JP2005187306A - 油田かん水からのヨウ素製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ヨウ素を高効率で製造できる油田かん水からのヨウ素製法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、油田かん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程、樹脂からヨウ素イオンを溶離させてヨウ素を得る溶離工程を含み、前処理工程が、固形状油分を除去しpHを調整し酸化剤を添加し、吸着工程が、樹脂を流動化させながらかん水を導入しポリヨウ素イオンを樹脂に吸着させるもので、溶離工程が樹脂からポリヨウ素イオンを溶離させてヨウ素を得るかん水からのヨウ素製法で、吸着工程前にかん水を前処理し、酸化剤添加時に酸化剤とヨウ素イオン当量数の比Roxが、〔0.7+(Coc/Cid)×0.07×(127/16)〕〜〔1.2+(Coc/Cid)×0.17×(127/16)〕(Cidは油田かん水中のヨウ素イオン濃度(mg/L)、CocはCOD濃度(mg/L))で表されるよう酸化剤を添加する。
【選択図】図1
【解決手段】 本発明は、油田かん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程、樹脂からヨウ素イオンを溶離させてヨウ素を得る溶離工程を含み、前処理工程が、固形状油分を除去しpHを調整し酸化剤を添加し、吸着工程が、樹脂を流動化させながらかん水を導入しポリヨウ素イオンを樹脂に吸着させるもので、溶離工程が樹脂からポリヨウ素イオンを溶離させてヨウ素を得るかん水からのヨウ素製法で、吸着工程前にかん水を前処理し、酸化剤添加時に酸化剤とヨウ素イオン当量数の比Roxが、〔0.7+(Coc/Cid)×0.07×(127/16)〕〜〔1.2+(Coc/Cid)×0.17×(127/16)〕(Cidは油田かん水中のヨウ素イオン濃度(mg/L)、CocはCOD濃度(mg/L))で表されるよう酸化剤を添加する。
【選択図】図1
Description
本発明は、油田地域の地下等から排出される油田かん水からのヨウ素製造方法に関する。
日本国内の一部の地域やアメリカ、及びロシアでは石油採掘に伴い、地下かん水が発生する。このかん水は油分を多く含み、50mg/L程度のヨウ素も含むことが知られている。
このような油分及びヨウ素を含むかん水は、従来、資源として利用されることなく地中に埋め戻されていたため、油分を含むかん水からのヨウ素製造技術については工業的に確立された技術はない。一方、油分を含まないかん水からのヨウ素製造技術は従来から知られている。そこで、以下に、油分を含まないかん水からのヨウ素製造技術について述べる。
油分を含まないかん水からのヨウ素製造方法については、工業技術としてブローアウト法と樹脂吸着法の2つの方法が公知である。
ブローアウト法はヨウ素製造の一般的な製法で、ヨウ素イオンの酸化工程、ヨウ素のブローアウト工程、ヨウ素の再濃縮工程、ヨウ素の精製工程からなり、これらの一連の処理を行う設備がかん水の井戸元に設置され、塩素を酸化剤としてかん水中のヨウ素イオンをヨウ素に酸化した後、遊離したヨウ素ガスを多量の空気と同伴させて吸収塔に導き1次濃縮を行い、その後濃縮・精製を図る方法である。
一方、樹脂吸着法は陰イオン交換樹脂を用いる方法で、上記ヨウ素イオンの酸化・濃縮工程等の処理設備が井戸元から距離的に離れる場合や、低濃度のヨウ素を含有するかん水からヨウ素を回収する場合に適用される(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。この樹脂吸着法ではかん水中に含まれるSS分(浮遊固形分)による樹脂層の閉塞を防ぐ為、流動層という形式の設備が通常採用されている。
この樹脂吸着法は大別すると、ヨウ素イオン吸着工程、吸着したヨウ素イオンの溶離工程(樹脂の再生工程)、溶離したヨウ素イオンの酸化濃縮工程、精製工程からなる。
ヨウ素イオン吸着工程はかん水の発生する井戸元に設備が設置されるが、溶離工程や濃縮、精製工程は別の場所(処理基地)に設置されることが通例で、ヨウ素イオンを吸着した陰イオン交換樹脂はトラック等の搬送手段で井戸元から処理基地に運ばれ、溶離処理が成された後、再生された陰イオン交換樹脂が再び井戸元に送り戻され、吸着操作に使用される。
ヨウ素イオン吸着工程では、流動層式吸着塔を使用する。流動層式吸着塔では、ヨウ素イオンを吸着可能な陰イオン交換樹脂を充填し、かん水を吸着塔下部から流入させ、樹脂が液の上昇流速で常に流動できるようにかん水流量を制御しながら、一定時間かん水と陰イオン交換樹脂を接触させることによりかん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる。この吸着操作に際しては、樹脂1gに対するヨウ素の吸着量(吸着容量)を増大させることが樹脂利用効率を高める上では重要であるが、1価のマイナスイオンであるヨウ素イオンよりもヨウ素分子とヨウ素イオンの結合したポリヨウ素イオンの方が吸着容量が大きいので、ポリヨウ素イオンで吸着させることが有利である。ポリヨウ素イオンはかん水中のヨウ素イオンを一部酸化させることで生成できるので、樹脂吸着処理前に通常は塩素または次亜塩素酸ナトリウム水溶液をかん水に加える。これによりポリヨウ素イオンが陰イオン交換樹脂に吸着固定される。
その後、ポリヨウ素イオンを吸着した陰イオン交換樹脂を樹脂充填塔から取り出し、ヨウ素イオン溶離装置に陰イオン交換樹脂を移動させる。
ヨウ素イオン溶離装置では亜硫酸ソーダ液でポリヨウ素イオンをヨウ素イオンに還元した後、食塩水などの適当な溶離液と接触させることで陰イオン交換樹脂に吸着されたヨウ素イオンを溶離させる。溶離されたヨウ素イオンに酸化剤を加えることで粗ヨウ素を製造する。その後、粗ヨウ素を濃縮精製して製品であるヨウ素を得る。
前記溶離操作では同時に陰イオン交換樹脂の再生を行う。再生された陰イオン交換樹脂は溶離装置から抜き出した後、吸着塔に移し、再度吸着操作を行う。このような、吸着、溶離の操作を繰り返し行うことで低濃度のヨウ素が含まれるかん水からヨウ素を効率的に製造できる。
特公昭49−35515号公報
特公昭52−29271号公報
しかしながら、前述した油分を含まないかん水からヨウ素を製造する方法を、油分を含むかん水に適用すると、以下に示すような問題が生じる。
即ち、油田かん水中には50mg/L程度のヨウ素が含まれているが、油分等の有機物が含まれており、これがヨウ素回収に悪影響を及ぼす。油分にはカーボン数の違いで重質成分である固形状の油分と液状の油分があるが、ともに非水溶性で比重が小さく、しばらく静置するとかん水の上部に油面が形成され固形状油分が浮かんだ状態になる。また油分以外の水溶性の有機物もかん水中には存在する。重質成分である固形状の油分はヨウ素イオン吸着工程で装置や配管に付着するばかりでなく、充填された陰イオン交換樹脂にも付着して陰イオン交換樹脂の吸着性能を低下させたり、陰イオン交換樹脂同士を固結させることでかん水の液流動を阻害する原因となる。
一方、かん水中の水溶性有機成分や軽質油分は重質油分に比較すると影響は少ないが、吸着処理前に添加する酸化剤との反応が問題となる。すなわち、ヨウ素イオン吸着工程の前ではポリヨウ素イオンを生成させるために酸化剤として例えば次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加するが、酸化剤は、有機成分との反応にも消費されてしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヨウ素を高効率で製造することができる油田かん水からのヨウ素製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、油田かん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程と、陰イオン交換樹脂からヨウ素イオンを溶離させてヨウ素を得る溶離工程とを含む油田かん水からのヨウ素製造方法であって、吸着工程前に、油田かん水を前処理する前処理工程を含み、前処理工程が、油田かん水中の固形状油分を除去する除去工程と、油田かん水のpHを調整するpH調整工程と、油田かん水中のヨウ素イオンを酸化させるための酸化剤を添加してポリヨウ素イオンを得る酸化剤添加工程とを含み、吸着工程が、陰イオン交換樹脂を流動化させながら油田かん水を導入し、ポリヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させるものであり、溶離工程が、陰イオン交換樹脂からポリヨウ素イオンを溶離させることが可能な溶離剤を添加することでポリヨウ素イオンを溶離させるものであり、上記酸化剤添加工程においては、前記酸化剤のと前記油田かん水中のヨウ素イオンの当量数との比(Rox)が、下記式:
0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)
(上記式中、Cidは前記油田かん水中のヨウ素イオン濃度(mg/L)、Cocは前記油田かん水中のCOD濃度(mg/L)、Midはヨウ素の原子量(=127)、Moxは酸素の原子量(=16)を表す)
で表される量となるように酸化剤を添加することを特徴とする。
0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)
(上記式中、Cidは前記油田かん水中のヨウ素イオン濃度(mg/L)、Cocは前記油田かん水中のCOD濃度(mg/L)、Midはヨウ素の原子量(=127)、Moxは酸素の原子量(=16)を表す)
で表される量となるように酸化剤を添加することを特徴とする。
本発明によれば、吸着工程前に、前処理工程で油田かん水から固形状油分が除去される。このため、固形状油分が装置・配管に付着したり、固形状油分による陰イオン交換樹脂の吸着性能が低下したり、固形状油分により陰イオン交換樹脂同士が固結して油田かん水の液流動を阻害したりする事態が防止される。また、前処理工程における酸化剤添加工程で、上記式で表される量の酸化剤を添加することにより、ヨウ素イオン(I−)がポリヨウ素イオン(I3 −,I5 −など)に変換され、吸着工程で陰イオン交換樹脂にポリヨウ素イオンを十分に吸着させることができると共に、酸化剤の過剰添加による陰イオン交換樹脂の吸着性能の低下を十分に防止することができる。従って、本発明によれば、吸着工程において、陰イオン交換樹脂に長期間にわたって十分にポリヨウ素イオンを吸着させることができる。
本発明の油田かん水からのヨウ素製造方法によれば、吸着工程において、陰イオン交換樹脂に長期間にわたって十分にポリヨウ素イオンを吸着させることができるので、ヨウ素を高効率で製造することができる。
本発明の油田かん水からのヨウ素製造方法について詳細に説明する。
本発明者等は、前記の油田かん水に含まれる油分由来の固形物の影響を最小限にするために、以下の3つの工程を含むヨウ素製造方法を発明した。すなわち、本発明のヨウ素製造方法は、固形状油分及びヨウ素イオンを含有する油田かん水を前処理する前処理工程、陰イオン交換樹脂を用いて油田かん水中のヨウ素イオンを吸着させる吸着工程、ヨウ素イオンを吸着した陰イオン交換樹脂からヨウ素イオンを溶離させヨウ素を得る溶離工程を含む。
(前処理工程)
上記前処理工程は、油田かん水から固形状油分を除去する除去工程と、油田かん水のpHを調整するpH調整工程と、油田かん水中のヨウ素イオンを酸化させるための酸化剤を添加してポリヨウ素イオンを得る酸化剤添加工程の3つの工程を含む。
上記前処理工程は、油田かん水から固形状油分を除去する除去工程と、油田かん水のpHを調整するpH調整工程と、油田かん水中のヨウ素イオンを酸化させるための酸化剤を添加してポリヨウ素イオンを得る酸化剤添加工程の3つの工程を含む。
上記固形分除去工程では油田かん水を静置分離装置等に導くことで油田かん水中の固形状油分を連続的に除去できるので、固形状油分の濃度を10ppm以下とすることが可能である。ここで、固形状油分はヘキサン抽出分として検出できるが、ヘキサン抽出分は液状油分も含むので液状油分との分離ができない。固形状油分の濃度は、一定量のかん水について定性ろ紙でろ過を行い、ろ紙上の残渣をヘキサンで溶解した後、蒸発乾固して求める。
後工程の酸化剤添加工程に際してはpH条件が重要となる。すなわち、通常井戸元で発生する油田かん水のpHは7〜7.5であるが、次亜塩素酸ナトリウムによる酸化反応は酸性で進む。従って、油田かん水のpHをヨウ素イオンの酸化に適した範囲に調整することが好ましい。具体的には、油田かん水には通常、炭酸ガスが溶存しているので、重炭酸根や炭酸根などの影響を考慮して硫酸を加え、油田かん水のpHを6.5〜7.0に調整する。ここで、pHは、ガラス電極を用いたpH測定計(例えば東亜電波工業製、イオン・pHメーター IM−55G、pH測定用電極:ガラス複合電極GST−5721C)によって測定したものをいう。
但し、硫酸を過剰に加えると硫酸の消費量が増加して経済性が損なわれるので最小限の添加に留めることが好ましい。前記の酸化反応が酸性側で進むことから、pHは若干の酸性が好ましく、実際には6.8に設定する。
次に、油田かん水中のヨウ素イオンを酸化させるための酸化剤を添加する。酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
以下に、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムの添加量の設定方法について述べる。
次亜塩素酸ナトリウムの添加目的はヨウ素イオンの酸化であるが、実際のかん水には酸化剤を消費する有機成分が含まれており、この影響を考慮する必要がある。まず比較的影響の少ない、油分を含まないかん水についての設定方法を述べる。
ヨウ素イオンの酸化については、以下に述べるように分子状ヨウ素の生成を経てポリヨウ素イオンが生成されることが望ましい反応である。
I−+H++NaClO→1/2I2+NaCl+H2O (反応−1)
I−+I2 →I3 − (反応−2)
I3 −+I2 →I5 − (反応−3)
ここで、次亜塩素酸ナトリウムの添加量が少ないと、(反応−2)や(反応−3)が進まないために、目的とするポリヨウ素イオンが生成されない。本発明者らの経験的な知見から、後段の吸着工程を効率的に進ませるためにはかん水中のヨウ素イオンの当量数の70%以上の次亜塩素酸ナトリウムを添加することが必要であることを見出した。
I−+I2 →I3 − (反応−2)
I3 −+I2 →I5 − (反応−3)
ここで、次亜塩素酸ナトリウムの添加量が少ないと、(反応−2)や(反応−3)が進まないために、目的とするポリヨウ素イオンが生成されない。本発明者らの経験的な知見から、後段の吸着工程を効率的に進ませるためにはかん水中のヨウ素イオンの当量数の70%以上の次亜塩素酸ナトリウムを添加することが必要であることを見出した。
一方、次亜塩素酸ナトリウムの添加量が過剰の場合には、以下の反応で次亜ヨウ素酸が生成すると考えられる。
I−+H++NaClO→NaIO+Cl−+H+ (反応−4)
次亜ヨウ素酸が生成した場合にも、後段の吸着工程が効率的に進まない。本発明者らの経験的な知見から、次亜塩素酸ナトリウムの添加当量数はかん水中のヨウ素イオンの当量数の120%以下とすることが望ましいことを見出した。
次亜ヨウ素酸が生成した場合にも、後段の吸着工程が効率的に進まない。本発明者らの経験的な知見から、次亜塩素酸ナトリウムの添加当量数はかん水中のヨウ素イオンの当量数の120%以下とすることが望ましいことを見出した。
また、次亜塩素酸ナトリウムの過剰量を合理的に決定する方法として酸化還元電位滴定もある。これはかん水の一定量に一定濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加しながら、かん水の酸化還元電位を測定するもので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を増加させるに従って、前記、反応−1、反応−2、反応−3が起こり、電位が上昇する。ヨウ素イオンから好ましいポリヨウ素イオンを生成する電位は540〜590mV(例えば550mV程度)であり、この範囲の電位に保つことが好ましい。
次に、次亜塩素酸ナトリウムと有機物との反応について述べる。
かん水中に含まれる油分以外の有機物は、代表的なものとしてはフミン質などが知られているが、これ以外にも種々の成分が含まれている。これらの有機物の量はCOD(化学的酸素要求濃度)として検出可能である。酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムはこれらの有機成分と反応する。しかし、CODは、酸化力の強い過マンガン酸カリウムの酸化当量数で表されるので、次亜塩素酸ナトリウムとの反応では、CODで表される有機成分の一部と反応する。本発明者らの実験では、油分を含まないかん水中には通常、50〜65mg/LのCODが含まれており、これに過剰量の次亜塩素酸ナトリウムを加えて酸化処理を行うと、CODは45〜55mg/Lに減少することが分かった。いくつかのかん水について次亜塩素酸ナトリウムを添加した際のCODの減少量について整理したところ、CODの0.07〜0.17が次亜塩素酸ナトリウムとの反応で消費されることが分かった。
本発明者らは、油分を含まないかん水について酸化還元特性を調べることにより最適な次亜塩素酸ナトリウムの添加量を求めた。先に述べた最適電位(540〜590mV)を実現させるためには、次亜塩素酸ナトリウムの当量数とかん水中のヨウ素イオン当量数の比(Rox)が1.25〜1.75にあることを見出した。
この結果から、かん水中のヨウ素イオン濃度Cid(90mg/L)、COD濃度Coc(60mg/L)、ヨウ素の原子量Mid(=127)、酸素の原子量Mox(=16)を用いて整理したところ、最適添加範囲は、下記式でまとめられることが分かった。
0.7+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)
油分を含むかん水の場合には、多量の有機物が含まれている。有機物は非水溶性の油分のほかにも、CODで表される水溶性有機物が含まれている。本発明者らは油田かん水中の固形状油分を取り除いた後、CODの分析を行ったところ、油田かん水のCOD値は、油分を含まないかん水の2〜3倍あることが分かった。従って、油分を含むかん水に次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、これらの有機物と反応して、消費される量が多いことが予想された。本発明者らの検討では、次亜塩素酸ナトリウムと非水溶性の油分との反応はほとんどないので、CODで表される有機成分との反応は、油分を含まないかん水と同様に扱えることが分かった。
0.7+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)
油分を含むかん水の場合には、多量の有機物が含まれている。有機物は非水溶性の油分のほかにも、CODで表される水溶性有機物が含まれている。本発明者らは油田かん水中の固形状油分を取り除いた後、CODの分析を行ったところ、油田かん水のCOD値は、油分を含まないかん水の2〜3倍あることが分かった。従って、油分を含むかん水に次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、これらの有機物と反応して、消費される量が多いことが予想された。本発明者らの検討では、次亜塩素酸ナトリウムと非水溶性の油分との反応はほとんどないので、CODで表される有機成分との反応は、油分を含まないかん水と同様に扱えることが分かった。
本発明者らの実験では、油分を含むかん水は1種類しか得られなかったが、このかん水中には、150mg/LのCODが含まれており、これに過剰量の次亜塩素酸ナトリウムを加えて酸化処理した後にCODを分析したところ、130mg/Lに減少しており、次亜塩素酸ナトリウムとの反応で、CODが0.13減少したことが分かった。従って、油分を含むかん水についても、油分を含まないかん水で得られた知見、即ちCODで表される有機成分の0.07〜0.17が次亜塩素酸ナトリウムとの反応で消費されるという考え方が適用できることが分かった。
本発明者らはさらに、油分を含むかん水について酸化還元特性を調べることにより最適な次亜塩素酸ナトリウムの添加量を求めたところ、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数とかん水中のヨウ素イオンの当量数との比(Rox)が3.3〜4.5にあることを見出した。
この結果から、かん水中のヨウ素イオン濃度Cid(=45mg/L)、COD濃度Coc(=150mg/L)、ヨウ素の原子量Mid(=127)、酸素の原子量(=16)を用いて整理したところ、最適添加範囲は下記式でまとめられることが分かった。
0.7+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.13×(Mid/Mox)
従って、油分を含むかん水の場合には、Roxで表される次亜塩素酸ナトリウムの添加量の最適範囲の下限値は、油分を含まないかん水と同様であるが、上限値については油分を含まないかん水よりも若干大きい値となる。この理由は必ずしも明確ではないが、油分を含むかん水の場合にはCOD濃度が高いために、それが次亜ヨウ素酸の生成反応に何らかの影響を与えたものと考えられる。
0.7+(Coc/Cid)×0.1×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.13×(Mid/Mox)
従って、油分を含むかん水の場合には、Roxで表される次亜塩素酸ナトリウムの添加量の最適範囲の下限値は、油分を含まないかん水と同様であるが、上限値については油分を含まないかん水よりも若干大きい値となる。この理由は必ずしも明確ではないが、油分を含むかん水の場合にはCOD濃度が高いために、それが次亜ヨウ素酸の生成反応に何らかの影響を与えたものと考えられる。
油分を含むかん水は地域による差が大きいと予想されるので、これを考慮して次亜塩素酸ナトリウムの添加量の下限値及び上限値を設定する必要がある。前記のようにCODで表される有機成分のうち、0.07〜0.17が次亜塩素酸ナトリウムと反応すると見積もることが妥当なので、Roxは次式を採用する。
0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)
なお、上記ヨウ素イオン濃度は、チオ硫酸ソーダ水溶液を反応液に用いた滴定法によって測定でき、COD濃度(化学的酸素要求濃度)は、過マンガン酸カリウム水溶液を反応液に用いた滴定法(JISK 0102)によって測定できる。また、以下の説明において、0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)をRminで表し、1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)をRmaxで表すこととする。
0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)
なお、上記ヨウ素イオン濃度は、チオ硫酸ソーダ水溶液を反応液に用いた滴定法によって測定でき、COD濃度(化学的酸素要求濃度)は、過マンガン酸カリウム水溶液を反応液に用いた滴定法(JISK 0102)によって測定できる。また、以下の説明において、0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)をRminで表し、1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)をRmaxで表すこととする。
(吸着工程)
前記の操作で前処理を行った後、前処理済みの油田かん水を吸着工程に導入する。吸着工程では陰イオン交換樹脂を用いて油田かん水中のポリヨウ素イオンを吸着させる。ここで、陰イオン交換樹脂としては、ヨウ素の吸着選択率が高いという理由から、4級アンモニウム塩を交換基とする陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。前段の前処理工程で大半が分子状ヨウ素に酸化されたヨウ素はヨウ素イオンと結合してポリヨウ素イオン(I3−、I5−等)となるが、このポリヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる。ここで、陰イオン交換樹脂は、流動層形式の樹脂充填塔(樹脂充填槽)に充填し、油田かん水はこの樹脂充填塔の下部の入口から供給し、ディストリビュータと言われる均一分散用の小孔を通過させて上方に流す。これにより、充填された陰イオン交換樹脂は油田かん水の上昇液流速に伴い浮遊し、塔の全域で陰イオン交換樹脂の流動した状態が達成される。このように陰イオン交換樹脂を流動状態とすることにより、油田かん水中の固形分の閉塞が十分に防止されることになる。
前記の操作で前処理を行った後、前処理済みの油田かん水を吸着工程に導入する。吸着工程では陰イオン交換樹脂を用いて油田かん水中のポリヨウ素イオンを吸着させる。ここで、陰イオン交換樹脂としては、ヨウ素の吸着選択率が高いという理由から、4級アンモニウム塩を交換基とする陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。前段の前処理工程で大半が分子状ヨウ素に酸化されたヨウ素はヨウ素イオンと結合してポリヨウ素イオン(I3−、I5−等)となるが、このポリヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる。ここで、陰イオン交換樹脂は、流動層形式の樹脂充填塔(樹脂充填槽)に充填し、油田かん水はこの樹脂充填塔の下部の入口から供給し、ディストリビュータと言われる均一分散用の小孔を通過させて上方に流す。これにより、充填された陰イオン交換樹脂は油田かん水の上昇液流速に伴い浮遊し、塔の全域で陰イオン交換樹脂の流動した状態が達成される。このように陰イオン交換樹脂を流動状態とすることにより、油田かん水中の固形分の閉塞が十分に防止されることになる。
このとき、陰イオン交換樹脂が常に流動できるように油田かん水の流量を制御しながら、一定時間、油田かん水と陰イオン交換樹脂とを接触させることにより油田かん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させることが好ましい。また、樹脂充填塔としては、その流路断面積が下部から上部に向かって増大するように設計されるものが用いられる。ここで、流路断面積とは、流体が流れる筒状物の水平断面で筒の内壁によって囲まれる面積をいう。
そして、この樹脂充填塔においては、前処理済みの油田かん水を樹脂充填塔の下方から上方に向けて流し、樹脂充填槽の最上部で油田かん水の上昇液流速Ut(m/h)を下記式:
10<Ut<20
で表される範囲とすることが好ましい。ここで、最上部とは、液がオーバーフローする部分をいう。また上昇流速Utとは、樹脂充填塔に導入される油田かん水の流量を上記流路断面積で除した値をいう。
10<Ut<20
で表される範囲とすることが好ましい。ここで、最上部とは、液がオーバーフローする部分をいう。また上昇流速Utとは、樹脂充填塔に導入される油田かん水の流量を上記流路断面積で除した値をいう。
上記のようにすることにより、吸着塔の槽内全域で樹脂が流動すると共に、最上部では樹脂が流出しない状態が実現できる。
この吸着操作に際しては、陰イオン交換樹脂に対するヨウ素の吸着量(吸着容量)を増大させることが利用効率を高める上で重要であるが、ポリヨウ素イオンとして吸着させた場合には陰イオン交換樹脂1リットル当りのヨウ素吸着量を数百グラムにまで高めることが可能である。
その後、ポリヨウ素イオンを吸着した陰イオン交換樹脂を樹脂充填塔から取り出し、ポリヨウ素イオンが吸着された陰イオン交換樹脂についてヨウ素溶離操作を行う。
ヨウ素の溶離は2段階で行われる。まずポリヨウ素イオンを還元してヨウ素イオンとした後にヨウ素イオンを塩素イオン等の他のイオンに置換する。ポリヨウ素イオンの還元に使用される液としては例えば亜硫酸ソーダ又は重亜硫酸ソーダが用いられ、他のイオンへの置換に使用される液としては、例えば食塩水が用いられる。
溶離されたヨウ素イオンに酸化剤を加えることで粗ヨウ素を製造する。このとき使用する酸化剤としては、例えば塩素ガスなどが用いられる。
その後、粗ヨウ素を濃縮精製して製品であるヨウ素を得る。
前記溶離操作では同時に陰イオン交換樹脂の再生を行う。再生された陰イオン交換樹脂はヨウ素溶離装置から抜き出した後、樹脂充填塔に移し、再度吸着操作を行う。このような、吸着、溶離の操作を繰り返し行うことで、油田かん水中のヨウ素が低濃度であっても、油田かん水からヨウ素を高効率で製造できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
以下に米国で産出した油田かん水を用いてヨウ素製造を行った例を示す。参考までに、千葉県で産出された油分を含まないかん水を用いたヨウ素製造実験の結果も合わせて示す。
油田かん水を用いたヨウ素製造ではかん水の前処理工程、樹脂吸着工程、ヨウ素溶離工程の3つの工程を実施した。
前処理として、
1)かん水中の固形状油分の除去、
2)かん水pHの調整、
3)酸化剤の添加、
を行った。
1)かん水中の固形状油分の除去、
2)かん水pHの調整、
3)酸化剤の添加、
を行った。
固形状油分の除去方法としては静置分離法を採用し、内容積1000Lの容器に油田かん水を満たし30分間静置した後、水面に浮いた固形分を除去した。そして、固形状油分を除去したかん水について有機物の分析を行った。同時に千葉産出かん水についても分析したが、これについては固形状油分除去の処理は行わなかった。得られたかん水の分析値を表1に示す。
なお、酸化還元電位特性を明らかにするために、油田かん水及び千葉産出かん水の両方のかん水についてpHを6.8に合わせてORP滴定試験を行った。ORP測定試験は、pH測定に用いた測定器と同じもの(東亜電波工業製、イオン・pHメーター IM−55G、ORP測定用電極:白金複合電極PST−5721C)を用いて行った。この結果を表2及び図1、並びに表3及び図2に示す。なお、図1において、横軸に平行な2本の点線はそれぞれ540mV、590mVを表すものである。
表2(図1)及び表3(図2)に示すように、酸化還元電位が550mV程度となるためには、千葉産出かん水についてはヨウ素イオンの当量数の1.3倍の次亜塩素酸ナトリウムの添加量が必要なのに対して、油田かん水については次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数をヨウ素イオンの当量数の3.5倍に設定する必要があることが分かった。従って、以下の油田かん水吸着試験に際しては、当量数の4倍の次亜塩素酸ナトリウムを添加した。
(実施例1)
上記のようにして固形状油分を除去した油田かん水について、pHを6.8に調整した。その後、ヨウ素イオンの当量数の4倍の当量数の次亜塩素酸ナトリウムを添加した。即ち、この油田かん水の吸着前の酸化剤の当量数と、油田かん水中のヨウ素イオンの当量数の比Roxを4.0とした。このときの次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、ミリ当量/hの単位に換算すると、220.5であった。なお、表1に示す油田かん水についての分析結果より、
Cid=45mg/l、
Coc=150mg/l、
であり、また、Mid=127、Mox=16である。これより、
Rmin=2.552、
Rmax=5.698
であり、油田かん水の吸着試験前の酸化剤の当量数と、油田かん水中のヨウ素イオンの当量数の比Rox(=4.0)は、上記2つの数値の間にあることが分かった。
上記のようにして固形状油分を除去した油田かん水について、pHを6.8に調整した。その後、ヨウ素イオンの当量数の4倍の当量数の次亜塩素酸ナトリウムを添加した。即ち、この油田かん水の吸着前の酸化剤の当量数と、油田かん水中のヨウ素イオンの当量数の比Roxを4.0とした。このときの次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、ミリ当量/hの単位に換算すると、220.5であった。なお、表1に示す油田かん水についての分析結果より、
Cid=45mg/l、
Coc=150mg/l、
であり、また、Mid=127、Mox=16である。これより、
Rmin=2.552、
Rmax=5.698
であり、油田かん水の吸着試験前の酸化剤の当量数と、油田かん水中のヨウ素イオンの当量数の比Rox(=4.0)は、上記2つの数値の間にあることが分かった。
そして、この次亜塩素酸ナトリウムを添加した後の油田かん水について以下のようにして吸着試験を行った。なお、吸着試験においては陰イオン交換樹脂として、三菱化学社製の陰イオン交換樹脂(ダイアイオンSA−10A)を用いた。この樹脂125mLを流動層形式の樹脂充填塔に充填した。樹脂充填塔の高さは80cmの透明ポリ塩化ビニール製の円筒であり、塔下部の内径は2.0cmであるが上部内径は2.5cmと太くなっている。底部には0.5mmの細かい穴を開けた目皿板が取り付けてある。
まず次亜塩素酸ナトリウムが既に添加され、pHが6.8に調整された油田かん水を温度15〜25℃に保ちながら、定量ポンプで4.9L/hの流量で樹脂充填塔に供給した。油田かん水の供給は、樹脂充填塔の下部にある供給口より行った。これにより、油田かん水は前記目皿板を通過した後、上方に流れ、最上部に取り付けたオーバーフロー口から排出された。このとき、最上部の流速Utは10m/hであった。
油田かん水の流入とともに樹脂は浮遊し、層高が増大した。液流入前の樹脂層高は40cmであったが、液流入後は70cmとなった。
流動層の入口、出口のヨウ素イオン濃度を測定したところ、入口:45mg/L、出口:10mg/Lであり、この状態で連続的に液を72時間流し続けることができた。
吸着試験後は、陰イオン交換樹脂を樹脂充填塔から取り出し、陰イオン交換樹脂からポリヨウ素イオンの溶離を行った。このとき、ポリヨウ素イオンの溶離においては、ポリヨウ素イオンの還元に使用する液として亜硫酸ソーダを使用し、ヨウ素イオンの他のイオンへの置換に使用される液としては食塩水を使用した。その結果、ヨウ素を11.3g回収することができた。ヨウ素の回収率は、使用した油田かん水中に含まれるヨウ素量15.9gに対し71.2%であった。
なお、実施例1に用いた各種パラメータの数値をまとめた。結果を表4に示す。
実施例1と同じ油田かん水(ヨウ素イオン含量45mg/L)を用いて、固形状の油分を除去しないまま樹脂吸着試験を行った。まずかん水に希硫酸を加え、pHを6.8に調整した後、ヨウ素イオンの当量数の4倍の当量数の次亜塩素酸ナトリウムを添加した。このとき、次亜塩素酸ナトリウムの添加量は220ミリ当量/hであった。
そして、この次亜塩素酸ナトリウムを添加した後の油田かん水について、実施例1と同様にして流動層形式の樹脂充填塔を用いて吸着試験を行った。
このとき、油田かん水の流入とともに樹脂は浮遊し、層高は液流入前の40cmから70cmに増大した。
流動層の入口、出口のヨウ素イオン濃度を測定したところ、入口:45mg/L、出口12mg/Lであった。通液開始時点では樹脂が安定して浮遊していることが確認されたので、液を4.9L/hの流量で流し続けた。液の流量調節はオリフィス開度の調整で行った。すなわちかん水を一旦床面より2mの高さのヘッドタンクに揚水し、ヘッドタンクと流動層との落差を一定に保ちながら、流動層入口部分に取り付けたコックの開度を調節することで流量を所定流量に合わせた。しかしながら、通液後48時間経過した時点で流量を測定したところ、4.5L/hに低下していることが分かり、さらに運転を続けたところ、72時間では流量が4.0L/hにまで低下した。流量の低下は、実施例1では見られなかった現象である。また同時に、樹脂の流動が悪くなり、一部では浮遊していない粒子も確認された。
また、72時間後の出口のヨウ素イオン濃度は15mg/Lであり、初期より上昇していることから、樹脂自体の吸着能力の低下も予想された。ここで、かん水の通液を停止して流動層内部の樹脂の状態を調べてみた。その結果、一部の樹脂には樹脂表面に固形状の油が付着していた。また数個の樹脂がお互いに固着している状況も見られた。この結果から判断すると、油田かん水中の固形状油分を除去することなく樹脂吸着操作を行うと、比較的短時間で樹脂同士の固着が起こり、樹脂の均一流動が阻害され、その結果として、吸着性能の低下などの劣化現象が起こることが分かった。
(比較例2)
45mg/lのヨウ素イオンを含有している油田かん水に対してヨウ素イオンの吸着を行わせる前に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数と油田かん水中のヨウ素イオンの当量数(ミリ当量/h)との比(Rox)を、Rmin(=2.552)より小さい2.0とした以外は実施例1と同様にしてヨウ素の回収を行った。
(比較例2)
45mg/lのヨウ素イオンを含有している油田かん水に対してヨウ素イオンの吸着を行わせる前に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数と油田かん水中のヨウ素イオンの当量数(ミリ当量/h)との比(Rox)を、Rmin(=2.552)より小さい2.0とした以外は実施例1と同様にしてヨウ素の回収を行った。
流動層の入口、出口のヨウ素イオン濃度を測定したところ、入口:45mg/L、出口:35mg/Lであり、この状態で連続的に液を72時間流し続けた。
吸着試験後は、実施例1と同様にして陰イオン交換樹脂からポリヨウ素イオンの溶離を行った。その結果、ヨウ素は3gしか回収できず、ヨウ素の回収率は、使用した油田かん水中に含まれるヨウ素量15.9gに対し18.9%であった。
なお、比較例2に用いた各種パラメータの数値をまとめた。結果を表4に示す。
(比較例3)
45mg/lのヨウ素イオンを含有している油田かん水に対してヨウ素イオンの吸着を行わせる前に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数と油田かん水中のヨウ素イオンの当量数(ミリ当量/h)との比(Rox)を、Rmax(=5.698)より大きい6.0とした以外は実施例1と同様にしてヨウ素の回収を行った。
45mg/lのヨウ素イオンを含有している油田かん水に対してヨウ素イオンの吸着を行わせる前に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の当量数と油田かん水中のヨウ素イオンの当量数(ミリ当量/h)との比(Rox)を、Rmax(=5.698)より大きい6.0とした以外は実施例1と同様にしてヨウ素の回収を行った。
流動層の入口、出口のヨウ素濃度を測定したところ、入口:45mg/L、出口:30mg/Lであり、この状態で連続的に液を72時間流し続けた。
吸着試験後は、実施例1と同様にして陰イオン交換樹脂からポリヨウ素イオンの溶離を行った。その結果、ヨウ素は4.5gしか回収できず、ヨウ素の回収率は、使用した油田かん水中に含まれるヨウ素量15.9gに対し28.3%であった。
なお、比較例3に用いた各種パラメータの数値をまとめた。結果を表4に示す。
以上の実施例1の方法によれば、油田かん水から高効率でヨウ素を製造できることが分かった。これに対し、比較例1〜3の方法によれば、油田かん水から高効率でヨウ素を製造できないことが分かった。
Claims (4)
- 油田かん水中のヨウ素イオンを陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程と、
前記陰イオン交換樹脂からヨウ素イオンを溶離させる溶離工程とを含む油田かん水からのヨウ素製造方法であって、
前記吸着工程前に、前記油田かん水を前処理する油田かん水の前処理工程を含み、
前記前処理工程が、
前記油田かん水中の固形状油分を除去する除去工程と、
前記油田かん水のpHを調整するpH調整工程と、
前記油田かん水中のヨウ素イオンを酸化させるための酸化剤を添加してポリヨウ素イオンを得る酸化剤添加工程とを含み、
前記吸着工程が、
前記陰イオン交換樹脂を流動化させながら前記油田かん水を導入し、前記ポリヨウ素イオンを前記陰イオン交換樹脂に吸着させるものであり、
前記溶離工程が、
前記陰イオン交換樹脂から前記ポリヨウ素イオンを溶離させることが可能な溶離剤を添加することで前記ポリヨウ素イオンを溶離させるものであり、
前記酸化剤添加工程においては、前記酸化剤の当量数と前記油田かん水中のヨウ素イオンの当量数の比(Rox)が、下記式:
0.7+(Coc/Cid)×0.07×(Mid/Mox)≦Rox≦1.2+(Coc/Cid)×0.17×(Mid/Mox)
(上記式中、Cidは前記油田かん水中のヨウ素イオン濃度(mg/L)、Cocは前記油田かん水中のCOD濃度(mg/L)、Midはヨウ素の原子量、Moxは酸素の原子量を表す)
で表される量となるように前記酸化剤を添加することを特徴とする油田かん水からのヨウ素製造方法。 - 前記pH調整工程において、前記油田かん水のpHを6.5〜7.0に調整することを特徴とする請求項1に記載の油田かん水からのヨウ素製造方法。
- 前記酸化剤添加工程で添加する酸化剤として、次亜塩素酸ナトリウムを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の油田かん水からのヨウ素製造方法。
- 前記吸着工程において、前記陰イオン交換樹脂を充填する装置として、流路断面積が下部から上部に向かって増大するように設計される流動層形式の樹脂充填槽を用い、前記油田かん水を前記樹脂充填槽の下方から上方に向けて流し、前記樹脂充填槽の最上部で前記油田かん水の上昇液流速Ut(m/h)を下記式:
10<Ut<20
で表される範囲とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の油田かん水からのヨウ素製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003434644A JP2005187306A (ja) | 2003-12-26 | 2003-12-26 | 油田かん水からのヨウ素製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2009142764A (ja) * | 2007-12-14 | 2009-07-02 | Japan Organo Co Ltd | よう素含有廃液からのよう素回収方法およびよう素回収装置 |
CN110790423A (zh) * | 2019-10-29 | 2020-02-14 | 江苏昌吉利新能源科技有限公司 | 一种含锂卤水脱色除杂工艺 |
JP2020044457A (ja) * | 2018-09-14 | 2020-03-26 | 株式会社東芝 | 水処理装置 |
WO2024202848A1 (ja) * | 2023-03-27 | 2024-10-03 | 三菱瓦斯化学株式会社 | ヨウ素の吸着方法 |
-
2003
- 2003-12-26 JP JP2003434644A patent/JP2005187306A/ja active Pending
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