JP2005154860A - 誘電体被覆電極及び薄膜形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することのできる誘電体被覆電極及びこの誘電体被覆電極を備えた薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】導電性母材の表面に第1の金属を主成分とする粒子を溶射して誘電体を被覆した後に、誘電体の表層を第2の金属を主成分とする封孔剤で封孔処理した誘電体被覆電極及びこの誘電体被覆電極を備えた薄膜形成装置10である。ダイナミックSIMS測定(動的二次イオン質量分析測定)による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素Xの全てのイオン強度が、元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1の式を満たし、かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度の式を満たす。
【選択図】図6

Description

本発明は、導電性母材の表面に第1の金属を主成分とする粒子を溶射して誘電体を被覆した後に、該誘電体の表層を第2の金属を主成分とする封孔剤で封孔処理した誘電体被覆電極及びこの誘電体被覆電極を備えた薄膜形成装置に関するものである。
近年、液晶表示素子、半導体素子、光学素子などでは、導電膜、反射防止膜、帯電防止膜など多様な高機能膜が用いられている。これら高機能膜を形成する方法として、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、電極間に配置した基材などの表面に薄膜を形成する大気圧プラズマ法がある(例えば、特許文献1〜5参照)。なお、特許文献1〜5に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間に周波数が0.5〜100kHzである電圧を印加し放電プラズマを発生させるというものである。
特開平11−61406号公報 特開平11−133205号公報 特開2000−121804号公報 特開2000−147209号公報 特開2000−185362号公報
ところで、このような大気圧プラズマ法で使用されている電極は、前記したような大電力に耐える必要があるため、電極表面には誘電体を被覆している。この誘電体は一般にアルミナを主体に形成された溶射膜であり、高温に熱したアルミナ粒子を金属等の導電性母材に対して吹き付けて作成される。このような誘電体には、通常、粒界の間隙、すなわち空隙ができるため、一般にシリカ(酸化珪素)を主成分とする封孔剤を流し込み固めて、絶縁性を高める封孔処理が施されている。
しかしながら、封孔処理を行った場合でも誘電体の空隙や格子欠陥が多ければ、電子軌道のバンドギャップが不均一になり、放電が続かないと推定されるため、問題となっていた。
これに対して、本発明者は、誘電体表面付近における微量元素(ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属)の含有量をコントロールすることによって、誘電体の空隙及び微小な格子欠陥を無くし、安定した放電状態を持続させることが可能であることを見いだした。
そこで、本発明の課題は、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することのできる誘電体被覆電極及びこの誘電体被覆電極を備えた薄膜形成装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
導電性母材の表面に第1の金属を主成分とする粒子を溶射して誘電体を被覆した後に、該誘電体の表層を第2の金属を主成分とする封孔剤で封孔処理した誘電体被覆電極において、
ダイナミックSIMS測定による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素Xの全てのイオン強度が、
元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1
の式を満たし、
かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、
1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度
の式を満たすことを特徴としている。
このように請求項1に記載の発明によれば、ダイナミックSIMS測定による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素Xの全てのイオン強度が、元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1の式を満たし、かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度の式を満たすため、誘電体の最表面から所定の深さまで、第1の金属に対し一定量の元素Xを混在させることになり、誘電体の表面付近に存在する微細な空隙や格子欠陥が元素Xによって埋められることとなる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の誘電体被覆電極において、
前記第1の金属がアルミニウムであり、前記第2の金属が珪素であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の誘電体被覆電極において、
前記所定の深さが1μm以上であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘電体被覆電極において、
前記封孔処理は、前記第2の金属を主成分とする封孔剤をゾルゲル反応により硬化させる処理であることを特徴としている。
このように請求項2〜4に記載の発明によれば、より具体的に請求項1に記載の発明を実現することができる。
請求項5に記載の発明は、
薄膜形成装置において、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘電体被覆電極が互いに対向して配置され、大気圧又は大気圧近傍の圧力の下で、前記対向する誘電体被覆電極間に100kHz以上の高周波電圧を印加し、かつ1W/cm2以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、前記プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって前記基材の表面に薄膜を形成することを特徴としている。
このように請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘電体被覆電極が互いに対向して配置され、大気圧又は大気圧近傍の圧力の下で、対向する誘電体被覆電極間に100kHz以上の高周波電圧を印加し、かつ1W/cm2以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって基材の表面に薄膜を形成するため、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
請求項1に記載の発明によれば、誘電体の最表面から所定の深さまで、第1の金属に対し一定量の元素Xを混在させることになり、誘電体の表面付近に存在する微細な空隙や格子欠陥が元素Xによって埋められることとなるため、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
請求項2〜4に記載の発明によれば、より具体的に請求項1に記載の発明を実現することができるため、効果的に著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
請求項5に記載の発明によれば、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができるため、良質の薄膜を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の誘電体被覆電極は、金属等の導電性母材の表面に第1の金属を主成分とする粒子を溶射して誘電体を被覆した後に、該誘電体の表層を第2の金属を主成分とする封孔剤で封孔処理したものである。
この場合、ダイナミックSIMS測定による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素B、アルカリ金属(リチウムLi、ナトリウムNa、カリウムK、ルビジウムRb、セシウムCs、フランシウムFr)及びアルカリ土類金属(カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRa)に属する元素Xの全てのイオン強度が、
「元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1
の式を満たし、かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、
「1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度」
の式を満たす。
なお、所定の深さとは、1μm以上であることが好ましい。
このように、誘電体の最表面から所定の深さまで、第1の金属に対し一定量の元素Xを混在させることによって、誘電体の表面付近に存在する微細な空隙や格子欠陥が元素Xによって埋められて、放電状態を長時間維持することが可能となる。
ここで、ダイナミックSIMS測定(Dynamic Secondary Ion Mass Spectrometry:動的二次イオン質量分析測定)とは、試料表面にO2,Cs,Ar,Xeなどのイオンを照射し、表面から放出される二次イオンを検出する方法である。この方法は、連続的にイオンを照射し続けて試料を削りながら測定する方法であるため、深さ方向の分布状態が分析できる。後述する実施例では、米Physical Electric社製 ADEPT−1010を使用した。
測定条件は、
一次イオン:O2 +
加速電圧:5kV
一次イオン電流:300nA
一次イオン照射面積:300μm角
とした。
また、本発明の誘電体被覆電極としては、導電性母材上の少なくとも放電面に誘電体を被覆したものである。つまり、後述する薄膜形成装置としてのプラズマ放電処理装置に備えた場合に、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。
本発明の誘電体被覆電極に用いられる誘電体、すなわち前記第1の金属としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックなどがある。この中では、セラミックを溶射したものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
誘電体被覆電極において、前述のような大電力に耐える仕様の一つとして、本発明者が鋭意検討した結果、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることを見いだした。さらに好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーターにより導電性母材に被覆された誘電体の空隙率を測定した。
誘電体が低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気圧プラズマ法による高密度、高密着セラミック溶射被覆等を挙げることができる。
また、本発明の誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、前記セラミック溶射で設けた誘電体を適用したり、下記導電性母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせたりすることによって達成可能である。
また、本発明の誘電体被覆電極において、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体と導電性母材との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、より好ましくは5×10-6/℃以下、さらに好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性母材と誘電体との組み合わせとしては、
(1)導電性母材が純チタンで、誘電体がセラミック溶射被膜
(2)導電性母材がチタン合金で、誘電体がセラミック溶射被膜
(3)導線性母材がステンレスで、誘電体がセラミック溶射被膜
(4)導電性母材がセラミックおよび鉄の複合素材で、誘電体がセラミック溶射被膜
(5)導電性母材がセラミックおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミック溶射被膜
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、前記の(1)、(2)、(4)、(5)が好ましい。
また、本発明の誘電体被膜電極において、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この被膜変動は、5%以下であることが望ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
前記導電性母材に対して、セラミックを誘電体として高密度、高密着に溶射する方法としては、大気圧プラズマ溶射法が挙げられる。大気圧プラズマ溶射法は、セラミック等の微粉末,ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融又は半溶融状態の微粒子として被覆対象の導電性母材に吹き付け、被膜を形成させる技術である。
プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射素材が高速で導電性母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。
詳しくは特開2000−301655号公報等に記載の高温被膜部材に熱遮蔽被膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法によれば、被覆する誘電体(セラミック等)を空隙率10%以下、さらには8体積%以下とすることが可能である。
このように被覆されたセラミック等の溶射膜(誘電体)の表面に行う封孔処理は、前記第2の金属、すなわち無機化合物で行うことが望ましい。無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化珪素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。封孔処理を行うことによって、誘電体の空隙率を低減させることができる。
また、封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシドシランを封孔液として用いることが好ましい。
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、UV照射などがある。さらに封孔処理として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
本発明の誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミック溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
また、誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、電極の表面の粗さRmax(JIS B 0601)を10μm以下にすることで、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化でき、さらに熱収縮差や残留応力による歪みやひび割れを無くし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
また、このような本発明の誘電体被覆電極は互いに対向して配置され、大気圧又は大気圧近傍の圧力の下で、対向する電極間に100kHzを越える高周波電圧で、かつ、1W/cm2以上の電力を供給し放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、プラズマ状態の反応性ガスを基材に晒すことによって、基材の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置としてのプラズマ放電処理装置に備えられる。
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、さらに好ましくは、800kHz以上である。
また、電極間に供給する電力の下限値としては、好ましくは1.2W/cm2以上であり、上限値としては、好ましくは50W/cm2以下、さらに好ましくは20W/cm2以下である。なお、放電面積(/cm2)とは、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。本発明のように、高い周波数で、かつ、高い出力密度でハイパワーの電圧を印加する場合には、片側の電極の放電面の総面積に相当する。この総面積で、前記電極に接続した電源から供給される全電力を割り算すると、出力密度を算出することができる。
また、特に大面積において、均一な膜厚を得るには、一組の対向する電極に印加するトータル電力は、15kWを越えることが好ましく、より好ましくは30kW以上、さらに好ましくは50kW以上である。発熱の観点からは、300kW以下であることが好ましい。なお、トータル電力は、前記一組の電極に対し、電源が2以上接続されている場合には、これら電源全ての供給電力を足し算した値である。
具体的には、後述する図6のプラズマ放電処理装置において、ロール電極21と角柱型の電極群29を一組の対向する電極とし、それに接続された電源50から供給される電力のことになる。なお、図6においては、角柱型の電極29のロール電極21と対向する面を、印加電極側の放電面とすると、この放電面の面積の総和が放電面積となる。電極が図1のような円柱型の電極22のような場合には、円柱型の電極22のロール電極21へ投影面積の総和が放電面積となる。
また、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
前述したようなハイパワーの電解を、大面積に印加することによって、緻密で膜厚均一性が高く、ムラのない高性能な薄膜を、生産効率高く得ることが可能であることを本発明者は見いだしたものである。発明者は、この優れた効果は、前記放電方法をとることにより、高密度プラズマを、大面積に渡って均一に発生させることが可能となったことに起因していると推定している。
次に、このような電極を用いたプラズマ放電処理について、図1〜図6を参照しながら説明する。図1〜図6のプラズマ放電処理装置は、アース電極であるロール電極(誘電体被覆電極)と、対向する位置に配置された印加電極である複数の固定電極(誘電体被覆電極)との間で放電させ、当該電極間に反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極に巻回された長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、薄膜を形成するものである。ここでは、基材搬送方向と直交する幅手方向において、電極の長さは、長尺フィルムの長さと同じである。薄膜形成後、長尺フィルムの幅手方向の端部を裁断することを前提として、薄膜を形成する領域が長尺フィルムの幅手の長さより内側で短い場合には、この薄膜を形成する領域の長さを基準として、電極の放電面の長さが同じか、それ以上であればよい。
本発明の薄膜形成装置(プラズマ放電処理装置)としては、これに限定されるものではなく、グロー放電を安定に維持し、薄膜を形成するために反応性ガスを励起してプラズマ状態とするものであればよいが、このように基材を電極間に載置し、該電極間に反応性ガスを導入する方法が、放電面積を大きく取ることができ、膜厚を均一にかつ、高性能な薄膜を形成することができて好ましい。
図1は、本発明のプラズマ放電処理装置10のプラズマ放電処理容器20の一例を示す概略図であり、本実施の形態においては図2に示すプラズマ放電処理容器20を用いている。
図1において、長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極21に巻回されながら搬送される。固定されている電極22は複数の円柱から構成され、ロール電極21に対向させて設置される。ロール電極21に巻回された基材Fは、ニップローラ23a,23bで押圧され、ガイドローラ24で規制されてプラズマ放電処理容器20によって確保された放電処理空間に搬送され、プラズマ放電処理され、次いで、ガイドローラ25を介して次工程に搬送される。また、仕切版6は前記ニップローラ23bに近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器20内に侵入するのを抑制する。
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器20内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ23bにより、それを達成することが可能である。
なお、プラズマ放電処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと反応性ガス)は、給気口27からプラズマ放電処理容器20に導入され、処理後のガスは排気口28から排気される。
図2は、前述のように、プラズマ放電処理容器20の他の例を示す概略図であり、図1のプラズマ放電処理容器20では円柱型の固定電極22を用いているのに対し、図2に示すプラズマ放電処理容器20では角柱型電極29を用いている。
図1に示した円柱型の電極22に比べて、図2に示した角柱型の電極29は、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、薄膜を形成するのに好ましく用いられる。
図3は、前述の円柱型のロール電極21の一例を示す概略図、図4は円柱の固定電極22の一例を示す概略図、図5は、角柱型の固定電極29の一例を示す概略図である。
図3において、アース電極であるロール電極21は、金属等の導電性母材21aに対し、誘電体被覆層として、セラミックを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体21bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体21bを片肉で1mm被覆し、アースに接地してある。また、溶射に用いるセラミック材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、さらに好ましく用いられる。
金属等の導電性母材21aとしては、チタン,銀,白金,ステンレス,アルミニウム,鉄等の金属や、鉄とセラミックとの複合材料またはアルミニウムとセラミックとの複合材料が挙げられるが、加工の観点からはステンレスが好ましい。
なお、本実施の形態においては、ロール電極の母材は冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(図示省略)。
図4および図5は、印加電極である固定電極22,29であり、前記記載のロール電極21と同様な組み合わせで構成されている。すなわち、中空のステンレスパイプの導電性母材22a,29aに対し、前記同様のセラミック被覆誘電体22b,29bを被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz),パール工業製高周波電源(800kHz),日本電子製高周波電源(13.56MHz),パール高周波電源(150MHz)等が使用できる。
図6は本発明に用いられるプラズマ放電処理装置10の一例を示す概念図である。
図6において、プラズマ放電処理容器20の部分は図2の記載と同様であるが、さらに、ガス発生装置40,電源50,電源冷却ユニット70等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット70の冷却剤としては、蒸留水,油等の絶縁材料が用いられる。
図6に記載されている電極21,29は、図3,4,5等に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
前記電極間の距離は、電極の導電性母材に設けた固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。前記電極の一方に固体誘電体を設けた場合の固体誘電体と電極の最短距離、前記電極の双方に固体誘電体を設けた場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
前記プラズマ放電処理容器20内にロール電極21,固定電極29を所定位置に配置し、ガス発生装置40で発生させた混合ガスを流量制御して、ガス充填手段41を介して給気口27よりプラズマ放電処理容器20内に入れ、前記プラズマ放電処理容器20内をプラズマ放電処理に用いる混合ガスで充填し排気口28より排気する。次に電源50により電極21,29に電圧を印加し、ロール電極21はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻基材60より基材Fを供給し、ガイドローラ24を介して、プラズマ放電処理容器20内の電極間を片面接触(ロール電極21に接触している)の状態で搬送され、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が製膜され(CVD)その後にガイドローラ25を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極21に接触していない面のみ製膜がなされる。
電源50より固定されている電極29に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを超えて150MHz以下に調節される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発信モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発信モードのどちらを採用してもよいが連続モードの方がより緻密で良質な膜が得られる。
プラズマ放電処理容器20はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えばアルミニウム又はステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミック溶射を行い絶縁性をとっても良い。
また、基材が樹脂製である場合、プラズマ放電処理時の基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満の温度に調節することが好ましく、さらに好ましくは常温〜100℃に調節することである。前記の温度範囲に調節するため、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながらプラズマ放電処理される。
本発明において、前記プラズマ放電処理が大気圧又は大気圧近傍で行われるが、ここで大気圧近傍とは20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
また、本発明の誘電体被覆電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調節されることが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、さらに好ましくは、表面粗さが最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調節することであり、このような範囲のRmaxとするためには、表面を研磨処理することが好ましい。
また、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
なお、前記した図1〜図6に示すプラズマ放電処理装置10は、基材Fがフィルム等のように曲げられることのできる場合に使用される装置であったが、ある程度厚みのある基材Lまたは硬い基材L、例えばガラスやレンズ等であれば、図7に示すようなプラズマ放電処理装置100を使用する。図7は、プラズマ放電処理装置の他の例を示す概略図である。
プラズマ放電処理装置(薄膜形成装置)100は、電源110,電極120等から概略形成されており、電極120は、上側平板電極121と下側平板電極122とを備えており、上側平板電極121と下側平板電極122とは上下対向して配置されている。
上側平板電極121は、複数の略矩形状の平板電極121a,…が左右に対向して配置されて構成されたもので、これらの複数の電極121a,…間の隙間がそれぞれガス流路部123,…とされている。つまり、上側平板電極121の上方には、ガス供給部124が設けられており、このガス供給部124から反応性ガスや不活性ガスがそれぞれのガス流路部123,…内に送給されて、下側平板電極122との間で噴出される。
下側平板電極122は、アースに接地してあり、基材Lをその表面に装着し、かつ、基材Lをガス流路部123に対して前後方向に往復移動させる。従って、この下側平板電極122が移動することによって、上側平板電極121と下側平板電極122との間でプラズマ状態とされ、基材Lに製膜が行われる。
次に、本発明の薄膜形成装置に用いられる混合ガスについて説明する。
本発明において使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、不活性ガスと、薄膜を形成する為の反応性ガスの混合ガスである。反応性ガスは、混合ガスに対して0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の薄膜が得られる。
前記不活性ガスとは、周期表の第18族元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。緻密で、高精度の薄膜を形成するためには、不活性ガスとしてアルゴンを用いることが最も好ましい。アルゴンを用いると、高密度プラズマを発生しやすいのではないかと推定している。アルゴンガスは、混合ガス(不活性ガスと反応性ガスの混合ガス)100体積%に対し、90体積%以上含有されることが好ましい。さらに好ましくは、95体積%以上である。
反応性ガスは、放電空間でプラズマ状態となり、薄膜を形成する成分を含有するものであり、有機金属化合物、有機化合物、無機化合物等である。
例えば、反応性ガスとして、ジンクアセチルアセテート、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、テトラエチル錫、テトラメチル錫、ニ酢酸−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、などから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含むガスを用いて、導電性膜あるいは帯電防止膜、あるいは反射防止膜の中屈折率層として有用な金属酸化物層を形成することができる。
また、反応性ガスとして、フッ素含有化合物を用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得る撥水膜を得ることができる。フッ素含有化合物としては、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン等のフッ素・炭素化合物が挙げられる。安全上の観点から、有害ガスであるフッ化水素を生成しない6フッ化プロピレン、8フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタンを用いることができる。
また、分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、親水基の重合膜を蓄積させることができる。前記親水性基としては、水酸基、スルホン基、スルホン酸基、1級もしくは2級または3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜の堆積が可能である。
前記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル、が挙げられ、これらの少なくとも1種が使用できる。
また、有機フッ素化合物、珪素化合物、又はチタン化合物を含有する反応性ガスを用いることによって、反射防止膜の低屈折率層または、高屈折率層を設けることができる。
有機フッ素化合物としては、フッ化炭化水素、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。フッ化炭素ガスとしては、4フッ化炭素、6フッ化炭素、具体的には4フッ化メタン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン、等が挙げられる。前記フッ化炭化水素ガスとしては、2フッ化メタン、4フッ化エタン、4フッ化プロピレン、3フッ化プロピレン、等が挙げられる。
さらに、1塩化3フッ化メタン、1塩化フッ化メタン、2塩化4フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることができるがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していてもよい。前記の化合物は単体でも混合してもよい。
混合ガス中に前記記載の有機フッ素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理により、基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の有機フッ素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、さらに好ましくは0.1〜5体積%である。
また、有機フッ素化合物が常温・常圧で気体である場合には、混合ガスの構成成分として、そのまま使用できる。しかし、有機フッ素化合物が常温・常圧で液体または固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化して使用すれば良く、また、適切な溶剤に溶解して用いても良い。
混合ガス中に前記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマにより基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜5体積%である。
また、反応性ガスとして、水素金属化合物、ハロゲン化金属化合物、水酸化金属化合物、加酸化金属化合物などを用いることによっても可能であり、これらを適宜気化して用いればよい。
また、前記記載の混合ガス中に水素ガスを0.1〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく上昇させることができる。
また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
前記記載の珪素化合物、チタン化合物、としては、取り扱いの観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
また、前記記載の珪素化合物、チタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であってもよく、気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合には加熱、減圧、超音波照射等により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランなど、常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に適宜用いられる。前記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈されて用いられても良く、溶媒はメタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒およびこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、基材上への薄膜形成、薄膜組成などに対する影響は殆ど無視することができる。
前記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン、オルガノシランなどを用いることが好ましいが、これらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることができる。
混合ガス中に前記記載の珪素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の珪素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、さらに好ましくは0.1〜5体積%である。
前記記載のチタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。
反応性ガスに有機金属化合物を添加する場合、例えば、有機金属化合物として、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含むことができる。より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から、選ばれるものが好ましい。
前記または前記以外の反応性ガスを適宜選択して使用することにより、様々な高機能性の薄膜を得ることができる。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜:SiO2、SiO、Si34、Al23、Y23
透明電導膜:In23、SnO2
エレクトロクロミック膜:WO3、IrO2、MoO3、V23
蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe23、Co、Fe23、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜:Nb、Nb−Ge
太陽電池膜:a−Si、Si
反射膜:Ag、Al、Au、Cu
選択制吸収膜:ZrC−Zr
選択制透過膜:In23、SnO2
反射防止膜:SiO2、TiO2、SnO2
シャードーマスク:Cr
耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜:W、Ta、Ti
潤滑膜:MoS2
装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
次に本発明に用いることのできる基材について説明する。
本発明に用いることのできる基材としては、フィルム状のもの、レンズ状等の立体形状のもの等、薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が電極間に載置できるものであれば、電極間に載置することによって基材が電極間に載置できないものであれば、発生したプラズマガスを当該基材に吹き付けることによって、薄膜を形成すればよい。
基材を構成する材料も特に限定はないが、大気圧又は大気圧近傍の圧力下であることと、低温のグロー放電であることから、樹脂を好ましく用いることができる。
基材としては好ましくはフィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、さらにこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂等を塗設したもの等を使用することができる。
前記基材としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレーロ等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレーロフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム、あるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
これらの素材は単独で、あるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもセルローストリアセテート(TAC)が好ましく用いられる。また、特開平3−14882号公報や特開平3−122137号公報などで公知のノルボルネン系樹脂(非晶質シクロポリオレフィン樹脂)を含有したゼオノア(日本ゼオン)、ARTON(JSR製)などの市販品を好ましく使用することができる。ノルボルネン系樹脂は、具体的にはノルボルネン系単量体の開環重合体、その水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合物、ノルボルネン単量体(前記公報、特開平2−227424号公報、特開平2−276842号公報に記載)とオレフィンの付加型重合体などが挙げられる。ノルボルネン系単量体の重合は公知の方法で良く、必要に応じて、水素添加することにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂水素添加物、具体的には前述したゼオノア、ARTON等を得ることができる。
さらにポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン及びポリエーテルスルホン(PES)(例えば住友ベークライト製スミライトPS−1300)など固有屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し流し等の条件、さらには縦、横方向に延伸条件を適宜設定することにより、得ることができる。
また、基材には、有機無機ハイブリッド基材を使用することもできる。有機無機ハイブリッド基材とは、水素結合受容基を有するポリマーあるいは重合性モノマーと、金属アルコキシド等の反応性金属化合物とを加水分解重縮合させて得られるものである。
ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエーテルイミド、セルロースエステルなどが挙げられるが、この中ではセルロースエステルが好ましい。
重合ポリマーとしては、イソプレン、1.3−ブタジエン、p−シアノスチレン、p−メトキシスチレン、メタクリロニトリル、p−クロロスチレン、スチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、メチルビニルケトン、アクリロニトリル、メチルアクリレート、酢酸ビニル、エチレン、イソブテン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、イソブチルエーテル、ジメチルアクリルアミド、などが挙げられる。
前記金属アルコキシドとしては、金属種が、珪素、ジルコニウム、チタン、ゲルマニウム等のアルコキシドが挙げられるが、この中では珪素やチタンのアルコキシドが好ましい。
具体的な製法としては、特開2000−122038号公報を参考にして合成することが可能である。
これらフィルムの膜厚としては10μm〜1000μmが好ましい。
以上のようにして、プラズマ放電処理装置によって大気圧プラズマ放電処理を施すことで、基材上に薄膜を形成する。
以下、本発明を図8の表に示す実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(本発明の実施例1:誘電体被膜電極セットAの作製)
前記図2のプラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び複数の角柱型の印加電極のセットを以下のように作製した。
ロール電極21は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材(冷却手段は図2には図示していない)に対して、あらかじめホウ素あるいはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を適量混合した、高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を、大気圧プラズマ法により被覆し、ロール径1000mmφとなるようにした。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。
そして、作製した誘電体被覆電極に対して、前述した測定条件下において、ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属のイオン強度測定を行った。その結果、イオン強度比が、B/Al=1.0×10-4、Li/Al=5.0×10-4、Ca/Al=1.3×10-5であることが確認された。
また、作製した誘電体被覆電極において最終的な誘電体の空隙率は5体積%であり、このときの誘電体層のSiOx含有率は75モル%であった。最終的な誘電体の膜厚は、1mm(膜厚変動±1%以内)であった。また、誘電体の比誘電率は10であった。誘電性母材と誘電体の線熱膨張係数の差は9.8×10-5/℃であった。前述のごとくロール電極21を作製しアースした。
一方、印加電極としては、中空の角形純チタンパイプに対し、前記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する電極群とした。この印加電極の誘電体については前記ロール電極のものと物性は同じであるが、導電性母材と誘電体の線熱膨張差は1.7×10-6/℃であった。この印加電圧の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×2cm(搬送方向の長さ)×50本(印加電極の数)=15000cm2であった。
このようにして作製した対向する電極セットAの耐熱温度は、200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は認められなかった。
(本発明の実施例2:誘電体被覆電極セットBの作製)
前述の誘電体被覆電極セットAにおいて、印加電極に用いた中空の角形純チタンパイプをステンレスパイプに変更した以外は、同様にして誘電体被覆電極セットBを作製した。ステンレスに変更したことにより、印加電圧の導電性母材と誘電体の線熱膨張係数の差は9.8×10-6/℃となった以外は、誘電体表面のRmax、SiおよびAlのイオン強度、SiOx含有量、誘電体膜厚および比誘電率は誘電体被覆電極セットAと同様であった。
このようにして得られた誘電体被覆電極セットBの耐熱温度は120℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例3:誘電体被覆電極セットCの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属のイオン強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.9×10-1、Li/Al=5.0×10-4、Ca/Al=1.3×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する電極セットCの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例4:誘電体被覆電極セットDの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=1.1×10-5、Li/Al=5.0×10-4、Ca/Al=0.8×10-1であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットDの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例5:誘電体被覆電極セットEの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.8×10-1、Li/Al=0.9×10-1、Ca/Al=1.1×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットEの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例6:誘電体被覆電極セットFの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=1.0×10-5、Li/Al=0.9×10-1、Ca/Al=1.1×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットFの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例7:誘電体被覆電極セットGの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=1.0×10-4、Li/Al=0.8×10-5、Ca/Al=0.8×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットGの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例8:誘電体被覆電極セットHの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.8×10-5、Li/Al=5.0×10-4、Ca/Al=0.8×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットHの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(本発明の実施例9:誘電体被覆電極セットIの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.8×10-5、Li/Al=0.8×10-5、Ca/Al=5.0×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットIの耐熱温度は200℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上であり、2000時間連続放電でも全く破壊は見られなかった。
(比較例1:誘電体被覆電極セットJの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=1.1×10-1、Li/Al=5.0×10-4、Ca/Al=1.3×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットJの耐熱温度は120℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上ではあったが、連続放電が400時間であった。
(比較例2:誘電体被覆電極セットKの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=1.1×10-5、Li/Al=1.1×10-1、Ca/Al=0.8×10-1であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットKの耐熱温度は120℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上ではあったが、連続放電が400時間であった。
(比較例3:誘電体被覆電極セットLの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.8×10-1、Li/Al=0.9×10-1、Ca/Al=1.5×10-1であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットLの耐熱温度は120℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上ではあったが、連続放電が400時間であった。
(比較例4:誘電体被覆電極セットMの作製)
ダイナミックSIMS測定によって誘電体被覆電極の表面から所定の深さにおける、Alのイオン強度に対する、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの強度測定を行い、その結果のイオン強度比が、B/Al=0.8×10-5、Li/Al=0.8×10-5、Ca/Al=0.8×10-5であること以外は、実施例1と同様である。
このようにして作製した対向する誘電体被覆電極セットMの耐熱温度は120℃、耐電圧は10kV以上、限界出力は400kW/m2以上ではあったが、連続放電が300時間であった。
以上のことから、実施例1〜6のように、ホウ素B、リチウムLi(アルカリ金属)、カルシウムCa(アルカリ土類金属)の全ての元素XのアルミニウムAl(第1の金属)に対するイオン強度比が、「元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1」と「1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度」の双方の式を満たす場合には、薄膜形成装置において、放電状態を長時間維持することができることがわかった。
また、実施例7〜9のように、ホウ素B、リチウムLi(アルカリ金属)、カルシウムCa(アルカリ土類金属)の全ての元素XのアルミニウムAl(第1の金属)に対するイオン強度比が、「元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1」の式を満たし、かつ、ホウ素B、リチウムLi(アルカリ金属)、カルシウムCa(アルカリ土類金属)のうち少なくとも1つの元素XのアルミニウムAl(第1の金属)に対するイオン強度比が、「1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度」の式を満たす場合にも、薄膜形成装置において、放電状態を長時間維持することができることがわかった。
これに対し、比較例1〜3のように、ホウ素B、リチウムLi(アルカリ金属)、カルシウムCa(アルカリ土類金属)の全ての元素Xのうち1つでもアルミニウムAl(第1の金属)に対するイオン強度比が、「元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1」の式を満たさない場合には、薄膜形成装置において、放電状態を短時間しか維持することができないことがわかった。
また、比較例4のように、ホウ素B、リチウムLi(アルカリ金属)、カルシウムCa(アルカリ土類金属)の全ての元素XのアルミニウムAl(第1の金属)に対するイオン強度比が、「1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度」の式を満たさない場合にも、薄膜形成装置において、放電状態を短時間しか維持することができないことがわかった。
以上のように、本実施の形態の誘電体被覆電極によれば、ダイナミックSIMS測定による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素Xの全てのイオン強度が、元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1の式を満たし、かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度の式を満たすため、誘電体の最表面から所定の深さまで、第1の金属に対し一定量の元素Xを混在させることになり、誘電体の表面付近に存在する微細な空隙や格子欠陥が元素Xによって埋められることとなる。
その結果、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
さらに、本実施の形態では、第1の金属がアルミニウムであり、第2の金属が珪素であり、所定の深さが1μm以上であり、封孔処理が、第2の金属を主成分とする封孔剤をゾルゲル反応により硬化させる処理であることから、より具体的に前記した発明を実現することができる。
その結果、効果的に著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
また、本実施の形態の薄膜形成装置によれば、前記した誘電体被覆電極が互いに対向して配置され、大気圧又は大気圧近傍の圧力の下で、対向する誘電体被覆電極間に100kHz以上の高周波電圧を印加し、かつ1W/cm2以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって基材の表面に薄膜を形成するため、著しく絶縁性を高め、放電状態を長時間維持することができる。
その結果、良質の薄膜を形成することができる。
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
本発明のプラズマ放電処理装置(薄膜形成装置)に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。 プラズマ放電処理容器の他の一例を示す概略図である。 円柱型のロール電極の一例を示す概略図である。 固定型の円柱型電極の一例を示す概略図である。 固定型の角柱型電極の一例を示す概略図である。 プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。 プラズマ放電処理装置の他の一例を示す概略図である。 本発明の実施例とそれに対する比較例を示す表である。
符号の説明
10,100 プラズマ放電処理装置(薄膜形成装置)
21 ロール電極(誘電体被覆電極)
21a,22a,29a 導電性母材
21b,22b,29b セラミック被覆処理誘電体(封孔処理後の誘電体)
22 円柱型の固定電極(誘電体被覆電極)
29 角柱型の固定電極(誘電体被覆電極)
120 電極(誘電体被覆電極)
121 上側平板電極(誘電体被覆電極)
122 下側平板電極(誘電体被覆電極)

Claims (5)

  1. 導電性母材の表面に第1の金属を主成分とする粒子を溶射して誘電体を被覆した後に、該誘電体の表層を第2の金属を主成分とする封孔剤で封孔処理した誘電体被覆電極において、
    ダイナミックSIMS測定による、封孔処理後の誘電体における表面から所定の深さにかけて検出されるホウ素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素Xの全てのイオン強度が、
    元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度≦1.0×10-1
    の式を満たし、
    かつ、元素Xのうち少なくとも1つのイオン強度が、
    1.0×10-5≦元素Xのイオン強度/第1の金属のイオン強度
    の式を満たすことを特徴とする誘電体被覆電極。
  2. 請求項1に記載の誘電体被覆電極において、
    前記第1の金属がアルミニウムであり、前記第2の金属が珪素であることを特徴とする誘電体被覆電極。
  3. 請求項1又は2に記載の誘電体被覆電極において、
    前記所定の深さが1μm以上であることを特徴とする誘電体被覆電極。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘電体被覆電極において、
    前記封孔処理は、前記第2の金属を主成分とする封孔剤をゾルゲル反応により硬化させる処理であることを特徴とする誘電体被覆電極。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘電体被覆電極が互いに対向して配置され、大気圧又は大気圧近傍の圧力の下で、前記対向する誘電体被覆電極間に100kHz以上の高周波電圧を印加し、かつ1W/cm2以上の電力を供給して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、前記プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって前記基材の表面に薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成装置。
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CN112646371A (zh) * 2019-10-11 2021-04-13 住友化学株式会社 光学膜及柔性显示装置

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