以下、本発明に係る1ビットオーディオ信号生成装置及び方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、第1の実施の形態について説明する。この第1の実施の形態は、図1に示すような高速1ビット・オーディオ信号生成システム1であり、ディジタルオーディオ信号処理装置2を備える。このディジタルオーディオ信号処理装置2には、選択装置3にて選択された、コンパクトディスク(CD)4やディジタルオーディオテープ(DAT)5から再生されたPCM信号、又はディジタルオーディオミキサー7などからのPCM信号の何れかが入力される。そして、このディジタルオーディオ信号処理装置2により、前記PCM信号を高速1ビット・オーディオ信号に変換し、スーパーオーディオCD(SACD:ソニー(株)商品名)8に記録したり、レコーダ9等に供給したりする。ここで、ディジタルオーディオミキサー7はマルチトラックレコーダ6により記録されたディジタルオーディオ信号をミキシングしたPCM信号を出力する。
したがって、図1に示した高速1ビット・オーディオ信号生成システム1は、コンパクトディスク(CD)4やディジタルオーディオテープ(DAT)5から再生されたPCM信号、又はディジタルオーディオミキサー7のPCM信号から高速1ビット・オーディオ信号を生成し、光ディスク等の媒体に記録したり、レコーダに伝送することができる。
ディジタルオーディオ信号処理装置2の構成を図2に示す。このディジタルオーディオ信号処理装置2は、入力端子11から入力された、量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM楽音信号(PCM信号)に周波数分析処理を施す周波数分析部12と、周波数分析部12の周波数分析結果から所定帯域の平均ノイズレベルを算出するパワー算出部13とを備える。
また、ディジタル信号処理装置2は、可聴帯域外の高域信号であるディザ信号を発生するディザ発生部14と、ディザ発生部14にて発生したディザ信号の前記所定帯域の平均ノイズレベルを算出するパワー算出部15と、パワー算出部15にて算出された平均ノイズレベルを正規化するための正規化部16とを備える。
また、ディジタルオーディオ信号処理装置2は、前記PCM信号をm(m≧2の正の整数)×fs(kHz)のサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部21と、オーバーサンプリング処理部21にてオーバーサンプリングされたPCM信号と正規化部16で正規化されたディザ信号を加算する加算器22と、加算器22の加算出力をn(n≧2の正の整数)×fs(kHz)のサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部23と、オーバーサンプリング処理部23にてオーバーサンプリングされたマルチビットディジタル信号を1ビットディジタル信号に変換し、出力端子25から外部に導出するΔΣ変調部24とを備える。
周波数分析部12は、入力端子11から入力されたPCM信号に、例えば高速フーリエ変換(fast Fourier transformation:FFT)を用いてDC〜22.05KHzの範囲で周波数分析処理を施し、その周波数分析結果をパワー算出部13に供給する。
パワー算出部13は、周波数分析部12より供給された周波数分析結果から、例えば18KHz〜20KHzの範囲の平均パワーを算出する。このパワー算出部13で計算された平均パワーは正規化部16に送られる。
ディザ発生部14は、可聴帯域外の高域信号となる、ディザ信号を発生させる。このとき、ディザ信号の発生間隔を、後述するオーバーサンプリング処理部21でのオーバーサンプリング処理後の信号周期と等しくする。オーバーサンプリング処理部21で、例えば、2(=m)倍オーバーサンプリングをする場合は、2fs=88.2KHzに基づいた発生周期となる。また、ディザ信号の語長を、後述する加算器22で前記オーバーサンプリング処理出力に正規化部16の正規化結果を加算するのに充分な長さとする。オーバーサンプリング処理部21で使用されるディジタルフィルタの係数の語長を例えば16ビットとすると、入力端子11には16ビットのPCM信号が供給されているので、オーバーサンプリング後の語長が31ビットとなり、前記ディザ信号の語長は31ビット必要となる。
パワー算出部15は、ディザ発生部14にて発生されたディザ信号のパワーを算出する。このパワー算出部15で計算されたパワーは正規化部16に送られる。
正規化部16は、パワー算出部13にて算出されたPCM信号の18kHzから20kHzまでの範囲の平均パワーに基づいてパワー算出部15にて算出されたディザ信号のパワーを正規化し、正規化出力を加算器22に供給する。
オーバーサンプリング処理部21は、入力端子11から入力された量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号を、2×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングし、オーバーサンプリング処理出力を加算器22に供給する。
加算器22は、正規化部16からの正規化出力とオーバーサンプリング処理部21からのオーバーサンプリング出力とを加算し、その加算出力をオーバーサンプリング処理部23に送る。
オーバーサンプリング処理部23は、前記加算出力を32×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングする。よって、このオーバーサンプリング処理部23からのオーバーサンプリング出力は、前記量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力となる。
この64倍オーバーサンプリング出力は、ΔΣ変調部24に送られ、後述するデルタシグマ変調処理が施されて1ビットオーディオ信号となり、出力端子25に供給される。
第1の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1に用いるディジタルオーディオ信号処理装置2は、正規化部16の構成を異ならせることにより、いくつかの実施例に分けることができる。以下にいくつかの実施例について説明する。
先ず、第1の実施の形態の第1実施例(以下、実施例1−1と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置21について図3〜図9を用いて説明する。この実施例1−1のディジタルオーディオ信号処理装置21の正規化部161は、ゲイン算出部31と、バンドパス(BP)フィルタ特性発生部32と、フィルタ係数算出部33と、フィルタ処理部34と、ゲイン調整部35とを備えている。
バンドパス(BP)フィルタ特性発生部32は、オーバーサンプリング処理部21で例えば2倍オーバーサンプリング処理を行ったときに、図4に示すように、20kHz過ぎから40kHz手前までを0dBで通過させるフィルタ特性を発生する。
フィルタ係数算出部33は、BPフィルタ特性発生部32で発生されたフィルタ特性を、フィルタ処理部34で使うフィルタ係数に変換する。
フィルタ処理部34は、ディザ発生部14からのディザ信号を、フィルタ係数算出部33で算出された前記フィルタ係数に基づいてフィルタ処理し、フィルタ処理出力をゲイン調整部35に供給する。
ゲイン算出部31は、パワー算出部13で算出されたPCM信号の18KHz〜20KHzの範囲の平均パワーに対してパワー算出部15で算出されたディザ信号のパワーを等しくする係数を算出する。このゲイン算出部31で算出された係数は、ゲイン調整部35に送られる。
ゲイン調整部35は、フィルタ処理部34のフィルタ処理出力であるディザ信号のパワーを、前記ゲイン算出部31からの係数を用いて前記PCM信号の18KHz〜20KHzまでの範囲の平均パワーと等しくし、加算器22に送る。
そして、加算器22は、正規化部161のゲイン調整部35でパワーがゲイン調整されたディザ信号と、オーバーサンプリング処理部21で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、スペクトル上で見ると、図5に示すように周波数スペクトルが滑らかにつながるようになる。
すなわち、ディザ発生部14のディザ信号にフィルタ処理部34でフィルタ処理を施して得られたフィルタ処理出力37に、ゲイン調整部35でパワー調整した後のディザ信号38は、前記入力端子11から入力されたPCM信号に周波数分析部12で周波数分析処理を施した結果36に滑らかにつながる。
そして、図5に周波数特性を示した加算器22の加算出力は、オーバーサンプリング処理部23により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部24には、前記図5に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部24は、図6に示すような基本的な構成を採る。すなわち、積分器42と、一つの1ビット量子化器43とその量子化出力のフィードバック系との組み合わせで構成されている。詳細には、入力信号Gが正入力端子に供給され、後述する帰還出力が負入力端子に供給される加算器41と、加算器41の加算出力に積分処理を施す積分器42と、この積分器42の積分出力を1サンプル周期毎に1ビットデジタル信号に量子化する1ビット量子化器43とを備える。1ビット量子化器43の量子化出力Hは、加算器41に負符号とされて帰還され、入力信号Gに加算(結果的に減算)される。また、1ビット量子化器43からは1ビットデジタル信号Hが量子化出力として外部に導出される。積分器42は加算器42aと、遅延器42bを備える。
ここで、1ビット量子化器43は、時間に対して不変で常に0である閾値(スレッシュホールド)を参照して入力信号Gに量子化処理を施して1ビット出力信号Hを生成している。すなわち、この1ビット量子化器43は、入力信号Gに対して0を境に、0以上と0未満で2値のレベルを判定し、量子化処理を施している。
図7には、図6に示したΔΣ変調装置を含む、積分器を複数備えたΔΣ変調装置80の構成を示す。この図7において前記図6のΔΣ変調装置を構成した加算器41、積分器42及び1ビット量子化器43は、加算器75と、積分器76及び1ビット量子化器78に符号を代えている。また、1ビット量子化器78からの負帰還経路にはビット長変換器79を配している。
この図7に示すΔΣ変調装置80は、5個の積分器63,66,69,73及び76を備えた5次のΔΣ変調装置である。また、この5次のΔΣ変調装置は、5個目の積分器76の出力を減衰してから再量子化して前の積分器73の入力に帰還する局部帰還ループ部81を備える。局部帰還ループ部81は、局部帰還減衰器77と、ノイズシェーパ82とを備える。
また、このΔΣ変調装置80は、前記5個の積分器63,66,69,73及び76の前で、各積分器に多ビットのデジタル信号を加算する加算器62,65,68,72及び75と、前記5個の積分器の内の1番目〜4番目の積分器63,66,69及び73の後ろに接続される4個の減衰器64,67,71及び74と、5番目の積分器76の後ろに接続される、前記1ビット量子化器3と同様の1ビット量子化器78と、この1ビット量子化器78からの1ビットデジタル信号のビット長を多ビットに変換し、5個の積分器63,66,69,73及び76の入力となるように加算器62,65,68,72及び75に供給するビット長変換器79とを備える。
1番目の積分器63は、入力端子61及び加算器62を介して供給された入力信号を積分する。このため、図6に示した加算器42aと同様の加算器からの出力を、遅延器42bと同様の遅延器で遅延し、前記加算器に戻す構成をとる。2番目〜5番目の積分器66,69,73及び76も同様である。
5番目の積分器76からの積分出力は1ビット量子化器78及び局部帰還ループ部81の局部帰還減衰器77に供給される。
1ビット量子化器78は、量子化処理にて参照する閾値レベルを時間軸に対して固定とした量子化器である。1ビット出力信号は、出力端子83から導出されると共に、ビット長変換器79に供給される。
ビット長変換器79は、前記1ビット量子化器78からの1ビット信号を多ビットのデジタル信号に変換し、加算器62,65,68,72及び75に負符号を付して帰還する。したがって、各加算器62,65,68,72及び75は、入力端子61及び前段の各積分器63,66,69,73から減衰器64,67,71,74を介して供給される信号からビット長変換器78の出力信号を減算する。
減衰器64,67,71及び74は、係数K1,K2,K3及びK4を用いて、積分器63,66,69及び73の各積分出力を減衰し、加算器65,68,72及び75に供給する。
局部帰還ループ部81の局部帰還減衰器77は、5番目の積分器76からの積分出力を係数Kfを用いて減衰し、ノイズシェーパ82に供給する。
ノイズシェーパ82は、図示しないが、加算器と遅延器とマルチビット量子化器とを備えてなり、局部帰還減衰器77からの減衰出力をデータ語長の切り捨てを発生させることなく再量子化する。具体的には、再量子化誤差を可聴帯域外へシフトする。
したがって、このΔΣ変調装置80は、局部帰還ループを備えるので、高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子25を介してディジタルオーディオ信号処理装置21の出力とされる。
以上説明した実施例1−1のディジタルオーディオ信号処理装置21は、可聴帯域外の高域の信号をディザ発生部14によって発生させ、正規化部161のBPフィルタ特性発生部32で帯域制限し、かつPCM信号のパワーでそのパワーを正規化してから、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図5に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越える信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
この実施例1−1のディジタルオーディオ信号処理装置21において、オーバーサンプリング処理部21では2倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部23では、32倍オーバーサンプリング処理を行ったが、オーバーサンプリング処理部21では4倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部23では、16倍オーバーサンプリング処理を行ってもよい。
その時のBPフィルタ特性発生部32でのBPフィルタ特性を図8に示す。また、ΔΣ変調器24への入力信号を図9に示す。すなわち、BPフィルタ特性発生部32は、オーバーサンプリング処理部21が4倍オーバーサンプリング処理を行うので、図8に示すように、20kHz過ぎから80kHz手前までを0dBで通過させるためのフィルタ特性を発生する。そして、フィルタ係数算出部33は、BPフィルタ特性発生部32で発生された前記フィルタ特性を、フィルタ処理部34で使うフィルタ係数に変換する。
このフィルタ係数に基づいて、フィルタ処理部34は、ディザ発生部14からのディザ信号にフィルタ処理を施し、フィルタ処理出力をゲイン調整部35に供給する。
ゲイン調整部35は、フィルタ処理部34のフィルタ処理出力であるディザ信号のパワーを、前記ゲイン算出部31からの係数を用いて前記PCM信号の18KHz〜20KHzまでの範囲の平均パワーと等しくし、加算器22に送る。
加算器22は、ゲイン調整部35でゲイン調整されたディザ信号と、オーバーサンプリング処理部21で4倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、スペクトル上で見ると、図9に示すように周波数スペクトルが滑らかにつながるようになる。すなわち、ディザ発生部14のディザ信号にフィルタ処理部34でフィルタ処理を施して得られたフィルタ処理出力46にゲイン調整部35でパワー調整した後のディザ信号47は、前記入力端子11から入力されたPCM信号に周波数分析部12で周波数分析処理を施した結果45に滑らかにつながっている。
そして、図9に周波数特性を示した加算器22の加算出力は、オーバーサンプリング処理部23により、16×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部24には、前記図9に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
このようにオーバーサンプリング処理部21で4倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部23で16倍オーバーサンプリング処理を行った場合、加算器22は、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図9に示したような80kHzに及ぶパワー調整した後のディザ信号47を付加することになる。よってその加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調した1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域をはるかに越える信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
次に、第1の実施の形態の第2実施例(以下、実施例1−2と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置22について図10〜図15を用いて説明する。先ず、構成について前記実施例1−1と異なる点を中心に説明する。この実施例1−2のディジタルオーディオ信号処理装置22の正規化部162は、図3の正規化部161を構成したゲイン算出部31とバンドパス(BP)フィルタ特性発生部32とフィルタ係数算出部33とフィルタ処理部34とゲイン調整部35の他に、さらに1/fフィルタ特性発生部51と、フィルタ係数算出部52と、フィルタ処理部53とを備えている。
次に、実施例1−2のディジタルオーディオ信号処理装置22の正規化部162の動作について説明する。1/fフィルタ特性発生部51は、図11に示すように、周波数が高くなるほど振幅[GAIN]が小さくなり、かつ20kHz付近で振幅がフィルタ処理の前後で等しくなるようなフィルタ特性を発生する。
フィルタ係数算出部52は、1/fフィルタ特性発生部51で発生されたフィルタ特性を、フィルタ処理部53で使う1/fフィルタ係数に変換する。
フィルタ処理部53は、ディザ発生部14からのディザ信号を、フィルタ係数算出部52で算出された前記1/fフィルタ係数に基づいてフィルタ処理し、フィルタ処理出力をフィルタ処理部34に供給する。
よって、フィルタ処理部34は、フィルタ処理部53にて前記1/fフィルタ係数に基づいてフィルタ処理されたディザ信号に、フィルタ係数算出部33にて算出されたBPF用フィルタ係数を用いたフィルタ処理を施し、図12に示すようなBPFフィルタ出力を生成し、ゲイン調整部35に供給する。
ゲイン調整部35は、フィルタ処理部34のフィルタ処理出力(図11)であるディザ信号のパワーを、前記ゲイン算出部31からの係数を用いて前記PCM信号の18KHz〜20KHzまでの範囲の平均パワーと等しくし、加算器22に送る。
加算器22は、ゲイン調整部35でゲイン調整されたディザ信号と、オーバーサンプリング処理部21で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、スペクトル上で見ると、図13に示すように周波数スペクトルが滑らかにつながるようになる。
すなわち、ディザ発生部14のディザ信号にフィルタ処理部34でフィルタ処理を施して得られたフィルタ処理出力57にゲイン調整部35でパワー調整した後のディザ信号58は、前記入力端子11から入力されたPCM信号に周波数分析部12で周波数分析処理を施した結果56に滑らかにつながる。
そして、図13に周波数特性を示した加算器22の加算出力は、オーバーサンプリング処理部23により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部24には、前記図13に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部24は、前記図6に示す基本的な構成を採る。実際には、図7に示すような5次の構成であり、高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子25を介してディジタルオーディオ信号処理装置22の出力とされる。
以上説明した実施例1−2のディジタルオーディオ信号処理装置22は、可聴帯域外の高域の信号をディザ発生部14によって発生させ、正規化部162のBPフィルタ特性発生部32と1/fフィルタ特性発生部で発生したそれぞれの特性に基づいて周波数特性を制限してからパワーを正規化し、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図13に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつ傾きが1/fに調整された信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
ところで、この正規化部162では、回路規模が大きくなり、演算処理時間もかかるフィルタ処理部を二つ(フィルタ処理部53及び34)も用いているが、図14に示すように、一つのフィルタ処理部34のみにすることも可能である。
すなわち、フィルタ係数算出部52とフィルタ係数算出部33のフィルタ係数算出結果をフィルタ係数合成部91にて合成してから、フィルタ処理部34に供給する。これにより回路規模を小さくすることができるし、演算処理時間を短縮することができる。
この図14の構成を採った場合の正規化部162の要部の動作は、以下の通りである。フィルタ係数合成部91は、フィルタ係数算出部52で算出された前記1/fフィルタ係数とフィルタ係数算出部33で算出された前記BPF用フィルタ係数とを合成する。フィルタ処理部34は、ディザ発生部14からのディザ信号に、フィルタ係数合成部91からの合成フィルタ係数を用いたフィルタ処理を施す。そして、フィルタ処理出力をゲイン調整部35に供給する。
また、正規化部162では、図15に示すように、1/fフィルタ特性発生部51のフィルタ特性と、BPフィルタ特性発生部32のフィルタ特性をフィルタ特性合成部92で合成し、その合成フィルタ特性に従ったフィルタ係数をフィルタ係数算出部33で計算するようにして、フィルタ処理部を一つ(フィルタ処理部34)にすることもできる。
この図15の構成を採った場合の正規化部162の要部の動作は、以下の通りである。フィルタ特性合成部92は、1/fフィルタ特性発生部51のフィルタ特性と、BPフィルタ特性発生部32のフィルタ特性を合成し、合成フィルタ特性をフィルタ係数算出部33に供給する。
フィルタ係数算出部33は、前記合成フィルタ特性を、フィルタ処理部34で使うフィルタ係数に変換する。フィルタ処理部34は、ディザ発生部14からのディザ信号に、フィルタ係数算出部33で算出したフィルタ係数を用いたフィルタ処理を施す。そして、フィルタ処理出力をゲイン調整部35に供給する。
次に、第1の実施の形態の第3実施例(以下、実施例1−3と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置23について図16〜図20を用いて説明する。先ず、構成について前記実施例1−1又は1−2と異なる点を中心に説明する。この実施例1−3のディジタルオーディオ信号処理装置23の正規化部163は、図10に示した正規化部162を変形した図15に示す要部の構成にある、1/fフィルタ特性発生部51をF特傾き算出部93とフィルタ特性発生部94に置き換えたものである。
すなわち、このディジタルオーディオ信号処理装置23の正規化部163は、図3の正規化部161を構成したゲイン算出部31とバンドパス(BP)フィルタ特性発生部32とフィルタ係数算出部33とフィルタ処理部34とゲイン調整部35の他に、さらにF特傾き算出部93と、フィルタ特性発生部94と、フィルタ特性合成部92とを備えている。
次に、実施例1−3のディジタルオーディオ信号処理装置23の正規化部163の動作について説明する。F特傾き算出部93は、周波数分析部12での周波数分析により得られた前記PCM信号の周波数分析結果の、図17に示す例えば10kHzから20kHzまでの周波数特性101の傾き102を算出する。
フィルタ特性発生部94は、前記周波数特性101の傾き102から図18に示すような、周波数が高くなるほど振幅が下がるフィルタ特性を発生させ、フィルタ特性合成部92に供給する。
フィルタ特性合成部92は、前記フィルタ特性発生部94で発生された図18に示すフィルタ特性と、BPFフィルタ特性発生部32で発生された前記図4に示すフィルタ特性とを合成して合成フィルタ特性をフィルタ係数算出部33に供給する。
フィルタ係数算出部33は、前記合成フィルタ特性を、フィルタ処理部34で使うフィルタ係数に変換する。フィルタ処理部34は、ディザ発生部14からのディザ信号に、フィルタ係数算出部33で算出したフィルタ係数を用いたフィルタ処理を施す。そして、図19に示すようなフィルタ処理出力をゲイン調整部35に供給する。
ゲイン調整部35は、フィルタ処理部34のフィルタ処理出力(図19)であるディザ信号のパワーを、前記ゲイン算出部31からの係数を用いて前記PCM信号の18KHz〜20KHzまでの範囲の平均パワーと等しくし、加算器22に送る。
加算器22は、ゲイン調整部35でパワーがゲイン調整されたディザ信号と、オーバーサンプリング処理部21で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、スペクトル上で見ると、図20に示すように周波数スペクトルが滑らかにつながるようになる。
すなわち、ディザ発生部14のディザ信号にフィルタ処理部34でフィルタ処理を施して得られたフィルタ処理出力104にゲイン調整部35でパワー調整した後のディザ信号105は、前記入力端子11から入力されたPCM信号に周波数分析部12で周波数分析処理を施した結果103に滑らかにつながる。
ΔΣ変調部24は、前述したように、高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子25を介してディジタルオーディオ信号処理装置23の出力とされる。
以上説明した実施例1−3のディジタルオーディオ信号処理装置23は、可聴帯域外の高域の信号をディザ発生部14によって発生させ、正規化部163のBPフィルタ特性発生部32とF特傾き算出部93及びフィルタ特性発生部94によって周波数特性を制限し、パワーを正規化してから、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図20に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつ傾きがF特傾き算出部93によって算出された信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
以上、実施例1−1、1−2、1−3の各説明からも明かなように、第1の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1は、可聴帯域外の高域の信号をディザ発生部14によって発生させ、オーバーサンプリングしたPCM信号に加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成し、この1ビットオーディオ信号を記録媒体に記録している。各実施例はその正規化部161、162、163内の各フィルタ処理部により、オーバーサンプリングしたPCM信号に加算する、可聴帯域外の高域の信号の傾きや、帯域を異ならせ、さらにパワーを調整している。いずれの場合も、聴覚的な音像のそれぞれの奥行き感が前後に広がり、ステレオ感も左右に広がり、音の分離が良くなる。微妙な音も再現され、例えばホールなどのバックグランドノイズも聞き取れるようになるため雰囲気がよりよくなる。また、脳波測定を行うとα波の発生が確認され、心地良さが増すという結果も得られた。
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態も、図1に示すような高速1ビット・オーディオ信号生成システム1であり、ディジタルオーディオ信号処理装置110を備える。
ディジタルオーディオ信号処理装置110の構成を図21に示す。このディジタルオーディオ信号処理装置110は、入力端子111から入力された、PCM信号に周波数分析処理を施す周波数分析部112と、周波数分析部112の周波数分析結果から所定帯域の平均ノイズレベルを算出するパワー算出部113とを備える。
また、ディジタルオーディオ信号処理装置110は、前記PCM信号に加算する可聴帯域外の高域信号のスペクトルを発生するスペクトル発生部114と、このスペクトル発生部114にて発生した可聴帯域外の高域信号のスペクトルのパワーを算出するパワー算出部115と、パワー算出部115にて算出されたスペクトルのパワーを正規化し、かつスペクトルを時間波形信号に合成する正規化&波形合成部116とを備える。
また、ディジタルオーディオ信号処理装置110は、前記PCM信号をm(m≧2の正の整数)×fs(kHz)のサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部117と、オーバーサンプリング処理部117にてオーバーサンプリングされたPCM信号と正規化&波形合成部116で正規化され、波形合成された可聴帯域外の高域信号を加算する加算器118と、加算器118の加算出力をn(n≧2の正の整数)×fs(kHz)のサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部119と、オーバーサンプリング処理部119にてオーバーサンプリングされたマルチビットディジタル信号を1ビットディジタル信号に変換し、出力端子121から外部に導出するΔΣ変調部120とを備える。
周波数分析部112は、入力端子111から入力されたPCM信号に、例えば高速フーリエ変換FFTを用いてDC〜22.05KHzの範囲で周波数分析処理を施し、その周波数分析結果をパワー算出部113に供給する。
パワー算出部113は、周波数分析部112より供給された周波数分析結果から、例えば18KHz〜20KHzの範囲の平均パワーを算出する。このパワー算出部113で計算された平均パワーは正規化&波形合成部116に送られる。
スペクトル発生部14は、周波数分析部112より供給された周波数分析結果から、前記PCM信号に加算する、PCM信号の周波数帯域を越える、可聴帯域外の高域信号のスペクトルをPCM信号に相関するように発生する。このスペクトル発生部14の詳細な構成及び動作については後述する。
パワー算出部115は、スペクトル発生部114にて発生されたスペクトルの、例えば23KHz〜25KHzまでの範囲のパワーを算出する。このパワー算出部115で計算されたスペクトルのパワーは正規化&波形合成部116に送られる。
正規化&波形合成部116は、パワー算出部113にて算出された平均パワーに基づいてパワー算出部115にて算出されたスペクトルのパワーを正規化し、かつスペクトルを時間波形信号に戻した出力を加算器118に供給する。この正規化&波形合成部116の詳細な構成及び動作についても後述する。
オーバーサンプリング処理部117は、入力端子111から入力された量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号を、2×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングし、オーバーサンプリング処理出力を加算器118に供給する。
加算器118は、正規化&波形合成部116からの正規化された時間波形信号出力とオーバーサンプリング処理部117からのオーバーサンプリング出力とを加算し、その加算出力をオーバーサンプリング処理部119に送る。
オーバーサンプリング処理部119は、前記加算出力を32×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングする。よって、このオーバーサンプリング処理部119からのオーバーサンプリング出力は、前記量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力となる。この64倍オーバーサンプリング出力は、ΔΣ変調部120に送られ、デルタシグマ変調処理が施されて1ビットオーディオ信号となり、出力端子121に供給される。
第2の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1が備えるディジタルオーディオ信号処理装置110は、スペクトル発生部114や、正規化&波形合成部116の構成を異ならせることにより、いくつかの実施例に分けることができる。以下に、ディジタル信号処理装置110のいくつかの実施例について説明する。
先ず、第2の実施の形態の第1実施例(以下、実施例2−1と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1101について図22〜図26を用いて説明する。この実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101のスペクトル発生部114は、図22に示すように主要スペクトル選択部123と、パワースペクトル算出部124と、倍音スペクトル発生部125と、スペクトル加算部126とを備えている。
パワースペクトル算出部124は、周波数分析部112による周波数分析結果から、例えば、図23に示すように、10kHz〜20kHzまでのパワー周波数スペクトルPFsを計算し、主要スペクトル選択部123に送る。ここでは説明のために簡略したスペクトルを示している。
主要スペクトル選択部123は、周波数分析部112による周波数分析結果と、パワースペクトル算出部124によるパワー周波数スペクトルPFsからパワー値の大きい周波数スペクトルを順番に選び出す。例えば、図24に示す(1)、(2)、(3)、(4)のように上位4つを選び出している。
倍音スペクトル発生部125は、主要スペクトル選択部123で選ばれた周波数スペクトル(1)、(2)、(3)、(4)の2n(n=1,2,3・・・)倍のスペクトル(1')、(2')、(3')、(4')を図24に示すように算出し、さらに、その周波数が20kHzを越えて40kHz以下のスペクトルを選択する。このため、(1')のスペクトルは、20kHzであり、選択の条件の20kHzを越えていないので選択されない。図25に示すように、スペクトル(2')、(3')、(4')が選択される。
なお、40kHz以下という制限は、オーバーサンプリング処理部117が2倍オーバーサンプリングであるため、サンプリング定理から導かれる。
倍音スペクトル発生部125で算出されたスペクトルは、スペクトル加算部126に供給される。スペクトル加算部126は、倍音スペクトル発生部125で算出されたスペクトルを周波数毎にそれぞれ加算する。スペクトル加算部126で加算されたスペクトルは、パワー算出部115及び正規化&波形合成部116に供給される。
パワー算出部115は、スペクトル加算部126からのスペクトルの、例えば23KHz〜25KHzまでの範囲のパワーを算出する。このパワー算出部115で計算されたスペクトルのパワーは正規化&波形合成部116に送られる。
また、この実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101の正規化&波形合成部116は、図22に示すように、ゲイン算出部127と、ゲイン調整部128と、波形合成部129とを備えている。
ゲイン算出部127は、パワー算出部113で算出されたPCM信号の18KHz〜20KHzの範囲の平均パワーに対してパワー算出部115で算出されたスペクトルの23kHzから25kHzまでのパワーを等しくする係数を算出する。このゲイン算出部127で算出された係数は、ゲイン調整部128に送られる。
ゲイン調整部128は、スペクトル加算部126で算出したスペクトルのパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
波形合成部129は、ゲイン調整部128でパワーが調整されたスペクトルに、例えば、逆FFT処理を施し、周波数スペクトルを時間波形に変換して、加算器118に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図26に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図26に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトル((2'')、(3'')、(4''))131に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル132は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果得られたパワー周波数スペクトル((1)、(2)、(3)、(4))130につながる。
そして、図26に周波数特性を示した加算器118の加算出力は、オーバーサンプリング処理部119により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部120には、前記図26に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部120は、前記図6に示す基本的な構成を採る。実際には、図7に示すような5次の構成であり、高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子121を介してディジタルオーディオ信号処理装置1101の出力とされる。
以上説明した実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号を元PCM信号の倍音を算出することにより発生させ、正規化&波形合成部116によって正規化してから波形合成し、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図26に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
この実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101において、オーバーサンプリング処理部117では2倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部119では、32倍オーバーサンプリング処理を行ったが、オーバーサンプリング処理部117では4倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部119では、16倍オーバーサンプリング処理を行ってもよい。また、オーバーサンプリング処理部117では8倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部119でも、8倍オーバーサンプリング処理を行ってもよい。
次に、第2の実施の形態の第2実施例(以下、実施例2−2と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1102について図27及び図28を用いて説明する。この実施例2−2のディジタルオーディオ信号処理装置1102は、実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101のスペクトル発生部114に、スペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えたものである。このディジタルオーディオ信号処理装置1102は、自身を一方のチャンネルch1とするとき、他方のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるものである。
スペクトル加算部126で加算されたスペクトルは、スペクトル加算部135及び出力端子136に供給される。
出力端子136は、スペクトル加算部126からのスペクトルを図28に示すように他方のチャンネルch2へ供給する。
掛け算器138に接続する出力端子139は、図28に示すように他方のチャンネルch2で生成されたスペクトルを受け取るためのものである。
また、掛け算器138に接続する入力端子137に供給される合成係数kは、他方のチャンネルch2のスペクトルを加算するときの加算率を表すものである。例えば、y=ch1+k*ch2とすると、まったく加算しないときは、k=0、50%加算のときは、k=1などとなる。
掛け算器138は、入力端子139に供給される他方のチャンネルch2からのスペクトルに、合成係数kをかけてスペクトル加算部135に送る。
スペクトル加算部135は、掛け算器138の掛け算結果と、スペクトル加算部126からの加算結果をさらに加算し、パワー算出部115及びゲイン調整部128に供給する。
パワー算出部115は、スペクトル加算部135からのスペクトルの、例えば23KHz〜25KHzまでの範囲のパワーを算出する。このパワー算出部115で計算されたスペクトルのパワーは正規化&波形合成部116のゲイン算出部127に送られる。
ゲイン調整部128は、スペクトル加算部135で算出したスペクトルのパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
波形合成部129以下、加算器118、オーバーサンプリング処理部119及びΔΣ変調部120の動作は前記図22のものと同様であるのでここでは説明を省略する。
したがって、この実施例2−2のディジタルオーディオ信号処理装置1102は、自身を一方のチャンネルch1とするとき、他方のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるので、スピーカや、ヘッドホンなどに接続した場合に、音場の広がり感を制御できるようになる。
また、実施例2−2では、二つのチャンネルの場合を示したが、スペクトル加算部135と掛け算器138を相手チャンネルの数だけ付け加えることにより、2チャンネルを越える場合にでも対応できる。
また、合成係数kは、固定値であるが、周波数分析部112による周波数分析結果を用いて、入力信号のスペクトルによって変化させてもよい。
次に、第2の実施の形態の第3実施例(以下、実施例2−3と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1103について図29〜図32を用いて説明する。この実施例2−3のディジタルオーディオ信号処理装置1103は、実施例2−1のディジタルオーディオ信号処理装置1101の正規化&波形合成部116に、1/f特性発生部140と掛け算器141とを新たに加えたものである。
1/f特性発生部140は、図30に示すように、周波数が高くなるほどに振幅[GAIN]が小さくなるような特性であり、かつ20kHzで振幅が処理の前後で等しくなるようにしている1/f特性を発生する。
掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに前記1/f特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。このときの掛け算器141のスペクトル出力を図31に示す。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図32に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図32に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器138で処理した出力143に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル144は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果142につながる。
そして、図32に周波数特性を示した加算器118の加算出力は、オーバーサンプリング処理部119により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部120には、前記図32に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部120は、前述したように高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子121を介してディジタルオーディオ信号処理装置1103の出力とされる。
以上説明した実施例2−3のディジタルオーディオ信号処理装置1103は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号のスペクトルを元PCM信号の倍音を算出することにより発生させ、正規化&波形合成部116によって1/f特性にしたがって周波数特性を制限し、そのパワーを正規化してから波形合成して、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図32に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。
したがって、この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号が傾きを調整されて付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
また、このディジタルオーディオ信号処理装置1103のスペクトル発生部114に、前記実施例2−2で説明したようなスペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えて、他のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるようにしてもよい。
次に、第2の実施の形態の第4実施例(以下、実施例2−4と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1104について図33〜図37を用いて説明する。先ず、構成について前記実施例2−1又は2−3と異なる点を中心に説明する。この実施例2−4のディジタルオーディオ信号処理装置1104は、実施例2−3のディジタルオーディオ信号処理装置1103の正規化&波形合成部116にある、1/f特性発生部140をF特傾き算出部145と傾き特性発生部146に置き換えたものである。
すなわち、このディジタルオーディオ信号処理装置24の正規化&波形合成部116は、図22の正規化&波形合成部116を構成したゲイン算出部127とゲイン調整部128と波形合成部129の他に、さらにF特傾き算出部145と、傾き特性発生部146と、掛け算器141とを備えている。
F特傾き算出部145は、周波数分析部112での周波数分析により得られた前記PCM信号の周波数分析結果の、図34に示す例えば10kHzから20kHzまでの周波数特性147の傾き148を算出する。
傾き特性発生部146は、前記周波数特性147の傾き148から図35に示すような、周波数が高くなるほど振幅が下がるフィルタ特性を発生させ、掛け算器141に供給する。
掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに傾き特性発生部146で発生されたフィルタ特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。このときの掛け算器141のスペクトル出力を図36に示す。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図37に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図37に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器141で処理した出力151に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル152は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果150につながる。
そして、図37に周波数特性を示した加算器118の加算出力は、オーバーサンプリング処理部119により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部120には、前記図37に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部120は、前述したように高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子121を介してディジタルオーディオ信号処理装置1104の出力とされる。
以上説明した実施例2−4のディジタルオーディオ信号処理装置1103は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号のスペクトルを元PCM信号の倍音を算出することにより発生させ、正規化&波形合成部116によってF特傾き算出部145で算出した傾き特性にしたがって制限してからそのパワーを正規化し、そして時間波形信号を合成してから、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図37に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。
したがって、この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号がPCM信号に関連する傾きのまま付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
また、このディジタルオーディオ信号処理装置1104のスペクトル発生部114に、前記実施例2−2で説明したようなスペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えて、他のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるようにしてもよい。
次に、第2の実施の形態の第5実施例(以下、実施例2−5と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1105について図38〜図40を用いて説明する。先ず、構成について前記実施例2−4と異なる点を中心に説明する。この実施例2−5のディジタルオーディオ信号処理装置1105は、実施例2−4のディジタルオーディオ信号処理装置1104の正規化&波形合成部116に、新たに、傾き切り替え部153と、パワー算出部154と、パワー比較部155と、パワー値発生部157と、平坦特性発生部156とを加えた構成を採る。
パワー算出部154は、周波数分析部112による周波数分析の結果得られた周波数分析結果の出力から、例えば、18kHz〜20kHzのパワーを算出し、パワー比較部155に送る。
パワー値発生部157は、パワー比較部155における比較の基準となるパワー値を発生する。具体的には、量子化語長16bit及びPCM入力のS/N比を考慮して、例えば、-90dBを発生する。
パワー比較部155は、パワー算出部154におけるパワー算出結果を、パワー値発生部157からの-90dBと比較して比較結果を傾き切り替え部153に送る。ここでは、パワー値算出部154におけるパワー算出結果が、パワー値発生部157の-90dBより大きかった場合に“1”を、小さかった場合に“0”を出力する。
傾き切り替え部153は、パワー比較部155における比較結果が“1”の場合、図39に示すように、傾き特性発生部146で生成された傾き特性161を掛け算器141に送る。
すると、掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに傾き特性発生部146で発生されたフィルタ特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図39に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図39に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器141で処理した出力161に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル162は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果160につながる。
また、パワー比較部155における比較結果が“0”の場合は、図40に示すように、平坦特性発生部156の出力を掛け算器141に送る。
すると、掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに平坦特性発生部156で発生されたフィルタ特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図40に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図40に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器141で処理した出力164に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル165は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果163につながる。
なお、図40には比較のため、パワー比較部155でのパワー比較に基づいた傾きの切替を行わなかったときのゲイン調整部128からのスペクトル166を示す。
そして、図39及び図40に周波数特性を示した加算器118の加算出力は、オーバーサンプリング処理部119により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部120には、前記図39及び図40に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部120は、前述したように高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子121を介してディジタルオーディオ信号処理装置1105の出力とされる。
以上説明した実施例2−5のディジタルオーディオ信号処理装置1105は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号のスペクトルを元PCM信号の倍音を算出することにより発生させ、正規化&波形合成部116によって入力信号のダイナミックレンジを考慮したスペクトルにしてからそのパワーを正規化し、さらに時間波形信号に合成してから、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図39及び図40に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。
したがって、この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号がPCM信号に関連する傾きで、さらに入力信号のダイナミックレンジが考慮されて付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
また、このディジタルオーディオ信号処理装置1105のスペクトル発生部114に、前記実施例2−2で説明したようなスペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えて、他のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるようにしてもよい。
次に、第2の実施の形態の第6実施例(以下、実施例2−6と記す)となる、ディジタルオーディオ信号処理装置1106について図41〜図43を用いて説明する。先ず、構成について前記実施例2−4と異なる点を中心に説明する。この実施例2−6のディジタルオーディオ信号処理装置1106は、実施例2−4のディジタルオーディオ信号処理装置1104の正規化&波形合成部116に、新たに、パワー算出部154と、傾き係数発生部171と、掛け算器172とを追加した。
パワー算出部154は、周波数分析部112による周波数分析の結果得られた周波数分析結果の出力から、例えば、18kHz〜20kHzのパワーを算出し、傾き係数発生部171に送る。
傾き係数発生部171は、パワー算出部154からのパワーの値により、“0”から“1”までの連続した値を傾き係数として出力する。パワーの値が小さいときは、より“0”に近い値を出力し、パワーの値が大きいときは、より“1”に近い値を出力し、掛け算器172に送る。
掛け算器172は、f特傾き算出部145で算出した前記f特傾き値に、前記傾き係数を掛けて、傾き特性発生部146に送る。
傾き特性発生部146は、掛け算器172からの掛け算出力に応じた傾き特性を発生し、掛け算器141に供給する。
パワー算出部154のパワー値が大きいとき、傾き係数発生部171は“1”に近い傾き係数を発生する。すると、掛け算器172は、f特傾き算出部145で生成された傾きをそのまま、傾き特性発生部146に出力する。
傾き特性発生部146は、前記傾きに応じたフィルタ特性(傾き特性)を発生し、掛け算器141に供給する。
掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに傾き特性発生部146で発生されたフィルタ特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図42に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図42に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器141で処理した出力176に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル177は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果175につながる。
また、パワー算出部154のパワー値が小さいとき、傾き係数発生部171は“0”に近い傾き係数を発生する。すると、掛け算器172は、f特傾き算出部145で生成された傾きに0に近い値を掛けることになり、傾き特性発生部146は平坦に近い周波数特性を発生させる。
すると、掛け算器141は、スペクトル加算部126で生成されたスペクトルに、傾き特性発生部146で発生された平坦に近い周波数特性を掛け算し、ゲイン調整部128に送る。
ゲイン調整部128は、掛け算器141のスペクトル出力のパワーを、前記ゲイン算出部127からの係数を用いて調整し、波形合成部129に送る。
加算器118は、正規化&波形合成部116の波形合成部129で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部117で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図43に示すように、周波数スペクトルがつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図43に示すように、スペクトル加算部126で生成したスペクトルを掛け算器141で処理した出力179に、ゲイン調整部128でパワー調整した後のスペクトル180は、前記入力端子111から入力されたPCM信号に周波数分析部112で周波数分析処理を施した結果178につながる。
なお、図43には比較のため、傾き係数発生部171での傾き係数発生を使わなかったときのゲイン調整部128からのスペクトル181を示す。
そして、図42及び図43に周波数特性を示した加算器118の加算出力は、オーバーサンプリング処理部119により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部120には、前記図42及び図43に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部120は、前述したように高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子121を介してディジタルオーディオ信号処理装置1106の出力とされる。
以上説明した実施例2−6のディジタルオーディオ信号処理装置1106は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号のスペクトルを元PCM信号の倍音を算出することにより発生させ、正規化&波形合成部116によって入力信号の周波数特性、ダイナミックレンジを考慮したスペクトルに制限してから、そのパワーを正規化し、そして時間波形信号に合成してから、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図42及び図43に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。
したがって、この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号がPCM信号に関連する傾きで、さらに入力信号の周波数特性、ダイナミックレンジが考慮されて付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
また、このディジタルオーディオ信号処理装置1106のスペクトル発生部114に、前記実施例2−2で説明したようなスペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えて、他のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるようにしてもよい。
以上、実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6の各説明からも明かなように、第2の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1で用いるディジタル信号処理装置は、可聴帯域外の高域の信号を入力信号に相関を持たせてスペクトル発生部114、及び正規化&波形合成部116によって発生させ、オーバーサンプリングしたPCM信号に加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。
これにより、第2の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1は、聴覚的な音像のそれぞれの奥行き感が前後に広がり、ステレオ感も左右に広がり、音の分離が良くなる1ビットオーディオ信号を生成し、記録媒体に記録することができる。また、この1ビットオーディオ信号によれば、微妙な音も再現され、例えばホールなどのバックグランドノイズも聞き取れるようになるため雰囲気がよりよくなる。また、脳波測定を行うとα波の発生が確認され、心地良さが増すという結果も得られた。
次に、第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態も、図1に示すような高速1ビット・オーディオ信号生成システム1であり、ディジタルオーディオ信号処理装置190を備える。
ディジタルオーディオ信号処理装置190の構成を図44に示す。このディジタルオーディオ信号処理装置190は、入力端子191から入力された、PCM信号に周波数分析処理を施す周波数分析部192と、周波数分析部192の周波数分析結果からPCM信号に加算する信号を生成する可聴帯域外高域信号生成部193とを備える。
また、ディジタルオーディオ信号処理装置190は、前記PCM信号をm×fsのサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部194と、オーバーサンプリング処理部194にてオーバーサンプリングされたPCM信号と可聴帯域外高域信号生成部193で生成された可聴帯域外高域信号を加算する加算器195と、加算器195の加算出力をn×fsのサンプリング周波数でオーバーサンプリングするオーバーサンプリング処理部196と、オーバーサンプリング処理部196にてオーバーサンプリングされたマルチビットディジタル信号を1ビットディジタル信号に変換し、出力端子198から外部に導出するΔΣ変調部197とを備える。
周波数分析部192は、入力端子191から入力されたPCM信号に、例えば高速フーリエ変換FFTを用いてDC〜22.05KHzの範囲で周波数分析処理を施し、その周波数分析結果を可聴帯域外高域信号生成部193に供給する。
可聴帯域外高域信号生成部193は、PCM信号に加算するための可聴帯域外の高域の信号をPCM信号に相関を持たせて生成し、加算器195に供給する。
オーバーサンプリング処理部194は、入力端子191から入力された量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号を、2×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングし、オーバーサンプリング処理出力を加算器195に供給する。
加算器195は、可聴帯域外高域信号生成部193からの可聴帯域外高域信号とオーバーサンプリング処理部194からのオーバーサンプリング出力とを加算し、その加算出力をオーバーサンプリング処理部196に送る。
オーバーサンプリング処理部196は、前記加算出力を32×44.1kHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングする。よって、このオーバーサンプリング処理部196からのオーバーサンプリング出力は、前記量子化周波数44.1kHz、量子化語長16bitのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力となる。この64倍オーバーサンプリング出力は、ΔΣ変調部197に送られ、デルタシグマ変調処理が施されて1ビットオーディオ信号となり、出力端子198に供給される。
この第3の実施の形態の1ビットオーディオ信号生成システム1に用いられるディジタルオーディオ信号処理装置190は、可聴帯域外高域信号生成部193を、図45に示す構成例とする。図45に示す構成例の可聴帯域外高域信号生成部193を備えるディジタルオーディオ信号処理装置190の具体例(1901)を実施例3−1として以下に説明する。
この実施例3−1のディジタルオーディオ信号処理装置1901は、可聴帯域外高域信号生成部193を、図45に示すように、f特傾き算出部201と、ゲイン算出部202と、ゲイン調整部203と、スペクトルのコピー部204と、スペクトル加算部205と、波形合成部206とから構成している。
スペクトルコピー部204は、周波数分析部192からの図46に示す周波数分析結果210から、例えば、15kHz〜20kHzまで(図46に斜線で示す)のスペクトルをコピーする。そして、20kHzから25kHzと、25kHzから30kHzと、30kHzから35kHzと、35kHzから40kHzとのそれぞれにコピー出力を行い、各ブロックよりなるスペクトル211を作り出り、ゲイン調整部203に送る。
f特傾き算出部201は、図47に示すように、周波数分析部192の周波数分析結果212から、スペクトルコピー部204でコピーした15kHz〜20kHzまでのスペクトル(斜線)の傾き213を算出し、ゲイン算出部202に送る。
ゲイン算出部202は、図48に示すように、f特傾き算出部201にて前記周波数分析結果214から算出した傾きから、スペクトルコピー部204でのコピーにより生成された各ブロックのスペクトル211に対応したそれぞれのゲイン215を算出し、ゲイン調整部203に送る。
ゲイン調整部203は、ゲイン算出部202で算出したゲインに基づいて、スペクトルのコピー部204で生成した各ブロック毎のゲイン215を調整し、図49に示すように、ゲイン調整された各ブロック毎のスペクトル216を生成し、スペクトル加算部205に送る。
スペクトル加算部205は、前記各ブロック毎のスペクトル216を周波数毎にそれぞれ加算し、波形合成部206に供給する。
波形合成部206は、スペクトル加算部205で生成されたスペクトルに、例えば、逆FFT処理を施し、周波数スペクトルを時間波形に変換して、加算器195に送る。
加算器195は、可聴帯域外高域信号生成部193の波形合成部206で生成された時間波形と、オーバーサンプリング処理部194で2倍オーバーサンプリング処理されたPCM信号とを加算する。これにより、図50に示すように、周波数スペクトル217がつながる。
すなわち、周波数スペクトル上で見ると、図50に示すように、波形合成部206で生成した各ブロック毎のスペクトルは、前記入力端子191から入力されたPCM信号につながる。
そして、図50に周波数特性217を示した加算器195の加算出力は、オーバーサンプリング処理部196により、32×44.1KHzのサンプリング周波数でオーバーサンプリングされる。これによりΔΣ変調部197には、前記図50に示した周波数特性で、サンプリング周波数が44.1KHzのPCM信号の64倍オーバーサンプリング出力が供給される。
ΔΣ変調部197は、前記図6に示す基本的な構成を採る。実際には、図7に示すような5次の構成であり、高音質の1ビットオーディオ信号を出力することができる。この高音質の1ビットオーディオ信号は出力端子198を介してディジタルオーディオ信号処理装置1901の出力とされる。
以上説明した実施例3−1のディジタルオーディオ信号処理装置1901は、元のPCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号を元PCM信号のf特から算出した傾きを基に生成し、オーバーサンプリングしたPCM信号に、図50に示すように滑らかにつながるように加算し、その加算出力をさらにオーバーサンプリングした後に、ΔΣ変調して1ビットオーディオ信号を生成している。この1ビットオーディオ信号には、PCM信号の周波数帯域を越え、かつPCM信号に相関のある信号が付加されているので、聴覚的な音像の奥行き感が前後に広がるような自然な感じを出すことができる。
この実施例3−1のディジタルオーディオ信号処理装置1901において、オーバーサンプリング処理部194では2倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部196では、32倍オーバーサンプリング処理を行ったが、オーバーサンプリング処理部194では4倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部196では、16倍オーバーサンプリング処理を行ってもよい。また、オーバーサンプリング処理部194では8倍オーバーサンプリング処理を、オーバーサンプリング処理部196でも、8倍オーバーサンプリング処理を行ってもよい。
また、このディジタルオーディオ信号処理装置1901の可聴帯域外高域信号生成部193に、前記実施例2−2で説明したようなスペクトル加算部135と、掛け算器138と、出力端子136と、入力端子139と、合成係数kの入力端子137とを新たに加えて、他のチャンネルch2で生成したスペクトル情報を合成し、合成率を制御することにより、PCM信号に付加する高域信号のチャンネル間の分離度を制御できるようにしてもよい。
したがって、実施例3−1の説明からも明かなように、第3の実施の形態のディジタルオーディオ信号処理装置190は、可聴帯域外高域信号生成部193を備え、元のPCM信号の周波数分析結果をコピーすることによって、PCM信号には含まれない可聴帯域外の高域の信号を発生させ、元の信号に加算してからΔΣ変調している。これにより、第3の実施の形態は、聴覚的な音像のそれぞれの奥行き感が前後に広がり、ステレオ感も左右に広がり、音の分離が良くなる1ビットオーディオ信号を生成することができる。また、この1ビットオーディオ信号によれば、微妙な音も再現され、例えばホールなどのバックグランドノイズも聞き取れるようになるため雰囲気がよりよくなる。また、脳波測定を行うとα波の発生が確認され、心地良さが増すという結果も得られた。
1 高速1ビット・オーディオ信号生成システム、2,110,190 ディジタルオーディオ信号処理装置、12,112,192 周波数分析部、13,113 パワー算出部、14 ディザ信号発生部、15,115 パワー算出部、16 正規化部、21,117,194 オーバーサンプリング処理部、22,118,195 加算器、23,119,196 オーバーサンプリング処理部、24,120,197 ΔΣ変調部、114 スペクトル発生部、116 正規化&波形合成部、193 可聴帯域外高域信号生成部