JP2005172858A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、特に日本人にとっての英語等の非母国語をはじめとする各種言語の聞き取り及び発声を学習するための言語学習材料を学習者に提供する言語学習材料提供方法、及び当該言語学習材料からなる言語学習教材に関する。
商取引をはじめとして近年の急速な国際化にともない、日頃日本語を常用している日本人にとっての英語等、非母国語の習得は、国際社会で生活していくための必須の条件であることが叫ばれて久しい。しかしながら、日本人の非母国語による会話能力は、諸外国に比べて著しく低いのが現状であり、コミュニケーションに大きな支障をきたしている。
このような言語の聞き取り及び発声を学習する方法としては、学習対象とする言語の発音を繰り返し聞き取るとともに、これを模倣して発声する行為を繰り返し行うことが通常である。また、かかる言語学習を支援することを目的として、様々な技術が提案されている(例えば特許文献1乃至特許文献5参照。)。
具体的には、特許文献1には、同一の絵に基づく同一意味の日本語と外国語を音楽とともに記録させ、日本語又は外国語のいずれか一方の音レベルを最も大きくし、音楽の音レベルを最も小さくし、異なる音レベルの日本語と外国語を異なる再生チャンネルで最小音レベルの音楽とともに同時に再生可能に記録させた外国語学習用記録単体が開示されている。これにより、この外国語学習用記録単体においては、学習意識が低い乳幼児の学習効率を容易に向上させることができ、外国語を長期にわたって潜在的に記憶させることができるとしている。
また、特許文献2には、例えば“Take one at a time.”という文章については、「D>D−d−d>DA#」といったように、第1強勢で長く強く発音される「DA」の第1の音節記号と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される「D」の第2の音節記号と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される「d」の第3の音節記号とを組み合わせて表記した構造(音声組成構造)を作り出し、全ての文章を「ダ」の音の強弱で聴覚的に認識させた上、教授者による目標言語発声音を模倣させて発声させ、外国語の発音を学習させる外国語音声学習方法が開示されている。また、この特許文献2には、同様の「ダ」の音のみからなる音声の表記文字から外国語の音の強弱を読み取り、それを繰り返し発声させて外国語の文章を認識させ、表記文字の認識に基づいて言語材料の目標言語を発声させることにより、外国語の発音を学習させる外国語音声学習方法が開示されている。このような外国語音声学習方法においては、外国語を抵抗なく受け入れるのに役立つ右脳優位を維持しながら右脳と左脳とを結び付けて音声学習を行うことから、学習者に多大な忍耐と努力を強いることなく、また、学習者の学習意欲を損なうことなく、外国語音声を学習することができるとしている。
さらに、特許文献3には、特許文献2に関連する技術であり、特に、言語材料の正確な目標言語の内容を表示する潜在意識的な画像を学習者に提示し、当該学習者は、この潜在意識的な画像を認識しつつ外国語の言語材料を聴覚的に訓練し又は目標言語発声音に倣って言語を発声して外国語を学習する外国語音声学習方法が開示されている。これにより、この外国語音声学習方法においては、外国語を抵抗なく受け入れるのに役立つ右脳優位を維持するとともに、目標言語の内容を表現する画像を潜在意識的に提示して外国語の学習にいわゆるサブリミナル効果を付与し、目標言語の内容を無意識的且つ短時間に把握することから、文法や意味の認識に移行する傾向がある左脳優位の不具合を回避して、文法や意味の認識をともなうことなく、外国語音声を学習することができるとしている。
さらにまた、特許文献4には、コンピュータを用いて言語を学習者に習得させる方法が開示されている。特に、この方法は、言語の単語、この単語を使用した句、及びこの句を使用した例文の順に、当該単語、当該句、及び当該例文の音声を、当該言語で出力し、当該例文の音声を当該言語で出力した直後に、当該句を使用した質問文の音声を当該言語で出力し、この質問文に対する回答を学習者が当該言語で発声する機会を提供し、当該質問文に対する回答が正答か否かを学習者が確認する機会を提供するものである。これにより、この方法においては、新たに言語を学習する学習者、又は以前に言語習得に困難を有していた学習者に対して、短期間で習熟度の高い言語習得を実現させることができるとしている。
また、特許文献5には、外国語の学習を希望する利用者に、当該外国語の学習にかかわる情報の提供を行うコンピュータシステムを用いた外国語言語学習装置が開示されている。特に、この外国語言語学習装置は、外国語の学習の際に必要な情報を入力する入力部と、外国語の学習の際に必要な情報を文字及び/又は画像で表示する表示部と、外国語の学習の際に必要な情報を音声及び/又は音楽で表現する音響再生部と、外国語を学習する際に、参照する単語又は文章と関連付けされ、視覚として学習するための画像情報、単語又は文章の発音を聴覚で学習するための音声情報、単語又は文章をテキストで表す文字情報の各情報を少なくとも含む言語情報記録部と、この言語情報記録部を参照して、外国語を学習するための1つ又はそれ以上のアプリケーションプログラムを有するプログラム記録部と、このプログラム記録部のアプリケーションプログラムを用いて、外国語の学習にともなう操作を司る言語学習実行手段とを備えるものである。このように、この外国語言語学習装置においては、外国語の学習に際し、視覚としての画像情報、聴覚としての音声情報、及びテキストとしての文字情報を、学習対象とする全ての単語又は文章に適応させることにより、学習効率及び学習速度を向上させることができるとしている。
ところで、通常の会話では、a)文章を聞く、b)その応答を考える、c)応答を発話する、という3つのプロセスを経る。これを非母国語でも同じプロセスで行うことが望ましい。しかしながら、日本における既存の非母国語教育は、a)当該非母国語の文章を聞く、b)それを一旦日本語に訳す、c)その意味を日本語で考える、d)さらにその応答を日本語で考える、e)それを当該非母国語に訳す、f)応答を当該非母国語で発話する、という6つのプロセスを要する翻訳重視型の学習を強要されることが多く、学習者は、このような思考回路で会話に望むことになる。すなわち、日本における既存の非母国語教育の教育形態は、会話相手の問いかけに対する「レスポンス」が遅延する事態を生じさせるのみならず、日本語に基づいて応答を考えるために誤った発音や文章作成を行ってしまう事態を生じさせ、学習の大きな妨げとなっている。
また、日本における既存の非母国語教育は、文法重視型であることに問題がある。言語を学習するにあたっては、状況に応じた適切な単語・熟語・言い回しのパターンを最初に覚えるのが望ましく、その後、文法を学習するのが望ましい。しかしながら、現状では、文法から覚え始める文法重視型の教育形態が多いことから、文法に意識が集中してしまい、日常会話に最も必要なリスニング/スピーキング能力に関する学習効率の低下を招来するのみならず、学習効果さえも失われているといっても過言ではない。
さらに、上述した各種技術をはじめとし、従来の言語学習方法は、複雑な理論が先立ち、視覚的及び/又は聴覚的な記号・情報を過多に用いすぎる傾向がある。すなわち、従来の言語学習方法においては、テキスト等に記載する視覚的情報として、発音記号の他、リズムやアクセント、単語の強弱、音節の長短、イントネーション等を習得させるための独自の補助記号等を用いすぎている傾向にある。また、従来の言語学習方法においては、いわゆるCD(Compact Disc)等に記録された聴覚的情報としても、ネイティブの模範発話に加え、上述した補助記号を音声によるリズムパターンに変えた情報等を用いているものが多い。このような情報は、複雑な理論を学習者に理解させるために設けられるものではあるが、却って学習者に難解な印象を与え、複雑且つ困難な学習を強いる原因となり、学習者の学習意欲を阻害しているのが現状である。
さらにまた、従来の言語学習方法として、例えば口腔を模式化したイラスト等を用いて、個々の子音や母音についての発音練習を行うものがあるが、この方法は、単音の発音に意識が集中してしまい、上述した翻訳重視型の学習や文法重視型の教育と相俟って、現実の非母国語におけるスムーズなコミュニケーションを図る上では弊害となっている。
また、日本における既存の非母国語教育は、習い始めの段階からいきなり文字を用いた学習形態を採用し、それ以降も文字を用いた学習が多い、という読み書き重視型の傾向があり、必然的にリスニング/スピーキング能力が弱いという問題がある。これに鑑み、言語学習に供する教材としては、聴覚先行型にするのが望ましく、リスニング/スピーキング能力の向上を重視した教材も多数存在する。しかしながら、かかる教材は、実際のネイティブが日常会話で発音するスピードに比べて著しくゆっくりと発音した会話が録音されているものがほとんどであり、実際に、かかる教材を利用した学習者であっても、現場でゆっくりと発音してもらわないと意味を理解することができない能力にとどまっている。これは、従来の教材はネイティブ同士の日常会話のスピードからかけ離れたゆっくりと発音された会話が録音されていることから、学習者がこの会話スピードでしか理解することができないことに起因するものであり、これにより、現場でネイティブの会話スピードで理解ができず、実践的効果が出ない事態を招来している。また、かかる教材は、ただ単に同じ文章を反復的に聞かないと習得できないため忍耐と苦痛をともない、また、同じ文章をただ何度も繰り返すことによって学習者に飽きを生じさせ、学習意欲の持続を保てないという問題がある。
このように、従来の言語学習方法は、いずれも学習者にとって、学習しているという感を払拭するものではなく、当該学習者の努力に期待する面が大きく、当該学習者の学習意欲を持続させるのは困難であり、むしろ学習者を学習の場から遠ざけてしまうものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、従来の翻訳重視型、文法重視型、理論先行型、読み書き重視型の問題を排除し、極めて単純な構成で、学習者に学習している感を全く与えることなく、高い娯楽性のもとに容易且つ手軽に各種言語の聞き取り及び発声を学習することに寄与する言語学習材料提供方法、及び当該言語学習材料からなる言語学習教材を提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明にかかる言語学習材料提供方法は、各種言語の聞き取り及び発声を学習するための言語学習材料を学習者に提供する言語学習材料提供方法であって、所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択する第1の工程と、選択した楽曲及び歌詞からなる一連の音楽を、聴覚的情報からなる上記言語学習材料として作成する第2の工程と、作成した上記言語学習材料を、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体に対して再生可能に記録する第3の工程とを備えることを特徴としている。
このような本発明にかかる言語学習材料提供方法は、学習させたい文字列を歌詞とした1曲の音楽を用いて学習する環境を学習者に提供することができ、通常の音楽を聞いて覚えるのと同様の楽しい感覚で、各種言語を学習することに寄与する。
ここで、上記楽曲としては、旋律を有しない拍のみで構成されるもの、又は所定の旋律を有するものとすることができる。
一方、上記歌詞としては、会話が望ましく、会話に適切な単語・熟語・言い回しのパターンを聞くだけで自然に覚えることができる。
また、上記音楽は、旋律を有しない上記楽曲の拍にあわせて歌詞を発話するもの、旋律を有する上記楽曲の当該旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するもの、及び/又は旋律を有する上記楽曲の当該旋律にあわせて歌詞を発話するものを含むのが望ましい。
さらに、上記言語学習材料には、学習を支援するためのより詳細な情報を含めることもできる。この上記学習を支援するためのより詳細な情報としては、個々の文字の発音とその発声の仕方、歌詞を構成する各単語の発声音、歌詞に含まれるリデュースド・フォームの発声音、及び/又は本来のリズムよりも遅いテンポのリズムにあわせた一文毎の発声音を含めることができる。なお、上記学習を支援するためのより詳細な情報についても、その文字及び/又は単語のアクセントを、所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して合致させるようにしてもよい。学習者は、かかる学習を支援するためのより詳細な情報を用いることにより、学習効果を高めることができる。
さらにまた、本発明にかかる言語学習言語学習材料提供方法において、上記第2の工程では、上記楽曲及び上記歌詞からなる聴覚的情報としての一連の音楽の他、少なくとも上
記歌詞を発話する演技者の視覚的情報としての映像を含むように上記言語学習材料を作成し、上記第3の工程では、作成した上記言語学習材料を、上記音声情報に加えて映像情報をも記録することが可能な上記記録媒体に対して再生可能に記録するようにしてもよい。
また、上述した目的を達成する本発明にかかる言語学習教材は、各種言語の聞き取り及び発声を学習するための言語学習材料を含む言語学習教材であって、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体から作成されており、上記言語学習材料は、所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように選択された当該楽曲及び当該歌詞からなる聴覚的情報としての一連の音楽であることを特徴としている。
このような本発明にかかる言語学習教材は、学習させたい文字列を歌詞とした1曲の音楽を用いて学習することにより、通常の音楽を聞いて覚えるのと同様の楽しい感覚で、各種言語を学習することができる。
本発明は、既存の言語学習にてみられるような記号や補助的な情報をはじめとする余計な情報を省き、言語習得に必要最低限の要素のみを取り入れた極めて単純な構成で、状況にあわせた必要なセリフがスムーズに出てくるような構成とされることから、様々なシチュエーションにおける各種言語の自然なリズムや言い回しをスムーズに表現することが可能となり、当該言語のリズムや音を自然に且つ容易に習得することができる。すなわち、本発明は、従来の翻訳重視型、文法重視型、理論先行型、読み書き重視型の問題を排除し、通常の音楽を聞いて覚えるのと同様の楽しい感覚で、高い娯楽性のもとに容易且つ手軽に当該言語による会話を学習することができ、学習者から学習しているという感を払拭し、当該学習者の学習意欲を持続させることができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、特に日本人にとっての英語等の非母国語をはじめとする各種言語の聞き取り及び発声を学習するための全く新たな方法を提案するものである。この学習方法は、学習しているという感を学習者から払拭し、高い娯楽性のもとに、言語の聞き取り及び発声能力を自然に身に付けることができるものである。
なお、以下では、説明の便宜上、非母国語として英語を採用し、英語の聞き取り及び発声を学習することに主眼をおいた説明を行うものとする。
まず、本発明の具体的な説明に先だって、本発明の意義を明確化すべく、本願出願人が鋭意研究を重ねて独自に見出した学習体系の概要について簡単に説明する。
英語を学習するにあたっての最たる問題点は、英語が日本語とは極めて異なる発音体系を有するにもかかわらず、学習者が日本語の発音体系を踏襲して学習する傾向が強いことである。日本人の学習者が発話する英語が通じにくい原因としては、日本語の発音をそのまま英語に移管した発音をしているからに他ならない。学習者は、自己の発音が英語の発音ではないことに気付いていないことが多い。そのため、英語をはじめとする非母国語の習得に躓く最大の原因は、母国語にあるといっても過言ではなく、母国語たる日本語の発音の壁をいかに乗り越えたかによって英語の発音にも変化が生じる。
日本語の発音の壁を打ち破るには、日本語と英語の発音体系の差異を学び、その差異を的確に把握した上で、音への転化の法則を学習することである。
ここで、日本語と英語の発音体系の差異をまとめると、図1に示す10個の項目に集約される。
まず、日本語と英語の発音体系の第1の差異としては、「単語の語尾」が挙げられる。日本語は、全ての単語の語尾に必ず母音をともなう一方で、英語は、例えば“soap”、“book”“dog”のように、子音で終わる単語が多い。このような英語独自の特徴があるにもかかわらず、日本語の発音体系を踏襲し、“soupu”、“bukku”、“dotgu”のように、英語を発音する際にも単語の語尾に母音をつけて発音する学習者が多く、これに起因して、英語の習得を著しく妨げているのが現状であり、そのため、たとえ正確な文章で発声している場合でも、語尾に母音の音を付着させて発話しているため、ネイティブには全く通じないという現象が生じている。
また、日本語と英語の発音体系の第2の差異としては、「音節」が挙げられる。日本語には、1つの音節を均等の長さで発音するという独自のリズムがあるが、英語は、音節に長短がある。なお、音節とは、通常、一音よりも大きく一語よりも小さい発話の単位であり、例えば“drive”という単語は、正確な英語の発音では1音節からなるが、日本人の英語学習者の多くは、“do−ra−i−bu”といったように、子音に必ず母音がつく日本語の特質を引きずって発話するため、4音節で発音し、しかも当該4音節を均等の長さで発音する傾向が強い。このように、学習者は、日本語独自のリズムで発話することに起因して、英語独自のリズムを習得することができず、たとえ正しい英語の文章を発話していてもネイティブには通じない等、英会話能力の上達を妨げているのが現状である。
さらに、日本語と英語の発音体系の第3の差異としては、「強弱(アクセント)」が挙げられる。英語においては、発話の際に強いエネルギを必要とする箇所と、あまりエネルギを必要としない弱い箇所とが様々な組み合わせで現れる。この強弱をはっきりと際立つように発話することにより、日本語には存在しない独自のリズムが生じる。例えば図2に示す“There is an accident in Tokyo.”という6つの単語からなる文章においては、当該文章において会話相手に最も伝えたい情報である同図中“−”,“●”が付された“accident”と“Tokyo”という2つの単語の語頭にアクセントがつき、これらの単語が長く発音される一方で、同図中“‐”,“・”が付されたそれ以外の単語については短く発音される。
これは、英語における全ての語は、内容語(content words)と機能語(function words)に大別されることによる。内容語とは、一般的には物・質・状態・動作等を指す語で、単独で用いられても意味(語彙的意味;lexical meaning)を有する語であり、主として、名詞、動詞、形容詞、副詞が該当するが、場合によっては1文字であっても該当する。一方、機能語とは、独立した意味はほとんど有さず、文中或いは文同士の間の文法的関係(文法的意味;grammatical meaning)を示す語であり、主として、“and”、“to”、“the”といった接続詞、前置詞、冠詞が該当する。英語は、自己が会話相手に伝えたいことを表現する文字及び/又は単語を強調する一方で、情報伝達にさほど必要ではない文字及び/又は単語については短く発音する、という特徴がある。なお、自己が会話相手に伝えたいことを表現する文字及び/又は単語は、主に内容語が該当することが多いが、例外として機能語を敢えて強調したいときには当該機能語にアクセントがくることがある。また、一連の会話において2度目以降に出てきた同じ語については、それが内容語であっても強調されないという法則がある。このように、アクセントは、英語の内容伝達に大きな意味をもたらすと同時に、英語独自のリズムを作るのに重要な要素をもっている。これにもかかわらず、多くの学習者は、このような事実を把握しておらず、英語を発音する際にも、日本語独自のリズムで発話することに起因して、英会話能力の上達を妨げているのが現状である。
さらにまた、日本語と英語の発音体系の第4の差異としては、「息を強く吐いて出す音の有無」が挙げられる。英語は、破裂音等のように日本語には存在しない口から強く息を吐く発音が要求される。具体的には、英語には、例えば、“b,d,g,f,h,j,k,p,t,v,z”といった、息を強く吐いて出す発音が必要な音が頻繁に発話される。これに対して、日本語は、英語のように強く息を吐いたりする音がなく、むしろ意図的に息を強く吐いて出す発音をしたがらない傾向にある。これは、発音体系の差異にとどまらず、いわゆる“控えめ”等に象徴される“引く”ことを美徳とする日本文化と、“自己の意見をはっきり表すこと”等に象徴される“押す”ことを美徳とする欧米文化という、文化そのものの特質の違いが原因にあると考えられ、日本文化においては息を相手に吹きかけるのは失礼であることに起因するものと考えられる。このため、学習者は、学習言語を常用しているネイティブのような綺麗な発音がなかなか達成できないのが現状である。
また、日本語と英語の発音体系の第5の差異としては、「イントネーション」が挙げられる。英語は、イントネーション言語ともいわれ、日本語には存在しない複雑な抑揚があり、様々なイントネーションの使用方法が存在し、同じ文章であってもその使用方法によって意味が変化する。例えば図3(a)に示す“How are you?”や同図(b)に示す“What’s new?”という文章は、単語間で1〜3のレベルからなるイントネーションをもって発音される。そのため、英語を学習するにあたっては、かかるイントネーションを的確に把握することが重要である。
さらに、日本語と英語の発音体系の第6の差異としては、「リデュースド・フォーム(reduced form)」が挙げられる。このリデュースド・フォームは、「連結」、「同化」、「短縮形」、「脱落」、「破裂音の消失」、「緩急」に大別される。
まず、「連結」は、単語が滑らかに連結される現象であり、特に前の単語の語尾に子音がきて次の単語の語頭が母音で始まる場合に頻繁に生じる。例えば“an egg”という2つの単語を発音する際には、図4(a)に示すように、“an”と“egg”との間には切れ目が感じられないようにこれら単語が1つの単語のごとく滑らかに連結される。
また、「同化」は、言語音が変化して、後続する又は先行する別の音に近くなる現象である。例えば“Meet you.”という2つの単語を発音する際には、同図(b)に示すように、音が変化する。
「短縮形」は、例えば同図(c)に示すように、“You had〜”や“You would〜”が“You’d”に変化するような事例に代表されるものであり、英語には、“is”、“has”、“will not”等のように、短縮形になった場合に発音が全く変化してしまうものが存在する。
「脱落」は、母音や子音の発音が省略されてしまう現象である。具体的には、同図(d)に示すように、日本語では“カ・メ・ラ”と発音される“camera”において、“メ”の母音としての“エ”の発音が英語では省略される事例に代表される。また、この「脱落」は、特に、語尾の子音と語頭の子音とが重複するときに発生する。具体的には、同図(d)に示すように、日本語では“ネ・ク・ス・ト・ウィー・ク”と発音される“next week”において、“ト”の発音が英語では省略される事例に代表される。
「破裂音の消失」は、破裂音があっても、実際には破裂が起こらない現象である。具体的には“kept quiet”という2つの単語を発音する際には、同図(e)に示すように、破裂音たる“pt”が発音されずに消失する。
「緩急」は、ひとまとまりの発話の中で速度変化が生じる現象であり、強勢(アクセント)と強勢との間の弱勢が多くなるほど、その部分は弱め且つ速めに発音される。すなわち、強勢の等時性は、速度変化と表裏一体の関係にある。例えば同図(f)に示すように、“Tom looks as if he were tired.”と発音する際には、同図中“・”が付された“as if he were”の部分が弱く且つ速く発音される。
いずれにせよ、リデュースド・フォームは、ネイティブの発話では強調される場合を除いて、変形して発音、すなわち、弱形で発音されるという現象であり、流暢な日常会話においては頻繁に用いられ、英会話を理解する上で、重要な言い回しである。この弱形の発音は、自分勝手に曖昧にするのではなく、弱形の正確なパターンを把握する必要がある。しかしながら、学習者は、このような現象を的確に把握していることが少なく、それを視覚的に説明する教材はあっても自然に、的確に且つ楽しく身に付けさせることができる教材はなく、ネイティブのような綺麗な発音ができないのが現状である。
さらにまた、日本語と英語の発音体系の第7の差異としては「日本語には存在しない音の存在」が挙げられる。英語には、日本語の50音には存在しない音が多数存在し、日本語の感覚からみると、母音や子音の発音が区別しにくい音が多い。例えば、英語では“clever”という単語における“cl”のように、母音が入らずに子音のみが連続することがある。また、日本語では「ラ」行の発音に該当する子音として、英語には“l”と“r”が存在することから、学習者にとって“fly”と“fry”を識別することは困難である。また、日本語は、母音が5個しか存在しないのに比べ、英語は、10個以上の母音が存在する。例えば、“heart”と“hurt”、“bees”と“beads”等は、学習者にとって識別しがたい単語である。このような日本語には存在しない音を識別する能力を習得するためにイラストを用いて説明する教材もあるが、かかる教材は、学習者にとって極めて理解に困難をもたらすものであり、学習者の多大な労力と忍耐とを強いているのが現状である。
また、日本語と英語の発音体系の第8の差異としては、「レスポンス」が挙げられる。日本語は、日本人が強く意識しがちな羞恥心に起因して、「沈黙」や「間」を美徳とする文化的特徴があるが、かかる「沈黙」や「間」を設けることは、英語圏では逆に失礼な行為にあたる。欧米人は、会話中に長い「沈黙」や「間」が生じた場合には、聞き手がその話に興味がないもの、或いは話者に何か問題があるものとみなすことが多く、かかる「沈黙」や「間」を極度に嫌う傾向にある。こうした文化的差異を踏まえた上で、英語圏の人々と会話する際には、何らかの問いかけをされたら即座に発話することが必要であるにもかかわらず、学習者は、「間」を多く設けたりゆっくりとした日本語的な発話形態を踏襲したりして会話するため、英語圏では長すぎる「沈黙」や「間」を設ける場合が多い。換言すれば、日本においては、問いかけに対して即座に応答するという「レスポンス」に関する学習が重視されていないのが現状であり、これに起因して、この「レスポンス」を習得できていない学習者が多く、長い「沈黙」や「間」を作るため、現実に会話相手に忍耐を強いる事態を招来している。
さらに、日本語と英語の発音体系の第9の差異としては、「テンポ」が挙げられる。これは、地域よる生活テンポや文化の違い等に起因するものであり、個人差はあるものの、英語圏では、日本に比べ統計的に会話のテンポが速い傾向にある。また、上述した「レスポンス」と同義であるが、長い「沈黙」や「間」をタブーとする英語圏では、「沈黙」や「間」を美徳とする日本に比べ、会話のキャッチボールのテンポも速い。そのため、英語を学習するにあたっては、このような速いテンポに対応することを念頭におく必要がある。
最後に、日本語と英語の発音体系の第10の差異としては、「ジェスチャ」が挙げられる。英会話においては、上述したように、強いエネルギを必要とするアクセントや、長い語句を迅速に発話するリデュースド・フォームや、適切なリズムで発話することが重要である。それらを発音しやすくするために、ネイティブは、発話する際に、自己の首や肩を揺らしたり、手振りを交えたりするといったように、任意に様々なジェスチャをとることにより、無意識的或いは意識的に英語独自のリズムで発話しやすくしている。このような会話に際する身振りの違いは、日本はいわゆる「静」の文化であるのに対して、英語圏はいわゆる「動」の文化であることに起因するものと考えられる。すなわち、日本人は、文化的側面から手を振ったり顔の表情を大きく変えたりすることをあまり好まないのに対して、英語圏の人々は、日本ではタブーとされるジェスチャを積極的に取り入れて自己表現する。このように、英語はジェスチャをもって身体でリズムをとる言語であるにもかかわらず、日本では、かかる教育をしていないのが現状である。
英語を学習するにあたっては、これら日本語と英語の発音体系の差異を的確に把握するとともに、文化の違いをも乗り越え、日本語独自の発音を払拭し、英語の発音体系に切り替える必要があるが、これらの差異を把握することは極めて困難である。学習者は、このように発音体系が違うにもかかわらず、日本語の発音体系を踏襲して発音していることから、それが原因で著しく上達が阻害されている。
本願出願人は、これら差異を踏まえた観点から、英語を学習するにあたって重要な項目として、主に以下の6つの項目を見出した。
第1には、ネイティブが話す通常の会話スピードに慣れることである。既存の学習教材としては、ネイティブがゆっくりと発話して作成されたものがほとんどであるが、英語を学習するにあたっては、ネイティブのスピードに慣れなければ、殆ど意味がないといっても過言ではない。したがって、本願出願人は、英語を学習するにあたって重要な項目として、ネイティブが話す通常のスピードに慣れることを可能とすることに着目した。
第2には、会話のレスポンスを良好にすることである。上述したように、欧米人は、会話における「沈黙」や「間」を極度に嫌う傾向にあり、これに対応するためには、何らかの問いかけをされた際に、即座に発話することが必要である。したがって、本願出願人は、英語を学習するにあたって重要な項目として、会話のレスポンスを良好にするべく、定番の言い回しを多数覚え、状況に応じたセリフが無意識にスムーズに出てくることを可能とすることに着目した。
第3には、適切な英語独自のリズムを保った会話を行うことである。ネイティブが違和感なく理解することができる会話とは、英語独自の適切なリズムに合致したものである。これを実現するためには、各語句の正しい英語の発音及びアクセントで発話する必要がある。したがって、本願出願人は、英語を学習するにあたって重要な項目として、適切な英語独自のリズムを保った会話が自然に身に付けることを可能とすることに着目した。
第4には、上述したリデュースド・フォームを習得することである。流暢な英会話においては、上述したように、リデュースド・フォームが多用され、これを把握しないとネイティブの会話を理解することは不可能である。にもかかわらず、かかるリデュースド・フォームを学習させるための教育は、重視されてこなかったのが現状である。本願出願人は、英語を学習するにあたって重要な項目として、このようなリデュースド・フォームを適切に習得することを可能とすることに着目した。
第5には、発話の際にジェスチャをつけることである。英会話においては、上述したように、強調すべきアクセントがある箇所等において身体の一部を動かして適切なリズムをとることが重要である。したがって、本願出願人は、アクセントがある箇所等においてジェスチャをつけて適切なリズムを作り出すように学習者に促すことに着目した。
第6には、重要且つ定番な語彙を含む言い回しを増やすことである。英会話においては、例えば挨拶や買い物といった所定のテーマやシチュエーション毎に定番な言い回しが存在し、これを覚えてしまえば会話のレスポンスも良好となることから、日常会話に最も必要な語彙を含む言い回しを増やすことは重要である。したがって、本願出願人は、英語を学習するにあたって重要な項目として、重要且つ定番な語彙を含む言い回しを増やすことを可能とすることに着目した。
本願出願人は、これらの項目を全て達成する方法を模索している際に、一度聞いたら旋律や歌詞まですぐに覚えてしまう印象に残る音楽や自己の嗜好に合致した音楽は、覚えやすく忘却しにくい傾向にあることに着目した。すなわち、本願出願人は、音楽が有する極めて速い言語吸収力、極めて高い記憶持続効果、及び極めて高い定着率と、英語学習とを結び付けた全く新規の学習体系を構築し、この学習体系に基づく英語の聞き取り及び発声を学習するための方法を考案した。以下、このような学習方法について説明する。
この学習方法は、図5に示すように、所定の楽曲と学習させたい目標文字列としての歌詞とからなる一連の音楽を、聴覚的情報からなる言語学習材料として学習者に提供し、当該楽曲及び歌詞からなる音楽の聞き取りや模倣を通じて、当該音楽を暗記し、さらに、これに基づいて会話の役割を分担して演じるロールプレイや、学習者任意のアレンジを図ることにより、英語の聞き取り及び発声を学習するとともに、自分で考えて発話する能力を養うものである。なお、楽曲とは、必ずしも所定の旋律をともなうものである必要はなく、後述する拍のみで構成されるものも含む概念である。
ここで、言葉と音楽とを同時に出力させる技術は、従来から知られているが、ここで提案する学習方法は、従来とは異なり、言葉を構成する文字列と、この文字列に組み合わせる音楽との選択に特徴がある。
すなわち、この学習方法で用いる言語学習材料は、少なくとも、所定の楽曲を構成する音のうち音価の高い音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントを合致させることを基本原則とし、この原則に基づいて当該楽曲及び当該歌詞を選択したものである。
ここで、説明の明確化を図るべく、本発明で用いる音楽的用語の説明を行う。
まず、音価の高い音とは、拍子の強拍にある音の他、周囲の音に比べて長い音、周囲の音に比べて相対的に高い音、フレーズの冒頭・終止音、周囲の音にまぎれずに単独でおかれた音をいう。
また、“石桁真礼生、丸田昭三、金光威和雄、末吉保雄、飯田隆、飯沼信義 著、「楽典理論と実習」、株式会社音楽之友社”によれば、一定の音が切れ目なく鳴り続いている場合等には、その音は聞く人に対して時間の刻みを感じさせないが、a)一定の音が複数回に分かれて聞こえる場合、b)聞こえてくる音が、緩慢で連続的な変化を除き、長短、高低、強弱、音質の相違等の変化をともなっている場合、c)音の聞こえない時間が挿入された場合には、時間経過の「刻み」を感じさせる。音楽的なリズムとは、このような刻みを意味する。
さらに、同書によれば、音楽には種々のリズムが使用されるが、それらは単に何の秩序もなく用いられるのではない。すなわち、リズムは、必ず、一定時間毎に刻まれるところの「拍」という単位にのって作り出される。音楽は、かかる拍の倍数分の長さの音や、拍の何分の1かの長さを主として用い、必要に応じて、それらをさらに分割したり連結したりした長さの音を用いて組み立てられる。音楽においては、1拍の長さとして、通常速いもので0.2秒から遅いもので1.5秒のものが用いられる。
さらにまた、同書によれば、音楽においては、拍にのることによってリズムに最小限の秩序が生まれるわけであるが、それらをさらにまとめて整える役目を果たすものが拍子である。拍子は、数拍毎に心理的な強点を周期的に設定し、拍の進行を整理・統合する組織であり、数拍毎に何らかの点で反復を行うことによって実現される。この強点にあたる拍を強拍、他の拍を弱拍という。一般に短い(細分された)音の後にくる比較的長い音、または次の音までに比較的長い時間のある音を強く意識して聞く傾向があるため、音楽は、長音符にアクセントがくる。これらから、拍子とは、強拍と弱拍との規則的交替であるといえる。
この学習方法で用いる言語学習材料は、上述したように、英語独自のリズムとアクセントとの関係を自然に身に付ける観点から、音価の高い音のうち、楽曲を構成する拍子の強拍(ビート)にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択するのが望ましい。
これは、以下のような観点に基づくものである。すなわち、英語のリズムは、上述したように、発話の際に強いエネルギを必要とする箇所と、あまりエネルギを必要としない弱い箇所とが様々な組み合わせで現れ、強いエネルギを必要とする箇所は、あまりエネルギを必要としない弱い箇所を引きつけた形でひとまとまりとなる。このようにひとまとまりとなる現象は、弱い箇所の個数によらず同様に発生し、例えば図6に示すように、大きい波が小さい波を引き連れて現れるがごとく、当該弱い箇所は、強い箇所に付着するような形となる。このように、弱い箇所をしたがえた強い箇所は、盛り上がるようにして現れ、また、時間軸上で比較的等間隔で現れる傾向にある。このような現象は、音楽における拍子と酷似するものである。したがって、言語学習材料としては、音価の高い音のうち、楽曲を構成する拍子の強拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択するのが望ましいといえる。
ここで、音楽には、通常、いわゆる表拍と裏拍が存在するが、英語は、語頭が強いことから、表拍が強い音楽を採用することが、英語の学習には望ましい。すなわち、音楽の拍が表拍である楽曲を採用することが、英語の学習には望ましい。
このような基本原則に基づく言語学習材料が英語の学習に適しているのは、以下の理由によるものである。
まず、“Oops! We wiped out! We’re everywhere! Ignore the stares!”という文章の発音を考える。この場合、日本人の英語学習者による一般的な発音は、上述したように、1つの音節を均等の長さで発音するという日本語独自のリズムを踏襲するために、例えば図7(a)に示すように、“ウッ・プ・ス・ウィー・ウァ・イ・プ・ト・ア・ウ・ト・ウィー・アー・エ・ブ・リィー・ウェ・アー・イ・グ・ノ・ア・ザ・ス・テ・ア・ズ”となり、これをリズム譜で表すと4分音符で27拍分の時間を要することになる。すなわち、日本人の英語学習者による一般的な発音は、図8に示すように、1拍あたり1音節で発音しているものである。
同様に、既存のある英語学習教材による一般的な発音は、例えば図7(b)に示すように、“oops・we・wiped・out・we’re・every・where・ignore・the・stares”となり、これをリズム譜で表すと4分音符で10拍分の時間を要することになる。なお、既存の英語学習教材による発音について統計的に調べたところ、この発音は、図8に示すように、1拍あたり平均1.25音節で発音しているものであった。
これに対して、上述した基本原則に基づいて、音価の高い音に対して学習させたい目標文字列を構成する文字及び/又は単語のアクセントを合致させると、以下のようになる。
すなわち、“Oops! We wiped out! We’re everywhere! Ignore the stares!”という文章を構成する単語のアクセントが、“Oops”、“out”、“every”、“where”、“Ignore”、“stares”の6つであることから、上述した基本原則に基づく発音は、図7(c)に示すように、各語が上述したリデュースド・フォームを用いて短く発音され、“oopswe・wipedoutwe’re・every・where・ignorethe・stares”となる。すなわち、この発音によれば、同図(b)と同じ拍子で発音した場合には、“<”で示した強拍に対して文字及び/又は単語のアクセントが合致するように発音されることから、4分音符のみではなく、8分音符や16分音符等の短い音符を用いたリズム譜で表され、4分音符換算で6拍分の時間で足りることになる。換言すれば、この発音において、同じ拍数であれば、既存の英語学習教材による発音よりも多数の語を発話できることになる。
本願出願人は、このような発音が、いわゆるヒップホップ文化における音楽要素であるラップに顕著に現れることを見出した。また、このような発音は、リデュースド・フォームを多用するネイティブの発音形態と同じである。ラップは、リズムにあわせて言葉を発する音楽形態であることから、英語を上手に発音するために必要なアクセントやリズムの存在を認識させることに役立つとともに、爽快なリズミカルな音楽であることから繰り返し歌うことが苦にならず、アクセントやリズムを容易に身に付けることができ、その定着率が高い。また、ラップは、リズムにあわせて言葉を早口で発する必要があることから、上述したリデュースド・フォームを多用し速いスピードで発話する英語を聞き取るとともに、的確なアクセントで発音することを支援する材料として、極めて最適である。
なお、以下では、このようなラップに基づく拍(以下、ラップビートという。)を用いたリズムを、便宜上、「単純ラップ」のリズムと称するものとする。
さらに、このようなラップビートを音楽的見地から解析すると、以下のような知見が得られた。
通常のラップ歌手が発話するラップは、いわゆるシンコペーションを生じさせるものが多い。このシンコペーションとは、上述した「楽典 理論と実習」によれば、強拍と弱拍による拍子・リズムの正規な進行が、何らかの手段によって故意に変化された状態をいい、以下のいずれかの場合に生じる。
まず、弱拍で始まった音が次の強拍にかけて切れ目なく続くと、強拍の位置が変化して、すなわち、移動して意識される。これがシンコペーションが生じる第1の場合である。また、弱拍で始まった音が、例えば4拍子における第3拍といった強拍に準ずる拍にかけて持続する場合にも、第1の場合と同様のシンコペーションが生じる。これがシンコペーションが生じる第2の場合である。さらに、2個以上の弱拍が結ばれて強拍よりも長くなったとき、それが強拍のように意識されることがある。これがシンコペーションが生じる第3の場合である。さらにまた、強拍が休符によって無音の場合には、次の音は、弱拍であっても強拍に意識される。これがシンコペーションが生じる第4の場合である。また、普通のリズムからなるものであっても、強さの変化の与え方によってはシンコペーションが生じる。これがシンコペーションが生じる第5の場合である。さらに、別の拍子を感じさせるような奏法を行った場合にも、シンコペーションが生じる。これがシンコペーションが生じる第6の場合である。
ラップ歌手は、このようなシンコペーションを意図的に生じさせるようなリズムをもってラップを発話している。本願出願人は、このようなシンコペーションが生じた場合には、第1の場合、すなわち、弱拍で始まった音が次の強拍にかけて切れ目なく続くと、強拍の位置が変化する現象に着目した。すなわち、譜面において異なる音階の音符を結ぶ弧線であるスラーがあると、その部分でシンコペーションが生じるが、このシンコペーションにおいては、弧線の終端に位置する本来の強拍の位置が、当該弧線の始端に位置する弱拍の音符へと時間的に前方移動することになる。
このような現象を上述した基本原則に基づく発音に適用することは、文字及び/又は単語のアクセントを合致させる強拍の位置が時間的に前方移動することともない、同じ拍子で発音した場合には、1小節に含ませることができる語数をより多くすることができることに他ならない。したがって、このようなシンコペーションをともなうリズムにあわせた発音は、より多くのリデュースド・フォームを用いる必要があり、より速いネイティブの日常会話のスピード及び言い回しの練習に最適であるといえる。
具体的には、上述した“Oops! We wiped out! We’re everywhere! Ignore the stares!”という文章の発音は、シンコペーションをともなうリズムにあわせた場合には、各語が同図(c)に示した場合よりもリデュースド・フォームを多く用いて短く発音されることによって時間的に前方移動し、同図(d)に示すようなリズム譜で表されることになる。換言すれば、この発音において、同じ拍数であれば、同図(c)に示した単純ラップのリズムよりも多数の語を発話できることになる。
なお、以下では、このようなシンコペーションをともなうラップビートを用いたリズムを、便宜上、「複雑ラップ」のリズムと称するものとする。すなわち、単純ラップは、シンコペーションを含まないラップを意味し、複雑ラップは、シンコペーションを含んで複雑なリズムを作り出しているラップを意味する。
このような上述した基本原則に基づく発音、すなわち、単純ラップ及び/又は複雑ラップのリズムは、図8に示すように、1拍あたり平均2.85音節で発音しているものとなり、ネイティブ同士の日常会話の発音における音節数と同じ結果となった。
また、本願出願人は、ネイティブの通常の会話スピードをメトロノームを用いて実測したところ、統計的に1分あたりの拍数(Beat Per Minute;BPM)が80乃至120であることを見出した。また、これに基づいて、単純ラップ及び/又は複雑ラップを用いた音楽を実際に作成したところ、図9に示すような結果が得られた。なお、作成した音楽は、いずれも楽曲が4/4拍子から構成されるものである。したがって、1分あたりの小節数は、(BPM)/4で表され、1小節の単語数は、(総単語数)/(総小節数)で表され、1分あたりの単語数は、(1分あたりの小節数)×(1小節の単語数)で表され、1拍あたりの単語数は、(1小節の単語数)/4で表される。さらに、この結果から、1分あたりの拍数(BPM)と1拍あたりの単語数との関係を求めると、1分あたりの拍数の増加に対して1拍あたりの単語数が単調に減少することがわかった。
すなわち、言語学習材料としては、図8及び図9に示した1分あたりの拍数、単語数、及び音節数の関係をもった単純ラップ及び/又は複雑ラップのリズムを実現するように、楽曲及び歌詞を選択すればよいことになる。
なお、楽曲の拍子としては、2拍子、3拍子、4拍子、6拍子、9拍子、12拍子、及び混合拍子が望ましい。より具体的には、2拍子としては、2/2拍子、2/4拍子、2/8拍子を用いることができ、3拍子としては、3/2拍子、3/4拍子、3/8拍子を用いることができ、4拍子としては、4/4拍子、4/8拍子を用いることができ、6拍子としては、6/4拍子、6/8拍子を用いることができ、9拍子としては、9/8拍子、9/16拍子を用いることができ、12拍子としては、12/8拍子、12/16拍子を用いることができ、混合拍子としては、8/8拍子を用いることができる。このうち、3/4拍子、4/4拍子、6/8拍子は、特にラップに適した拍子である。
このようなラップを楽曲とする音楽において、英語の歌詞を日本語のリズムで発話しようとすると、少なくとも、上述した第2の差異として示した「音節」、第3の差異として示した「強弱(アクセント)」、第8の差異として示した「レスポンス」、及び第9の差異として示した「テンポ」の観点から、楽曲にあわせて歌うことができない。換言すれば、学習者は、ラップに基づく楽曲にあわせたリズムで歌うことにより、少なくとも上述した第2、第3、第8、及び第9の差異については、英語の発音体系を学習することができる。このとき、1曲の音楽を構成する歌詞としては、例えば挨拶や買い物といった所定のテーマやシチュエーション毎に完結したものや、日常会話に最も必要な言い回しを選択し、1曲の音楽の中で主要な目標文字列を複数回反復することにより、確実に習得させたい重要且つ定番な言い回しを多数覚えることが容易となる。したがって、新たに提案する言語学習材料においては、文字列の長さも1曲の音楽の長さに応じて適切なものに決定され、逆に、文字列の長さに応じて1曲の音楽の長さが適切なものに決定される。
また、この言語学習材料においては、上述した第1の差異として示した「単語の語尾」、第4の差異として示した「吐息」、第6の差異として示した「リデュース・フォーム」、及び第7の差異として示した「日本語には存在しない音」についても、採用する歌詞に多用することにより、発音体系を学習することができる。
さらに、使用するラップは、旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するパートから構成されるが、言語学習材料においては、このようなパートを設けることにより、上述した第5の差異として示した「イントネーション」についても学習することが可能となる。また、この言語学習材料は、2種類の構成となっており、旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するラップパートの他、楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話するコーラスパートを設けている。そして、この言語学習材料においては、上述した1曲の音楽の中で複数回反復させる重要且つ定番な言い回しについては、コーラスパートとして旋律にあわせて歌うことにより、旋律にそった歌として楽しみながら確実且つ容易に記憶させることができる。
さらにまた、ラップは、極めてリズミカルな音楽であることから、演奏者たる学習者は、歌うことによって音楽による弛緩効果を得て、自然と身体を動かすことが可能となる。これにより、学習者は、上述した第10の差異として示した「ジェスチャ」についても比較的自然に行うことが可能となる。
このように、ラップを楽曲とする音楽からなる言語学習材料は、日本語の発音体系を払拭し、英語の発音体系に切り替えない限り、十分に歌うことができないことに顕著な特徴があるものである。そして、この言語学習材料は、学習させたい文字列を歌詞とした1曲の音楽を用いて学習することにより、通常の音楽を聞いて覚えるのと同様の楽しい感覚で、英会話を学習することができるものである。
なお、この言語学習材料は、音楽をとおして英会話を学習するものであることから、楽曲としては、一度聞いたらすぐに覚えてしまうものが望ましい。すなわち、この言語学習材料は、従来のバックミュージックとして音楽を用いる教材とは大きく異なり、一度聞いたらすぐに覚えてしまう楽曲を選択することにより、これにあわせて歌詞を無理なく覚えさせることができ、長期にわたり記憶にとどめさせることができる。
また、音楽は個人によって嗜好があるものの、この言語学習材料は、かかる嗜好の違いにも対応することができる。すなわち、この言語学習材料において、楽曲としてラップを採用するものとした理由は、上述したように、ラップが有する拍に着目したからに他ならない。換言すれば、この言語学習材料においては、楽曲として、ラップビートを用いるものであればよい。したがって、この言語学習材料においては、例えば、いわゆるジャズ、ボサノバ、レゲエ、ロック、ハウス、テクノ、トランス、ポップス、カントリー、ラテン、サンバ、ルンバ、タンゴ、マンボ、ワルツ、クラシック音楽、さらには琴や三味線等の和楽器を用いた日本音楽等、全ての音楽ジャンルの楽曲を、ラップビートにあわせてリミックスしたものを楽曲として用いてもよく、拍があるものであれば使用する楽器に限定されることもない。このように、この言語学習材料は、上述した本発明の基本原則を遵守するのであれば、好きな音楽を用いることができるので、学習者の性別や年齢層、さらには文化等の違いに応じた多種多様な嗜好に対応することができ、幅広い層に受け入れられ、また、飽きを生じさせにくく長期にわたり学習を継続させることができる。
このように、この言語学習材料は、学習させたい文字列を歌詞とした1曲の音楽から構成される。例えば所定のテーマについての言い回しを学習するための言語学習材料としては、図10乃至図12に示す譜面で表されるものが提供される。
図10に、単純ラップを用いた音楽を言語学習材料に適用した例を示し、図11に、複雑ラップを用いた音楽を言語学習材料に適用した例を示す。
すなわち、この言語学習材料は、10代のネイティブの日常会話をテーマとしたものであり、“Down the road steaming,I’ve had a bad day.(The)cars nearly hit me swerving.(I was)bit by(the)dogs wanting to play.I leave them all behind along with my frown.(I)get on the grass and just lie down.”という敢えて口語的に作成した文章を目標文字列としての歌詞とし、これを上述した旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するパートとして設けたものである。これらの図から、単純ラップ及び複雑ラップの場合とも、歌詞を構成する全ての単語のアクセントが、音価の高い強拍に対して合致していることがわかる。特に、図11に示す複雑ラップの場合には、シンコペーションにより、強拍が時間的に前方移動していることから、これにともない、は単語のアクセントも時間的に前方移動していることがわかる。
また、図12に、上述した楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話する言語学習材料の例を示す。
この言語学習材料は、“I don’t wanna(want to)be alone tonight.But I’ve found a way to make it right.So I’ll take myself along to the stars I belong.Oh,you’ve never seen a gem so bright.”という文章を楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話するパートとして設けたものである。このように、言語学習材料においては、楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話するパートを設けることにより、学習のメリハリをつけて学習者を飽きさせることなく学習意欲を高めることができる。
言語学習材料としては、図12に示したような楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話する構成からなる1曲の音楽と、図10に示したような旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話する単純ラップに基づく構成からなる1曲の音楽と、図11に示したような旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話する複雑ラップに基づく構成からなる1曲の音楽と、楽曲なしで歌詞のみを発話する構成からなるものとを、1つのパッケージとしてあわせて提供することにより、学習者の習得レベルや嗜好、学習したい対象等に応じた選択を図ることができる。
すなわち、楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話する構成からなる1曲の音楽では、アクセントやリデュースド・フォームの学習は可能であるが、旋律にあわせようとするがために正確なイントネーションを学習することが難しい場合がある。これに対して、また、旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話する単純ラップ又は複雑ラップに基づく構成からなる1曲の音楽では、アクセント及びリデュースド・フォームに加え、イントネーションについても学習することが可能である。特に、複雑ラップに基づく構成からなる1曲の音楽では、英語独自の多種多様なリズムを導入することができるので、高い娯楽性のもとに、アクセント及びリデュースド・フォームの重要性の認識を図ることができる。このとき、単純ラップと複雑ラップは、学習者の嗜好に応じて使い分ければよい。
なお、言語学習材料としては、旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するパートと、楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話するパートとを併せ持った1曲の音楽として提供することもできる。この種の言語学習材料としては、例えば図13に示すようなものが提供される。
すなわち、この言語学習材料は、挨拶の定番な表現のうち、朝・昼・夜に交わす最も基本的なものについての会話を学習するために提供されるものであり、7つのパートに大別されて構成される。同図中1行目乃至2行目に示す第1のパートには、“Nice to see you.”や“How are you doing?”等の挨拶に用いる基本的な文とその類義文とが設けられる。また、同図中3行目乃至8行目に示す第2のパートには、“Good morning!”といった朝の時間帯で常用される会話形式の文章が設けられる。さらに、同図中9行目乃至10行目に示す第3のパートには、第1のパートと同様の文が再度設けられる。さらにまた、同図中11行目乃至17行目に示す第4のパートには、“Good afternoon!”といった昼の時間帯で常用される会話形式の文章が設けられる。また、同図中18行目乃至19行目に示す第5のパートには、第1のパートと同様の文が再度設けられる。さらに、同図中20行目乃至26行目に示す第6のパートには、“Good evening!”といった夜の時間帯で常用される会話形式の文章が設けられる。そして、同図中27行目乃至28行目に示す第7のパートには、第1のパートと同様の文が再度設けられる。このとき、歌詞を構成する各文章は、特に図示しないが、その文字及び/又は単語のアクセントが、楽曲を構成する拍子の強拍にある音に対して合致するものとされる。
このうち、第1、第3、第5、及び第7のパートは、重要且つ定番な言い回しの学習を目的として設けられるものであり、楽曲の旋律にあわせて歌詞を発話するパートとされる一方で、第2、第4、及び第6のパートは、旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するパートとされる。すなわち、第1、第3、第5、及び第7のパートは、1曲の音楽におけるいわゆるサビの部分として設けることができる。言語学習材料は、音楽の中にこのようなパートを設けることにより、テーマ又はシチュエーションに応じて確実に習得させたい重要且つ定番な言い回しを多数覚えることを容易とすることができる。
また、言語学習材料においては、語彙を増やしたり、より複雑な言い回しを学習したりするために、図13に示した歌詞を、例えば図14に示すように、同じ楽曲を用いながらも他の歌詞に容易にアレンジすることができる。
例えば、同図中1行目乃至2行目に示す第1のパート、同図中8行目乃至9行目に示す第3のパート、同図中16行目乃至17行目に示す第5のパート、及び同図中22行目乃至23行目に示す第7のパートの歌詞は、それぞれ、“How’s everything going?”や“How are you getting along?”といった、図13に示した第1、第3、第5、及び第7のパートよりも複雑な言い回しの文に変更することも可能である。また、図14中3行目乃至7行目に示す第2のパート、同図中10行目乃至15行目に示す第4のパート、同図中18行目乃至21行目に示す第6のパートの歌詞も、それぞれ、図13に示した第2、第4、及び第6のパートの歌詞から変更することができる。
このように、言語学習材料においては、同じ楽曲を用いながらも他の歌詞に容易にアレンジすることが可能であることから、語彙を増やしたり、より複雑な言い回しを学習したりするのに有効であり、習得レベルに応じて、歌詞を変化させることにより、同じ楽曲で初級者から上級者まで効率的に対応することができる。
さて、本発明は、このような楽曲及び歌詞を適切に選択し、これら楽曲及び歌詞からなる一連の音楽を言語学習材料として学習者に提供するものである。このような言語学習材料は、音楽の頒布形態に合致するものであれば、いかなる頒布形態であっても適用することができる。
例えば、言語学習材料は、カセットテープ、CD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)等のように、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体からなる言語学習教材として作成し、提供するのが好適である。これにより、学習者は、経済的に学習を行うことが可能となる。このとき、歌詞の内容やその文法的意味、その他ジェスチャの説明等について記載したテキスト等を当該記録媒体に付随させた言語学習教材として提供することにより、より高い学習効果を得ることが期待できる。この場合において、学習者は、最初からテキストを閲覧するのではなく、言語学習材料たる音楽を聞いた後、テキストを自発的に閲覧したいという動機が高まった段階で、当該テキストを閲覧するのが望ましい。換言すれば、この言語学習材料は、音楽を基礎としていることから、聴覚のみで学習することが可能で、ある程度リスニング/スピーキング能力が高まった段階で、文字や文法等の視覚的情報による学習に移行する、という言語習得に最も重要な聴覚先行型の学習に重点をおくことができる。
また、この言語学習材料は、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体である薄板状の不揮発性メモリからなる言語学習教材として提供することも可能である。このような記録媒体として言語学習教材を提供することにより、学習者は、上述したCD等の記録媒体を再生可能な専用のプレーヤを用いなくても、不揮発性メモリを着脱可能なパーソナルコンピュータ等を用いて学習することが可能となり、また、不揮発性メモリを着脱可能な携帯電話機や携帯情報端末機(Personal Digital Assistant;PDA)等の携帯可能な機器がある場合には、これら機器を用いて学習することもでき、時間や場所にこだわることなく、容易に学習可能な環境を得ることができる。
さらに、この言語学習材料は、学習講座番組等としてラジオ等の放送を介して頒布することも可能であり、また、いわゆるeラーニングに代表されるような、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDAといった各種情報処理装置を利用して教育を行う際のコンテンツとして提供することもできる。また、この言語学習材料は、音楽コンサート形式で聴衆たる学習者に提供することもでき、さらには、英会話教室や学校等の所定の教育施設若しくは催事において、教師等が実演することによっても提供することができる。言語学習材料は、このような記録媒体等からなる教材以外の形態で提供する場合には、歌詞が付与されていないラップビートを有する楽曲にあわせて、ラジオ放送のパーソナリティや、コンサートや催事の実演者、さらには教師等が歌詞を歌うことによっても提供することができる。
すなわち、この言語学習材料は、従来の教材であれば、学習用の環境が必要であったところ、音楽を聞くことが可能な環境がありさえすれば学習することができるものであり、幅広い分野で活用することができ、学習者は、場所・時間・状況を選ばず、また、他の作業をしながらであっても、極めて容易に学習することが可能となる。
なお、学習者は、この音楽としての言語学習材料を聞き、歌うのみで学習することが可能であるが、言語学習材料としては、単に1曲乃至数曲の完成された音楽のみを提供するのではなく、学習を支援するためのより詳細な情報をも提供することもできる。ここで、学習を支援するためのより詳細な情報としては、例えば、英語での綺麗な発音をするために必要な個々の文字の発音とその発声の仕方、歌詞を構成する各単語の発声音、歌詞に含まれるリデュースド・フォームの発声音、音楽の本来のリズムよりも遅いテンポのリズムにあわせた一文毎の発声音、並びにこれらを綺麗に発音するための説明等が挙げられる。言語学習材料としては、これら学習を支援するためのより詳細な情報についても、その文字及び/又は単語のアクセントを、所定の楽曲を構成する音のうち音価の高い音に対して合致させたものを提供することにより、より学習効果を高めることができる。
そして、学習者は、例えば図15及び図16、又は図15及び図17に示すような一連の工程を経ることにより、より効果的な学習を行うこともできる。なお、ここでは、説明の便宜上、言語学習材料を所定の記録媒体に記録した言語学習教材の形態で学習者に提供するものとする。
まず、ここでの言語学習教材としての記録媒体には、言語学習材料として、楽曲及び歌詞からなる音楽の他、学習を支援するためのより詳細な情報として、当該歌詞を構成する各単語の発声音、当該歌詞に含まれるリデュースド・フォームの発声音、当該音楽の本来のリズムよりも遅いテンポのリズムにあわせた一文毎の発声音が記録されているものとする。
このような言語学習教材を所持する学習者は、図15に示すように、ステップS1において、言語学習材料として提供された音楽を聞いた後、ステップS2において、個々の単語の正確な発声音を聞くとともに、ステップS3において、その発声音を模倣発声する。
続いて、学習者は、ステップS4において、リデュースド・フォームを習得すべく、その発声音を聞くとともに、ステップS5において、その発声音を模倣発声する。なお、リデュースド・フォームは、学習者が乗り越えるべき困難として、本願出願人が最も重視している項目であることから、言語学習材料としては、このリデュースド・フォームについての習得を支援する情報を設けるのが望ましい。このリデュースド・フォームについての習得を支援する情報としては、例えば、“I’m going to→I’m gonna”、“I’ve got to→I’ve gotta”、“I have to→I hafta”といったリデュースド・フォームのパターンとその発音の仕方を説明するものが望ましい。これらは、書き言葉としては適切ではないものの、会話においては頻繁に用いられ、英会話を理解する上で重要な言い回しであることから、かかる情報を提供することは、極めて有効である。
そして、学習者は、ステップS6において、ネイティブが話す通常の会話スピードに比べて遅いテンポのリズムにあわせた一文毎の発声音を聞くとともに、ステップS7において、その発声音を模倣発声する。
さらに、学習者は、遅いテンポの発声音に慣れた段階で、ステップS8において、テンポを徐々に速め、最終的にネイティブが話す通常の会話スピードにあわせた発声音を聞くとともに、ステップS9において、その発声音を模倣発声する。なお、このテンポの可変は、記録媒体の再生装置に設けられたスピード可変機能を用いるようにしてもよいが、予め言語学習材料として1分あたりの拍数が本来のものよりも少ないものをいくつか作成しておくことによって対応することができる。
そして、学習者は、ステップS10において、再度、言語学習材料として提供された音楽を聞いた後、ステップS11において、音楽にあわせて実際に歌う。
学習者は、このような一連の工程を繰り返し行った後、必要に応じて、図16又は図17に示すような一連の工程を経ることにより、ロールプレイを行うこともできる。
学習者は、第1のロールプレイ方法を採用した場合には、図16に示すように、ステップS21において、任意に選択した一の役を音楽にあわせて模倣発声し、これを繰り返した後、ステップS22において、他の役も音楽にあわせて模倣発声し、これを繰り返す。
そして、学習者は、全ての役についてステップS21及びステップS22の動作を行った後、ステップS23において、全ての役を音楽にあわせて一人で模倣発声し、ステップS24において、音楽なしでパートナーと同様の会話模倣を行う。
一方、学習者は、第2のロールプレイ方法を採用した場合には、図17に示すように、ステップS31において、音楽にあわせてパートナーと会話風に発声し、これを繰り返した後、ステップS32において、音楽なしでパートナーと同様のリズムで会話模倣を行い、さらに、ステップS33において、自己流に文章をアレンジして音楽なしでパートナーとの会話を行う。
そして、学習者は、ステップS34において、発声する役を変更して、ステップS31乃至ステップS33の工程を行う。
このように、この言語学習教材は、言語学習材料として、単に1曲乃至数曲の完成された音楽のみを提供するのではなく、学習を支援するためのより詳細な情報をも提供し、学習者は、このような一連の工程を繰り返し行うことにより、より効果的な学習を行うことができる。
勿論、学習者は、必ずしもこのような工程を経て学習を行う必要はなく、例えば最初からネイティブが話す通常の会話スピードにあわせた発声音や曲だけを聞いてもよく、自己のレベルや体調、嗜好等に応じて、自由な形態を選択して学習することができる。
以上説明したように、この言語学習材料は、言語と音楽との関係を厳密に解析したことによって想定に至ったものであり、少なくとも、所定の楽曲を構成する音のうち音価の高い音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択したものを用いて構成したものである。これにより、この言語学習材料は、既存の言語学習においてみられるようなテキストによる記号や補助的な情報をはじめとする余計な情報を省き、言語習得に必要最低限の要素のみを取り入れた極めて単純な構成で、様々なシチュエーションにおける口語英語の自然なリズムや言い回しをスムーズに表現することが可能となり、英語のリズムや音を自然に且つ容易に習得することのみならず、高い記憶持続効果及び定着率を発揮することができる。
すなわち、この言語学習材料は、通常の音楽を聞いて覚えるのと同様の楽しい感覚で、高い娯楽性のもとに容易且つ手軽に英会話を学習することができるという極めて画期的なものであり、従来の翻訳重視型、文法重視型、理論先行型、読み書き重視型の問題を排除して学習者から学習しているという感を払拭し、当該学習者の学習意欲を持続させることができる。
また、日本語の発話で用いる発音筋肉と英語の発話で用いる発音筋肉は、異なるものであるが、この言語学習材料は、音楽を歌うことをとおして、例えば、舌、口唇、鼻、顎、首、頬といった正確な英語の発音を行うために必要となる発音筋肉を自然に強化することができる。そのため、学習者は、この言語学習材料を用いて歌うことにより、リデュースド・フォーム等をスムーズに発話することが容易となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、音価の高い音のうち、楽曲を構成する拍子の強拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択するものとして説明したが、本発明は、音価の高い音であれば強拍以外の音であってもよい。
また、上述した実施の形態では、楽曲としてラップビートを用いたものを適用するものとして説明したが、本発明は、クラシック音楽等の周知の既存音楽素材を楽曲として用いることもできる。図18に、楽曲としてクラシック音楽を用いた言語学習材料の例を示す。
すなわち、この言語学習材料は、買い物のシチュエーションの言い回しを学習するためのものであり、“I’m looking for a hat to go with this shirt.Do you have this in any other colors?I’m looking for a gift for my boy friend.Do you have this in any smaller sizes?”という文章を目標文字列としての歌詞とし、これを所定のクラシック音楽の旋律にあわせて歌詞を発話するコーラスパートとして設けたものである。なお、同図は、楽曲を構成する拍子の強拍にある音に対して、歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致していない例について示している。すなわち、同図においては、音価の高い音として、強拍のみならず、例えば周囲の音に比べて相対的に高い音等を適用した例について示している。これは、例えば同図中“□”で囲った部分のように、周囲の音に比べて相対的に高い音が存在する場合には、その音が弱拍であっても音楽的に強く意識されることから、この位置に歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントを合致させたものである。いずれにせよ、同図においても、歌詞を構成する全ての文字及び/又は単語のアクセントが、音価の高い音に対して合致しているのは変わりない。
このように、本発明は、周知の既存音楽素材を楽曲として用いることができる。これにより、学習者は、既に記憶された周知の楽曲であることから、新たに提供された楽曲を覚える必要がなく、歌詞を学習することのみに集中することができ、忘却しにくいという効果も享受することができる。
さらに、本発明は、1曲の中で1分あたりの拍数が変化する楽曲を用いて言語学習素材を作成することもできる。このとき、1分あたりの拍数は、曲の進行にともない連続的又は段階的に多くなっていくのが望ましい。これにより、学習者は、最初から速いリズムで英語の発音を聞くことによる抵抗感を低減することができる。
さらにまた、上述した実施の形態では、言語学習材料として、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体からなる言語学習教材として作成し、提供するのが好適であるものとして説明したが、本発明は、かかる聴覚的情報のみならず、視覚的情報としての映像情報をも記録した記録媒体からなる言語学習教材に適用することもできる。
具体的には、かかる言語教育教材としては、例えば、ビデオテープ、DVD(Digital Versatile Disc)、薄板状の不揮発性メモリといったように、音声情報に加えて映像情報をも記録することが可能な記録媒体として提供することができる。
このような言語学習教材を用いた学習方法は、図19に示すように、所定の楽曲と学習させたい目標文字列としての歌詞とからなる一連の音楽を、聴覚的情報からなる言語学習材料として学習者に提供するのみならず、少なくとも歌詞を発話する演技者の映像等をも含め、聴覚的情報及び視覚的情報からなる言語学習材料として学習者に提供し、聴覚的情報による聴覚学習と視覚的情報による視覚学習とを両立させるものである。そして、この学習方法は、当該楽曲及び歌詞からなる音楽の模倣と演技者の動作の模倣とを通じて、当該音楽を暗記し、さらに、これに基づいてロールプレイや、学習者任意のアレンジを図ることにより、英語の聞き取り及び発声を学習するとともに、自分で考えて発話する能力を養うものである。
学習者は、このような視覚的情報が付与された言語学習材料を用いることにより、演技者の動作から英語独自のアクセントやリズムを取り入れた会話の際のジェスチャを模倣することができる。また、上述したテキストに記載された各種情報を、当該記録媒体に記録して提供することにより、学習者は、テキストからではなく、映像情報から当該各種情報を学習することができ、極めて高い学習効果を得ることが可能となる。
また、学習者は、先に図15に示した一連の工程を経た後、図20に示すような一連の工程を経ることにより、より効果的な学習を行うことができる。
すなわち、学習者は、同図に示すように、ステップS41において、音楽と同じ会話の状況を示す映像を見た後、ステップS42において、任意に選択した一の役を映像にあわせて模倣発声し、これを繰り返した後、ステップS43において、他の役も映像にあわせて模倣発声し、これを繰り返す。なお、ステップS42及びステップS43においては、映像にあわせて音楽を出力するパターンと、音楽を出力しないパターンとについて行う。
そして、学習者は、全てのパートについてステップS42及びステップS43の動作を行うと、ステップS44において、全ての役を音楽及び映像にあわせて一人で模倣発声し、これを繰り返し行う。
学習者は、このような視覚的情報が付与された言語学習材料を用いてロールプレイを行うことにより、より現実に即した効果的な学習を行うことができる。さらに、学習者は、可能であれば、パートナーをみつけて実際に学習した会話をしたりアレンジをしたりし、学習したリズムを維持しながら練習を行うと効果的である。
なお、このような視覚的情報が付与された言語学習材料は、記録媒体のみならず、学習講座番組等としてテレビジョン等の放送や映画を介して頒布することも可能であり、上述した各種情報処理装置で実行可能なコンテンツとして提供することもできる。また、この言語学習材料は、上述したように、音楽コンサート形式や催事、教師等による実演によっても提供することができる。
また、上述した実施の形態では、非母国語として英語を採用し、英語の聞き取り及び発声を学習することに主眼をおいた説明を行ったが、本発明は、英語以外の任意の言語について適用することができるのは勿論である。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
最後に、本発明にかかる言語学習材料を用いて複数の被験者に対して行った実習例とその結果について説明する。
まず、第1の実習例として、a)中学1〜3年生、b)高校1〜3年生、c)大学1,2年生、d)大学3,4年生、e)20代社会人、f)30代社会人、g)40代社会人、h)50代社会人の8つグループについて、それぞれ、男性25人及び女性25人を無作為に選び、これらを被験者として60分間の教室内訓練を行った。
まず、最初に、言語学習材料として、楽曲をともなう歌詞入りの曲を3回聴いてもらった。その結果、曲を3回目に流した段階で、a)からf)のグループに属する被験者の約40%が小さい声を出して歌詞を発話し始めた。その後、リデュースド・フォーム、アクセント、リズムを説明した上で、リズムにあわせてうまく歌えるコツを指導し、先に図15乃至図17に示した工程にしたがって、リズムにあわせた発話訓練を行った。その結果、習得時間に個人差、年齢差はあったものの、全員が60分間でかなりネイティブに近いリズムと発音とを体得することができた。ただし、年齢層が若いほど習得時間が短く、高齢になるにしたがって習得時間が遅くなる傾向がみられた。また、音楽に堪能な人ほど習得時間が短く、音楽が苦手な人ほど習得時間が長くなる傾向もみられた。いずれの被験者も、比較的短時間でネイティブと同じ発音とリズムとを行うことができるようになったことに歓喜し、自主的に何度も曲をかけて練習したり、スムーズに歌えるように暗記をし始めたり、友人同士で歌詞を参考に会話をし始めた。訓練終了後も、曲を歌いながら退室するほどの熱心振りであった。この結果、聴覚による学習能力においては、習得時間に個人差、年齢差はあるものの、時間をかけて丁寧に綺麗な発音とリズムとを発話するコツを指導すれば、全員がネイティブに近い発音を習得できることがわかった。習得に時間がかかる学習者には、その旨を説明した上で、マイペースで楽しみながら学習することを勧め、その学習者の能力にあった丁寧な指導を随時する必要があることも確認することができた。
つぎに、第2の実習例として、第1の実習例とは異なる大学1〜4年生40人(男性20人、女性20人)を1つのグループとした5つのグループを作成し、先に図15乃至図17に示した工程にしたがった週1回2時間の訓練を2ヶ月にわたって行い、その結果のアンケート調査を行った。
その結果、200人のアンケートの中で最も多かった回答は、「生まれて初めて本物の英語に触れることができた」、「外国人の英語が聞き取れなかった理由がよくわかった」、「英語がよくわかるようになった」、「英語がうまく話せるようになった」、「口がよく動くようになり他の英語の先生に誉められた」、「もっと継続したい」、「英語が好きになった」、「自信が出てきた」、「自宅でものすごく練習できた」、「楽しかった」という内容であり、99.5%の被験者が極めてポジティブな回答をした。200人のうち1人のみが、「内向的な性格なので、他の人と会話をするのが億劫だった」と回答した。そこで、内向的な性格の被験者に対しては、カセットテープやCDを自分の好きな場所で聴いて練習することを指導してみたところ、6週目から積極性がみられはじめ、他の人との会話ができるようになり、明るさがみられた。最終的に、200人全員から「英語学習が楽しくなり、学習を継続したい」という回答を得ることができた。
つぎに、第3の実習例として、第2の実習例に参加してもらった被験者に対して、訓練前と訓練後に同じレベルのネイティブの英会話や英語ニュースを聴いてもらい、その理解度を比較した。
その結果、全員が、訓練前にはリスニングで理解できなかった英文も、訓練後には1,2回聴いただけで理解ができるようになり、且つ、聞いた直後に自分一人でその文を復唱し、書面に書くことまでできる能力が備わっていた。書き取りには、多少のスペルミスがあったものの、全員がリデュースド・フォームを把握し、その意味を理解していることが確認できた。
つぎに、第4の実習例として、リデュースド・フォームを習ったことのない大学1年生20人を対象に、同じレベルのリデュースド・フォームを多く用いた長文を、訓練前と15分間の訓練後にそれぞれ発話してもらい、これをビデオテープに記録して比較研究を行った。
その結果、訓練前は、日本語のリズムで多くの音節を含んで発話していたのに対して、訓練後は、全員がリデュースド・フォームを習得して英語のリズムで発話するまでに至ったが、長文や長い単語で引っかかる傾向がみられた。そのため、ジェスチャを用いて英語独自のリズムのとり方を実演指導した。驚くことに、ジェスチャを模倣して取り入れるだけで、全員が引っかかっていた箇所を改良し、あっという間に綺麗な発音とリズムで発話することに成功した。その成果に、被験者自らも驚嘆し、積極的に発話中にジェスチャを取り入れ始めた。
つぎに、第5の実習例として、第4の実習例に参加してもらった被験者に対して、先に図15乃至図17に示した工程にしたがった訓練を行った後、会話、リデュースド・フォーム、スピード、レスポンス、ジェスチャ等の学習効果がどの程度定着できたかを確認するため、訓練直後と1週間後における発話をビデオテープに記録して比較研究を行った。
その結果、訓練直後はスムーズに発話できるようになっても、1週間後には、40%程度の内容を忘却してしまった被験者から、100%の内容を覚えていた被験者までが認められ、その定着率に大きな差が見られた。アンケート調査の結果、これは、自主学習をどれだけ行ったかに比例していることが確認され、言語学習効果の定着には、反復練習が必要であることが認められた。
Claims (7)
- 各種言語の聞き取り及び発声を学習するための言語学習材料を学習者に提供する言語学習材料提供方法であって、
所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように、当該楽曲及び当該歌詞を選択する第1の工程と、
選択した楽曲及び歌詞からなる一連の音楽を、聴覚的情報からなる上記言語学習材料として作成する第2の工程と、
作成した上記言語学習材料を、少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体に対して再生可能に記録する第3の工程とを備えること
を特徴とする言語学習材料提供方法。 - 上記楽曲は、旋律を有しない拍のみで構成されるもの、又は所定の旋律を有するものであること
を特徴とする請求項1記載の言語学習材料提供方法。 - 上記歌詞は、会話であること
を特徴とする請求項1記載の言語学習材料提供方法。 - 上記音楽は、旋律を有しない上記楽曲の拍にあわせて歌詞を発話するもの、旋律を有する上記楽曲の当該旋律にかかわらず拍にあわせて歌詞を発話するもの、及び/又は旋律を有する上記楽曲の当該旋律にあわせて歌詞を発話するものを含むこと
を特徴とする請求項1記載の言語学習材料提供方法。 - 上記言語学習材料は、学習を支援するためのより詳細な情報として、個々の文字の発音とその発声の仕方、歌詞を構成する各単語の発声音、歌詞に含まれるリデュースド・フォームの発声音、及び/又は本来のリズムよりも遅いテンポのリズムにあわせた一文毎の発声音を含み、
上記学習を支援するためのより詳細な情報は、その文字及び/又は単語のアクセントを、所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して合致させたものであること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項記載の言語学習材料提供方法。 - 上記第2の工程では、上記楽曲及び上記歌詞からなる聴覚的情報としての一連の音楽の他、少なくとも上記歌詞を発話する演技者の視覚的情報としての映像を含むように上記言語学習材料を作成し、
上記第3の工程では、作成した上記言語学習材料を、上記音声情報に加えて映像情報をも記録することが可能な上記記録媒体に対して再生可能に記録すること
を特徴とする請求項1記載の言語学習言語学習材料提供方法。 - 各種言語の聞き取り及び発声を学習するための言語学習材料を含む言語学習教材であって、
少なくとも音声情報を記録することが可能な記録媒体から作成されており、
上記言語学習材料は、所定の楽曲を構成する音のうち拍にある音に対して、学習させたい目標文字列としての歌詞を構成する文字及び/又は単語のアクセントが合致するように選択された当該楽曲及び当該歌詞からなる聴覚的情報としての一連の音楽であること
を特徴とする言語学習教材。
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