JP2005154579A - 電着塗装材料、摺動部材及びカードリーダ - Google Patents

電着塗装材料、摺動部材及びカードリーダ Download PDF

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Abstract

【課題】 耐熱性を有するのは勿論のこと、摺動性や放電性も有することで、汎用性の高い電着塗装材料を提供する。すなわち、電着塗装によって有機被膜を形成した表面に相手部材を摺動させる際に発生する摩擦熱に耐え(耐熱性)、摩擦を少なくし(摺動性)、接触部材の摺動によって帯電した電荷を放電することができる(放電性)電着塗装材料を提供する。
【解決手段】 耐熱性・摺動性・放電性を担保するために、耐熱性のある樹脂材料に固体潤滑剤と導電性無機フィラーを添加したことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電着塗装によって被膜対象物を被膜する際に用いられる電着塗装材料に関するものである。
従来より、外観,防錆,絶縁などの観点から、例えば電子機器の構成部品には、有機被膜が形成されるのが一般的であるが、近年の電子機器の小型化・高精度化に伴い、その有機被膜の薄膜化の要請は益々強くなってきている。
一般に、有機被膜を形成する手法としては、例えば、粉体塗装、射出又はスプレー塗装といったものがあるが、これらは基本的に厚膜塗装技術であり、薄膜化には不向きな手法である。より具体的には、これらの手法によって形成された有機被膜の膜厚は、大体数十μm〜数百μmとなってしまい、膜厚精度が悪いものとなる。
一方で、有機被膜を形成する他の手法として、電着塗装がある。これは、電気泳動反応によって電着塗装対象物(ワーク)表面に電着樹脂材料を堆積させ、後処理における乾燥・硬化によって塗装被膜を形成するものであるため、通電量によって膜厚を制御することができ、容易に薄膜化できる手法であるといえる。また、この電着塗装によれば、薄膜化が容易になるのみならず、二次加工による寸法出しを省略できたり、塗料が無駄にならなかったり、下地との密着力が強化できたり、膜均一性が良好になったり、といった様々な利益を享受することができる。
このようなことから、近年、有機被膜を形成する手法として、多くの利点を有する電着塗装が脚光を浴びつつある(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−108050号公報(段落番号[0054])
しかしながら、従来からの電着塗装材料は、そのベース材料として、アクリル−メラミン系材料,エポキシ−メラミン系材料,アルキド−メラミン系材料,アクリル−ウレタン系材料といった樹脂材料が用いられており、耐熱性・摺動性(耐摩耗性)に欠けるものであった。すなわち、電着塗装によって有機被膜を形成した表面に、樹脂,金属,セラミックといった相手部材を摺動させると、約150度以上の摩擦熱が発生し、ある温度以上の条件下では焼付き現象を増長することがあった。
また、電着塗装によって形成された有機被膜は、導電性が低く、接触部材の摺動によって帯電した電荷がなかなか放電せず、電着塗装が施された部品の上位装置である機器に悪影響を与えるおそれがある。
このように、従来からの電着塗装材料は、摺動性や放電性を必要としない限定的な用途に用いられることが多く、汎用性が低いのが最大の欠点であった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性を有するのは勿論のこと、摺動性・放電性をも有することで、汎用性の高い電着塗装材料を提供することにある。
以上のような課題を解決するために、本発明は、その耐熱性・摺動性・放電性を担保するために、耐熱性のある樹脂材料に固体潤滑剤と導電性無機フィラーを添加したことを特徴とする。
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 耐熱性樹脂材料をベース材料とし、固体潤滑剤と導電性無機フィラーとが添加されていることを特徴とする電着塗装材料。
本発明によれば、電着塗装材料は、耐熱性樹脂材料からなるベース材料に、固体潤滑剤と導電性無機フィラーが添加されたものであることから、耐熱性のみならず、摺動性及び放電性を兼ね備えたものになる。
すなわち、従来技術では、耐熱性を有する電着塗装材料は、特定部材(樹脂,金属,セラミックなど)に対して十分な摺動性を有していなかったため、物と物とが頻繁に接触・摺動する箇所への塗装には適していなかったが、本発明によれば、耐熱性と摺動性の両方を兼ね備えているため、かかる箇所への塗装にも適合するようになる。また、従来は、電子機器の構成部品に物理的な加工を施す(例えば絶縁箇所を削る)などして、接触部材との摺動に起因して帯電する電荷を逃していたが、本発明によれば、導電性無機フィラーの作用によって電気伝導性を高めることができる結果、上述した煩雑な加工作業が不要になり、ひいては電着塗装材料の汎用性向上に寄与することができるようになる。
従って、電着塗装材料の用途を広げることができ、ひいては電着塗装材料の汎用性を高めることができる。
なお、固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデンや二硫化タングステンやグラファイトなど比較的層間距離の離れた層状分子構造を有するものを挙げることができる。
また、導電性無機フィラーは、電気伝導性のみならず、自己潤滑性や耐摩耗性を有するものもあり、上述した電着塗装材料の摺動性を更に向上させることができるものである。
(2) 前記耐熱性樹脂材料としてポリイミドを用い、前記固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを用い、前記固体潤滑剤及び導電性無機フィラーとしてグラファイトを用いたことを特徴とする電着塗装材料。
本発明によれば、上述した電着塗装材料は、耐熱性樹脂材料としてのポリイミドに、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンが添加され、また、固体潤滑剤及び導電性無機フィラーとしてグラファイトが添加されたものであることから、耐熱性を有するのは勿論のこと、摺動性や放電性も有することとなり、ひいては電着塗装材料の汎用性向上に寄与することができる。特に、固体潤滑剤はコストが高いので使用効率を高める必要があるが、一般に固体潤滑剤は基体樹脂中に分散できずに沈殿してしまうことから、電着塗装には不向きであるが、ポリテトラフルオロエチレンは、電着塗装による塗装効率が良く、低コスト可が可能である。
ここで、本発明における「ポリイミド」は、ポリイミドを構成する酸側及びアミン側のうちのいずれか一方に脂環式部分を有していればよい。勿論、酸側及びアミン側の双方に脂環式部分を有していてもよい。
なお、グラファイトは比較的安価であるため、電着塗装材料が使用される部品の製造コスト削減に貢献することもできる。
(3) 前記ポリイミドを10〜20重量%含み、前記ポリテトラフルオロエチレンを前記ポリイミドの固形分重量比20±5重量%含み、前記グラファイトを前記ポリイミドの固形分重量比2〜5重量%含むことを特徴とする電着塗装材料。
本発明によれば、上述した電着塗装材料は、ポリイミドを10〜20重量%、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20±5重量%、グラファイトをポリイミドの固形分重量比2〜5重量%含むことから、耐熱性を有するのは勿論のこと、摺動性及び/又は放電性も有することとなり、ひいては電着塗装材料の汎用性向上に寄与することができる。
この場合、耐熱性樹脂材料としてのポリイミドの含有量が10重量%よりも少ないと、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンが電着塗装対象物の電着塗装中に沈殿してしまうという傾向となるので好ましくなく、また、ポリイミドの含有量が20重量%よりも多いと、表面エネルギーが低くなり、はじき等の塗装外観不良を発生する傾向となるので好ましくない。
また、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンの含有量が20−5重量%よりも少ないと、潤滑性が十分でないものとなる傾向となるので好ましくなく、また、ポリテトラフルオロエチレンの含有量が20+5重量%よりも多いと、例えば、放電性を付加するために添加する導電性無機フィラーが電着塗装液に均一分散されず電着塗装槽に沈殿してしまう傾向となるので好ましくない。
さらに、導電性無機フィラーとしてのグラファイトの含有量が2重量%よりも少ないと、放電性が十分でないものとなる傾向となるので好ましくなく、また、グラファイトの含有量が5重量%よりも多いと、グラファイトが電着塗装対象物の電着塗装中に沈殿してしまう傾向となるので好ましくない。
(4) (1)から(3)のいずれか記載の電着塗装材料により被膜が形成された摺動部を備えることを特徴とする摺動部材。
本発明によれば、接触部材(例えばICカード)が摺動する摺動部材は、上述した電着塗装材料によって被膜が形成された摺動部を備えるような構成にしたから、かかる摺動部材が耐熱性、摺動性や放電性を有することとなり、その用途を拡大することができる。
(5) (4)に記載の摺動部材を用いてカード走行基準面を構成したことを特徴とするカードリーダ。
本発明によれば、カードリーダは、上述した摺動部材を用いてカード走行基準面を構成することとしたから、挿入カードの磨耗劣化を防ぐことができると共に、挿入カードがカード走行基準面と摺動することに起因して帯電する電荷を逃すことができる。
本発明に係る電着塗装材料は、以上説明したように、耐熱性のある樹脂材料に固体潤滑剤や導電性無機フェラーを添加することで摺動性や放電性を兼ね備えたものであり、その汎用性を高めることが可能になる。また、本発明に係る摺動部材及びカードリーダは、この電着塗装材料を用いて構成・製造されるものであり、挿入カードの磨耗劣化や摺動に起因した帯電を防ぐことが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
[電着塗装材料の合成方法]
まず、本発明の実施の形態に係る電着塗装材料の合成方法の一例について説明する。尚、電着塗装材料の合成方法は以下の方法に限られるものではない。
本発明の実施の形態に係る電着塗装材料のベースとなる耐熱性樹脂材料はポリイミドであるが、このポリイミドは、ポリイミド系材料の酸成分(例えば、ビシクロオクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物など)を溶媒(例えば、N−メチルピロリドンなど)に溶解させ、その溶解液を数時間攪拌し、それによって得られた溶解液を透析チューブ内に入れて有機溶媒などの雑イオンを除去することによって合成される。なお、本実施形態で合成されるポリイミドは、自身がプラスに帯電するカチオン系のものであるが、本発明はこれに限られず、自身がマイナスに帯電するアニオン系のものであっても構わない。また、透析チューブを用いて行う透析は、溶解液がほぼ中性になるまで実施する。
次に、上述の工程を経て得られたポリイミド10〜20重量%に、潤滑性向上のための固体潤滑材料として、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比5〜40重量%で添加する。ここで、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比10〜30重量%(特に、20±5重量%)で添加するのがよい。これにより、溶解液がゲル(半固形)状になったり、沈殿が発生したりするのを防ぐことができ、ひいては電着液(溶解液)の管理が容易になる。なお、本実施形態においては、固体潤滑材料としてポリテトラフルオロエチレンを添加したが、本発明はこれに限られず、グラファイト,CNF,カーボンブラック等の炭素系、2硫化モリブデン(MoS2)等の無機フィラーを添加してもよい。
次に、上述の工程を経て得られた固形潤滑材料入りの溶解液に、グラファイト,カーボンブラック,金属粒子等の導電性のある無機フィラーをポリイミドの固形分重量比3〜15重量%で添加する。ここで、ポリテトラフルオロエチレンとの複合添加を考慮し、好ましくは、導電性のある無機フィラーをポリイミドの固形分重量比3〜5重量%で添加するのがよい。これにより、潤滑性・耐電性(放電性)を兼ね備え、電着液の管理上最適な電着塗装材料を得ることができる。
なお、上述の工程を得て得られた電着塗装材料を水溶性化するために、イオン交換水、乳酸・酢酸等の弱酸、或いはIPA・ブチルセロソルブ等の溶剤を添加してもよい。
[電着塗装]
図1は、本発明の実施の形態に係る電着塗装材料を用いた電着塗装の工程を模式的に説明するための工程説明図である。
図1において、本発明の実施の形態に係る電着塗装材料に純水を混ぜることによって適切な電解条件に設定(調製)した電着液1に、電着塗装対象物(ワーク)2を浸漬させる。そして、このような状態で、電着塗装対象物2を陰極、対極となる電解槽3を陽極とし、両者の間に直流電源4を接続し、直流電圧を印加する(図1(a))。なお、このときの電着液1の温度,電流密度などは、電着塗装対象物2の種類によって最適な条件に設定される。例えば、本発明の実施の形態においては、印加電圧10〜300V、ソフトスタート20〜120秒、電着時間60〜180秒とし、定電圧制御(定電流制御)とすることができる。
次に、図1(a)の工程において一定時間経過すると、電着液1の中で化学反応が進行し、陰極である電着塗装対象物2のそばの電着液1が次第に凝縮し、不溶性の樹脂(ポリマー)となって電着被膜5が形成される(図1(b))。なお、上記条件下においては、膜厚は、約5〜30μmとすることができる。
最後に、図1(b)の工程において電着塗装対象物2に電着被膜5が適当に形成された後、その電着塗装対象物2の取出し・洗浄、予備乾燥、約200℃前後の温度での熱処理を順次行うことによって、電着被膜5が硬化し、電着塗装が完了する(図1(c))。なお、図1(c)に示すように、電着塗装対象物2の周囲全てを電着被膜5で覆う必要はなく、一部のみを被膜しても構わない。このような非成膜部(非被膜部)を設けることで、滞留電荷を逃すためのアースを電着塗装対象物2にとることができる。
以上のような工程を経て、電着被膜5が電着塗装(形成)された電着塗装対象物2は、耐熱性を有するのみならず、摺動性及び放電性を有しているため、樹脂,金属,セラミックといった相手部材が摺動する摺動部を備える摺動部材として用いることができる。また、この摺動部材を用いてカードリーダのカード走行基準面を構成すれば、塩化ビニル材質のカードが電着被膜5と繰り返し摺接したとしても、静電気によって帯電する電荷を逃すことができ、ひいては読取エラーやジッター不良など、カードリーダの誤動作を防止することができる。
[電着塗装材料の使用例]
図2は、本発明の実施の形態におけるカードリーダ11の内部構造を示す断面図である。図2(a)は、挿入カード19と平行な方向の水平断面図であって、図2(b)は、挿入カード19の進行方向と平行な方向の垂直断面図であって、図2(c)は、挿入カード19の進行方向と垂直な方向の垂直断面図である。なお、ここでは手動式のカードリーダを用いて電着塗装材料の使用例を説明するが、本発明はこれに限られず、例えば、モータを用いたローラ搬送タイプのカードリーダに本発明を適用することも可能である。
図2(a)〜(c)において、手動式カードリーダ11は、断面形状がほぼコの字形状をなすフレーム12(図2(c)参照)と、このフレーム12の底部13を挟んで対向する2つの側板部14,15(図2(b)参照)と、これら側板部14,15の少なくとも一方側にカード通路16に突出する磁気ヘッド17(図2(b)参照)と、を有している。
コの字形状のフレーム12の底部13には、カード走行基準面Sが形成されている(図2(a),(c)参照)。なお、このカード走行基準面Sが形成された底部13は、請求項記載の摺動部の一例に相当する。
ここで、この底部13には、上述した電着塗装によって本発明に係る電着塗装材料による被膜18(図2(a)〜(c)のハッチング部)が形成されている。底部13は、本実施形態においては、フレーム12と一体に樹脂で形成されているが、例えば、ステンレス鋼板をプレス加工することでも形成することができる。なお、その場合には、被膜18を底部13の表面に確実に固着させるため、また、挿入カード19と底部13との摺動抵抗を軽減させるため、被膜18が形成される底部13の表面粗さは可能な範囲で粗くしておくことが好ましい。また、カード通路16を構成する2つの側板部14,15の対向面14a,15aにも、本発明に係る電着塗装材料による被膜18が形成されている(図2(c)のハッチング部)。
このように、挿入カード19と摺接する部分に、耐熱性・摺動性を兼ね備えた、本発明に係る電着塗装材料による被膜18を形成することで、その部分と挿入カード19との間の摩擦に起因した発熱を最小限に抑えることができ、ひいてはカード疲労(磨耗)を防ぐことができる。さらに、本発明に係る電着塗装材料による被膜18は、上述のとおり、耐熱性・摺動性に加えて放電性も有しており、接触部材との摺動に起因して帯電する電荷を逃すのに煩雑な加工作業(例えば、フレーム12の裏面を削る)が不要となるので、電着塗装材料の汎用性向上に寄与することができる。
図3は、本発明の実施の形態に係るカードリーダ11を用いて行った実験結果を示す図である。図3(a)は、通常のスピードよりも速くカードを動かす加速パス試験の試験結果を示す図であり、横軸は摩擦による鳴きが出始めた回数を示し、縦軸は採用した電着塗装材料の種類を示している。図3(b)は、図3(a)の加速パス試験後のカード負荷量(摩擦負荷量)を示す図であり、横軸は代表的な電着塗装材料の種類を示し、縦軸は挿入カードを引っ張り出すときに必要な力(カード負荷量)を示している。図3(c)は、図3(a)の加速パス試験のパス回数と電着塗装材料の帯電量との関係を示す図であり、横軸は図3(a)の加速パス試験のパス回数を示し、縦軸は電着塗装材料の帯電量を示している。
図3(a)によれば、エポキシ系樹脂をベース材料とする現行の塗装材料を採用した場合(一番下)には、2回平均約3万パスで鳴き始めるのに対し、ポリテトラフルオロエチレン(図中では「PTFE」で示す)のみをポリイミドの固形分重量比30重量%で添加した場合(下から二番目)には、2回平均約10万パスでも鳴きが発生しないのが分かる。すなわち、固体潤滑材料としてポリテトラフルオロエチレンを添加した場合には、鳴き始める回数が少なくとも約3倍以上に増えていることから(3万回→10万回以上)、摺動性が向上したことが分かる。なお、図3(a)におけるパス回数は最大10万回となっているが、本実験では加速パス試験を10万回しか行っていない。そのため、ポリテトラフルオロエチレンのみをポリイミドの固形分重量比30重量%で添加した場合の電着塗装材料は、潜在的には10万回以上の加速パス試験に耐え得るものである。
次に、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加し、グラファイト(図3中では「Gr」で示す)をポリイミドの固形分重量比3重量%で添加した場合(下から三番目)も10万パス試験では鳴きが発生しないことが分かる。またポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比10重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比7重量%で添加した場合(下から四番目)には、2回平均約10万パスで鳴き始めるのが分かる。すなわち、放電性を向上させるためにグラファイトを添加した場合であっても、上記配分によって電着塗装材料を合成すれば、摺動性が低下することはないのが分かる。
次に、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比5重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比12重量%で添加した場合(上から三番目)には、約2万パスで鳴き始め、摺動性が著しく低下するのが分かる。また、導電性のある無機フィラーとして、グラファイトではなく2硫化モリブデン(図3中では「MoS」で示す)を採用した場合(上から一番目及び二番目)には、約5000パスで鳴き始め、この場合も摺動性が著しく低下する。
このように、図3(a)によれば、摺動性と放電性の双方を有し、汎用性のある電着塗装材料を得るためには、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比10〜30重量%(特に、20±5重量%)で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比2〜5重量%で添加するのが好ましいのが分かる。
次に、図3(b)によれば、現行の電着塗装材料のカード負荷は、5回平均約120gであるのに対し、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加すると5回平均85gとなり、固形分重量比30重量%で添加すると5回平均80gであることが分かる。すなわち、PTFEの添加だけでは摺動性の向上には限界がある事が分かる。グラファイトをポリイミドの固形分重量比3重量%で添加した場合(右端)には、5回平均約60gであることが分かる。すなわち、固体潤滑材料としてポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加し、固体潤滑材料及び導電性無機フィラーとしてグラファイトをポリイミドの固形分重量比3重量%で添加すると、挿入カードを引っ張り出すときに必要な力が約半分に減っていることから(120g→60g)、摺動性が向上したことが分かる。
このように、図3(b)によれば、摺動性と放電性の双方を有し、汎用性のある電着塗装材料を得るためには、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比3重量%で添加するのが好ましいのが分かる。
最後に、図3(c)によれば、現行の電着塗装材料のパス回数に対する帯電量変化(図中の黒ひし形)は、加速パス試験のパス回数が約1万回のときに、帯電量が約10kVから約3kvまで少なくなり、放電効果が生じる、というものである。一方で、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比30重量%で添加した場合(図中の黒四角)には、加速パス試験のパス回数が2万回を超えても全く放電効果が生じない。
ここで、ポリテトラフルオロエチレンの添加に起因した放電効果の低下を防ぐためにグラファイトを添加すると、放電効果は著しく改善されることとなる。すなわち、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比3重量%で添加した場合(図中の黒三角)には、加速パス試験のパス回数が約6000回のときに、帯電量が約10kVから約5kvまで少なくなり、放電効果が生じる。また、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比5重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比7重量%で添加した場合(図中の×印)には、加速パス試験のパス回数が約6000回のときに、帯電量が約10kVから約2kvまで少なくなり、放電効果が生じる。
このように、図3(c)によれば、放電性のみを考慮すれば、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比5重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比7重量%で添加した場合が最適であるが、汎用性を重視し、摺動性と放電性の双方を考慮すれば、ポリテトラフルオロエチレンをポリイミドの固形分重量比20重量%で添加し、グラファイトをポリイミドの固形分重量比3重量%で添加した場合が最適であることが分かる。
本発明に係る電着塗装材料、摺動部材及びカードリーダは、摺動性や放電性を必要とする用途にも適用することが可能であり、その結果、電着塗装材料の汎用性を高めることができるものとして有用である。
本発明の実施の形態に係る電着塗装材料を用いた電着塗装の工程を模式的に説明するための工程説明図である。 本発明の実施の形態におけるカードリーダの内部構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係るカードリーダを用いて行った実験結果を示す図である。
符号の説明
1 電着液
2 電着塗装対象物
3 電解槽
4 直流電源
5 電着被膜
11 カードリーダ
12 フレーム
13 底部
14,15 側板部
16 カード通路
17 磁気ヘッド
18 被膜
19 挿入カード

Claims (5)

  1. 耐熱性樹脂材料をベース材料とし、固体潤滑剤と導電性無機フィラーとが添加されていることを特徴とする電着塗装材料。
  2. 前記耐熱性樹脂材料としてポリイミドを用い、前記固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを用い、前記固体潤滑剤及び導電性無機フィラーとしてグラファイトを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の電着塗装材料。
  3. 前記ポリイミドを10〜20重量%含み、前記ポリテトラフルオロエチレンを前記ポリイミドの固形分重量比20±5重量%含み、前記グラファイトを前記ポリイミドの固形分重量比2〜5重量%含むことを特徴とする請求項4記載の電着塗装材料。
  4. 請求項1から3のいずれか記載の電着塗装材料により被膜が形成された摺動部を備えることを特徴とする摺動部材。
  5. 請求項4に記載の摺動部材を用いてカード走行基準面を構成したことを特徴とするカードリーダ。

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