JP2005187413A - 新規な相転移型スピンクロスオーバートリアゾール鉄錯体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スピンクロスオーバー現象を発現させる新規な集積型金属錯体を提供する。
【解決手段】 下記の一般式(A)で表されるトリアゾール鉄錯体。式(A)中、Xは、下記の式(B)で表されるトリアゾールリガンドを表し、Yは、極性溶媒に溶解性の鉄(II)の塩を構成する陰イオン(例えばClO )を表す。式(B)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基を表すが、R、RおよびRの少なくとも1つは炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基である。
【化1】
Figure 2005187413

【化2】
Figure 2005187413

【選択図】 図4

Description

本発明は、集積型金属錯体の技術分野に属し、特に、スピンクロスオーバー現象を発現する新規なトリアゾール鉄錯体に関する。
スピンクロスオーバー錯体は、遷移金属錯体のうち、中心金属のd電子数が4個から7個のものであり、温度や圧力の変化などの外部刺激により「高スピン状態」と「低スピン状態」の2つの電子配置の転移が可能な物質である。この錯体は、スピンクロスオーバー現象に応じて、磁気的性質や色などの変化を伴うため、これを利用して、センサー、記憶素子、メモリー素子などへの展開が期待されている。
近年、金属錯体を集合化(集積化)した集積型金属錯体が多様な物性や反応性を発揮するものとして高い関心を集めつつあり、スピンクロスオーバー錯体への適用も試みられている。この場合、所望の性状を得るためには、当該金属錯体が適当な溶媒に可溶化して錯体分子間の相互作用や集合形態を容易に制御し得ることが不可欠であるが、そのような要件を満たす系はきわめて少ない。例えば、トリアゾールリガンドを用いた金属錯体の例は、これまでにも報告されているが(O. Kahn, J. Kroeber, C. Jay, Adv. Mater. 1992, 4, 718:非特許文献1)、形成された金属錯体集合体は有機溶媒に不溶であり、分子間の相互作用を制御することができなかった。
O. Kahn, J.Kroeber, C. Jay, Adv. Mater. 1992, 4, 718
本発明の目的は、分子間の相互作用を制御してスピンクロスオーバー現象を発現させることのできる新規な集積型金属錯体を提供することにある。
本発明者は、トリアゾール構造を含むリガンドに格別の分子設計を施し、これを鉄原子に配位させることによって上記の目的が達成され得ることを見出し、本発明を導き出したものである。
かくして、本発明に従えば、下記の一般式(A)で表されることを特徴とするトリアゾール鉄錯体が提供される。
Figure 2005187413
式(A)中、Xは、下記の式(B)で表されるトリアゾールリガンドを表し、そのトリアゾール環の1位および2位の窒素原子を介して2個の鉄(II)原子に配位しており、Yは、極性溶媒に溶解性の鉄(II)の塩を構成する陰イオンを表す。
Figure 2005187413
式(B)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基を表すが、R、RおよびRの少なくとも1つは炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基である。
本発明の錯体は、有機溶媒に可溶であり、分子間の相互作用が制御されるように調製することができ、その結果、相変化によりスピンクロスオーバー現象が発現されて磁気的性質や色の変化をもたらす。
本発明の鉄錯体の特徴は、リガンド(配位子)として特定構造のトリアゾール系化合物に長鎖の官能基を導入したものを用いることにある。すなわち、本発明の鉄錯体を構成するトリアゾールリガンドは、既述の式(B)において、R、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基であり、しかもR、RおよびRの少なくとも1つが炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基であるようにする。このうち、原料化合物の入手や合成の容易さから好ましいのは、RおよびRが炭素数10〜20のアルコキシル基であり、Rが水素原子である場合であり、さらに、後述するように、鉄錯体が常温付近でスピンクロスオーバー現象を発現する点から、特に好ましいのは、RおよびRが炭素数14〜18のアルコキシル基の場合である。
本発明で用いられる式(B)のトリアゾールリガンドは、既知の反応を工夫することによって合成することができる。すなわち、一般的には、図1に示すように、DBOP〔ジフェニル(2,3−ジヒドロキシ−2−チオキシ−3−ベンゾキサゾール)ホスホネート〕、およびトリエチルアミンの存在下、THF(テトラヒドロフラン)のような溶媒中、アルキル(またはアルコキシル)鎖置換基を有するベンゾイックアシッド(安息香酸)(C)と4−アミノ−1,2,3−トリアゾール(D)とを還流条件下に脱水反応させればよい(後述の実施例1参照)。
本発明の鉄錯体は、以上のようにして得られるトリアゾールリガンドを鉄の塩FeYと反応させることによって生成する。ここで、Yは、既述のように、極性溶媒に溶解性の鉄(II)の塩を構成する陰イオンを表す。Yとして特に好ましい例は、過塩素酸イオン(ClO )であるが、これに限定されるものではなく、この他に、HSO 、BF 、Brなどが、鉄の塩FeYを構成する陰イオンとして挙げられる。
式(B)のトリアゾールリガンドとFeY〔例えば、Fe(ClO)・2HO〕の反応は、一般に、THFのような極性溶媒中でアスコルビン酸還流条件下に行なわせる。反応終了後、溶媒を蒸発除去するとピンク状の固体として鉄錯体が得られる(後述の実施例2参照)。
以上のようにして、式(A)で表される本発明の金属錯体が得られる。式(A)において、Xは既述のように式(B)で表されるトリアゾールリガンドを表す。このトリアゾールリガンドは、そのトリアゾール環の3位および4位の窒素原子を介して2個の鉄(II)原子に配位している(配位結合している)。また、Yは、既述のように極性溶媒に溶解性の鉄(II)の塩を構成する陰イオンを表す。
本発明のトリアゾール鉄錯体は、ヘキサンなどの溶媒に可溶化するので、蒸発やキャスティングによって容易に固体やフィルムに成形することができる。本発明の錯体が可溶性であるのは、鉄(II)にトリアゾールが配位した部位を中心にして長鎖のアルキル鎖やアルコキシル鎖がそれを囲んで外側に向いている構造をとっているためと考えられる。そして、得られた固体やフィルム状の錯体においては、アルキル鎖またはアルコキシル鎖がファンデルワールス力により隣の鎖と相互作用して互いにパッキングして高次の集積構造を形成する。このような本発明錯体の構造解析は、IR(赤外分光法)、XRD(X線回折法)、EXAFS(拡張X線吸収微細構造解析法)、DSC(示差走査熱量測定法)などにより行なうことができる(後述の実施例2,3,4参照)。
以上のような特徴的な構造から成る本発明のトリアゾール鉄錯体は、長鎖のアルキル基またはアルコキシル基の相転移により中心の鉄のスピン状態が高スピン状態と低スピン状態の間で遷移するスピンクロスオーバーを発現して、磁化率や色の変化を起こす(後述の実施例4参照)。すなわち、本発明の錯体は、高次の集積構造を形成した組織体の相転移がスピンクロスオーバーを引き起こすという新しいタイプの集積型金属錯体である。
以下に、本発明の特徴を実施例に沿ってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
リガンドの合成
図1に示す反応式に従って式(B)のトリアゾールリガンドを合成した。式(B)において、R=R=−OC1225、R=Hのトリアゾールリガンド(以下、C12Trzと略記する)、およびR=R=−OC1633、R=Hのトリアゾールリガンド(以下、C16Trzと略記する)について具体的な合成法および同定データを以下に示すが、他のリガンドについても同様に合成した。
<1> C12Trz:還流管とマグネット攪拌子を有する300mLの二口フラスコに、蒸留したTHF100mLを入れ、1,3−ジドデシコキシルベンゾイックアシッド3.0g、トリエチルアミン2.0mL、ジフェニル(2,3−ジヒドロキシ−2−チオキシ−3−ベンゾキサゾール)ホスホネート6.2g、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール1.0gを入れ、攪拌しながら加熱し、30分還流した後、反応溶液を室温まで冷却した。濾過で過剰な未反応物を除き、得られたろ液を蒸発させて除去し、固体を得た。30mLのクロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムで分離した。溶媒はクロロホルムから3%のメタノールを含有するクロロホルムの混合溶媒に少しずつ変え、第2のフラクションを集めた。蒸発により溶媒を除去し、95%の収率で白色固体C12Trzを得た。
同定データ:
(1)プロトン核磁気分析1H NMR (500MHz, CDCl3):δ(ppm) 0.86(6H, t, J=7.0Hz, CH3)、1.24(32H, m, (CH2)8)、1.40(4H, m, J=7.0Hz, OCH2CH2CH2)、1.76(4H, m, J=7.0Hz, OCH2CH2)、3.92(4H, t, J=7.0Hz, OCH2)、6.66(1H, t, J=2.0Hz, ArH)、7.17(2H, d, J=2.0Hz, ArH)、8.20(2H, s, トリアゾール−H)。
(2)カーボン13核磁気分析13C
NMR (125MHz, CDCl3):δ(ppm) 14.2, 22.6, 26,1, 29,2, 29.4, 29.5, 29.7, 29.7, 32.0, 68.5,
106.0, 106.7, 131.8, 143.4, 160.5および166.0。
(3)赤外分光分析FT IR (KBr):ν(cm−1) 3115(NH)、2920(CH2, νanti)、2850(CH2, νanti)、および1670(C=O)。
(4)飛行時間質量分析MALDI-TOF-MS:C33H56N4O3
[M+H]+:m/z=557.8(計算値);557.6(実測値)。
<2> C16Trz:還流管とマグネット攪拌子を有する200mLの二口フラスコに、蒸留したTHF100mLを入れ、1,3−ジデカヘキシコキシルベンゾイックアシッド4.0g、トリエチルアミン3.0mL、ジフェイル(2,3−ジヒドロキシ−2−チオキシ−3−ベンゾキサゾール)ホスホネート6.5g、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール1.5gを入れ、攪拌しながら加熱し、30分還流した後、反応溶液を室温まで冷却した。濾過で過剰な未反応物を除き、得られたろ液を蒸発させて除去して、固体を得た。30mLのクロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムで分離した。溶媒はクロロホルムから3%のメタノールを含有するクロロホルムの混合溶媒に少しずつ変え、第2のフラクションを集めた。蒸発により溶媒を除去し、96%の収率で白色固体のC16Trzを得た。
同定データ:
(1)プロトン核磁気分析1H NMR (500MHz, CDCl3):δ(ppm) 0.86(6H, t, J=7.0Hz, CH3)、1.24(48H, m, (CH2)12)、1.42(4H, m, J=7.0Hz, OCH2CH2CH2)、1.75(4H, m, J=7.0Hz, OCH2CH2)、3.94(4H, t, J=7.0Hz, OCH2)、6.66(1H, t, J=2.0Hz, ArH)、7.17(2H, d, J=2.0Hz, ArH)、8.17(2H, s, トリアゾール−H)。
(2)カーボン13核磁気分析13C
NMR (125MHz, CDCl3):δ(ppm) 14.2, 22.8, 26,1, 29,3, 29.4, 29.5, 29.7, 29.7, 29.7, 29.8, 30.9,
32.0, 68.6, 106.1, 106.9, 131.9, 160.6, 165.8および206.5。
(3)赤外分光分析FT IR (KBr):ν(cm−1) 3116(NH)、2920(CH2, νanti)、2850(CH2, νanti)、および1670(C=O)。
(4)飛行時間質量分析MALDI-TOF-MS:C41H72N4O3
[M+H]+:m/z=670.04(計算値);669.2(実測値)。
鉄錯体の合成
実施例1に従って合成したリガンドとFe(ClO)・2HOを反応させることによりトリアゾール鉄錯体を合成した。トリアゾールリガンドとしてC12Trzを用いた鉄錯体(以下、C12Trz鉄錯体と略記する)、およびC16Trzを用いた鉄錯体(以下、C16Trz鉄錯体と略記する)について具体的な合成法および同定データを以下に示すが、他の錯体についても同様に合成した。
<1>C12Trz鉄錯体:還流管とマグネット攪拌子を有する50mLの二口フラスコにC12Trz200mgを入れ、真空、窒素ガスを置換した後、蒸留したTHF10mLを入れて溶かした。シリンジで少量のアスコルビン酸を共存させたFe(ClO)・2HO(34mg)のTHF溶液(5mL)を滴下した。加熱還流し、5分後室温まで冷却した後、反応溶液を蒸発除去し、100%の収率でピンク状固体としてC12Trz鉄錯体を得た。
同定データ:FT-IR(KBr):ν(cm−1) 2923(CH2, νanti),
1695(C=O)。
<2>C16Trz鉄錯体:還流管とマグネット攪拌子を有する50mLの二口フラスコにC16Trz150mgを入れ、真空、窒素ガスを置換した後、蒸留したTHF10mLを入れ溶かした。シリンジで少量のアスコルビン酸を共存させたFe(ClO)・2HO(22mg)のTHF溶液(5mL)を滴下した。加熱還流し、5分後室温まで冷却した後、反応溶液をエバーボし、100%の収率でピンク状としてC16Trz鉄錯体を得た。
同定データ:FT-IR(KBr):ν(cm−1) 2922(CH2, νanti),
1697(C=O)。
鉄錯体の構造解析
実施例2に従って合成したトリアゾール鉄錯体の構造をさらに詳細に調べるために、実施例2で示すFT−IR測定の他、EXAFS測定、XRD測定およびDSC測定を行なった。
図2に、C16Trz鉄錯体について測定したEXAFSスペクトルを示す。図2(イ)のEXAFSスペクトルチャート中の数字I〜VIは、図2(ロ)の構造式中の数字と対応しており、EXAFSスペクトルにおけるそれぞれのピークの帰属を示している。3個の鉄(II)原子が並んだFe−Fe−Feからの散乱の他、トリアゾール環の各部位と鉄原子、3.5Åに隣接する鉄原子間の相互作用に由来するピークが明瞭に認められた。このEXAFSスペクトルは従来より報告されているものと一致する(非特許文献2および非特許文献3)
A.Michalowicz, J.Moscovic, Y.Garcia and O.Kahn, J.Synchrotron Rad. 1999,6, 231。 N.Kojima,Y.Murakami, T.Komatsu, T.Yokoyama, Synth. Met. 1999, 103, 2154。
実施例2に示すように、IR測定から、アミドのC=O伸縮振動に由来する1690cm−1付近のピークが錯体形成に伴い、高波数側にシフトし、アミド間の水素結合が錯体の中では失われたことが分かった。また、2920cm−1付近のCH非対称伸縮振動のピークはアルキル鎖の長さに大きく依存し、長いほど低波数側に現れる。これらのことから、本発明の鉄錯体は、アルキル鎖(アルコキシル鎖)の自己組織性による集積構造を形成し、この際、長いアルキル鎖(アルコキシル鎖)を有する集積錯体はより強いパッキング状態を有することが示唆された。
事実、温度可変XRD測定では、いずれも低角側に一次元鉄鎖間の間隔を反映した鋭いピークが観測された(図3参照。図3はC16Trz錯体について測定したものである)。また、それらの面間隔dはアルキル鎖(アルコキシル鎖)長の増加に伴い直線的に増加し、dの値はリガンド1分子の長さとリガンドからアルキル鎖(アルコキシル鎖)を除いたヘッド部分(約9Å)の長さの和とよく一致していることから、本発明の鉄錯体は図4に示したように鉄主鎖が平行に並び、アルキル鎖(アルコキシル鎖)同士がその垂直方向に互いに入り組んだメゾアレー型の集積構造を構成していると考えられる。
さらに、DSC測定を行なったところ、本発明に従う鉄錯体はリガンドのみのときに見られる複数のピークは全て消失し、新たにただ一つのピークを与え、そして、アルキル鎖(アルコキシル鎖)の炭素数の増加とともに吸熱ピーク(放熱ピーク)が高温側にシフトした。このような現象は二分子膜中におけるアルキル鎖の融解などの系でも多く見受けられることから、これらのピークが集積したアルキル鎖の融解現象に起因していると予想される。これを検証するためにC16Trz鉄錯体を用いて温度可変IR測定を行なった。その結果、予想通りにDSCピークと同じの温度においてCH非対称伸縮振動ピークが昇温過程においては高波数側に、降温過程においては低波数側に可逆的にシフトしていることが観測された。
鉄錯体のスピンクロスオーバー現象観察
SQUID(スクイッド)を用いて、磁化率の温度変化を測定した。その1例としてC16Trz鉄錯体(固体試料)の結果を図6に示す。
昇温では、磁化率が次第に大きくなり、既述の実施例3で示したDSC曲線の吸熱ピークの温度範囲で急激な磁化率の増大が見られる。すなわち、アルキル鎖(アルコキシル鎖)の結晶状態から融解状態への相転移が材料の低スピン状態から高スピン状態への変化を誘起することを示している。そして、DSC曲線ピークトップにおいて低スピン状態に特徴的なピンク色から高スピン状態の無色(白色)へと色の変化が観察された。同じく、降温では、磁化率が次第に小さくなり、放熱ピークの温度範囲で磁化率の急激な低下が見られるとともに、白色からピンク色への色の変化が観察され、アルキル鎖の融解状態から結晶状態への相転移が材料の高スピン状態から低スピン状態への転移を引き起こすことを示した。
アルキル鎖(アルコキシル鎖)の長さの異なる鉄錯体についての結果を表1にまとめている。表1中、スピンクロスオーバー温度は、昇温および降温過程において磁化率の著しい変化が認められる温度範囲の中間値としている。また、nは式(2)においてR=R=OC2n+1、R=Hであるトリアゾールリガンドを用いて合成した鉄錯体であることを示している。
Figure 2005187413
表1から理解されるようにスピンクロスオーバー現象はアルキル鎖(アルコキシル鎖)の長さに著しく依存している。短いC1〜C8のものでは、相転移とそれによって誘起する磁性常態や色の変化は現れない。また、C12〜C18の長鎖を用いた場合、いずれも相転移と磁性や色の変化があり、その温度は長鎖アルキル鎖(アルコキシル鎖)の長さが長いほど高くなる。
本発明のトリアゾール鉄錯体は、温度変化という外部刺激により磁気的性質や色が変化するので、この特性に基づき、センサー、スイッチング素子、表示素子などに利用、展開され得るものと期待される。
本発明の鉄錯体を構成するトリアゾールリガンドの合成スキームを示す。 本発明の鉄錯体の1例について測定したEXAFSスペクトルを示す。 本発明の鉄錯体の1例について測定したXRDチャートを示す。 本発明の鉄錯体の集積構造を模式的に示す。 本発明の鉄錯体について測定したDSCの結果を示す。 本発明の鉄錯体について測定したSQUIDによる磁化率の温度変化の結果を示す。

Claims (4)

  1. 下記の一般式(A)で表されることを特徴とするトリアゾール鉄錯体。
    Figure 2005187413
    〔式(A)中、Xは、下記の式(B)で表されるトリアゾールリガンドを表し、そのトリアゾール環の1位および2位の窒素原子を介して2個の鉄(II)原子に配位しており、Yは、極性溶媒に溶解性の鉄(II)の塩を構成する陰イオンを表す。〕
    Figure 2005187413
    〔式(B)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基を表すが、R、RおよびRの少なくとも1つは炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基である。〕
  2. 式(B)のR、RおよびRが炭素数10〜20のアルコキシル基であり、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のトリアゾール鉄錯体。
  3. 式(B)のR、RおよびRが炭素数14〜18のアルコキシル基であることを特徴とする請求項2に記載のトリアゾール鉄錯体。
  4. 式(A)のYが、ClO であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトリアゾール鉄錯体。
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