JP2005171409A - キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させる方法 - Google Patents

キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させることを課題とする。
【解決手段】 キシラナーゼにおける少なくとも1個のアミノ酸残基をアルギニンで置換することにより、該キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させる方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は新規キシラナーゼ、その製造法、該キシラナーゼを用いてパルプを漂白する方法に関する。
製紙工業においてパルプの漂白は重要な工程である。漂白工程の概略を以下に示す。
クラフト蒸解後、酸素脱リグニン工程においてパルプをpH10〜12、80℃で処理し、パルプを茶色に着色しているリグニンの大部分を除去する。この段階でパルプ中のリグニン含量は2〜5%である。続いて、塩素、二酸化塩素、過酸化水素及び/又はオゾン等の化学物質を使用した多段階漂白プロセスにおいて更にパルプを漂白し、高品質紙用のパルプを得る。
しかし、リグニンを除去するために使用されている塩素及び塩素含有化学物質は副産物として、ダイオキシン及びその他の有機塩素化合物を生成し、環境を汚染する恐れがある。そのため近年、塩素及び塩素含有化学物質の使用が控えられる傾向にあり、エレメンタリー塩素フリー(ECF)漂白及び全塩素フリー(TCF)漂白の導入又は開発が推進されている。1986年、パルプをキシラナーゼ処理することが、塩素及び塩素含有化学物質の使用量の削減に非常に有効であることが報告された(非特許文献1)。
パルプをキシラナーゼ処理することにより、リグニンとセルロース間に存在しているヘミセルロース鎖が切断される。これにより、以降の工程において、紙の質を低下させることなく、リグニンを抽出除去することが容易になり、塩素及び/又は塩素含有化学物質の使用量を25〜30%減少させることができ、結果として漂白薬品コストを削減できる(非特許文献2)。
パルプ漂白に使用されるキシラナーゼに求められる性質としては以下の性質が挙げられる。クラフト蒸解後、漂白の全工程は60℃以上の高温で実施されるため、至適温度及び温度安定性の低い酵素では失活してしまう。また、酵素失活を避けるため、キシラナーゼ漂白工程中、パルプ温度を下げ、次の段階において再度温度を上げるといった温度調節を行う方法が考えられるが、莫大なエネルギーロスを生じるため現実的ではない。以上から、キシラナーゼは、60℃以上の高温で安定に作用できるような至適温度及び温度安定性を有することが必要とされる。
また、通常、キシラナーゼによる漂白は、酸素脱リグニン後のpH10〜12で行われるため、このような条件下では、反応至適pHが中性域〜酸性域にある酵素は作用しない。このような酵素を作用させるためには、パルプのpHを調整する必要がある。この操作は漂白工程を煩雑にするだけでなく、パルプの液性を中性域から酸性域にするため、可溶化していたリグニンやヘミセルロースの不溶化をもたらす。これらがパルプに付着してしまうため、洗浄効果の悪化という問題が生じる。以上から、アルカリ性で作用するキシラナーゼが求められる。
キシラナーゼは、D−キシロースがβ1,4−グリコシド結合した多糖であるキシランを分解する酵素として定義される。漂白用キシラナーゼは、実際のパルプ漂白工程において、塩素及び塩素含有化学物質の使用量を削減できる能力を有することが必須である。しかし、キシラン分解活性を有するすべてのキシラナーゼが、パルプ漂白工程において塩素及び塩素含有化学物質の使用量を削減できるという訳ではない。すなわち、キシラナーゼの漂白能力は、オート麦キシランやカバキシランなど市販の可溶性キシランを分解する能力に比例するわけではなく、個々のキシラナーゼによって、可溶性キシラン分解活性と漂白能力との関係は異なっている。そして、この能力の違いが、キシラナーゼを産生する微生物種の違いによるものか、又は、キシラナーゼの属するファミリーの違いによるものか検討されてきたが、未だ明らかでない(非特許文献3)。
好適な至適pH及び至適温度、温度安定性及びパルプ中のキシランを分解する能力の全てを兼ね備えたキシラナーゼを取得するには、スクリーニングに多大な労力を有する。そのため、近年、有効なキシラナーゼを得るために、分子生物学的手法を用いて、既存のキシラナーゼを改変する試みが行われている。例えば、耐熱性を改善する試みや至適pHを改変する試みが行われている(非特許文献4及び5)。
これらの試みの多くはX線解析等から得られた立体構造又は性質の異なるキシラナーゼの一次構造を比較検討し、部位特異的にアミノ酸を置換又は付加するものである。しかし、現在まで耐熱性及び至適pHに影響を及ぼすアミノ酸は特定されていない。そのため、試行錯誤により、置換位置、置換アミノ酸種を見出さなくてはならず、多大の労力を要していた。これらの方法とは別に遺伝子シャッフリング法又は無作為変異法等の分子進化的手法により、キシラナーゼの耐熱性、至適pH等を改善する試みもなされている(非特許文献6〜9)。
しかし、これらの試みは、タンパク質あたりのキシラン分解活性に注目したものであり、タンパク質あたりの漂白能力及び実際にパルプに作用させた場合の漂白効果については検討していない。さらに、パルプ漂白用キシラナーゼにとって重要なキシラナーゼ活性あたりの漂白能力を向上させる試みは全く行われていない。
また、これらの方法は通常、無作為にペプチド鎖又はアミノ酸を置換し、得られた大量の変異体群から最も性質の改善した変異体を選抜、取得するものである。すなわち、変異・選抜の一連の操作を1ラウンドとし、ラウンドを繰り返すことにより、有用な変異を蓄積させ、目的の性質が改善したタンパク質を取得するものである。しかしながら、不必要な変異及び不利な効果を及ぼす変異もラウンドが進むにつれて蓄積されてしまうため、全体としての改善度合いを低下させてしまう。よって、変異体を最適化するためには、不利及び不必要な効果を及ぼす変異を取り除かねばならない。しかし、多数の変異の中から、これらを見出すことは容易でない。現在、これらの変異を除去するためには、親クローンと変異体との間での中和操作等を行う必要があり、多大な労力を要していた。
従って、キシラナーゼのパルプ漂白能力の向上に関与するアミノ酸変異を特定できれば、多大な労力削減が期待できる。
Viikariら, Proceeding of the 3rd International Conference on Biotechnology in Pulp and Paper Industry, ストックホルム, p.67-69, 1986 Bajpaiら, Process Biochemistry, 27:319-325, 1992 J.H.Clarkeら, Appl. Microbiol. Biotechnol., 48:177-183, 1997 Jacquesら, Protein Science, 9:466-475, 2000 Manishら, J. Mol. Bio. 299:255-279, 2000 Willemら, Nature, 370:389-391, 1994 Craigら, PCR Methods and Applications, 2:28-33, 1992 Araseら, FEBS Lett., 25;316(2):123-7, 1993 Shibuyaら, Biochem. J., 349:651-656, 2000
本発明は、キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させることを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、漂白能力のないキシラナーゼに様々なアミノ酸置換を施した結果、該キシラナーゼに漂白能力を付与することに成功した。また、これらの改変キシラナーゼのパルプ漂白能力をさらに高めるため、再度アミノ酸置換を行い、漂白能力をさらに向上させることに成功した。そして、これらの改変キシラナーゼのアミノ酸配列を詳細に検討した結果、該改変キシラナーゼがアルギニン置換を含んでいること、さらに、アルギニン置換数を増加させるほどキシラナーゼのパルプ漂白能力が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)キシラナーゼにおける少なくとも1個のアミノ酸残基をアルギニンで置換することにより、該キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させる方法。
(2)アミノ酸残基の少なくとも1個がアルギニンで置換されたキシラナーゼであって、アルギニン置換を有しないキシラナーゼと比較して向上したパルプ漂白能力を有する該キシラナーゼ。
(3)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、20残基目のK、59残基目のQ、117残基目のQ、197残基目のH、201残基目のIの少なくとも1個のアミノ酸残基がアルギニンで置換されたアミノ酸配列を含むキシラナーゼ。
(4)(2)又は(3)に記載のキシラナーゼを用いてパルプを漂白する方法。
本発明により、キシラナーゼの漂白能力を向上させることができる。そして、この漂白能力の向上したキシラナーゼを用いてパルプの漂白を行うことにより、パルプ漂白工程における漂白薬品の量を削減することができる。また、漂白能力のないキシラナーゼに漂白能力を付与することもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の方法は、標的となるキシラナーゼ(以下、標的キシラナーゼと称する)を構成するアミノ酸配列における少なくとも1個のアミノ酸残基をアルギニンに置換することにより、標的キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させるものである。標的キシラナーゼは特に限定されるものではなく、パルプ漂白能力を有するキシラナーゼ及びパルプ漂白能力を有しないキシラナーゼの双方が標的となりうる。本発明の方法は、パルプ漂白能力を有しないキシラナーゼに対し、特に好適に用いられる。また、キシラナーゼ活性の高いキシラナーゼを標的とするのが好ましい。標的キシラナーゼ種としては、特に限定されないが、例えば、Bacillus属、Neocallimastix属、Ruminococcus属、Clostridium属、Oryza属、Aspergillus属、Streptomyces属、Cellvibrio属、Butyrivibrio属、Filobasidium属、Caldicellulosiruptor属等に属する微生物及びウイルスが挙げられ、Bacillus属に属する微生物に由来するキシラナーゼが好ましい。例えば、Bacillus subtilis、Neocallimastix patriciarum、Ruminococcus flavefaciens、Clostridium saccharobutylicum、Oryza sativa、Aspergillus kawachii、Streptomyces lividans、Bacillus pumilus、Cellvibrio japonicus、Butyrivibrio fibrisolvens、Filobasidium floriforme、Caldicellulosiruptor saccharolyticus、Belladonna mottle virus、Human parainfluenza virus 1に由来するキシラナーゼが挙げられる。具体的には、例えば、EMBL accession番号M36648、X54523、X65526、Z11127、M31726、D23325、D14848、M64553、M64552、X00660、D00087、X15429、X61495、M64551、M22624、D14847、X12596、M34459、A37755、A40176等で特定されるキシラナーゼが標的となりうる。特に好ましくは、配列番号2で表される塩基配列でコードされるキシラナーゼを標的キシラナーゼとして用いる。
上記標的キシラナーゼを構成するアミノ酸配列において、アルギニンに置換されるアミノ酸残基は、標的キシラナーゼのキシラナーゼ活性中心を構成するアミノ酸残基以外であれば特に限定されない。本明細書においてキシラナーゼ活性とは、キシランを加水分解してキシロース及びその少糖を生成する活性を意味する。キシラナーゼ活性中心とは、キシラナーゼ分子中の、キシランの加水分解を触媒するために必須の部位を意味する。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するキシラナーゼATS(Bacillus由来)のキシラナーゼ活性中心を構成するアミノ酸残基としては、95残基目のグルタミン酸(E)及び185残基目のグルタミン酸(E)が挙げられる。
また、置換されるアミノ酸残基の種類は特に限定されないが、好ましくは、リシン(K)、グルタミン(Q)及びヒスチジン(H)である。
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するキシラナーゼを標的キシラナーゼとする場合、配列番号1で表されるアミノ酸配列における20残基目のK、59残基目のQ、117残基目のQ、197残基目のH、201残基目のIの少なくとも1個のアミノ酸残基をアルギニンで置換するのが好ましく、これらすべてを置換するのがさらに好ましい。
アルギニン置換の数は、1個以上、好ましくは1〜2個、より好ましくは2〜3個である。さらに、本発明者らは、アルギニン置換数に比例して、キシラナーゼの漂白能力が向上することを見出した。従って、当業者であれば、アルギニン置換数を適宜選択することによって、キシラナーゼの漂白能力を調節することができる。
本発明はまた、アミノ酸残基の少なくとも1個がアルギニンで置換されたキシラナーゼであって、アルギニン置換を有しないキシラナーゼと比較して向上したパルプ漂白能力を有するキシラナーゼ(以下、アルギニン置換キシラナーゼと称する)に関する。本発明のアルギニン置換キシラナーゼにおいては、アルギニン置換を有しないキシラナーゼと比較して、キシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力の向上が認められる。すなわち、本発明のアルギニン置換キシラナーゼにおいては、キシラナーゼ活性が変化しない場合であっても、パルプ漂白能力の向上が認められる。
キシラナーゼにアルギニン置換を施すことによってキシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力が向上する理由としては、パルプ表面が負に帯電しているため、正電荷を有しているアルギニンを導入することにより、負に帯電しているパルプとキシラナーゼが接触し易くなることが考えられる。
キシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力が向上するとは、キシランを基質とし、キシロース換算で1分間に1μmolの還元糖を遊離するキシラナーゼタンパク質量を1U(ユニット)とし、アルギニン置換されていない標的キシラナーゼとアルギニン置換キシラナーゼとを、同じユニットのタンパク質量でそれぞれのパルプ漂白能力について比較した場合に、アルギニン置換キシラナーゼのパルプ漂白能力の方が高いことを意味する。これまでに報告された改変キシラナーゼにおいては、タンパク質量単位あたりのパルプ漂白能力については検討が行われているが、キシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力については全く検討されておらず、本発明者らは、キシラナーゼにアルギニン置換を施すことによって、キシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力が向上することを初めて見出したのである。すなわち、本発明により、キシラナーゼ活性にかかわらず、キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させることができる。また、本発明により、キシラナーゼ活性を有するがパルプ漂白能力を有しないキシラナーゼに対しても、パルプ漂白能力を付与することが可能になる。従って、例えば、パルプ漂白工程に好適な至適pH、至適温度及び温度安定性を有するがパルプ漂白能力を有しないようなキシラナーゼに対して、本発明の方法によってパルプ漂白能力を付与することにより、パルプ漂白に最適なキシラナーゼを得ることも可能になる。
キシラナーゼ活性は、当技術分野において通常用いられる方法によって測定することができ、例えば、基質として市販のオート麦製又はカバ由来若しくはブナ由来のキシランを用い、酵素反応の結果生じる還元末端を、DNS法やソモギー・ネルソン法などの一般的な方法で測定することによって測定できる。また、アゾ染料等の染料を結合させたキシラン誘導体を用い、色素の遊離量を比色定量することによっても測定することができる。
キシラナーゼのパルプ漂白能力は、キシラナーゼを加えずに漂白薬品のみでパルプ漂白を行った場合に目標白色度を得るまでに要した漂白薬品量と、一定ユニットのキシラナーゼで処理した後のパルプを、該目標白色度を得るまで漂白薬品で漂白した場合に要した漂白薬品量との比で表すことができる。すなわち、キシラナーゼ活性単位あたりのパルプ漂白能力は、一定のキシラナーゼ活性単位のキシラナーゼを用いることによって低減することのできる漂白薬品の割合として表すことができる。漂白薬品としては、塩素、二酸化塩素、苛性ソーダ、酸素などの一般的に用いられる漂白薬品及びそれらの組み合わせが用いられる。
標的キシラナーゼを構成するアミノ酸配列における特定のアミノ酸残基のアルギニン置換は、目的とする遺伝子の遺伝情報を元に、当技術分野で通常用いられる部位特異的変異の導入方法、例えば、ギャップDNA法、ウラシルDNA法及びカセット変異法等によって実施することができる。
本発明のアルギニン置換キシラナーゼは、クローニングされた遺伝子を発現させることにより作製できる。その手法は、前記の部位特異的変異導入によって得られたアルギニン置換キシラナーゼ遺伝子を、適当な宿主・ベクターを用いて発現させることにより高生産することができる。発現に用いられるベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター等が主に使われる。宿主として、大腸菌、枯草菌、酵母等が主に使われる。培養のための炭素源、窒素源には、資化してキシラナーゼを生産することができるものであればいずれも用いることができる。例えば、炭素源としては、キシラン若しくはキシランを含む小麦ふすま、パルプ、バカス、コーンファイバー、稲わら等の農業廃棄物又は植物繊維等を使用することができる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆、コーンスティープリカー、各種無機窒素等の窒素化合物を用いることができる。また、各種塩類、ビタミン、ミネラル等を適宜用いることができる。培養温度及びpHは、菌が耐熱性キシラナーゼを生産する範囲であればいずれでも良く、培養温度は好ましくは37℃、pHは好ましくは7である。酵素の精製方法としては、硫安分画、ゲル濾過による分子量分画や各種イオン交換樹脂、ハイドロキシアパタイト、等電点分画等を適宜組み合わせ、また繰り返すことにより精製することができる(Sanbrookら, Molecular cloning a laboratory manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
次に、本発明のアルギニン置換キシラナーゼを用いたパルプの漂白方法について説明する。化学パルプ及び機械パルプ製造工程において、本発明のアルギニン置換キシラナーゼ又はアルギニン置換キシラナーゼ産生菌の培養物で、パルプを処理することで漂白を行うことができる。さらに酵素処理の前後、あるいは途中に化学漂白及び/又はアルカリ抽出を行うことでパルプの漂白を行うことができる。
本発明のパルプ漂白方法において、処理に使用する酵素量については、標的キシラナーゼの種類やアルギニン置換数などに依存するが、通常、パルプの絶乾重量1gあたり、キシラナーゼ活性単位として0.1〜5U、好ましくは0.5〜3U添加すればよい。反応条件についても標的キシラナーゼ等に依存するが、通常、反応温度30〜70℃、pH7〜9である。反応時間は、通常、0.2〜24時間、好ましくは0.5〜8時間である。化学漂白に用いる試薬としては、塩素、二酸化塩素、二酸化窒素、次亜塩素酸塩、酸素、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。またアルカリ抽出には、当業者に公知の多くのアルカリ性化合物を用いることができる。アルカリ抽出には、水酸化ナトリウム換算で0.5〜3%(対絶乾パルプ)のアルカリを用い、酸素や過酸化水素等を添加しながらアルカリ処理を行うことができる。
次に本発明について実施例で更に詳しく説明するが、これは単なる例示であり、本発明を限定するものではない。
プラスミドベクターpET21a(+)のNdeI及びSalIの間に連結してある配列番号2に示すキシラナーゼATS遺伝子(Bacillus由来)を、変異用DNAプライマー、pETMetプライマー(配列番号3)及びpETSalプライマー(配列番号4)を用いて、0.2mM ATP、1mM TTP、1mM GTP、1mM CTP、17μg/μl BSA、67mM Tris−HCl(pH8.8)、16.6mM(NHSO、0.0067mM EDTA(pH8.0)、6.1mM MgCl、0.5mM MnCl、0.5U△Tth DNA Polymerase(東洋紡社製)からなる反応液中にて、アプライドバイオシステムズジャパン社PCR9700を用いて増幅することにより、無作為変異を導入したキシラナーゼ遺伝子を作製した。PCRは以下の反応条件にて実施した。
1サイクル:94℃、5min→(94℃、1min→55℃、1min→72℃、2min)→72℃、10minを30サイクル実施した。
得られた増幅断片を制限酵素NdeI(タカラバイオ株式会社製)及びSalI(タカラバイオ株式会社製)にて消化し、同じく、制限酵素NdeI(タカラバイオ株式会社製)及びSalI(タカラバイオ株式会社製)にて消化したプラスミドベクターpET21a(+)に連結し、プラスミドを得た。得られたプラスミドを用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換した後、50μg/mlアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、37℃にて一晩培養した。得られた形質転換体を50μg/mlアンピシリンを含むLB液体培地で、37℃にて一晩培養後、遠心分離にて菌体を回収した。本菌体を超音波破砕し、再度遠心分離を行い、上清を回収し、酵素液とした。
キシランに対する活性の測定は次のように行った。キシラン(カバ材由来、シグマ社製)の1%溶液(pH 8.0、Tris−HCl緩衝液)1mlに、被検酵素液100μlを添加し、60℃にて5分間反応させた。DNS試薬を2ml添加して5分間煮沸した後、直ちに氷冷して540nmにおける吸光度を測定した。検量線は濃度既知のキシロースを用いて作製した。キシラナーゼ活性単位については、上記の条件で1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素量を1U(U:ユニット)とした。
キシラナーゼによる処理を行わない対照漂白パルプの漂白条件は次の通りとした。工場にてクラフト蒸解を行い、酸素脱リグニンを行った広葉樹パルプ(カッパー価8.5、白色度46.0%、パルプ濃度10%、pH8)に対して、酵素を添加せずに60℃にて2時間処理した。続いて以下の条件にて二酸化塩素−アルカリ−二酸化塩素−二酸化塩素(D−E/O−D−D)の順で多段漂白を行った。すなわち、この未漂白パルプのpHを4、パルプ濃度10%になるように調整した後、絶乾パルプ重量あたり二酸化塩素を0.45%添加し、温度70℃で70分間処理を行った(D段)。冷却後、得られたパルプを洗浄、脱水した。パルプ濃度を10%に調整した後、苛性ソーダを絶乾パルプ重量あたり1.5%添加し、780kPaの酸素分圧下、90℃にて30分間の処理を行ってE/O段の抽出を行った。得られたパルプを洗浄、脱水した。pHを4、パルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ重量あたり二酸化塩素を0.2%添加し、温度70℃で240分間処理を行った(D段)。更に絶乾パルプ重量あたり二酸化塩素を0.2%添加し、温度70℃で240分間処理を行った(D段)。得られたパルプを洗浄、脱水、離解した後、Tappi試験法T205os−71(JISP 8209)に従って坪量60g/mのシートを作製し、JIS P 8123に従ってパルプのハンター白色度を測定した。その結果、白色度は85.0%であった。
キシラナーゼによる処理を伴う漂白方法は、上記のキシラナーゼによる処理を行わない漂白方法において、クラフト蒸解後、酸素脱リグニンを行った広葉樹パルプ(カッパー価8.5、白色度46.0%、パルプ濃度10%、pH8)に、実施例1で得られた変異キシラナーゼを、パルプ絶乾重量1gあたり2U添加して、60℃にて2時間処理した。酵素処理後、パルプを上記と同様に、二酸化塩素−アルカリ−二酸化塩素−二酸化塩素(D−E/O−D−D)の漂白工程に付し、最終白色度が85.0%となるように二酸化塩素量を調節し、漂白を行った。又、特に示さない限り、D段における薬品添加削減率は下記式(1)により算出した。
D段における薬品添加削減率(%)={(酵素未処理D段における合計薬品添加率−酵素処理D段における合計薬品添加率)/酵素未処理D段における合計薬品添加率}×100…(1)
実施例1で得られた変異キシラナーゼの酵素液を用いて上記パルプ漂白試験を行い、式(1)に従って薬品添加削減率を算出した。結果を表1に示す。表1から、未改変キシラナーゼATSで処理した場合は、酵素処理なしの場合と比べ、二酸化塩素添加量の減少は認められなかった。一方、変異キシラナーゼRd1−22、Rd1−13及びRd1−4の酵素液でそれぞれ処理した場合は、未改変キシラナーゼATSで処理した場合に比べ、二酸化塩素添加量が5〜10%減少した。キシラナーゼRd1−4、Rd1−13及びRd1−22のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号10、11及び12に示す。
キシラナーゼRd1−13産生菌からプラスミドを抽出し、該プラスミドに対して再度、実施例1と同様に変異処理を行い、その結果、キシラナーゼRd2−7、キシラナーゼRd2−23を得た。そしてこれらの酵素液について、実施例2と同様にパルプ漂白試験を行った。このキシラナーゼRd2−7又はキシラナーゼRd2−23の酵素液でそれぞれ処理した場合は、未改変キシラナーゼATSで処理したものと比べ、二酸化塩素添加量が13〜15%減少していた。これらのキシラナーゼの塩基配列を決定し、アミノ酸配列を比較した結果、すべてのクローンにアルギニン置換が確認された(図1)。キシラナーゼRd2−7のアミノ酸配列を配列番号13に、キシラナーゼRd2−23のアミノ酸配列を配列番号14に示す。更に、アルギニン置換数が増加するにつれ、二酸化塩素添加量が減少する傾向があることが明らかとなった(表1)。
Figure 2005171409
配列番号5〜9に示すDNAプライマー及びMutan-K(タカラバイオ株式会社製)を用い、Kunkel法にて、キシラナーゼATSの20残基目のK、59残基目のQ、117残基目のQ、197残基目のH、201残基目のIを部位特異的にアルギニン置換したキシラナーゼATS5R(図1)を作製した。キシラナーゼATS5Rのアミノ酸配列を配列番号15に示す。実施例1と同様に酵素液を調製し、実施例2と同様に漂白試験を行った。その結果、キシラナーゼATS5Rで処理した場合は、未改変キシラナーゼATSで処理した場合と比べて、二酸化塩素添加量が20%減少していた(表1)。以上の結果より、アルギニン置換数が増加するにつれ、キシラナーゼ活性あたりのパルプ漂白能力が向上することが確認された。
本発明は、製紙工業における重要な工程であるパルプの漂白工程で、漂白薬品コストの削減及び環境汚染防止の観点から、非常に有利に利用することができる。
キシラナーゼATSのアミノ酸配列と、実施例で得られた各種アルギニン置換キシラナーゼ(Rd1−4、Rd1−13、Rd1−22、Rd2−7、Rd2−23、ATS5R)のアミノ酸配列とのアライメントを表す。
配列番号1:キシラナーゼATSアミノ酸配列
配列番号2:キシラナーゼATS塩基配列
配列番号3:変異プライマー配列
配列番号4:変異プライマー配列
配列番号5:変異プライマー配列
配列番号6:アルギニン置換変異プライマー配列
配列番号7:アルギニン置換変異プライマー配列
配列番号8:アルギニン置換変異プライマー配列
配列番号9:アルギニン置換変異プライマー配列
配列番号10:キシラナーゼRd1−4アミノ酸配列
配列番号11:キシラナーゼRd1−13アミノ酸配列
配列番号12:キシラナーゼRd1−22アミノ酸配列
配列番号13:キシラナーゼRd2−7アミノ酸配列
配列番号14:キシラナーゼRd2−23アミノ酸配列
配列番号15:キシラナーゼATS5Rアミノ酸配列

Claims (4)

  1. キシラナーゼにおける少なくとも1個のアミノ酸残基をアルギニンで置換することにより、該キシラナーゼのパルプ漂白能力を向上させる方法。
  2. アミノ酸残基の少なくとも1個がアルギニンで置換されたキシラナーゼであって、アルギニン置換を有しないキシラナーゼと比較して向上したパルプ漂白能力を有する該キシラナーゼ。
  3. 配列番号1で表されるアミノ酸配列において、20残基目のK、59残基目のQ、117残基目のQ、197残基目のH、201残基目のIの少なくとも1個のアミノ酸残基がアルギニンで置換されたアミノ酸配列を含むキシラナーゼ。
  4. 請求項2又は3に記載のキシラナーゼを用いてパルプを漂白する方法。
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