JP2005155145A - 補強土擁壁の構築方法及び補強土擁壁の構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 盛土30内に盛土補強材20を水平方向に埋設して構築する、補強土擁壁10の構築方法において、盛土補強材20の端部を盛土30の側面へ出しながら埋設しつつ、転圧を行いながら完成高さまで盛土を先行して構築する工程と、盛土30の側面から作業員が作業可能な間隔をおいて、擁壁ブロック40を設置する工程と、盛土30の側面へ出した盛土補強材20の端部を、擁壁ブロック40の背面に連結する工程と、擁壁ブロック40と盛土30側面との間の空隙に粒状物を充填して、盛土30の土圧変化を吸収して分散する緩衝層50を構築する工程と、よりなることを特徴とした、補強土擁壁10の構築方法である。
【選択図】 図1
Description
<1>盛土aの背面土圧が、擁壁ブロックcの背面に直接作用するため、擁壁面が孕んで変形しやすい。
<2>擁壁ブロックcの背面付近の盛土aを、充分に転圧して締め固めることができないため、盛土aの沈降に伴い、擁壁ブロックcと盛土aの境界に段差を生じる。このとき、擁壁ブロックcが背面側に引き戻されて後退したり、補強部dとの連結部分に応力が集中して、損壊する恐れがある。
<3>盛土補強材bは連結部dを介して擁壁ブロックcに連結するから、盛土補強材bの埋設位置は擁壁ブロックcとの連結が可能な高さに限定される。また、この連結作業は、盛土補強材bの端部を現場で加工する必要があるため、加工に多くの時間と手数がかかり不経済である。
<1>擁壁ブロックと盛土側面との間に、作業員が作業可能な分だけの厚みの緩衝層を構築するため、万が一盛土が沈下した場合でもその変形を充分に吸収して分散することができる。このため、擁壁面を変形させる危険が少ない。
また、緩衝層は擁壁ブロックと一体化し、一枚の擬似擁壁として作用するため、補強土擁壁の安定性が向上する。
<2>盛土を先行して構築した後、擁壁ブロックの設置、緩衝層の構築を行って補強土擁壁を完成する構成であるため、盛土材へ充分な転圧作業を行うことができる。そのため、年月を経ても、沈下量の少ない安定した補強土擁壁を構築することができる。
<3>補助シートを擁壁ブロックに接続しつつ盛土内に埋設する場合、盛土補強材を擁壁ブロックに接続する必要がなくなるため、盛土補強材の埋設位置、すなわち擁壁ブロックへの接続高さに捕らわれることなく、任意の位置に埋設できる。
また、この補助シートは、工場であらかじめ製作して、現場で接続するだけであるから、施工作業に時間がかからず経済的である。
本発明に係る補強土擁壁10の構築方法は、盛土補強材20の端部を盛土30の側面へ出しながら埋設して、転圧を行いつつ完成高さまで盛土30を先行して構築する工程と、盛土30の側面から作業員が作業できるほどの幅拡の間隔をおいて擁壁ブロック40を設置する工程と、盛土補強材20の端部を擁壁ブロック40の背面に連結する工程と、擁壁ブロック40と盛土30側面との空隙に緩衝層50を構築する工程と、から構成するものである(図1)。
以下、本発明を構成する各部について詳述する。
盛土補強材20は、盛土30内に水平方向に埋設して、土圧に対する補強材となる部材である。この盛土補強材20には、ジオグリッドやジオテキスタイルなどの可撓性を有する公知の部材が利用できる。たとえば、このジオグリッドは、高密度ポリエチレンの格子状ネットにアラミド繊維を挿入したもので、高強度と低伸度を備える部材である。
擁壁ブロック40は、補強土擁壁10の外壁を構成する部材である。擁壁ブロック40の背面には、盛土補強材20との接続となる連結部41を備える。この連結部41には、たとえば擁壁面に対して略垂直に縦方向に形成する突部42を、厚さ方向に貫通する所要数設けた孔が採用できる。擁壁ブロック40は、この形態に限らず、コンクリート等により種々の形状に形成したものが利用できる。
緩衝層50は、盛土30の変形を吸収すると共に、その力を分散する部材である。
緩衝層50には、単粒度砕石あるいは粒状の人工材料(ガラスリサイクル品、発泡スチロールなど)などの粒状物を間隙に堆積して構成する。
また緩衝層50は構築後に、排水機能としての役割も果たす。
連結手段70は、擁壁ブロック40と盛土補強材20とを連結する部材である。連結手段70には、たとえば繊維で形成した帯状の連結ベルトが使用でき、これを盛土補強材20の端部に固定したFRP製のパイプ材に結んで接続に供する。
連結手段70には、可とう性を有し、かつ錆びないものが好ましい。
盛土30を構築する予定位置に、施工計画に基づきバックホウなどの機材により掘削を行う。バックホウなどで整地すると共に、振動ローラー、ダンパなどで転圧し、背面盛土部の基礎工として約15cmの盛土を行う。
基礎工を行った後、その上面に盛土補強材20を敷設する。盛土補強材20は、端部を盛土30からはみ出すようにして敷く。
次に、盛土補強材20の上面に、断面L字形を呈する型枠60を配置する。この型枠60は、盛土30の側面を自立させると共に、盛土30と緩衝層50との境界となるもので、板状の網体を公知の方法により折曲加工して形成したものが利用できる。型枠60には、両辺を支持する斜材を配置して補強するのが好ましい。
型枠60を固定した後、その型枠60に沿って、型枠60からの盛土材30の流出を阻止し、かつ土圧に対する補助的な補強材となる図外の型枠シートを配置する。この型枠シートには、たとえば高分子材料(不織布、織布)等のシート類を利用できる。
型枠60を固定した後、盛土補強材20の上面に盛土材を撒き出し、転圧を行って、所定の高さに構築する。転圧作業は、型枠60が外側に孕み出し、丸く変形する程度まで入念に行う。その後、これらの作業を所定の回数だけ行って、所定の高さに形成する。
次に、盛土30の側面へ出した盛土補強材20の端部を折り返して基部に連結し、パイプ材71の挿入部21を形成する(図2)。
盛土30を構築した後、所定の期間放置して充分に圧密沈下させる。充分な期間放置することによって、盛土30はさらに締め固まり、経年しても沈下量の少ない安定した盛土30とできる。
擁壁ブロック40は、盛土30に埋設した盛土補強材20の高さに、擁壁ブロック40の連結部41が合うように設置する。
同様にして擁壁ブロック40を二段、三段と所定の高さまで積み上げる。二段目以降に積み上げる擁壁ブロック40は、転倒防止のため、必要に応じて専用のプレートで下段の擁壁ブロック40に連結すると良い。
次に、擁壁ブロック40と盛土30側面との間に形成した空間に、作業員が入り、盛土補強材20と擁壁ブロック40を連結手段70で以って接続してゆく。接続は、連結手段70の両端を、盛土補強材20の挿入部21に配置したパイプ材71に接続し、連結手段70の半ばを擁壁ブロック40の連結部41に挿通して、連結手段70に充分なテンションを付与しながら連結する(図2)。こうして、擁壁ブロック40と盛土補強材20とを接続する。
万一、連結手段70で連結した後に、連結手段70にたるみが生じた場合には、V字形に張設した連結手段70の間に棒材を挿入して、棒材を回転し、連結手段70にテンションを付与すれば良い。
その後、擁壁ブロック40と盛土30で囲まれた空間に、粒状物を充填して緩衝層50を構築する。緩衝層50は、単粒度砕石を投入して形成する。単粒度砕石を所要の量だけ投入し、擁壁ブロック40の高さまで充填する。
擁壁ブロック40と盛土30の間に幅拡の緩衝層50を構築することによって、盛土30が変形した場合でも、この変形を吸収することができるため、擁壁ブロック40へ及ぼす影響が少なくなり、また補強盛土材20の作用とも相俟って、より安定した補強土擁壁10となる。本願のように盛土30から幅拡の間隔をおいた位置に擁壁ブロック40を設置する場合、両者を設置する地盤反力には、重量の違いにより大きな差が生じる。しかし、緩衝層50を両者の間に構築することによって、両者の地盤反力の差が自然に馴染むようになるため、緩衝効果が大きくなる。
また、緩衝層50の幅を広く形成することにより、緩衝層50の重量は増加し、擁壁ブロック40と緩衝層50とが恰も吸収性能を備えた一枚の擬似擁壁51として機能する。これによって、補強土擁壁10の安定性は向上するから、たとえば盛土補強材20の埋設ピッチを広げて土圧強度を下げ、コストを削減することもできる。
以下に他の実施の形態を説明するが、以降の説明に際し既述した実施の形態と同一の部位は、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図3は、盛土30内に新たに補助シート80を埋設した他の実施の形態である。
本実施の形態は、擁壁ブロック40への接続部81を有する補助シート80を、擁壁ブロック40の背面に接続しつつ盛土30内へ埋設して、盛土補強材20を擁壁ブロック40に接続しない形態である。
以下、詳細について説明する。
盛土材30を締め固めた後、その上部に補助シート80を配置する。
補助シート80は、たとえば擁壁ブロック40の突部42より幅広に形成した帯状部材に、擁壁ブロック40との取り合い箇所へ、擁壁ブロック40の連結孔に連通する二個の環状部82、82を形成した形態とする。この環状部82は、現場へ搬入する前に、工場等で事前に形成することができる。そのため、現場での加工作業が不要と異なり、また寸法、強度の安定した接続端部を得ることができる。
盛土材30の上部に所要数の補助シート80、80・・を、端部を盛土30側面から出しながら敷設し、そしてその上部に再び型枠60を固定し、盛土補強材20を埋設しながら盛土30を撒きだして転圧を行う。
盛土30を所要の高さまで構築した後、再び補助シート80を敷設する。
その後、同様にして前記作業を繰り返し行い、盛土30を構築する。
その後、補助シート80の環状部82を、擁壁ブロック40の連結孔横に配置してFRP製のパイプ材を通し、両者を接続する。
そして擁壁ブロック40と盛土30の間の空隙に緩衝層50を構築し、補強土擁壁10の構築を完了する。
実施の形態1や実施の形態2は、盛土30を独立、先行して構築した後に、擁壁ブロック40の設置、緩衝層50の構築を行う形態であるが、擁壁ブロック40の設置、盛土30の構築、および緩衝層50の構築作業は並行して行っても良い。すなわち、補強土擁壁10を一定の高さで構築し、これを繰り返し行って完成させる形態であっても良い。
実施の形態4で使用する補助シート90は、幅狭に形成した長尺の帯状部材で、これを擁壁ブロック40に設けた連結部41に挿入し、中央部付近で略V字形に折り曲げ、盛土30内に埋設する形態である(図4)。
この形態でも、現場における加工作業は不要となり、また盛土補強材20の埋設高さに制約を受けることなく擁壁ブロック40に接続することができる。さらに、補助シート90を連結部41に挿入するだけの形態であるから、作業性に優れる。
20・・盛土補強材
30・・盛土
40・・擁壁ブロック
50・・緩衝層
51・・擬似擁壁
70・・連結手段
80、90・・補助シート
Claims (5)
- 盛土内に盛土補強材を水平方向に埋設して構築する、補強土擁壁の構築方法において、
盛土補強材の端部を盛土の側面へ出しながら埋設しつつ、転圧を行いながら完成高さまで盛土を先行して構築する工程と、
前記盛土の側面から作業員が作業可能な間隔をおいて、擁壁ブロックを設置する工程と、
盛土の側面へ出した前記盛土補強材の端部を、前記擁壁ブロックの背面に連結する工程と、
前記擁壁ブロックと盛土側面との間の空隙に粒状物を充填して、盛土の土圧変化を吸収して分散する緩衝層を構築する工程と、よりなることを特徴とした、
補強土擁壁の構築方法。
- 盛土内に盛土補強材を水平方向に埋設して構築する、補強土擁壁の構築方法において、
擁壁ブロックを設置する工程と、
前記擁壁ブロックの背面から作業員が作業可能な間隔をおいて、盛土補強材を埋設すると共に、補助シートを前記擁壁ブロックの背面に連結しながら埋設して、転圧を行いつつ盛土材を所定高さまで盛り上げる工程と、
前記擁壁ブロックと盛土側面との間の空隙に粒状物を充填して、盛土の土圧変化を吸収して分散する緩衝層を構築する工程と、を繰り返し行って構築することを特徴とした、
補強土擁壁の構築方法。
- 盛土内に盛土補強材を水平方向に埋設して構築する、補強土擁壁の構築方法において、
盛土補強材を埋設すると共に、補助シートの端部を盛土の側面へ出しながら埋設し、転圧を行いつつ完成高さまで盛土を先行して構築する工程と、
前記盛土の側面から作業員が作業可能な間隔をおいて、擁壁ブロックを設置する工程と、
盛土の側面へ出した前記補助シートの端部を、前記擁壁ブロックの背面に連結する工程と、
前記擁壁ブロックと盛土側面との間の空隙に粒状物を充填して、盛土の土圧変化を吸収して分散する緩衝層を構築する工程と、よりなることを特徴とした、
補強土擁壁の構築方法。
- 盛土内に盛土補強材を水平方向に埋設した補強土擁壁の構造であって、
盛土の側面から作業員が作業可能な間隔をおいて設置した擁壁ブロックと、
盛土の側面へ出した前記盛土補強材の端部と前記擁壁ブロックの背面を連結する連結手段と、
前記擁壁ブロックと盛土側面との間の空隙に粒状物を充填して形成した緩衝層と、よりなり、
前記緩衝層が、盛土の土圧変化を吸収して分散する作用と、擬似擁壁としての作用を併有することを特徴とした、
補強土擁壁の構造。
- 請求項4において、盛土補強材を埋設した盛土内に、補助シートを盛土の側面に出しながら埋設し、盛土の側面へ出した前記補助シートの端部を、前記擁壁ブロックの背面に連結したことを特徴とする、
補強土擁壁の構造。
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