JP2005179811A - 月桃抗菌紙とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】書類や書籍、衣類などの物品が劣化するのを抑制し保護する保護紙に関し、月桃の茎を多く使用した月桃紙又は月桃紙層と葉を多く使用した月桃紙又は月桃紙層を製造し、茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に使用し、葉を多く使用した月桃紙を外側に使用可能とする。
【解決手段】月桃紙を製造する際に、月桃繊維は蒸解液による煮込み処理を行わずに、生の繊維の状態で月桃紙の製造に使用することによって、抗菌性の低下を防止する。また、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙とを製造し、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して包装その他の用途に使用することで、抗菌効果を向上させ、かつ美粧効果も高めることが可能となる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、書類や書籍、衣類などの物品が劣化するのを抑制し保護する保護紙に関し、特に防虫や防黴、抗菌などの効能に富んだ月桃成分を含有している月桃紙に関する。
月桃の繊維をパルプと混ぜて抄紙してなる月桃紙が知られている。月桃は防虫や防黴、抗菌などの効果があるため、各種保護紙の原料の一部として月桃を利用することで、防虫や防黴、抗菌などの効果のある月桃紙が実現できる。なお、月桃は、ショウガ科の多年草で、九州南部からマレーシア地域まで広範に分布し、原野などにも自生する。沖縄地方の方言名でサンニンとも言う。タイリン月桃、フイリ月桃、タイワン月桃など、種類も多い。
このような月桃の防虫や防黴、抗菌などの効果に着目し、特開2002−187114号に記載のように、古紙を解繊した古紙解繊ファイバーと、月桃の茎を解繊した月桃解繊ファイバーの混合物を主成分とするボード原料が、バインダーの存在下にボード状に成形されている月桃含有古紙ボードが提案されている。
特開2002−187114号
しかしながら、前記のような従来の月桃繊維を含有した月桃含有月桃紙は、単一種類の月桃繊維を原料とした単一種類の月桃紙しか得られず、結果的に、用途も単一種類に限定されてしまう。
ところが、本発明の発明者が研究を重ねた結果、月桃紙として使用する際の効能は、月桃の部位によって異なることが判明した。すなわち、月桃紙の原料として使用するために、表1、表2のように、紙にした状態では、原料の葉の部分より茎の部分の方が、抗菌効果が大きいことを究明した。
Figure 2005179811
表1は、月桃の茎と葉の繊維を用いた場合月桃紙における大腸菌に対する抗菌試験であり、原料パルプのうち、Aは茎のみを用いた月桃紙であり、18時間後の菌数は最も少なくなっている。Cは茎と葉の両方の繊維を用いた月桃紙であり、18時間後の菌数は、2番目に少なくなっている。これに対し、葉のみを用いた月桃紙B、D、Eの場合は、18時間後の菌数が多く、抗菌効果が弱いことを示している。その結果、抗菌防臭効果の欄では、茎のみを用いた月桃紙Aと、茎と葉の両方を用いた月桃紙Cのみは、「効果あり」となっているのに対し、葉のみを用いた月桃紙B、D、Eの場合は、「効果なし」という判定結果となっている。なお、試料Cにおける茎の繊維と葉の繊維との使用比率は4対1である。
Figure 2005179811
表2は、ブドウ球菌に対する抗菌試験であるが、大腸菌に対する試験の場合と全く同じ傾向を示している。なお、表1、表2とも、抗菌試験のみの結果であって、防臭などの試験結果は含まれていない。
以上の試験結果からも明らかなように、月桃の茎のみ又は茎の部分を多く使用した月桃紙の方が、葉の繊維のみを使用した月桃紙より、抗菌防臭などの効能が優れている。しかし、美観としては、葉緑素が残っている葉の部分を多く用いた方が優れている。
そこで本発明は、書類や書籍、衣類その他の物品を包装したりして保護する場合に、防虫などの効能の大きい茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に使用し、人目につきやすい外側には、美観に優れている葉を多く使用した月桃紙を使用可能とすることに着目した。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、月桃の茎を多く使用した月桃紙と葉を多く使用した月桃紙又は月桃紙層を製造し、茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に使用し、葉を多く使用した月桃紙を外側に使用可能とすることにある。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求1は、月桃の任意の部位の繊維を含有する月桃紙を製造する際に、月桃繊維は蒸解液による煮込み処理を行わずに、生の繊維の状態で用いることを特徴とする月桃抗菌紙の製造方法である。
製紙に際してのパルプ化には、か性ソーダ主体の蒸解液を用いて木材片を高温・高圧下で煮込む必要があるが、月桃の繊維の場合は攪拌のみでパルプ化が可能なため、請求項1のように煮込み処理を実施しないで、生のままの繊維を用いることによって、月桃特有の抗菌や防虫、防黴などの効能が消失するのを抑制できる。その結果、本来月桃が含有する機能性、特に抗菌効果を損なわずに、書類などの保存を実現できる。
請求項2は、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙とを製造し、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して包装その他の用途に使用可能としたことを特徴とする月桃抗菌紙である。茎を多く使用した月桃紙と葉を多く使用した月桃紙とは、段ボールのように一体であってもよいし、別体であってもよい。
本発明の発明者の研究によると、月桃の葉の繊維を使用した月桃紙よりも、茎の部分の繊維を使用した月桃紙の方が、抗菌性、防虫、防黴などの効能が高くかつ持続性があることが判明した。しかし、美粧性の点では、葉緑素の多く残る葉の繊維を用いた月桃紙が優れている。そこで、請求項2のように、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙の2種類を製造し、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙側を被保護物側に配置して、抗菌、防虫、防黴などを実現し、葉を多く使用した月桃紙側を外側に配置して、美粧効果を高めることが可能となる。したがって、抗菌や防虫、防黴と美粧効果の両方を実現できる。
請求項3は、前記の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙とが、直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層された構造になっていることを特徴とする請求項2に記載の月桃抗菌紙である。一体化は、抄紙の最終工程で行なってもよいし、完成した後の月桃紙を積層して一体化してもよい。
このように、前記の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙とが、直接一体に積層された構造の月桃抗菌紙によると、単一の月桃紙のみを用いて、茎を多く使用した月桃紙側を被保護物側にして包装などに使用できる。また、スペーサ層を介在させないで、薄い月桃紙にすると、使用や取り扱いが簡便になる。用途に応じて厚手の月桃紙が必要な場合は、間にスペーサ層を介在させることで、容易に実現できる。
請求項4は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙が4層構造になっており、その被保護物側の第1層目は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層とし、第2層目以下は、月桃を含有する月桃紙層及び/又は月桃を含有しない非月桃紙層を有していることを特徴とする月桃抗菌紙である。
このように、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙は4層構造になっている。そして、その被保護物側の第1層目だけは、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層とする。第2層目以下は、月桃を含有する月桃紙層及び/又は月桃を含有しない非月桃紙層を有している。なお、第2層目以下の月桃紙層は、茎や葉の分量などは任意であり、葉の繊維のみの月桃紙層でもよい。
結局、被保護物側の第1層目だけは、茎のみ又は葉より茎を多く使用して抗菌性を確保しておけば、第2層目以下は任意の組成にできるので、用途に応じて種々の層構成にできる。例えば、第2層目以下にも抗菌性を持たせたければ、茎のみ又は茎を多く用いた月桃紙層にすればよいし、第1層目の抗菌力だけで足りるのであれば、第2層目以下は、月桃を含まない、普通のパルプ紙層にして、コストダウンを図ってもよい。あるいは、葉を多く使用した月桃紙層にしてもよい。
請求項5は、表原紙と裏原紙との間に中芯を挟んでなる段ボールにおいて、表原紙は、月桃の茎より葉を多く使用した月桃紙とし、裏原紙は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙としてなることを特徴とする月桃抗菌段ボールである。
このように、段ボールの場合に、表原紙は、月桃の茎より葉を多く使用した月桃紙とするので、外観の美粧性が向上する。また、裏原紙は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙とするので、抗菌、防虫、防黴などの機能性が高く、内部の被保護物を効果的に保護し保存できる。
請求項6は、月桃抗菌紙の製造方法であり、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層と、茎より葉を多く使用した月桃紙層を有する月桃抗菌紙を製造する際に、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層と茎より葉を多く使用した月桃紙層とを別々に抄紙し、その後の工程で、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙層と葉を多く使用した月桃紙層とを、直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層して一体化し、1枚の紙とすることを特徴とする月桃抗菌紙の製造方法である。茎を多く使用した月桃紙層と、葉を多く使用した月桃紙層とを直接重ねた状態で、機能性の無い通常のパルプ紙層の片側に積層する製法も可能であり、また機能性の無い通常のパルプ紙層を挟んで、被保護物側は、茎を多く使用した月桃紙層とし、外側は、葉を多く使用した月桃紙層とすることもできる。
このように、抄紙段階では、茎を多く使用した月桃紙層と葉を多く使用した月桃紙層とを別々に抄紙し、その後の工程で、両者を直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層して一体化するので、1枚の保護紙において、被保護物側は、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い保護面となり、外側は美粧性の高い月桃抗菌紙を実現できる。したがって、衣類や食品、古文書や古物、その他の物品を保存する用途に手軽に使用可能となる。
請求項7は、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙との少なくとも2枚を用い、茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して包装その他の用途に使用することを特徴とする月桃抗菌紙の使用方法である。
このように、茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙との2枚の紙を用い、茎を多く使用し、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い月桃紙を被保護物側に配置するので、被保護物を効果的に保護保存できる。また、葉を多く使用し、美粧性に優れた月桃紙を外側に配置するので、包装などの際の美観を維持できる。
請求項8は、書類や書籍その他を保存する保管手段において、月桃の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙側を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙側を外側に配置する構造としたことを特徴とする月桃抗菌紙を使用した保管手段である。
このように、書類や書籍その他を保存する保管手段において、月桃の茎を多く使用し、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い月桃紙側を被保護物側に配置し、葉を多く使用し、美粧性の高い月桃紙側を外側に配置可能としたため、書類や書籍その他を保存する場合に、保存性の実現と外観の美粧性の両方の目的を実現できる。
以上の各請求項において、月桃紙又は月桃紙層は、月桃の茎や葉のみを原料とするのではなく、通常のパルプや古紙の繊維などと混ぜて製紙することが、機械的特性を維持する上でも、原料の確保の上でも効果的である。このとき、月桃紙の繊維は、7〜20%程度が適量とされている。
請求項1のように、月桃紙を製造する際に、月桃繊維は煮込み処理をしないで、生のまま用いることによって、月桃特有の防虫や防黴、抗菌などの効能が消失するのを抑制できる。その結果、本来月桃が含有する機能性、特に抗菌効果を損なわずに、書類などの保存を実現できる。
請求項2のように、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙の2種類を製造し、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置して、抗菌、防虫、防黴などを実現し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して、美粧効果を高めることが可能となる。したがって、抗菌や防虫、防黴と美粧効果の両方を実現できる。
請求項3のように、前記の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙とが、直接一体に積層された構造の月桃抗菌紙によると、単一の月桃紙のみを用いて、茎を多く使用した月桃紙側を被保護物側にして包装などに使用できる。また、スペーサ層を介在させないで、薄い月桃紙にすると、使用や取り扱いが簡便になる。用途に応じて厚手の月桃紙が必要な場合は、間にスペーサ層を介在させることで、容易に実現できる。
請求項4のように、被保護物側の第1層目だけは、茎のみ又は葉より茎を多く使用して抗菌性を確保しておけば、第2層目以下は任意の組成にできるので、用途に応じて種々の層構成にできる。
請求項5のように、段ボールの場合に、表原紙は、月桃の茎より葉を多く使用した月桃紙とするので、外観の美粧性が向上する。また、裏原紙は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙とするので、抗菌、防虫、防黴などの機能性が高く、内部の被保護物を効果的に保護し保存できる。
請求項6のように、抄紙段階では、茎を多く使用した月桃紙層と葉を多く使用した月桃紙層とを別々に抄紙し、その後の工程で、両者を直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層して一体化するので、1枚の保護紙において、被保護物側は、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い保護面となり、外側は美粧性の高い月桃抗菌紙を実現できる。したがって、衣類や食品、古文書や古物、その他の物品を保存する用途に手軽に使用可能となる。
請求項7のように、茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙との2枚の紙を用い、茎を多く使用し、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い月桃紙を被保護物側に配置するので、被保護物を効果的に保護保存できる。また、葉を多く使用し、美粧性に優れた月桃紙を外側に配置するので、包装などの際の美観を維持できる。
請求項8のように、書類や書籍その他を保存する保管手段において、月桃の茎を多く使用して、抗菌、防虫、防黴などの機能性の高い月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用して、美粧性の高い月桃紙を外側に配置可能としたため、書類や書籍その他を保存する場合に、保存性の実現と外観の美粧性の両方の目的を実現できる。
次に本発明による月桃抗菌紙とその製造方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を明する。図1は、本発明による月桃抗菌紙の製造方法を工程順に示すフローチャートである。先ず、原料として月桃の葉は用いないで茎のみを用いた月桃抗菌紙の製造方法を説明するが、この場合でも、通常のパルプに7〜20%の割合で混ぜて用いる。また、1枚の紙は数層に積層して製造されるが、第1実施形態では、1層のみ月桃含有層とし、他の層は通常パルプ層とする。
ステップS1において、通常の木材チップを用意し、ステップS2でか性ソーダ主体の蒸解液を用いて高温・高圧下で煮込んだ後、ステップS3において洗浄し、さらに濾過してチリなどの異物を除去する。次いで、ステップS4で漂白すると、パルプ化工程が完了し、通常のパルプが完成する。
一方、s1〜s3の工程において、月桃繊維を用意する。まず、ステップs1では月桃の茎のみを用い、次のステップs2で、月桃の茎のみを圧搾し粗粉砕し、さらに微粉砕することによって、月桃の生の繊維(含水率40%程度)を採取すると、ステップs3のような月桃の生繊維が完成する。
次いで、ステップS5において、パルパーを用いて、通常のパルプと月桃生繊維と水を混ぜて混合する。月桃生繊維の配合割合は7〜20%とする。このとき、染料や薬品混合などの調整工程を経た後、約100倍近い水で薄めたパルプ・月桃繊維混合溶液を、ワイヤーパート上に流して、網上に薄い月桃入りパルプシートを形成することによって抄紙する(ステップS6)。こうして抄紙された月桃入りパルプシートを、ステップS7の積層工程において、従来の手法で抄紙したパルプのみのシートと数層に積層して、1枚の月桃紙にする。
このとき、例えばパルプシート3層に対し月桃入りパルプシートを1だけ重ねて4層構造にしてもよいし、パルプシート2層に対し月桃入りパルプシートを2層重ねてもよい。この積層状態のパルプシートをステップS8でローラを通過させてプレスし、水分を搾り出す。次いで、ステップS9で乾燥処理すると、月桃抗菌紙の仕上がりであり、ステップS10で巻き取っておいて、用途に応じて、以後の工程に搬送する。
図2は、ステップS10で巻き取られた月桃抗菌紙の断面図であり、表側の第1層が前記のような月桃の茎の繊維の入った月桃入りパルプシートから成る月桃入りパルプ層になる。第2層から第4層は、前記のような通常のパルプシートからなるパルプ層である。この月桃含有保護紙は、月桃の茎の繊維の入った月桃紙の状態で、単独で使用してもよいが、葉のみの繊維や葉と茎の両方の繊維の入った月桃紙と併用するのがよい。あるいは、葉のみの繊維や葉と茎の両方の繊維の入った月桃紙と重ねて一体化することによって表裏とも月桃紙にしたり、表裏が月桃紙から成る段ボールにしてもよい。
段ボールにする場合は、第2層から第4層は段ボール原紙となる。なお、この第2層から第4層は、古紙を使用してもよいし、バージンのパルプを用いてもよい。第4層は、段ボールを製造する際に中芯との接着面となるので、滑らかな面にしておく。
次に、月桃の葉と茎の両方の繊維の入った月桃紙を製造する場合は、前記のステップs1の工程で、原料として、月桃の葉と茎を両方を用意する。そして、前記のステップs1からステップs3の工程と同様にして、葉と茎を混ぜて粗粉砕・微粉砕し、月桃の葉と茎の繊維(含水率40%程度)を採取して、パルパーで通常パルプと水と混ぜて攪拌してなる月桃入りパルプ溶液をワイヤーパート上に流して、月桃の葉と茎入りのパルプシートを抄紙する。
この場合も、この月桃の葉と茎入りのパルプシートを、通常のパルプシートとステップS7で積層した後、ステップS8でローラプレスして、水分を除去し、乾燥処理すると、月桃の葉と茎入りの月桃紙が完成し、ステップS10で巻き取っておく。この月桃の葉と茎入りの月桃紙を示すと図3のとおりである。すなわち、表側の第1層が、前記のような月桃の葉と茎の繊維入りパルプシートから成る月桃入りパルプ層になる。ただし、月桃の茎の繊維より葉の繊維を多く使用する。第2層から第4層は、通常のパルプシートからなるパルプ層である。この月桃抗菌紙も、単独で使用してもよいが、図2のような月桃の茎とパルプの入った月桃紙と併用するのがよい。あるいは、茎の繊維の入った月桃紙と重ねて一体化することによって段ボールなどを製造してもよい。段ボールにする場合は、第2層から第4層は段ボール原紙とし、第4層を中芯と接着する。
図3のような1層構造に代えて、図4のような2層構造を採用することもできる。すなわち、表側となる第1層は、月桃の葉の繊維と通常のパルプが混在した層とし、第2層は月桃の茎の繊維と通常のパルプが混在した層とする。このように、第1層には、月桃の茎の繊維は入れず、葉の繊維のみを入れた構成にすると、月桃の葉の緑色を強調した外観となる。なお、この第1層には、月桃の茎の繊維を多少混在させることもできる。
段ボールを製造する場合は、図3、図4のような、葉のみ又は葉と茎入りの月桃紙を表側に配置し、図2のような、月桃の茎入りの月桃紙を裏側に配置して、間にスペーサーとして中芯を挟んで接着し、一体化する。前記のように、通常のパルプを用いて抄紙する場合は、蒸解液を用いて煮込むのに対し、本発明によって月桃の繊維を用いる場合は、高温・高圧下で煮る工程を経ないので、月桃本来の抗菌や防黴、防虫などの効能が低下するのを抑制でき、また月桃の葉や茎の自然な色が褪色するのも抑制できる。
図5は、ステップS11の段ボール化の手法を示す断面図であり、表側に前記のようにして製造した月桃の葉のみ、又は葉と茎入りの月桃紙Sを配置し、裏側に前記のようにして製造した月桃の茎入りの月桃紙Lを配置する。通常、中芯Cとしては段ボール原紙の波形を用い、コルゲートマシンに装填する。コルゲートマシンでは、表ライナーすなわち図3又は図4の表用月桃紙Sと波板状に加工した中芯Cを貼り合わせて出来た片段に、裏ライナーすなわち図2の裏用月桃紙Lを貼り付けて一体化する。このとき、第4層側を中芯C側とし、月桃紙側すなわち第1層を大気側に露出させることは言うまでもない。こうして出来上がって段ボールは、加工に適した長さに切断し、板の状態で積み重ねる。なお、一体化後に、裏用の月桃紙Lと中芯Cと表用の月桃紙Sとの間の隙間に、木炭や竹炭、サトウキビバガス炭などの微粉炭を吹き込んで接着しておくこともできる。この微粉炭には、月桃抽出液などの防虫液などを含浸させておくとなおよい。或いは、中芯Cの両側にできた空間に月桃抽出液などの防虫液などを吹き込んでおいてもよい。
この段ボールを用いて、文書保存箱などを製作する場合は、打ち抜き機を用いて、所定の形状とサイズに打ち抜くと共に、折り曲げ部を加圧圧縮して、箱状に組立て可能にする。このとき、前記の月桃の茎入りの月桃紙L側が内側、すなわち被保護物側となるように組み立てることは言うまでもない。
段ボールにする場合は、中芯Cを挟んで一体化するが、必要に応じて、通常の紙を挟んだり、通常の紙に木炭や竹炭、サトウキビバガス炭の微粉体を散布した状態で挟んだりすることもできる。この微粉炭にも、月桃抽出液などの防虫液などを含浸させておくのが良い。また、表用の月桃紙Sと裏用の月桃紙Lは、一体化するのでなく、単に重ねた状態の保護紙として販売することもできる。あるいは、使用する際に重ねてもよい。抗菌効果の大きい、裏用の月桃紙Lを被保護物側とすることは言うまでもない。このような用い方をすると、書類などの包装のほか、高級衣類や美術品、骨董品、食品などを保存する際にも有効である。
図4の実施形態では、第4層、第3層の上に、月桃茎のみを含む第2層、月桃葉のみを含む第1層の順に接着した構成になっているが、第2層と第3層を通常の段ボール原紙とし、第4層を、月桃茎のみ又は茎を多く含む月桃紙層にすることもできる。したがって、月桃の葉を多く含む月桃紙層と茎を多く使用した月桃紙層とは、図4のように直接重ねて、表側のみに露出する配置にすることができる。もちろん、この月桃紙層を内側すなわち被保護物側に配置することも可能である。また、段ボール原紙などのスペーサ層を挟んで表側に、月桃の葉を多く含む月桃紙層を配置し、内側すなわち被保護物側に、茎を多く使用した月桃紙層を配置してもよい。結局、3層以上の構造の場合、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層と、茎より葉を多く使用した月桃紙層と、従来のパルプ層とを混在させ、しかもそれぞれの層を任意の位置に配置した実施形態も可能である。
以上の実施形態では、月桃の茎や葉の繊維を用いているが、地中の根の部分すなわち根茎の繊維を利用することも可能である。なお、本発明の月桃抗菌紙のように蒸解液による煮込み処理を省いても、pHの中性状態を維持する上で何ら支障は生じない。したがって、pH調整のための特別な処理などを行う必要もない。
以上の説明や図において、月桃の「茎のみ」又は「葉のみ」の月桃紙あるいは月桃紙層はあり得ず、必ずパルプに例えば7〜20%程度混合して用いるので、葉や茎、根茎、花、枯れた茎や葉などの種々の月桃繊維の中では、「茎の繊維のみ」又は「葉の繊維のみ」という意味である。
以上のように、月桃紙を製造する際に、蒸解液による煮込み処理を行わずに、生の繊維の状態で用い、また、月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙とを製造又は抄紙し、茎側は、高い保存機能を要する被保護物側に配置し、葉側は、美観を要する外側に配置する用い方をするため、月桃紙の保護紙ないし保存紙としての需要が増える。その結果、製紙業界ならびに月桃生産農家の需要が増え、活性化が期待される。
本発明による月桃抗菌紙の製造方法を工程順に示すフローチャートである。 月桃茎の繊維入りの月桃抗菌紙の断面図である。 月桃葉と茎の混合繊維入りの月桃抗菌紙の断面図である。 月桃葉層と茎層を積層した月桃抗菌紙の断面図である。 段ボール化の手法を説明する断面図である。
符号の説明
S 月桃の葉と茎の繊維入りの月桃紙
L 月桃の茎の繊維入りの月桃紙
C 中芯

Claims (8)

  1. 月桃の任意の部位の繊維を含有する月桃紙を製造する際に、月桃繊維は蒸解液による煮込み処理を行わずに、生の繊維の状態で用いることを特徴とする月桃抗菌紙の製造方法。
  2. 月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙とを製造し、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して包装その他の用途に使用可能としたことを特徴とする月桃抗菌紙。
  3. 前記の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙と、葉を多く使用した月桃紙とが、直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層された構造になっていることを特徴とする請求項2に記載の月桃抗菌紙である。
  4. 茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙が4層構造になっており、その被保護物側の第1層目は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層とし、第2層目以下は、月桃を含有する月桃紙層及び/又は月桃を含有しない非月桃紙層を有していることを特徴とする月桃抗菌紙。
  5. 表原紙と裏原紙との間に中芯を挟んでなる段ボールにおいて、表原紙は、月桃の茎より葉を多く使用した月桃紙とし、裏原紙は、茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙としてなることを特徴とする月桃抗菌段ボール。
  6. 月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層と、茎より葉を多く使用した月桃紙層を有する月桃抗菌紙を製造する際に、
    月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙層と茎より葉を多く使用した月桃紙層とを別々に抄紙し、その後の工程で、茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙層と葉を多く使用した月桃紙層とを、直接若しくはスペーサ層を介して一体に積層して一体化し、1枚の紙とすることを特徴とする月桃抗菌紙の製造方法。
  7. 月桃の茎のみ又は葉より茎を多く使用した月桃紙と、茎より葉を多く使用した月桃紙との少なくとも2枚を用い、茎を多く使用した月桃紙を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙を外側に配置して包装その他の用途に使用することを特徴とする月桃抗菌紙の使用方法。
  8. 書類や書籍その他を保存する保管手段において、月桃の茎のみ又は茎を多く使用した月桃紙側を被保護物側に配置し、葉を多く使用した月桃紙側を外側に配置する構造としたことを特徴とする月桃抗菌紙を使用した保管手段。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010090487A (ja) * 2008-10-03 2010-04-22 Crown Package Co Ltd 紙の製造方法、紙製容器の製造方法及び紙製容器
CN112323536A (zh) * 2020-11-19 2021-02-05 浙江佳伦纸业有限公司 一种低成本防潮防鼠蚁包装盒的制备方法
CN114717880A (zh) * 2022-04-02 2022-07-08 重庆翅之展环保科技有限公司 一种防霉抗菌的环保复合纸板及其制备方法和装置

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