JP2005161700A - インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェットプリンタ - Google Patents

インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェットプリンタ Download PDF

Info

Publication number
JP2005161700A
JP2005161700A JP2003404297A JP2003404297A JP2005161700A JP 2005161700 A JP2005161700 A JP 2005161700A JP 2003404297 A JP2003404297 A JP 2003404297A JP 2003404297 A JP2003404297 A JP 2003404297A JP 2005161700 A JP2005161700 A JP 2005161700A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piezoelectric element
layer
ink jet
manufacturing
cavity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003404297A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3952010B2 (ja
Inventor
Setsuya Iwashita
節也 岩下
Amamitsu Higuchi
天光 樋口
Hiroshi Miyazawa
弘 宮澤
Satoshi Nehashi
聡 根橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2003404297A priority Critical patent/JP3952010B2/ja
Priority to US11/002,964 priority patent/US7244016B2/en
Publication of JP2005161700A publication Critical patent/JP2005161700A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3952010B2 publication Critical patent/JP3952010B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14201Structure of print heads with piezoelectric elements
    • B41J2/14233Structure of print heads with piezoelectric elements of film type, deformed by bending and disposed on a diaphragm

Abstract

【課題】 隣接キャビティ間の動作干渉を効果的に抑制することができ、高精細かつ高速の描画が可能なインクジェットヘッド、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のインクジェットヘッド50は、圧電体素子54の変形動作により内容積を変化可能な複数のキャビティ521を備えており、前記キャビティ521を挟む側壁522,522間に梁部材53が架設されている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェットプリンタに関するものである。
近年、インクジェットプリンタの性能は写真画質に匹敵するほど高画質化が進んでいる。インクジェットヘッドのノズル数を増やすとともに吐出液滴量を少量化することにより高精細描画を可能にしているためである。さらに、高精細化に加え、印刷の高速化のニーズも高いが、これら両者の要求を満たすために、ノズル数は重要なファクターであり、ノズル数が多いほど高精細化、高速化には有利である。圧電体素子でキャビティの内容積を変化させて液滴を吐出する方式のインクジェットヘッドにおいて、高精細のものは1列180dpi×2のノズルが6〜8列並んでいるが、単にノズル数を増やすのみではヘッドが大きくなる。そこで、ヘッドを小型化し、かつノズルを高密度化するためにはキャビティを小さくする必要がある。
図9は、従来のインクジェットヘッドの断面構成図であり、符号210はノズル板、211はノズル(吐出口)、220はSi基板、230は振動板、240は圧電体素子である。この記録ヘッドのキャビティ221は、Si基板220をウェットエッチング又はドライエッチングによりパターニングした後、ノズル板210と貼り合わせることで形成されている。このとき振動板230の変位が適当な大きさになるようにキャビティ221の高さや側壁222の厚さが設計されている。
特開2003−152233号公報
しかし、インクジェットヘッドの高精細化のためにキャビティ221を高密度化すると、必然的に側壁222の厚さは薄くなり、その結果圧電体素子240の動作により側壁222が弾性変形しやすくなる。そして、この変形により隣接するキャビティ221の内容積が変動し、その結果、正確な吐出量を維持することが困難になり、印刷物の画質が低下するおそれが生じる。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、隣接キャビティ間の動作干渉を効果的に抑制することができ、高精細かつ高速の描画が可能なインクジェットヘッド、及びその製造方法を提供することを目的としている。また本発明は、高精細かつ高速描画が可能なインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、圧電体素子と、前記圧電体素子の下方に、該圧電体素子の変形により内容積が変化する複数のキャビティと、を備え、前記キャビティの内壁を連結する梁部材が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッドを提供する。
この構成を備えたインクジェットヘッドによれば、高精細化を目的としてノズルを高密度化し、キャビティを狭小化した場合にも、上記内壁間を連結する梁部材によりキャビティの形状を良好に保持することができるため、圧電体素子からの応力によりキャビティを構成する壁が変形して隣接キャビティに干渉するのを効果的に防止することができる。従って本記録ヘッドによれば、高精細かつ高速のインク吐出を正確に行うことができる。また、ヘッド走査時の振動に起因する内壁の振動も防止できるため、ヘッドを高速で走査しても安定した液滴吐出動作が可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、前記キャビティが、液滴吐出口を有するノズル板と、該ノズル板から立設された複数の側壁と、前記ノズル板に対向配置された振動板とに囲まれる空間であり、前記梁部材が、互いに対向して配置された前記側壁間に架設されている構成とすることができる。
この構成によれば、振動板の略面方向に前記梁部材が架設されているので、振動板面方向における側壁の変形が梁部材により効果的に防止される。従って、前記圧電体素子を動作させた際に、キャビティ隣接方向における側壁の変動が抑制され、もってキャビティ間での動作干渉が生じ難くなる。これにより、キャビティを狭小化して側壁が薄くなった場合にも、良好な液滴吐出性能を得ることができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、前記キャビティが平面視で略矩形状を成して形成されており、前記梁部材が、平面視で前記キャビティの短辺方向にて対向する側壁間に架設されていることが好ましい。この構成によれば、より効果的にキャビティ隣接方向での側壁の振動を防止でき、キャビティ間の動作干渉を防止することができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、複数の前記梁部材が平面視で前記キャビティの長辺方向に並設されていることが好ましい。この構成によれば、側壁が複数の梁部材により補強支持された構造となるので、さらに効果的に圧電体素子動作時の側壁の振動を防止することができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、前記梁部材と、該梁部材が架設された前記キャビティの内壁とが、同一材質により形成されていることが好ましい。この構成によれば、キャビティを取り囲む内壁と、前記梁部材とを一括に形成することができるため、容易かつ効率的に製造することが可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、前記梁部材と、該梁部材が架設されたキャビティの内壁とが、いずれも金属材料により形成されていることが好ましい。この構成によれば、耐久性及び信頼性に優れたインクジェットヘッドを提供することができる。
本発明のインクジェットヘッドでは、前記側壁と前記振動板とが、同一材質により一体に形成されていることが好ましい。この構成によれば、キャビティを取り囲む側壁と振動板とを一括に形成できるとともに、同一材質であることから側壁と振動板との接合性も良好なものとなり、耐久性及び信頼性に優れ、かつ効率的に製造することが可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
次に、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、圧電体素子の変形動作により内容積を変化可能な複数のキャビティを備えたインクジェットヘッドの製造方法であって、基材上に第1の材料によって所定形状の側壁材層を形成する工程と、前記第1の材料と異なる第2の材料を、前記側壁材層の間隙に埋設して充填層を形成する工程とを繰り返し行うことで前記側壁材層及び充填層を基材上に積層する側壁形成工程と、前記充填層を選択的に除去して前記基材上に前記キャビティの側壁を形成する工程とを含み、前記側壁形成工程の間に、前記壁材層の間隙にて前記充填層を横断する梁部材層を形成する工程を含むことを特徴としている。
この製造方法では、所定平面形状の側壁材層を積層することによりキャビティの側壁を形成するようになっており、この側壁材層を積層する間に、梁部材層を形成することで、容易にキャビティ内部に梁部材が作り込まれたインクジェットヘッドを得られるようになっている。この製造方法によれば、狭小な空間であるキャビティ内部に、任意の形状及び大きさを備えた梁部材を正確に形成することができるので、動作時に側壁が振動し難く、従って隣接キャビティ間での動作干渉が良好に防止されるインクジェットヘッドを製造することができる。従って本製造方法によれば、高精細であり、高速動作が可能なインクジェットヘッドを容易かつ効率的に製造することができる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記梁部材層を前記第1の材料を用いて前記側壁材層と一体に形成することが好ましい。この製造方法によれば、前記側壁材層の積層を行う際に同時に梁部材層を形成できるため、梁部材が内部に作り込まれたキャビティを備えたインクジェットヘッドを効率的に製造することができる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記側壁形成工程の後に、前記第1の材料を用いて前記壁材層及び充填層を覆う振動板層を形成する振動板形成工程を含むことができる。この製造方法によれば、前記充填層を選択的に除去することで、キャビティを構成する側壁と振動板とが一体に形成されたインクジェットヘッドを製造することができ、強度及び耐久性に優れ、高精細であって安定な高速動作が可能なインクジェットヘッドを効率的に製造できる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記振動板形成工程の後に、前記振動板層と圧電体素子とを接合する圧電体素子実装工程を含むことができる。この製造方法によれば、振動板層を形成した後、続いて圧電体素子実装工程を行い、効率よくインクジェットヘッドを製造できる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記圧電体素子実装工程が、転写基材上に保持された圧電体素子を前記振動板と接合する工程と、接合後の前記転写基材と圧電体素子とを分離する工程とを含むことができる。この製造方法では、転写基材に保持した圧電体素子を振動板に対して接合するので、ノズル板や側壁、振動板等のキャビティを構成する部材とは別途用意した高性能の圧電体素子を用いることができ、また振動板との位置合わせも容易になる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記転写基材上に圧電体素子を保持する工程が、単結晶基板上に犠牲層を介して圧電体素子を形成する工程と、前記圧電体素子と転写基材とを接合した後、前記犠牲層にて前記圧電体素子を前記単結晶基板と分離する工程とを含む工程であることが好ましい。この製造方法によれば、単結晶基板上に形成した圧電体素子を転写基材に保持して前記振動板との接合に供することができるため、振動板上に圧電体膜等を積層して圧電体素子を形成する場合に比して、圧電体膜の結晶性に優れた高性能の圧電体素子を備えたインクジェットヘッドを製造することができる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記転写基材と圧電体素子とを分離するに際して、前記転写基材側からの加熱又は光照射を行うことが好ましい。この製造方法によれば、転写基材と圧電体素子との分離を極めて容易に行えるとともに、圧電体素子を損傷することなく安全に分離することができる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記充填層を選択除去する工程を、前記圧電体素子実装工程の後に行うことが好ましい。この製造方法は、圧電体素子の実装作業が容易になるとともに、キャビティの保護の点でも優れている。つまり、充填層を除去してキャビティを形成した後では、微小な空隙が形成された部材と、圧電体素子とを接合することになり、接合圧力等にも注意を払う必要が生じるが、充填層を除去しない状態では、外部応力によるキャビティの変形は生じ難くなるため、製造が容易になる。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、前記基材として、液滴吐出口が設けられたノズル板を用いることもできる。この製造方法によれば、ノズル板上の正確な位置に直接に側壁を形成できるとともに、場合によっては振動板までも一工程で作製できるため、極めて効率よくインクジェットヘッドの製造を行うことができる。
次に、本発明は、先に記載の本発明のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタを提供する。また本発明のインクジェットプリンタは、先に記載の本発明に係る製造方法により得られたインクジェットヘッドを備えたものであっても良い。
このインクジェットプリンタは、高精細かつ高速の描画が可能な本発明のインクジェットヘッドを備えているので、高画質、高速の印刷が可能になる。
以下、本発明の実施の形態として、インクジェットプリンタ、インクジェットヘッド、及びインクジェットヘッドの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施の形態は本発明の技術範囲を限定するものではない。
(インクジェットプリンタ)
以下、本発明の一実施の形態である、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタについて説明する。尚、本実施形態では記録紙等に文字や画像を印刷するプリンタを例示して説明するが、本発明におけるインクジェットプリンタは、記録紙等に印刷する形態に限らず、工業的に用いられる液滴吐出装置(例えばカラーフィルタ製造装置や、有機EL素子製造装置、配線パターン形成装置等)も含めたものである。
図1は、本発明のインクジェットプリンタを、紙等に印刷する一般的なプリンタに適用した場合の一実施形態を示す概略構成図であり、図1中符号60はインクジェットプリンタである。尚、以下の説明では、図1のZ方向上側を「上部」、Z方向下側を「下部」と言う。
インクジェットプリンター60は、装置本体62を備えたもので、上部後方に記録用紙を設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙を排出する排出口622を有しており、上部面には、操作パネル67を有している。
操作パネル67は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプディスプレイ等の表示デバイスにて構成されたもので、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えたものである。
装置本体62の内部には、主に、往復動するヘッドユニット63を備えた印刷装置64と、記録用紙を1枚ずつ印刷装置64に送り込む給紙装置65と、印刷装置64および給紙装置65を制御する制御部66とが設けられている。
制御部66の制御により、給紙装置65は、記録用紙を一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙は、ヘッドユニット63の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット63が記録用紙の送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙への印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット63の往復動と、記録用紙の間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれるようになっている。
印刷装置64は、ヘッドユニット63と、ヘッドユニット63の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット63を往復動させる往復動機構642とを備えたものである。
ヘッドユニット63は、その下部に、多数のノズルを備えるインクジェットヘッド50と、このインクジェットヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェットヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有したものである。
尚、インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット630には、各色にそれぞれ対応したインクジェットヘッド50が設けられることになる。
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸644と、キャリッジガイド軸644と平行に延びて走行動作するタイミングベルト643とを有している。そして、キャリッジ632は、キャリッジガイド軸644に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト643の一部に固定されたものである。
キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト643を正逆走行させると、キャリッジガイド軸644に案内されて、ヘッドユニット63が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェットヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙への印刷が行われるようになっている。
給紙装置65は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により軸周りに回転する給紙ローラ652とを有したものである。
給紙ローラ652は、記録用紙の送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されたものであり、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されたものである。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙を、印刷装置64に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。尚、トレイ621に代えて、記録用紙を収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成としてもよい。
制御部66は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置64や給紙装置65等を駆動することにより印刷動作の制御を行うものである。この制御部66には、いずれも図示しないものの、主に各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、インクジェットヘッド50を駆動してインクの吐出タイミングを制御するヘッド駆動回路、印刷装置64(キャリッジモータ641)を駆動する制御回路、給紙装置65(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、およびホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとが備えられている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット63の位置、温度、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。制御部66は、通信回路を介して印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理し、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づき、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号によりインクジェットヘッド50、印刷装置64および給紙装置65は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙に所望の印刷がなされる。
(インクジェットヘッド)
<全体構成>
次に、図1に示したインクジェットヘッド50の構成について説明する。図2は、インクジェットヘッドの分解斜視図であり、図3は、図2に示すX方向におけるインクジェットヘッドの概略構成を示す側断面図である。尚、図2には、インクジェットプリンタ60に装着された状態とは上下を逆に図示している。以下の説明では、インクジェット記録ヘッド50を単にヘッド50と称することもある。
ヘッド50は、図2及び図3に示すようにノズル板51と、ヘッド本体57と、圧電体素子(振動源)54とを主体として構成されており、ヘッド本体57は、インク流路(リザーバ等)やキャビティ521を区画形成するべく所定平面形状にパターン形成されたインク室基板52と、このインク室基板52と一体に形成された振動板55とを備えている。そして図2に示すように、ヘッド本体57が基体56に収納されている。尚、このヘッド50は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成するものとなっている。
ノズル板51は、例えばステンレス板やニッケル板等で構成されたもので、インク滴を吐出するための多数のノズル(液滴吐出口)511が一列に貫設されたものである。これらノズル511間のピッチは、印刷精度に応じて適宜に設定されている。このノズル板51には、インク室基板52が固着(固定)されている。このインク室基板52は、本発明に係る製造方法によって形成されたもので、その側壁(隔壁)522と、ノズル板51および振動板55とにより、複数のキャビティ(インクキャビティ)521と、インクカートリッジ631から供給されるインクを一時的に貯留するリザーバ523と、リザーバ523から各キャビティ521に、それぞれインクを供給する供給口524とを区画形成したものである。
キャビティ521は、図2に示したように各ノズル511に対応して配設されたもので、後述する振動板板55の弾性変形によってそれぞれ容積可変になっており、この容積変化によってキャビティ521内部を瞬間的に昇圧し、ノズル511からインクを吐出するよう構成されたものである。そして、本実施形態に係るキャビティ521内には、平面視でキャビティの短辺方向(図示X方向)に延びて、側壁522,522を連結する連結部53、言い換えると、側壁522,522間に架設された複数の梁部材53が設けられている。複数(図示では6本)の梁部材53は、キャビティの長辺方向(図示Y方向)にほぼ等間隔で併設されている。
インク室基板52の平均厚さ、すなわちキャビティ521を含む厚さとしては、特に限定されないものの、10〜1000μm程度とするのが好ましく、100〜500μm程度とするのがより好ましい。また、キャビティ521の容積としては、特に限定されないものの、0.1〜100nL程度とするのが好ましく、0.1〜10nL程度とするのがより好ましい。
一方、インク室基板52のノズル板51と反対の側には振動板55が設けられており、さらに振動板55のインク室基板52と反対側の面には複数の圧電体素子54が配設されている。振動板55は、詳細は後述する圧電体素子54において、各構成層の結晶成長を助長するためのバッファ層を含むものとすることができる。
また、この振動板55の所定位置には、図2に示したように振動板55の厚さ方向に貫通して連通孔531が形成されている。そして、このような連通孔531により、図1に示したインクカートリッジ631からリザーバ523へのインクの供給がなされるようになっている。
ヘッド本体57の構成材料としては、例えばニッケルや銅などを好適なものとして例示でき、側壁522、梁部材53、及び振動板55は同一材料からなるものとすることができる。このように同一材料によりヘッド本体57の構成部材を形成することで、ヘッド本体57を一体的に形成でき、極めて微小なキャビティ521を形成したとしても良好な耐久性を得ることができ、また製造を効率よく行うことができる。但し、これらを異種材料により構成することを妨げるものではない。
各圧電体素子54は、前述したように下部電極4と上部電極6との間に圧電体層5が介挿されて構成されたもので、図3に示すように、各々が各キャビティ521のほぼ中央部に対応して配設されたものである。尚、この圧電体素子54の詳細構成については、後述のインクジェットヘッドの製造方法の鋼にて説明している。
これら各圧電体素子54は、後述する圧電体素子駆動回路に電気的に接続され、圧電体素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電体素子54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエータ)として機能するものとなっており、振動板55は、圧電体素子54の振動(撓み)によって振動し(撓み)、キャビティ521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能するものとなっている。
基体56は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で形成されたもので、図2に示したようにこの基体56にインク室基板52が固定、支持されている。
<インク吐出動作>
図4は、ヘッド50の動作を説明するための部分断面構成図であり、同図(a)は、圧電体素子54が非電圧印加状態にある場合を示し、(b)は、圧電体素子54が電圧印加状態にある場合を図示している。図4(a)に示すように、上記構成を備えたヘッド50は、圧電体素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電体素子54の下部電極4と上部電極6との間に電圧が印加されていない状態では圧電体層5に変形が生じない。このため、振動板55にも変形が生じず、キャビティ521には容積変化が生じない。従って、ノズル511からインク滴は吐出されない。
一方、図4(b)に示すように圧電体素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電体素子54の下部電極4と上部電極6との間に一定電圧(例えば30V程度)が印加された状態では、圧電体層5においてその短軸方向に撓み変形が生じる。これにより、振動板55が例えば500nm程度撓み、キャビティ521の容積変化が生じる。このとき、キャビティ521内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル511からインク滴が吐出される。
すなわち、電圧を印加すると、圧電体層5の結晶格子は面に対して垂直な方向に引き伸ばされるが、同時に面に平行な方向には圧縮される。この状態では、圧電体層5にとっては面内に引っ張り応力が働いていることになる。従って、この応力によって振動板55を反らせ、撓ませることになる。キャビティ521の短軸方向での圧電体層5の変位量(絶対値)が大きければ大きいほど、弾性板55の撓み量が大きくなり、より効率的にインク滴を吐出することが可能になる。ここで、効率的とは、より少ない電圧で同じ量のインク滴を飛ばすことができることを意味する。すなわち、駆動回路を簡略化することができ、同時に消費電力を低減することができるため、ノズル511のピッチをより高密度に形成することができる。または、キャビティ521の長辺方向(図示Y方向)の長さを短くすることができるため、ヘッド全体を小型化することができる。
このようにして1回のインクの吐出が終了すると、圧電体素子駆動回路は、下部電極4と上部電極6との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電体素子54は元の形状に戻り、キャビティ521の容積が増大する。尚、このとき、インクには、後述するインクカートリッジ631からノズル511へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル511からインク室521へと入り込むことはなく、吐出された量に見合った量のインクがインクカートリッジ631からリザーバ523を経てキャビティ521へ供給されるようになっている。このように、インク滴の吐出を行わせたい位置の圧電体素子54に対して、圧電体素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
そして、本実施形態のヘッド50では、図4に示すようにキャビティ521を短辺方向(図示X方向)に横断して側壁522,522間に梁部材53が架設されているので、振動板55が圧電体素子54により変形されたとしても、この梁部材53が側壁522の姿勢を維持し、側壁522が左右方向(図示X方向)に変形しないようになっている。従って本実施形態のインクジェットヘッド50によれば、圧電体素子54の振動に起因して隣接するキャビティ521の内容積が変化するのを効果的に防止できる。すなわち、印刷の高精細化、及び高速化を目的としてノズル511を狭ピッチ化し、キャビティ521を狭小化する結果、側壁522が薄くなったとしても、印刷結果に不具合を生じることが無く、高画質の印刷を高速に行うことができる。
(インクジェットヘッドの製造方法)
<ヘッド本体の製造工程>
まず、図2及び図3に示したインクジェットヘッドに備えられたヘッド本体57を製造する方法について、図5及び図6を参照して説明する。図5(a)〜(d)は、本実施形態に係るヘッド本体の斜視工程図であり、図6(a)〜(c)は、同、斜視工程図であって、図5(d)に示す工程に続く工程を示している。尚、以下では、図4(a)のキャビティ521が1つのみ図示されたヘッド本体57に対応する図面を示して説明するが、実際の製造工程では、ヘッド本体57に複数のキャビティ521が同時に形成されることとなる。
まず、図5(a)に示すように、基材51上に、所定平面形状の側壁材層52aを形成する。この側壁材層52aは、例えばニッケルや銅などの金属材料(第1の材料)をスパッタ法や蒸着法により成膜した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで形成できる。尚、基材51としては、図2に示したノズル板を用いることができる。ニッケルや銅のノズル板を基材51として用いた場合には、基材表面に対して所定平面形状に直接パターニング処理を施すことで、最初の側壁材層52aを形成することもできる。
次に、図5(b)に示すように、側壁材層52a及び基材51を覆うように、例えばアルミニウム(第2の材料)からなる充填層59を、スパッタ法や蒸着法等により成膜し、続いてCMP(Chemical Mechanical Polishing)等により充填層59表面を平坦化し、図5(c)に示すように、側壁材層52aの上面を露出させる。この平坦化処理はCMP以外の方法であっても構わない。
その後、上記側壁材層52aをパターン形成する工程と、充填層59を形成し平坦化する工程とを繰り返すことで、所定高さの側壁材層52aとその間隙に形成された充填層59とを得たならば、図5(d)に示すように、最上面の側壁材層52aを形成する工程にて、充填層59上を横断する梁部材層53aを、側壁材層52aと同一の材料にて形成する。この梁部材層53aが、図4に示した梁部材53を構成するものとなる。またこの場合、壁材層52aのパターニングに用いるマスク形状を変更することで容易に梁部材層53aを含む層を形成することができる。
尚、梁部材層53aは側壁材層52aと異種の材料を用いて形成しても良いが、後続の工程で充填層59を選択的に除去するために充填層59の構成材料との間で十分な選択比が得られる材料(ニッケルや銅等が好ましい。)とする。
図5(d)に示すように側壁材層52aと梁部材層53aとからなる層を形成したならば、先の工程と同様に充填層59の形成及び平坦化を行った後、さらに側壁材層52aと充填層59の形成及び平坦化を、図6(a)に示すように、側壁材層52aが所定の高さ(すなわち側壁522の高さ)に達するまで繰り返して行い、基材51上に側壁522を形成する。
次に、図6(b)に示すように、側壁522と充填層59とを覆うように、側壁材層52aと同材料の金属膜を形成することで、側壁522と一体の振動板55を形成する。そして、側壁522と振動板55と基材51とに囲まれる領域に充填された充填層59を、エッチング処理により除去することで、図6(c)に示すヘッド本体57を得る。この充填層59のエッチング処理には、KOH溶液やNaOH溶液等のアルカリ性のエッチング液を用いるのが良く、エッチング液の濃度により充填層59と、側壁522、梁部材53、及び振動板55との選択比を調整することができる。
尚、後続の項で圧電体素子の配設工程について説明しているが、上記充填層59をエッチング処理により除去する工程は、ヘッド本体57に圧電体素子54を接合した後に行うことが好ましい。このような製造方法とすれば、内部に中空のキャビティ521が形成された後にヘッド本体57と圧電体素子54とを接合する場合に比して、接合が容易になるとともに、ヘッド本体57の変形等も防止でき、インクジェットヘッドの製造歩留まり向上に寄与する。
<圧電体素子の配設工程>
次に、先の製造工程により得られたヘッド本体57に、圧電体素子54を配設する工程について、図7及び図8を参照して説明する。
[圧電体素子の構成]
まず説明に先立ち、図7(a)に示す圧電体薄膜素子150について説明する。この圧電体薄膜素子150は、Si(100)単結晶基板151と、この単結晶基板151上に犠牲層(第1バッファ層)152を介して順に積層形成されたバッファ層(第2バッファ層)153と、下部電極4と、圧電体層5と、上部電極6とを備えて構成されており、バッファ層153から上側を図4に示した圧電体素子54としてヘッド本体57に配設可能に作製されたものである。
単結晶基板151としては、(100)配向の単結晶シリコン基板に加え、(111)配向の単結晶シリコン基板を好適に用いることができるが、これに限定されることなく、例えば(110)配向のSi基板で、その表面に熱酸化膜や自然酸化膜などのアモルファスの酸化シリコン膜を形成したものも使用可能である。
犠牲層152としては、(110)又は(100)配向、好ましくは(110)配向の酸化ストロンチウム(SrO)によって形成される。このSrOは、後述するようにその上に形成するバッファ層153をエピタキシャル成長させるのに適している。ここで、SrOについては、特にエピタキシャル成長させて形成するのが好ましい。このようにして形成すれば、(110)又は(100)配向のSrOの結晶格子が(100)配向のSi基板上に規則的に並ぶようになり、従ってこのSrOの上に、バッファ層153が、より良好にエピタキシャル成長しやすくなるからである。また、この犠牲層152には、BaO、MgO、CaO等を用いることもできる。これらを用いた場合にも、バッファ層153を良好にエピタキシャル成長させることができる。
バッファ層153としては、単層又は複層の金属酸化物を用いることができ、具体例を例示すると、(100)配向のイットリア安定化ジルコニア(以下、YSZと略記する)あるいはZrOからなる第1層と、(100)配向のCeOからなる第2層と、(001)配向のYBaCuからなる第3層とをこの順に積層した構成が好適である。このような3層構造のバッファ層153にあっては、犠牲層152上にYSZ(ZrO)が(100)配向に良好にエピタキシャル成長し、これの上にCeOが(100)配向に良好にエピタキシャル成長し、さらにこれ上にYBaCuが(001)配向に良好にエピタキシャル成長する。したがって、このような3層構造としても、このバッファ層3上には、後述のペロブスカイト構造(100)配向の下部電極4が良好に形成されるようになる。
下部電極4は、圧電体層5に電圧を印加するための一方の電極となるものであり、図3に示したように、インクジェットヘッドのヘッド本体57上に複数の圧電体素子54が配設される場合、これらの共通の電極として振動板57の外面と略同一の大きさに形成することができ、後述する圧電体層5及び上部電極6と同一形状に形成しても良い。
この下部電極4は、擬立方晶(100)配向のペロブスカイト構造の金属酸化物、具体的にはSrRuO、CaRuO、BaRuO、SrVO、(La,Sr)MnO、(La,Sr)CrO、(La,Sr)CoO等のうちから選択された少なくとも一種によって形成されていることが好ましい。さらに、下部電極4として、PtやIr、あるいはこれら金属の積層構造を用いることもできる。これらの金属は、バッファ層153上に良好にエピタキシャル成長するからである。
ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)は、Srn+1Ru3n+1(nは1以上の整数)で表されるペロブスカイト構造となる。この構造において、n=1のときにはSrRuOとなり、n=2のときにはSrRuとなり、n=∞のときにはSrRuOとなる。そして、前記下部電極4としてSROを用いる場合には、導電性及び圧電体層5の結晶性を高めるため、SrRuOとするのが最も好ましい。
また、この下部電極4としては、単層の金属酸化物で形成するのに代えて、例えば2層の金属酸化物の間にIrあるいはPtを挟持した積層構造をとることもできる。その場合に金属酸化物としては、例えばSRO(ルテニウム酸ストロンチウム)を用いることができ、このような構造とした場合、特に圧電体層5側のSROをSrRuOとするのが好ましい。
圧電体層5は、ペロブスカイト型結晶構造を有し、揮発性元素を含有する圧電性セラミックスによって下部電極4上に所定形状に形成されたものである。具体的には、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO:PLZT)、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Mg,Nb)TiO:PMN−PT)、マグネシウムニオブ酸ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Mg,Nb)(Zr,Ti)O:PMN−PZT)、亜鉛ニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Zn,Nb)TiO:PZN−PT)、スカンジウムニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Sc,Nb)TiO:PSN−PT)、ニッケルニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Ni,Nb)TiO:PNN−PT)、BiTi12、SrBiTa等によって形成されている。
この圧電体層5は、レーザーアブレーション法等の気相成膜法、液滴吐出法やゾルゲル法等の液相成膜法のいずれによっても形成することができるが、例えばゾルゲル法の場合には、基板上に圧電体層5の形成材料の前駆体化合物(金属アルコキシド)を成膜し、前記前駆体化合物を成膜した基板を、酸素が存在する常圧下あるいは加圧下にて熱処理することにより、該前駆体化合物を強誘電体薄膜とすることで形成することができる。
上部電極6は、圧電体層4に電圧を印加するための他方の電極となるもので、導電性を有する材料、例えば白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)等で形成することができ、他の材料を用いることもできる。上部電極6としてアルミニウムが用いられる場合、電蝕対策のため、この上にイリジウム等が積層される。
尚、上記の説明では、犠牲層152としてSrOを用いた場合について説明したが、この上側に形成される3層構造のバッファ層153を単結晶基板151上に直接形成した構成も適用できる。この場合、単結晶基板151上に、それぞれYSZ、CeO、YBaCuからなる層が積層され、YBaCu層上に下部電極4が形成された構成となる。このような構成においては、YBaCu層が犠牲層として機能する。このようにYBaCu層を犠牲層として用いる場合、その膜厚を100nm以上とすることが好ましい。一方、上述の如くSrO等からなる犠牲層152を設けた場合には、このYBaCu層の膜厚は100nm以下とするのがよい。
[配設工程]
次に、図7(a)に示した圧電体薄膜素子150を用いてインクジェットヘッド50のヘッド本体57に対し、圧電体素子54を配設する工程について説明する。
上記圧電体薄膜素子150を用意したならば、図7(b)に示すように、上部電極6上に、転写基材160を接着する。この転写基材160としては、樹脂フィルムの一面側にUV硬化性ないし熱硬化性の粘着材が塗布されたものを例示することができ、透明でかつ可撓性を有するフィルムを備えたものとすることが好ましい。あるいは、樹脂フィルムに代えてガラス板を用いることもできる。ガラス板は安価で保型性があり、さらに透光性を有しているため、一面側に接着材を塗布すれば好適な転写基材となる。接着材には、後工程で容易に剥がせるような特性(熱溶融性など)を備えたものが好ましい。また後工程で圧電体素子をヘッド本体57に接合する際の位置合わせ(アライメント)が容易になるよう、透光性を有するものが好ましい。
次に、図7(c)に示すように、エッチング等により犠牲層152を除去し、単結晶基板151と、圧電体素子(バッファ層153〜上部電極6)及び転写基材160とを分離する。係るエッチング処理に際しては、エッチング液として例えば硝酸を水で希釈したものを用いることができる。犠牲層152を構成するSrO、MgO、BaO、CaOは酸に対するエッチング速度が極めて速く、簡単に除去される。従って、圧電体素子を保護するためにもエッチング液には低濃度の酸性溶液を用いることが好ましい。またエッチングによる損傷を防止するべく圧電体素子の表面に保護膜を形成しておくとなおよい。
尚、この工程で分離された単結晶基板151は、圧電体薄膜素子150の製造に再利用することができる。
次に、図8(a)に示すように、転写基材160に保持した圧電体素子を、接着層164を介してヘッド本体57と接合する。この接着層164としては、熱硬化型接着材や、UV(紫外光)硬化型接着材等の光硬化型接着材、あるいは反応硬化型接着材等を好適に用いることができるが、転写基材160と上部電極6とを接着している接着材とは異なる性質を有するものが好ましい。接着層164の形成は例えば塗布法による。尚、先の工程での犠牲層の形態によっては、下部電極4とヘッド本体57とを接合することになるため、この接着層164は下部電極4の外面側に形成しても良い。
次に、図8(b)に示すように、転写基材160側から、上部電極6と転写基材160との接合面に対して紫外線を照射することで接着力を消失させ、転写基材160を上部電極6から剥離する。このように、転写基材160に塗布した接着材がUV硬化型接着材で有れば、光照射のみにより転写基材160を容易に剥離することが可能である。熱硬化型接着材を用いている場合には、転写基材160側から加熱すればよい。
以上の工程により、図8(c)に示すように、ヘッド本体57と圧電体素子とを接合することができる。なお、ここでは省略しているが、転写後上部電極6、圧電体層5、下部電極4をパターングする。このような転写により圧電体素子を配設する製造方法を用いるならば、単結晶基板151を用いて各層をエピタキシャル成長させた圧電体素子を容易にヘッド本体57と接合でき、高性能の圧電体素子を備えたインクジェットヘッドを容易に製造することができる。また、この製造方法を適用することで、ヘッド本体57の材質を任意に選択することができるため、ヘッドの小型化によりキャビティ521を狭小化した際にも十分な強度と耐久性を有するインクジェットヘッドを製造することが可能になる。なお、バッファ層153も振動板として機能する。
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタの斜視構成図。 図2は、同、インクジェットヘッドの斜視構成図。 図3は、同、インクジェットヘッドの側断面構成図。 図4は、同、インクジェットヘッドの動作説明図。 図5は、実施形態に係るヘッド本体の製造工程を示す斜視工程図。 図6は、実施形態に係るヘッド本体の製造工程を示す斜視工程図。 図7は、実施形態に係る圧電体素子の配設工程を示す斜視工程図。 図8は、実施形態に係る圧電体素子の配設工程を示す斜視工程図。 図9は、従来のインクジェットヘッドの断面構成図。
符号の説明
4…下部電極、5…圧電体層、6…上部電極、50…インクジェットヘッド(ヘッド)、51…ノズル板(基材)、52…インク室基板、52a…側壁材層、53…梁部材、53a…梁部材層、54…圧電体素子、55…振動板、57…ヘッド本体、59…充填層、60…インクジェットプリンタ、150…圧電体薄膜素子、151…単結晶基板、152…犠牲層、153…バッファ層、160…転写基材、511…ノズル、521…キャビティ、522…側壁

Claims (17)

  1. 圧電体素子と、
    前記圧電体素子の下方に、該圧電体素子の変形により内容積が変化する複数のキャビティと、を備え、
    前記キャビティの内壁を連結する梁部材が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記キャビティが、液滴吐出口を有するノズル板と、該ノズル板から立設された複数の側壁と、前記ノズル板に対向配置された振動板とに囲まれる空間であり、
    前記梁部材が、互いに対向して配置された前記側壁間に架設されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記キャビティが平面視で略矩形状を成して形成されており、前記梁部材が、平面視で前記キャビティの短辺方向にて対向する側壁間に架設されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 複数の前記梁部材が、平面視で前記キャビティの長辺方向に並設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記梁部材と、該梁部材が架設された前記キャビティの内壁とが、同一材質により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記梁部材と、該梁部材が架設されたキャビティの内壁とが、いずれも金属材料により形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記側壁と前記振動板とが、同一材質により一体に形成されていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  8. 圧電体素子の変形動作により内容積を変化可能な複数のキャビティを備えたインクジェットヘッドの製造方法であって、
    基材上に第1の材料によって所定形状の側壁材層を形成する工程と、前記第1の材料と異なる第2の材料を、前記側壁材層の間隙に埋設して充填層を形成する工程とを繰り返し行うことで前記側壁材層及び充填層を基材上に積層する側壁形成工程と、
    前記充填層を選択的に除去して前記基材上に前記キャビティの側壁を形成する工程とを含み、
    前記側壁形成工程の間に、前記壁材層の間隙にて前記充填層を横断する梁部材層を形成する工程を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  9. 前記梁部材層を前記第1の材料を用いて前記側壁材層と一体に形成することを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  10. 前記側壁形成工程の後に、前記第1の材料を用いて前記壁材層及び充填層を覆う振動板層を形成する振動板形成工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  11. 前記振動板形成工程の後に、前記振動板層と圧電体素子とを接合する圧電体素子実装工程を含むことを特徴とする請求項10に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  12. 前記圧電体素子実装工程が、
    転写基材上に保持された圧電体素子を前記振動板と接合する工程と、
    接合後の前記転写基材と圧電体素子とを分離する工程と
    を含む工程であることを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  13. 前記転写基材上に圧電体素子を保持する工程が、
    単結晶基板上に犠牲層を介して圧電体素子を形成する工程と、
    前記圧電体素子と転写基材とを接合した後、前記犠牲層にて前記圧電体素子を前記単結晶基板と分離する工程と
    を含む工程であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  14. 前記転写基材と圧電体素子とを分離するに際して、前記転写基材側からの加熱又は光照射を行うことを特徴とする請求項12又は13に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  15. 前記充填層を選択除去する工程を、前記圧電体素子実装工程の後に行うことを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  16. 前記基材として、液滴吐出口が設けられたノズル板を用いることを特徴とする請求項8ないし15のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  17. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
JP2003404297A 2003-12-03 2003-12-03 インクジェットヘッドの製造方法 Expired - Fee Related JP3952010B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003404297A JP3952010B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 インクジェットヘッドの製造方法
US11/002,964 US7244016B2 (en) 2003-12-03 2004-12-02 Ink jet head and its manufacturing method, and ink jet printer

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003404297A JP3952010B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 インクジェットヘッドの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005161700A true JP2005161700A (ja) 2005-06-23
JP3952010B2 JP3952010B2 (ja) 2007-08-01

Family

ID=34674848

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003404297A Expired - Fee Related JP3952010B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 インクジェットヘッドの製造方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US7244016B2 (ja)
JP (1) JP3952010B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7497962B2 (en) * 2004-08-06 2009-03-03 Canon Kabushiki Kaisha Method of manufacturing liquid discharge head and method of manufacturing substrate for liquid discharge head
JP4802469B2 (ja) * 2004-09-14 2011-10-26 富士ゼロックス株式会社 液滴吐出装置
US20080061471A1 (en) * 2006-09-13 2008-03-13 Spin Master Ltd. Decorative moulding toy
US7651204B2 (en) * 2006-09-14 2010-01-26 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Fluid ejection device
US7914125B2 (en) 2006-09-14 2011-03-29 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Fluid ejection device with deflective flexible membrane
US8042913B2 (en) * 2006-09-14 2011-10-25 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Fluid ejection device with deflective flexible membrane
JP2008252071A (ja) * 2007-03-06 2008-10-16 Fujifilm Corp 圧電素子とその製造方法、及び液体吐出装置
JP4349424B2 (ja) * 2007-03-13 2009-10-21 セイコーエプソン株式会社 カラーフィルター用インク、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器
JP5329820B2 (ja) * 2007-03-16 2013-10-30 富士フイルム株式会社 液体吐出装置
JP4784611B2 (ja) * 2008-01-31 2011-10-05 ブラザー工業株式会社 圧電アクチュエータの製造方法及び液体移送装置の製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3365224B2 (ja) * 1996-10-24 2003-01-08 セイコーエプソン株式会社 インクジェット式記録ヘッドの製造方法
JP2003152233A (ja) 2001-11-09 2003-05-23 Seiko Epson Corp 圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッド
JP2003152288A (ja) 2001-11-14 2003-05-23 Nissan Motor Co Ltd フレキシブル基板、回路基板および電子部品実装方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20050134652A1 (en) 2005-06-23
JP3952010B2 (ja) 2007-08-01
US7244016B2 (en) 2007-07-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4453830B2 (ja) 圧電素子およびその製造方法、インクジェット式記録ヘッド、並びに、インクジェットプリンタ
JP6620543B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
JP2004006722A (ja) 圧電アクチュエータ、インクジェット式ヘッド及び吐出装置
JP6620542B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
JP4548597B2 (ja) 圧電素子の製造方法、インクジェット式記録ヘッドの製造方法およびインクジェットプリンタの製造方法
JP5158299B2 (ja) 圧電素子、アクチュエータ装置、液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子の製造方法
JP3772977B2 (ja) 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP3952010B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JP2012089600A (ja) 圧電素子、液滴噴射ヘッドおよび液滴噴射装置ならびに圧電素子の製造方法
US20100201755A1 (en) Liquid ejection head, liquid ejection apparatus and image forming apparatus
JP7363067B2 (ja) 圧電体薄膜素子、液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び圧電体薄膜素子の製造方法
JP5007780B2 (ja) 圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置の製造方法
US8177336B2 (en) Method of driving piezoelectric actuator and method of driving liquid ejection head
JP2009051104A (ja) 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
US11192364B2 (en) Electro-mechanical transducer, liquid discharge head, liquid discharge device, and liquid discharge apparatus
JP2006253476A (ja) 圧電素子およびその製造方法、合金膜、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンタ、並びに、圧電ポンプ
JP2008296417A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、液滴吐出装置
JP2009292003A (ja) 液滴吐出ヘッド、インクジェットプリンタ、液滴吐出ヘッドの製造方法およびインクジェットプリンタの製造方法
JP2006253477A (ja) 圧電素子およびその製造方法、合金膜、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンタ、並びに、圧電ポンプ
JP2007237717A (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置
US11801676B2 (en) Liquid discharge head, liquid discharge device, liquid discharge apparatus
JP7389961B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置
US11613121B2 (en) Liquid discharge head, liquid discharge apparatus, and actuator
US11964481B2 (en) Liquid discharge head and actuator
JP2005209898A (ja) 圧電体素子、及びその製造方法並びに液体噴射ヘッド

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20061215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070305

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070403

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070416

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110511

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120511

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees