しかし、特許文献1に記載された照明光学系ではキーストーン歪等が補正されておらず、照射領域形状をDMD等の画像形成素子形状に相似するような手段はとられていない。このため、特許文献1に記載されたような照明光学系を備えた拡大投写型ディスプレイ装置では、均一で高輝度の投写画像を得ることは困難であった。また、最終的に照度ムラの少ない高輝度の投写画像を得るためには、照明光学系のみならず、画像形成素子の出射光束をスクリーン等に投写する投写光学系の改良が必要である。さらに、実用化の観点からは、照明光学系や投写光学系を構成する光学素子間の間隔を可及的に狭くするなどして装置の小型化や低コスト化を達成する必要もある。
本発明の目的の一つは、キーストーン歪を補正し、照明光学系により形成される照射領域形状を画像形成素子形状とほぼ同一にすることで光の利用率の高効率化を達成することである。本発明の目的の他の一つは、正反射型画像形成素子(例えば正反射型液晶ライトバルブ)や透過型画像形成素子(例えば透過型液晶ライトバルブ)等の画像形成素子に対する照明光学系としても、より小型化を達成するために照明光路を反射ミラーなどで折り返し、画像形成素子を斜めに照明しても光の利用率が高効率な照明光学系を備えた投写型ディスプレイ装置を提供することである。本発明の目的の他の一つは、投写型ディスプレイ装置の小型化や低コスト化を実現することである。
本発明は、液晶ライトバルブやDMDなどに代表される画像形成素子をもつ拡大投写型ディスプレイ装置における照明光学系をアフォーカル光学系(アフォーカル系とは、平行光束がレンズ系を通った後再び平行光束となる光学系)で構成し、光利用効率を向上させ、かつ小型化を達成している。さらに、絞りを光軸から偏心させたテレセントリックな屈折型結像光学系を投写光学系に用いることによって、投写画像の照度ムラを低減し、高輝度な投写画像を実現している。また、回転対称非球面形状の反射鏡からなるテレセントリックな反射型結像光学系を投写光学系に用いることによって、広い画角を実現すると共に、さらになる小型化や低コスト化を実現している。
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれる照明光学系は、アフォーカル光学系及び輝度ムラ低減手段を含み、前記アフォーカル光学系は、正のパワーを有する最終段の結像光学素子を含む2以上の光学素子によって構成され、それら2以上の光学素子の少なくとも一つが前記輝度ムラ低減手段の光軸に対して回転偏心して配置されていることを特徴とする。かかる特徴を有する照明光学系の一例としては、光源と、この光源からの光束を集光して仮想的な2次光源を作る集光ミラーと、2次光源の位置に入射端面が配置されて2次光源からの光束の輝度分布を均一化して出射する輝度ムラ低減素子、所謂、ライトトンネルやロッドレンズ等、光束が内面で繰り返し反射することによりその出射面での輝度ムラを均一化する光学素子と、輝度ムラ低減素子の出射面を物体面とし、物体面からの光束を照射面、所謂、像面に導くアフォーカル光学系とを有し、アフォーカル光学系が上記特徴を具備している照明光学系が挙げられる。かかる照明光学系を組み込む時には、アフォーカル光学系における物体面の任意の点からの出射光束においてその光束の中心を通るいずれの光線も、像面から出射する際に像面の法線とのなす角が5°以上となるようにするのが望ましい。
ライトトンネルやロッドレンズ等で代表される輝度ムラ低減素子と、画像形成素子との間に設けられるアフォーカル光学系は、図1〜図3のように、画像形成素子6から出射して投写レンズに代表される投写光学系(図示省略)に向かう任意光束(出射光束8b)の主光線8(「主光線」とは任意の物点からの光束においてその光束の中心を通る光線として定義し、「光軸光線」とは仮想物体面の原点と照射面の原点とを通る光束の中心を通る光線として定義する。)と画像形成素子6の法線10とのなす角度θが5°以上である。ここで、図1(a)〜(c)((a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である)は画像形成素子6がDMDの場合を示しており、上述の角度θは図1(c)の側面図に示すように、紙面内断面に射影したときの角度である。図2(a)、(b)((a)は正面図、(b)は側面図である)は画像形成素子6が正反射型の場合で、出射光束8bの主光線8と法線10との成す角度θは図2(b)の側面図で示した角度、所謂、反射角である。図3(a)、(b)((a)は正面図、(b)は側面図)は画像形成素子6が透過型の場合で、出射光束8bの主光線8と法線10との成す角度θは図3(b)の側面図で示した角度である。なお、図中、8aは画像形成素子に入射する入射光束である。
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれる照明光学系の第2の特徴は、上記アフォーカル光学系を構成する各素子が3次元空間配置されていることである。画像形成素子にDMDを用いた場合を例に取ると図4のようになる。図4は画像形成素子6にDMDを用いた本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれた照明光学系の一例を示す側面図である。
図4では輝度ムラ低減素子にライトトンネル3を用いている。ライトトンネル3は、光源1からの光束が集光ミラー2により集光されて形成される仮想的な2次光源の位置に入射端面3aが位置するように配置されている。ライトトンネル3の出射面3b側に配置されたアフォーカル光学系は3つのレンズ4a、4b、4cと反射ミラー5で構成されている。第2のレンズ4bと第3のレンズ4c(光源に近い方から順に第1、第2、第3レンズとする)の間に設けた反射ミラー5は平面鏡であり光路を変更するのみで、アフォーカル光学系に必須の要素ではないから無くてもよい。光路を折り返して装置を小型にする場合等、必要に応じて設ければよい。
アフォーカル光学系を構成する3つのレンズ4a、4b、4cにおいて、第1のレンズ4aは、光源1と輝度ムラ低減素子であるライトトンネル3の中心を結ぶ光軸Oから上下方向にシフトしている。即ち、第1のレンズ4aの中心は光軸O上にはない。第2のレンズ4bは光軸Oから上下左右にシフトし、さらに回転偏心をしており、第2のレンズ4bの光軸は光軸Oに平行ではない。第3のレンズ4cは、投写レンズ光軸と平行で、画像形成素子6の中心点の法線から、シフトし回転偏心している。反射ミラー5が無い場合は、画像形成素子6から見て各光学素子の相互の相対的位置を確保したまま画像形成素子6より斜め下方向に配置される。
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれる照明光学系は、アフォーカル光学系を図5に示すように少なくとも2つの屈折型光学素子(第1のレンズ4aと第2のレンズ4b)で構成してもよい(反射ミラー5は図4の場合と同じである)。また、アフォーカル光学系を構成する光学素子のうち、少なくとも1つを、曲面を持つ反射光学素子で構成してもよい。例えば、図4、図5における反射ミラー5を凹面鏡とした構成としてもよい。さらに、アフォーカル光学系を構成する光学素子のうち、少なくとも1つを非球面光学素子で構成してもよい。
アフォーカル光学系を構成する光学素子のうち、少なくとも1つをプラスチック光学素子で構成すると加工が容易で安価に照明光学系が構成でき、装置全体の生産コストも低減される。
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置は、図4、図5に示す如く、上述の照明光学系と、照明光学系を構成するアフォーカル光学系の照射面(像面)に配置された画像形成素子6と、画像形成素子6の出射側に配置されて画像形成素子6からの出射光をスクリーンに投写する投写光学系とを含んだ構成になっている。先に説明したように、上記投写光学系は、屈折型結像光学系である投写レンズ7や1枚或いは複数枚の反射鏡から成る反射型結像光学系等で構成できる。
投写光学系に屈折型結像光学系を用いた本発明の拡大投写型ディスプレイ装置は、光源およびアフォーカル光学系を有する照明光学系と、前記照明光学系の照射面(像面)に配置された画像形成素子と、前記画像形成素子から出射した光束をスクリーンに屈折・投写するテレセントリックな屈折型結像光学系とを少なくとも有し、前記屈折型結像光学系の絞りが、当該屈折型結像光学系の光軸から偏心した位置に配置されていることを特徴としている。
屈折型結像光学系の絞りを偏心させると、画像形成素子上の特定光点から出射される光の上光線と下光線は、その出射方向が投写光軸に対して非対称となり、出射光線が投射光軸に対して傾けられる。その結果、画像形成素子上の各点から出射する光線が平行になり、明るさにムラのない投写光が得られる。これにより、投写画像の照度ムラが小さくなると共に、高輝度の投写画像となる。
投写光学系に反射型結像光学系を用いた本発明の拡大投写型ディスプレイ装置は、光源およびアフォーカル光学系を有する照明光学系と、前記照明光学系の照射面(像面)に配置された画像形成素子と、前記画像形成素子から出射した光束をスクリーンに反射・投写するテレセントリックな反射型結像光学系とを少なくとも有し、前記反射型結像光学系が、前記画像形成素子に反射面を向けた回転対称非球面形状の凹面状反射面を有する第1の反射鏡と、前記第1の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凸面状反射面を有する第2の反射鏡と、前記第2の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凹面状反射面又は回転対称非球面形状の凸面状反射面を有する第3の反射鏡と、前記第3の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凸面状反射面を有する第4の反射鏡とから構成されていることを特徴としている。
上記反射鏡の反射面形状は、具体的には、反射鏡の光軸をz軸、z軸に垂直な平面をx−y平面、z軸とx−y平面との交点を原点O、原点Oで交わりx−y平面上の互いに直交する軸をx軸、y軸として座標軸を設定したとき、下記の(1)式〜(3)式で表される回転対称非球面形状になっている。
ρ
2=x
2+y
2 (2)
c=1/r (3)
ここで、α
i(i=1、2、・・・、8)は補正係数、kは円錐係数、rは反射面の曲率半径である。
上記の拡大投写型ディスプレイ装置において、照明光学系に反射鏡やプリズム等で代表される光路変換素子を備えると拡大投写型ディスプレイ装置の奥行きを小さくできる利点がある。
(作用・原理)
一般に、図1、図2、図3のように主光線8が角度θを持つことで、画像形成素子6への入射光束8aの主光線8も所定の角度を持つ。特に画像形成素子6にDMDを使用した場合には、図1に示すように、入射光束8aの主光線8は所定の角度が2方向にわたって大きく傾く。
図7は通常の結像光学系(レンズ系40)を用いて斜め方向から輝度ムラ低減素子の出射面像を画像形成素子面に導く様子を示す概略図である。図8は図7における照射面での照射状態、即ち、照度分布を示す図で、画像形成素子6の周囲に描かれた等高線のような曲線は等照度曲線である。図7に図示したように、大きく傾いた方向から画像形成素子6に主光線8が入射するとき、輝度ムラ低減素子の出射面3bでは光学系の光軸と光線の交点までが等しい出射面3b上の点A、Bでも、照射面上では光軸と照射面上の交点の距離A’、B’が大きく異なってしまう。このようにして発生する倍率の差がキーストーン歪と呼ばれる収差である。この収差が発生すると、照射領域60と画像形成素子6とが相似形にならず、図8のように照射領域(図8における等照度曲線で囲まれた領域)60が歪み、光利用効率が低下する。そのため、本発明の拡大投写型ディスプレイ装置では、照明光学系にアフォーカル光学系を用いてキーストーン歪収差を補正し、光利用効率を向上させている。
アフォーカル光学系がキーストーン歪収差を補正できる理由を図9を使用して説明する。
図9は、キーストーン歪補正の基本的な考え方を示す概略図である。図9の光学系では図7で説明した照明光学系(光源と輝度ムラ低減素子は図示省略。輝度ムラ低減素子の出射面3bとレンズ系40のみが描いてある)と照射領域60との間に、新たに正のパワーを有する光学系(屈折型光学素子)41を配置している。このとき、正のパワーを有する光学系41を、主光線8と照射領域60とのなす角が一定となるように配置すれば、前述の距離A’、B’を、概略等しくすることができる。
このように、正のパワーを有する光学系41を配置することによって、キーストーン歪を効果的に補正することができる。正のパワーを有する光学系41を配置した照明光学系は、前述のように照射領域60に配置される画像形成素子6へ入射する主光線8と画像形成素子6の法線とのなす角が一定となる。そのため、画像形成素子6の全面にわたって同一方向から入射する光線を投写光学系(図示省略)の方向に出射することができ、特定の方向からのみ光線を受けるような投写光学系により、効率よく光を投写画面、所謂、スクリーン(図示省略)に導くことができる。さらに、平面及び正のパワーを持つ光学系を反射型光学素子とすることによって、光学系全体の占有スペースを小さくできる。しかし単純に屈折型光学素子の替わりに反射型光学素子を配置するだけでは、図10に示す如く新たな歪みが発生するので工夫を要する。
図10で示すように、正のパワーを持つ光学系を反射型光学素子42で構成すると、反射型光学素子42への入射光線と、画像形成素子6からの出射光線との干渉が起こらないように反射型光学素子42を配置しなければならない。これは光軸に対して反射型光学素子42を傾けて配置することを意味する。そのため出射面3bで光学系光軸から等距離にある2つの点A、Bに対応する主光線は異なる入射高さで反射光学素子42に入射する。そのため、照射領域60と光学系光軸との交点から出射面3b上の2点A、Bから光学系を通過した照射領域60上の2点までの距離A’、B’は異なってしまう。このことが新たな歪みである。
正のパワーを有する光学系を傾けたことに起因する歪を、以下に示す2つの構成を単独あるいは組合せて補正する。第1の構成は、図11のように、照明光学系のレンズ系40を複数の互いに回転偏心しているレンズ郡で構成する方法である。このレンズ郡は1枚で回転偏心していてもよい。一部のレンズ郡を正のパワーを持つ光学系41への主光線入射高がそろうように回転偏心させることで歪を補正できる。
第2の構成は、出射面3bをレンズ系40の光軸に対して正のパワーを持つ光学系と同一の方向に傾ける構成である。このように構成することによって、正のパワーを持つ光学系への入射高さを補正することができ、歪が補正される。さらに、図11の如く、出射面3bからレンズ系に主光線を略平行に入射させる構成を採用すると、照明光学系の構成を簡単にすることができるとともに、フォーカスがさらに向上し照射領域60とそうでない領域との区別がはっきりする(図4、図5の構成参照)。
上述の説明から本発明の拡大投写型ディスプレイ装置を構成する照明光学系は、画像形成素子形状に略相似な照明領域を得ることが可能になるが、DMDや正反射型の画像形成素子を用いる場合、画像形成素子への入射光と出射光の光路が重なりあうため、光路上に置かれる投写光学系と照明光学系を構成する光学素子が干渉することは明らかである。そのため画像形成素子からの出射光の主光線に所定の角度θ(画像形成素子の法線との成す角)を持たせ、投写光学系を角度つきテレセントリック光学系で構成し、光量ロスを招かないようにするのが望ましい。本発明ではこの角θをθ≧5°として干渉を防止している。
本発明は、照明光学系にアフォーカル光学系を含むことによって、キーストーン歪や、光路折り返し用の反射光学素子を用いたことによる歪の発生を抑制でき、画像形成素子サイス゛と照射領域をほぼ同一にできた。また、輝度ムラ低減素子の出射面の輝度分布を保ったまま高い照度で均一な照度分布の矩形照射領域を形成でき、光利用効率が向上した。さらに、アフォーカル光学系を構成する光学素子に、光路を折り返す機能とアファーカル光学系を構成する機能とを兼ね備えた1つの反射型光学素子を用いることで装置全体の小型化が可能になった。
照明光学系の照射面(像面)に配置された画像形成素子から投写光学系に出射する出射光束の主光線と画像形成素子の法線との成す角度θ(図1、2、3参照)を5°以上にしたことで、照明光学系と投写光学系の干渉を無くすことができた。
投写光学系を回転対称非球面形状の反射鏡から成るテレセントリックな反射結像光学系で構成したので広い画角が実現でき、且つ、各反射鏡の間隔も小さくできて小型化が可能になった。さらに、反射結像光学系を構成する反射鏡が回転対称非球面形状なので、加工がしやすく、樹脂化に対応でき、安価な反射型結像光学系が実現できる。この結果、拡大投写型ディスプレイ装置の低価格化が可能になった。また、絞りを光軸から偏心させたテレセントリックな屈折型結像光学系を投写光学系に用いたので、投写画像の照度ムラが低減でき、高輝度の投写画像が得られた。
(第1の実施の形態)
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれる照明光学系の第1の実施形態を図4に示す。図4は画像形成素子6をDMDとして、拡大投写型ディスプレイ装置の照明光学系に本発明の照明光学系を適用した側面図である。拡大投写型ディスプレイ装置は、図4に示す如く、画像形成素子6を照明する照明光学系と、画像形成素子6と、画像形成素子6からの光束をスクリーン(図示省略)に投写する投写レンズ(投写光学系)7とから構成されている。
照明光学系は、光源1と、この光源1からの光束を集光して仮想的な2次光源を作る集光ミラー2と、2次光源の位置に入射端面3aが位置するように配置されて2次光源からの光束の輝度分布を均一化して出射面3bから出射するライトトンネル3(輝度ムラ低減素子)と、ライトトンネル3からの出射光束を画像形成素子6であるDMDに導くアフォーカル光学系とで構成されている。
ライトトンネル3は、画像形成素子形状が四角形なので照明領域が四角になるよう中空四角柱形状のものを用いた。ライトトンネル3の内壁は反射面になっており、ライトトンネル3に入射した光線は内部で数回繰り返し反射・進行することによってライトトンネル出射端での輝度ムラが低減する。ライトトンネル3の替わりに角柱状や円柱状、棒状のレンズ、所謂、ロッドレンズを用いてもライトトンネルと同様の効果が得られる。なお、ライトトンネルやロッドレンズの輪郭形状は画像形成素子形状に合わせればよい。
アフォーカル光学系は第1〜第3のレンズ4a〜4cと反射ミラー5とから成り、ライトトンネル3の出射面3bを物体面としている。反射ミラー5は平面鏡であり、光路を変更するだけの機能しか持たず、アフォーカル光学系に必須の要素ではないから無くてもよい。本実施形態では光路を折り返して装置を小型にする目的で第2のレンズ4bと第3のレンズ4cの間に設けた。アフォーカル光学系の照射面(像面)には画像形成素子6としてDMDが配置される。
アフォーカル光学系を構成する3つのレンズのうち、第1のレンズ4aは平凸レンズとし、平面側をライトトンネル3に面するようにして、光源1とライトトンネル3の中心を結ぶ光軸Oから上下方向にシフトして第1のレンズ4aの中心を光軸O上からずらして配置してある。第2のレンズ4bも平凸レンズとし、光軸Oから上下左右にシフトすると共に回転偏心させて配置している。第3のレンズ4cは凸レンズを使用し、DMDの中心点の法線から、シフトし回転偏心して設置され、反射ミラー5からの光束をDMDに照射するようになっている。DMDはアフォーカル光学系の照射面の位置に配置されている。なお、画像形成素子6のDMD、投写光学系の投写レンズ7は公知のものを用いたので説明は省略する。
図4の構成によれば、光源1より出射された光束は、集光ミラー2に反射して仮想的な2次光源を作る。仮想的な2次光源より出射した光束は、仮想的な2次光源位置に入射端面3aを配置したライトトンネル3に入射する。ライトトンネル3に入射した光束は、ライトトンネル3の内部で複数回反射を繰り返してライトトンネル3から出射し、第1〜第3のレンズ4a〜4cを有するアフォーカル光学系に入射する。アフォーカル光学系を通過して出射した光束の主光線は平行になって、アフォーカル光学系の照射面、即ち、画像形成素子6のDMDに至る。DMDに入射した光束はDMDで反射され、投写レンズ7を経てスクリーン(図示省略)に投写される。このとき、DMDから投写レンズ7に向かう光束の主光線と照射面の法線との角度を7.78°に設定してある。
図4に示した照明光学系の各光学素子の具体的な構成をDMDも含めて表1及び図6(a)〜(c)に示す。ここで、表1は各光学素子の具体的な位置、向きを数値で表している。図6(a)〜(c)は各光学素子の配置を模式的に示す図で、図6(a)は上面図、図6(b)は側面図、図6(c)は正面図を示している。
表1の面属性欄における面番号1の「出射面」とは輝度ムラ低減素子(この実施形態ではライトトンネル3)の光線出口面(図4、図6における出射面3b)のことである。このライトトンネル3の出射面3bの中心点を原初期原点とし、この原点を通り出射面3bに垂直な軸をz軸、光線が光源1からライトトンネル3に向かう方向をz軸の「+」方向とし、出射面3bをx−y平面、z軸に直交し、且つ、互いに直交する軸をそれぞれx軸、y軸(図4において紙面に垂直な軸がx軸、紙面上の軸がy軸)とする座標系を初期の座標系(図6参照)とし、面番号順に相対的に次の原点、即ち、光学素子の面の中心座標位置を「座標変換」で表してある。座標系は右手座標系であり、表中のシフト量、回転量における「+」、「−」の符号は図6(a)〜(c)の表示に従う。
表中、面番号「2」〜「4」は第1のレンズ4a、面番号「5」〜「10」は第2のレンズ4b、面番号「11」〜「17」は反射ミラー5、面番号「18」〜「26」は第3のレンズ4c、面番号「27」〜「34」はDMDの各配置位置と向き及び形状をそれぞれ表している。なお、面番号「32」、「33」の「平面」は、DMD表面に設けたカバーガラスを意味している。
「面間距離」はその面番号の面から次の面までのz軸方向の距離(単位はmm)を表している。言い換えれば、面番号の面から次の面まで座標系をz軸方向の平行移動した(或いは平行移動させる)距離である。例えば、面番号「1」の面間距離はこの面番号の面(出射面3b)から面番号「3」の平面までのz軸に沿った平行移動距離、面番号「3」の面間距離は面番号「3」の平面から面番号「4」の球面までのz軸に沿った平行移動距離、面番号「4」の面間距離は面番号「4」の球面から面番号「9」の平面までのz軸に沿った平行移動距離を表している。以下の面間距離についても同様である。
シフト量の欄における「x軸方向」、「y軸方向」は光学素子の面の座標原点が、その面の前の面番号で決まった原点の位置からのx軸方向、y軸方向へのシフト量(単位はmm)を示している。例えば、第1のレンズ4aの例では、面番号「1」における出射面の面間距離が5.3mmで、面番号「2」における座標変換のシフト量がx軸方向で−2.18mm、y軸方向で0.86mmであるから、ライトトンネル3の出射面3bの中心を座標原点とし、出射面3bに垂直な軸をz軸、出射面3bをx−y平面、水平方向をx軸、垂直方向をy軸とした座標系において、出射面3bからz軸方向に5.3mm、x軸方向に−2.18mm、y軸方向に0.86mmの位置に第1のレンズ4aの光線入力面、即ち、面番号「3」の平面の中心があることを表している。また、面番号「3」の面属性が平面、平面の面間距離が10mm、面番号4の面属性が球面で、球面の曲率半径が−12mmであるから、第1のレンズは平凸レンズで、光線入射側の面すなわちライトトンネル3に面した面が平面(面番号の若い方の面を光線入射側としている)、光線出射側が凸面で、平面(面番号「3」)と球面(面番号「4」)の中心間の距離が10mmであることを表している。
尚、曲率半径を「−」で表記してあるのは、面の属性が座標変換なので、曲率半径自体の定義がないため、「−」で表記してある。仮想面については全て「−」と表記するのが正しい。
回転量欄の「x軸中心」、「y軸中心」、「z軸中心」はそれぞれ光学素子を回転させる時の回転軸を意味している。例えば面番号「1」の場合、x軸中心とy軸中心が0、z軸中心が21.4°であるから、出射面、即ち、ライトトンネル3をz軸を回転軸として図6(c)の正面図において反時計回りに21.4°回転していることを示している。
座標変換は面番号の若い順に、(1)z軸上平行移動(面間距離の移動)、(2)x軸上平行移動(xシフト量)、(3)y軸上平行移動(yシフト量)(4)z軸中心の回転、(5)y軸中心の回転、(6)x軸中心の回転、の順序で行われる。
この座標変換によれば第2のレンズ4bの例では(面番号「5」〜「10」)、面番号「4」の球面(第1のレンズ4aの光線出射面)における面間距離が18mm、面番号「5」の座標変換におけるシフト量がx軸方向が1.3mm、y軸方向が−0.6mm、面番号「6」のシフト量がx軸方向が0.5mm、y軸方向が−1mmなので、面番号「9」における平面(第2のレンズ4bの光線入力面)の中心(座標原点)は、球面(面番号「4」)の座標系(面番号「1」〜「3」における座標変換を経た後の座標系。座標原点は球面の中心にあり、z軸は球面に垂直。)の原点(球面(面番号「4」))からz軸上を18mm移動し、x軸方向に1.3mm、y軸方向に−0.6mm(面番号「5」)移動した点からさらに、x軸方向に0.5mm、y軸方向に−1mm移動(面番号「6」)した位置にある。また、面番号「7」、「8」の座標変換における回転量がy軸中心で−5.2°、x軸中心で11.7°であるから、球面(面番号「4」)の座標系を上記平面(面番号「9」)の座標原点の位置まで原点を平行移動して出来た座標系をy軸を回転の中心軸として−5.2°回転し(面番号「7」)、さらにx軸を回転の中心軸として11.7°回転(面番号「8」)した座標系が平面(面番号「9」)の座標系となる。この座標系のx−y平面が面番号「9」の平面となり、初期の座標系に対する平面(面番号「9」)の中心位置と傾きが定まる。面番号「10」の球面(光線出射面)の中心(曲率の中心ではない)は、平面(面番号「9」)における面間距離が10mmなので、平面(面番号「9」)の座標系においてz軸方向に座標原点(平面(面番号「9」)の中心)から10mmの位置になる。なお、平面(面番号「9」)の座標系のz軸が第2のレンズ4bの光軸になる。
平面(面番号「9」)の座標系をz軸に沿って10mm平行移動し、球面(面番号「10」)の中心に座標原点を移した座標系(球面(面番号「10」)の座標系)が、次の光学素子、この実施形態では反射ミラー5の位置と向き、即ち、反射ミラー5の座標系を決めるために座標変換を行う出発の座標系となる。
反射ミラー5(面番号「11」〜「17」)の例では、面番号「10」の球面(第2のレンズ4bの光線出射面)における面間距離が0mm、面番号「11」の座標変換における回転量がx軸中心で−11.7°、面番号「12」の座標変換における回転量がy軸中心で5.2°、面番号「13」の座標変換におけるシフト量がx軸方向が−0.5mm、y軸方向が1mmなので、取敢ずz軸方向の座標原点の移動は行わず、先ず、球面(面番号「10」)の座標系において、x軸を回転の中心軸として−11.7°回転し(面番号「11」)、y軸を回転の中心軸として5.2°回転する(面番号「12」)。この回転操作の座標変換により得られた座標系の各座標軸は初期の座標系の対応する各座標軸に平行な座標系になる。この後、この座標系(面番号「11」、「12」の回転操作により座標変換した座標系)において、座標原点(球面(面番号「10」の中心にある)をx軸方向に−0.5mm、y軸方向に1mm(面番号「13」)平行移動して出来た座標系を仮想面(面番号「17」)の座標系とし、この座標系のx−y平面を仮想面(面番号「17」)に設定する。座標原点は仮想面(面番号「17」)の中心となる。
仮想面(面番号「17」)における面間距離が40mm、面番号「15」の座標変換における回転量がy軸中心で−34°、面番号「16」の座標変換における回転量がx軸中心で15°であるから、仮想面の座標系において、座標原点をz軸上で40mm移動して座標系を平行移動した後、座標軸をy軸を回転中心軸として−34°、x軸を回転中心軸として15°順次回転して得られた座標系が反射ミラー5の座標系となる。この座標系のx−y平面が反射ミラー5の反射面、座標原点が反射ミラー5の中心であり、反射ミラー5の位置と向きが定まる。
以上、第2のレンズ4bと反射ミラー5を例に、表1の座標変換について説明したが、他の光学素子の面についても表1の表記に従って上記と同様にして座標変換すればよい。
本実施形態で得られた画像形成素子上の照明状態を図12、図13(a)(図12と同一の図である)に示す。また、画像形成素子上の照度分布を図13(b)に示す。図12に示すように、画像形成素子サイス゛と照射領域60をほぼ同一にすることができ、歪みのない均一な照度分布が得られた。なお、図12、図13(a)における画像形成素子周辺の曲線は等照度曲線を示している。
図13(b)は、画像形成素子上における図13(a)で示すA−A、B−B上の照度分布を示す図である。図中、縦軸は照度、横軸は画像形成素子上の位置を示し、曲線13aはA−A上の照度分布を示す曲線、曲線13bはB−B上の照度分布を示す曲線である。図13(b)によれば、画像形成素子は均一な照度で照明されていることが分かる。
(第2の実施の形態)
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置に組み込まれる照明光学系の第2の実施形態を図5に示す。図5は画像形成素子6をDMDとして、拡大投写型ディスプレイ装置の照明光学系に本発明の照明光学系を適用した側面図である。拡大投写型ディスプレイ装置は、図5に示す如く、画像形成素子6を照明する照明光学系と、画像形成素子6と、画像形成素子6からの光束をスクリーン(図示省略)に投写する投写レンズ7、所謂、屈折型結像光学系の投写光学系とから成る。照明光学系は、光源1と、この光源1からの光束を集光して仮想的な2次光源を作る集光ミラー2と、仮想的な2次光源の位置に入射面3aが位置するように配置されて仮想的な2次光源からの光束の輝度分布を均一化して出射面3bから出射するライトトンネル3(輝度ムラ低減素子)と、ライトトンネル3からの出射光束を画像形成素子6であるDMDに導くアフォーカル光学系とで構成されている。
照明光学系に用いたアフォーカル光学系は、図5に示すように、第1のレンズ4aと第2のレンズ4bの2つの屈折型光学素子および反射ミラー5で構成している。反射ミラー5は第1の実施形態の場合と同様、平面鏡であり、光路を変更するだけの機能しか持たず、アフォーカル光学系に必須の要素ではないから無くてもよい。本実施形態では光路を折り返して装置を小型にする目的で第1のレンズ4aと第5のレンズ4bの間に設けた。アフォーカル光学系の照射面には画像形成素子6としてDMDが配置される。この実施形態においては、θは7.8°であり、画像形成素子上の照明状態は図14のように、画像形成素子サイス゛と照射領域をほぼ同一にすることができ、歪みのない均一な照度分布が得られた。なお、図14における画像形成素子周辺の曲線は等照度曲線を示している。
図5に示した照明光学系の各光学素子の具体的な構成はDMDも含めて表2に示す。
表2の面属性欄における面番号1の「出射面」は、第1実施形態の場合と同様、輝度ムラ低減素子(ライトトンネル3)の光線出口面(出射面3b)のことである。また、このライトトンネル3の出射面3bの中心点を原初期原点として初期の座標系を設定するのも第1実施形態の場合と同様である。
表中、面番号「2」〜「4」は第1のレンズ4a、面番号「5」〜「8」は反射ミラー5、面番号「9」〜「17」は第2のレンズ4b、面番号「18」〜「25」はDMDの各配置位置と向き及び形状をそれぞれ表している。なお、面番号「23」、「24」の平面は、DMD表面に設けたカバーガラスを意味している。
(第3の実施の形態)
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置の実施形態の一例を図15に示す。本実施形態は、アフォーカル光学系に1枚の正のパワーを持つ反射ミラーを用いた構成例である。この拡大投写型ディスプレイ装置は、図15に示す如く、画像形成素子6を照明する照明光学系と、画像形成素子6と、画像形成素子6からの光束をスクリーン(図示省略)に投写する投写レンズ7とから成る。照明光学系は、光源1と、この光源1からの光束を集光して仮想的な2次光源を作る集光ミラー2と、仮想的な2次光源の位置に入射面3aが位置するように配置されて仮想的な2次光源からの光束の輝度分布を均一化して出射面3bから出射するライトトンネル3(輝度ムラ低減素子)と、ライトトンネル3からの出射光束を画像形成素子6であるDMDに導くアフォーカル光学系とで構成されている。
照明光学系に用いたアフォーカル光学系は、図15に示すように、第1のレンズ4aと第2のレンズ4bの2つの屈折型光学素子および正のパワーを持つ反射ミラー4dと光路折り曲げ用の反射ミラー5で構成している。反射ミラー5は凸面鏡を用いた。アフォーカル光学系の照射面には画像形成素子6としてDMDが配置される。この実施形態においては、θは7.8°であり、画像形成素子上の照明状態は図16のように、画像形成素子サイス゛と照射領域をほぼ同一にすることができ、歪みのない均一な照度分布が得られた。なお、図16における画像形成素子周辺の曲線は等照度曲線を示している。
図15に示した照明光学系の各光学素子の具体的な構成をDMDも含めて表3に示す。
表3の面属性欄における面番号1の「出射面」は、第1実施形態の場合と同様、輝度ムラ低減素子(ライトトンネル3)の光線出口面(出射面3b)のことである。また、このライトトンネル3の出射面3bの中心点を原初期原点として初期の座標系を設定するのも第1実施形態の場合と同様である。
表中、面番号「2」〜「4」は第1のレンズ4a、面番号「5」〜「9」は第2のレンズ4b、面番号「10」〜「15」は反射ミラー5、面番号「16」〜「23」は正のパワーを持つ反射光学素子4d、面番号「24」〜「31」はDMDの各配置位置と向き及び形状をそれぞれ表している。なお、面番号「29」、「30」の平面は、DMD表面に設けたカバーガラスを意味している。
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、照明光学系に非球面光学素子を含む拡大投写型ディスプレイ装置の例である。この拡大投写型ディスプレイ装置は、画像形成素子を照明する照明光学系と、画像形成素子と、画像形成素子からの光束をスクリーンに投写する投写レンズとから成るのは上記3つの実施形態と同じである。本実施形態の拡大投写型ディスプレイ装置は、図15において、反射ミラー5を非球面反射ミラーに替えた構成になっていて、この他は第3実施形態と同じ構成である。この装置における照明光学系の各光学素子の具体的な構成をDMDも含めて表4に示す。画像形成素子上の照明状態は図17のようになった。
尚、表4における面番号16のシリンダーとはかまぼこ形状のことで、面番号16の面はy−z平面(面番号16の面の座標系)に平行な任意の面で切った断面が非球面を表す式を満足しているということである。また、非球面とは通常の非球面の式(上記「課題を解決するための手段」の欄に記載の式(1)〜(3))で表記される面のことである。
表の見方は上記3つの実施形態と同じである。表中、面番号「2」〜「4」は第1のレンズ4a、面番号「5」〜「9」は第2のレンズ4b、面番号「10」〜「16」は非球面反射ミラー、面番号「16」〜「25」は正のパワーを持つ反射光学素子4d、面番号「26」〜「33」はDMDの各配置位置と向き及び形状をそれぞれ表している。なお、面番号「31」、「32」の平面は、DMD表面に設けたカバーガラスを意味している。
この実施形態では反射ミラーを非球面光学素子としたが、反射ミラーに限らず、非球面光学素子に非球面レンズを用いてもよい。
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、投写光学系に工夫を加えて投写画像の照度ムラを低減した拡大投写型ディスプレイ装置の例である。
拡大投写型ディスプレイ装置は、画像形成素子を照明する照明光学系と、画像形成素子と、画像形成素子からの光束をスクリーンに投写する投写光学系とから成るのは上記の実施形態と同じである。照明光学系が、光源と、この光源からの光束を集光して仮想的な2次光源を作る集光ミラー仮想的な2次光源の位置に入射端面が位置するように配置されて仮想的な2次光源からの光束の輝度分布を均一化して出射面から出射するライトトンネル(輝度ムラ低減素子)と、ライトトンネルからの出射光束を画像形成素子であるDMDに導くアフォーカル光学系とで構成されているのも上記4つの実施形態と同じである。本実施形態においては、図4に示す構成の照明光学系、即ち、第1の実施形態と同じ照明光学系を用いた。
投写光学系はテレセントリックな屈折型結像光学系(投写レンズ)を用い、この屈折型結像光学系中に用いられている絞りの中心を、屈折型結像光学系の光軸(図18のL1)から偏心(図18中、偏心量h)させた構成になっている。この投写光学系の具体例を図18に示す。
図18に示すように、投写レンズは、スクリーン側から順に第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4から成る計14枚のレンズと平行平面ガラスG5とから構成されている。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に絞りSが設けられている。この絞りの中心は投写レンズの光軸L1からhだけ偏心している。投写レンズを構成するレンズ群G1〜G4における各レンズのデータは表5に示す通りである。
なお、表中では、最もスクリーンに近い屈折面から順に面番号iを付しており、d線(波長587.6nm)に対する屈折率が示された番号の屈折面とその次の屈折面とによって1つの光学要素が構成される。面間隔d(単位mm)は対応する番号の屈折面と次の屈折面とのレンズ厚み若しくは空気間隔を示している。なお、最終面の面間隔は平行平面ガラスから画像形成素子までの距離である。
第1レンズ群G1は、スクリーン側に凸面を向けた凸メニスカスレンズG11、画像形成素子側に凹面を向けた凹メニスカスレンズG12、凹レンズG13の計3枚のレンズで構成されている。第2レンズ群G2は、画像形成素子側に凸面を向けた凸メニスカスレンズG21とスクリーン側に凹面を向けた凹メニスカスレンズG22の接合レンズと、凸レンズG23とで構成されている。第3レンズ群G3は、凹レンズG31と凸レンズG32の接合レンズで構成されている。第4レンズ群G4は、凹レンズG41、画像形成素子側に凸面を向けた凸メニスカスレンズG42、凹レンズG43と凸レンズG44の接合レンズ、画像形成素子側に凸面を向けた凸メニスカスレンズG45と凸レンズG46で構成されている。凹レンズG43と凸レンズG44の接合レンズはその凹面をスクリーン側に向けて配置されている。
投写レンズは、フォーカス時に面番号6における面間隔d6が変化して第1レンズ群G1が光軸L1に沿ってスクリーン側と画像形成素子側とに進退する。第1レンズ群G1以外の他のレンズ群G2〜G4は固定されている。変倍時においては、面番号11、15における面間隔d11、d15が変化して第2レンズ群G2、絞りS1、第3レンズ群G3が光軸L1に沿って移動する。絞りSは光軸L1に対して垂直方向に偏心しており、絞りSの開口中心から光軸L1までの距離hを絞り偏心量として示している。投写距離を無限遠とした時の広角端、標準、望遠端における全系の焦点距離、fナンバー、可変面間隔を表6に示す。
投写距離無限遠時のレンズ系全長L、絞り偏心量h1、各レンズ群G1〜G4の焦点距離f1〜f4、広角端における全系の合成焦点距離fwはそれぞれ
L=139.5mm
h=4.5mm
f1=−34.97mm
f2=37.24mm
f3=125.91mm
f4=49.03mm
fw=28.58mm
である。
上記第1〜第5の実施形態では投写光学系として投写レンズ(屈折型結像光学系)を用いたが、この投写レンズに替えて1枚或いは複数枚の反射ミラーで構成した反射型結像光学系で投写光学系を構成してもよい。また、上記何れの実施の形態も画像形成素子6にDMDを用いた例であるが、例えば反射型液晶ライトバルブ、透過型液晶ライトバルブ等、DMD以外の画像形成素子を用いて拡大投写型ディスプレイ装置を構成しても上記実施形態と同様の効果が得られる。
(第6の実施の形態)
本発明の拡大投写型ディスプレイ装置の実施形態の他例を図19に示す。本実施形態は、投写光学系に反射型結像光学系を用いた例である。
図19に示す如く、拡大投写型ディスプレイ装置は、画像形成素子6と、画像形成素子6を照明する照明光学系11と、画像形成素子6からの出射光束をスクリーン(図示省略)に投写する投写光学系とから成る。画像形成素子6と照明光学系11は第1の実施形態と同じものを用い、同じ配置になっている。
投写光学系は4枚の反射鏡から成るテレセントリック反射型結像光学系から成る。投写光学系を構成するテレセントリックな反射型結像光学系は、回転対称非球面形状の凹面状反射面を有する第1の反射鏡7aと、第1の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凸面状反射面を有する第2の反射鏡7bと、第2の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凹面状反射面を有する第3の反射鏡7cと、第3の反射鏡からの光束に反射面を向けた回転対称非球面形状の凸面状反射面を有する第4の反射鏡7dの4つの反射鏡から構成され、反射鏡7a、7b、7c、7dで順次反射された光束の光路がジグザグになるように反射鏡が配置されて、第4の反射鏡7dで反射された光束が投写スクリーン(図示省略)に拡大投写される構成のテレセントリックな反射型結像光学系である。この反射型結像光学系の結像面にはDMDで構成された反射型の画像形成素子6が配置されている。
反射鏡7a〜7dの反射面形状(回転対称非球面形状)は、図20に示すように、光軸をz軸、z軸に垂直な平面をx−y平面(図中4つの頂点A、B、C、Dが張る平面)、z軸とx−y平面との交点を原点O、原点Oで交わりx−y平面上の互いに直交する軸をx軸、y軸に座標軸を設定すると、下記の(1)式〜(3)式を満足する形状になっている。
ρ
2=x
2+y
2 (2)
c=1/r (3)
ここで、α
i(i=1、2、・・・、8)は補正係数、rは反射面の曲率半径、kは円錐係数である。
上記の式を満足する反射面形状を持つ反射鏡はz軸が中心を通る曲面α(図20における点a、b、c、dが張る曲面)を反射面とした反射鏡でも、或いは、z軸が中心を通らない、所謂オフセット型の曲面β(図20における点a’、b’、c’、d’が張る曲面)を反射面とした反射鏡でもよい。本実施の形態ではオフセット型を採用している。
各反射鏡間の空間的位置関係は、反射面形状を定める各反射鏡の座標系の原点が同一平面上にあるように配置するが、反射面形状とは異なり、単純な関係式で表現するのが難しいので、反射面形状を定める上記の(1)式〜(3)式と画像形成素子6への主光線の入射角、画像形成素子6から出射する光束の開き角や光学系の空間的大きさの制限、反射型結像光学系と組み合わせる画像形成素子6(液晶表示素子やDMD等)の種類とサイズ、画面投写位置等の設計仕様を基に、公知の光線追跡シミュレーションにより反射面形状と共に反射鏡7a〜7dの配置位置を決定する。この時、反射型結像光学系の光軸(図22のA−A軸、即ちZ軸)とスクリーン(図22参照)到達光線の角度、所謂、半画角が40°以上90°未満で、且つ、画像形成素子6から反射型結像光学系(投写光学系)への主光線角度θ(画像形成素子6から出射する主光線と画像形成素子の法線との成す角度(図1参照))を5°以上にする。主光線角度が5°以下の場合、画像形成素子6から反射型結像光学系への光線と照明光学系が干渉して光線のケラレが発生するので、主光線角度θを5°以下とするのは望ましくない。主光線角度θの上限は特にないが、反射型結像光学系を組み込む拡大投写型ディスプレイ装置の大きさによって上限は決まる。反射鏡間の上下方向の間隔が広がりすぎずにコンパクトにおさめ、小型化を図るためには、主光線角度の上限を20°前後にとどめるのがよい。
光線追跡シミュレーションにより各反射鏡間の空間的位置関係を求める手順は、図21に示すように、先ず、画角、画面サイズ、光学系の空間的大きさ、画像形成素子の種類と大きさ、画面投写位置等の設計仕様を定める(ステップS1)。次いで、設計仕様に基づいて、光学系の種類(テレセントリック系か否かを決める。本発明ではテレセントリック系を選択)、反射鏡数(本実施形態では4枚)、光軸シフト量等、設計構想を決める(ステップS2)。ステップS1、ステップS2の情報を基に、絞り位置、反射鏡の空間的配置の概略(各反射鏡が相互に干渉して反射光線の一部が遮蔽されることがないように配置)、反射鏡の形状決定方程式(本発明は上記(1)式〜(3)式を用いる)、光線追跡に必要な光学系要素の初期値等の初期データを作成する(ステップS3)。初期データを基に光線追跡シミュレーションを行い、各反射鏡の大きさ、空間的位置、傾き角度等を決定する。なお、光線追跡シミュレーションに当たっては、公知の方法を用いた。本発明者は市販の光学系設計ソフトウェアを用いて光線追跡シミュレーションを行った。光線追跡シミュレーションにおいては、先ず、光線追跡により(1)式〜(3)式におけるx、yの取り得る範囲、αi、r、kをはじめとし、各反射鏡の大きさ、空間的位置、傾き角度等を決めるパラメータの値を算出する(ステップS4)。このステップS4の結果を基にMTF、公差、湾曲、収差、反射鏡の有効光束マージン等の性能評価を行い(ステップS5)、評価結果が設計仕様を満足するまでパラメータの算出・性能評価を繰り返し、反射鏡の形状と空間位置を決定する。
上記の手順に基づいて4枚の各反射面形状を最適化することにより、テレセントリック光学系における広画角化及び小型化に好適な反射鏡形状を得る。得られた結果の一例を図22及び表7に示す。
図22は反射鏡の配置を示す概略図、表7は反射鏡及びその配置を示す各パラメータの具体的な数値を示す表である。
図22において、画像形成素子6と4枚の反射鏡7a〜7dとから成る光学系の座標系(座標軸を大文字で表す)は画像形成素子6の光軸A−AをZ軸、Z軸に交わり紙面に垂直な軸をX軸、Z軸と垂直に交わり紙面に平行な軸(紙面上の軸)をY軸とし、図の右方向をZ軸の正の方向、左方向をZ軸の負の方向、図の上方をY軸の正の方向、図の下方、Z軸より下をY軸の負の方向、紙面表面から裏面に向かう方向をX軸の正の方向に設定し、紙面がY−Z平面になっている。座標原点は何処に設定してもよいが、便宜上Z軸と画像形成素子6の交点を座標原点としている。
表7の「No」は反射鏡7a〜7d及び画像形成素子6を識別するための番号を示しており、「0」は画像形成素子6を、「1」は第1の反射鏡7aを、「2」は第2の反射鏡7bを、「3」は第3の反射鏡7cを、「4」は第4の反射鏡7dを表している。「dj」は反射鏡間の距離を表しており、画像形成素子の欄、即ち、No.0の欄のdjは図22に示したd0を表し、画像形成素子6から第1の反射鏡7aまでの距離を示している。同様にして、No.1の欄、即ち、第1の反射鏡の欄のdjは図22に示したd1を表し、第1の反射鏡7aから第2の反射鏡7bまでの距離を示している。以下、同様である。No.4の欄(第4の反射鏡の欄)のdj、即ち、d4は第4の反射鏡7dからスクリーン9までの距離を示している。
図22、表7における各パラメータ、即ち、反射鏡7a〜7dの曲率半径r、画像形成素子6と第1の反射鏡7aとの距離d0、反射鏡間の距離d1〜d3、第4の反射鏡7dからスクリーン9までの距離d4、及びZ軸(画像形成素子の光軸A−A)から反射鏡7a〜7dの座標原点(反射鏡面形状を定義する座標原点、即ち反射鏡面形状を計算する際の座標の原点)までの距離X、Yの単位は「mm」である。反射鏡7a〜7dの回転角aの単位は「度」で、反射鏡の反射面形状を定義する座標系(座標軸は小文字で表す)の座標軸x、y、zが光学系の座標軸X、Y、Zに平行な状態(y軸がZ軸(光軸A−A)に垂直な状態)を基準にしてx軸を回転軸として図中右回り(時計回り)回転を「+」、左回り(反時計回り)回転を「−」とした。上記以外の各パラメータ(円錐係数k、補正係数α1〜α7)は無名数である。距離dj(j=0〜4、即ち、図中のd0、d1、d2、d3、d4)は、各反射面形状を定義する座標の原点間を光軸A−A(Z軸)に平行に測った距離、即ち、各反射面形状を定義する各座標の原点のZ座標間の間隔、Xは各反射面形状を定義する座標の原点を光軸A−A(Z軸)からX軸方向に光軸A−A(Z軸)に垂直に測った距離、Yは各反射鏡面形状を定義する座標の原点を光軸A−A(Z軸)からY軸方向に光軸A−A(Z軸)に垂直に測った距離である。図22の例では、反射鏡はオフセット型としたのでその反射鏡の座標原点は反射鏡の中心からずれた位置にあり、距離dj(j=0〜4)は、各反射鏡面形状を定義する各座標の原点の相対的なZ座標が分かればよい(X座標とY座標は不要)ので、図では各反射鏡面形状を定義する各座標の座標原点のZ座標の位置は示しているが、X座標、Y座標の位置は明示していない。反射鏡3dは左回転させたものであるが、オフセット型の反射鏡面形状の関係で見かけ上右回転したように描かれている。反射鏡の大きさは任意で、上記の反射鏡位置関係において光線が遮られないように大きさを設定すればよい。
図19において、光源より発せられた光束は照明光学系11の照射面(反射型結像光学系の結像面でもある)に配置された画像形成素子6に入射し、画像に応じた光強度分布に空間変調されて反射して反射型結像光学系に入射する。反射型結像光学系に入射した光束は、第1の反射鏡7a、第2の反射鏡7b、第3の反射鏡7c、第4の反射鏡7dで順次反射・拡大され、第4の反射鏡で反射された光束は投写スクリーン(図示省略)上に拡大投影される。このときの投写画像の投影画角は140°以上の広画角であった。
反射型結像光学系はテレセントリックな光学系で、主光線は画像形成素子6の法線に対し図23に示すように所定の角度θを持つ。光束の主光線8に対する光束の開き角ψ(通常、NA及びFNOに相当する)を持った光束が画像形成素子6に入射し、反射するときに画像形成素子6の法線に対して主光線が角度θを持つことで照明部の光学部品との干渉をなくし、ケラレ等発生させることなく光学系を構成することが出来る。また照明光学系をアフォーカル光学系にすることにより照射面での歪をなくし、照明効率も向上する。しかも画像形成素子が透過型でも反射型でも同一の反射型結像光学系で拡大投写型ディスプレイ装置等のディスプレイ装置を構成できる。
反射型結像光学系では光束が主光線角度θを持つことにより、一般的には投影画面の下側が狭くなり、上側は広がるといった扇形の歪曲収差が必然的に発生する。しかも広画角化にともなってそれはより顕著となる。本実施形態は回転対称非球面形状を持つ反射鏡4枚の構成で歪曲収差を良好にし、各光学部品が比較的大きくなり、高価になるというテレセントリック光学系の欠点を、回転対称非球面形状の反射鏡を使用することで各反射鏡の加工上の精度を緩和し、比較的大型の反射鏡でもプラスチック化を可能にして反射鏡の樹脂化によりコスト低減を実現した。また、反射面が回転対称非球面形状であるため各反射鏡間隔を150mm以下と小さくでき、装置がコンパクトになった。
拡大投写型ディスプレイ装置に適用した場合はその光源からの熱影響を考慮する必要がある。そのため、特に図19における反射鏡7bにおいては、画像形成素子6の近くに配置されるので熱の影響を受け易いから画像歪を抑制する上でその材質の線膨張係数αを
α<6×10-5
に抑えることが望ましい。
(第7の実施の形態)
照明光学系を用いてスクリーンと一体化した背面投写型のディスプレイ装置を構成した例を図24に示す。図24の背面投写型ディスプレイ装置は、照明光学系11と、透過型画像形成素子6aと、反射型結像光学系70から成る投写光学系と、平面反射鏡12a、12bと、透過型スクリーン9とから構成されている。照明光学系11と透過型画像形成素子6aおよび反射型結像光学系70の第1の反射鏡7aは一直線上にあり、反射型結像光学系70の結像面(照明光学系の像面でもある)に透過型画像形成素子6aが配置されている。照明光学系11は第1の実施形態のものと同じ照明光学系である。また、投写光学系を構成する反射型結像光学系70は第6の実施形態のものと同じテレセントリックな反射型結像光学系を用いた。
照明光学系11の光源より発せられた光束は透過型液晶ライトバルブに代表される透過型画像形成素子6aに入射する。透過型画像形成素子6aを透過した光束はその主光線に対する開き角を持ったままテレセントリックな反射型結像光学系70から成る投写光学系に入射する。反射型結像光学系70は図19に示した回転対称非球面形状を持つ4枚の反射鏡7a〜7dで構成されて、反射型結像光学系70から出射した光束は、照度が均一で広画角になっている。反射型結像光学系70を出射した光束は、反射型結像光学系70の出射側の反射鏡3dに対向して反射面を垂直に配置した平面反射鏡12aと、平面反射鏡12aの上方に反射面を下に向けて反射面を水平に配置(平面反射鏡12aに垂直に配置)した平面反射鏡12bとで順次反射し、平面反射鏡12aに平行に配置した透過型スクリーン9に拡大投射される。
図24に示すように、反射型結像光学系70に対して透過型スクリーン9および平面反射鏡12a、12bを配置すると、空間的に少ないスペースでスクリーン9に拡大投射できる。特に、平面反射鏡12bを画像形成素子6aの法線に対して平行に配置・構成することにより、透過型スクリーン9を観察する観察者の視界より装置全体を見えなくすることができる。また、照明光学系11は、図4に示すように、光路折り返し用の反射ミラーを有するものを用いており、ディスプレイ装置の奥行きを小さくできる利点がある。
上記第6、第7の実施の形態は反射型結像光学系70の第3の反射鏡7cに回転対称非球面形状の凹面鏡を用いた例であるが、第3の反射鏡7cを回転対称非球面形状の凸面鏡としても回転対称非球面形状の凹面鏡の場合と同様の効果が得られる。また、第6、第7の実施の形態は投写光学系にテレセントリックな反射結像光学系を用いたが、テレセントリックな反射結像光学系に替えて通常の反射光学系、例えば、極端な例だが、反射鏡1枚、或いは、複数枚で光路を折り返すように構成してもよい。