JP2005172522A - 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体複合体 - Google Patents

脂質二重膜とナノサイズ蛍光体複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】 凝集しにくく、また発光効率が良好で、物質の検出等の広い用途に使用し得る、脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体の提供。
【解決手段】 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ナノサイズ蛍光体をリポソーム等の脂質二重膜に集積した複合体に関する。
近年ナノテクノロジーへの関心が高まっており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした新規機能材料が開発され、エレクトロニクス、エネルギー、医薬などの幅広い分野での応用が可能となっている。その中で、エレクトロニクス分野の光デバイスとして利用されている半導体にも注目が集まっている。
半導体物質は、励起光を吸収して遷移した励起状態から基底状態に戻るときに、発光が起こる。そのバンド構造は、それを構成する原子数に相当する分子軌道の集合と考えられ、ナノサイズ化し、原子数が減少すると、バルク状態のような縮退が解け、準位が離散的になる。つまり、価電子帯のHOMOのエネルギーは下がり、伝導体のLUMOのエネルギーは上がるので、バンドギャップが大きくなり、励起波長のブルーシフトが起こる。これが、半導体ナノサイズ蛍光体の特性の一つである量子サイズ効果である。
この半導体ナノサイズ蛍光体にMn2+をドープしたZnSナノサイズ蛍光体(ZnS:Mn2+ナノサイズ蛍光体)は、1994年にBhargavaらによって、ナノサイズ化による量子閉じ込め効果によって発光量子効率が増大することが報告された(非特許文献1参照)。また、共沈法を用いて作製したZnS:Mn2+のZnSとMn2+の金属イオンは、リン酸基またはカルボン酸基と相互作用するため、励起されたZnSのエネルギーは、リン酸基またはカルボン酸基へと移動し、さらにMn2+へ移動することにより発光強度が増大することが本発明者等により報告されている(非特許文献2参照)。
また、ナノサイズ化し、励起光を照射すると、バルク状態に比べて狭い空間に電子と正孔が閉じ込められるために(量子閉じ込め効果)、比較的安定に励起子が生成され、発光エネルギー効率の増大や、発光強度の増大が起こる。
一方、ナノサイズ化により表面のダングリングボンドが増えることによる発光効率の低下や、比表面積の増大により、表面エネルギーが増大し、凝集が起こりやすくなる。また、表面欠陥の増加により発光特性の減少が起こるという欠点も有する。そこで、これらの欠点を克服するために、保護安定剤を表面に吸着させることが行われている(特許文献1から3を参照)。
一方、脂質二重膜が閉鎖小胞体構造をとったものをリポソーム(ベシクル)といい、人工細胞としての研究材料となっていたり、ドラッグデリバリーシステムの担体として利用されていた。
特開平10-310770号公報 特開2000-104058号公報 特開2002-211471号公報 R.N.Bhargava et al., Phys. Rev. Lett. 72, 416 (1994) 表面科学Vol.22, No.5, pp.315-322, 2001
本発明は、従来のナノサイズ蛍光体の欠点を解消すべく、凝集しにくく、また発光効率が良好で、物質の検出等の広い用途に使用し得る、脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体の提供を目的とする。
本発明者等は、発光スペクトルがシャープで、ガウス分布的な対称な形状を有し、励起スペクトルと発光スペクトルとの重なりが小さく、粒子サイズに応じて励起波長や発光波長を制御でき、有機色素に比べて耐久性が優れており、退色しにくく、同一試料で蛍光顕微鏡と電子顕微鏡による組織観察ができるという優れた特性を有するナノサイズ蛍光体を利用するに当たり、ナノサイズ蛍光体の凝集しやすく、表面欠陥の増加により発光特性の劣化が起こるという欠点をいかにして克服できるかについて、鋭意検討を行った。
本発明者等は、凝集を抑制するためには、適当なテンプレートに集積化すればよいこと、また発光強度を増大化するには、テンプレートにリン酸基などによる化学修飾を行えばよいことを見出した。本発明者らは、リポソームにナノサイズ蛍光体を結合させるためにリポソームを構成する脂質の親水性基にSH基を導入し、さらにリポソームを構成する脂質等に発光特性を改善するためのリン酸基、およびカルボン酸を導入した。次いで、リポソームとナノサイズ蛍光体を混合するタイミングについて鋭意検討を行い、ナノサイズ蛍光体が凝集することなくリポソーム表面に結合する条件を見出した。本発明者等は、最終的にリポソームをテンプレートとして、リポソームにナノサイズ蛍光体を結合・集積させることにより、凝集しにくく、発光特性も優良な、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体、
[2] 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が結合している[1]の複合体、
[3] 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が脂質二重膜の構成成分が含むメタルイオンと結合し得る官能基を介して結合している[1]または[2]の複合体、
[4] メタルイオンと結合し得る官能基がリン酸基、カルボキシル基、チオール基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基およびイミダゾール基、グアニジノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基である[3]の複合体、
[5] ナノサイズ蛍光体がZnS:Mnである、[1]から[4]のいずれかの複合体、
[6] さらに、コレステロール誘導体を含む[5]の複合体、
[7] コレステロール誘導体がCHEMSである、[6]の複合体、
[8] 脂質二重膜に含まれるリン酸基、カルボキシル基の数が、複合体の蛍光強度を高めるような数に調節されている、[1]から[7]のいずれかの複合体、
[9] ポリマー鎖が表面に導入されている、分散安定性の高い[1]から[8]のいずれかの複合体、
[10] ポリマー鎖が脂質二重膜を構成する化合物に共有結合により結合している[9]の複合体、
[11] ポリマー鎖が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである[9]または[10]の複合体、
[12] 脂質二重膜がリポソームを構成している[1]から[11]のいずれかの複合体、
[13] リポソームの外側表面にナノサイズ蛍光体が結合している[12]の複合体、
[14] ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に封入されている[12]の複合体、
[15] ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に遊離の状態で封入されている[14]の複合体、
[16] 脂質二重膜がキャストフィルムを構成している[1]から[11]のいずれかの複合体、
[17] ナノサイズ蛍光体とリポソームを接触させることを含むリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の製造方法、
[18] ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後、一定時間経過後にリポソームを反応系に添加する、[17]の複合体の製造方法、
[19] ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する[18]の複合体の製造方法、
[20] Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後に、反応系にリポソームを添加する、[19]の複合体の製造方法、
[21] Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後、30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する[20]の複合体の製造方法、
[22] [1]から[16]のいずれかの脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体において、脂質二重膜の周囲の液のpHを変化させて、脂質二重膜に含まれるリン酸基またはカルボキシル基の解離状態を変化させ、それによりナノサイズ蛍光体の蛍光特性を調節する方法、
[23] [1]から[16]のいずれかの脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質が結合している該物質を検出するためのリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体、
[24] 検出しようとする物質に特異的に結合する物質が、抗原、抗体、核酸、リガンド、レセプターからなる群から選択される[23]の複合体、
[25] [23]または[24]の複合体を含む物質の検出のためのキット、
[26] 複合体が凍結乾燥品である、[25]のキット、ならびに
[27] 物質の検出方法であって、[23]または[24]に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質を結合させ、該複合体と前記検出しようとする物質を接触させ、複合体と物質が結合したものを分離し、該複合体と物質が結合したものが発する蛍光を測定することを含む、物質の検出方法。
本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体作製法により、凝集しにくく、かつ蛍光特性の良好な脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体を得ることができ、脂質二重膜に導入する官能基を適宜選択することにより、蛍光スペクトル等の蛍光特性も任意に設定できる。本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は、生体試料中の物質の検出、in vivo でのイメージング、新規なディスプレイの開発等広い分野において応用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リポソーム等の脂質二重膜上にナノサイズ蛍光体を集積化させた、脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体である。
本発明において、「ナノサイズ蛍光体」とは、発光イオンがドープされた硫化物または酸化物または窒化物で、そのサイズが50nm以下である発光材料をいい、ナノサイズ蛍光体を含む複合粒子を含む。ナノサイズ蛍光体としてドープ型、コアシェル型があるが、本発明においてはいずれのナノサイズ蛍光体も用いることができる。硫化物、酸化物または窒化物として、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化亜鉛(ZnO)等の半導体材料が挙げられ、ドープするイオンとして、マンガン(Mn)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)または塩素(Cl)が挙げられる。ドープするイオンは複数であってもよい。ドープするイオンによりそれぞれ固有の発光性をもたせることが可能である。本明細書において、例えば、MnがドープされたZnSを「ZnS:Mn」と、Cu及びAlがドープされたZnSを「ZnS:Cu,Al」と表記する。また、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、ユーロピウム(Eu)、フッ素(F)を単体或いは化合物としてドープしてもそれぞれ固有の発光性をもたせることが可能である。ナノサイズ蛍光体はナノクリスタル、ナノクラスター、量子ドット等とも呼ばれることがあり、本発明において、このように呼ばれているものも含む。本発明において用い得るナノサイズ蛍光体は、これらに限定されず、特開平10-310770号公報、A.P. Alivisatos et al. MRS Bull., No.2, 18 (1998)、T.Trindade et al., Chem.Mater. 13 3843 (2001)、磯部徹彦,未来材料3, 26 (2003)、磯部徹彦,照明学会誌 87, 256 (2003)、T.Isobe, Recent Res.Dev.Mater.Sci.3, 441(2002)、磯部徹彦,応用物理 70, 1087 (2001)、磯部徹彦,表面科学 22, 315 (2001、磯部徹彦,機能材料 19, 17 (1999)、仙名保 他,ディスプレイアンドイメージング 7, 3(1998)等に記載の公知の全てのナノサイズ蛍光体を用いることができる。また、市販のナノサイズ蛍光体を用いることもできる。市販のナノサイズ蛍光体として、例えば、Q dot(商標)(住商バイオサイエンス株式会社)等がある。本発明で用いるナノサイズ蛍光体のサイズ(粒径)は、50nm以下、好ましくは10nm以下であり、用いる材料によりサイズが決まる。また、粒子サイズにより、蛍光波長が変化するナノサイズ蛍光体であってもよい。このように、粒子サイズにより蛍光波長が変化するナノサイズ蛍光体として、CdSe/ZnSやCd/Se/SiO2などのコアシェル型ナノサイズ蛍光体があり、例えば上述のQ dot(商標)(住商バイオサイエンス株式会社)が挙げられる。
ナノサイズ蛍光体の合成も公知の方法で行うことができ、例えば上述の文献を参照すればよい。一例としてZnS:Mnの合成法の概要を以下に示す。
純水にN2ガスを通し、脱気する。ついで、クエン酸ナトリウム溶液、Na2S溶液、Zn(CH3COO)2溶液およびMn(CH3COO)2溶液を純水中に添加する。N2ガスを通しながら混合する。このような操作でZnS:Mnナノサイズ蛍光体が形成される。形成されたナノサイズ蛍光体は、遠心分離により回収することができる。
本発明において、「脂質二重膜」とは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される膜状の構造物をいい、「リポソーム」とは該構造物が構成する閉鎖小胞を意味し、ベシクル(vesicle)ともいう。
本発明のリポソームを構成する脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはフォスファチジルグリセロール類、コレステロール類等が挙げられ、フォスファチジルコリン類としては、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルコリン等が、また、フォスファチジルエタノールアミン類としては、ジオレイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(DSPE)等が、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類としては、ジミリストイルフォスファチジン酸、ジパルミトイルフォスファチジン酸、ジステアロイルフォスファチジン酸、ジセチルリン酸等が、ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGD1a、ガングリオシドGT1b等が、糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、フォスファチド、グロボシド等が、フォスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルフォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等が好ましい。このうち、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類もしくは糖脂質類、コレステロール類はリポソームの安定性を上昇させる効果を有するので、構成脂質として添加するのが望ましい。また、一本鎖の脂肪酸、アルコール等を混ぜてもよい。さらに、上記の脂質ばかりではなく、親水部と疎水部からなる両親媒性化合物を含んでいてもよい。この場合、親水部としてはカチオン性、アニオン性、非イオン性、双性イオン性のものいずれも用いることができ、疎水部としては2本鎖アルキル等を用いることができる。これらの脂質や両親媒性化合物の複数を含んでもよいが、脂質の脂肪酸の長さ(脂肪酸の炭素骨格の炭素の数)または両親媒性化合物の疎水部の長さを同程度にすることが望ましい。
上記に挙げた化合物の中でも、DOPE、DPPC、DSPE等が好適に用いられる。この中でも、水和層の特性からDOPEがZnS:Mnを多く吸着するので、蛍光強度が高くなり、高蛍光強度の複合物を好適に作製することができる。また、後述のようにカルボキシル基を導入したコレステロール(CHEMS)も好ましい。さらに、後述のように、リポソーム複合体の分散安定性を高めるためには、PEG等のポリマーを結合した脂質等を混合するのが望ましい。
上記の脂質等の配合比率は限定されず、リポソームの所望の大きさ、所望の流動性等により適宜決定することができる。
なお、本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は、脂質二重膜が閉鎖小胞体構造をとっているリポソームに限定されない。最初にリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製し、その後、後述のキャスティング法によりフィルム状の脂質二重膜(キャストフィルム)とナノサイズ蛍光体の複合体を作製することができる。また、キャストフィルムをあらかじめ作製し、それにナノサイズ蛍光体を結合させてフィルム状の複合体としてもよい。
リポソームは、周知の方法に従い製造することができるが、これには、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等を挙げることができる。また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節することも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、概要を述べると、例えば、まずリポソームを構成する脂質等を含む混合液を蒸留し、容器内面に脂質膜を形成させ適当なバッファーに溶解させる。次いで、凍結融解を数回繰り返したのち、エクストクルージョン法により所望の粒径のリポソームを得ることができる。
本発明の脂質二重膜がリポソームの場合、リポソームの粒径は、30〜500nm、好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは70〜150nmである。
本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は、脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が結合することにより構成される。脂質二重膜がリポソームである場合、脂質二重膜表面は、脂質二重膜外側表面と内側表面の両方を包含する。後者の場合、ナノサイズ蛍光体はリポソームの内側表面に結合し、小胞内に閉じ込められた形で存在するか、あるいは内水相中に遊離の状態で存在する。ナノサイズ蛍光体と脂質二重膜の結合は、単純吸着によってもよいし、イオン結合によってもよいし、脂質二重膜を構成する化合物にナノサイズ蛍光体と結合し得る官能基を導入し、該官能基を介して結合させてもよい。ナノサイズ蛍光体と結合し得る官能基として、ナノサイズ蛍光体と共有結合または静電的相互作用により結合し得る基であり、例えばSH基、NH2基、リン酸基、カルボキシル基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基、イミダゾール基、グアニジノ基等が挙げられる。この場合、脂質二重膜を構成する脂質にSH基等を導入すればよい。該SH基は、ナノサイズ蛍光体のイオンと結合し得る。SH基は、脂質二重膜の構成成分として用いる脂質の親水性基に結合させることができ、例えばアミノ基を公知の方法でSH基に置換すること等により導入することができる。
図1および図2にリポソームとナノサイズ蛍光体の結合の例の模式図を示す。図1Aは、SH基を導入したリポソームの図を示す、図1Bは、該リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の図を示す。また、図2は、リポソーム中の種々の官能基とナノサイズ蛍光体との結合を示す。
本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は、脂質二重膜上にナノサイズ蛍光体を集積させており、脂質二重膜をテンプレートとして、集積させるともいえる。
本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は以下の方法で作製することができる。
基本的には、リポソームとナノサイズ蛍光体を混合すればよい。例えば、リポソームを上述の方法で作製し、リポソームを含む溶液中で上述の方法でナノサイズ蛍光体を形成させてもよいし、またナノサイズ蛍光体を形成させ、形成終了後または形成途中にリポソームを添加してもよい。さらに、リポソームとナノサイズ蛍光体の作製を同一容器内で同時に行わせてもよい。この際、ナノサイズ蛍光体は比表面積が大きく、表面エネルギーが高いため凝集性が大きいので、ナノサイズ蛍光体のみを作製した場合、ナノサイズ蛍光体同士が凝集してしまう。これを避けるために、凝集を防ぐために表面をコートしたナノサイズ蛍光体を用いてもよい。好適には、ナノサイズ蛍光体が形成されると同時にリポソームに結合するようにする。このためには、ナノサイズ蛍光体の作製を開始し、一定時間の合成反応経過後にリポソームを添加するのが望ましい。この際、リポソームを添加する時間が重要であり、ナノサイズ蛍光体の材料を混合し反応を開始させた後に、5分から90分、好ましくは30分から60分経過後にリポソームを添加する。また、リポソームとナノサイズ蛍光体の混合の仕方により、リポソーム内表面にナノサイズ蛍光体が結合した複合体やリポソームの外表面と内表面の両方にナノサイズ蛍光体が結合した複合体を作製することができる。例えば、あらかじめ、ナノサイズ蛍光体を作製しておき、リポソームを作製するときにナノサイズ蛍光体を添加することにより、リポソーム内表面にナノサイズ蛍光体が結合した複合体やリポソームの外表面と内表面の両方にナノサイズ蛍光体が結合した複合体を作製することができる。また、リポソームにナノサイズ蛍光体を結合させるための官能基を導入しないで、複合体を作製すると、リポソーム小胞内に遊離のナノサイズ蛍光体が封じ込められた構造を有する、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製することができる。本発明の複合体は、このような複合体も包含する。
リポソーム表面のナノサイズ蛍光体の結合量は、限定されず用途に応じて適宜調節することができる。例えば、強い蛍光強度を有するリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体が必要な場合は、リポソームの全面を覆うようにナノサイズ蛍光体を結合させればよい。また、複合体に別途タンパク質や核酸を結合させる場合は、そのためのスペースを残しておく必要があるので、結合密度を少な目にすればよい。また、脂質二重膜の特定の領域にドメイン状に結合させることもできる。
また、ナノサイズ蛍光体と複合体を構成する脂質等の特定の基により、ナノサイズ蛍光体の蛍光特性が影響を受ける。ナノサイズ蛍光体の蛍光特性の変化とは、蛍光スペクトルのシフトおよびピーク蛍光強度の変化を含む。例えば、O= (P=O、C=O)基のπ電子がナノサイズ蛍光体の蛍光特性を変化させ、蛍光強度を大きくする。これはZnS:Mnにおいて、Zn2+とMn2+の金属イオンが、リン酸基やカルボキシル基と相互作用をするため、励起されたZnSのエネルギーは、リン酸基やカルボキシル基へ移動し、さらにMn2+へ移動し、発光が起こるためであり、リン酸基やカルボキシル基を有する反応場を作ることで、より発光効率を上げ、かつZnS:Mn2+ナノサイズ蛍光体を集積化できるからである(図3、図4)。図4は、リン酸基およびカルボキシル基がMn2+に配位している状態を示す。また、リン酸基およびカルボキシル基でナノサイズ蛍光体を被覆することにより、量子閉じ込め効果や硫黄の表面欠陥を防ぐキャッピング効果も可能となり、発光量子効率が増大する。従って、O=基を有するリン酸基、カルボキシル基等の影響でナノサイズ蛍光体の蛍光強度が高くなる。従って、膜脂質表面にこれらの基を存在させればよい。これらの基の存在の仕方は限定されず、例えば、脂質二重膜を構成する脂質、コレステロール等の親水性基部分に結合させればよい。脂質二重膜を構成するリン脂質のリン酸基として存在させ得るし、また脂質の極性基にさらにO=基、リン酸基、カルボキシル基を化学修飾により導入してもよい。さらに、上述のように脂質二重膜の構成成分として、コレステロールを添加してもよいが、コレステロールにカルボキシル基を導入したコレステロール誘導体を添加してもよい。例えば、コレステロールにカルボキシル基を結合させたCHEMS(Cholesteryl hemisuccinate)を脂質二重膜の構成要素として混合させればよい。また、これらのナノサイズ蛍光体の蛍光特性を変化させ得る化合物の量も限定されず所望の蛍光スペクトルおよび/または蛍光強度が得られるように適宜変化させればよい、例えば、上述のCHEMSの存在量を多くすることにより、より蛍光強度の大きい複合体を得ることができる。当業者ならば、図3および4に示した発光の原理に基づいて如何なる基をどの程度の量導入すれば、どのような蛍光特性を有する複合体が得られるか容易に推測することができる。
また、例えば、これらの基がイオン化した状態と、していない状態でもナノサイズ蛍光体の蛍光特性が変化する。例えば、カルボキシル基が-COOHとして存在する場合と-COO-として存在する場合とで、その蛍光スペクトルが変化する。脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体が懸濁している液系のpHを変化させることにより、これらの基のイオン化程度が変わり、ナノサイズ蛍光体の蛍光特性が変化する。
脂質二重膜に結合させるナノサイズ蛍光体の数が多いほど、複合体として発する蛍光の強度が高くなる。
リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体をキャスト法により、基板上に平面状に固定化したり、あるいは自己支持性の膜とすることにより、脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体からなるキャストフィルムを得ることができる。キャストフィルムは公知のキャスト法により作製することができる。例えば、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を、クロロホルム/エタノール(4:1)に溶解し、該溶液をテフロンプレート等の基板上に滴下し、溶媒飽和蒸気下に静置し室温でゆっくりと溶媒を蒸発させればよい。基板上に固定化したままで用いることもでき、また、固体基板の材質や乾燥条件等を適宜設定することにより、基板から剥がして自己支持性の膜として用いることもできる。
なお、脂質二重膜を液系で構成させる場合、脂質二重膜は球状となりリポソームを構成するので、該リポソームをキャストすることによりフィルム状の脂質二重膜にナノサイズ蛍光体が結合した脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体を作製することができる。
さらに、本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体に特定の化合物を導入することによりリポソーム同士の凝集を抑制し、分散安定性の高い複合体を得ることができる。この場合に用いる化合物として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等のポリマーを挙げることができる。これらの化合物は、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製した後に、表面に結合させてもよいし、リポソームを作製する構成物質に結合させておいてもよい。前者の場合、リポソーム表面にあらかじめ共有結合によりPEG等と結合する官能基を導入しておけばよく、PEG等の結合は公知のPEG化法等に従って行うことができる。また、後者の場合、リポソームを構成する脂質の親水性基部分にPEG等を結合させておき、該PEG化脂質を含むリポソーム構成材料を用いてリポソームを作製すればよい。例えば、リポソームを作製する際に、N-モノメトキシポリエチレングリコルサクシニルジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(DSPE-PEG)等を用いればよい。
本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体は、複合体を特定のバッファー中に分散させた形で保存することも、凍結乾燥して保存することもできる。凍結乾燥する場合は、上述の分散安定化用の化合物を導入しておくことが望ましい。
本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は種々の用途に用いることができる。例えば、リポソームとナノサイズ蛍光体の複合体をラベルとして用いることができる。ラベルとして用いる際には、例えば、認識(定量、定性等の測定を含む)しようとする物質と特異的に相互作用する物質を複合体に結合させ、認識しようとする物質と複合体を結合させ、複合体の蛍光を測定することにより、該物質を認識させることができる。
従来、ナノサイズ蛍光体に直接特定の物質を結合させ、認識に用いることは行われていた。しかし、ナノサイズ蛍光体はサイズが極めて小さく、また物質を結合させるための官能基の導入も容易ではなかったので、表面に結合できる物質の量に限りがあった。従って、ナノサイズ蛍光体に直接物質を結合させて、認識に用いる場合感度等が充分ではなかった。本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体のサイズは、ナノサイズ蛍光体そのものよりはるかに大きく、またリポソーム表面に任意の官能基を導入できるので、いかなる物質も多量に結合させることができる。リポソームと特定の物質の結合は、公知の方法で行うことができる。例えば、タンパク質の場合、リポソーム上の官能基とタンパク質の有する官能基をビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3'-ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価性架橋試薬をリンカーとして用いて結合させることができる。例えば、新生化学実験講座1 タンパク質IV 構造機能相関 日本生化学会編、東京化学同人、1991年3月20日発行、の記載に従い行うことができる。
例えば、タンパク質等の抗原を認識しようとする場合は、複合体に該抗原に特異的に結合する抗体を結合させればよく、抗原-抗体反応により複合体と認識しようとする物質が結合する。この場合、本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体は、従来の免疫測定法で抗原または抗体の標識に用いられていた、酵素、放射性同位元素、蛍光色素等の代わりに用いることができる。また、抗原-抗体反応に限らず、リセプター-リガンドの関係を有する物質どうしならば、一方の物質を認識するために、他方の物質を複合体に結合させることができる。また、核酸とその核酸の塩基配列に相補的な塩基配列を有する核酸のハイブリダイゼーションを利用することもできる。DNAマイクロアレイを用いた、核酸の検出において、基板上に核酸を固定化しておき、生物組織や細胞から抽出した核酸を標識し、前記基板上の固定化核酸と接触させ、固定化核酸に相補的な核酸の検出を行う。本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体は、このような手法において核酸を標識するためのラベル材料としても用いることができる。さらに、本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を生体イメージングに用いることもできる。例えば、生体内に局在する物質に特異的に結合する物質を該複合体に結合させ、生体に投与することにより、複合体が局在物質に特異的に結合するので、蛍光を測定することにより、局在位置を知ることができる。生体内に局在する物質として、例えば癌細胞に特異的に発現する抗原が挙げられ、この場合、本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を癌検出のツールとして用いることができる。
さらに、ナノサイズ蛍光体がリポソーム小胞の中に遊離の状態で封じ込められている場合、リポソームに癌等の特定の細胞に特異的に発現する物質と結合する物質を結合させておくことにより、細胞に結合したリポソームと細胞の膜が融合し、ナノサイズ蛍光体が細胞に取り込まれる。すなわち、本発明のリポソームは特定の細胞を染色するためのツール、あるいは、特定の細胞に蛍光物質を導入するためのツールとしても用いることができる。
なお、上述のようにナノサイズ蛍光体毎に蛍光スペクトル等の蛍光特性が異なり、またリポソームに存在させるカルボキシル基等によってもリポソームに結合したナノサイズ蛍光体の蛍光特性が変化する。すなわち、種々の蛍光特性を有するリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を作製し、そのそれぞれに異なる物質を結合させるために、一度に複数の物質を認識し得る認識系を開発することができる。
さらに、上述のように本発明の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体は、キャストフィルムの構造を取り得る。該キャストフィルムは透明なフィルムであり、ナノサイズ蛍光体を適宜選択することにより、本発明の複合体でできたキャストフィルムを蛍光を発するディスプレイとして用いることができる。
更に、インクジェットプリンター等のプリンターを用いて、本発明のリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体を特定の基板上に塗布することができる、塗布パターンを適宜設定することにより、蛍光体回路を作製することも可能である。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕 リポソームの作製
リポソームを構成する化合物として、ジミルストイルフォスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびCHEMS(Cholesteryl hemisuccinate)を用いた。
リン脂質を作製するに当たり、DMPEおよびDOPEへ以下のようにしてスルフヒドリル基を導入した。
(1)DMPEおよびDOPEへのスルフヒドリル基の導入
DMPE 10.44mg(15.Oμmol)を30m1サンプル管に入れ、クロロホルムとメタノールの混合溶液10m1(クロロホルム:メタノール=9:1、トリエチルアミン27.8μmo1含有)に溶解した。これに、2-Iminothiolane・HC1(Traut’s Reagent)4.13mg(30.0μmol)を加え、攪拌下で24時間反応させた(図5)。
この反応の進行状況を薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography:TLC)(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=72:14:4)、及びニンヒドリン反応を用いて確認した。反応終了後、Traut’s Reagentを取り除くために、抽出を行った。その際、水層にpHを4程度にするために10wt%クエン酸水溶液、分離能を上げるために飽和食塩水を適量加えた。随時、取り除いた水層のTLC、及びTraut’s Reagentの吸光度を、U-2001形ダブルビーム分光光度計(株式会社日立製作所)を用いて測定することで、Traut’s Reagentが除去されたことを確認した。その後、無水硫酸ナトリウムを適量加え、オーバーナイトで脱水させた。そして、このクロロホルム層をろ過して、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した後、真空乾燥させた。この生成物の1H・NMRスペクトル解析を、核磁気共鳴装置(JNM-LA300 FT-NMR)を用いて行った。
また、導入したスルフヒドリル基の定量は、2,2'-Dithiodipyridine(2-PDS)を用いて行った。
また、DOPE 11.16mg(15.Oμmol)にクロロホルム10mlを加え、DOPEが溶解するまでトリエチルアミンを適量加えた。これにTraut’s Reagent 4.13mg(30.0μmol)を加え、攪拌下で24時間反応させた(図5)。
反応の進行状況の確認及び精製方法は、DMPEへのスルフヒドリル基の導入の場合と同様な方法で行った。また、得られた最終生成物の1H-NMRスペクトル解析を行い、2-PDSを用いてスルフヒドリル基の定量を行った。
(2) リポソームの作製
脂質を50mMスリ付きナス型フラスコに入れ、適量のクロロホルムで溶解した。ロータリーエバポレーターにて減圧下で溶媒を除去した後、さらに4時間減圧乾燥を行い、脂質フィルムを得た。
これに、バッファーあるいは超純水を1ml加え、超音波処理することで、脂質フィルムを水和させ、10mM多重膜リポソーム(multilamellar vesicle: MLV)を作製した(図6)。これを凍結融解法により大きなMLVを形成させた後、超音波処理法またはエクストルージョン法により、ほぼ100nmサイズの小さな一枚膜リポソーム(small unilamellar vesicle: SUV)を得た(図7)。
動的光散乱法により、作製したリポソームの粒径を測定し、リポソーム濃度は、リン脂質-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いた、過マンガン酸塩灰化法により求めた。また、リポソーム表面のスルフヒドリル基量は、Ellman’s Reagent を用いて求めた。
(i) スルフヒドリル基の定量
2-PDS
2-PDSは、有機溶媒中でスルフヒドリル基と反応し、反応量と同量のpyridine-2-thioneを生成する(図8)。このpyridine-2-thioneは、今回用いる溶媒のクロロホルム中では370.5nmに吸収極大波長を持つ。よって、2-Aminoethanethiol(Cysteamine)を用いて検量線を引き、これからスルフヒドリル基の導入量を算出した。
0.9mM 2-PDS溶液500μlを、Cysteamine 溶液500μl(0、0.03、0.1、0.15、0.3mM)と作製したDMPE-SHをクロロホルムに溶解した溶液にそれぞれ加え、15分間振蕩中で反応させた。その後、U-2001形ダブルビーム分光光度計(株式会社日立製作所)を用いて370.5nmの吸光度を測定し、これよりスルフヒドリル基の導入量を求めた。
Ellman’s Reagent
Ellman’s Reagent(DTNB)は、水溶液中でスルフヒドリル基と反応し、412.0nmに吸収極大波長を持つTNBを反応量と同量生成する(図9)。よって、上記と同様に、Cysteamineを用いた検量線から、スルフヒドリル基の導入量を算出した。ここで、バッファーは、PBを用いた。HEPESバッファーでは、DTNBのジスルフィド結合と反応してしまうためである。
1mM Ellman’s Reagent 500μlを、Cysteamine 溶液500μl(0、0.05、0.10、0.15mM)と作製したLiposome溶液にそれぞれ加え、15分間振蕩中で反応させた。その後、U-2001形ダブルビーム分光光度計(株式会社日立製作所)を用いて370.5nmの吸光度を測定し、これよりリポソームの外向きのスルフヒドリル基の導入量を求めた。
(ii) 凍結融解法
リン脂質を水溶液に懸濁するとその親水性基が水和し、疎水性基は疎水性基同士で集合するため、脂質二重層が形成される。このリポソーム懸濁液を凍結すると水和していた水分子は氷を形成するようになり、親水性基に結合していた水分子が親水性基からはなれ、脂質二重層同士が近づき融合する。次の融解過程で、水分子は再び親水性基に結合するが、得られる二重層膜は再配列を起こし、大きなリポソームが形成される。
今回は、凍結には液体窒素を用い、融解には相転移温度TC+10℃(CHEMSが含まれる場合は41℃)の恒温槽を用いた。
(iii) 超音波処理法
作製したMLVを機械的に切断すると、再び閉鎖小胞となるときにサイズ変化などが起こる。この性質を利用してMLVを超音波処理するとラメラ数とリポソームサイズが減少し、やがて均一性の高いSUVが得られる。この方法では、相転移温度TC+10℃以上で行う必要がある。
今回は、プローブ型ソニケーターを用いてMLVを20分間超音波処理することにより、SUVを得た。その後、チタンチップのクズを除去するために、2500r.p.mで10分間遠心分離を行い、この上澄み液をSUV溶液とした。
(iv) エクストルージョン法
MLVを一定のポアサイズを通すことによりSUVを得ることができる。均一性をあげるためには、MLVを凍結融解法により大きなMLVを得た後、この方法を用いる。
また、MLVのサイズの上限を揃えるためにも利用される方法である。
今回は、エクストルーダー(Avestin,Inc)に100nmのポアを持つポリカーボネート膜をセットし、リポソーム懸濁液を20回以上エクストルーダーにかけることで、ほぼ100nmサイズのリポソームを得た。
(v) 動的光散乱法
レーザー光線をリポソーム懸濁液に照射すると、散乱光が揺らいでいるのが確認できる。その散乱光の揺らぎは、懸濁液中の粒子がブラウン運動をしているために、散乱光の干渉による強度分布が絶えず揺らぐことにより生じ、粒子径が小さいほど揺らぎも速く、大きいほど遅くなる。この揺らぎを観測し、統計的処理から粒子径を求めるのが動的光散乱法である。光子相関分光法(Photon Correlation Spectroscopy:PCS)は、この動的光散乱法に基づき、ブラウン運動している粒子にHe-Neレーザーを照射することで起こる、レイリー散乱の散乱光強度が経時変化するという現象を利用したものである。これにより拡散係数Dを求め、ストークス・アインシュタイン式より粒子径Rを算出できる。
R=κT/3πη0D
κ:ボルツマン定数 T:絶対温度 η0:粘性率 D:拡散係数
(vi) 過マンガン酸塩灰化法
リン脂質に硫酸及び過マンガン酸塩を加え、沸騰中で加熱すると、酸化分解され、構成成分であるリン酸が生成する。ここに生じた無機リン酸にモリブデン酸アンモニウム及び還元剤を加えると、モリブデンブルーが生成し、青色を呈する。この吸光度を測定することにより試料中のリン脂質濃度を求める方法である。
DMPEのスルフヒドリル基導入の結果は以下の通りであった。
DMPE、Traut's Reagent及びDMPE-SHの1H-NMRスペクトル解析を行った。DMPE-SHとTraut's Reagentは重クロロホルムのみ、DMPEは重クロロホルムと重メタノールの混合溶媒でないと溶けないため、定量することはできなかったが、スルフヒドリル基を導入できたことは確認できた。
2-PDSを用いたスルフヒドリル基の定量により、DMPE-SHの収率は20.0%であることが分かった。
DOPEのスルフヒドリル基導入の結果は以下の通りであった。
DOPE及びDOPE-SHの1H-NMRスペクトル解析により、スルフヒドリル基を導入できたことを確認できた。
また、スペクトルの積算値からのスルフヒドリル基の定量はできなかったため、上記と同様に2-PDSを用いたスルフヒドリル基の定量により、DOPE-SHの収率は87.20%であることが分かった。
DMPE-SHリポソームの作製の結果は以下の通りであった。
DMPE-SH及びDMPEの相転移温度は48℃であり、エクストルージョン法では相転移温度+10℃、つまり今回の場合は58℃にする必要がある。ただ、この温度は機械に対して影響を与える温度で、エクストルーダーの操作も難しい。よって、DMPE-SH及びDMPEを含むリポソームを作製する際は、超音波処理法を用いることにした。
上述のようにして作製したDMPE-SH、及びDMPE,DMPCの混合リポソーム(DMPE-SH:DMPE:DMPC=0.5:1.5:8)を上述の超音波処理法で作製した(図10)。
動的光散乱法により作製したリポソームの粒径を測定し、50〜100nmのリポソームが存在することを確認した。
しかし、今後の実験で均一サイズリポソームではないリポソームを用いると、比較検討が難しくなり、また、条件を揃えることも難しい。よって、今後はDMPE-SHリポソーム以外のリポソームを作製することにした。
DOPE-SHリポソームの作製の結果は以下の通りであった。
上述の方法で作製したDOPE-SH、及びDOPE,CHEMSの混合リポソーム(DOPE-SH:DOPE:CHMES=0:6:4,2:4:4,3:3:4,4:2:4)を上記のエクストルージョン法で作製した(図11)。ここで、DOPE-SHリポソームを超音波処理にて水和させる時に、数滴の飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えることで溶液のpHを上げ、水和しやすくした。
作製したリポソームについて、動的光散乱法により粒径を測定し、ほぼ100nmサイズであることを確認した。
ただ、DOPE-SH:DOPE:CHEMS=4:2:4の組成比で作製したリポソーム懸濁液は、翌日には凝集してしまった。このことから、DOPE-SHのモル分率が高いと不安定になることが分かった。元来、DOPEは、コーン型リン脂質であり、親水部の構造から、pHが低下することで、荷電や水和状態が変化し、融合を引き起こしてしまう。このDOPEを改質したDOPE-SHは、このコーン型をさらに強調し、融合を引き起こす原因になってしまうので、DOPE-SHのモル分率を高くできないと考えられる。
よって、DOPE-SH:DOPE:CHEMS=0:6:4,2:4:4,3:3:4の組成で作製したリポソームが好適に用いられた。
〔実施例2〕 ナノサイズ蛍光体ZnS:Mnとリポソームの複合体の作製
(1) 試料の調製
カチオン溶液(0.09M Zn(CH3COO)2 0.01M Mn(CH3COO)2)
酢酸亜鉛二水和物396.68mgを超純水18mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Zn(CH3COO)2)。一方で、酢酸マンガン四水和物49.20mgを超純水20mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Mn(CH3COO)2)。
それぞれを十分に溶解した後、二つの水溶液を混合しカチオン溶液を調製した。
アニオン溶液(0.1M Na2S)
硫化ナトリウム九水和物488.28mgを超純水20mlに溶解させた。
分散安定剤(0.1M C6H5Na3O7)
クエン酸ナトリウム二水和物295.0mgを超純水10mlに溶解させた。
リポソーム懸濁液
上述のように作製したリポソーム懸濁液を、分離用小型超遠心機(日立工機株式会社)を用いて、70,000r.p.m 1hrにてリポソームを沈降させ、溶媒を超純水に置換した。
(2) ZnS:Mnの作製(共沈法)
四つ口フラスコに超純水18mlを入れ、30℃で90分間窒素置換を行った。これに、分散安定剤200μlを加え、攪拌後、アニオン溶液400μlを加え、窒素置換下でさらに攪拌した。その後、カチオン溶液400μlを加えて、窒素置換下で90分間反応させた(図12および図13)。
反応終了後、分離用遠心機(HITACHI himac CF 15D)を用いて、遠心分離を行った。さらに、リポソームが存在する系では、分離用小型超遠心機を用いた遠心分離により、未反応溶液から超純水に置換し、精製を行った。
(3) リポソーム懸濁液中でのZnS:Mnの作製
Method A-1
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)とリポソーム懸濁液8mlを加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤200μl、アニオン溶液400μl、カチオン溶液400μlを順に加え、窒素置換中で反応させた(図14)。
Method A-2
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)とリポソーム懸濁液8mlを加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤400μl、アニオン溶液800μl、カチオン溶液800μlを順に加え、窒素置換中で反応させた。
Method B
四ツ口フラスコに、超純水12ml(30℃)を加え、90分問の窒素置換後、分散安定剤200μl、アニオン溶液400μl、カチオン溶液400μlを順に加え、窒素置換中で反応させた。さらに、リポソーム懸濁液8mlを加えて反応させた(図14)。
反応終了後は、Method AおよびMethod Bのどちらも、分離用小型遠心機(HITACHI himac, CF 15D)を用いて遠心分離を行い、凝集物を除去した。さらに遠心分離した上清を、分離用小型超遠心機を用いて、回転数70,000r.p.m 1hrにて遠心分離を行った。
また、アノディスクを用いたろ過を用いた精製も行った。
(4) 特性評価方法
(i) 蛍光スペクトル(PL)および励起スペクトル(PLE)測定 分光蛍光光度計(F-2000形 株式会社日立製作所)
Xeランプを用いて試料を励起し、試料から出た蛍光強度を、分光蛍光光度計を用いて測定した。その測定条件は、表1の通りであり、そのときの励起波長は、各試料について分光蛍光光度計を用いて蛍光波長580mで励起スペクトルを測定し、その励起スペクトルのピークの波長を用いた。
また試料の測定の際は、分光蛍光光度計の検出器の前に350mm以下の散乱光をカットする色ガラスフィルター(UV-35旭テクノグラス株式会社)を置き、測定を行った。
Figure 2005172522
(ii) 発光観察
FAS-II Electric U.V.Transilluminator(東洋紡績株式会社)
UVイルミネーターを用いて、波長300nmの紫外光をUVダークルームボックス内で試料に照射し、発光観察を行った。
蛍光顕微鏡(BXFLA) 光学顕微鏡(BX60)(オリンパス光学工業株式会社)
作製した試料を、U-MWUフィルター(波長300-350nm)を用いた蛍光顕微鏡、及び、光学顕微鏡で観察した。
(iii) 形態観察
電界放射形透過電子顕微鏡(FE-TEM)(TECNAI20 フィリップス)
高速の電子が固体物質に衝突するとき、種々の相互作用が生じ、二次的な電子ならびに電磁波が発生する。物体が非常に薄い場合には、大部分の電子は透過し(透過電子)、一部の電子は弾性散乱、非弾性散乱を起こして試料を透過する(散乱電子)。FE-TEMでは、透過電子、弾性散乱電子あるいはそれらの干渉波を拡大、結像し観察する方法である。
また、試料を通過した電子は、試料を構成する原子の内核電子を励起し、構成原子固有のX線を放出させる。この特性X線の波長やエネルギーの違いを分光して検出する特性X線分光法により、このFE-TEMはエネルギー分散X線分光計を用いて、元素分析を行う。
ナノサイズ蛍光体ZnS:Mnとリポソームの複合体の作製の結果は以下の通りであった。
(1) ZnS:Mn生成の確認
上述の方法でZnS:Mnを作製し、分離用小型遠心機を用いて回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、その上清と沈降物を再分散させた試料について、蛍光波長測定、UV照射による発光観察、FE-TEM及び蛍光顕微鏡による形態観察を行った。
(i) 蛍光波長測定
蛍光波長測定の結果を図15に示す。
回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離した後の沈降物を再分散させた試料の蛍光強度は強く、シャープであった。これは、ZnS:Mnナノサイズ蛍光体が生成され、Mn2+による発光が起こっていることを示唆している。
また、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離したときの上清の蛍光波長測定の結果をみると、ほとんど発光が起きていない。つまり、大部分の粒子は、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離することで、回収できることが分かった。
(ii) UV照射による観察
上述の方法で作製したZnS:MnにFAS-IIを用いてUVを照射し、観察を行った。その結果を図16に示す。
遠心前と回転数13,000r.p.mで遠心分離した沈降物を再分散させた試料については、蛍光波長測定の結果と一致する橙色になっていることを確認できた。ただ、どちらも3日目には、ほとんどが凝集物を形成し、沈降してしまっていた。このように凝集体を形成してしまうのは、表面を被覆する分子が分散安定剤のみであるため、ZnS:Mn表面のダングリングボンドが増加し不安定になっているからである。よって、ZnS:Mnナノサイズ蛍光体を、分散安定化させるためには、調製方法の検討が必要であることが分かった。
また、回転数13,000r.p.mで遠心分離した後の上清は、沈降物の試料よりも発光しておらず、このことは上記蛍光波長測定の結果と一致し、回転数13,000r.p.mで20分間の遠心分離により、ほとんどのZnS:Mnを回収できたことが分かった。
(iii) 蛍光顕微鏡及び光学顕微鏡による観察
図17に観察結果を示す。UV照射による観察と同様に、凝集体が多く観察され、橙色の発光が観察できた。このことからも、ZnS:Mn粒子ができてはいるが、ダングリングボンドの増加による分散安定性の減少から、凝集体を形成してしまっていることが分かった。
(iv) FE-TEMによる観察
作製したZnS:MnのFE-TEMによる観察結果を図18に示す。ここでも、凝集体を多く観察できた。
(2) リポソーム懸濁液中でのZnS:Mnの作製
(i) 作製方法の検討
上記のMethod A-1(リン脂質量3.30μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量1.13μmol)、およびMethod A-2(リン脂質量4.05μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量0.93μmol)、Method B(リン脂質量4.14μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量0.87μmol)で作製したZnS:Mnを、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離した後の上清の蛍光波長測定を行った。結果を表2及び図19に示す。
Method Bで作製した溶液の方がMethod A-1で作成した溶液に比べて蛍光強度が強いことが分かった。また、2倍量のアニオン溶液、カチオン溶液、分散安定剤を添加したMethod A-2と比較しても、Method Bで作製した蛍光強度の方が強くなった。
つまり、作製方法の違いでリポソームとZnS:Mn粒子との反応のしやすさが変わることが分かった。Method Aでは、波長440nm付近のリン酸基とカルボキシル基による発光が強く、波長580nmのMn2+による発光が小さいことから、Mn2+が十分にドープされず、結果的に十分なエネルギー移動が起きていない。おそらくリポソームとアニオンが存在している溶液の中にカチオン溶液を入れると、カチオン量とアニオン量の比が1対1にはならないため、上手くZnS:Mnナノサイズ蛍光体が生成できないからである。
それに対して、Method Bでは粒子が生成している溶液の中にリポソーム添加すると、硫黄の欠陥部分とリポソームのスルフヒドリル基および、リン酸基、カルボキシル基が効率良く反応するため、蛍光強度がMethod Aと比較して増大した。
したがって、今後のリポソーム懸濁液中でのZnS:Mnの作製は、Method Bで行っていく。
Figure 2005172522
(ii) 精製方法の検討
遠心分離の回転数の検討
リポソームは、回転数13,000r.p.mで20分間の遠心分離では、ほとんど沈降せず、回転数70,000r.p.mで1時間の遠心分離により全てを回収できることから(図20)、上記(i)では、回転数13,000r.p.mで20分間遠心分離し、上清をZnS:Mnと反応したリポソームおよび分散しているZnS:Mnが存在するものとしていた。
しかし、実際には沈降物にもリポソームが存在していることを、動的光散乱法およびリン脂質濃度測定の結果から確認できた。そこで、リポソームが沈降しない遠心分離の回転数を検討するため、回転数を変化させて遠心分離を行い、動的光散乱法およびリン脂質濃度測定を行った。
まず、上述のMethod B(リン脂質量4.19μmolリポソーム表面スルフヒドリル基量1.66μmol)、で作製したZnS:Mnを、表3の条件で遠心分離を行い、それぞれの上清について、動的光散乱法およびリン脂質濃度測定を行った。結果を表3に示す。ここで、○は粒径100nmのリポソームが存在する場合、△は、ほとんど存在しない場合、×は、全く存在しなかった場合である。
この結果から、回転数3,000r.p.mで10分間遠心分離することで、ほとんどの凝集物を分離できていると考えられる。ただ、リポソーム濃度が最初の60%に減少してしまっていることから、凝集物と共にリポソームも落ちてしまうことが分かった。しかし、他の条件では、凝集物を除去できない、もしくは、リポソームを60%以上減少させてしまうので、今後は、凝集物を除く方法として、回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離することにする。
Figure 2005172522
リポソームの存在確認
上記の結果から、作製したZnS:Mnを回転数3,000r.p.mで10分間遠心分離した上清と、その上清をさらに回転数70,000r.p.mで遠心分離した沈降物を再分散させた試料には、リポソームがあると考えられる。そこで、動的光散乱法による粒径測定を行うことで、リポソームの有無を確認した。さらに、測定した試料に界面活性剤(TritonX-100)を加え、リポソームと十分に反応させた後、粒径測定を行った。これらの結果を図21に示す。
回転数3,000r.p.mで遠心分離した上清には、約100nm及び、凝集物だと考えられる約1,000nmのピークがあり、界面活性剤の添加により約100nmサイズにあったピークが消失することから、どちらもリポソームだと考えられる。
また、回転数3,000r.p.mで遠心分離した上清を、溶媒置換するために、さらに回転数で70,000r.p.mで遠心分離した沈降物を再分散させた試料についても、同様な方法で、リポソームのみを回収できたことを確認した。
つまり、回転数3,000r.p.mで遠心分離することで凝集物を除去でき、試料にはリポソーム及び、リポソームと結合したZnS:Mnが存在していることが分かった。
(iii) リポソームとZnS:Mnの相互作用の検討
Method BによりZnS:Mnを作製した。条件を表4に示す。
作製した試料を、それぞれ回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、凝集物を取り除いた。また、その得られた上清をさらに回転数70,000r.p.mで1時間遠心分離を行い、未反応溶液から超純水へ溶媒置換を行った(0.3倍希釈)。
Figure 2005172522
条件による蛍光波長スペクトルの違い
遠心分離をしない試料、及び遠心分離により得られた試料について、それぞれ蛍光波長測定(図22A、図22Bおよび図22C)、及びUV照射による発光観察を行った(図23)。
ここで、リポソームが存在するときにのみ、440nm付近に発光が見られる。これは、リン酸基及びカルボキシル基による発光だと考えられる。
また、図22A、図22Bおよび図22Cから、DOPE-SHリポソーム、DOPEリポソームを用いた場合で、リン酸基およびカルボキシル基による発光(波長440nm)の強度に差があることが分かる。これは、DOPE-SHリポソームの方が、スルフヒドリル基量の分だけZnS:Mnと反応できる官能基を有していることで、エネルギー移動がDOPEリポソームの場合よりも起こりやすいことと一致する。よって、ZnS:Mn-リポソーム複合体を作製できたと考えられる。
ZnS:Mnの分散安定性
まず比較として、リポソームを添加しない条件のサンプル(c)について、蛍光波長測定(図24)及びUV照射による観察を行った(図25)。この結果から、ZnS:Mnの表面修飾がクエン酸ナトリウムのみであると、ZnS:Mnナノサイズ蛍光体は、不安定となり凝集してしまうことが分かった。
次に、回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離した後の上清について、10日間蛍光波長測定を行った。その結果を表5及び図26に示す。
Figure 2005172522
ZnS:Mnのみの試料(サンプル(c))では、1日目の回転数3,000r.p.mで遠心分離した上清の蛍光強度は低く、ほとんどの粒子は回転数3,000r.p.mの遠心分離で沈降したことが分かった。また、その時間経過の蛍光強度の変化を見ると、リポソーム存在下に比べて、減少が大きいことが分かる。このことから、リポソームが粒子の安定化に寄与していると考えられる。
そして、DOPE-SHリポソーム及びDOPEリポソームの存在下でZnS:Mnを作製すると(サンプル(a)、サンプル(b))、どちらも一日目の試料の蛍光強度は、ほとんど変わらなかった。しかし2日目以降、サンプル(b)は、サンプル(a)に比べて蛍光強度が大きく減少した。それ以降の経過を見ても、明らかにDOPE-SHリポソームで作製した試料の方が分散安定化していることが示唆された。
しかし、反応させたDOPE-SHリポソームとDOPEリポソームのリポソーム濃度がわずかであるが異なっている。そこで、図26を比較検討するために、それぞれのリン脂質濃度を測定し、その値で割った相対値を求めた。これを図27に示す。
これから、DOPE-SHリポソームを用いた場合の方が、やはりDOPEリポソームよりも分散安定化していることが分かった。ただ、DOPEリポソームにおいても、3日目以降は蛍光強度の減少が緩やかである。これは、リン酸基及びカルボキシル基と反応しているナノサイズ蛍光体が存在しているためだと考えられる。つまり、1日目から2日目にかけて減少した蛍光強度は、スルフヒドリル基がないために反応できなかったZnS:Mnが凝集して沈降したためと考えられる。
また、図27で、回転数3,000r.p.mで遠心分離した上清を、さらに回転数70,000r.p.mで1時間遠心分離して得られた沈降物を再分散させた溶液(0.3倍希釈)の蛍光波長測定の時間経過を比較すると、どちらも蛍光強度は緩やかな減少で、回転数3,000r.p.mで遠心分離した上清の場合とは異なっている。これは、スルフヒドリル基の有無に関わらず、DOPEリポソームを用いた場合でも、反応しなかったZnS:Mnを遠心分離によりリポソームと相互作用させるため、再分散させた後では、遠心分離前に比べて、安定化するためと考えられる(図28)。
(iv) 評価方法の検討
蛍光顕微鏡観察
図29に観察結果を示す。これから、Mn2+による橙色の発光が観察された。しかし、硫黄の欠陥や、リン酸基とカルボキシル基による青色の発光も多く観察された。これは、励起波長が実際の値より長波長側で励起しているために、Mn2+へのエネルギー移動が十分にできていないためと考えられる。
したがって、蛍光顕微鏡を用いて、ZnS:Mn-リポソーム複合体を評価することは困難であると考えられるので、他の評価方法を検討する。
FE-TEM
作製した試料の凝集物を回転数3,000r.p.mの遠心分離により取り除き、回転数70,000r.p.mで沈降させ、DOPE-SHリポソームとZnS:Mnの複合体の試料をリン脂質濃度約0.5mMに調整した。これを、マイクログリッドA(応研商事株式会社)に乗せ、約40秒後に余分な水分をろ紙で吸い取った。その後すぐに、FE-TEMを用いた形態観察を行った。
その結果を図30に示す。(a)、(b)の両方で、明らかにリポソームだと判断できる脂質二重層の縞模様を観察することができた。また、(a)では、非特異的に凝集物が結合してしまっている。しかし、(b)では分散したリポソームであり、この元素分析の結果(図31、表6)からZnS:Mnが結合していることが分かった。
Figure 2005172522
(v) リポソーム量の検討
上記(iii)で、ZnS:Mn-リポソーム複合体が形成できていることが判明した。そこで、リポソーム量(リン脂質量)を変えて、その蛍光強度測定を行うことで、リポソーム量の変化に伴う影響を検討した。
Method BによりZnS:Mnを作製した。条件を表7に示す。
作製した試料を、それぞれ回転数3,000r.p.mで20分間遠心分離を行い、凝集物を取り除いた。
遠心をしない場合、回転数3,000r.p.mで遠心分離した後の上清の蛍光波長測定を行った。結果を図32に示す。これから、リン脂質量を増やすと、発光強度も増大したことが分かった。つまり、リン酸基およびカルボキシル基がZnS:Mnナノサイズ蛍光体と相互作用すると考えられる。
Figure 2005172522
〔実施例3〕 PEGを導入したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の作製
PEG-DOPEの作製
methoxy poly(ethylene glycol)とDOPE(1:1.5)をクロロホルムに溶解し、TEA存在下で24時間反応させた。これを再結晶及びろ過により、PEG-DOPEを得た。この生成物について、ニンヒドリン反応及び1H-NMRを用いて同定を行い、PEG-DOPEを作製できたことを確認した。
PEG-DOPEを用いたリポソームの作製及び、ZnS:Mnの作製
以下の組成で、リポソームを作製した。
[Sample]
A:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.5 (リン脂質量4.0μmol)
B:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.1 (リン脂質量4.5μmol)
C:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=6.0:4:0 (リン脂質量4.3μmol)
4ツ口フラスコに超純水12ml(30℃)を加え、90分間窒素置換後、0.1Mクエン酸ナトリウム水溶液0.2ml、0.1M硫化ナトリウム水溶液0.4ml、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の混合溶液(9:1 0.1M 0.4ml)を順に加え、窒素置換中で90分間反応させた。さらに、リポソーム懸濁液を加えて120分間反応させた。反応後は、回転数15,000r.p.m.で遠心分離を行い、上清をZnS:Mn+リポソーム溶液とした。
作製した試料の蛍光波長測定の結果を図33に示す。これから、PEG鎖があることで、蛍光強度の減少が起きていることが分かった。
続いて、SampleAのFE-TEMによる観察の結果を図34に示す。また、元素分析により、Zn、Mn、S及びリポソームを構成するPが存在していることを確認できたことから、リポソーム表面にZnS:Mnが存在していることがわかった。
これらの結果から、PEG鎖があることで蛍光強度は落ちているものの、ZnS:Mnはリポソームに多く吸着していることが分かる。この理由としては、PEG鎖があることで分散している状態になったために、蛍光強度が減少しているとも考えられる。
〔実施例4〕 PEGを導入したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の作製(その2)
I:PEG-DOPE Liposome懸濁液中でのZnS:Mnの作製
以下の組成で、リポソームを作製した。
[Sample]
A:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.75:4:0.25(脂質量:3.06μmol)
B:DOPE:CHEMS:PEG-DOPE=5.5:4:0.5(脂質量:2.89μmol)
C:DPPC:PEG-DOPE=9.5:0.5(脂質量:3.07μmol)
4ツ口フラスコに超純水12ml(30℃)を加え、90分間窒素置換した後、0.1Mクエン酸ナトリウム水溶液0.2ml、0.1M硫化ナトリウム水溶液0.4ml、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の混合溶液(9:1 0.1M 0.4ml)を順に加え、窒素置換中で90分間反応させた。さらに、リポソーム懸濁液を加えて120分間反応させた。反応後は、回転数15,000r.p.m.で遠心分離を行い、上清を20nmのフィルターを通すことで精製を行い、ZnS:Mn+リポソーム溶液を得た。
作製した試料の蛍光波長測定の結果を図35に示す。このグラフからSampleCの蛍光強度が減少していることが分かる。これは、DPPCの水和層とPEG鎖により吸着が減少したためと考えられる。
II:リポソーム懸濁液の添加時間の検討
4ツ口フラスコに超純水12ml(30℃)を加え、90分間窒素置換した後、0.1Mクエン酸ナトリウム二水和物0.2ml、0.1M硫化ナトリウム九水和物0.4ml、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の混合溶液(9:1 0.1M 0.4ml)を順に加え、窒素置換中で反応させた。反応時間は5,45,90分後とし、その後、DOPEリポソーム懸濁液(脂質量3.0μmol)を加えて、2時間反応させた。この蛍光波長測定の結果を図36に示す。
この結果、45分間ZnS:Mnを反応させてリポソーム懸濁液を添加すると、今まで行っていた90分間反応させて加えた系よりも蛍光強度の増加が見られた。この理由としては、ZnS:Mnを反応させる時間が長いと、粒子同士が凝集してリポソームとの反応が起こりにくいのではないかということが考えられる。また、5分間ZnS:Mnを反応させてリポソーム懸濁液を添加すると、蛍光強度が減少した。この理由としては、ZnS:Mnの反応時間が短いこと、また、リポソームの影響でZnS:Mnが十分に反応できないことが考えられる。
〔実施例5〕 リポソーム組成に対する、ZnS:Mn-リポソーム複合体の蛍光強度の変化
4ツ口フラスコに超純水12mlを加え、90分間の窒素置換後、0.1Mクエン酸ナトリウム二水和物200μl、0.1M硫化ナトリウム九水和物400μl、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の0.1M混合溶液(Zn:Mn=9:1)400μlを順に加え、窒素置換中で90分間反応させた。さらに、表8の組成でリポソーム分散液(リン脂質濃度:2μmol、8ml)を加えて120分間反応させた。反応後は、15,000r.p.m.で2分間遠心分離を行い、その上清をフィルターに通すことで精製を行った。
図37の結果から、DPPCとCHEMSからなるリポソームを用いた場合(F)は、DOPEとCHEMSからなるリポソームを用いた場合に比べて蛍光強度が明らかに減少している。これは、DPPCのコリン基が有する水和層の影響であると考えられる。しかしながら、DPPCではPEG鎖の有無で強度はほとんど変わらなかった。おそらくPEG鎖や水和層よりもCHEMSの影響が同程度出たためと考えられる。
また、BとCのFE-TEMによる観察結果(図38)を比べると、どちらも100nm程度の複合体を観察できたが、全体的にみると、Cの方が多く見られた。これは、PEG量による影響が出たためと考えられ、今後は、分散状態を保ちつつ、蛍光強度がある程度強い条件を探す必要があるだろう。
Figure 2005172522
本発明のリポソームとZnS:Mnの複合体の模式図である。図1AはSH基を導入したリポソームの図を示し、図1Bはリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の図を示す。 本発明のリポソームとZnS:Mnの複合体の模式図である。 ZnS:Mnの発光のメカニズムを示す図である。 ZnS:Mnとリポソームのリン酸基およびカルボキシル基との配位を示す図である。 脂質にSH基を導入する方法を示す図である。 MLVの調製法を示す図である。 エクスクルージョン法によるリポソームの作製法を示す図である。 2-PDSの反応経路を示す図である。 エルマン試薬の反応を示す図である。 DMPE-SH-リポソーム複合体の調製を示す図である。 DOPE-SH-リポソーム複合体の調製を示す図である。 ZnS:Mn2+の反応容器を示す図である。 ナノサイズ蛍光体の調製方法を示す図である。 リポソーム懸濁液でのZnS:Mnの反応を示す図である。 ZnS:Mnの典型的な励起および発光スペクトルを示す図である。 UV照射下での蛍光観察の結果を示す図である。図16aはUV照射が無い場合、図16bはUV照射1日、図16cはUV照射3日の結果を示す。各図において、左は遠心分離なし、中央は13,000r.p.mで遠心分離した培養上清、右は13,000r.p.mで遠心分離した沈降物の結果を示す。 ZnS:Mnの顕微鏡観察の結果を示す図である。図17aは蛍光顕微鏡観察を図17bは、光学顕微鏡観察の結果を示す。 ZnS:MnのFE-TEM像を示す図である。 Method A-1とMethod Bで作製したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の蛍光スペクトルを示す図である。 遠心分離によるリポソームの回収量を示す図である。 動的光散乱法による粒径測定の結果を示す図である。図21a-1は3,000r.p.mで遠心分離を行った後の上清の結果、図21a-2はa-1にTritonX-100を添加した場合の結果、図21b-1は3,000r.p.mで遠心分離を行った後の沈降物の結果、図21a-2はa-1にTritonX-100を添加した場合の結果を示す。 DOPE-SHリポソームの励起光および発光スペクトルを示す図である。 DOPEリポソームの励起光および発光スペクトルを示す図である。 ZnS:Mnの励起光および発光スペクトルを示す図である。 UV(300nm)照射下での蛍光観察の結果を示す図である。aはDOPE-SHリポソームを、bはDOPEリポソームを、cはZnS:Mnを示す。各図中、左から右へ1日目、3日目および6日目の結果を示す。 ZnS:Mn(遠心分離なし)の励起光および発光スペクトルを示す図である。 UV(300nm)照射下での蛍光観察の結果を示す図である。各日中、左がUV照射なしで、右がUV照射ありの結果である。 3,000r.p.mで遠心分離を行った後の上清の蛍光強度を示す図である。 DOPE-SHリポソーム懸濁液(a)とDOPEリポソーム懸濁液(b)の蛍光強度を示す図である。 遠心分離の効果を示す図である。 リポソーム中のZnS:Mn2+の蛍光顕微鏡観察の結果(右)および光学顕微鏡観察の結果(左)を示す図である。(a)は、3,000r.p.mでの遠心分離後の培養上清を(b)は、70,000r.p.mでの遠心分離後の沈降物の観察結果を示す。 ZnS:Mn-DOPE-SHリポソームのFE-TEM像を示す図である。 ZnS:Mn-DOPE-SHリポソームの元素分析の結果を示す図である。 ZnS:Mnリポソームの蛍光強度を示す図である。 PEGを導入したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の蛍光強度を示す図である。 PEGを導入したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体のFE-TEMによる像を示す図である。 PEGを導入したリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の蛍光強度を示す図である。 リポソーム懸濁液の添加時間の検討の結果を示す図である。 15,000r.p.mで遠心分離した後の上清の蛍光強度を示す図である。 ZnS:MnリポソームのFE-TEM像を示す図である。

Claims (27)

  1. 脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体。
  2. 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が結合している請求項1記載の複合体。
  3. 脂質二重膜表面にナノサイズ蛍光体が脂質二重膜の構成成分が含むメタルイオンと結合し得る官能基を介して結合している請求項1または2記載の複合体。
  4. メタルイオンと結合し得る官能基がリン酸基、カルボキシル基、チオール基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基およびイミダゾール基、グアニジノ基からなる群から選択される少なくとも1つの基である請求項3記載の複合体。
  5. ナノサイズ蛍光体がZnS:Mnである、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合体。
  6. さらに、コレステロール誘導体を含む請求項5記載の複合体。
  7. コレステロール誘導体がCHEMSである、請求項6記載の複合体。
  8. 脂質二重膜に含まれるリン酸基、カルボキシル基の数が、複合体の蛍光強度を高めるような数に調節されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の複合体。
  9. ポリマー鎖が表面に導入されている、分散安定性の高い請求項1から8のいずれか1項に記載の複合体。
  10. ポリマー鎖が脂質二重膜を構成する化合物に共有結合により結合している請求項9記載の複合体。
  11. ポリマー鎖が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである請求項9または10に記載の複合体。
  12. 脂質二重膜がリポソームを構成している請求項1から11のいずれか1項に記載の複合体。
  13. リポソームの外側表面にナノサイズ蛍光体が結合している請求項12記載の複合体。
  14. ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に封入されている請求項12記載の複合体。
  15. ナノサイズ蛍光体がリポソーム中に遊離の状態で封入されている請求項14記載の複合体。
  16. 脂質二重膜がキャストフィルムを構成している請求項1から11のいずれか1項に記載の複合体。
  17. ナノサイズ蛍光体とリポソームを接触させることを含むリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体の製造方法。
  18. ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後、一定時間経過後にリポソームを反応系に添加する、請求項17記載の複合体の製造方法。
  19. ナノサイズ蛍光体の合成反応を開始後30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する請求項18記載の複合体の製造方法。
  20. Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後に、反応系にリポソームを添加する、請求項19記載の複合体の製造方法。
  21. Zn(CH3COO)2溶液とMn(CH3COO)2溶液を混合してZnS:Mnであるナノサイズ蛍光体の合成のための反応を開始した後、30〜60分経過後にリポソームを反応系に添加する請求項20記載の複合体の製造方法。
  22. 請求項1から16のいずれか1項に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体において、脂質二重膜の周囲の液のpHを変化させて、脂質二重膜に含まれるリン酸基またはカルボキシル基の解離状態を変化させ、それによりナノサイズ蛍光体の蛍光特性を調節する方法。
  23. 請求項1から16のいずれか1項に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質が結合している該物質を検出するためのリポソームとナノサイズ蛍光体の複合体。
  24. 検出しようとする物質に特異的に結合する物質が、抗原、抗体、核酸、リガンド、レセプターからなる群から選択される請求項23記載の複合体。
  25. 請求項23または24に記載の複合体を含む物質の検出のためのキット。
  26. 複合体が凍結乾燥品である、請求項25記載のキット。
  27. 物質の検出方法であって、請求項23または24に記載の脂質二重膜とナノサイズ蛍光体の複合体に、検出しようとする物質に特異的に結合する物質を結合させ、該複合体と前記検出しようとする物質を接触させ、複合体と物質が結合したものを分離し、該複合体と物質が結合したものが発する蛍光を測定することを含む、物質の検出方法。

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