JP2005187878A - 電着塗装用接合品およびその製造法と自動車車体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 合わせ部の電着塗装の付き回り性が極めて良好で、例えば自動車車体等の高水準の防錆性能が要求される製品の防錆性を、いっそう向上させることができる電着塗装用接合品およびその製造方法、この電着塗装用接合品を用いた自動車車体を提供する
【解決手段】 少なくとも2枚の接合用素材12、13を重ね合わせて接合を行われることにより得られる電着塗装用接合品を製造する。2枚の接合用素材の少なくとも一の接合用素材12にエンボス加工を行って突起部2aを形成した後に、エンボス加工により形成されたこの突起部2aを押圧するプレス加工を行うことにより圧痕2a−1を形成し、この圧痕2a−1を介して2枚の接合用素材12、13を重ね合わせ、この圧痕2a−1により所定の隙間が確保された領域で接合を行う。
【選択図】 図7

Description

本発明は、電着塗装用接合品およびその製造法と自動車車体に関するものであり、特に自動車の車体の防錆に不可欠である電着塗装にとって好ましい電着塗装用接合品およびその製造法と自動車車体に関するものである。
自動車の車体は、一般的に、素材である鋼板に以下に列記する手順(a) 〜(d) を施して、組み立てられる。
(a)例えばプレス成形を行われて所定の形状に成形される。
(b)成形された後にその外縁部を接合相手材と適宜重ね合わされ、その状態で固定される。
(c)接合相手材との重ね合わせ部を接合部として、接着、ろう付け、スポット溶接やシーム溶接のような抵抗溶接、TIG 溶接、MIG 溶接さらにはプラズマアーク溶接等を行われることにより、接合相手材に接合される。また接着剤等を使用した接合あるいは、接着剤とスポット溶接を併用した接合(ウェルドボンド)も使用される。特に自動車車体の場合には、周知のように、溶接手段としてスポット溶接が多用される。
(d)組み立てられた車体は、アルカリ脱脂を行われて油分が取り除かれ、フルディップ型あるいはスプレータイプのリン酸亜鉛処理により塗装下地が形成された後、電着法により車体表面あるいは端面に塗装が施される。その後に数層(通常は中塗および上塗りの2層)の塗装処理が行われ、塗装された自動車車体が完成する。
上記工程の中で(d)の塗装下地処理および塗装工程は、自動車の車体の美観を保つためというだけではなく、自動車車体の防錆性を決定するために極めて重要な工程である。特に電着塗装は、塗料中に車体を全没させ被塗物(この場合は自動車車体)を陰極として通電することにより行われるため、カチオン型樹脂の電気泳動により顔料を含む電着塗膜を車体に形成するもので形状が複雑な被塗物、鋼板の端面あるいは袋構造部などにも均一に塗膜を施すことが可能なため、現在の自動車車体用の防錆塗装として広く採用されている。
しかしながら、この電着塗装には以下に列記する問題がある。
自動車の車体構造は前述のように鋼板の成形品のフランジ部を重ね合わせ、溶接などにより接合することによって組み立てられるため、鋼板同士の重ね合わせ部(以下単に「合わせ部」ともいう)が必然的に多数存在する。鋼板同士のこの合わせ部の間には電着塗料自体が入り込み難く、必然的に電着塗装が施されずに裸鋼板のままとなるため、自動車車体として要求される防錆性を確保するためにワックスやアドヒーシブシーラー等の他の防錆材料を用いる補修作業を行わざるを得ない。このため、生産性の低下や、補修作業のばらつきに起因した防錆性能の低下、さらには生産コストの上昇等は避けられない。
電着塗装が有するこの課題に対して、例えば特許文献1には電着塗装時に発泡するシール材を合わせ部に挿入する発明が、特許文献2〜5には電着塗装時の通電方法を管理することにより付き回り性を改善する発明が、それぞれ開示されている。
また、特許文献6、7には、レーザー溶接性の改善を目的として、予め亜鉛めっき鋼板の表面に突起部を一回の加工により形成しておき、特に特許文献6には数百ミクロンの突起高さの突起部を形成しておき、この突起部により重ね合わされた2枚の鋼板の間に適正な寸法の隙間を確保しながらレーザ溶接を行う発明が開示されている。
特開昭60−29479号公報 特開平1−108397号公報 特開平1−172597号公報 特開平5−70998号公報 特開2003−82498号公報 特開平10−216974号公報 特許第2571976号公報
しかしながら、特許文献1〜5により開示された方法によっても、合わせ部の付き回り性の改善には限界があり、防錆性の飛躍的な向上は望めない。
また、一回のプレス成形によって特許文献6、7により開示されたような微小な突起部を形成することは、プレス金型面の機械加工作業や手仕上げ作業を精緻に行う必要が生じ、多大な加工コストを要する。また、生産時には摩耗や欠損の問題によりこれらの金型の維持は困難である。
このように、これまでに提案されている、合わせ部への電着塗料の付き回り性を向上させる発明によっても、合わせ部の電着塗料の付き回り性を良好に改善することは期待できないことから、合わせ部の防錆性を確保するためにワックス等の他の防錆材料の使用に頼っているのが現状である。
つまり、自動車車体の現状のカチオン電着塗装工程では、通電の条件等での製造条件を変更する程度のことでは、合わせ部の電着塗料の付き回り性を飛躍的に改善することは殆ど不可能であり、他の防錆材料の省略あるいは大幅な低減を行いながら、防錆性を飛躍的に改善・向上することは、技術的に不可能であった。
本発明の目的は、合わせ部の電着塗装の付き回り性が極めて良好で、例えば自動車車体等の高水準の防錆性能が要求される製品の防錆性を、いっそう向上させることができる電着塗装用接合品およびその製造方法と、この電着塗装用接合品を用いた自動車車体とを提供することである。
本発明者らは、合わせ部の電着塗装の付き回りを改善するためには、合わせ部における隙間を確実に確保することが重要であるとの視点にたって、適正な隙間を確実に確保するための微小な突起を形成する手段について、実用性および工業性の観点から鋭意検討を重ねた結果、以下に示す知見を得た。
合わせ部における電着塗装の付き回り性を改善することができ、かつ工程上も確実に所望の微少な突起を付与する工程として、接合用素材に突起部を形成するエンボス加工と、このエンボス加工により形成された突起部を押圧するプレス加工とを行うことによって、所望の微少な高さを有する突起である圧痕を極めて安定して形成することができる。このような圧痕を有する接合素材と他の接合素材とを、この圧痕を介して重ね合わせて接合を行われた接合品は、この圧痕の周囲に形成される合わせ部の隙間が極めて安定して確保されることから、合わせ部の電着塗装の付き回り性が、飛躍的に改善される。
このように、本発明は、鋼板の合わせ部に形成した上記の圧痕を利用して電着塗装の付き回り性を改善することにより防錆性を飛躍的に改善するものであり、「エンボス加工により安定して成形することが容易な大きさの突起部を形成した後に、プレス加工によりこの突起部を押圧して所望の高さの圧痕を形成し、この圧痕を合わせ部の隙間の確保に利用することにより、電着塗装の付き回り性が改善されて防錆性が顕著に向上した接合品を工業的規模で安定して確実に提供できる」という、独創的な技術思想に基づいてなされたものである。
本発明は、少なくとも2枚の接合用素材を重ね合わせて接合を行うことにより得られる電着塗装用接合品であって、2枚の接合用素材のうちの少なくとも一方が、突起部を押圧して形成される圧痕を有して他方との間に所定の距離の隙間を確保する領域を備え、この接合がこの該領域で行われることを特徴とする電着塗装用接合品である。
本発明にかかる電着塗装用接合品では、圧痕が、凸部とこの凸部の内側に形成される凹部とから構成される形状、又は凸部から構成される形状を有することが望ましい。
また、これらの本発明にかかる電着塗装用接合品では、この領域における隙間の最大値が0.3mm以上1.0mm以下であることが望ましい。
また、これらの本発明にかかる電着塗装用接合品では、圧痕が、重ね合わせの端面からこの端面に対して直角な方向への距離が30mm以下である範囲に設けられていることが望ましい。
別の観点からは、本発明は、これらの本発明にかかる電着塗装用接合品を備えることを特徴とする自動車車体である。
さらに別の観点からは、本発明は、少なくとも2枚の接合用素材を重ね合わせて接合を行われることにより得られる電着塗装用接合品の製造方法であって、2枚の接合用素材の少なくとも一の接合用素材にエンボス加工を行って突起部を形成した後に、エンボス加工により形成されたこの突起部を押圧するプレス加工を行うことにより圧痕を形成し、この圧痕を介して2枚の接合用素材を重ね合わせ、この圧痕により所定の隙間が確保された領域で接合を行うことを特徴とする電着塗装用接合品の製造方法である。
この本発明にかかる電着塗装用接合品の製造方法では、接合がスポット溶接であることが例示される。
本発明により、合わせ部の電着塗装の付き回り性が極めて良好で、例えば自動車車体等の高水準の防錆性能が要求される製品の防錆性を、飛躍的に向上させることができる電着塗装用接合品およびその製造方法と、この電着塗装用接合品を用いた自動車車体とを提供することができる。
これにより、通常はワックス等の他の防錆材料による補修作業を行って防錆性を確保していた鋼板の合わせ部についても、電着塗装を行った後にかかる補修作業を省略するか、あるいは最小限の補修作業を行うだけで、耐食性を充分に確保することができる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明では、2枚の接合用素材の少なくとも一の接合用素材に圧痕を形成し、この圧痕を介して2枚の接合用素材を重ね合わせ、圧痕によって所定の隙間が確保された領域で接合を行う。この圧痕は、少なくとも一の接合用素材にエンボス加工をおこなって突起部を形成した後にこの突起部を押圧するプレス加工を行うことによって、形成される。
接合用素材としては、炭素鋼やステンレス等の鋼板、アルミニウム合金板、あるいはチタン合金板等の金属板を用いることができる。特に、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板あるいは表面処理鋼板等の鋼板が好適である。例えば、鋼板強度で270MPaクラスの一般用軟鋼、深絞り用軟鋼、340MPa以上で一般的にハイテンと称される高強度鋼板では塗装焼付硬化型鋼板、固溶強化された汎用型鋼板、深絞り型鋼板、高降伏比型鋼板、低降伏比型鋼板、高穴広げ鋼板、残留オーステナイト組織を含み高延性を有する複合組織鋼板等に適用することができる。また、初期の鋼板強度は低いが、高温状態から水冷された金型内でプレス成形した後に冷却時に焼き入れを行うことによって高強度を発現させる熱間プレス用鋼板も適用することができる。亜鉛めっき、すなわち電気亜鉛めっき、亜鉛合金電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、Al含有溶融亜鉛めっき、Mg含有溶融亜鉛めっき、溶融Alめっき、Sn系めっきが施された鋼板も使用可能であり、成形時の摺動性の向上対策としてそれらのめっき皮膜の表面に、リン酸亜鉛皮膜や固形潤滑皮膜さらには無機系酸化物皮膜等が施されたものも同様に適用することができる。さらに、特に自動車用鋼板が好適である。
以下の説明では、接合用素材として鋼板を例にとる。
まず、はじめに圧痕を形成する方法を説明する。
(1) エンボス加工
図1(a) は、本実施の形態において、エンボス加工を行うためのエンボス加工装置1の主要部を抽出して示す説明図である。また、図1(b) は、形成された突起部の拡大図である。
図1(a)および図1(b) に示すように、鋼板2にエンボス加工を行うことによりエンボス加工部である突起部2aを形成する。
図1(a) に示すように、このエンボス加工装置1は、互いに対をなす上金型3及び下金型4を有する。上金型3には、平坦な鋼板2を挟み付けるための挟持面3aが設けられる。また、挟持面3aには、図示するように、陥没部3bが1列に合計2個設けられる。
一方、下金型4にも、鋼板2を挟み付けるための挟持面4aが設けられる。また、挟持面4aには、上金型3に設けられた2個の陥没部3bにそれぞれ向かい合う位置に、型突起部4bが1列に合計2個設けられる。
図2は、本実施の形態における陥没部3b及び型突起部4bを拡大して示す断面図である。
下金型4への型突起部4bの形成は、機械加工等の慣用手段により行えばよい。特に、鋼板2に形成する突起部2aの先端形状が、本実施の形態のような丸形や楕円形のような比較的単純な形状である場合には、先端部が丸形や楕円形などの形状を呈するピンを下金型4の表面に設けたピン挿入穴に差し込むことによって、型突起部4bを形成するようにしてもよい。
図3及び図4は、いずれも、陥没部及び型突起部の他の形状例を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、上金型3に形成する陥没部3b−1は上方へ突き抜けた形状としてもよい。これにより、機械加工の工数が削減される。また、図4に示すように、下金型4を、パンチ部6とホルダ部5とに分割し、ホルダ部5により鋼板2を押さえ付けた状態で、パンチ部6の上端部に形成した型突起部4bで突起部2aを形成するようにしてもよい。これにより、形成される突起部2aの周りに生じ易いひずみを抑制することができる。
なお、以上の説明では、図1〜図4に示すように、下金型4に型突起部4bを設けるとともに上金型3に陥没部3bを設けた形態を例にとった。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、下金型4に陥没部を設けるとともに上金型3に型突起部を設けてもよい。
また、以上の説明では、図1〜図4に示すように、鋼板2が平坦な場合を例にとった。しかし、本発明の適用対象である鋼板2は平坦なものには限定されず、例えば、プレス成形された鋼板のように所定の曲率半径を有する屈曲成形された鋼板2に対しても同様に適用可能である。
また、本実施の形態では、機械加工の利便性を考慮して型突起部4bが円形を呈する場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではない。ただし、型突起部4bは円形を呈することが望ましい。
図5は、挟持面3a、4aが曲率を有している場合のエンボス加工の一例を示す説明図である。
エンボス加工時、特に図5に示すように挟持面3a、4aが曲率を有している場合には、型突起部4bの形状が成形方向 (エンボス加工時の上金型3及び下金型4の移動方向) に対して負角とならないようにすることが望ましい。
図6は、エンボス加工により鋼板2に突起部2aが形成される状況を示す説明図である。
形成する型突起部4bの高さh4b、及び型突起部4bの1個当たりの投影面積S4bは、限定を要するものではない。しかし、型突起部4bの高さh4bが鋼板2の板厚tに対して大き過ぎる場合や、型突起部4bの1個当たりの投影面積S4bが鋼板2の板厚tに対して小さ過ぎる場合には、突起部5aの成形時に鋼板2に割れが発生するおそれがある。このような観点から、型突起部4bの高さh4bは鋼板2の板厚tの10倍以内とすること、又は型突起部4bの面積S4bは板厚の2乗よりも大きくすることが、それぞれ望ましい。一方、型突起部4bの高さh4bが小さ過ぎると、型突起部4bの形状が鋼板2に正確に転写され難くなるため、型突起部4bの高さh4bは板厚の0.5 倍以上とすることが望ましい。
このように、本実施の形態では、上金型3及び下金型4を有するエンボス加工装置1を用いて、鋼板2のスポット溶接予定位置の間の適正位置に、エンボス加工を行って突起部を形成する。
(2) プレス加工 (プレス加工による突起部2aの押圧)
図7は、プレス加工の状況を示す斜視図であり、図8は、プレス加工の際のプレス加工装置20を示す断面図である。
図7及び図8に示すように、プレス加工は、プレス加工装置7を用いて行われ、このプレス加工により、エンボス加工により鋼板2に形成された突起部2aが押圧され、これにより、鋼板2には、2基の圧痕2a-1が形成される。
プレス加工装置7は、平面あるいは曲面を有する上金型8及び下金型9を有するものであり、本実施の形態では、さらに、下金型9の四隅には、上金型8及び下金型9の間に所定の距離を確保するためのスぺーサ10が配置される。
図9及び図10は、いずれも、このスペーサ10と鋼板2との位置関係を模式的に示す説明図である。
スペーサ10の下金型9への設置形態は、特に限定を要さない。スペーサ10は、例えば、図9に示すように鋼板2と重なって接触するように配置してもよいし、あるいは、図10に示すように上金型8及び下金型9の間に挟まれるように設置してもよい。
また、スペーサ10は、下金型9の表面に薄い金属板を貼り合わせることにより構成してもよいし、あるいは、下金型9の表面を機械加工によって削り出すことにより構成してもよい。例えば、下金型9の表面に0.1mm 程度のスペーサ10を1枚又は複数枚以上貼り付けることによって、上金型8及び下金型9の間の隙間、すなわち、圧痕2a-1の高さを、容易に調整できる。
また、スペーサ10は、第2の加工により曲がり部2aが押圧される際にも、必ずしも隣接する突起部4bの間に一つずつ存在する必要はなく、適度な間隔で配置されていればよい。ただし、上金型8の剛性を考慮すると、スペーサ10は、500mm以下のピッチで配置されることが望ましい。
なお、図7〜図10に示すプレス加工装置7は、いずれも、スぺーサ10を備えるものであるが、押圧荷重を制御する場合には、スペーサ10を省略しても、圧痕2a-1の高さを制御することができる。この場合の押圧荷重は、事前に試行試験を行うことにより、求められる。本発明者らの知見によれば、曲がり部2aの押圧ストローク及び荷重の関係より、曲がり部2aを完全に押圧する直前に荷重が急激に上昇することがわかった。すなわち、全押圧の直前では、圧痕2a-1の高さの変化に及ぼす荷重の影響が小さく、全押圧の直前に加重が急激に上昇する。したがって、圧痕2a-1の高さは、押圧荷重を制御することによっても、制御できる。
図11は、プレス加工により形成される圧痕2a-1の形状例を示す説明図である。この圧痕2a-1は、鋼板2にエンボス加工を行って突起部2aを形成した後に突起部2aを高さ方向へ押圧するプレス加工を行うことにより製造されるものである。このため、圧痕2a-1は、図11に示すように、環状に形成される凸部11a と、この凸部11aの内側に形成される凹部11b とを有する。なお、圧痕2a-1の断面形状は鋼板2の板厚あるいはエンボスの高さ、径さらには形状等によって変化し、頂部が三つ以上現れ、その内部に凹部が形成される場合もある。
この圧痕2a-1の高さh11a 、すなわち二つの頂部11a-1 、11a-2 の距離は、スぺーサ10を用いる場合にはスぺーサ10の厚さを適宜変更することによって、スぺーサ10を用いない場合に押圧荷重を変更することにより、変更することができる。これにより、圧痕2a-1の高さh11a を、電着塗装時の適正な隙間が得られるように、調整することができる。
本実施の形態により形成される圧痕2a-1の方向は、鋼板2の板厚、第1の加工で用いる下金型4に設けられる型突起部4bの形状、さらにはプレス加工における押圧量によって変化する。
合わせ部における電着塗料の付き回り性を向上させるための適正な隙間を確保するために、圧痕2a-1の高さh11a は、0.3mm以上1.0mm 以下であることが望ましい。圧痕2a−1の高さが過小であると適正な隙間の確保が困難となり、付き回り性が不良となりやすい。一方、過大であると隙間が過大となり、接合強度の低下が大きくなり、十分な接合強度を確保することが難しい。
圧痕2a−1は、圧痕により所定の隙間が確保される領域で接合が行われるように設けられる。例えば、重ね合わせの両端面にそれぞれほぼ平行に配置した2列の接合部の間に圧痕2a−1を設けることが例示される。あるいは、重ね合わせの端面にほぼ平行に配置した接合部の間に圧痕2a−1を設けることも例示される。この場合、圧痕2a−1に最も近い端面から圧痕2a−1までの距離が30mm以内となるように圧痕2a−1を設けることが望ましい。30mmを超える場合、圧痕2a−1による隙間を付与する効果が小さく、電着塗装の付き回り性の向上が小さい。なお、端面と接合部の間に圧痕2a−1を設けると接合が不安定であるので好ましくない。圧痕2a−1は接合部からの距離が30mm以内の範囲に設けるのがよい。
本実施の形態では、エンボス加工により形成された突起部にプレス加工を行うこと、換言すれば、エンボス加工により形成された突起部2aを押圧するプレス加工を行う。これにより、形成された圧痕2a-1には、二つの頂部11a-1 、11a-2 を有する環状に形成される凸部11と、この凸部11a の内側に板が波打ったような形状の凹部11b とが形成される。
また、圧痕2a−1により確保される隙間の最大値は、0.3mm以上1.0mm 以下であることが望ましい。最大隙間は圧痕2a−1の外周位置からわずかに外側における、合わせた鋼板2同士の間の距離として定義される。なお、この最大隙間は、圧痕2a−1が両側に凸を有する断面形状の場合には圧痕2a−1の高さよりも小さくなる場合もあれば、逆に接合位置が比較的圧痕2a−1に近い場合には圧痕高さよりも大きくなる場合もある。
最大隙間が上記範囲で有れば、電着塗装の付き回り性が向上する。過小では、付き回り性の向上効果が小さく、過大では、接合強度の確保が不十分となることがある。
このように、本実施の形態では、先ず突起部2aが設けられ、次に、この突起部2aを高さ方向に押圧することにより、所定の高さの圧痕2a-1が形成される。したがって、突起部2aの高さを、確実に加工を行うことができる程度に大きくすることが可能となり、微小突起を安定して形成することが難しいという従来の問題を解決することができる。
(3)接合
図12は、接合された状態を説明する概要図である。同図に示すように、接合は、圧痕2a−1が形成された鋼板12を含む少なくとも2枚の鋼板12、13を圧痕2a−1を介して重ね合わせ、圧痕2a−1により所定の隙間が確保された領域でおこなう。
例えば、突起部2aの張り出し方向 (本実施の形態では上方向) へ圧痕2a-1の凸部11aが張り出した場合には、図13に示すように、頂部11a-2 を介して接合相手材である鋼板13を接触させて配置し、接合を行えばよい。
一方、突起部5aの張り出し方向と反対の方向 (本実施の形態では下方向) へ圧痕2a-1の凸部11a が張り出した場合には、図14に示すように、頂部11a-1 を介して接合相手材である鋼板13を接触させて配置し、接合を行えばよい。なお、一般に、鋼板2の板厚が0.7mm 程度であってエンボス径が10mm以上である場合、圧痕2a-1の高さh11a が0.3mm以上1.0mm 以下である場合には、圧痕2a-1は、突起部4bの凸方向とは反対の方向へ向けて形成されることが多い。
接合方法としては、点状の接合あるいは線状の接合が可能である。点状接合としては、接着、ハンダ付け、ろう付け、スポット溶接、またはプロジェクション溶接など、あるいは接着剤とスポット溶接を併用した接合(ウェルドボンド)も可能である。線状接合としては、シーム溶接、TIG溶接、MIG溶接、プラズマアーク溶接、あるいはレーザー溶接などが可能である。好ましくはスポット溶接である。
次ぎに、接合要領を図15を参照しながら説明する。
鋼板12に形成された圧痕2a−1の凸側を鋼板13に接触するように鋼板12、13を重ね合わせる。その後、接合部の周辺を、白抜き矢印で概念的に示すように図示しない治具により拘束する。この際、接合部周辺の拘束による鋼板13の跳ね上がりを防止するために、圧痕2a−1の形成位置においても治具により拘束することが望ましい。このように拘束した状態で所定位置Aの接合する。なお、スポット溶接のように加圧と接合を同時に行うものは、必ずしも接合部の周辺の拘束は必要でない。
上記の接合により、圧痕2a−1により所定の隙間が確保された領域で接合が行われた接合品が得られる。この接合品を用いて電着塗装をおこなうことにより、合わせ部の電着塗料の付き回り性が向上して良好な耐食性を有する電着塗装製品を確実に得ることができる。
次ぎに、電着塗装の要領を説明する。まず、電着塗装前の前処理について説明する。
上記のように接合された接合品は、アルカリ脱脂により表面の汚れあるいは油分が除去されるが、隙間部分についても外面に露出した部位と同様に十分に脱脂処理が行われ、さらに十分に水洗により洗浄が行われることが好ましい。油分や汚れさらにはアルカリ脱脂剤の成分が隙間部分に残存するとその後のリン酸亜鉛処理工程に、リン酸亜鉛結晶が付着し難くなるという不具合がもたられるだけではなく、電着塗膜の密着性が低下することがある。通常アルカリ脱脂はスプレーあるいは浸漬により行われるが、隙間に十分に脱脂液を浸潤させるためには、浸漬型のアルカリ脱脂を行うことが好ましい。また、同様の理由により、アルカリ脱脂後の水洗および水洗後に施されるリン酸亜鉛処理工程も同様に浸漬型で行うことが好ましい。
アルカリ脱脂剤としては特別な薬剤は必要でなく、通常現在使用されている脱脂剤の中でも浸漬型のものが好ましく用いられる。リン酸亜鉛処理剤についても同様である。前者については代表的なものとして日本ペイント製のEC90、EC92(商品名)が、日本パーカライジング社製としてFCL4480、FCL4360(商品名)等が用いられる。
また、リン酸亜鉛処理剤についても従来品の中でも浸漬型のものが好ましく用いられ、例えばNi、Mn、あるいはNi、Mgを含んだトリカチオンタイプやNiのみを含むジカチオンタイプが用いられる。代表的なものとしては日本パーカライジング社製PBL3020やPBWL35(商品名)または日本ペイント社製のSD2500、SD2800、SD6000、SD5350(商品名)などが使用できる。またリン酸亜鉛処理に先だってはTiコロイドやリン酸亜鉛微粒子を含む表面調整を行うことが均一で微細なリン酸亜鉛処理を形成させるためには望ましい。
次ぎに電着塗装について説明する。
上述したように、電着塗装は電着塗料中に被塗物(例としては組み上がった自動車用部材)を陰極として通電することによって電気泳動現象を利用して塗装する方法である。基本的に塗装膜厚は電着時の電圧と電着の時間に依存する。したがって高電圧で塗装すればするほど電着時間が短時間化し効率的であるが、先例を紹介する際に述べたように印加電圧により電着塗装表面や仕上がりに影響を与えるため注意が必要である。
例えば部材に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いる場合は、印加電圧は200V程度が好ましく、これよりも大きくすると「ガスピン」と呼ばれる塗装欠陥が生じやすいので好ましくない。また印加電圧を300Vを超える範囲に大きくすると、特に隙間部分において電着と硬化が同時に起こり、隙間部分の閉塞が生じ十分に電着塗料が付き回らない場合がある。したがって電着電圧および電着時間は求める膜厚および外観と生産性を考慮して決められるものである。
ただし、本発明の場合は隙間に十分に塗装を施す技術であるので多少の生産性を低下させても、電着電圧を低めとすることが好ましく、熱延鋼板、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき以外の亜鉛めっき鋼板の場合は240V以下として所望の塗装膜厚を得るのが妥当である。なお合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合は上述した「ガスピン」現象を生じるため200Vを上限として管理することが好ましい。
このように、本実施の形態により、防錆性能が要求される製品の防錆性を、飛躍的に向上させることができる電着塗装用接合品およびその製造方法と、この電着塗装用接合品を用いた自動車車体を提供することができた。
これにより、通常はワックス等の他の防錆材料による補修作業を行って防錆性を確保していた鋼板の合わせ部についても、電着塗装を行った後にかかる補修作業を省略するか、あるいは最小限の補修作業を行うだけで、耐食性を充分に確保することができる。
(第2の実施の形態)
さらに、第2の実施の形態を説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、前述した第1の実施の形態と相違する部分を中心に説明し、共通する部分については重複する説明を適宜省略する。
前述した図12に示すように、板厚が0.7mmである2枚の冷延鋼板12、13を重ね合わせて、スポット溶接を行う。この際、これら2枚の冷延鋼板12、13のうちの1枚の鋼板には、スポット溶接を行う前、以下に示すエンボス加工とプレス加工とを順次おこない、中央部に圧痕を形成する。
(1) エンボス加工
図16は、本実施の形態におけるエンボス加工装置1−1の上金型3に設けた陥没部3b及び下金型4に設けた型突起部4bを拡大して示す断面図である。
図16において、型突起部4bは円形状で、型突起部4bの径(エンボス径)は6mmで、型突起部4bの先端は曲率半径が5mmの半球状で、型突起部4bの高さh4bは2.0 mmである。陥没部3bの角部の曲率半径 (ダイR) は1mmである。このエンボス加工装置1−1を用いたエンボス加工により、隣接する突起部2aの間隔が20mmで、突起部2aに最も近い材料端から突起部2aまでの距離が10mmであるとともにスポット溶接予定位置から突起部2aの間隔が30mmであって、さらに突起部2aの高さが2mmである突起部を有する鋼板2が得られる。
(2) プレス加工
次に、第1の実施の形態と同様に、エンボス加工により鋼板2に形成された突起部2aを押圧するプレス加工を行う。
プレス加工装置7の上金型8及び下金型9はいずれも平坦状とし、圧痕2a−1の高さは、下金型9にスペーサ10を設けることによって、上金型8及び下金型9の間隔を0.8mm(被加工材の板厚+0.10mm)に調整する。このプレス加工により、鋼板2には、向きが突起部2aの向きとは逆方向である圧痕2a−1が形成される。
次いで、圧痕2a−1の向きが突起部2aの向きとは逆方向である圧痕2a−1が形成された鋼板12と平坦な鋼板13とを圧痕2a−1を介して重ね合わせ、材料端から10mmの位置をスポット溶接することにより接合品が得られる。
(第3の実施の形態)
上述した第1の実施の形態〜第2の実施の形態では、圧痕2a−1が、例えば図11等により示すように、凸部11a とこの凸部11a の内側に形成される凹部11b とから構成される形状である場合を例にとった。
この圧痕2a−1は、エンボス径や板厚等によっては、エンボスの押圧側に一つ山の凸型の圧痕、すなわち一つの凸部から構成される形状を有することもある。一般的に、圧痕は、エンボス径に対して板厚が相対的に小さい場合には凸部11a とこの凸部11a の内側に形成される凹部11b とから構成される形状となり易く、逆にエンボス径に対して板厚が大きい場合には一つの凸部から構成される形状となり易い。
そこで、本実施の形態の説明では、一つの凸部から構成される形状を有する圧痕について説明し、この形状以外の要素および圧痕が奏する作用効果は、上述した第1の実施の形態〜第2の実施の形態と同じであるため、重複する説明は省略する。
図17は、第2の加工によって、鋼板2 に一つの凸部から構成される形状を有する圧痕2a−2が形成される状況を模式的に示す説明図である。また、図18(a) 及び図18(b) は、この第2の加工における鋼板2 の変形の様子を示す説明図である。
図17及び図18に示すように、例えばエンボス径に対して板厚が大きい鋼板2に対してエンボス加工を行って突起部2aを形成した後、プレス加工を行って突起部2aを押圧すると、図17及び図18(b) に示すように、凸部とこの凸部の内側に形成される凹部とから構成される形状ではなく、一つの凸部から構成される形状である圧痕2a−2が形成される。
この圧痕2a−2は、図18(a) に示すように、エンボス加工による突起部の裾部Bが押圧されることによって中央部に向けて移動 (矢印方向へ移動)するために、このような一つの凸部から構成される形状になるものと考えられる。
図19は、このようにして形成される圧痕2a−2の形状例を詳細に示す説明図である。
この圧痕2a−2は、鋼板2にエンボス加工を行って突起部2aを形成した後に、この突起部2aを高さ方向へ押圧するプレス加工を行うことにより、製造される。この圧痕2a−2は、プレス加工後においても突起高さが小さく、かつ縮径するように残存し、平滑な頂部11a-3 が形成される。
なお、圧痕が、凸部とこの凸部の内側に形成される凹部とから構成される形状となるか、あるいは一つの凸部から構成される形状となるかは、接合素材である鋼板2の板厚あるいはエンボスの高さ、径及び形状等の影響を受ける。場合によっては、凸部の内部に複数の凹部が現れたりすることもあり、その形状は本明細書に明記した形状には限定されない。
このように、圧痕が一つの凸部から構成される形状を有する場合であっても、第1の実施の形態〜第2の実施の形態で示した、凸部とこの凸部の内部に凸部の頂部よりも低く形成される凹部とから構成される形状を有する圧痕と同様の作用効果を奏することができる。
本発明にかかる接合品12は、このような製造方法により得られ、圧痕2a−1または2a−2により所定の距離の隙間が確保される領域で接合されたものである。
さらに、本発明を実施例を参照しながら具体的に説明する。
板厚1.4mmの引張強度288MPaの2枚の鋼板を用い、その1枚の鋼板には下記の要領で圧痕を形成し、この圧痕を介して2枚の鋼板を図20(a)(溶接点が1列の場合)、図20(b)B(溶接点が2列の場合)に示すように重ね合わせた状態で所定の部位をスポット溶接して接合品を作成した。なお、同図で、Xは合わせ面の幅、Yは圧痕に最も近い端面から圧痕までの距離である。
次いで、この接合品を対象としてアルカリ脱脂、リン酸亜鉛処理前の表面調整およびリン酸亜鉛処理を順次行った後に電着塗装を行い、塗装した接合品を用いて腐食試験を行った。
また、図21に示すように、この鋼板に圧痕を形成した圧痕付き試験片を作成し、この試験片に平坦な鋼板を重ね、加圧力:200kgf、溶接電流:8000A、通電時間:16サイクル、保持時間:1サイクル、電極:クロム銅製DR型、の溶接条件でスポット溶接を行い、スポット溶接後の引っ張り試験を行うことにより溶接強度を測定した。
[圧痕の形成]
直径が3mmの球筒パンチおよび内径が5mmのダイスにより張り出し加工を行い、その後フラットダイスにて所定の突起高さまで圧潰した。圧潰高さはフラットダイスに貼り付けたシム厚によって調整した。
[接合]
2枚の試験片を、圧痕の凸部を挟むように重ね合わせ、さらに治具で拘束した状態で所定の部位をスポット溶接した。このとき、スポット電極はクロム銅製DR型(先端40R)を使用した。また、溶接条件として、加圧力を270kgf、通電時間を16サイクル、電流を8kAとした。保持時間は1サイクルとした。
[アルカリ脱脂]
日本パーカライジング社製FCL4480、45℃で2分間浸漬して脱脂した後、60秒間の水洗を2回行った。
[リン酸亜鉛処理前の表面調整]
日本パーカライジング社製PLZを使用した。PL−Zの1g/lの水溶液に30秒間、常温で浸漬した。
[リン酸亜鉛処理]
日本パーカライジング社製PB−WL35を使用した。FAを0.4PtにTAを20.8Ptに調整し37℃の浴に120秒間浸漬し反応させた後60秒間の水洗を3回行った後,オーブンで乾燥した。
[電着塗装]
日本ペイント製電着塗料浴パワーニックスに試験片を陰極として下記条件にて通電を行って電着塗膜を形成し、乾燥焼付を行った。
電着条件:200V、180秒間
乾燥条件:175℃(最高温度)、30分間

このようにして作成した試験片について、塩水噴霧試験(5質量%塩水、35℃、2時間)、乾燥(60℃、4時間)、湿潤(50℃、95%RH、2時間)を1サイクルとする複合腐食サイクル試験を行い、耐食性の向上効果を調査した。
このサイクル試験を180サイクル(60日間)行った後、試験片のスポット溶接部をはずし内部の腐食状況を調査した。試験片の電着塗装を剥離剤により除去し、クエン酸アンモニウム水溶液に浸漬することで生成した腐食生成物を溶解除去した後、ポイントマイクロメータを用いて腐食深さ(=元板厚−残存板厚)を調査した。腐食深さは試験片の合わせ部において腐食深さの大きい100点をピックアップし小数点以下第二位まで各腐食深さとして求め、平均腐食深さおよび中間値、腐食深さの大きい10点の平均腐食深さ(最大10点平均腐食深さ)調査比較を行った。
試験結果を表1,2にまとめて示す。
Figure 2005187878
Figure 2005187878
表1、2に示すように、圧痕により所定の隙間が確保された領域で接合することにより得られた接合品は、平均腐食深さおよび腐食深さの中間値、さらには最大腐食深さ10点平均値いずれも改善できたことが判り、本発明による電着塗装付き回り改善の効果を確認することができた。
特に腐食深さの全平均値が著しく改善していることから、圧痕により電着塗装の付き回りを良くすることにより平均的な腐食傾向を抑制することができると推定される。さらに端面から突起までの距離が小さい方が電着塗料の入り込みが良好で電着塗装の付き回りが良いために耐食性も改善される傾向にある。
また、圧痕を通り端面に平行な線と端面に平行な線の間に溶接点があると隙間が確保されていても、端面付近の隙間が小さくなるため電着塗料の入り込みが悪くなり耐食性が低下する。
したがって好ましい形態としては、(i)合わせ面の巾が小さいこと、(ii)圧痕と溶接点が端面と平行な線上に設置されること(iii)突起高さが大きいこと等を挙げることができる。
圧痕により確保される最大の隙間が0.3mm以上となると急速に耐食性が向上し、さらに1.2mmまで大きくしてもそう耐食性に変化はない。しかし、隙間が1.2mmとなると、溶接強度が大幅に低下することが分かった。したがって隙間は0.3mm〜1.0mmの範囲内とすることが望ましい。
図1(a) は、第1の実施の形態においてエンボス加工を行うためのエンボス加工装置の主要部を抽出して示す説明図であり、図1(b) は、突起部の拡大図である。 第1の実施の形態における陥没部及び型突起部を拡大して示す断面図である。 第1の実施の形態における陥没部及び型突起部の他の形状例を拡大して示す断面図である。 第1の実施の形態における陥没部及び型突起部の他の形状例を拡大して示す断面図である。 第1の実施の形態において、挟持面が曲率を有している場合のプレス成形時の一例を示す説明図である。 エンボス加工により冷延鋼板に突起部が形成される状況を示す説明図である。 プレス加工の状況を示す斜視図である。 プレス加工時のプレス加工装置を示す断面図である。 スペーサと冷延鋼板との位置関係を模式的に示す説明図である。 スペーサと冷延鋼板との位置関係を模式的に示す説明図である。 プレス加工により形成される圧痕の形状例を示す説明図である。 圧痕を介して鋼板を重ね合わせた状況の一例を示す説明図である。 圧痕を介して鋼板を重ね合わせた状況の一例を示す説明図である。 圧痕を介して鋼板を重ね合わせた状況の一例を示す説明図である。 接合要領を示す説明図である。 実施の形態におけるエンボス加工装置の上金型に設けた陥没部および下金型に設けた型突起部を拡大して示す断面図である。 プレス加工によって、冷延鋼板に一つの凸部から構成される形状を有する圧痕が形成される状況を模式的に示す説明図である。 図18(a) 及び図18(b) は、第3の実施の形態において、プレス加工における冷延鋼板の変形の様子を示す説明図である。 第3の実施の形態において形成される圧痕の形状例を詳細に示す説明図である。 腐食試験に供した鋼板合わせ試験片の模式図である。 溶接強度試験に用いた試験片の模式図である。
符号の説明
12、13 接合用素材
2a 突起部
2a−1 圧痕

Claims (5)

  1. 少なくとも2枚の接合用素材を重ね合わせて接合を行うことにより得られる電着塗装用接合品であって、2枚の接合用素材のうちの少なくとも一方は、突起部を押圧して形成される圧痕を有して他方との間に所定の距離の隙間を確保する領域を備え、前記接合は該領域で行われることを特徴とする電着塗装用接合品。
  2. 前記圧痕は、凸部と該凸部の内側に形成される凹部とから構成される形状、又は凸部から構成される形状を有する請求項1記載の電着塗装用接合品。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電着塗装用接合品を備えることを特徴とする自動車車体。
  4. 少なくとも2枚の接合用素材を重ね合わせて接合を行われることにより得られる電着塗装用接合品の製造方法であって、前記2枚の接合用素材の少なくとも一の接合用素材にエンボス加工を行って突起部を形成した後に、前記エンボス加工により形成された該突起部を押圧するプレス加工を行うことにより圧痕を形成し、前記圧痕を介して2枚の接合用素材を重ね合わせ、該圧痕により所定の隙間が確保された領域において前記接合を行うことを特徴とする電着塗装用接合品の製造方法。
  5. 前記接合はスポット溶接である請求項4に記載の電着塗装用接合品の製造方法。
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