JP2005152916A - 金属板の冷間圧接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一対の金属板30を重ねて重複箇所を形成し、この重複箇所を一対のダイス10,20で押圧して両金属板30を接合する金属板30の冷間圧接方法である。このダイスの少なくとも一方は突部12を有し、この突部12の高さを金属板30の合計厚さの50〜95%として圧接を行なう。このような条件にて冷間圧接を行うことで、通常、金属板表面に形成されている酸化膜を十分に微細な破片に圧壊して、その破片を接合箇所で広い間隔に分散させることにより、酸化膜のない金属同士を原子間結合させることができる。
【選択図】図2
Description
(被圧接材)
<金属板の材質>
冷間圧接により接合可能な金属であれば特に限定されない。代表的には、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金から選択された同種または異種の金属同士で接合が可能である。通常、同種金属の方が圧接時に均等に変形されるため、異種金属の場合に比べて接合しやすい。
金属板には表面処理を施したものでもよい。表面処理の代表例としては、研磨が挙げられる。この研磨により金属板表面の異物除去および酸化膜除去が行なえる。研磨の具体例としてはワイヤバフ掛けがある。特に、人手によるバフ掛けではなく、モータによりワイヤバフを駆動させてバフ掛けすることが好適である。手動ではなく電動によりワイヤバフをかけると、金属板表面に縮緬状の研磨模様が現われる研磨面を容易に得ることができる。
金属板の厚みは圧接可能である限り特に限定されない。本発明の圧接方法は、例えば合計厚みが0.4〜6.0mm程度の金属板の圧接に利用される。特に、合計厚みが1.5mm以下の金属板において良好な圧接を行なうことができる。また、合計厚みが0.1mm以下の箔も圧接することが可能である。このような箔の圧接には、後述する波型のダイスが適する。
金属板の硬度は、ある程度低いもの同士の方が塑性変形しやすく接続しやすい。圧接する各金属板の硬度が異なる場合、硬度差は小さい方が均等に変形できて良い。通常、銅(銅合金)とアルミニウム(アルミニウム合金)との硬度差程度は圧接する上で十分許容される範囲内である。
<ダイスの形状と組合せ>
冷間圧接は一対のダイスで被圧接材を挟み、強く押圧することにより行う。このダイスには、部分的に突部を有するダイスと平面ダイスの組合せ、部分的に突部を有するダイス同士の組合せ、波型のダイスと平面ダイスの組合せが考えられる。
突部の高さは被圧接材の合計厚さの50〜95%程度が好ましい。この高さを有するダイスで押圧すれば、被圧接材に対して冷間圧接するのに好ましい圧力を付与しやすく、より確実な接合を行なうことができる。この突部の高さと被圧接材の厚さとの比率の下限または上限は、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%の中から選択されるいずれかでもよい。
突部を有するダイスの場合、突部の圧接面形状、つまり突部表面のうちダイスの押圧方向に対して直交する面の形状には円形または小判型が挙げられる。円形の圧接面の場合、被圧接材は突部の周囲に均等に大きく変形される。そのため、金属板の重複箇所の面積が十分あり、重複箇所のうち突部で圧接されない箇所の面積に余裕がある場合、円形の圧接面を有するダイスを用いることが向いている。小判型の圧接面の場合、そのアスペクト比(小判型圧接面の長径/短径)は1.5〜2.6程度が望ましい。このような小判型のダイスは、長径方向と短径方向とで被圧接材の変形範囲が異なるため、重複箇所のうち突部で圧接されない箇所の面積に余裕がない場合でも有効な圧接が可能である。この小判型には楕円型も含まれる。また、波型ダイスの場合、微細な各突起の圧接面形状は、角が円弧状に形成された矩形などが利用される。
突部を有するダイスと平面ダイスの組合せ場合、突部の圧接面と平面ダイス圧接面との平行度は、7.5mm当たり20μm以下とすることが好ましい。この平行度を下回ると、特に合計厚さが1mm以下の被圧接材の場合に接合の可否のばらつきおよび接合強度のばらつきが大きくなる。
突部を有するダイスは、平面状の基底部と、この基底部から突出する突部とから構成される。その突部は、押圧時の圧縮荷重に耐えられるよう、圧接面から基底部に向かって末広がりに構成することが好ましい。そのため、突部の頂角、つまり、突部側面(周面)の延長上に形成される頂点の角度は一定の角度を持って形成される。この頂角は、7〜40°程度が好ましい。より好ましくは7〜20°、特に好ましくは7〜15°である。このような傾斜角度を有するダイスを用いることで、次の効果を奏することができる。
(1)圧接時の押圧力でダイスが変形することを抑制できる。
(2)圧接時に突部による被圧接材の変形を容易にし、確実に強度の高い接合を行うことができる。
この頂角は、言い換えれば、圧接面に直交する線と、突部側面の輪郭線との角度で表すこともできる。この場合、両線の角度は3.5〜20°が好ましい。
突部の圧接面と突部の側面とで形成される角部には、半径0.1mm以上0.5mm以下の円弧面を形成することが好ましい。この円弧面を形成することで、突部で金属板を押圧した際、押圧した金属を突部の脇に適度に逃がし、より確実な接合を可能にする。この下限値未満では、押圧した金属を突部の脇に適度に逃がして円滑に変形させることが難しい上、角部が鋭利なため突部が欠損しやすい。逆に、この上限値を超えると、押圧力のうち圧接面に直交する分力が小さくなり、十分に金属板を圧縮することができない場合がある。より好ましい角部の半径は0.3mm以下である。
小判型の突部を有するダイスの場合、ダイス圧接面の長径を直線上に揃える配置と、ダイス圧接面の短径を直線上に揃える配置とが考えられる。長径方向には圧接時の被圧接材の伸び(変形)が小さく、短径方向には圧接時の伸び(変形)が大きい。そのため、被圧接材の重複部周縁に近接した箇所を圧接する場合、その周縁に突部の短径方向が沿うようにダイスの配列を決定することが好適である。
圧接を行う場合、被圧接材の変形影響範囲を考慮してダイスの突部あるいは微小な突起の間隔を決定し、適切な突部(突起)間隔のダイスで圧接を行なう。突部の隣接間隔は、ダイス圧接面の長径が直線上に揃うように小判型の突部を並列する場合、長径の2〜4倍程度が好ましい。ダイス圧接面の短径が直線上に揃うように小判型の突部を並列する場合、短径の8〜12倍程度が好適である。この隣接間隔とは、隣接する突部圧接面の中心間距離のことをいう。上記の規定範囲の下限未満では、各突部による圧接箇所周辺の変形が隣接する突部の圧接箇所周辺の変形に重なり合って被接合材に無用の変形が生じることがある。逆に上限を超えると、隣接する突部間における金属板のうち、特に上側の金属板(突部を有するダイスで押圧される金属板)が上方に湾曲変形して、下側の金属板との間に隙間が形成されることがある。突部の圧接面形状が円形の場合は、その直径の3〜4倍程度の隣接間隔とすることが好ましい。
<ダイス圧接箇所の長さ比率>
小判型の突部を有するダイスを用いる場合、金属板の重複箇所の長さに対する圧接箇所の長さ方向距離の比率は70%以下が望ましい。一方、金属板の重複箇所の幅に対する圧接箇所の幅方向距離の比率は40%以下が好ましい。この範囲の圧接を行うことで、圧接箇所が金属板の重複箇所の外縁に接近しすぎることがなく、圧接時に金属板に割れが生じることを抑制できる。
金属板の重複箇所の外縁から規定幅以上内側の領域をダイスで押圧することが好ましい。ここでの規定幅とは最も薄い金属板の厚みの2倍とする。金属板の重複箇所の外縁付近をダイスで押圧すると、金属板の外縁が変形して外側に膨出し、極端な場合には外縁に割れを生じることがある。種々の厚みの金属板を用いて圧接を行い、金属板外縁の変形を抑制できる押圧領域を検討した結果、金属板の重複箇所の外縁から最も薄い金属板の厚みの2倍以上内側をダイスで押圧すればよいことがわかった。このダイスでの押圧領域の限定は、金属板の合計厚みが1mm以上の場合に特に有効である。金属板の合計厚みが1mm未満の場合は、より外縁に近い領域をダイスで押圧できる場合がある。
突部を有するダイスと平面ダイスで厚さが異なる金属板を接合する場合、厚い金属板側に突部を有するダイスを配することが望ましい。厚みの異なる金属板のうち薄い金属板側から突部を有するダイスで押圧すると、薄い金属板は厚い金属板側に沈み込むように変形し、薄い金属板の厚みを小さく圧縮することができないため、両金属板を十分に接合できないことがある。特に、被圧接材の厚さに極端な差があれば薄い金属板が破断することも考えられる。そのため、厚さが異なる金属板の接合時、突部を有するダイスは厚い金属板側に配することが好ましい。
圧接には、通常、58839〜78453N(6000〜8000kgf)の押圧力を有するプレスが用いられる。その場合、面圧(押圧力/ダイスの接地面積)は980MPa(100kgf/mm2)以上とすることにより圧接が可能と考えられる。ダイスを圧縮し切った際、通常はダイス突部の圧接面のみならず、基底部も被圧接材を押圧するため、ダイスの接地面積は圧接面と基底部の面積の合計面積とする。
図1は本発明方法に用いるダイスを示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は平面図である。このダイス10は、平板上の基底部11に突部12が形成されたものである。この突部12は、先端の圧接面が小判型に形成され、先端に向かってテーパー状に形成されている。このようなダイス10と平面ダイス20(図2)とを組み合わせて金属板の圧接を行う。
上記のダイスや突部圧接面が円形のダイスを用いて、圧接を行ってみた。圧接時のプレス荷重は68646N(7000kgf)である。ダイスの条件を表1に、金属板の条件を表2に示す。
上記のダイスと金属板のうち表3に示す組合せで圧接試験を行なった。この試験は、ダイスと金属板との各組合せで10回ずつ圧接を行い、良好な接合が得られた比率(良好な接合回数/10)で評価を行なった。良好な接合か否かは、接合後の2枚の金属板を引き剥がして、次の基準により判定した。
(2)前記破断が生じることなく接合箇所が剥離したが、剥離面を観察した際、互いの金属板に相手側金属板素材の微細な破断片が付着していた場合。
不良:上記破断が生じず接合箇所が剥離し、かつ剥離面を観察した際、互いの金属板に相手側金属板素材の微細な破断片が付着していない場合。
次に、種々の表面処理を行なった金属板を用いて圧接を行ない、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表4に示す。ここで、脱脂またはバフ掛けを行なった金属板は、各表面処理より約3分で圧接作業を行なった。
次に、電動でバフ掛けを行なってから圧接するまでの時間を変えて圧接を行ない、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表5に示す。表5における時間間隔は、バフ掛けを行なってから圧接するまでの時間(分)を示している。
次に、突部圧接面のアスペクト比の異なるダイスを用いて圧接を行い、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表6に示す。表6において、ダイスA2、A3はアスペクト比以外がダイスA1と共通のもの、ダイスB2、B3はアスペクト比以外がダイスB1と共通のものである。
次に、突部の頂角の異なるダイスを用いて圧接を行い、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表7に示す。表7おいて、ダイスA4〜A6は頂角以外がダイスA1と共通のもの、ダイスB4は頂角以外がダイスB1と共通のものである。
次に、突部の圧接面と側面とで構成される角部を円弧面に形成し、その円弧面の半径が異なるダイスを用いて圧接を行い、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表8に示す。表8において、ダイスA7、A8は角部半径以外がダイスA1と共通のもの、ダイスB5、B6は角部半径以外がダイスB1と共通のものである。
次に、突部を有するダイスと対面する金属板の材質と厚さを変えて圧接を行い、試験例1と同様に接合状態を評価した。ダイスと金属板の組合せと試験結果を表9に示す。
次に、上記の突部を有するダイスを用いて圧接を行った際、圧接箇所周辺のどの範囲に圧接に伴う変形の影響が及ぶかを調べてみた。用いたダイスは表1のB1で長径方向の突部の中心間隔を約20mmとしたもの、金属板は表2の金属板3である。図6は圧接した金属板において、変形の及ぶ範囲を示した模式説明図である。
(1)圧接面の長径が直線上に揃うように複数の突部が並列されている場合、これら突部の隣接間隔が圧接面の長径の2〜4倍であることが好ましい。
(2)圧接面の短径が直線上に揃うように複数の突部が並列されている場合、これら突部の隣接間隔が圧接面の短径の8〜12倍であることが好ましい。
(3)金属板の重複箇所の外縁から規定幅以上内側の領域をダイスで押圧する。ただし、規定幅は最も薄い金属板の厚みの2倍とする。より好ましくは最も薄い金属板の厚みの4倍、さらには最も薄い金属板の厚みの8倍を規定幅とする。
20 平面ダイス 30 金属板
40 内周領域 50 外周領域
Claims (12)
- 複数の金属板を重ねて重複箇所を形成し、この重複箇所を一対のダイスで押圧してこれら金属板を接合する金属板の冷間圧接方法であって、
前記ダイスの少なくとも一方は突部を有し、
この突部の高さを金属板の合計厚さの50〜95%として圧接を行うことを特徴とする金属板の冷間圧接方法。 - 突部の圧接面が小判型で、その圧接面のアスペクト比が1.5〜2.6であることを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 突部の圧接面が小判型で、この圧接面の長径が直線上に揃うように複数の突部が並列され、
これら突部の隣接間隔が圧接面の長径の2〜4倍であることを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。 - 突部の圧接面が小判型で、この圧接面の短径が直線上に揃うように複数の突部が並列され、
これら突部の隣接間隔が圧接面の短径の8〜12倍であることを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。 - 金属板の重複箇所の外縁から規定幅以上内側の領域をダイスで押圧することを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。
ただし、規定幅は最も薄い金属板の厚みの2倍とする。 - 突部側面の頂角が7〜40°であることを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 突部圧接面と突部側面とで形成される角部に、半径0.1mm以上0.5mm以下の円弧面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 圧接の前処理として、金属板の表面に縮緬状の模様が現われる程度に研磨を施すことを特徴とする請求項1に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 研磨がワイヤバフ掛けであることを特徴とする請求項8に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 金属板に脱脂を行なうことなくワイヤバフを施すことを特徴とする請求項9に記載の金属板の冷間圧接方法。
- ワイヤバフのワイヤ径が0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項9に記載の金属板の冷間圧接方法。
- 金属板にワイヤバフを施してから5分以内にダイスで金属板を接合することを特徴とする請求項9に記載の金属板の冷間圧接方法。
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