JP2005199284A - フランジなしプレス成形品のプレス成型方法 - Google Patents

フランジなしプレス成形品のプレス成型方法 Download PDF

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勝義 諸田
Yoshiyuki Kurita
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Abstract

【課題】フランジなしプレス成形品のプレス成形方法において、打ち抜かれた製品側にフランジ状部の一部が残存したり、スクラップ側に製品の一部が残存した不良品の発生を防止する。
【解決手段】長尺の金属板材10を各加工位置に順送し、プランク穴18を型抜き加工し、残余の成形部分17を有天筒状に膨出させる絞り加工を行い、絞り加工後の膨出部19,12を絞り外径と略同一径で打ち抜く抜き落とし加工を、上型ダイ58と下型ポンチ63とを用いて行うプレス成形方法において、抜き落とし用の下型ポンチ63をバネ71で支えて揺れ動きながら上下に可動するように設け、上型ダイ58で前記可動ポンチ63をポンチプレート66まで押し下げて密着させ、前記膨出部19,12をダイ穴57に押し込むようにして抜き落とす。
【選択図】図2

Description

本発明は、フランジを残す絞り加工後の膨出部を、絞り外径と略同一径で抜き落として得るフランジなしプレス成形品を、長尺の金属板からプレス成形するための順送によるプレス成形方法に関するものである。
金属板材から所定の形状のプレス成形品を得る成形方法として、順送によるプレス成形方法が知られている。
順送プレス成形方法とは、異なる成形機能を有するプレス型を、金属板材の送行方向に並べて加工位置を設定しておき、長尺の金属板材を間欠的に送行させながら、各加工位置のプレス型などにより次々と連続的にプレス成形加工を行って、最終的に目的とする所定の形状のプレス成形品を得るものである(例えば、「特許文献1」参照。)。
このようなプレス成形方法において、例えば円筒形の防振マウントやブッシュなどの中間筒として使用するフランジなし筒状成形品で、特に図6および図7に示すように、両側に所定長さのスリット2,2を有する直円筒状のフランジなし筒状成形品1を、金属板材からプレス成形する場合は、長尺の金属板材をプレス成形の各工程の加工位置に順送してプレス成形する。すなわち金属板材の長さ方向の所要間隔毎に成形品に応じた成形部分を残存させるようにブランク穴を型抜き加工した後、前記成形部分の周縁部をフランジ状に残して所定の深さの有天筒状に膨出させる絞り加工、絞り加工後の有天筒状の膨出部の天板部にせん断作用で穴をあける天穴抜き加工、天穴抜き加工後の天板周縁部を略直筒状に成形するバーリング加工、バーリング加工後の筒状部の両側にスリットを形成する加工を順次行い、そして最後に、スリットが形成された筒状部を絞り外径と略同一径でフランジ状部から打ち抜く抜き落とし加工を行っていた。
従来の抜き落とし加工を図8および図9に基づいて具体的に説明する。図8は従来のフランジなしの製品を抜き落とす加工位置の上型が上昇した状態の下型の断面図、図9は同加工位置の上型が降下した状態の下型の断面図である。
すなわち、上型31には、下型32に備える上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48上を摺接して送られてくる筒状部12が停止する位置に対応して、前記筒状部12の外径と略同一径のダイ穴57を有するダイ58が、上下動可能なバネ付勢式の逆可動ストリッパ59の下面と同一平面になるように設けられている。他方、下型32には、下型32に備える上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48上を摺接して送られてくる筒状部12が停止する位置の真下に、前記筒状部12の外径と略同一径の外径を有する円柱状のポンチ63Aが、上型31の降下によるプレス成形作用時に、前記可動ストリッパ48の上面より上向きに突出するように設けられ、ポンチ63Aの肩部が刃部として形成されている。また前記ポンチ63Aの上端には、前記筒状部12の内径と略同一径の最大外径を有する略載頭円錐状のガイド64が同芯状に取り付けられている。そして、この抜き落とし用のポンチ63Aについても、他の加工(絞り加工、天穴抜き加工、バーリング加工など)で用いるポンチと同様に、ポンチプレート66およびバッキングプレート67を介してポンチホルダ68にしっかりと固定されてる。図中の13は円筒部12の下端から張り出すフランジ状部、10bは長尺の金属板材の両側に残存し、間に成形品に応じた前記成形部分を金属板材の長さ方向の所要間隔毎に連設し、各成形部分を各加工位置に順送するための桟部分、14は天穴抜き加工およびバーリング加工された後の筒状部12の両側に形成された前記フランジ状部13の外周に開口するスリットを示す。
前記のように上型31に備えたダイ58と下型32に備えた固定ポンチ63Aを用いて抜き落とし加工を行う。すなわち上型31が降下すると、まず、この上型31の逆可動ストリッパ59に先行して、該上型31に備えられるバネ付勢式で可動の先行ピン(図示せず)により、下型32の可動ストリッパ48がポンチプレート66に当接するまで水平姿勢で平行に押し下げられる。この時、前記筒状部12が下がり可動ストリッパ48の上面から上向きに突出する固定ポンチ63Aのガイド64の外側に嵌合する。上型31がさらに降下すると、ダイ穴57の中に前記筒状部12が押し込まれて、せん断作用により筒状部12はその外径と略同一径でフランジ状部13から打ち抜かれて切り離される。
特開2003−230918号公報
ところで、順送によるプレス成形では、成形部分を桟部分10b,10bにより連設させて各加工位置に順送しているため、図9に示すように、筒状部12は、桟部分10b,10bによる引きずり現象などの影響を受けて、ポンチ63Aのガイド64の外側に若干傾いた状態で嵌合される場合がある。この場合、該筒状部12は、ポンチ63Aに対して同一軸芯上で一直線状にならず、ポンチ63Aの肩部に形成された刃部に直角に載せられていないため、フランジ状部13の板面に対して前記筒状部12を直角に打ち抜くことができず、斜めカットになり、図10および図11に示すように、打ち抜かれた製品側にフランジ状部13の一部が残存したり、スクラップ側に前記筒状部12の一部が残存した不良品1Aを発生させる問題があった。図10はフランジなし筒状成形品の不良品を示す横断面図、図11はフランジなし筒状成形品の不良品を示す外観図で、図中の13aは製品側に残存したフランジ状部13の一部を示し、12aはスクラップ側に前記筒状部12の一部が残存して該筒状部12に形成された切り欠け部を示す。
そこで、本発明は、長尺の金属板材をプレス成形の各加工位置に順送し、長さ方向の所要間隔毎に成形品に応じた成形部分を残存させるようにプランク穴を型抜き加工し、前記成形部分の周縁部をフランジ状に残した状態で所定の深さの有天筒状に膨出させる絞り加工を行い、絞り加工後の膨出部を絞り外径と略同一径で打ち抜く抜き落とし加工を、絞り外径と略同一径のダイ穴を有する上型ダイと膨出部の内側に嵌合させる位置決め用のガイドを上端に設けた絞り外径と略同一径の下型ポンチとを用いて行い、フランジなしプレス成形品を順送プレス成形方法により得る場合において、図10および図11に示すような、打ち抜かれた製品側にフランジ状部の一部が残存したり、スクラップ側に前記膨出部の筒状部の一部が残存した不良品の発生を防止できるプレス成形方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明のフランジなしプレス成形品のプレス成形方法は、抜き落とし用の下型ポンチをバネで支えて揺れ動きながら上下に可動するように設け、上型ダイで前記可動ポンチをポンチプレートまで押し下げて密着させ、前記膨出部をダイ穴に押し込むようにして抜き落とすことを特徴としている。
本発明のプレス成形方法によれば、抜き落とし用のポンチが可動式で揺れ動きながら膨出部の筒状部の内側にガイドを嵌入するため、膨出部の筒状部が、金属板材の両側縁に残存する桟部分による引きずり現象などにより、若干傾いた状態になっていたとしても、該膨出部の筒状部は、ポンチに対して同一軸芯上で一直線状になり、ポンチの刃部に直角に載せられる。これによって、フランジ状部の板面に対して前記膨出部の筒状部を直角に打ち抜くことができ、斜めカットにより打ち抜かれて製品側にフランジ状部の一部が残存したり、スクラップ側に前記膨出部の筒状部の一部が残存する不良品の発生を防止できる。
前記抜き落とし加工の前に絞り加工後の膨出部に対して天穴抜き加工を行うことにより、不良品を発生することなくフランジなし筒状成形品を得ることができる。
前記抜き落とし加工の前に絞り加工後の膨出部の筒状部にスリットを形成する加工を行ことにより、不良品を発生することなくスリットを有するフランジなし筒状成形品を得ることができる。
スリットを有するフランジなし筒状成形品を得る場合には、絞り加工後の膨出部に対して天穴抜き加工を行い、絞り加工後の膨出部の筒状部にスリットを形成する加工を行った後、前記抜き落とし加工を行うことが好ましい。
以下、本発明の実施の形態を図面に示す一実施例に基づて説明する。
図1は、本発明の一実施例における一連のプレス成形工程の前半部の各工程位置での加工状態を示す金属板材の平面図と縦断面図であり、図2は同プレス成形工程の後半部の各工程位置での加工状態を示す金属板材の平面図と縦断面図である。
図において、10は成形対象のプレス成形品に応じて形成された所定厚、所定幅の長尺の金属板材である。この金属板材10は、送り出し装置側の間欠送り装置(図示せず)により順送プレス成形装置30に送り出され、矢印A方向に所定ピッチずつ間欠的に順次送行せしめられる。順送プレス成形装置30には、金属板材10の送りピッチに対応する所定の間隔毎にプレス成形の加工位置P1〜P11が設定され、後述のように各加工位置P1〜P11においてそれぞれ所定の加工が施されて、最終的に両側に所定長さのスリット2,2を有する直円筒状のフランジなし筒状成形品1が得られる。そのフランジなし筒状成形品1の横断面を図6に示し、外観を図7に示している。
前記順送プレス成形装置30は、図1および図2の各(b)おいて、二点鎖線で示すように、金属板材10の送行位置の上方で上下動が可能な上型31と、金属板材10の送行位置の下に配置される下型32とからなり、上型31は油圧シリンダなどの押圧手段により下降し、下型32に対しプレス可能に設けられる。前記金属板材10は下型32の上面に沿って送られる。この順送プレス成形装置30の上型31と下型32には、上記金属板材10の送り方向に所定のピッチで設定される各加工位置P1〜P11毎に、それぞれのプレス加工の内容に対応した加工手段、例えばダイやノックアウト、ポンチや可動ストリッパなどが配設される。
前記プレス成形の各加工位置P1〜P11での加工内容について、図1および図2に基づき装置構成の概略とともに順に説明する。
まず、最初の加工位置P1では、前記のように送られる金属板材10の位置決めなどのために、長手方向の所要間隔毎の各加工位置間に相当する箇所においてパイロット穴15を打ち抜く。図中の33は上型31に備える穴あけ用のポンチ、34は下型32において前記ポンチ33に対応したダイ穴を有するダイである。
次の加工位置P2では、前記金属板材10の長手方向所要間隔毎の側縁部、好ましくは前記パイロット穴15,15間に想定される成形部分の外方の両側縁部に、絞り成形を容易にするための長手方向のスリット穴16,16を打ち抜く。図中の35は上型31に備えるスリット穴形成用のポンチ、36は下型32において前記ポンチ35に対応したダイ穴を有するダイである。
次の加工位置P3では、前記スリット穴16,16の内方において、加工対象の筒状成形品に応じた略円形の成形部分17を残存させるように、前記パイロット穴15,15の部分を中心として鼓形状にブランク穴18を型抜き形成する。これにより、前記円形の成形部分17は、金属板材10の幅方向両側の若干幅の連結部分17a,17aの部分で、金属板材10の両側縁部に残存する桟部分10b,10b、特に前記スリット穴16,16の内側縁部に連続した状態となる。図中の37は上型31に備えるブランク穴形成用のポンチ、38は下型32において前記ポンチ37に対応したダイ穴を有するダイである。
前記加工位置P1,P2,P3の各ポンチ33,35,37は、それぞれ上型31の下降によるプレス作用によって、上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ39より突出して、所定形状の穴抜き加工を行うように設けられる。
なお、前記加工位置P1とP3とは、前記成形部分17の加工を行う後続の各加工位置P4〜P11に対して、1/2ピッチ分ずれた位置に設定される。
そして、1もしくは複数のアイドル位置を介して前記加工位置P3の後に続く絞り成形の加工位置P4,P5,P6では、金属板材10の前記ブランク穴18,18間の円形の平らな金属板材部分、すなわち前記成形部分17の周縁部をフランジ状に残余させるようにして、その中央部分を段階的に有天筒状に膨出させる絞り加工を行い、所定の径、高さを有する有天筒状をなす膨出部19を成形する。図中の13は残余させたフランジ状部を示す。
具体的には、加工位置P4では、第1絞りとして、前記成形部分17の周縁部を残して比較的径大でやや低い(浅い)円形の膨出部19−1を絞り加工し、アイドル位置を経て次の加工位置P5では、第2絞りとして前記よりやや径小でかつやや高い膨出部19−2を絞り加工する。そして次の加工位置P6において、上絞り加工を行い、所定の径、高さの有天筒状の膨出部19を成形する。これにより、下端に円形のフランジ状部13が形成される。
図中の40a,40bおよび40cは、前記加工位置P4,P5およびP6において、それぞれ下型32に備える上向きに突出自在な絞り用のポンチで、上型31の降下によるプレス成形作用時に、上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ41a(加工位置P4の),41b(加工位置P5とP6に共通の)より上向きに突出するように設けられており、それぞれの位置の絞り加工に対応する径と突出高さを有している。42a,42bおよび42cは、上型31における前記各加工位置のポンチ40a,40bおよび40cのそれぞれに対応したダイ穴とそのダイ穴から膨出部19−1,19−2および19を押し出すためのノックアウトを有するダイである。
次の加工位置P7では、前記のように成形された有天筒状の膨出部19の天板部に、その周縁部を僅かに残してせん断作用で穴を打ち抜く穴抜き加工を行う。図中の43は下型32に備える穴抜き用のポンチ、44は上型31に備えてスクラップを上型31の側方に吹き飛ばすための通路に連通するダイ穴を有するダイであり、上型31の降下によるプレス作用時に、上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ45が押し下げられると、ポンチ43が前記膨出部19の内側に嵌入して天板部をその周縁部を僅かに残して下方から支え、前記膨出部19をダイ穴に押し込み、せん断作用により前記天板部に穴を打ち抜く。19aはその打ち抜き穴を示す。
次の加工位置P8では、前記天穴抜き加工後の天板周縁部をその下方の筒部と同径の直筒状に成形するバーリング加工を行う。図中の46は下型31に備えるバーリング用のポンチ、47は上型31に備えるダイであり、上型31の降下によるプレス作用時に、加工位置P7と共通の上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ45が押し下げられると、ポンチ46が前記天穴抜き加工後の膨出部19の内側に嵌入するとともに、前記天穴抜き加工後の膨出部19がダイ穴に押し込まれ、ポンチ46とダイ47で天板周縁部を立たせる。図中の12はバーリング加工された後の筒状部を示し、ダイ穴には筒状部12を押し出すためのノックアウトを設けている。
さらに、後続のスリット形成のための加工位置P9,P10において、前記のように絞り成形され、天穴抜き加工およびバーリング加工された後の筒状部12の両側に、前記フランジ状部13の外周に開口するスリット14,14を形成する加工を行う。図3はスリット形成の加工位置P9,P10の下型32の概略を示す平面図である。
すなわち、前記バーリングの加工位置P8の後にアイドル位置を介して連続する加工位置P9において、前記筒状部12の下端より外方へ張り出したフランジ状部13の両側部分、例えば図のように、スリット穴16,16の内側縁部16a,16aに連続する若干幅の連結部分17a,17aに、後述するスリット形成用の板状ポンチ53,53がスリット形成動作時に嵌入できるガイドとしての開口部22,22を形成する。この開口部22,22は、フランジ状部13の内縁(筒状部12との連続部分)ではスリット幅と略同幅で、これより外方側に向かって図のように漸次幅広とし、前記スリット穴16,16の部分に開口せしめて、スリット形成動作時に、板状ポンチ53,53が容易に嵌入できるように形成する。さらに、前記のようにスリット穴16,16を形成しておく場合、前記開口部22,22を形成するのと同時にその外方の金属板材10の側縁部、すなわちスリット穴16,16の外側縁部をも切開して、前記スリット形成用の板状ポンチ53,53を、前記開口部22,22に対してさらに嵌入し易くする。23,23は外側縁部の切開部を示す。なお、金属板材10の両側縁部にスリット穴16,16を有さない場合は、前記開口部22,22を、金属板材10の側縁に開口せしめる。
前記開口部22,22および切開部23,23を形成する加工位置P9の装置構成として、上型31には、下型32に備える加工位置P10,P11と共通の上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48上を摺接して送られてくる前記筒状部12が停止する位置の幅方向両側に、前記筒状部12の外径に略相当する間隔をおいて下向きに突出する板状ポンチ49,49が配設され、この板状ポンチ49,49の下端が刃部として形成されている。下型32には、前記板状ポンチ49,49に対応したダイ穴50,50と前記筒状部12の停止位置の真下においてダイ面から上向きに突出する円柱状のガイド51を有するダイ52が配設されている。前記上型31の降下によるプレス作用時に、可動ストリッパ48が押し下げられると、前記筒状部12がガイド51の外側に嵌合し、前記フランジ状部13および両側の桟部分10b,10bがダイ52上の定位置に置かれ、板状ポンチ49,49とダイ52との間に挟まれ、フランジ状部13の相対する両側の箇所に開口部22,22を打ち抜き形成するとともに、その外側方における前記スリット穴16,16の外縁部を切開する。
また、前記開口部22,22および切開部23,23を形成した後の加工位置P10において、前記の開口部22,22および切開部23,23をガイドにしてスリット形成用の板状ポンチ53,53を作動させ、前記筒状部12の両側に対向して所定長さのスリット14,14を形成する。
前記スリット14,14を形成する加工位置P10の装置構成として、下型32の加工位置P9,P11と共通の上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48の上には、前記筒状部12が停止する位置の幅方向両側に、前記両側のスリット形成用の板状ポンチ53,53が、両者間に前記筒状部12が通過できる間隔を存し、かつ該可動ストリッパ48との間に前記フランジ状部13および両側の桟部分10b,10bが通過できる隙間を保有して対向配置され、この板状ポンチ53,53の内側端が刃部として形成され、打ち抜き形成するスリット14,14の長さに略対応する高さを有している。この板状ポンチ53,53は、上型31の降下により、下端面が可動ストリッパ48の上面に摺接するように押し下げられ、互いが接近する幅方向内側へ進出移動し、上型31の上昇時、コイルバネ54,54により互いが離反する幅方向外側へ後退移動した後、可動ストリッパ48の上面との間に所定の隙間を設けるように持ち上げられる。下型32には、外周面に前記板状ポンチ53,53に対応したダイ穴55,55を有する円柱状のダイ56が、前記筒状部12の停止位置の真下に上向きに配設されている。前記上型31の降下によるプレス作用時に、可動ストリッパ48が押し下げられ、前記筒状部12がダイ56の外側に嵌合するとともに、前記板状ポンチ53,53の下縁部がフランジ状部13に形成された開口部22,22およびその外側方におけるスリット穴16,16の外側縁部に形成された切開部23,23に嵌入すると、その板状ポンチ53,53が互いが接近する幅方向内側へ進出移動し、前記前記筒状部12が前記板状ポンチ53,53とダイ56との間に挟まれ、前記筒状部12の両側に対向して所定長さのスリット14,14を打ち抜き形成する。そして、上型31が上昇して金型が開くと、バネ54,54の付勢力によって前記板状ポンチ53,53が互いに離反する幅方向外側へ後退移動し、加工前の元の位置に復帰する。以降、順送されてくる筒状部12に対して、同様の加工が繰り返して行われる。
そして、前記のようにスリット14,14を形成する加工位置P10の後にアイドル位置を介して連続する加工位置P11において、スリット14,14が形成された筒状部12をその外径(絞り外径)と略同一径でフランジ状部13から打ち抜いて切り離し、フランジなしの製品(絞り製品)を抜き落とす加工を行う。これによって、両側に所定長さのスリット2,2を有する直円筒状のフランジなし筒状成形品1が得られる。なお、前記筒状部12が抜き落とされた後の残余の金属板材10、すなわち前記フランジ状部13および桟部分10b,10bは、さらに後続の位置でスクラップとして回収処理される。
この抜き落とし加工について、加工位置P11の装置構成とともにさらに具体的に説明する。
図4および図5はフランジなしの製品を抜き落とす加工位置P11の下型32の断面図であり、図4は上型31が上昇した状態の下型32を示し、図5は上型31が降下したプレス成形状態の下型32を示している。
図2、図4および図5に示すように、上型31には、下型32に備える上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48(加工位置P9,P10に共通)上を摺接して送られてくる前記筒状部12が停止する位置に対応して、前記筒状部12の外径と略同一径のダイ穴57を有するダイ58が、上下動可能なバネ付勢式の逆可動ストリッパ59の下面と同一平面になるように設けられている。またダイ穴57の穴壁には、ダイ穴57の中に残る抜き落とし後の前記フランジなし筒状成形品1を側方へ吹き飛ばすための圧縮空気の吐出口60と前記フランジなし筒状成形品1を排出するためのイジェクト孔61が対向して開口形成され、吐出口60は空気通路を介して圧縮空気源(図示せず)に接続され、イジェクト孔61は一端を逆可動ストリッパ59の外側面に開放するイジェクト通路62に連通接続されている。
他方、下型32には、下型32に備える上下動可能なバネ付勢式の可動ストリッパ48上を摺接して送られてくる前記筒状部12が停止する位置の真下に、前記筒状部12の外径と略同一径の外径を有する円柱状のポンチ63が、上型31の降下によるプレス成形作用時に、前記可動ストリッパ48の上面より上向きに突出するように設けられ、ポンチ63の肩部が刃部として形成されている。ポンチ63とダイ58のクリアランスはゼロクリアランスあるいはそれに近い状態としている。また前記ポンチ63の上端には、前記筒状部12の内径と略同一径の最大外径を有する略載頭円錐状のガイド64が同芯状に取り付けられている。
ところで、前記ポンチ63は、固定ではなく揺れ動きながら上下に可動するように設けられている。すなわち前記ポンチ63には、これより径小の丸棒状のガイドピン65が、下端から同一軸芯上で下向きに延出されており、このガイドピン65が、上型31の降下によるプレス成形作用時にポンチ63の下端面を密着させる下型32のポンチプレート66とその下側のバッキングプレート67を貫通して、下型32のポンチホルダ68に形成されたバネ室69の中に入り込み、そのバネ室69に収容されているコイルバネ71の上端にバネ座70を介して当接支持されている。このように、ガイドピン65を介してコイルバネ71によって支えられている前記可動ポンチ63は、加工前には下型32の前記可動ストリッパ48に形成されたポンチ穴72に上半部が嵌合し、ガイド64の上端面が前記可動ストリッパ48の上面と略同一平面となる高さに持ち上げ支持され、この持ち上げ位置と、上型31の降下によるプレス成形作用時にポンチ63の下端面がポンチプレート66の上面に密着する抜き落とし作用位置との間で上下に移動できるように設けられている。
また、前記可動ポンチ63を揺れ動き可能とするために、該ポンチ63を支えるコイルバネ71のバネ力を、比較的弱いバネ力、例えばポンチ63、ガイドピン65およびバネ座70の荷重を受ける程度のバネ力に設定するとともに、ガイドピン65を貫通させるポンチプレート66とバッキングプレート67の穴66aと67aを上下摺動のためのクリアランスに加えて揺動のための隙間を形成する径に形成し、かつポンチプレート66の穴66aをそれより揺動基端側のバッキングプレート67の穴67aより径大に形成している。なお、前記可動ポンチ63は大きく揺れ動かす必要はなく、その揺れ角は数度(例えば2〜3度程度)と僅かでよい。
加工位置P11において、前記のように上型31に備えたダイ58と下型32に備えた可動ポンチ63を用いて抜き落とし加工を行う。すなわち上型31が降下すると、まず、この上型31の逆可動ストリッパ59に先行して、該上型31に備えられるバネ付勢式で可動の先行ピン(図示せず)により、下型32の可動ストリッパ48をポンチプレート66に当接するまで水平姿勢で平行に押し下げられる。この時、前記筒状部12が下がり可動ストリッパ48の上面から上向きに突出する可動ポンチ63のガイド64の外側に嵌合する。上型31がさらに降下し、ダイ穴57の中に前記筒状部12が入り、逆可動ストリッパ59で前記筒状部12の下端に張り出すフランジ状部13を押し下げポンチ63が下がり、このポンチ63の下端がポンチプレート66に密着すると、せん断作用により筒状部12がその外径と略同一径でフランジ状部13から打ち抜かれて切り離される。そして、上型31が上昇して金型が開くことにより、下型32の可動ストリッパ48がバネの付勢力により押し上げられるとともに、可動ポンチ63がコイルバネ71の付勢力により押し上げられ、元の位置(図4の位置)に復帰する。以後、順送されてくる筒状部12に対して、同様の加工が繰り返し行われる。
前記ポンチ63は可動式で揺れ動きながら前記筒状部12の内側にガイド64を嵌入するため、前記筒状部12が、金属板材10の両側縁に残存する桟部分10b,10bによる引きずり現象などにより、若干傾いた状態になっていたとしても、該筒状部12は、ポンチ63に対して同一軸芯上で一直線状になり、ポンチ63の刃部に直角に載せられる。これによって、フランジ状部13の板面に対して前記筒状部12を直角に打ち抜くことができ、斜めカットにより打ち抜かれた製品側にフランジ状部13の一部が残存したり、スクラップ側に前記筒状部12の一部が残存する不良品1Aの発生を防止できる。
そして、ダイ穴57の中に残る抜き落とし後の筒状部12は、上型31が上昇して金型が開くと、ダイ穴の穴壁に開口形成された吐出口60から噴出される圧縮空気により吹き飛ばされて、吐出口60に対向してダイ穴の穴壁に開口形成されたイジェクト孔61からイジェクト通路62を経て上型31の逆可動ストリッパ59の外側に、両側に所定長さのスリット2,2を有する直円筒状のフランジなし筒状成形品1として排出されてシュートを介して製品箱に回収される。
なお、順送プレス成形装置30は、上型31と下型32との間を間欠的に搬送される金属板材10が、1ピッチ分送られて停止している状態において、上型31が降下することにより、上記した各加工位置P1〜P11において、上述した加工を行い、そして上型31が上昇して、金属板材10が1ピッチ分送られる。このような作用の繰り返しにより、両側に所定長さのスリット2,2を有する直円筒状のフランジなし筒状成形品1を連続して得ることができる。
また、前記のように加工位置P11で行った抜き落とし加工は、金属板材10に連続的に設けられる成形部分17、すなわち円形の平らな金属板から所定の径、高さの有天筒状の膨出部19、すなわち所定の形状の絞り製品を成形する上絞り加工を行った後に行うことにより、スリットが形成されていない所定の径、高さの有天筒状のフランジなしプレス成形品を得ることができる。さらに、膨出部19に対して前記のような天穴抜き加工を行った後、あるいは天穴抜き加工の後、前記のようなバーリング加工を行った後に行うことにより、スリットが形成されていない所定の径、高さの円筒状のフランジなしプレス成形品を得ることができる。
本発明の一実施例における一連のプレス成形工程の前半部の各工程位置での加工状態を示す金属板材の平面図(a)と縦断面図(b)である。 同上のプレス成形工程の後半部の各工程位置での加工状態を示す金属板材の平面図(a)と縦断面図(b)である。 スリット形成の加工位置の下型の概略を示す平面図である。 フランジなしの製品を抜き落とす加工位置の上型が上昇した状態の下型の断面図である。 フランジなしの製品を抜き落とす加工位置の上型が降下したプレス成形状態の下型の断面図である。 フランジなし筒状成形品の横断面図である。 フランジなし筒状成形品の外観図である。 従来のフランジなしの製品を抜き落とす加工位置の上型が上昇した状態の下型の断面図である。 従来のフランジなしの製品を抜き落とす加工位置の上型が降下したプレス成形状態の下型の断面図である。 フランジなし筒状成形品の不良品を示す横断面図である。 フランジなし筒状成形品の不良品を示す外観図である。
符号の説明
1 フランジなし筒状成形品(プレス成形品)
1A フランジなし筒状成形品の不良品
2 スリット
10 金属板材
10b 桟部分
12 筒状部
13 フランジ状部
17 成形部分
17a 連結部分
18 ブランク穴
19 膨出部
30 順送プレス成形装置
31 上型
32 下型
57 ダイ穴
58 ダイ
63 ポンチ
64 ガイド
65 ガイドピン
66 ポンチプレート
71 コイルバネ

Claims (4)

  1. 長尺の金属板材をプレス成形の各加工位置に順送し、長さ方向の所要間隔毎に成形品に応じた成形部分を残存させるようにプランク穴を型抜き加工し、前記成形部分の周縁部をフランジ状に残した状態で所定の深さの有天筒状に膨出させる絞り加工を行い、絞り加工後の膨出部を絞り外径と略同一径で打ち抜く抜き落とし加工を、絞り外径と略同一径のダイ穴を有する上型ダイと膨出部の内側に嵌合させる位置決め用のガイドを上端に設けた絞り外径と略同一径の下型ポンチとを用いて行うフランジなしプレス成形品のプレス成形方法において、抜き落とし用の下型ポンチをバネで支えて揺れ動きながら上下に可動するように設け、上型ダイで前記可動ポンチをポンチプレートまで押し下げて密着させ、前記膨出部をダイ穴に押し込むようにして抜き落とすことを特徴とするフランジなしプレス成形品のプレス成形方法。
  2. 前記抜き落とし加工の前に絞り加工後の膨出部に対して天穴抜き加工を行う請求項1に記載のフランジなしプレス成形品のプレス成形方法。
  3. 前記抜き落とし加工の前に絞り加工後の膨出部の筒状部にスリットを形成する加工を行う請求項1に記載のフランジなしプレス成形品のプレス成形方法。
  4. 絞り加工後の膨出部に対して天穴抜き加工を行い、絞り加工後の膨出部の筒状部にスリットを形成する加工を行った後、前記抜き落とし加工を行う請求項1に記載のフランジなしプレス成形品のプレス成形方法。
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