JP2005199632A - 虹彩色転写フイルム及びそれを使用して得る虹彩色成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックフイルムの片面に、離型層、保護層、虹彩層、接着層が順次形成されている虹彩色転写フイルムにおいて、虹彩層が、保護層側からSiOx薄膜層、金属薄膜層、樹脂層、ZnS薄膜層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色転写フイルム。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、プラスチックフイルムの片面に、離型層、保護層、低屈折率薄膜層の両面に高屈折率薄膜層が形成されている虹彩層、接着層が順次形成された虹彩色転写フイルムにおいて、少なくとも片面側の高屈折率薄膜層は金属薄膜層を介して低屈折率薄膜層上に形成されている虹彩色転写フイルム及びそれを使用して得る虹彩色成形品が記載されている。
そして、上記虹彩層の具体的構成は、ZnS薄膜層(高屈折率薄膜層)、金属薄膜層、SiO2薄膜層(低屈折率薄膜層)、金属薄膜層、ZnS薄膜層(高屈折率薄膜層)、あるいは、保護層側からSiO薄膜層(高屈折率薄膜層)、SiO2薄膜層(低屈折率薄膜層)、金属薄膜層、ZnS薄膜層(高屈折率薄膜層)が順次形成されたものである。
また、金属薄膜層が、Cr薄膜層である旨の記載もある。
1.反射光の虹彩色を赤色系の虹彩色にするために、虹彩層を構成する各層の厚さを厚くすると、虹彩層の各層間の密着性が低下し、虹彩層にクラックが発生するという問題があった。
2.オーディオ製品等において必要な試験である、高温、高湿度の環境下での耐久性を評価する高温高湿耐久試験(温度65℃、湿度95%の雰囲気に24時間放置する試験)をおこなった後に、虹彩層の各層間の密着性が該試験前の密着性より低下する欠点があり、また虹彩色の色調変化、クラックの発生、腐食の発生などの外観変化を生じる場合があった。
3.製造ロット間での虹彩色の色調にばらつきがあり、やや製造安定性に欠けるという問題があった。
ここで、虹彩色の色調のばらつきとは、具体的には、例えば虹彩色成形品の表面に対してほぼ垂直に反射された光(垂直反射光)のピンク色が、少し黄色を帯びたピンク色や、少し青色を帯びたピンク色に変化する程度のばらつきをいい、この程度のばらつきは通常問題とはならない場合が多いが、虹彩色の色調のばらつきに厳しい用途に使用する場合には問題となるものをいう。
[2]本発明は、プラスチックフイルムと離型層との間に離型アンカー層が形成されている上記[1]記載の虹彩色転写フイルムである。
[3]本発明は、上記[1]、又は[2]記載の虹彩色転写フイルムを透明基材に転写して得る虹彩色成形品であって、透明基材の少なくとも片面に、接着層、ZnS薄膜層、樹脂層、金属薄膜層、SiOx薄膜層、保護層、離型層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色成形品である。
[4]本発明は、金属薄膜層が、Cr薄膜層である上記[1]、又は[2]記載の虹彩色転写フイルムである。
[5]本発明は、上記[4]記載の虹彩色転写フイルムを透明基材に転写して得る虹彩色成形品であって、透明基材の少なくとも片面に、接着層、ZnS薄膜層、樹脂層、Cr薄膜層、SiOx薄膜層、保護層、離型層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色成形品である。
(1)反射光の虹彩色を赤色系の虹彩色にするために、虹彩層を構成する各層の厚さを厚くしても、虹彩層の各層間の密着性は充分強く、虹彩層にクラックが発生するということもない。
(2)高温、高湿度の環境下での耐久性を評価する高温高湿耐久試験(温度65℃、湿度95%の雰囲気に24時間放置する試験)をおこなった後に、虹彩層の各層間の密着性が該試験前の密着性より低下したり、虹彩色の色調変化、クラックの発生、腐食の発生などの外観変化を生じることもない。
(3)製造ロット間での虹彩色の色調のばらつきが小さくなり、製造安定性が向上する。
そして、得られた虹彩色成形品は、透明基材の少なくとも片面に、接着層、ZnS薄膜層、樹脂層、金属薄膜層、SiOx薄膜層、保護層、離型層が順次形成された構成となるのである。
そして、上記反射光の虹彩色及び透過光の虹彩色はそれぞれ、虹彩色成形品を表から見た場合でも裏から見た場合でも、すなわち虹彩色成形品の虹彩層が形成されている側から見た場合でも透明基材側から見た場合でも、色調に変化はないので、従って虹彩色成形品を表裏どちらから見ても同じ意匠を有するものとなる。
上記反射光及び透過光の虹彩色は、特許文献1記載の虹彩色成形品と同様、虹彩層に入射した光が虹彩層で反射する反射光と虹彩層を透過する透過光が虹彩層内を通過する道程距離(光路長)を、見る角度により変化させることで現出するものである。
そうすることで反射光及び透過光の虹彩色の色調を、虹彩色成形品を見る角度の違いにより変化させるものであるが、ある角度から虹彩色成形品を見た場合には、該虹彩色は虹彩色成形品全体が均一でしかも単色の色調を呈するものとなる。
すなわち、虹彩層はフラット(平滑)で凹凸がないので、ある角度から虹彩色成形品を見た場合には、反射光及び透過光の光路長は、該角度によって、それぞれ1つの固有の値となるため、反射光及び透過光の虹彩色は、虹彩色成形品全体が均一でしかも単色の色調を呈し、該色調は見る角度に応じて虹彩色成形品全体が均一に変化するものとなるのである。
従って、従来の虹彩色模様が、虹彩層を構成する各層を凹凸にして該凹凸の厚さの差を利用しているために、ある角度から虹彩色成形品を見た場合に、反射光及び透過光がそれぞれ複数の光路長を有してしまう結果、凹凸が施されている形状に沿って虹彩色成形品が多色(一部分が青色、一部分が黄色、一部分が赤色のように)の虹色模様(例えば水玉状の虹色模様、木目状の虹色模様など)が現出し、しかもどの角度から虹彩色成形品を見ても該虹色模様が現出するのと、本発明の虹彩色成形品が呈する虹彩色とは全く異なるものとなるのである。
また、虹彩色転写フイルムをインモールド成形転写に使用する場合には、複雑な形状の成形品への転写を可能とするために、該厚さは25〜50μmが好ましい。
厚さが6μmより薄いと、虹彩色転写フイルムの製造時や転写時に、該転写フイルムにしわ、カール、破れ等が発生するので好ましくない。
厚さが100μmより厚いと、転写時の熱の伝導が悪くなり、転写適性の悪化や作業性の低下を招くと共に、不経済であるので好ましくない。
従って、プラスチックフイルムの厚さは、しわ、カール、転写適性等の問題から6〜100μmが好ましく、より好ましくは12〜75μmであり、特にインモールド成形転写に使用する場合には、25〜50μmとしておけば万全である。
そして離型層は、虹彩色転写フイルムを透明基材に転写した後は、プラスチックフイルムから剥離され、虹彩色成形品の最表層に形成され、保護層を傷等から保護する役割を果たすものである。
従って、離型層は、虹彩層を傷や腐食等から保護する保護性、保護層との密着性、プラスチックフイルム又は離型アンカー層との離型性を有していると共に、後で述べる虹彩層の光学特性に影響を与えないことが必要である。
厚さが0.01μmより薄いと、離型性が低下するので好ましくない。
厚さが5μmより厚いと、離型層に塗りムラが生じるので好ましくない。
また、不経済でコスト高となり、場合によっては離型性が良すぎていわゆる箔散りが発生するので好ましくない。
従って、離型層の厚さは、離型性等の点から0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmであればより万全である。
特に、本発明の虹彩色転写フイルムを使用して、透明基材にインモールド成形転写する場合には、離型アンカー層を形成しておく方が好ましい。
プラスチックフイルムの剥離不良や破れの発生を防止するためには、離型アンカー層と離型層とのT型剥離強度が1〜100g/15mmの範囲であるのが好ましく、5〜30g/15mmの範囲であればさらに好ましい。
T型剥離強度が100g/15mm以上であるとインモールド成形転写時にプラスチックフイルムの剥離不良や破れの発生を防止することができないので好ましくない。
T型剥離強度が1g/15mm以下であると離型性が良すぎて、所謂箔散りが発生するので好ましくない。
従って、T型剥離強度が1〜100g/15mmの範囲であれば、特にインモールド成形転写時にプラスチックフイルムの剥離不良や破れの発生を防止することができるので、本発明の虹彩色転写フイルムを使用して得る虹彩色成形品の外観も良好であり、歩留まりも向上する。
離型アンカー層の厚さが、0.01μm以下であると離型性が低下してインモールド成形転写時にプラスチックフイルムの剥離不良や破れの発生を防止することができないので好ましくない。また、このときT型剥離強度も100g/15mm以上となる。
離型アンカー層の厚さが、2μm以上であると離型性が良すぎて、所謂箔散りが発生すると共に、経済性の点からも好ましくない。
従って、離型アンカー層の厚さは、離型性や経済性の点から、0.01〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmであれば万全である。
従って、保護層は虹彩層を傷や腐食等から保護する保護性、虹彩層との密着性、虹彩層を形成する蒸着時の熱により歪やクラック等が生じない耐熱性等を有していると共に、虹彩層の光学特性に影響を与えないことが必要である。
厚さが0.1μmより薄いと、保護性が低下するので好ましくない。
厚さが5μmより厚いと、塗りムラが生じるので好ましくない。
また、不経済でコスト高となり、場合によっては虹彩層の光学特性に影響を与えるので好ましくない。
従って、保護層の厚さは、保護性等の点から0.1〜5μmが好ましく、0.5〜3μmであればより万全である。
本発明の虹彩色転写フイルムを転写して得る本発明の虹彩色成形品は、虹彩層を上記構成とすることで、反射光の虹彩色が青色系の虹彩色となるようにした場合はもちろん、反射光の虹彩色を赤色系の虹彩色とした場合であっても、
(1)虹彩層の各層間の密着性は充分強く、虹彩層にクラックが発生するということもない。
(2)高温高湿耐久性試験(温度65℃、湿度95%の雰囲気に24時間放置する試験)をおこなった後に、虹彩層の各層間の密着性が該試験前の密着性より低下したり、虹彩色の色調変化、クラックの発生、腐食の発生などの外観変化を生じることもない。
(3)製造ロット間での虹彩色の色調のばらつきが小さくなり、製造安定性が向上する。
という優れた効果を発揮することができるのである。
虹彩層を構成する各層のうち、金属薄膜層は、SiOx薄膜層と樹脂層間の密着性の向上を目的に形成されているものであり、透過光及び反射光の虹彩色にはほとんど影響を与えるものではない。
従って、以下虹彩層と虹彩色との関係について述べる場合は、金属薄膜層を省略して述べることとする。
また、虹彩層のうちSiOx薄膜層及びZnS薄膜層は、誘導加熱方式や抵抗加熱方式等の真空蒸着法で形成できる。
従って、スパッタリング蒸着法に比較して製膜速度が非常に速く、生産性が向上する。
そして、反射光及び透過光の虹彩色は、特許文献1記載の虹彩色成形品と同様、虹彩層内を通過する反射光及び透過光の光路長を、見る角度により変化させることで現出するものである。
そうすることで反射光及び透過光の虹彩色は、虹彩色成形品を見る角度の違いにより色調が変化するものであるが、ある角度から虹彩色成形品を見た場合には、虹彩色成形品全体が均一でしかも単色の色調を呈するものである。
このことをさらに詳細に述べると、虹彩色成形品に太陽光や蛍光灯の光が入射した時、虹彩色成形品の虹彩層で反射されて見える反射光の色は、見る角度によって、例えば虹彩色成形品の表面に対してほぼ垂直に反射された光(垂直反射光)のピンク色から、虹彩色成形品の表面に対してほぼ水平に反射された反射光(水平反射光)の黄色に至るまで連続的に色が変化する虹彩色を呈し、また虹彩層と透明基材を通過して見える光の色も、見る角度によって、虹彩色成形品の表面に対してほぼ垂直の位置で見える透過光(垂直透過光)の青緑色から、虹彩色成形品の表面に対してほぼ水平の位置で見える透過光(水平透過光)の紫色に至るまで連続的に色が変化する虹彩色を呈するのである。
従って、全体としてみれば、反射光の色はピンク色、乃至黄色の虹彩色を呈し、透過光の色は青緑色、乃至紫色の虹彩色を呈するので、反射光の虹彩色と透過光の虹彩色は異なった色調に見えるのである。
これは、見る角度によって、反射光の反射率の最大値の波長、及び透過光の透過率の最大値の波長がそれぞれ可視光領域内(波長:370〜780nm)で変化することによるが、反射光、及び透過光の上記の変化する波長範囲を制御することにより、反射光、及び透過光の虹彩色の色調を制御することができる。
そして、反射光、及び透過光の虹彩色の色調は、後で詳しく述べるSiOx薄膜層、樹脂層、及びZnS薄膜層のそれぞれの屈折率と厚さを調整することにより、自由に、バラエティーに富んだものとすることができる。
これは、虹彩層を上記のような3層構成にすることで、虹彩層が1層の時と比較して、虹彩色成形品の反射光の反射率の値が高くなると共に、反射光のスペクトル、及び透過光のスペクトルがシャープに(スペクトル幅が狭く)なるからである。
このことをさらに詳細に述べると、例えば、透明基材として厚さ2mmで、全光線透過率の値が93%の透明アクリル板であって、該透明アクリル板の裏面(非測定面)に黒色塗装を施した後JIS−R−3106に準じて測定した場合の5°正反射の反射率の値が4%である透明アクリル板に、本発明の虹彩色転写フイルムを転写して得た本発明の虹彩色成形品は、可視光領域内(波長:370〜780nm)の分光透過率(以下、単に分光透過率とする)の最大値が70%以上となり、かつ可視光領域内のJIS−R−3106に準じて測定した場合の5°正反射の反射率(以下、単に反射率とする)の最大値が30%以上、最小値が10%未満であり、しかも反射光のスペクトル、及び透過光のスペクトルがシャープとなるので、その結果反射光の虹彩色、及び透過光の虹彩色が非常に鮮やかになるのである。
そして、虹彩色転写フイルムの虹彩層を、反射率の最大値が30%以上、最小値が10%未満、分光透過率の最大値が70%以上となるような虹彩層にしておけば、虹彩色成形品の反射光の反射率、及び透過光の透過率の値も高くなり、かつ反射光のスペクトル及び透過光のスペクトルがシャープとなるので、その結果反射光の虹彩色、及び透過光の虹彩色が非常に鮮やかになるのである。
但し、本発明の虹彩色転写フイルムの虹彩層の構成上、反射率の最大値は、90%を超えることはなく、反射率の最小値は0%にはならず、また分光透過率の最大値は100%にはならない。
上記屈折率は、透明基材の屈折率よりも高く、かつ後で述べる樹脂層とのバランスの点から、その値は、1.8〜2.0が好ましい。
厚さが、10nmより薄いと、樹脂層及びZnS薄膜層の屈折率や厚さを調整しても虹彩層としての目的を達成できないので好ましくない。
厚さが、200nmより厚いと、虹彩層としての目的を達成できないばかりでなく、SiOx薄膜層にクラックが発生したり、蒸着時の熱によるプラスチックフイルムの変形で蒸着ムラが発生したりするので好ましくない。
SiOx薄膜層の厚さは、虹彩層の目的の達成やクラック等の点で10〜200nmが好ましい。
そして、上記屈折率はSiOx薄膜層及びZnS薄膜層とのバランスの点から、その値は、1.3〜1.6が好ましい。
上記イソシアネートの種類は特に制限はなく、TDI(トリレンジイソシアネート)系、XDI(キシレンジイソシアネート)系、MDI(メチレンジイソシアネート)系、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系等の従来から使用されてきた各種イソシアネートが使用可能であるが、高温高湿耐久性の点から、XDI系、MDI系、HMDI系のイソシアネートを使用するのが好ましい。
厚さが、30nmより薄くても、また500nmより厚くても、SiOx薄膜層及びZnS薄膜層の屈折率や厚さを調整しても虹彩層としての目的を達成できないので好ましくない。
樹脂層の厚さは、虹彩層の目的を達成するために30〜500nmが好ましい。
上記屈折率は、透明基材の屈折率よりも高く、かつ樹脂層とのバランスの点から、その値は、2.3〜2.5が好ましい。
厚さが、10nmより薄いと、樹脂層及びSiOx薄膜層の屈折率や厚さを調整しても虹彩層としての目的を達成できないので好ましくない。
厚さが、200nmより厚いと、虹彩層としての目的を達成できないばかりでなく、ZnS薄膜層にクラックが発生したり、蒸着時の熱によるプラスチックフイルムの変形で蒸着ムラが発生したりするので好ましくない。
ZnS薄膜層の厚さは、虹彩層の目的の達成やクラック等の点で10〜200nmが好ましい。
また、金属薄膜層は、透過光及び反射光の虹彩色にはほとんど影響を与えるものであってはならない。
従って、金属薄膜層の厚さは極薄にしておく必要があり、0.1〜10nmの範囲が好ましく、特に0.5〜5nmの範囲が好ましい。
厚さが0.1nmより薄いと密着性や高温高湿耐久性が向上せず、また10nmより厚いと虹彩色成形品の虹彩色が鮮やかさに欠け、場合によっては所望の虹彩色が得られなくなるので好ましくない。
中でも、密着性や高温高湿耐久性の点からCr薄膜層が好ましい。
尚、金属薄膜層は前記したように極薄であるので、一部が酸化された状態になっていると考えられるが、これら一部が酸化された状態の金属薄膜層ももちろん本発明の金属薄膜層に含まれる。
しかし、後者の構成では、虹彩層にクラックが発生し易く、またSiOx薄膜層と接着層間の密着性が悪くなり、その結果高温高湿耐久性も悪くなる問題がある。
従って、本発明の虹彩色転写フイルムの虹彩層の構成は、前者の構成、すなわち保護層側からSiOx薄膜層、金属薄膜層、樹脂層、ZnS薄膜層が順次形成された構成としておかなければ、本発明の効果を充分に発揮できないのである。
従って、虹彩層を構成する各層を凹凸にして該凹凸の厚さの差を利用することで虹彩模様を現出するものではない。
よって、虹彩模様の現出防止のため、虹彩層を構成する各層は、できるだけ凹凸による厚さの差をなくし、フラットに形成しておく必要がある。
本発明の虹彩色成形品を本発明の主用途であるオーディオ製品の窓、サングラス、テレビ等の電化製品の筐体等に使用した場合、該成形品の虹彩層が形成されている部分の中で、虹彩層を構成する各層のそれぞれの厚さの最大値と最小値の差が、虹彩模様が現出する程度の差があれば実用上使用できない。
従って、虹彩模様の現出防止のためには、上記厚さの最大値と最小値の差を10nm以下としておけばよく、5nm以下としておけば万全である。
そして、上記厚さの最大値と最小値の差を10nm以下、好ましくは5nm以下としておけば、製造ロット間での虹彩色の色調のばらつきも小さくなるので、この点からも好ましい。
中でも、樹脂層は、他の層(SiOx薄膜層、金属薄膜層、ZnS薄膜層)と比べて、形成方法上、厚さの差が比較的生じ易く、虹彩模様の現出防止、及び色調のばらつき防止のためには、特に樹脂層の厚さの最大値と最小値の差を10nm以下、好ましくは5nm以下である樹脂層としておけば万全である。
本発明の虹彩色転写フイルムには接着層が形成されているので、該虹彩色転写フイルムを透明基材に転写して得る本発明の虹彩色成形品は、虹彩層と透明基材との間に接着層が形成されることとなり、虹彩層と透明基材との密着性が向上する。
厚さが0.1μmより薄いと、密着性が得られ難いので好ましくない。
厚さが10μmより厚くても、密着力は向上せず、また不経済であり、さらに塗りムラによる外観不良が生じるので好ましくない。
従って、接着層の厚さは、密着性や塗り外観の点等から0.1〜10μmが好ましい。
そして、得られた虹彩色成形品は、透明基材の少なくとも片面に、接着層、虹彩層、保護層、離型層が順次形成された構成となるのである。
上記、虹彩層は、保護層側からSiOx薄膜層、金属薄膜層、樹脂層、ZnS薄膜層が順次形成されたものとなっている。
従って、本発明の虹彩色成形品は、前記したように反射する反射光の色と、虹彩層と透明基材を通過する透過光の色がそれぞれ虹彩色を呈し、反射光の虹彩色と透過光の虹彩色が異なる色調の虹彩色であり、しかも虹彩色が非常に鮮やかで、意匠性に非常に優れたものとなるとともに、虹彩層の各層間の密着性が良好で、高温高湿耐久性にも優れている。
さらに、虹彩層と透明基材との間に接着層が形成されているので、虹彩層と透明基材との密着性も良好である。
また、虹彩色成形品の虹彩色の色調も、製造ロット間でばらつきが小さくなる。
さらに、上記透明基材は、着色されていても良く、その場合には基材の色と虹彩色が相俟って、格別な意匠性を有する虹彩色成形品となる。
また、本発明の虹彩色転写フイルムは、不透明な基材にも転写でき、その場合には反射光のみが虹彩色を呈する虹彩色成形品となる。
図1は、本発明に係る虹彩色転写フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム1の片面に、離型アンカー層2、離型層3、保護層4、その上にSiOx薄膜層5a、金属薄膜層5b、樹脂層5c、ZnS薄膜層5dからなる虹彩層5、接着層6が順次形成されている。
図2は、図1に示す本発明に係る虹彩色転写フイルムを透明基材の片面に転写して得られた、本発明の虹彩色成形品の一例を示す一部拡大断面図であり、透明基材7の片面に、接着層6、その上にZnS薄膜層5d、樹脂層5c、金属薄膜層5b、SiOx薄膜層5aからなる虹彩層5、保護層4、離型層3が順次形成されている。
次に、透明基材として厚さ2mmで、全光線透過率の値が93%の透明アクリル板であって、該透明アクリル板の裏面(非測定面)に黒色塗装を施した後JIS−R−3106に準じて測定した場合の5°正反射の反射率の値が4%である透明アクリル板に、上記の本発明の虹彩色転写フイルムを転写して、透明アクリル板上に、厚さ1μmの接着層、厚さ80nmのZnS薄膜層、厚さ130nmの樹脂層、厚さ2nmのCr薄膜層、厚さ100nmのSiOx薄膜層、厚さ1μmの保護層、厚さ1μmの離型層が順次形成された本発明の虹彩色成形品を得た。
得られた虹彩色成形品は、虹彩層で反射されて見える反射光の色は、見る角度によって、例えば垂直反射光のピンク色から、水平反射光の黄色に至るまで連続的に色が変化する赤色系の虹彩色を呈し、また虹彩層と透明基材を通過して見える光の色も、見る角度によって、垂直透過光の青緑色から、水平透過光の紫色に至るまで連続的に色が変化する虹彩色を呈していた。
尚、得られた虹彩色成形品は、該成形品の表裏何れから見ても、上記と同じ虹彩色を呈していた。
また、得られた虹彩色成形品の反射率の最大値は32%(該反射率の最大値を示した波長(ピーク波長)は750nmであった)、最小値は4%(該反射率の最小値を示した波長(ボトム波長)は510nmであった)、分光透過率の最大値は90%であり、また反射スペクトル、及び透過スペクトルはシャープであった。
次に、実施例で使用した透明アクリル板に、上記従来の虹彩色転写フイルムを転写して、透明アクリル板上に厚さ1μmの接着層、厚さ80nmのZnS薄膜層、厚さ2nmのCr薄膜層、厚さ130nmのSiO2薄膜層、厚さ100nmのSiO薄膜層、厚さ1μmの保護層、厚さ1μmの離型層が順次形成された従来の虹彩色成形品を得た。
得られた虹彩色成形品は、実施例と同じ虹彩色を呈していた。
また、該虹彩色成形品の反射率の最大値は32%(ピーク波長:750nm)、最小値は4%(ボトム波長:510nm)、分光透過率の最大値は90%であり、また反射スペクトル及び透過スペクトルはシャープであった。
(評価試料) 実施例の本発明の虹彩色成形品、及び比較例の虹彩色成形品をそれぞれ1つ準備して試料とした。
(評価方法)虹彩色成形品の離型層側表面に粘着テープを貼り、その後剥離して、離型層、保護層、虹彩層、接着層の剥離状況(剥離面積、剥離界面)を目視にて観察した。
(評価結果)表1
離型層、保護層、虹彩層、あるいは接着層が、全く剥離しなかったものを◎、ごく一部剥離したものを○、一部剥離したものを△、ほとんど剥離したものを×とした。
(評価試料) 実施例の本発明の虹彩色成形品、及び比較例の虹彩色成形品をそれぞれ1つ準備して試料とした。
(評価方法)温度65℃、湿度95%の雰囲気に24時間放置した後、上記と同様の密着性試験をおこなうとともに、試験後のクラック発生の有無を観察した。
(評価結果)表1
[密着性]密着性試験と同様にして評価した。
[クラック]試験後にクラックが発生しなかったものを○、発生したものを×とした。
(評価試料)実施例の本発明の虹彩色転写フイルム、及び比較例の虹彩色転写フイルムについて、それぞれ同様の方法で10ロットずつ製造(該虹彩色転写フイルムを転写して得る虹彩色成形品の反射率のピーク波長が750nmに、ボトム波長が510〜520nmになることを目標として製造)し、各々の該虹彩色転写フイルムをそれぞれ製造ロットごとに長さ方向で3点採取(縦10cm×横10cmの正方形を3点採取)し、実施例で使用した透明基材に転写して、実施例の本発明の虹彩色成形品、及び比較例の虹彩色成形品をそれぞれ30点製造した。
(評価方法)分光光度計(日立製作所社製 U−4000)を使用して、ピーク波長、及びボトム波長を測定し、ピーク波長、及びボトム波長の両方が目的の波長(ピーク波長:750nm、ボトム波長:510〜520nm)であった試料を合格試料とし、合格試料が全試料30点のうちに占める割合(合格率)を計算した(例えば30点全てが合格試料である場合には100%)。
(評価結果)表1
2 離型アンカー層
3 離型層
4 保護層
5 虹彩層
5a SiOx薄膜層
5b 金属薄膜層
5c 樹脂層
5d ZnS薄膜層
6 接着層
7 透明基材
Claims (5)
- プラスチックフイルムの片面に、離型層、保護層、虹彩層、接着層が順次形成されている虹彩色転写フイルムにおいて、虹彩層が、保護層側からSiOx薄膜層、金属薄膜層、樹脂層、ZnS薄膜層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色転写フイルム。
- プラスチックフイルムと離型層との間に離型アンカー層が形成されている請求項1記載の虹彩色転写フイルム。
- 請求項1、又は2記載の虹彩色転写フイルムを透明基材に転写して得る虹彩色成形品であって、透明基材の少なくとも片面に、接着層、ZnS薄膜層、樹脂層、金属薄膜層、SiOx薄膜層、保護層、離型層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色成形品。
- 金属薄膜層が、Cr薄膜層である請求項1、又は2記載の虹彩色転写フイルム。
- 請求項4記載の虹彩色転写フイルムを透明基材に転写して得る虹彩色成形品であって、透明基材の少なくとも片面に、接着層、ZnS薄膜層、樹脂層、Cr薄膜層、SiOx薄膜層、保護層、離型層が順次形成されたものであることを特徴とする虹彩色成形品。
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WO2008020482A1 (fr) * | 2006-08-18 | 2008-02-21 | Reiko Co., Ltd. | Matière isolante qui excelle par son brillant métallique et article moulé qui utilise celle-ci |
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