JP2005148672A - 光学機器の鏡筒用シール構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】工程数の減少によるコストの低減を図り、しかも接着剤からのアウトガスによる悪影響を及ぼすおそれのない鏡筒用シール構造を提供する。
【解決手段】光軸O方向へ互いに進退可能かつ互いに同心的に組み合わされた複数の鏡筒1,2間の隙間Gが、ゴム状弾性材料からなるシールリング3で密閉され、このシールリング3が、内側鏡筒2の外周面2aに円周方向へ連続して形成された取付溝21内に所要の締め代をもって非接着で密嵌された基部31と、この基部31から突出して外側鏡筒1の内周面1aに摺動可能に密接されたシールリップ32からなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、カメラ、ビデオカメラ、顕微鏡等の光学機器において、光軸方向に進退可能に設けられた複数の鏡筒の隙間へ、有害光や水滴、ダスト等が侵入するのを防止するための鏡筒用シール構造に関する。
デジタルカメラ等のズーム鏡筒は、径寸法の異なる複数の鏡筒が互いに同心的に組み合わされた入れ子式の伸縮構造を有し、その内周に保持されたレンズ群の光軸方向へ、ヘリコイド機構によって互いに進退可能となっている。そして、この種のズーム鏡筒においては、相対的に外周側の外側鏡筒と相対的に内周側の内側鏡筒との間隙から僅かな有害光が侵入して撮像を阻害したり、水や異物が侵入して内部機構に悪影響を与えることがないように、外側鏡筒と内側鏡筒との間には鏡筒用シールが設けられている。そして、このような鏡筒用シールの典型的な従来技術としては、例えば下記の特許文献1及び特許文献2に記載されたようなものが公知である。
特開2001−42407 特開平5−241227
図3は、特許文献1と同様の従来の鏡筒用シール、図4は、特許文献2と同様の他の従来の鏡筒用シールを、それぞれ鏡筒の一部と共に光軸を通る平面で切断して示す部分断面図である。これら図3及び図4において、参照符号101は外側鏡筒、102は内周にレンズ群103を取り付けた内側鏡筒で、これら外側鏡筒101と内側鏡筒102との間を遮光及び防滴・防塵等の目的で密閉する鏡筒用シールには、図3に示されるように、内周に単一のシールリップ104aを有するゴム状弾性材料からなるシールリング104や、あるいは図4に示されるような、内周に複数のシールリップ105a,105bを有するゴム状弾性材料からなるシールリング105が用いられる。
これらのシールリング104,105はいずれも、外周部104b,105cが、外側鏡筒101の内周面に形成したシールリング保持部101aに、接着剤106を介して接着されている。接着剤106は、シールリング104,105をシールリング保持部101aに定着する作用のほか、シールリング104,105とシールリング保持部101aの間を密封する作用を有する。
しかし、このような従来の技術によれば、シールリング104あるいは105を装着する際に、外側鏡筒101のシールリング保持部101aに対する接着面に接着剤106の塗布による接着処理が必要であり、工程が多いといった問題がある。また、シールリング104,105は、内側鏡筒102の外周面に対する摺動負荷による電池消耗を低減し、かつ防滴性を向上させるために、撥水性を有する低摩擦合成樹脂材料によるコーティングを行っているが、接着面にコーティング層が存在すると、接着剤106による接着強度が小さくなり、剥離を生じるおそれがある。したがって、低摩擦合成樹脂材料のコーティングに際しては、接着面にマスキングを施す必要があり、ここでも工程数の増大やマスキング治具が必要となることによるコストの増大を来していた。
更に、接着剤106を用いて接着処理を行った場合、接着剤106から揮発するアウトガスが、カメラ内部の電子部品に悪影響を及ぼすおそれがあった。
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、工程数の減少によるコストの低減を図り、しかも接着剤からのアウトガスによる悪影響を及ぼすおそれのない鏡筒用シール構造を提供することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造は、光軸方向へ互いに進退可能かつ互いに同心的に組み合わされた複数の鏡筒間の隙間が、シールリングで密閉され、このシールリングが、相対的に内周側の鏡筒の外周面及び相対的に外周側の鏡筒の内周面のうちの一方に円周方向へ連続して形成された取付溝内に非接着で密嵌された基部と、この基部から突出して前記内周側の鏡筒の外周面及び前記外周側の鏡筒の内周面のうちの他方に摺動可能に密接されたシールリップからなるものである。
また、請求項2の発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造は、請求項1に記載の構成において、取付溝が相対的に内周側の鏡筒の外周面に形成され、基部が前記取付溝の溝底面に所要の締め代をもって密接されたものである。
請求項1の発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造によれば、シールリングの基部が、取付溝内に非接着で密嵌されたものであるため、接着工程が不要になることによる工程数の減少、コーティングの際のマスキングが不要になることによるコストの低減が図られ、しかも接着剤からのアウトガスによる電子部品への悪影響を来すおそれもない。
請求項2の発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造によれば、シールリングの基部が、相対的に内周側の鏡筒の外周面に形成された取付溝内に所要の締め代をもって密嵌されたものであるため、請求項1による効果に加え、接着剤に依存することなく基部の密封性を確保することができる。
以下、本発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造の好ましい実施の形態において使用されるシールリングを、図示されていないレンズ群の光軸Oを通る平面で切断した未装着状態の部分断面図、図2は装着状態の部分断面図である。なお、図2における上側が、鏡筒の先端側(被写体側)に相当し、図2における下側が、カメラ本体側に相当する。
まず図2において、参照符号1は、例えばデジタルカメラ等のズーム鏡筒における外側鏡筒、2は内側鏡筒で、外側鏡筒1は請求項1に記載された相対的に外周側の鏡筒に相当し、内側鏡筒2は請求項1に記載された相対的に内周側の鏡筒に相当する。すなわち、ズーム鏡筒は、内周に図示されていない複数のレンズ群を保持し、外側鏡筒1及び内側鏡筒2を含む径寸法の異なる複数の鏡筒を、入れ子式に互いに同心的に組み合わせたもので、内側鏡筒2は、外側鏡筒1に対して、図示されていない駆動機構によって、前記レンズ群の光軸O方向へ進退可能であり、このような動作によって前記レンズ群の互いの距離を光軸O方向に変化させ、ズーミングあるいはフォーカシングを行うようになっている。
外側鏡筒1と内側鏡筒2との間の間隙Gを密閉して、有害光や、水、異物等の侵入を防止する鏡筒用シールには、シリコーンゴム等のゴム状弾性材料で環状に成形されたシールリング3が用いられている。内側鏡筒2の外周面2aには、円周方向に連続したシール取付溝21が形成されており、シールリング3は、前記シール取付溝21内に密着状態に固定される基部31と、この基部31から外周側へテーパ状に延びて、先端部の外周が外側鏡筒1の内周面1aに摺動可能に密接されるシールリップ32を有する。
内側鏡筒2の外周面2aに形成されたシール取付溝21は、シールリング3の基部31よりも僅かに光軸O方向の幅が大きい円筒面状の溝底面21aと、その両端から光軸Oとほぼ直交する平面状に立ち上がる内側面21b,21cとからなる。図1に示される未装着状態では、シールリング3の基部31の内周面31aの半径r3は、シール取付溝21の溝底面21aの半径r2より僅かに小径であり、すなわち図2に示される装着状態では、径方向へ少なくとも3%以上拡径された状態にあり、したがって、シールリング3の基部31の内周面31aは、所要の締め代をもってシール取付溝21の溝底面21aに密着している。
シールリング3は、シールリップ32の先端が、鏡筒先端側、言い換えれば被写体側を向くように、シール取付溝21に装着されており、シールリップ32の先端近傍の内周面に円周方向に連続して形成された突条部32a,32bが、外側鏡筒1の内周面1aに摺動可能に密接されている。また、この時の径方向のつぶし率は、図1における基部31の内径からシールリップ32の先端外径までの径方向寸法Lに対して少なくとも10%以上とするのが好ましい。
シールリング3の表面は、PTFE(polytetrafluoroethylene)等、撥水性を有する低摩擦材料からなる被覆層(不図示)でコーティングされている。この被覆層は、シールリップ32の摩擦係数を小さくして、摺動抵抗による電池消耗を低減し、かつ防滴に有効な撥水性を与えるものであり、特に、図1に破線によって示される領域、すなわちシールリップ32の表面や基部31の外周面に施されるが、それ以外の表面に及ぶ領域に、例えばシールリング3の表面全域に被覆層が形成されても問題はない。コーティングの材質としては、上述したPTFEのほか、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)も好適である。DLCは、PTFEと同等の低い摩擦係数を示すばかりでなく、シールリング3の変形による剥離を生じることがなく、PTFEよりも摩耗量が著しく小さい。
なお、シールリング3は内側鏡筒2と一体に光軸O方向へ進退するため、ズーミングによって内側鏡筒2が被写体側へ突出動作する際に、シールリング3が外側鏡筒1の先端内周から外部へはみ出してしまうことのないように、シール取付溝21は、外側鏡筒1に対する内側鏡筒2の最大突出範囲よりも内側(カメラ本体側)に形成されている。
以上のように構成された本形態の鏡筒用シール構造によれば、シールリング3は、基部31が、円周方向へ適当に引き伸ばされた状態で装着されることによる所要の締め代をもって、内側鏡筒2におけるシール取付溝21の溝底面21aに密着しているので、従来のように接着剤を用いてシール取付溝21に接着する必要がない。したがって、装着の際に接着剤の塗布工程などが不要であり、工程数の削減によるコスト低減を図ることができる。
また、上述のように、接着剤を塗布しないので、PTFEやDLC等の低摩擦材料のコーティングを行う際に、コーティング領域を、図1に破線で示される範囲に限定するためのマスキングを施す必要もなく、そのためのマスキング治具も不要となる。更には、接着剤から発生するアウトガスによるカメラ内部の電子部品への悪影響のおそれもなくなる。
図示されていない駆動機構によって、外側鏡筒1、内側鏡筒2を含む複数の鏡筒を入れ子式に互いに同心的に組み合わせたズーム鏡筒のズーミングあるいはフォーカシング動作を行った場合には、内側鏡筒2と一体に光軸O方向へ進退するシールリング3のシールリップ32の突条部32a,32bが、外側鏡筒1の内周面1aと摺動して密接状態を維持し、遮光及び防滴・防塵を行う。シールリップ32における外側鏡筒1との摺動面は、PTFEやDLC等の低摩擦材料からなる被覆層でコーティングされているので、摩擦係数が低く、このため摺動負荷による電池消耗を低減することができる。
雨天時の撮影においては、内側鏡筒2の外周面2aに降雨によって付着した水滴は、内側鏡筒2が外側鏡筒1内へ没入動作する際に、シールリング3によってそれより内部への侵入を阻止される。そして、シールリング3のシールリップ32は、先端が鏡筒の突出方向を向いていることに加え、その表面が被覆層による撥水性を有するため、水滴は自らの表面張力によって、容易にシールリップ32の内周へ侵入することができず、したがって優れた防滴・防塵性を発揮する。しかも、シールリップ32は汚れ等の付着しにくい外側鏡筒1の内周面1aと摺動するため、異物の噛み込み等が起こりにくく、優れた遮光・防滴・防塵性を維持することができる。
シールリング3の基部31は、所要の締め代をもって内側鏡筒2におけるシール取付溝21の溝底面21aに密着しているので、シール取付溝21に侵入した水滴等に対する優れた密封性を発揮する。また、基部31の内周面31aにもコーティングが施されていれば、これによって撥水性を与えられた基部31の内周面31aと、シール取付溝21の溝底面21aとの間に侵入しようとする水滴は、自らの表面張力によって容易に侵入することができず、したがって優れた防滴・防塵性を発揮する。
なお、外側鏡筒1が、更にその外周側の鏡筒に対して光軸O方向へ互いに進退可能に設けられている場合は、この外周側の鏡筒と外側鏡筒1との間を密閉する鏡筒用シールも図2と同様に構成し、あるいは内側鏡筒2の内周側に他の鏡筒が光軸O方向へ互いに進退可能に設けられている場合は、これら内側鏡筒2と他の鏡筒との間を密閉する鏡筒用シールも図2と同様に構成することができる。また、取付溝が外側鏡筒1の内周面1aに形成され、シールリング3の基部31が、この取付溝の溝底面に密接され、シールリップ32が内側鏡筒2の外周面2aに密接された場合も、同様に構成することが可能である。
また、図示の例においては、シールリング3に単一のシールリップ32を有するものを採用したが、複数のシールリップを備えるものであっても良い。
本発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造の好ましい実施の形態において使用されるシールリングを、図示されていないレンズ群の光軸Oを通る平面で切断した未装着状態の部分断面図である。 本発明に係る光学機器の鏡筒用シール構造の好ましい実施の形態を、図示されていないレンズ群の光軸Oを通る平面で切断した装着状態の部分断面図である。 従来の鏡筒用シールを鏡筒の一部と共に光軸を通る平面で切断して示す部分断面図である。 他の従来の鏡筒用シールを鏡筒の一部と共に光軸を通る平面で切断して示す部分断面図である。
符号の説明
1 外側鏡筒(相対的に外周側の鏡筒)
1a 内周面
2 内側鏡筒(相対的に内周側の鏡筒)
2a 外周面
21 シール取付溝
21a 溝底面
21b,21c 内側面
3 シールリング
31 基部
32 シールリップ
32a,32b 突条部
G 隙間
O 光軸

Claims (2)

  1. 光軸(O)方向へ互いに進退可能かつ互いに同心的に組み合わされた複数の鏡筒(1,2)間の隙間(G)が、シールリング(3)で密閉され、このシールリング(3)が、相対的に内周側の鏡筒(2)の外周面(2a)及び相対的に外周側の鏡筒(1)の内周面(1a)のうちの一方に円周方向へ連続して形成された取付溝(21)内に非接着で密嵌された基部(31)と、この基部(31)から突出して前記内周側の鏡筒(2)の外周面(2a)及び前記外周側の鏡筒(1)の内周面(1a)のうちの他方に摺動可能に密接されたシールリップ(32)からなることを特徴とする光学機器の鏡筒用シール構造。
  2. 取付溝(21)が相対的に内周側の鏡筒(2)の外周面(2a)に形成され、基部(31)が前記取付溝(21)の溝底面(21a)に所要の締め代をもって密接されたことを特徴とする請求項1に記載の光学機器の鏡筒用シール構造。
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