JP2005172522A - 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体。
【選択図】 なし
Description
[1] 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体、
[2] 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が結合している[1]の複合体、
[3] 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が脂質二重膜の構成成分が含むメタルイオンと結合し得る官能基を介して結合している[1]または[2]の複合体、
[4] メタルイオンと結合し得る官能基がリン酸基、カルボキシル基、チオール基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基およびイミダゾール基、グアニジノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基である[3]の複合体、
[5] ナノサイズ蛍光体がZnS:Mnである、[1]から[4]のいずれかの複合体、
[6] さらに、コレステロール誘導体を含む[5]の複合体、
[7] コレステロール誘導体がCHEMSである、[6]の複合体、
[8] 脂質二重膜に含まれるリン酸基、カルボキシル基の数が、複合体の蛍光強度を高めるような数に調節されている、[1]から[7]のいずれかの複合体、
[9] ポリマー鎖が表面に導入されている、分散安定性の高い[1]から[8]のいずれかの複合体、
[10] ポリマー鎖が脂質二重膜を構成する化合物に共有結合により結合している[9]の複合体、
[11] ポリマー鎖が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである[9]または[10]の複合体、
[12] 脂質二重膜がリポソームを構成している[1]から[11]のいずれかの複合体、
[13] リポソームの外側表面にナノサイズ蛍光体が結合している[12]の複合体、
[14] ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に封入されている[12]の複合体、
[15] ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に遊離の状態で封入されている[14]の複合体、
[16] 脂質二重膜がキャストフィルムを構成している[1]から[11]のいずれかの複合体、
[17] ナノサイズ蛍光体とリポソームを接触させることを含むリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の製造方法、
[18] ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後、一定時間経過後にリポソームを反応系に添加する、[17]の複合体の製造方法、
[19] ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する[18]の複合体の製造方法、
[20] Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後に、反応系にリポソームを添加する、[19]の複合体の製造方法、
[21] Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後、30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する[20]の複合体の製造方法、
[22] [1]から[16]のいずれかの脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体において、脂質二重膜の周囲の液のpHを変化させて、脂質二重膜に含まれるリン酸基またはカルボキシル基の解離状態を変化させ、それによりナノサイズ蛍光体の蛍光特性を調節する方法、
[23] [1]から[16]のいずれかの脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質が結合している該物質を検出するためのリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体、
[24] 検出しようとする物質に特異的に結合する物質が、抗原、抗体、核酸、リガンド、レセプターからなる群から選択される[23]の複合体、
[25] [23]または[24]の複合体を含む物質の検出のためのキット、
[26] 複合体が凍結乾燥品である、[25]のキット、ならびに
[27] 物質の検出方法であって、[23]または[24]に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質を結合させ、該複合体と前記検出しようとする物質を接触させ、複合体と物質が結合したものを分離し、該複合体と物質が結合したものが発する蛍光を測定することを含む、物質の検出方法。
基本的には、リポソームとナノサイズ蛍光体を混合すればよい。例えば、リポソームを上述の方法で作製し、リポソームを含む溶液中で上述の方法でナノサイズ蛍光体を形成させてもよいし、またナノサイズ蛍光体を形成させ、形成終了後または形成途中にリポソームを添加してもよい。さらに、リポソームとナノサイズ蛍光体の作製を同一容器内で同時に行わせてもよい。この際、ナノサイズ蛍光体は比表面積が大きく、表面エネルギーが高いため凝集性が大きいので、ナノサイズ蛍光体のみを作製した場合、ナノサイズ蛍光体同士が凝集してしまう。これを避けるために、凝集を防ぐために表面をコートしたナノサイズ蛍光体を用いてもよい。好適には、ナノサイズ蛍光体が形成されると同時にリポソームに結合するようにする。このためには、ナノサイズ蛍光体の作製を開始し、一定時間の合成反応経過後にリポソームを添加するのが望ましい。この際、リポソームを添加する時間が重要であり、ナノサイズ蛍光体の材料を混合し反応を開始させた後に、5分から90分、好ましくは30分から60分経過後にリポソームを添加する。また、リポソームとナノサイズ蛍光体の混合の仕方により、リポソーム内表面にナノサイズ蛍光体が結合した複合体やリポソームの外表面と内表面の両方にナノサイズ蛍光体が結合した複合体を作製することができる。例えば、あらかじめ、ナノサイズ蛍光体を作製しておき、リポソームを作製するときにナノサイズ蛍光体を添加することにより、リポソーム内表面にナノサイズ蛍光体が結合した複合体やリポソームの外表面と内表面の両方にナノサイズ蛍光体が結合した複合体を作製することができる。また、リポソームにナノサイズ蛍光体を結合させるための官能基を導入しないで、複合体を作製すると、リポソーム小胞内に遊離のナノサイズ蛍光体が封じ込められた構造を有する、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製することができる。本発明の複合体は、このような複合体も包含する。
脂質二重膜に結合させるナノサイズ蛍光体の数が多いほど、複合体として発する蛍光の強度が高くなる。
リポソームを構成する化合物として、ジミルストイルフォスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびCHEMS(Cholesteryl hemisuccinate)を用いた。
リン脂質を作製するに当たり、DMPEおよびDOPEへ以下のようにしてスルフヒドリル基を導入した。
DMPE 10.44mg(15.Oμmol)を30m1サンプル管に入れ、クロロホルムとメタノールの混合溶液10m1(クロロホルム:メタノール=9:1、トリエチルアミン27.8μmo1含有)に溶解した。これに、2-Iminothiolane・HC1(Traut’s Reagent)4.13mg(30.0μmol)を加え、攪拌下で24時間反応させた(図5)。
また、DOPE 11.16mg(15.Oμmol)にクロロホルム10mlを加え、DOPEが溶解するまでトリエチルアミンを適量加えた。これにTraut’s Reagent 4.13mg(30.0μmol)を加え、攪拌下で24時間反応させた(図5)。
脂質を50mMスリ付きナス型フラスコに入れ、適量のクロロホルムで溶解した。ロータリーエバポレーターにて減圧下で溶媒を除去した後、さらに4時間減圧乾燥を行い、脂質フィルムを得た。
2-PDS
2-PDSは、有機溶媒中でスルフヒドリル基と反応し、反応量と同量のpyridine-2-thioneを生成する(図8)。このpyridine-2-thioneは、今回用いる溶媒のクロロホルム中では370.5nmに吸収極大波長を持つ。よって、2-Aminoethanethiol(Cysteamine)を用いて検量線を引き、これからスルフヒドリル基の導入量を算出した。
Ellman’s Reagent(DTNB)は、水溶液中でスルフヒドリル基と反応し、412.0nmに吸収極大波長を持つTNBを反応量と同量生成する(図9)。よって、上記と同様に、Cysteamineを用いた検量線から、スルフヒドリル基の導入量を算出した。ここで、バッファーは、PBを用いた。HEPESバッファーでは、DTNBのジスルフィド結合と反応してしまうためである。
リン脂質を水溶液に懸濁するとその親水性基が水和し、疎水性基は疎水性基同士で集合するため、脂質二重層が形成される。このリポソーム懸濁液を凍結すると水和していた水分子は氷を形成するようになり、親水性基に結合していた水分子が親水性基からはなれ、脂質二重層同士が近づき融合する。次の融解過程で、水分子は再び親水性基に結合するが、得られる二重層膜は再配列を起こし、大きなリポソームが形成される。
今回は、凍結には液体窒素を用い、融解には相転移温度TC+10℃(CHEMSが含まれる場合は41℃)の恒温槽を用いた。
作製したMLVを機械的に切断すると、再び閉鎖小胞となるときにサイズ変化などが起こる。この性質を利用してMLVを超音波処理するとラメラ数とリポソームサイズが減少し、やがて均一性の高いSUVが得られる。この方法では、相転移温度TC+10℃以上で行う必要がある。
MLVを一定のポアサイズを通すことによりSUVを得ることができる。均一性をあげるためには、MLVを凍結融解法により大きなMLVを得た後、この方法を用いる。
また、MLVのサイズの上限を揃えるためにも利用される方法である。
レーザー光線をリポソーム懸濁液に照射すると、散乱光が揺らいでいるのが確認できる。その散乱光の揺らぎは、懸濁液中の粒子がブラウン運動をしているために、散乱光の干渉による強度分布が絶えず揺らぐことにより生じ、粒子径が小さいほど揺らぎも速く、大きいほど遅くなる。この揺らぎを観測し、統計的処理から粒子径を求めるのが動的光散乱法である。光子相関分光法(Photon Correlation Spectroscopy:PCS)は、この動的光散乱法に基づき、ブラウン運動している粒子にHe-Neレーザーを照射することで起こる、レイリー散乱の散乱光強度が経時変化するという現象を利用したものである。これにより拡散係数Dを求め、ストークス・アインシュタイン式より粒子径Rを算出できる。
κ:ボルツマン定数 T:絶対温度 η0:粘性率 D:拡散係数
リン脂質に硫酸及び過マンガン酸塩を加え、沸騰中で加熱すると、酸化分解され、構成成分であるリン酸が生成する。ここに生じた無機リン酸にモリブデン酸アンモニウム及び還元剤を加えると、モリブデンブルーが生成し、青色を呈する。この吸光度を測定することにより試料中のリン脂質濃度を求める方法である。
DMPE、Traut's Reagent及びDMPE-SHの1H-NMRスペクトル解析を行った。DMPE-SHとTraut's Reagentは重クロロホルムのみ、DMPEは重クロロホルムと重メタノールの混合溶媒でないと溶けないため、定量することはできなかったが、スルフヒドリル基を導入できたことは確認できた。
2-PDSを用いたスルフヒドリル基の定量により、DMPE-SHの収率は20.0%であることが分かった。
DOPE及びDOPE-SHの1H-NMRスペクトル解析により、スルフヒドリル基を導入できたことを確認できた。
DMPE-SH及びDMPEの相転移温度は48℃であり、エクストルージョン法では相転移温度+10℃、つまり今回の場合は58℃にする必要がある。ただ、この温度は機械に対して影響を与える温度で、エクストルーダーの操作も難しい。よって、DMPE-SH及びDMPEを含むリポソームを作製する際は、超音波処理法を用いることにした。
上述の方法で作製したDOPE-SH、及びDOPE,CHEMSの混合リポソーム(DOPE-SH:DOPE:CHMES=0:6:4,2:4:4,3:3:4,4:2:4)を上記のエクストルージョン法で作製した(図11)。ここで、DOPE-SHリポソームを超音波処理にて水和させる時に、数滴の飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えることで溶液のpHを上げ、水和しやすくした。
ただ、DOPE-SH:DOPE:CHEMS=4:2:4の組成比で作製したリポソーム懸濁液は、翌日には凝集してしまった。このことから、DOPE-SHのモル分率が高いと不安定になることが分かった。元来、DOPEは、コーン型リン脂質であり、親水部の構造から、pHが低下することで、荷電や水和状態が変化し、融合を引き起こしてしまう。このDOPEを改質したDOPE-SHは、このコーン型をさらに強調し、融合を引き起こす原因になってしまうので、DOPE-SHのモル分率を高くできないと考えられる。
よって、DOPE-SH:DOPE:CHEMS=0:6:4,2:4:4,3:3:4の組成で作製したリポソームが好適に用いられた。
(1) 試料の調製
カチオン溶液(0.09M Zn(CH3COO)2 0.01M Mn(CH3COO)2)
酢酸亜鉛二水和物396.68mgを超純水18mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Zn(CH3COO)2)。一方で、酢酸マンガン四水和物49.20mgを超純水20mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Mn(CH3COO)2)。
それぞれを十分に溶解した後、二つの水溶液を混合しカチオン溶液を調製した。
硫化ナトリウム九水和物488.28mgを超純水20mlに溶解させた。
分散安定剤(0.1M C6H5Na3O7)
クエン酸ナトリウム二水和物295.0mgを超純水10mlに溶解させた。
リポソーム懸濁液
上述のように作製したリポソーム懸濁液を、分離用小型超遠心機(日立工機株式会社)を用いて、70,000r.p.m 1hrにてリポソームを沈降させ、溶媒を超純水に置換した。
四つ口フラスコに超純水18mlを入れ、30℃で90分間窒素置換を行った。これに、分散安定剤200μlを加え、攪拌後、アニオン溶液400μlを加え、窒素置換下でさらに攪拌した。その後、カチオン溶液400μlを加えて、窒素置換下で90分間反応させた(図12および図13)。
Method A-1
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)とリポソーム懸濁液8mlを加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤200μl、アニオン溶液400μl、カチオン溶液400μlを順に加え、窒素置換中で反応させた(図14)。
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)とリポソーム懸濁液8mlを加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤400μl、アニオン溶液800μl、カチオン溶液800μlを順に加え、窒素置換中で反応させた。
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)を加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤200μl、アニオン溶液400μl、カチオン溶液400μlを順に加え、窒素置換中で反応させた。さらに、リポソーム懸濁液8mlを加えて反応させた(図14)。
また、アノディスクを用いたろ過を用いた精製も行った。
(i) 蛍光スペクトル(PL)および励起スペクトル(PLE)測定 分光蛍光光度計(F-2000形 株式会社日立製作所)
Xeランプを用いて試料を励起し、試料から出た蛍光強度を、分光蛍光光度計を用いて測定した。その測定条件は、表1の通りであり、そのときの励起波長は、各試料について分光蛍光光度計を用いて蛍光波長580mで励起スペクトルを測定し、その励起スペクトルのピークの波長を用いた。
FAS-II Electric U.V.Transilluminator(東洋紡績株式会社)
UVイルミネーターを用いて、波長300nmの紫外光をUVダークルームボックス内で試料に照射し、発光観察を行った。
作製した試料を、U-MWUフィルター(波長300-350nm)を用いた蛍光顕微鏡、及び、光学顕微鏡で観察した。
電界放射形透過電子顕微鏡(FE-TEM)(TECNAI20 フィリップス)
高速の電子が固体物質に衝突するとき、種々の相互作用が生じ、二次的な電子ならびに電磁波が発生する。物体が非常に薄い場合には、大部分の電子は透過し(透過電子)、一部の電子は弾性散乱、非弾性散乱を起こして試料を透過する(散乱電子)。FE-TEMでは、透過電子、弾性散乱電子あるいはそれらの干渉波を拡大、結像し観察する方法である。
ナノサイズ蛍光体ZnS:Mnとリポソームの複合体の作製の結果は以下の通りであった。
上述の方法でZnS:Mnを作製し、分離用小型遠心機を用いて回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、その上清と沈降物を再分散させた試料について、蛍光波長測定、UV照射による発光観察、FE-TEM及び蛍光顕微鏡による形態観察を行った。
蛍光波長測定の結果を図15に示す。
回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離した後の沈降物を再分散させた試料の蛍光強度は強く、シャープであった。これは、ZnS:Mnナノサイズ蛍光体が生成され、Mn2+による発光が起こっていることを示唆している。
上述の方法で作製したZnS:MnにFAS-IIを用いてUVを照射し、観察を行った。その結果を図16に示す。
図17に観察結果を示す。UV照射による観察と同様に、凝集体が多く観察され、橙色の発光が観察できた。このことからも、ZnS:Mn粒子ができてはいるが、ダングリングボンドの増加による分散安定性の減少から、凝集体を形成してしまっていることが分かった。
作製したZnS:MnのFE-TEMによる観察結果を図18に示す。ここでも、凝集体を多く観察できた。
(i) 作製方法の検討
上記のMethod A-1(リン脂質量3.30μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量1.13μmol)、およびMethod A-2(リン脂質量4.05μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量0.93μmol)、Method B(リン脂質量4.14μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量0.87μmol)で作製したZnS:Mnを、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離した後の上清の蛍光波長測定を行った。結果を表2及び図19に示す。
したがって、今後のリポソーム懸濁液中でのZnS:Mnの作製は、Method Bで行っていく。
遠心分離の回転数の検討
リポソームは、回転数13,000r.p.mで20分間の遠心分離では、ほとんど沈降せず、回転数70,000r.p.mで1時間の遠心分離により全てを回収できることから(図20)、上記(i)では、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離し、上清をZnS:Mnと反応したリポソームおよび分散しているZnS:Mnが存在するものとしていた。
上記の結果から、作製したZnS:Mnを回転数3,000r.p.mで10分間遠心分離した上清と、その上清をさらに回転数70,000r.p.mで遠心分離した沈降物を再分散させた試料には、リポソームがあると考えられる。そこで、動的光散乱法による粒径測定を行うことで、リポソームの有無を確認した。さらに、測定した試料に界面活性剤(TritonX-100)を加え、リポソームと十分に反応させた後、粒径測定を行った。これらの結果を図21に示す。
Method BによりZnS:Mnを作製した。条件を表4に示す。
作製した試料を、それぞれ回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、凝集物を取り除いた。また、その得られた上清をさらに回転数70,000r.p.mで1時間遠心分離を行い、未反応溶液から超純水へ溶媒置換を行った(0.3倍希釈)。
遠心分離をしない試料、及び遠心分離により得られた試料について、それぞれ蛍光波長測定(図22A、図22Bおよび図22C)、及びUV照射による発光観察を行った(図23)。
まず比較として、リポソームを添加しない条件のサンプル(c)について、蛍光波長測定(図24)及びUV照射による観察を行った(図25)。この結果から、ZnS:Mnの表面修飾がクエン酸ナトリウムのみであると、ZnS:Mnナノサイズ蛍光体は、不安定となり凝集してしまうことが分かった。
蛍光顕微鏡観察
図29に観察結果を示す。これから、Mn2+による橙色の発光が観察された。しかし、硫黄の欠陥や、リン酸基とカルボキシル基による青色の発光も多く観察された。これは、励起波長が実際の値より長波長側で励起しているために、Mn2+へのエネルギー移動が十分にできていないためと考えられる。
作製した試料の凝集物を回転数3,000r.p.mの遠心分離により取り除き、回転数70,000r.p.mで沈降させ、DOPE-SHリポソームとZnS:Mnの複合体の試料をリン脂質濃度約0.5mMに調整した。これを、マイクログリッドA(応研商事株式会社)に乗せ、約40秒後に余分な水分をろ紙で吸い取った。その後すぐに、FE-TEMを用いた形態観察を行った。
上記(iii)で、ZnS:Mn-リポソーム複合体が形成できていることが判明した。そこで、リポソーム量(リン脂質量)を変えて、その蛍光強度測定を行うことで、リポソーム量の変化に伴う影響を検討した。
Method BによりZnS:Mnを作製した。条件を表7に示す。
作製した試料を、それぞれ回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、凝集物を取り除いた。
PEG-DOPEの作製
methoxy poly(ethylene glycol)とDOPE(1:1.5)をクロロホルムに溶解し、TEA存在下で24時間反応させた。これを再結晶及びろ過により、PEG-DOPEを得た。この生成物について、ニンヒドリン反応及び1H-NMRを用いて同定を行い、PEG-DOPEを作製できたことを確認した。
以下の組成で、リポソームを作製した。
[Sample]
A:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.5 (リン脂質量4.0μmol)
B:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.1 (リン脂質量4.5μmol)
C:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=6.0:4:0 (リン脂質量4.3μmol)
I:PEG-DOPE Liposome懸濁液中でのZnS:Mnの作製
以下の組成で、リポソームを作製した。
[Sample]
A:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.75:4:0.25(脂質量:3.06μmol)
B:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.5(脂質量:2.89μmol)
C:DPPC:PEG-DOPE=9.5:0.5(脂質量:3.07μmol)
4ツ口フラスコに超純水12ml(30℃)を加え、90分間窒素置換した後、0.1Mクエン酸ナトリウム二水和物0.2ml、0.1M硫化ナトリウム九水和物0.4ml、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の混合溶液(9:1 0.1M 0.4ml)を順に加え、窒素置換中で反応させた。反応時間は5,45,90分後とし、その後、DOPEリポソーム懸濁液(脂質量3.0μmol)を加えて、2時間反応させた。この蛍光波長測定の結果を図36に示す。
4ツ口フラスコに超純水12mlを加え、90分間の窒素置換後、0.1Mクエン酸ナトリウム二水和物200μl、0.1M硫化ナトリウム九水和物400μl、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の0.1M混合溶液(Zn:Mn=9:1)400μlを順に加え、窒素置換中で90分間反応させた。さらに、表8の組成でリポソーム分散液(リン脂質濃度:2μmol、8ml)を加えて120分間反応させた。反応後は、15,000r.p.m.で2分間遠心分離を行い、その上清をフィルターに通すことで精製を行った。
Claims (27)
- 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体。
- 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が結合している請求項1記載の複合体。
- 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が脂質二重膜の構成成分が含むメタルイオンと結合し得る官能基を介して結合している請求項1または2記載の複合体。
- メタルイオンと結合し得る官能基がリン酸基、カルボキシル基、チオール基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基およびイミダゾール基、グアニジノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基である請求項3記載の複合体。
- ナノサイズ蛍光体がZnS:Mnである、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合体。
- さらに、コレステロール誘導体を含む請求項5記載の複合体。
- コレステロール誘導体がCHEMSである、請求項6記載の複合体。
- 脂質二重膜に含まれるリン酸基、カルボキシル基の数が、複合体の蛍光強度を高めるような数に調節されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の複合体。
- ポリマー鎖が表面に導入されている、分散安定性の高い請求項1から8のいずれか1項に記載の複合体。
- ポリマー鎖が脂質二重膜を構成する化合物に共有結合により結合している請求項9記載の複合体。
- ポリマー鎖が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである請求項9または10に記載の複合体。
- 脂質二重膜がリポソームを構成している請求項1から11のいずれか1項に記載の複合体。
- リポソームの外側表面にナノサイズ蛍光体が結合している請求項12記載の複合体。
- ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に封入されている請求項12記載の複合体。
- ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に遊離の状態で封入されている請求項14記載の複合体。
- 脂質二重膜がキャストフィルムを構成している請求項1から11のいずれか1項に記載の複合体。
- ナノサイズ蛍光体とリポソームを接触させることを含むリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の製造方法。
- ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後、一定時間経過後にリポソームを反応系に添加する、請求項17記載の複合体の製造方法。
- ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する請求項18記載の複合体の製造方法。
- Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後に、反応系にリポソームを添加する、請求項19記載の複合体の製造方法。
- Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後、30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する請求項20記載の複合体の製造方法。
- 請求項1から16のいずれか1項に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体において、脂質二重膜の周囲の液のpHを変化させて、脂質二重膜に含まれるリン酸基またはカルボキシル基の解離状態を変化させ、それによりナノサイズ蛍光体の蛍光特性を調節する方法。
- 請求項1から16のいずれか1項に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質が結合している該物質を検出するためのリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体。
- 検出しようとする物質に特異的に結合する物質が、抗原、抗体、核酸、リガンド、レセプターからなる群から選択される請求項23記載の複合体。
- 請求項23または24に記載の複合体を含む物質の検出のためのキット。
- 複合体が凍結乾燥品である、請求項25記載のキット。
- 物質の検出方法であって、請求項23または24に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質を結合させ、該複合体と前記検出しようとする物質を接触させ、複合体と物質が結合したものを分離し、該複合体と物質が結合したものが発する蛍光を測定することを含む、物質の検出方法。
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