・収縮する。その際に出入りする原子の体積が異なるため、成長前後での体積変化が生じ、その結果、析出物の周りに歪み場が生じる。この歪み場の大きさは析出物のサイズと形態に依存し、酸素原子は析出物のサイズが大きいほど、歪み場も大きくなる。また、シリコン原子は多面体析出物よりも板状析出物の方が、歪みが大きい。これは板状であると、析出物の長さの縦横比が大きいため、成長レートが縦横で異なり、その結果、析出物の周囲に大きな引っぱり応力と圧縮応力が生じるためである。さらに析出物は、周囲の温度により形態が変化する。すなわち、板状の析出物は1100℃以上の温度で多面体へと変化する。一度多面体に形態変化した析出物は、板状には戻らない。
もう一つの条件は、過剰な格子間シリコンの存在である。積層欠陥は析出物の周りの歪み場(膨張場)に、格子間シリコンが引き寄せられて成長する。したがって、過飽和な格子間シリコンが存在しないと積層欠陥は形成されない。過飽和な格子間シリコンを形成する方法としては、析出物を成長させる方法が良い。析出物は成長にともなって、シリコン原子を周囲に放出させるからである。したがって、高密度に析出物が存在すれば、熱処理により、より多くの過剰な格子間シリコンを結晶中に存在させることが可能となる。
以上をまとめると、高密度に積層欠陥(バルク積層欠陥を含む)を形成させる効率の良い方法とは、高密度に析出核が存在するシリコンウェーハを用いて、請求項5に示すように、900℃以上1100℃以下の温度領域で、ゆっくりと析出物を成長させる熱処理方法である。1100℃以下の温度領域に設定したのは、析出物の形態が多面体に変化する温度に達しないからである。また、900℃未満の温度領域では、酸素の拡散速度が低く、析出物が成長しないからである。
請求項5に記載の発明によれば、プレアニール工程において、900〜1100℃というウェーハの内部にバルク積層欠陥が形成され易い温度領域を、30分以上もの長い時間をかけてゆっくりと昇温させる。これにより、板状の析出物を多量に作り込み、バルク積層欠陥を高密度に形成させることができる。その結果、スリップ抑制効果が高まり、スリップ伸長を完全に止めることも可能となる。
さらに、ウェーハの好ましい熱処理温度は1000℃〜1050℃である。バルク積層欠陥の生成には、過飽和な格子間シリコンと酸素析出物周りの歪み場が必要となる。900℃未満では、酸素析出物が成長せず、バルク積層欠陥の形成に必要な格子間シリコンが吐き出されない。また、1100℃を超えれば、酸素析出物が板状から多面体に形態変化する。そのため、析出物の周りの歪み場が減少し、バルク積層欠陥が生成し難い。しかも、1100℃を超えると熱応力が大きくなり、バルク積層欠陥が形成される前にスリップが伸長してしまう。
また、ウェーハの好ましい熱処理時間は30〜600分である。特に60分〜180分が好ましい。30分未満では、バルク積層欠陥が形成される温度領域を急速に昇温してしまい、スリップ抑制に必要なバルク積層欠陥密度(1×103個/cm2以上)が得られない。
また、ウェーハの好ましい熱処理時間は30〜600分である。特に60分〜180分が好ましい。30分未満では、バルク積層欠陥が形成される温度領域を急速に昇温してしまい、スリップ抑制に必要なバルク積層欠陥密度(1×103個/cm2以上)が得られない。
プレアニール工程は、900〜1100℃の温度領域であれば、数段階に分けて昇温してもよい。
さらに、プレアニール工程は、このように高温熱処理温度未満の温度で一定時間保持するだけでなく、高温熱処理温度までの昇温速度を低速化することでも対処することができる。
このようなプレアニール工程は、シリコンウェーハの昇温過程だけでの実施に限定されるものではない。例えば、熱処理後の降温過程でも、シリコンウェーハを900〜1100℃の温度領域に保持すれば、プレアニールが可能になる。また、あらかじめ上記温度領域を保持させるプロセスを施した後、再度DZ処理のために高温炉に投入し、昇温してもよい。
さらに、プレアニール工程は、このように高温熱処理温度未満の温度で一定時間保持するだけでなく、高温熱処理温度までの昇温速度を低速化することでも対処することができる。
このようなプレアニール工程は、シリコンウェーハの昇温過程だけでの実施に限定されるものではない。例えば、熱処理後の降温過程でも、シリコンウェーハを900〜1100℃の温度領域に保持すれば、プレアニールが可能になる。また、あらかじめ上記温度領域を保持させるプロセスを施した後、再度DZ処理のために高温炉に投入し、昇温してもよい。
請求項6に記載の発明は、前記プレアニール工程後、水素ガスおよびまたは不活性ガスの雰囲気で、前記ウェーハに1100〜1350℃の高温熱処理を施し、該ウェーハの表面側にDZ層を形成させる請求項4または請求項5に記載のシリコンウェーハの製造方法である。
請求項6に記載の発明によれば、プレアニール工程後、シリコンウェーハに対して、水素ガスおよびまたは不活性ガスの雰囲気で、1100〜1350℃の高温熱処理を施す。これにより、シリコンウェーハの表面側に存在する酸素析出物およびCOPが徐々に縮小または消滅し、ウェーハ表面側に高純度のシリコン単結晶からなるDZ層が形成される。その結果、高品質なシリコンウェーハを製造することができる。
不活性ガスとしては、例えばアルゴンガス、窒素ガスを採用することができる。その他、プレアニールの炉内の雰囲気ガスとしては、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスでもよい。
プレアニール用の加熱炉への水素ガスなどの供給量は5〜100リットル/分、好ましくは10〜50リットル/分である。
プレアニール用の加熱炉への水素ガスなどの供給量は5〜100リットル/分、好ましくは10〜50リットル/分である。
DZ層の形成時の好ましい熱処理温度は1150〜1250℃である。1100℃未満では表面のCOPが消滅せず、十分な厚さのDZ層が得られない。また、1350℃を超えると大きな熱応力が発生するため、ウェーハを支持しているボートとの接触位置からスリップ転位が生じやすい。
請求項7に記載の発明は、前記ウェーハ作製工程では、前記シリコン単結晶の育成時に、該シリコン単結晶中に1×1012〜1.0×1015atoms/cm3の窒素をドープする請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載のシリコンウェーハの製造方法である。
請求項7に記載の発明によれば、ウェーハ中に1×1012〜1.0×1015atoms/cm3の窒素が存在する。これにより、酸素析出物からバルク積層欠陥が形成され易い。しかも、シリコンウェーハの機械的強度も高まる。
窒素の好ましい添加量は、5×1013〜1.0×1015atoms/cm3である。窒素濃度が1×1012atoms/cm3未満では、シリコン単結晶の育成時に形成されるCOPが大きくなり過ぎる。その結果、例えばDZ層を形成させる高温熱処理時に、ウェーハの表面から所定の深さ(DZ層の深さ)まで、完全にCOPを消滅させることができなくなる。また、窒素濃度が1.0×1015atoms/cm3を超えると、窒素の偏析係数の関係で、シリコン結晶コストが高騰する。これにより、シリコン単結晶インゴットから形成されるウェーハ1枚当たりのコストが高くなり過ぎてしまい、量産化には不向きとなる。
請求項1に記載のシリコンウェーハおよび請求項4に記載のシリコンウェーハの製造方法によれば、ウェーハの内部に1×103個/cm2以上のバルク積層欠陥を有しているので、その後のウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップに対する伸長も、それぞれ抑制することができる。
製造されたシリコンウェーハには、スリップがほとんど発生していない。しかも、デバイス工程での過酷な高温熱処理に対してスリップを抑制することもできる。その結果、高品質のアニールウェーハの製造が可能となる。
製造されたシリコンウェーハには、スリップがほとんど発生していない。しかも、デバイス工程での過酷な高温熱処理に対してスリップを抑制することもできる。その結果、高品質のアニールウェーハの製造が可能となる。
特に、請求項2に記載のシリコンウェーハおよび請求項6に記載のシリコンウェーハの製造方法によれば、シリコンウェーハの表面側にシリコン単結晶からなるDZ層が存在する。そのため、汎用タイプのシリコンウェーハの場合と同じように、デバイス工程では高純度なシリコンからなる表層にデバイスを形成することができる。その結果、多量のバルク積層欠陥を有するシリコンウェーハでも、デバイス性能は従来のシリコンウェーハと同等になる。
また、請求項5に記載のシリコンウェーハの製造方法によれば、プレアニール工程において、バルク積層欠陥が形成され易い温度領域をゆっくりと昇温させる。その結果、バルク積層欠陥を高密度に形成させることができる。よって、スリップ抑制効果が高まり、スリップ伸長を完全に止めることも可能となる。
さらに、請求項3に記載のシリコンウェーハおよび請求項7に記載のシリコンウェーハの製造方法によれば、シリコンウェーハ中に1×1012〜1.0×1015atoms/cm3の窒素が存在する。その結果、酸素析出物からバルク積層欠陥が形成され易く、シリコンウェーハの機械的強度も高めることができる。
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
まず、チョクラルスキー(CZ)法によるシリコン単結晶引き上げ装置のルツボ内に所定量の多結晶高純度シリコンを投入する。その後、窒素が5×1013atoms/cm3、酸素濃度が14×1017atoms/cm3〔old−ASTM〕で、外周部にOSF領域が発生し、OSF領域より内側にCOP発生領域が発生するようなV/Gの条件で、シリコン単結晶インゴットを育成させる。Vはシリコン単結晶の引上速度(mm/min)、Gはシリコン融点から1300℃までの引上軸方向の結晶内温度勾配の平均値(℃/mm)である。
具体的には、CZ引き上げ装置のチャンバ内をアルゴンガスの減圧雰囲気とし、ルツボ内では多結晶シリコンをヒータ加熱して溶融させる。次に、シードチャックに取り付けた種結晶を、シリコン単結晶の融液に浸積する。その後、ルツボおよび引き上げ軸を回転させながら、種結晶を上方に所定速度で引き上げる。すなわち、シリコン単結晶の育成中、リング状の酸化誘起積層欠陥が結晶中心で消滅するV/G比(臨界値)よりも大きくなるようにV/G比を比維持する。その結果、外周部にOSF領域が発生し、OSF領域より内側にCOP発生領域が発生するようなシリコン単結晶インゴットが育成される。このとき、シリコン単結晶の結晶成長方位は<100>とし、その引き上げられたシリコン単結晶のボディ全長は1400mmとなる。
具体的には、CZ引き上げ装置のチャンバ内をアルゴンガスの減圧雰囲気とし、ルツボ内では多結晶シリコンをヒータ加熱して溶融させる。次に、シードチャックに取り付けた種結晶を、シリコン単結晶の融液に浸積する。その後、ルツボおよび引き上げ軸を回転させながら、種結晶を上方に所定速度で引き上げる。すなわち、シリコン単結晶の育成中、リング状の酸化誘起積層欠陥が結晶中心で消滅するV/G比(臨界値)よりも大きくなるようにV/G比を比維持する。その結果、外周部にOSF領域が発生し、OSF領域より内側にCOP発生領域が発生するようなシリコン単結晶インゴットが育成される。このとき、シリコン単結晶の結晶成長方位は<100>とし、その引き上げられたシリコン単結晶のボディ全長は1400mmとなる。
上記条件で育成されたシリコン単結晶インゴットに対して、外周研削、ノッチ加工、ブロック切断、スライスなどの定法によるウェーハ加工を順次施し、直径200mm、厚さ700〜800μmのシリコンウェーハA〜Cを3枚用意した(図1(a))。
次に、各シリコンウェーハA〜Cを、対応する3台の横型のウェーハボートの挿填溝にそれぞれ挿填する。その後、これらのウェーハボートに挿填されたシリコンウェーハA〜Cに対して、図示しない熱処理装置により、アルゴンガスの雰囲気下で所定の熱処理を行う。
具体的には、まず3枚のシリコンウェーハA〜Cに共通する熱処理として、ウェーハボートを炉内温度500℃の熱処理装置に挿入し、1000℃まで昇温させる。この間、シリコンウェーハA〜Cの内部で析出物が発生する。特に、COP発生領域では析出物が多量に発生する。その後は、各シリコンウェーハA〜C毎に熱処理条件を変更する。なお、バルク積層欠陥cのサイズは、長さ10〜30μmである。900〜1100℃の温度領域は、ウェーハの内部にバルク積層欠陥cを形成させるためのプレアニールの温度領域である。また、1100〜1350℃はウェーハの表面層にDZ層10を形成させるための高温熱処理を施す温度領域である。
次に、各シリコンウェーハA〜Cを、対応する3台の横型のウェーハボートの挿填溝にそれぞれ挿填する。その後、これらのウェーハボートに挿填されたシリコンウェーハA〜Cに対して、図示しない熱処理装置により、アルゴンガスの雰囲気下で所定の熱処理を行う。
具体的には、まず3枚のシリコンウェーハA〜Cに共通する熱処理として、ウェーハボートを炉内温度500℃の熱処理装置に挿入し、1000℃まで昇温させる。この間、シリコンウェーハA〜Cの内部で析出物が発生する。特に、COP発生領域では析出物が多量に発生する。その後は、各シリコンウェーハA〜C毎に熱処理条件を変更する。なお、バルク積層欠陥cのサイズは、長さ10〜30μmである。900〜1100℃の温度領域は、ウェーハの内部にバルク積層欠陥cを形成させるためのプレアニールの温度領域である。また、1100〜1350℃はウェーハの表面層にDZ層10を形成させるための高温熱処理を施す温度領域である。
(1) シリコンウェーハAの場合には、1000〜1200℃まで5℃/minで昇温させた。よって、プレアニールの温度領域(1000〜1100℃)の滞在時間は20分であった。(2) シリコンウェーハBの場合には、1000〜1200℃までの間を1℃/minで昇温させた。よって、プレアニールの温度領域の滞在時間は1時間40分であった(図1(b))。(3) シリコンウェーハCの場合、まず1000℃の炉内温度で2時間保持する。次いで、1200℃まで1℃/minで昇温させた。よって、プレアニールの温度領域での滞在時間は、合計3時間40分であった。
その後、3枚のシリコンウェーハA〜Cに対して、1200℃の炉内温度で1時間それぞれ保持して高温熱処理を施し、各シリコンウェーハA〜Cの表裏両面側に厚さ30μmのDZ層10を形成させた(図1(c)および図1(d))。次に、700℃まで2.5℃/minで降温させ、熱処理装置から各シリコンウェーハA〜Cを取り出した。
高温熱処理後、各シリコンウェーハA〜Cにおけるバルク積層欠陥cの密度と、スリップの発生状況とを、X線トポグラフィ(X−ray Topography;XRT)により評価した。表1中、従来の標準の熱処理を施して最もスリップ長が長かったシリコンウェーハAのスリップ長さを基準値1とした。基準値1と、熱処理条件を変更したシリコンウェーハB、Cとのスリップ長との比をそれぞれ表記した。その結果を表1にまとめる。
高温熱処理後、各シリコンウェーハA〜Cにおけるバルク積層欠陥cの密度と、スリップの発生状況とを、X線トポグラフィ(X−ray Topography;XRT)により評価した。表1中、従来の標準の熱処理を施して最もスリップ長が長かったシリコンウェーハAのスリップ長さを基準値1とした。基準値1と、熱処理条件を変更したシリコンウェーハB、Cとのスリップ長との比をそれぞれ表記した。その結果を表1にまとめる。
表1から明らかなように、1×103個/cm2を超えるバルク積層欠陥cの密度を含むウェーハB、Cでは、飛躍的なスリップ抑制効果が確認された。しかも、シリコンウェーハに対して900〜1100℃、30分以上のプレアニールを施せば、バルク積層欠陥cの密度がさらに高まることがわかった。特にシリコンウェーハCの場合には、プレアニールの温度領域での滞在時間がシリコンウェーハBの2倍以上となる3時間40分であった。そのため、スリップ長は目視でゼロ(スリップフリー)となった。
ここで、コンピュータシュミレーションを利用し、BMD(Bulk Micro Defect)サイズ(5〜200nm)の内部欠陥が、熱処理によってどのように形状変化するのかを推定した結果を報告する。すなわち、BMDの場合には1000℃、2時間程度の熱処理では顕著な形状変化は見られなかった。したがって、前述した評価時に発現したスリップ抑制効果の高まりは、主にバルク積層欠陥cの密度の増加が原因であることが判明した。
ここで、コンピュータシュミレーションを利用し、BMD(Bulk Micro Defect)サイズ(5〜200nm)の内部欠陥が、熱処理によってどのように形状変化するのかを推定した結果を報告する。すなわち、BMDの場合には1000℃、2時間程度の熱処理では顕著な形状変化は見られなかった。したがって、前述した評価時に発現したスリップ抑制効果の高まりは、主にバルク積層欠陥cの密度の増加が原因であることが判明した。
一方、スリップの長さと、酸素析出物の密度およびバルク積層欠陥の密度との関係を調査したところ、図2および図3の各グラフに示される結果が得られた。なお、BSF密度は、高温熱処理後のウェーハを適当な大きさに劈開した後、エッチング液に数分間浸透させ、バルク積層欠陥を顕在化させ、その後、光学顕微鏡により長さが1μm以上のバルク積層欠陥の個数をカウントしたものである。バルク積層欠陥は(111)面上に形成される。そのため、[110]方向から観察した場合、積層欠陥長軸方向が3種類の特定の向きに形成されているのが確認できる。またBMD密度は、同様に高温熱処理後のウェーハを適当な大きさに劈開した後、エッチング液に数分間浸透させ、その後、光学顕微鏡によりカウントしたものである。この図から、酸素析出物の場合、ウェーハの内部に2×105個/cm2以上存在すれば、スリップ抑制効果を確認することができた。しかしながら、スリップを完全に止めることはできなかった。これに対して、バルク積層欠陥の場合には、1×103個cm2以上で、スリップ抑制効果を確認することができた。しかも、バルク積層欠陥がさらに高密度化すれば、スリップの発現を完全に阻止できることもわかった。したがって、より大きなスリップ抑制効果を求めたい場合には、従来のように酸素析出物を高密度に存在させるより、バルク積層欠陥を形成させた方が有利であることが判明した。このことは、図4に示すビッカース圧痕aに起因して発生したスリップbとバルク積層欠陥cとの関係を示す顕微鏡写真によっても実証された。すなわち、熱処理中に伸長したビッカース圧痕aからのスリップbが帯状のバルク積層欠陥cと衝突し、スリップbの伸長が完全に阻止されている状況が図4に表されている。
以上説明したように、予めシリコンウェーハの内部に1×103個/cm2以上のバルク積層欠陥を形成させると、その後のウェーハ製造工程での各高温熱処理時に発生するスリップだけでなく、デバイス工程における各高温熱処理中のスリップに対する伸長も、それぞれ抑制することができる。
また、シリコンウェーハの表面側にシリコン単結晶からなるDZ層を形成すれば、汎用タイプのシリコンウェーハの場合と同じように、デバイス工程では高純度なシリコンからなる表層にデバイスを形成させることができる。その結果、多量のバルク積層欠陥を有するシリコンウェーハでも、デバイス性能は従来のシリコンウェーハと同等になる。
また、シリコンウェーハの表面側にシリコン単結晶からなるDZ層を形成すれば、汎用タイプのシリコンウェーハの場合と同じように、デバイス工程では高純度なシリコンからなる表層にデバイスを形成させることができる。その結果、多量のバルク積層欠陥を有するシリコンウェーハでも、デバイス性能は従来のシリコンウェーハと同等になる。
さらに、プレアニール工程において、バルク積層欠陥が形成され易い温度領域をゆっくりと昇温させれば、バルク積層欠陥の高密度な形成が可能になる。その結果、スリップ抑制効果が高まり、スリップ伸長を完全に止めることも可能となる。
さらにまた、シリコンウェーハ中に5×1013atoms/cm3の窒素をドープした場合には、酸素析出物からバルク積層欠陥が形成され易く、シリコンウェーハの機械的強度も高めることができる。さらに、9.5×1017〜14.0×1017atoms/cm3の酸素濃度を含むシリコンウェーハを用いて、本手法の熱処理プロセスを実施したときのBSF密度の関係を図5に示す。この図からも、酸素濃度10×1017atoms/cm3以上で、十分なBSF密度を形成できることがわかる。CZ法によって引き上げられた結晶であれば、本手法の適用が容易である。
さらにまた、シリコンウェーハ中に5×1013atoms/cm3の窒素をドープした場合には、酸素析出物からバルク積層欠陥が形成され易く、シリコンウェーハの機械的強度も高めることができる。さらに、9.5×1017〜14.0×1017atoms/cm3の酸素濃度を含むシリコンウェーハを用いて、本手法の熱処理プロセスを実施したときのBSF密度の関係を図5に示す。この図からも、酸素濃度10×1017atoms/cm3以上で、十分なBSF密度を形成できることがわかる。CZ法によって引き上げられた結晶であれば、本手法の適用が容易である。
10 DZ層、
A〜C シリコンウェーハ、
c バルク積層欠陥。
A〜C シリコンウェーハ、
c バルク積層欠陥。
Claims (7)
- ウェーハ熱処理時に、ウェーハの内部に形成される所定長さを有する帯状のバルク積層欠陥が1×103個/cm2以上存在したシリコンウェーハ。
- 表面側にDZ層が形成された請求項1に記載のシリコンウェーハ。
- 窒素を1×1012〜1.0×1015atoms/cm3含有した請求項1または請求項2に記載のシリコンウェーハ。
- チョクラルスキー法に則って行われ、酸素濃度が10×1017atoms/cm3以上となるCOP発生領域を含むシリコン単結晶の育成と、この育成により得られたシリコン単結晶インゴットに対するウェーハ加工とを順次施し、該シリコン単結晶インゴットのうち、前記COP発生領域を含む結晶部位をスライシングしてシリコン単結晶からなるウェーハを得るウェーハ作製工程と、
該ウェーハを熱処理し、該ウェーハの内部に形成される酸素析出物に起因した所定長さを有する帯状のバルク積層欠陥を、前記ウェーハの内部に1×103個/cm2以上形成させるプレアニール工程とを備えたシリコンウェーハの製造方法。 - 前記プレアニール工程では、前記シリコン単結晶からなるウェーハを900〜1100℃で、30分以上熱処理する請求項4に記載のシリコンウェーハの製造方法。
- 前記プレアニール工程後、水素ガスおよびまたは不活性ガスの雰囲気で、前記ウェーハに1100〜1350℃の高温熱処理を施し、該ウェーハの表面側にDZ層を形成させる請求項4または請求項5に記載のシリコンウェーハの製造方法。
- 前記ウェーハ作製工程では、前記シリコン単結晶の育成時に、該シリコン単結晶中に1×1012〜1.0×1015atoms/cm3の窒素をドープする請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載のシリコンウェーハの製造方法。
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