本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
図1は本発明の第1実施例に係る内燃機関の筒内燃料噴射装置の側面図,図2は図1の2矢視図,図3は図1の3−3線断面図,図4は図3の4−4線断面図,図5は図4の5部拡大図,図6は図4の6部拡大図,図7は図4の7部拡大図,図8は図5の8−8線断面図,図9は図6中の燃料噴射弁の9矢視図,図10は図9の10−10線断面図,図11は図5中のガスケットの斜視図,図12は図6中のバックアップリングの斜視図,図13は図7中のシール環の縦断面図,図14は図7の導線保護部材の斜視図,図15は本発明の第2実施例を示す,図4との対応図,図16は図15の16部拡大図である。
先ず,図1〜図14に示す本発明の第1実施例の説明より始める。
図1及び図2において,本発明の筒内燃料噴射装置は,電気点火式多気筒内燃機関Eのシリンダヘッド1外面に取り付けられる燃料分配管Dと,この燃料分配管Dの複数の分岐管6,6…に燃料導入管2,2…を介して吊持される複数の噴射弁保護筒3,3…と,これら噴射弁保護筒3,3…に収容,保持される電磁式燃料噴射弁I,I…とを備え,噴射弁保護筒3,3…は内燃機関Eのシリンダヘッド1に各気筒に対応して装着される。
燃料分配管Dは,円筒状の分配管本体5と,この分配管本体5から延出した,噴射弁保護筒3と同数の分岐管6,6…とからなっており,分配管本体5は,各分岐管6より充分に大なる内容積を有する。分配管本体5には複数のブラケット7,7…が設けられ,これらがシリンダヘッド1の外面に形成される複数の取り付け部8,8…にボルト9,9…をもって固着される。
分岐管6及び燃料導入管2は,それらに形成された上部連結フランジ100及び下部連結フランジ101をボルト結合することにより連結されると共に,内部を相互に連通されるもので,その連結構造については後で詳述する。
分配管本体5の一端には図示しない燃料ポンプの吐出ポートに連なる燃料供給管10が接続される。また分配管本体5の一側にはリリーフ弁11が取り付けられ,このリリーフ弁11の一端には,余剰燃料を図示しない燃料タンクに還流させる燃料戻し管12が接続される。
図3及び図4において,内燃機関Eのシリンダヘッド1には,各気筒に対応した燃焼室15の天井中心部から動弁室16の上方に亙るガイド部17が設けられる。このガイド部17は,先端を燃焼室15に臨ませてシリンダヘッド1に螺着されるガイドキャップ18と,このガイドキャップ18の挿入を可能にするようにシリンダヘッド1に形成されたガイド孔19と,このガイド孔19の内周面に連続する内周面を有してシリンダヘッド1に圧入され,動弁室16の上方まで延びるガイド筒20とからなっている。ガイドキャップ18は,その上端に皿状フランジ18aを有しており,この皿状フランジの外周部下面シリンダヘッド1に当接することで,ガイドキャップ18のシリンダヘッド1への螺合深さが規制される。またガイドキャップ18は,燃焼室15に開口する下端部に半径方向内向きの鍔18bを有する。こうして構成されるガイド部17に前記噴射弁保護筒3が嵌装される。
次に,図4〜図6ににより,噴射弁保護筒3に収容,保持される電磁式燃料噴射弁Iの構成について説明する。
電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング21は,円筒状の弁座部材22と,この弁座部材22の上端部に形成されたフランジ22a外周に圧入結合されて全周レーザ溶接W1される連結筒部24aを有する環状の下部ヨーク24と,この下部ヨーク24の上端に全周に亙り液密にレーザ溶接される非磁性カラー25と,この非磁性カラー25の上端に全周に亙り液密にレーザ溶接される固定コア26とから構成され,弁座部材22及び下部ヨーク24間にストッパプレート27が挟持される。
弁座部材22は,その下端面に開口する燃料噴孔23と,この燃料噴孔23の内端に連なる円錐状の弁座28と,この弁座28の大径部に連なる円筒状の弁ガイド孔29とを備えており,その弁ガイド孔29の下部にはスワールカラー30が圧入される。このスワールカラー30の外周面と下端面とには軸方向の通溝31と,半径線に対して一定方向に傾斜したスワール溝32とがそれぞれ設けられている。このスワール溝32は,通過する燃料に一定方向のスワールを付与する。
弁座部材22内には,弁座28と協働するニードル弁33が収容される。このニードル弁33は,ストッパプレート27及びスワールカラー30を上下に貫通するように延びていて弁座28に着座するニードル34と,このニードル34の外周に形成されてガイド孔19の内周面を摺動し得る一対のジャーナル35,35と,ストッパプレート27の下面に対向するストッパフランジ36とからなっており,そのストッパフランジ36がストッパプレート27の下面に当接することにより,弁座28からのニードル弁33の開弁ストロークが規制される。各ジャーナル35,35は,ガイド孔19内での燃料の流通を許容する複数の平面部を外周に有する。
ニードル34の上端部には,下部ヨーク24及び非磁性カラー25の内側で固定コア26の下端面に対向する可動コア37が一体的に連結される。この可動コア37は,下部ヨーク24及び非磁性カラー25内を,それらの内周面に接触せずに昇降することができる。
ニードル34及び可動コア37の連結構造を詳しく説明すると,可動コア37には,その下端面に開口する袋状の連結孔38が設けられ,この連結孔38に,ニードル34の上端部の連結軸部34aが圧入される。その連結軸部34aの上端外周には,連結軸部34aの連結孔38への圧入を案内する面取り39が形成される。また袋状の連結孔38の内端面と連結軸部34aの先端面との間には,上記圧入時に発生する切粉を受容する切粉溜め40が画成される。
さらに袋状の連結孔38の深さは,この連結孔38への連結軸部34aの圧入深さを加減することにより,ストッパフランジ36の上面から可動コア37の上端面までの距離L1を調整するに充分な寸法に設定される。上記距離L1は,当該ニードル弁33及び可動コア37と組み合わせられる固定コア26の下端面からストッパプレート27の下面までの距離L2から,ニードル弁33の開弁時に両コア26,37の対向面間に設けるべき微小間隙に対応する長さΔLを差し引いた値,即ちL1=L2−ΔLに調整される。したがってストッパフランジ36がストッパプレート27の下面に当接したニードル弁33の開弁時には,両コア26,37の対向面間に所定の微小間隙ΔLを確保することができる。
可動コア37の下面には,上記連結孔38に内周面を連続させる薄肉円筒部37aが一体に突設されており,この薄肉円筒部37aの下端部が上記連結軸部34aに全周に亙りレーザ溶接される。その際,レーザの照射点を,連結軸部34a及び薄肉円筒部37aの境界から,比較的低硬度の薄肉円筒部37aにオフセットして,薄肉円筒部37aへの入熱を多くしながら両者34a,37aをレーザ溶接し,比較的高硬度のニードル弁33の過熱による亀裂を回避する。また薄肉円筒部37aへの入熱は薄肉円筒部37aに留まり,可動コア37本体側までは波及しない。こうして可動コア37の磁性特性の低下を回避しながら,ニードル弁33及び可動コア37は互いに強固に結合される。
固定コア26は中心部を貫く縦孔41を有しており,その縦孔41に嵌合されたパイプ状のリテーナ42が固定コア26に,その外周からのカシメにより固定され,このリテーナ42と可動コア37との間に,可動コア37をニードル弁33の閉弁方向に付勢するコイル状の弁ばね43が縮設される。その際,弁ばね43のセット荷重は,リテーナ42の縦孔41への嵌合深さを加減することにより調整される。また可動コア37の上端面には,弁ばね43の下端部を受容する位置決め凹部44が設けられる。
固定コア26は,リテーナ42より上方に延びる燃料入口筒45を一体に備えており,その燃料入口筒45の入口に燃料フィルタ46が装着される。燃料入口筒45の内部は,リテーナ42の中空部,縦孔41,可動コア37外周面の複数の切欠き溝47及びにストッパプレート27の貫通孔48を介して弁座部材22の内部と連通される。
ストッパプレート27の貫通孔48は,図8に示すように,ストッパプレート27の中心部に位置する,前記ストッパフランジ36の外径より小さい小径孔48aと,この小径孔48aの一側にダルマ状に接続した,ストッパフランジ36及びジャーナル35,35の外径より大きい大径孔48bとからなっていて,ストッパプレート27を弁ハウジング21に組み込む前に,ニードル弁33のジャーナル35,35及びストッパフランジ36を大径孔48bに挿入した後,ニードル34を小径孔48a側にずらすことにより,ストッパフランジ36をストッパプレート27の下面に対向させるようになっている。
弁ハウジング21の外周には,固定コア26及び可動コア37と協働するコイル組立体50が配設される。このコイル組立体50は,非磁性カラー25及び固定コア26の外周には嵌合するボビン51と,これに巻装されるコイル52とからなっており,このコイル組立体28を囲繞する磁性体のコイルハウジング53が下部ヨーク24にレーザ溶接され,このコイルハウジング53の上端に,固定コア26の外周に嵌合してレーザ溶接される環状の上部ヨーク54が重ねられる。
ボビン51の上端には,コイル52の両端末に連なる一対の端子55,55を保持する端子保持部51aが一体に形成されており,この端子保持部51aは,コイルハウジング53及び上部ヨーク54の一側部の連続した切欠き57,58に配置される。
弁ハウジング21の外周には,下部ヨーク24から燃料入口筒45の中間部に亙り合成樹脂製の円筒状被覆体59が射出成形により形成される。その際,前記切欠き57,58と,コイルハウジング53の他側部の切欠き57′とを通して合成樹脂がコイルハウジング53内に充填されてコイル組立体50を被覆する。
尚,図6中,被覆体59に設けられた孔59bは,燃料入口筒45の外周をカシメてリテーナ42を固定する際に使用されるカシメ用工具の挿入孔である。
図5,図9及び図10に示すように,前記一対の端子55,55は,被覆体59の中間に形成された上向きの段部59aから露出しており,これら端子55,55に,カプラ66から延出した二本の導線61,61が一対のコネクタ60を介して接続される。具体的には,各コネクタ60は,最初にその一端部が対応する導線61の端末にカシメ結合され,その他端に対応する端子55,55が電着される。コネクタ60と端子55,55及び導線61,61の接続部を覆う接続部カバー62が被覆体59の一側部に嵌合され,この接続部カバー62内に絶縁樹脂63がポッティングされ,この絶縁樹脂63により上記接続部が埋封されると共に,接続部カバー62が被覆体59に接着される。
上記接続部カバー62の外側面には,燃料噴射弁Iの識別番号もしくは記号64が表示され,その識別番号もしくは記号64は,それに対応して噴射弁保護筒3の一側壁に設けられた下部覗き孔65から認識し得るようになっている。
燃料噴射弁Iの先端部,即ち下端部には,噴射弁保護筒3を結合する取り付けキャップ70が取り付けられる。この取り付けキャップ70は,弁座部材22の先端部外周面に嵌合する小径筒部70aと,連結筒部24aの外周面に嵌合すると共に下部ヨーク24の下端面に当接する大径筒部70bとを備える。弁座部材22の先端部外周には環状溝71が形成されており,これに,上記小径筒部70aの内周面に密接する耐熱性のシール部材72が装着される。
前記連結筒部24aの外周面の上部には,その下部より僅かに大径の圧入部73が形成され,この圧入部73が上記大径筒部70bの上部内周面に圧入される。その際,大径筒部70bの上端面には,その内周面に近接して環状の応力逃がし溝74が形成されており,上記圧入時の過大荷重による大径筒部70b内周面の拡径変形を応力逃がし溝74で許容するようになっている。大径部70bの上面において,応力逃がし溝74の内周側の面より,外周側の面の方が広くなっており,その広い面が下部ヨーク24の下端面に当接することにより,圧入部73と大径筒部70bとの圧入限界が規制されるようになっている。
下部ヨーク24は,その下端部外周にコイルハウジング53を被覆する被覆体59より若干大径の小フランジ75を備え,また大径筒部70bは,その上端部外周に上記小フランジ75より大径の大フランジ76を一体に備えており,この大フランジ76の上面に小フランジ75が全周に亙りレーザ溶接W2により結合され,一体化される。その際の溶接熱は,小フランジ75に吸収され,下部ヨーク24全体への波及は極めて少ないので,下部ヨーク24の磁気特性の低下を防ぐことができる。
前記噴射弁保護筒3は,前記被覆体59を収容しながら小フランジ75の外周面に嵌合されると共に,大フランジ76の上面に下端面を当接させるもので,これら噴射弁保護筒3及び大フランジ76の当接部外周は全周に亙りレーザ溶接W3により結合される。こうして燃料噴射弁Iは,取り付けキャップ70を介して噴射弁保護筒3に保持される。
図5及び図11に示すように,取り付けキャップ70の小径筒部70a外周には,薄肉のばね鋼板製のガスケット77が取り付けられる。このガスケット77は,小径筒部70aの端面に弾性的に当接する環状の弾性シール部77aと,このシール部77aの外周から軸方向に屈曲して延びる複数の脚片77bとを備えており,各脚片77bの先端に形成された爪部77cを小径筒部70aの外周溝78に弾性的に係合することにより,ガスケット77は小径筒部70aに取り付けられる。
再び図5において,上記噴射弁保護筒3は,取り付けキャップ70を先頭にしてガイド部17に挿入される。そして取り付けキャップ70の小径筒部70aがガスケット77と共にガイド部17のガイドキャップ18内に,また噴射弁保護筒3がガイド部17のガイド筒20内にそれぞれ嵌合される。その際,ガスケット77のシール部77aは,取り付けキャップ70の小径筒部70aの端面とガイドキャップ18の内向き鍔18bとの間で挟圧され,その間の気密を図る。
また取り付けキャップ70の大径部70b下面と,ガイドキャップ18の皿状フランジ18a内の底面との間にも金属製のガスケット80が介装され,このガスケット80と前記ガスケット77とにより,取り付けキャップ70及びガイドキャップ18間に筒状の断熱空間79が画成される。
図6に示すように,前記燃料入口筒45の上端部外周の環状のシールハウジング82には,シール部材83と,その下面を支承するバックアップリング84とが装着され,そのシール部材83に密接するようにして前記燃料導入管2の下端部が燃料入口筒45の上端部外周に嵌合される。バックアップリング84には,図12に示すように,その軸線に対して傾斜した合口84aと,下方に向かって大径となるテーパ状の内周面84bとが設けられており,その内周面84bに対向するテーパ状のガイド面82aがシールハウジング82の下部に設けられている。
而して,バックアップリング84は,燃料導入管2からの高圧燃料によりシール部材83と共に下方に押圧されたとき,テーパ状のガイド面82a及び内周面84bの相互作用により拡径して燃料導入管2の内周面に密着しながらシール部材83を支承し,このシール部材83の適正なシール機能を確保する。
噴射弁保護筒3には,上記シールハウジング82の両側部に位置する一対の上部覗き孔85が設けられ,燃料導入管2を燃料入口筒45に嵌合する際に,上記シールハウジング82へのシール部材83及びバックアップリング84の適正な装着状態を,これら上部覗き孔85から確認し得るようになっている。
図7に示すように,前記燃料導入管2は噴射弁保護筒3の上方まで延びており,その中間部の外周面に閉塞環87が圧入され,そして燃料導入管2の外周肩部2aに全周レーザ溶接W4して固定される。この閉塞環87は,その下端部外周を噴射弁保護筒3の内周面にも圧入して,燃料導入管2及び噴射弁保護筒3を同心状に保持する。それと同時に閉塞環87は,その外周に張り出したフランジ87aを噴射弁保護筒3の上端面に付き当てゝレーザ溶接W5され,一体化される。
さらに閉塞環87の外周には,フランジ87aの上方で,閉塞環87及び前記ガイド筒20間をシールするゴム等の弾性材製のシール環88が嵌合される。このシール環88は,その内周の環状の位置決め突起89を閉塞環87外周の環状の位置決め溝90に嵌合することで,閉塞環87上での軸方向位置が固定される。
また図13に明示するように,シール環88の,位置決め突起89内周面に環状の内周シールリップ88aが一体に形成され,またシール環88の外周面に環状の外周シールリップ88bが一体に形成されており,内周シールリップ88aが位置決め溝90の底面に密接すると共に,外周シールリップ88bがガイド筒20の内周面に密接することで,閉塞環87及びガイド筒20間がシールされる。
図3,図7及び図14に示すように,前記二本の導線61,61は,噴射弁保護筒3の上端部一側と,閉塞環87のフランジ87aの一側とに設けられた一連の切欠き91,92を通過し,さらにシール環88の一側壁に設けられた通孔93,93を通して外部に引き出されるようになっている。シール環88の通孔93,93の内周面には,各導線61,61の絶縁被覆の外周面に密接する複数条のシールリップ88c,88c…が一体に形成されている。
前記切欠き91,92には,導線61,61の切欠き91,92からの食み出しを防ぐ導線保護部材96が装着される。この導線保護部材96は合成樹脂製で,開放面を互いに対向させた保持溝96b,96bを先端部に有する一対の保持片96a,96aの基端を相互に連結してなるもので,両保持片96a,96a間を開いて,それらの保持溝96b,96bに二本の導線61,61を係合させてから,両保持片96a,96aを切欠き91,92に嵌合すると,両保持片96a,96aは,互いに近接状態に保持され,導線61,61の保持溝96b,96bからの離脱を防ぐようになっている。
またシール環88には,ガイド筒20内部の呼吸を可能にするブリーザチューブ97が接続され,このブリーザチューブ97の開放端は,雨水や洗浄水等のかかり難い場所に配置される。
再び図1〜図4において,前記分岐管6及び燃料導入管2の接続構造について説明する。分岐管6及び燃料導入管2には,互いに対向する楕円状の上部連結フランジ100及び下部連結フランジ101がそれぞれ形成される。上部連結フランジ100には,その側面及び下面に開口する屈曲路102が設けられ,この屈曲路102の側方開口部に分岐管6の下流端部が嵌合されてロー付けされる。一方,下部連結フランジ101には,その中心部を貫く通路105が設けられ,また下部連結フランジ101の上面には,通路105を前記屈曲路102の下方開口部に連通させる円形の連通凹部が,その下面には円形の連結凹部104がそれぞれ設けられ,連結凹部104には燃料導入管2の上端部が圧入される。その圧入の際,切粉の発生を防ぐべく,燃料導入管2の上端部外周には面取り2bが設けられる。そして燃料導入管2は,その外周面を下部連結フランジ101の下面に全周レーザ溶接W5して一体化される。
連通凹部103には,その内周面に嵌合するバックアップリング107と,バックアップリング107の内周面に接するシール部材108が装着される。上部及び下部連結フランジ100,101は,互いに重ねられて一対の複数の連結ボルト109,109により締結される。その結果,分岐管6及び燃料導入管2は,屈曲路102,連通凹部103及び通路105を介して相互に連通され,連通凹部103では,シール部材108が両連結フランジ100,101に密接して,それらの接合部をシールする。
燃料導入管2の,閉塞環87上方に露出する外周面には,直径方向で対向する一対の平面部110,110が形成され,これら平面部110,110を組立基準にして,燃料導入管2と閉塞環87との嵌合固定位置,並びに燃料導入管2と下部連結フランジ101との嵌合固定位置が決定される。
次に,この第1実施例の作用について説明する。
各燃料噴射弁Iにおいて,コイル52の消磁状態では,弁ばね43の付勢力でニードル弁33は下方に押圧されて弁座28に着座させている。したがって,図示しない燃料ポンプから燃料分配管Dに供給された高圧の燃料は,各分岐管6から燃料導入管2を介して燃料入口筒45に送られ,更にパイプ状のリテーナ42内部,固定コア26の縦孔41,可動コア37の切欠き溝47及び弁座部材22内部に送られ,待機させられる。
コイル52を通電により励磁すると,それにより生ずる磁束がコイルハウジング53,上部ヨーク54,固定コア5,可動コア12,下部ヨーク24,コイルハウジング53へと順次走り,それに伴ない発生する磁力により可動コア37が弁ばね43のセット荷重に抗して固定コア26に吸引され,ニードル弁33が弁座28から離座するので,弁座部材22内の高圧燃料が燃料噴孔23から内燃機関Eの対応する燃焼室15に直接噴射される。
このとき,ニードル弁33の開弁ストロークは,ストッパフランジ36がストッパプレート27の下面に当接することで一定に規制されると共に,可動コア37及び固定コア26間には,それらの接触を防ぐ一定の微小間隙が保持される。したがって,次いでコイル52を消磁したとき,両コア26,37間の残留磁気を直ちに解消して,弁ばね43によるニードル弁33の閉弁応答性を高めることができる。
ところで,上記微小間隙の確保するために,前述のように,ストッパフランジ36上面から可動コア37の上面までの距離L1が,L1=L2−ΔLとなるように,ニードル弁33の連結軸部34aの,可動コア37の連結孔38への圧入深さを加減することにより調整されるので,上記微小間隙を簡単且つ正確に得ることができる。
しかも可動コア37の連結孔38は袋状になっていて,その内端面と連結軸部34aとの間には切粉溜め40が画成されるので,上記圧入時に発生する切粉を切粉溜め40に封じ込めて,その切粉の燃料通路への侵入を防ぐことができる。
内燃機関Eのシリンダヘッド1に螺着されたガイドキャップ18と,燃料噴射弁Iの弁ハウジング21を保持する取り付けキャップ70との間には,断熱空間79を挟んで上下に並ぶガスケット77,80が介装されるので,これらガスケット77,80により燃料室15の高圧ガスのガイド部17へのリークを阻止し,また断熱空間79によりシリンダヘッド1から取り付けキャップ70への高熱の伝達を抑えて燃料噴射弁I,特に弁座部材22及びニードル弁33を熱害から保護することができる。
雨水や洗浄水等がガイド筒20の上方の開放側に降りかかった場合でも,燃料導入管2の外周に嵌合され,且つ液密にレーザ溶接W4された閉塞環87の外周にシール環88が液密に装着されると共に,このシール環88がガイド筒20の上端部内周面に液密に嵌合されているから,このシール環88によりガイド筒20内への水及び塵埃の侵入を防ぐことができる。
また燃料噴射弁Iの導線61,61を通した,シール環88の通孔93,93の内周面には,導線61,61の絶縁被覆の外周面に密接する複数条のシールリップ88c,88c…が形成されているから,これらシールリップ88c,88c…により,通孔93,93からガイド筒20内への水及び塵埃の侵入を防ぐことができる。しかも導線61,61は,ガイド筒20内をシールするシール環88により弾性的に保持されることになるから,導線61,61の振動を簡単に且つ効果的に抑えて,導線61,61の損傷を防ぐことができる。
しかもガイド筒20の内部は,ブリーザチューブ97を介して大気に開放されているから,周囲の温度変化に応じて呼吸をすることができ,ガイド筒20の内部での結露の防止が図られる。
このような筒内燃料噴射装置の組み立てに当たっては,先ず,燃料噴射弁Iの弁座部材22を取り付けキャップ70の小径筒部70aに挿入しながら,下部ヨーク24の連結筒部24aの圧入部73を取り付けキャップ70の大径筒部70bの内周面に圧入し,該大径筒部70bの,応力逃がし溝74より外周側の上面を下部ヨーク24の下面に当接させて,その圧入限界を規制する。このような圧入により,取り付けキャップ70及び弁ハウジング21相互の同心性を確保することができる。またこのとき,圧入部に過大の圧入荷重が加えられると,大径筒部70b内周面が応力逃がし溝74側に適度に拡径変形することで,過大応力による連結筒部24aの歪み,延いてはストッパプレート27及び弁座部材22の歪みを防ぎ,燃料噴射弁Iの特性の安定化を図ることができる。また大径筒部70bの内周面の拡径変形は,応力逃がし溝74の外周側には及ばないから,圧入部73及び大径筒部70bの圧入深さの限界を正確に規制して,両者相互の寸法精度を高めることができる。
その上で,取り付けキャップ70の大フランジ76に下部ヨーク24の小フランジ75を全周に亙りレーザにより隅肉溶接W2して一体化する。この隅肉溶接W2によれば,比較的少ない入熱により大フランジ76及び小フランジ75を溶接することが可能であり,しかもその溶接熱は小フランジ75に留まり,下部ヨーク24の磁路までは及ばない。
このように,下部ヨーク24の取り付けキャップ70との圧入部及び溶接部W2が,下部ヨーク24の磁路の外側部分となり,したがって圧入荷重や溶接熱による下部ヨーク24の磁気特性の変化を回避することができ,燃料噴射弁Iの燃料噴射特性の安定化に寄与し得る。
次に,上記小フランジ75の外周面に噴射弁保護筒3を嵌合すると共に,この噴射弁保護筒3の下端を取り付けキャップ70の大フランジ76の上面に突き当てゝ,それらの突き当て部外周を全周に亙りレーザ溶接W3する。このように,下部ヨーク24,取り付けキャップ70及び噴射弁保護筒3の三者はレーザ溶接W2,W3により一体化されるので,それらの周囲に張り出し部を存在させずに済み,比較的小径なガイド筒20及びガイド孔19への嵌装が可能となる。
この段階で上部覗き孔85から燃料入口筒45の上端部のシールハウジング82にシール部材83及びバックアップリング84が適正に装着されている否かを目視確認する。また下部覗き孔65からは,接続部カバー62外面に表示された,該燃料噴射弁Iの識別番号又は記号64を目視確認して,誤組立を防ぐ。
一方,燃料導入管2には,その外周の平面部110,110を基準にして,所定位置に閉塞環87及び下部連結フランジ101を圧入及びレーザ溶接W4,W5により取り付け,さらに閉塞環87の外周の定位置にシール環88を装着しておく。
その後,燃料噴射弁Iの導線61,61をシール環88の通孔93,93に通して外部に引き出し,またシール環88の下方で導線61,61を保持する導線保護部材96の上部を閉塞環87の切欠き92に係合する。
次いで,燃料導入管2を噴射弁保護筒3内に挿入して,燃料導入管2の下端部を,その内周面にシール部材83を密接させるように燃料入口筒45の上端部外周に嵌合し,同時に閉塞環87を噴射弁保護筒3の上端部に嵌合すると共に,導線保護部材96の下部を噴射弁保護筒3の切欠き91に係合させる。即ちこの導線保護部材96を介して閉塞環87及び噴射弁保護筒3の軸線周りの相対位置を決定してから,噴射弁保護筒3内での導線61,61の弛みを取るように,導線61,61を上方に引き出し,そして噴射弁保護筒3及び閉塞環87をレーザ溶接W5する。このように閉塞環87及び噴射弁保護筒3はレーザ溶接W5により一体化されるので,それらの周囲に張り出し部を存在させずに済み,比較的小径なガイド筒20への嵌装が可能となる。
次いで,燃料導入管2上端の下部連結フランジ101の連通凹部103にバックアップリング107及びシール部材108を装着した後,この下部連結フランジ101に燃料分配管Dの分岐管6の上部連結フランジ100を重ねて,両連結フランジ100,101を連結ボルト109,109で締結する。
かくして,燃料分配管Dには,燃料噴射弁I,I…を保持した複数の噴射弁保護筒3,3…が複数の分岐管6,6…を介して吊持されるので,その後は,内燃機関E側の各気筒に対応して設けられた,ガイドキャップ18及びガイド筒20を含む複数のガイド部17,17…に複数の噴射弁保護筒3,3…を挿入し,各ガイドキャップ18及び取り付けキャップ70間でガスケット77,80を挟圧すると共に,各シール環88の外周シールリップ88bをガイド筒20の内周面に密接させる。最後に,分配管本体5の複数のブラケット7,7…をシリンダヘッド1の複数の取り付け部8,8…にボルト9,9…をもって固着する。
このように,内燃機関Eの外部で,燃料噴射弁I,噴射弁保護筒3及び燃料導入管2の組立体を予め構成し,その組立体を燃料分配管Dの複数の各分岐管6に吊持したことで,複数の上記組立体を一斉にシリンダヘッド1に装着することができ,組み付け性の向上を大いに図ることができる。しかも上記各組立体の吊持には,燃料導入管2や燃料分配管Dの分岐管6等の燃料通路構成部材が利用されるので,その吊持構造は簡単なものとなる。
またこのとき,各分岐管6には,各ガイドキャップ18及び取り付けキャップ70間でガスケット77,80を挟圧するための応力が付与され,これによって噴射弁保護筒3の振動を抑えると共に,燃料噴射弁I及びガイド筒20の同心性を確保して燃料噴射弁Iの燃料噴射方向を一定にすることができる。したがって噴射弁保護筒3をガイド筒20に直接固定する必要がなく,組み付け性の向上を更に図ることができる。
しかも燃料噴射弁Iは,弁座部材22が取り付けキャップ70に収容,保持されると共に,取り付けキャップ70の結合される噴射弁保護筒3に収容され,即ち下端部のみを取り付けキャップ70に支持されるので,前記組立体のシリンダヘッド1への装着時,取り付けキャップ70及び噴射弁保護筒3に取り付け荷重が加えられても,その荷重が燃料噴射弁Iに作用することを取り付けキャップ70及び噴射弁保護筒3により防ぐことができ,したがって燃料噴射弁Iでは無用な応力を発生することもないから,常に安定した燃料噴射特性を発揮することができる。
一方,ブラケット7,7…を取り付け部8,8…から外して,燃料分配管Dを引き上げれば,燃料分配管Dと共に複数の噴射弁保護筒3,3…を,ガイド筒20,20…を含むガイド部17,17…から一斉に引き出すことができるので,メンテナンス性も良好である。
次に,図15及び図16に示す本発明の第2実施例について説明する。
この第2実施例では,燃料噴射弁Iを収容,保持する噴射弁保護筒203は,その上端を燃料噴射弁Iの燃料入口筒45の中間部の高さ位置で終わらせており,その上端に,外径を噴射弁保護筒203と同じくした燃料導入管202の下端部が印籠嵌合して突き合わされ,その突き合わせ部の全周レーザ溶接により噴射弁保護筒203及び燃料導入管202が一体化される。
燃料導入管202には,導線61,61を通過させる通溝121が設けられ,その導線61,61の上部を保持するシール環88は燃料導入管202の外周に直接嵌装される。したがって第2実施例では,燃料導入管202が前実施例中の閉塞環87を兼ねることになる。
また燃料導入管202の上端面には,その中心から起立する連結ボルト112の下端部が植え込まれると共に,この連結ボルト112を囲繞する環状溝113が形成され,この環状溝113に第1シール部材114が装着される。
一方,燃料分配管Dの分岐管6の先端には環状のジョイント部材115が固設される。このジョイント部材115の上端面には環状溝116が形成されており,この環状溝116に第2シール部材117が装着される。このジョイント部材115は,連結ボルト112の外周に嵌合されると共に,その下端面が第1シール部材114に密接するように配置される。ジョイント部材115から上方に突出した連結ボルト112の上端部には,袋状のロックナット118が螺合緊締され,このロックナット118の下面に第2シール部材117が密接する。こうして,ジョイント部材115及び燃料導入管202は連結ボルト112を介して連結される。環状のジョイント部材115の内周面には,分岐管6に連通する環状通路119が設けられ,この環状通路119を燃料導入管202内に連通するT字状通路120が連結ボルト112に設けられている。したがって,分岐管6及び燃料導入管202は,ジョイント部材115が燃料導入管202に連結されると同時に,相互に連通されることになり,ジョイント部材115の上下面からの燃料漏れを第1及び第2シール部材114,117により阻止することができる。
その他の構成は前実施例と同様であるので,図15及び図16中,前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
この第2実施例によれば,燃料導入管202及び分岐管6間を,環状のジョイント部材115,連結ボルト112及びロックナット118により簡単に連結することができ,しかもジョイント部材115周りに張り出し部が存在しないから,連結部の小径化をもたらすことができる。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。