JP2005194927A - 排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム - Google Patents

排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム Download PDF

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Abstract

【課題】 NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化を判定し、この判定を基に、次回のリーン制御運転におけるリーン制御時間を担持貴金属の劣化の進捗状況に見合う時間とすることにより、担持貴金属の劣化によるNOx浄化率の低下を防ぐことができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】 内燃機関Eの排気ガスに対してNOx吸蔵還元型触媒10によるNOx浄化を行う排気ガス浄化システム1において、リッチ制御運転時の下流側NOx濃度Cndown 上流側NOx濃度Cnup の差Cn 、又は、下流側NOx濃度Cndown と、エンジンの運転状態により定められるNOx放出許容値Cnpとの比較により、NOx吸蔵還元型触媒10の担持貴金属の劣化の進捗状況を判定する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、NOx吸蔵還元型触媒を備えて、エンジンの排気ガス中のNOxを浄化する排気ガス浄化システムにおいて、このNOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を判断でき、この担持貴金属の劣化の進捗状況に対応させてリーン制御時間の最適化を図ることができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムに関する。
自動車の内燃機関や据置式の内燃機関等の排気ガスから、PM(パテイキュレート・マター:粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)を除去して排気ガスを浄化するための排気ガス浄化装置について種々の研究や提案がなされており、特に、自動車等の排気ガスを浄化するために、NOxに対してはNOx吸蔵還元型触媒や三元触媒等のNOx浄化触媒が使用されている。
このNOx吸蔵還元型触媒は、図5に示すような構造のモノリスハニカム30M等で形成されており、このモノリスハニカム30Mは、図6に示すように、コージィエライト若しくはステンレスで形成された構造材の担体31に、多数の多角形のセル30Sを形成して構成される。このセル30Sの壁面には図6及び図7に示すように、アルミナ(Al2 3 )やゼオライトで形成された触媒担持層となる多孔質の触媒コート層34が設けられ、この排気ガスと接触する表面積を稼いでいる触媒コート層34の表面に担持貴金属(触媒活性金属)32とNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質:NOx吸蔵剤:NOx吸収剤)33を担持し、これらにより触媒機能を発生させている。
図8及び図9にNOx吸蔵還元型触媒の担持層表面の触媒物質32,33の配置とNOx吸蔵還元メカニズムを示す。このNOx吸蔵還元型触媒は、触媒コート層34に、酸化機能を持つ白金(Pt)等の担持貴金属32とNOx吸蔵機能を持つカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類等の中から幾つかから形成されるNOx吸蔵材33が担持され、排気ガス中の酸素濃度によってNOx吸蔵とNOx放出・浄化の二つの機能を持っている。
そして、図8に示すように、通常のディーゼルエンジン、希薄燃焼ガソリンエンジン等の排気ガス中に酸素(O2 )が含まれる排気ガスの空燃比がリーン空燃比状態の場合には、排気ガス中に含まれる酸素によって、エンジンから排出される一酸化窒素(NO)を担持貴金属32の酸化触媒機能によって二酸化窒素(NO2 )に酸化する。そして、その二酸化窒素をNOx吸蔵機能を持つバリウム等のNOx吸蔵材33に硝酸塩のかたちで吸蔵し、NOxを浄化する。
しかし、このままであるとNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材33は、全て硝酸塩に変化してNOx吸蔵機能を失ってしまう。そこで、エンジンの運転条件を変えたり、排気通路中に燃料噴射をしたりして、排気ガス中に酸素が存在しないで、一酸化炭素(CO)濃度が高く、排気温度も高い排気ガス、即ち、過濃燃焼排気ガスを作り出し触媒に送る。
そして、図9に示すように、排気ガス中に酸素が無く、一酸化炭素濃度が高く、排気ガス温度が上昇したリッチ空燃比状態にすると、NOxを吸蔵した硝酸塩は二酸化窒素を放出し元のバリウム等に戻る。この放出された二酸化窒素を、排気ガス中に酸素が存在しないので、担持貴金属32の酸化機能により、排気ガス中の一酸化炭素,炭化水素(HC),水素(H2 )を還元剤として、水(H2 O),二酸化炭素(CO2 ),窒素(N2 )に還元し浄化する。
しかし、このNOx吸蔵還元型触媒には、NOx吸蔵材に関する硫黄被毒や劣化の問題や担持貴金属に関する劣化の問題がある。
このNOx吸蔵材の硫黄被毒は、NOx吸蔵材がNOxよりも、燃料中の硫黄に起因する排気ガス中に含まれる二酸化硫黄(SO2 )を選択的に吸蔵するために生じ、この硫黄被毒に対しては、燃料中の硫黄量を低減する対策や、硫黄被毒によりNOx浄化に支障が生じるようになった時に、排気ガスを昇温すると共に無酸素状態にして、硫黄脱離(サルファパージ)してNOx吸蔵材のNOx吸蔵能力を回復する等の対策が取られている。
また、NOx吸蔵剤の吸蔵能力の低下を推定するものの一つとして、NOx吸蔵還元型触媒の下流に酸素濃度センサを配設し、リッチ燃焼時における酸素濃度センサの出力値の大きさに基づいてNOx吸蔵能力を推定する推定手段を備えた内燃機関の排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、硫黄被毒以外のNOx吸蔵材の劣化を判定するものとして、リフレッシュが可能なNOx吸蔵材の硫黄被毒以外の、NOx吸収剤に亀裂が生じる等の熱劣化によるリフレッシュが不可能なNOx吸蔵材自体の劣化を、硫黄脱離を実行した後のリーン制御運転における出口側NOx濃度が基準値より大きい場合にNOx吸収剤自身が劣化していると判定する排気ガス浄化用触媒の劣化判定装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらの装置では、NOx吸蔵還元型触媒の劣化の進捗状況を、NOx吸蔵量の変化により判定しているので、NOx吸蔵材の劣化を判定していることになり、担持貴金属の劣化に関しての判定は行われていないという問題がある。
この担持貴金属の劣化は、担持貴金属がSOx被毒や熱劣化によるシンタリング(焼結)のために生じる。この担持貴金属の劣化が生じると担持貴金属の酸化還元機能が低下するため、NOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵能力の再生や脱硫(サルファパージ)に際してのリッチ制御運転によって、NOx吸蔵材から二酸化窒素を放出する場合に、放出された二酸化窒素を十分に還元することができなくなり、NOxの触媒下流側への流出の原因となる。
そして、この担持貴金属の劣化によってもNOxの浄化性能は低下するので、従来技術におけるNOx吸蔵材の劣化の判定だけでは、正確にNOx吸蔵還元型触媒としての劣化を判定することができず、触媒劣化に対して適切な対応ができないため、全体としてのNOx浄化性能が低下してしまうという問題がある。
一方、本発明者らは、実験などにより、この担持貴金属の劣化に関して次のような知見を得た。
図4に模式的に示すように、NOx吸蔵還元型触媒においては、リーン制御運転からリッチ制御運転に切り替えた時に、排気ガスの空燃比状態がリッチ状態に切り替わったと同時に、下流側NOx濃度は急激に増加する。これは、リッチ条件下でNOx吸蔵材から放出されるNOxが担持貴金属によって還元され浄化されるが、放出されたNOxの一部がN2 に還元されずに触媒下流側に流出(NOxスリップ)するためである。
そして、この触媒下流に流出するNOx量は、担持貴金属の劣化による還元能力の低下によって増加するため、このリッチ制御運転時の所定の時間tm におけるNOx濃度を測定することにより、担持貴金属の劣化状態を判定できることになる。しかし、この触媒下流に流出するNOx量は、単に担持貴金属の劣化だけに依存せず、排気ガス中の酸素濃度、触媒温度、前回(前サイクル)のリーン制御時間によっても影響を受ける。
特開2000−34946号公報 特開2000−230417号公報 (第3頁、第8頁)
本発明の目的は、上記の知見を得て、リーン制御運転からリッチ制御運転に切り替わった初期における最大NOxスリップ量をモニターすることにより、担持貴金属の劣化の進捗状況を判定し、この判定を基に、次回のリーン制御運転におけるリーン制御時間を担持貴金属の劣化の進捗状況に見合う時間とすることにより、担持貴金属の劣化によるNOx浄化率の低下を防ぐことができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
より詳細には、本発明は、NOx吸蔵還元型触媒において、NOxを吸蔵するためのNOx吸蔵材と、NOx吸蔵材から放出されるNOxを還元浄化するための担持貴金属とが、異なる劣化を起こすことに鑑み、NOx吸蔵材の硫黄被毒劣化や熱劣化や経時変化等ではなく、担持貴金属の劣化具合を判定することにより、例えNOx吸蔵材が劣化していなくても、担持貴金属の劣化に応じて、NOxを吸蔵する時間であるリーン制御時間を補正して、リーン制御時間内に吸蔵するNOx吸蔵量、即ち、リッチ状態におけるNOx放出量を担持貴金属の還元能力に合わせることにより、触媒下流側へのNOxの放出を防止することができる排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
上記の目的を達成するための排気ガス浄化方法は、エンジンの排気ガス中のNOxを浄化する排気ガス浄化システムであって、流入する排気ガスの空燃比状態が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、リッチ状態の場合にNOxを放出及び還元するNOx吸蔵還元型触媒を備えると共に、該NOx吸蔵還元型触媒の上流側NOx濃度と下流側NOx濃度、又は、下流側NOx濃度を検出するNOx濃度検出手段を備え、リーン制御運転とリッチ制御運転を繰り返す排気ガス浄化システムにおいて、前記リッチ制御運転時における、前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、エンジンの運転状態により定められるNOx放出許容値との比較により、前記NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を判定することを特徴とする方法である。
この排気ガス浄化方法によれば、測定NOx濃度等とNOx放出許容値との比較により担持貴金属が劣化しているか否かの判定を行えるだけでなく、測定NOx濃度等とNOx放出許容値との差により、NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況も精度よく判定することができる。また、下流側NOx濃度と上流側NOx濃度の差を使用した場合は、下流側NOx濃度を使用する場合よりも、精度が高くなる。
そして、上記の排気ガス浄化方法において、前記判定した担持貴金属の劣化の進捗状況に対応させて、次回のリーン制御時間を短くすることにより、担持貴金属の還元能力に対応させたリーン制御運転時のNOx吸蔵量、即ち、リッチ制御運転時のNOx放出量にすることができるので、特にリッチ制御運転時のNOx浄化率の低下を防止できる。
また、上記の排気ガス状方法において、前記NOx放出許容値を、少なくとも、直前のリーン制御時間、リッチ制御運転時の前記NOx吸蔵還元型触媒の触媒温度、及び、リッチ制御運転時の前記NOx吸蔵還元型触媒の上流側酸素濃度により定めることにより、より精度よくNOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化を判定することができる。なお、この触媒温度は、直接計測してもよいが、NOx吸蔵還元型触媒の上流側(入口側)排気ガス温度や上流側排気ガス温度と下流側(出口側)排気ガス温度から推定してもよい。
そして、上記の排気ガス浄化方法において、前記NOx放出許容値を、前記直前のリーン制御時間が長い程大きく、前記触媒温度が高い程低く、前記上流側酸素濃度が高い程大きくなるように定めることにより、より精度よくNOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化を判定することができる。
更に、上記の排気ガス浄化方法において、リッチ制御運転時の前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、前記NOx放出許容値との差が大きい程、次回のリーン制御時間を短くするすることにより、より良好にNOx浄化率の低下を防止できる。
そして、上記の目的を達成するための排気ガス浄化システムは、エンジンの排気ガス中のNOxを浄化する排気ガス浄化システムであって、流入する排気ガスの空燃比状態が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、リッチ状態の場合にNOxを放出及び還元するNOx吸蔵還元型触媒を備えると共に、該NOx吸蔵還元型触媒の上流側NOx濃度と下流側NOx濃度、又は、下流側NOx濃度を検出するNOx濃度検出手段と触媒劣化判定手段を有し、リーン制御運転とリッチ制御運転を繰り返す制御手段を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記触媒劣化判定手段が、リッチ制御運転時の前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、エンジンの運転状態により定められるNOx放出許容値との比較により、前記NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を判定するように構成される。この構成によれば、NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化を精度よく判定することができる。
また、上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記判定した担持貴金属の劣化の進捗状況に対応させて、次回のリーン制御時間を短くすることにより、NOx浄化率の低下を防止できる。
本発明の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を精度よく判定することができ、更に、この担持貴金属の劣化の進捗状況に基づいて低下したNOx還元能力を考慮して、このNOx還元能力の低下に応じたNOx吸蔵量になるように次回のリーン制御時間を設定するので、次回のリッチ制御運転時におけるNOx放出量を劣化した担持貴金属のNOx還元能力に合わせることができ、NOx吸蔵還元型触媒の下流側へのNOx流出を防止できる。従って、NOx浄化率の低下を防ぐことができる。
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、担持貴金属の劣化を問題にしているため、以下の実施の形態では、NOx吸蔵材の劣化については説明から省略しているが、実際の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵材の劣化の判定や劣化対策が併用される。
図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、NOx吸蔵還元型触媒10を備えて構成され、このNOx吸蔵還元型触媒10の上流側即ち入口側には、上流側(入口側)酸素濃度センサ11、上流側(入口側)NOx濃度センサ12、上流側(入口側)排気ガス温度センサ13が設けられ、下流側即ち出口側には、上流側(出口側)排気ガス温度センサ14、上流側(出口側)NOx濃度センサ15が設けられる。そして、このエンジン(内燃機関)Eは、コモンレール電子制御噴射装置付きエンジンで構成される。
そして、NOx吸蔵還元型触媒10は、図4〜図7に示すようなモノリス触媒30Mで形成され、アルミナ(Al2 3 )等の多孔質の触媒コート層34に、NOxに対して酸化機能を持つ白金(Pt)等の担持貴金属(触媒金属)32と、ナトリウム(Na),カリウム(K),セシウム(Cs)等のアルカリ金属、カルシウム(Ca),バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、イットリウム(Y),ランタン(La)等の希土類等の中の一つ又は幾つかの組合せからなるNOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵材33が担持させて構成される。
このNOx吸蔵還元型触媒10では、ディーゼルエンジンや希薄燃焼ガソリンエンジン等の通常の運転状態のように、排気ガス中の酸素濃度が高い排気ガス条件(リーン空燃比状態)のリーン制御運転では、図8に示すように、排出される一酸化窒素(NO)が触媒金属の酸化機能により、排気ガス中に含まれる酸素(O2 )で酸化されて二酸化窒素(NO2 )となり、このNO2 は、NOx吸蔵材33で塩化物のかたちで吸蔵されるので、排気ガスは浄化される。
しかし、このNOxの吸蔵が継続すると、バリウム等のNOx吸蔵材33は、硝酸塩に変化し、次第に飽和してNO2 を吸蔵する機能を失ってしまう。そのため、排気ガスの空燃比がリーン状態の時に吸蔵したNOxを、NOx吸蔵能力が飽和に達する前に、放出させる必要があり、エンジンの運転条件を変えて過濃燃焼を行うリッチ制御運転を実施して、低酸素濃度、高一酸化炭素濃度で排気温度の高い排気ガス(リッチスパイクガス)を発生させてNOx吸蔵還元型触媒10に供給する。
この排気ガスのリッチ空燃比状態では、図9に示すように、NO2 を吸蔵し硝酸塩に変化したNOx吸蔵材33は、吸蔵していたNO2 を放出し、元のバリウム等に戻る。この放出されたNO2 は、排気ガス中にO2 が存在しないので、排気ガス中の一酸化炭素(CO),炭化水素(HC),水素(H2 )を還元剤として担持貴金属32上で還元され、窒素(N2 )及び水(H2 O),二酸化炭素(CO2 )に変換され浄化される。
また、センサ11,12,13,14,15の出力値は、エンジンEの運転の全般的な制御を行うと共にNOx吸蔵還元型触媒10のNOx浄化能力の回復を図る再生制御、脱硫(サルファパージ)制御等を行う制御装置(ECU:エンジンコントロールユニット)50に入力され、この制御装置50から出力される制御信号により、エンジンEの燃料噴射用のコモンレール電子制御燃料噴射装置や絞り弁やEGR弁等が制御される。
そして、排気ガス浄化システム1の制御装置が、エンジンEの制御装置50に組み込まれ、エンジンEの運転制御と共に、排気ガス浄化システム1の制御を行う。この排気ガス浄化システム1の制御装置は、図2に示すような、排気ガス成分検出手段C10、NOx吸蔵還元型触媒の制御手段C20等を有する排気ガス浄化システムの制御手段C1を備えて構成される。
この排気ガス成分検出手段C10は、排気ガス中の酸素濃度(又は空気過剰率λ)検出手段やNOx濃度を検出するNOx濃度検出手段を含んだ手段であり、上流側酸素濃度センサ11、上流側NOx濃度センサ12、下流側NOx濃度センサ15等により構成される。
NOx吸蔵還元型触媒の制御手段C20は、NOx吸蔵還元型触媒10の再生や脱硫等の制御を行う手段であり、再生開始判断手段C21、再生制御手段C22、脱硫開始判断手段C23、脱硫制御手段C24、脱硫終了判断手段C25等を有して構成されるが、本発明では、更に、担持貴金属劣化判定手段C26、リーン制御時間設定手段C27を備えて構成される。
このNOx吸蔵還元型触媒10の制御手段C20では、再生開始判断手段C21により、排気ガス成分検出手段C10で検出したNOx濃度からNOx浄化率を算出し、このNOx浄化率が所定の判定値より低くなった場合にNOx吸蔵還元型触媒10の再生を開始すると判断する。そして、再生開始と判断された場合には、再生制御手段C22により、エンジンEの燃料噴射制御におけるポスト噴射やEGR制御や吸気絞り制御等により、排気ガスの状態を所定のリッチ空燃比状態及び所定の温度範囲(触媒にもよるが、概ね200℃〜600℃)にして、NOx浄化能力即ちNOx吸蔵能力を回復するためのリッチ制御運転をNOx触媒の再生を所定の時間又はNOx触媒が回復したと判断されるまで行う。
また、脱硫開始判断手段C23、脱硫制御手段C24、脱硫終了判断手段C25により脱硫を行う。この脱硫は、脱硫開始判断手段C23により、燃料消費量と燃料中に含まれる硫黄量(市場実勢値サルファ濃度等)を基にエンジン排出硫黄量を算出し、これを積算した積算硫黄吸着量と、脱硫開始判定用の判定値を比較して、積算硫黄吸着量が脱硫開始判定用の判定値を超えた場合に、脱硫開始であると判断する。
そして、脱硫開始であると判断された場合には、脱硫制御手段C24により、リッチ制御運転を行う。この脱硫におけるリッチ制御運転は、エンジンの燃料噴射でパイロット噴射やポスト噴射を含む多段噴射を行ったり、EGR制御や吸気制御をして、上流側温度センサ13や下流側温度センサ14で検出した温度等をモニターしながら、多段噴射の燃料量を調整し、NOx吸蔵還元型触媒10に流入する排気ガスの温度が脱硫可能な温度(約600℃〜650℃)以上になるようにフィードバック制御をおこなう。この排気昇温により、NOx吸蔵還元型触媒10の温度上昇を図る。なお、多段噴射で排気通路に供給された排気ガス中のHC(炭化水素)等が触媒の酸化作用により燃焼するので、この酸化活性反応熱により更に触媒の昇温が促進される。
また、上流側酸素濃度センサ11で検出した酸素濃度Coup (又は空気過剰率λ)をモニターして、リッチ空燃比、好ましくはストイキ空燃比(理論空燃比)となるような所定の酸素濃度(又は空気過剰率)になるように、多段噴射制御、EGR制御、吸気制御等をフィードバック制御する。これにより、低酸素、高温状態で、効率よく硫黄の脱離を行う。
そして、脱硫終了判断手段C25により、この脱硫用のリッチ制御運転における脱硫量を算出し、これを積算した積算脱硫量が積算硫黄吸着量を越えた場合に、脱硫が終了したとして脱硫制御を終了する。
そして、本発明においては、以下に述べるように、担持貴金属劣化判定手段C26により、NOx吸蔵材の硫黄被毒劣化や熱劣化や経時変化等ではなく、担持貴金属の劣化具合を判定し、更に、リーン制御時間設定手段C27により、担持貴金属の劣化に応じて、NOxを吸蔵する時間であるリーン制御時間を補正して、リッチ制御運転におけるNOx放出量を担持貴金属の還元能力に合わせる。
これらの排気ガス浄化システム1において、本発明に係わる排気ガス浄化方法は、図3に例示するようなリーン制御時間設定用フローを有して行われる。この図3のリーン制御時間設定用フローは、担持貴金属劣化判定手段C26により担持貴金属の劣化具合即ち劣化の進捗状況を判定し、リーン制御時間設定手段C27により次回のリーン制御運転のリーン制御時間tleanを設定するためのフローである。
この制御フローは、通常のリーン状態の運転を行うリーン制御フロー、NOx吸蔵能力の再生を行う再生制御フロー、NOx吸蔵還元型触媒10の脱硫を行う脱硫制御フロー等と共に、排気ガス浄化システム1全体の制御フローから繰り返し呼ばれて、担持貴金属の劣化の進捗状況を判定してリーン制御時間tleanを設定する。その結果、次回のリーン制御運転で、この設定されたリーン制御時間tleanの間、NOx吸蔵材でNOxを吸蔵して排気ガスを浄化することになる。
この図3の制御フローがスタートすると、ステップS11で、前回のリーン制御時間tleanを入力し、次のステップS12で、再生制御運転や脱硫運転等のリッチ制御運転における酸素濃度、NOx濃度、触媒温度の計測及び算出を行う。
この計測及び算出では、上流側排気ガス温度センサ13で計測した上流側排気ガス温度Tgup と下流側排気ガス温度センサ14 で計測した上流側排気ガス温度Tgdown とから触媒温度Tc を算出し、上流側酸素濃度センサ11で上流側酸素濃度Coup を、上流側NOx濃度センサ12で上流側NOx濃度Cnup を、下流側NOx濃度センサ15で下流側NOx濃度Cndown をそれぞれ測定する。更に、この下流側NOx濃度Cndown から上流側NOx濃度Cnup を引き算してNOx濃度差Cn を算出し、その最大値である最大NOx濃度差Cnmaxを求める。
なお、この最大NOx濃度差Cnmaxは、リッチ制御運転開始後の所定の時間tm の間に発生するので、この所定の時間tm の間だけ、計測及び算出を行っても演算量を減少したり、制御を単純化してもよい。また、触媒温度Tc は計測可能であれば直接触媒温度を測定してもよく、多少精度は落ちるが上流側排気ガス温度Tgup だけで推定してもよい。
このNOx濃度差Cn (=Cndown −Cnup ) はリッチ制御によって放出されたNOxが担持貴金属で還元されずに、どれだけ放出されたかを示す指標であり、大きい程還元量は小さくなり、小さくなる程還元量は大きくなる。従って、その最大NOx濃度差Cnmaxは、NOx吸蔵還元型触媒10で還元されずに放出されたNOx量が最大の時の放出量を示す。
つまり、図4に示すように、リーン制御運転からリッチ制御運転に切り替えた時の所定の時間tm 内の最大NOx濃度差Cnmaxにより、NOx吸蔵材から放出され、かつ、担持貴金属で還元されなかったNOx量を推定できる。そして、この流出NOx量の最大値に関係する最大NOx濃度差Cnmaxにより、担持貴金属の劣化状態を判定する。
また、多少精度は落ちるが、リッチ制御運転時の上流側NOx濃度Cnup はリッチ制御運転の条件から推定できるので、推定して求めた上流側NOx濃度Cnup'を測定値の代りに用いてもよい。更には、精度は落ちるが、リッチ制御運転時の条件を考慮して、下記のNOx放出許容値Cnpを算出するとして、この最大NOx濃度差Cnmaxの代りに、下流側NOx濃度Cndown を用いることもできる。この場合には、上流側NOx濃度センサ12の測定値を使用しないので、この劣化判定においては上流側NOx濃度センサ12が不要となり、また、制御も単純化される。
そして、ステップS13において、前回のリーン制御時間tleanと触媒温度Tc と上流側酸素濃度Coup とから、事前実験により設定され予め入力されたマップデータCnmapに基づいて、NOx放出許容値Cnpを算出する。これにより、最大NOx濃度差Cnmaxに影響を及ぼす排気ガス中の前回のリーン制御時間tlean、触媒温度Tc 、酸素濃度Coup を考慮に入れることができる。
次に、ステップS14で、担持貴金属の劣化のチェックを行う。この担持貴金属の劣化のチェックは、測定値から算出された最大NOx濃度差Cnmaxが、NOx放出許容値Cnp以下の時(YES)は、担持貴金属の劣化が進んでいないと判定し、次回のリーン制御時間tleanを前回のリーン制御時間tleanとしたままリターンする。
また、最大NOx濃度差CnmaxがNOx放出許容値Cnpより大きい時(NO)には劣化が進んでいると判定し、ステップS15の触媒の劣化の表示で、触媒が劣化していることを表示し、ステップS16,S17で次回のリーン制御時間tleanを変更して設定し直す。
この次回のリーン制御時間tleanの設定は、ステップS16で最大NOx濃度差CnmaxからNOx放出許容値Cnpを引き算して算出したNOx濃度の偏差ΔCn により劣化の進捗状況(劣化の度合い)を推定する。そして、この担持貴金属の劣化の進捗状況の指標となるNOx濃度の偏差ΔCn を基に、ステップS17で、予め入力した補正係数RのマップデータRmap に基づいて補正係数Rを算出し、この補正係数Rを基準のリーン制御時間tlean0 に乗じて、次回のリーン制御時間tleanを設定し、その後リターンする。
上記のリーン制御時間設定用の制御フローによれば、担持貴金属の劣化の進捗状況を、実際に計測したNOx濃度Cnup ,Cndown と予め入力したマップデータCnmapとから推定し、担持貴金属の劣化の度合いΔCn に応じて、予め入力したマップデータRmap を基に、次回のリーン制御時間tleanを設定することができる。
なお、このリーン制御時間設定用の制御フローは、再生制御フローや脱硫制御フローにおけるリッチ制御運転と並行して実施されるのが好ましいが、再生制御フローや脱硫制御フローの直後に、即ち、リーン制御運転の前若しくは開始直後に実施してもよい。但し、この場合は、図3のステップS12におけるリッチ制御運転における計測値をこれらのリッチ制御フローの中で行って記憶しておき、このリーン制御時間設定用の制御フローの実行時に、ステップS12で読み出すように構成する。
上記の構成の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム1によれば、NOx吸蔵材の硫黄被毒劣化や熱劣化や経時変化等ではなく、担持貴金属の劣化の進捗状況を判定することができる。
そして、例えNOx吸蔵材が劣化していなくても、担持貴金属の劣化に応じて、NOxを吸蔵する時間であるリーン制御時間を補正して、リッチ状態におけるNOx放出量を劣化した担持貴金属の還元能力に合わせることができるので、NOx吸蔵還元型触媒の下流側(出口側)へのNOxの流出を減少することができる。
なお、上記の構成では、NOx吸蔵還元型触媒10単独の排気ガス浄化システム1として説明したが、NOx吸蔵還元型触媒とディーゼルエンジンの粒子状物質(PM)を捕集するDPFとを組み合わせた排気ガス浄化システムであっても、また、NOx吸蔵還元型触媒と三元触媒等を組み合わせた排気ガス浄化システムであっても、本発明は適用可能である。要するに、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムであれば、本発明を適用できる。
本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの制御手段の構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態のリーン制御時間設定用の制御フローを例示する図である。 リッチ制御時のNOx濃度及び空気過剰率の時系列を示す図である。 モノリスハニカムを示す図である。 モノリスハニカムの部分拡大図である。 モノリスハニカムのセルの壁の部分の拡大図である。 NOx吸蔵還元型触媒の構成とリーン制御の時の状態の浄化のメカニズムを模式的に示す図である。 NOx吸蔵還元型触媒の構成とリッチ制御の時の状態の浄化のメカニズムを模式的に示す図である。
符号の説明
E エンジン
1 排気ガス浄化システム
10 NOx吸蔵還元型触媒
11 上流側酸素濃度センサ
12 上流側NOx濃度センサ
13 上流側排気ガス温度センサ
14 下流側NOx濃度センサ
15 下流側排気ガス温度センサ
50 制御装置(ECU)

Claims (7)

  1. エンジンの排気ガス中のNOxを浄化する排気ガス浄化システムであって、流入する排気ガスの空燃比状態が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、リッチ状態の場合にNOxを放出及び還元するNOx吸蔵還元型触媒を備えると共に、該NOx吸蔵還元型触媒の上流側NOx濃度と下流側NOx濃度、又は、下流側NOx濃度を検出するNOx濃度検出手段を備え、リーン制御運転とリッチ制御運転を繰り返す排気ガス浄化システムにおいて、
    前記リッチ制御運転時における、前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、エンジンの運転状態により定められるNOx放出許容値との比較により、前記NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を判定することを特徴とする排気ガス浄化方法。
  2. 前記判定した担持貴金属の劣化の進捗状況に対応させて、次回のリーン制御時間を短くすることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化方法。
  3. 前記NOx放出許容値を、少なくとも、直前のリーン制御時間、リッチ制御運転時の前記NOx吸蔵還元型触媒の触媒温度、及び、リッチ制御運転時の前記NOx吸蔵還元型触媒の上流側酸素濃度により定めることを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化方法。
  4. 前記NOx放出許容値を、前記直前のリーン制御時間が長い程大きく、前記触媒温度が高い程低く、前記上流側酸素濃度が高い程大きくなるように定めることを特徴とする請求項3記載の排気ガス浄化方法。
  5. リッチ制御運転時の前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、前記NOx放出許容値との差が大きい程、次回のリーン制御時間を短くすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化方法。
  6. エンジンの排気ガス中のNOxを浄化する排気ガス浄化システムであって、流入する排気ガスの空燃比状態が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、リッチ状態の場合にNOxを放出及び還元するNOx吸蔵還元型触媒を備えると共に、該NOx吸蔵還元型触媒の上流側NOx濃度と下流側NOx濃度、又は、下流側NOx濃度を検出するNOx濃度検出手段と触媒劣化判定手段を有し、リーン制御運転とリッチ制御運転を繰り返す制御手段を備えた排気ガス浄化システムにおいて、
    前記触媒劣化判定手段が、リッチ制御運転時の前記下流側NOx濃度と前記上流側NOx濃度の差又は前記下流側NOx濃度と、エンジンの運転状態により定められるNOx放出許容値との比較により、前記NOx吸蔵還元型触媒の担持貴金属の劣化の進捗状況を判定することを特徴とする排気ガス浄化システム。
  7. 前記判定した担持貴金属の劣化の進捗状況に対応させて、次回のリーン制御時間を短くすることを特徴とする請求項6記載の排気ガス浄化システム。
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