JP2005147947A - 磁気センサー用コア、磁気センサー及びフラックスゲート磁力計 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁力測定の更なる高精度化を達成できるフラックスゲート磁力計を提供する。
【解決手段】励磁コイルへの交番信号の通電により磁気検知材料からなるリングコア3を飽和磁界の領域まで励磁し、該リングコア3に誘起される飽和磁束密度の対称性を利用して磁束密度を計測する磁気センサーを備えたフラックスゲート磁力計において、リングコア3は、非磁性で、低熱膨張率の特性を備えた材料、例えばインコーネル合金によりリング状に形成されたベースリング1を基材にし、このベースリング1の外周部に形成した周溝1aに磁性材料であるナノ結晶化合金からなる磁性体部2を形成した。
【選択図】 図1
【解決手段】励磁コイルへの交番信号の通電により磁気検知材料からなるリングコア3を飽和磁界の領域まで励磁し、該リングコア3に誘起される飽和磁束密度の対称性を利用して磁束密度を計測する磁気センサーを備えたフラックスゲート磁力計において、リングコア3は、非磁性で、低熱膨張率の特性を備えた材料、例えばインコーネル合金によりリング状に形成されたベースリング1を基材にし、このベースリング1の外周部に形成した周溝1aに磁性材料であるナノ結晶化合金からなる磁性体部2を形成した。
【選択図】 図1
Description
本発明はフラックスゲート磁力計に用いられる磁気センサーに係り、特に磁気センサーに用いられるリングコアに関するものである。
フラックスゲート磁力計は、磁気センサーを構成する軟磁性材料製コアの飽和磁束密度の対称性を利用して磁束密度を計測するものとして知られている。この磁気センサーは、軟磁性材料製のコアを励磁する励磁コイルと、該コアに誘起する磁束密度の変化を検出する検出コイルとを有している。そして、計測装置の駆動回路から前記励磁コイルへ駆動電圧を印加することにより前記コアを飽和領域まで交番磁界で励磁し、コアに誘起する磁束密度の変化を前記検出コイルから検出する。
前記コアに励磁磁界以外の磁界が印加されていない状態では、誘起する磁束密度も対称であり、前記検出コイルには、励磁波の奇数時高調波しか発生しない。ここで、前記コアにセンサー外部から磁界が印加されると、励磁磁界に該外部磁界が加算されるため、等価的に該コアに加わる磁界に偏りが生じて磁束密度の変化が非対称となり、前記検出コイルに偶数時高調波が発生する。
フラックスゲート磁力計は、この偶数時高調波を検出することにより磁界を計測する。
すなわち、高透磁率を備えた物質は、非直線的磁気特性を有しており、図5(a)に示すヒステリシス(履歴曲線:B−Hカーブ)を有するとした場合、前記励磁コイルに図5(b)に示す1/Tとなる周波数でコアが十分に飽和する磁界HDで励振させると、コアは±HCで飽和し、誘導磁束Bは±BSとなる。
このコアに二次コイル(検出コイル)を巻回し、該検出コイルから見た磁束は図5(c)に示すように、±BSで飽和値となった波形となる。
そして、検出コイルに誘起される出力信号は、磁束の時間変化(dBR/dt)であって、図5(d)に示すように、±BSでパルス状に発生する。
ここで、図5(b)に示す状態で、外部磁場ΔHがなければ、図5(c)に示す波形は、B=0に対して正負の波形は対称となり、図5(d)における正負側のパルス出力周期が等しくなる。
これに対し、外部磁場ΔHが存在すると、ΔH+Hcosωtによって生じる誘導磁場は、図5(b)で励振する零点がずれるため、図5(c)に示すように、出力パルスの正側から負側までの時間がT/2(50%デューティ)でなくなる。
一方、コアを構成する磁気検出材料としてパーマロイが用いられ、コアの形状としては、リングコアと称されるリング形状に形成されたものが知られており、該コアに励磁コイルを巻回し、該コアを収容した非磁性材で形成された筐体に検出コイルを巻回している。このリングコアを用いた磁気センサーにあっては、励磁電力が小さく、大きな出力が得られるという特性を有している。
上記したリングコアを用いた磁気センサーは雑音が小さいため高精度の測定が可能であるが、さらなる高精度の測定を行うには限界があった。
図5(a)に示す履歴曲線は理想的なものであり、実際には磁界Hが飽和磁界に達し、これ以降の飽和磁界領域で誘導磁束の変化割合が緩やかになる。そして、この磁界Hが飽和磁界に達する点を原点(H=0)が判別できることにより、図5(b)に示すようにΔHを求めることができるのである。
しかし、磁力の測定について更なる高精度化を図ろうとする場合、この履歴曲線に生じる僅かなノイズが大きく影響する。すなわち、この履歴曲線に生じるノイズが上述した磁界H=0となる原点の判別を難しくしているため、測定精度の高精度化に限界があった。
この履歴曲線にノイズが生じる原因について、本発明者はコアを形成する磁性材料に着目し、該磁性材料中に存在する磁区の不均一性、磁歪等の磁気的物性に起因するのではないかと推察し、本発明を為すに至ったものである。
本願発明の目的は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、更なる磁力測定の高精度化を達成できる磁気センサー用コア、磁気センサー及びフラックスゲート磁力計を提供しようとするものである。
第1の発明は、請求項1に記載のように、磁気センサー用のコアにおいて、磁気検出材料にナノ結晶化合金を用いたことを特徴とする磁気センサー用のコアにある。
第2の発明は、請求項2に記載のように、磁気センサー用のコアにおいて、非磁性材料で形成されたベース部材と、前記ベース部材に形成された磁気検出材料からなる磁性体部とを有し、前記磁性体部はナノ結晶化合金により構成したことを特徴とする磁気センサー用のコアにある。
第3の発明は、請求項3に記載のように、上記した第1または第2の発明の磁気センサー用のコアと、励磁信号の通電により前記コアを励磁する励磁コイルと、前記コアに発生する磁束の非対称成分を検知する検出コイルとを有することを特徴とする磁気センサーにある。
第4の発明は、請求項4に記載のように、上記した第3の発明の磁気センサーと、前記磁気センサーの励磁コイルへ励磁信号を通電すると共に、前記検出コイルからの検知信号に基づいて計測磁界を出力する計測装置とを有することを特徴とするフラックスゲート磁力計にある。
請求項1に係る発明によれば、コアを構成する磁気検出材料にナノ結晶化合金を用いるという簡単な構成で、コアが十分に飽和する磁界でコアを励振させた際、履歴曲線上に発生するノイズを大幅に減少させることができるという効果が得られる。
請求項2に係る発明によれば、コアを構成するベース部材にナノ結晶化合金からなる磁性体部を設けた構成で、コアが十分に飽和する磁界でコアを励振させた際、履歴曲線上に発生するノイズを大幅に減少させることができるという効果が得られる。
請求項3に係る発明によれば、コアに発生する磁束の非対称成分を高精度に検知することができる。
請求項4に係る発明によれば、磁気センサーのコアにナノ結晶化合金を用いることにより、磁気センサーが持つ出力ノイズの要因となる磁気特性上の要因を大幅に改善し、フラックスゲート磁力計の出力ノイズの低減化が図れ、計測限界を飛躍的に向上させることができる。
図1は、本発明によるフラックスゲート磁力計の磁気センサーに好適に用いられるリングコア3を示し、(a)は(b)に示すリングコアのA-A矢視断面図、(b)はリングコア3の平面図である。図2は図1に示すリングコア3を用いた磁気センサーを示す。
本実施の形態のリングコア3は、非磁性で、低熱膨張率の特性を備えた材料、例えばインコーネル合金によりリング状に形成されたベースリング1を基材にし、このベースリング1の外周部に形成した周溝1aに磁性材料であるナノ結晶化合金からなる磁性体部2を形成したものである。
磁性体部2を構成するナノ結晶化合金(日立金属社製「商標:ファインメット」)は、Fe(鉄)基軟磁性材料を主成分に、Si(シリコン:ケイ素)とB(ボロン)、及び微量のCu(銅)とNb(ニオブ)を添加した高温融液を急冷固化したアモルファス(非晶質)薄帯を素材とし、これを例えばベースリング1の周溝1aに複数層に巻き付け(積層化)、結晶化温度以上で熱処理して形成されたもので、結晶粒径が10nm(ナノメータ)程度となっている。
図2に示す磁気センサーSは、リングコア3に励磁コイル4を巻回したものを、非磁性のセンサー筺体Sbに収容し、このセンサー筺体Sbの外周に検出コイル(ピックアップコイル)6を巻回したものである。
この磁気センサーSをフラックスゲート磁力計に用いた場合、励磁コイル4には後述する図4に示す測定回路の駆動回路7から交番信号である励磁信号が印加され、また検出コイル6からは計測磁界を反映してリングコア3中に発生する磁束の非対称成分を電気信号として前記測定回路に出力する。
なお、図2に示す磁気センサーSは模式的に示したもので、励磁コイル4、ピックアップコイル5の巻回方法等はこれに限定されるものではない。
図4は、図2に示す磁気センサーSをフラックスゲート磁力計に適用した場合の測定回路16、およびこの測定回路16にベクトルシグナルアナライザ11を接続して構成したノイズレベル測定系を示す。
測定回路16は、磁気センサーSの励磁コイル4に交番信号である励磁信号を印加する駆動回路7、検出コイル6からの検出信号を増幅する増幅器12と、増幅器12からの増幅した検出信号が入力される2次高調波増幅回路8、位相検波器9、ローパスフィルター13、フィードバック回路10、駆動回路7と位相検波器9に駆動信号、位相信号を出力する励磁・位相信号発生回路14、磁力計の電源を各回路などへ供給するEMIフィルター15などで構成されている。
駆動回路7から図5(b)に示すような励磁信号が励磁コイル4に印加されると、リングコア3は磁界が発生して徐々に磁界が増す。そして、飽和磁界にHDに達すると、飽和領域における誘導磁束Bの上昇角度が緩やかになる。検出コイル6からは前述したように、コア3に発生する磁束Bの非対称成分を電気信号として検出し増幅器12に出力し、増幅器12で増幅された検出信号は、2次高調波増幅回路8に出力される。
2次高調波増幅回路8では、検出コイル6で検出した計測磁界を反映した磁束の非対称成分により誘起した2次高調波を増幅する。2次高調波増幅回路8で増幅した計測磁界が交流の電気信号として抽出される。
位相検波器9は、2次高調波増幅回路8で増幅された2次高調波である交流電気信号化された計測磁界を検波して直流電気信号に変換するもので、計測磁界が直流の電圧信号に変換される。
そして、位相検波器9からの計測磁界を直流の電気信号に変換した信号がローパスフィルター(LPF)13を介してベクトルシグナルアナライザ11に出力される。また、位相検波器9からの出力信号はフィードバック回路10へ出力される。
フィードバック回路10は、計測磁界を反映する直流電圧信号を電流に変換して検出コイル6に供給する。検出コイル6は、フィードバック回路10からの電流により、計測磁界を打ち消す方向のフィードバック磁界をコア3に与える。すなわち、検出コイル6と、2次高調波増幅回路8と、位相検波器9と、フィードバック回路10により、計測磁界は電気信号に変換され、帰還されるフィードバックループが構成される。このフィードバックループは、計測磁界とフィードバック磁界の差を増幅してこれを打ち消すように働くので、フィードバック磁界は計測磁界と等しく、これを作る電流は計測磁界に比例する。この電流を与える2次高調波増幅回路8が出力する直流電圧は、計測磁界と対応しているので、これを磁力計の出力として取り出すことにより、磁界が計測される。
図3は、図2に示す磁気センサーSを適用したフラックスゲート磁力計と、従来のパーマロイを用いた磁気センサーを適用したフラックスゲート磁力計におけるノイズレベルを示す。
図3において、縦軸はノイズ密度(pTrms/rtHz)、横軸はノイズ周波数である。図3において、磁気センサーのコアにパーマロイを用いた従来品にあっては、ノイズ周波数が1Hzで20 pTrms/rtHzであるのに対し、磁気センサーのコアにナノ結晶化合金を用いた本実施の形態によるものでは、ノイズ周波数が1Hzで1.8 pTrms/rtHzであり、ノイズレベルを大幅に低減することができた。
これにより、測定精度が飛躍的に向上し、従来では測定不可能であった範囲での磁力測定が可能となった。
上述のように、フラックスゲート磁力計は、交番磁界をコアを構成する磁性体に与え、該コアに生じる誘導磁束の磁束密度の変化が計測磁界により非対称となる成分を検出することにより磁界を計測するものである。そして、本発明者は上述のように磁気センサーのコアにパーマロイを用いた従来品において、従来のコアを構成するパーマロイなどの磁性材料中に存在する磁区の不均一性(磁軸の反転における不均一性)、磁歪等の磁気的物性に起因して出力ノイズが発生するのではないかと推察した。
そこで、コアを構成する磁性材料としてナノ結晶化合金に着目し、磁気センサーのコアにナノ結晶化合金を用いた本実施の形態では、ナノ結晶化合金は結晶粒が微細であるため、磁区自体が微細であり、磁軸の反転が均一となると推定される。このため、出力ノイズの低減化が図れ、これにより高精度の計測が実現できることになる。
S 磁気センサー
Sb センサー筺体
1 ベースリング
1a 周溝
2 磁性体部
3 リングコア
4 励磁コイル
6 検出コイル(ピックアップコイル)
7 駆動回路
8 2次高調波増幅回路
9 位相検波回路
10 フィードバック回路
11 ベクトルシグナルアナライザ
12 増幅器
13 LPF
14 励磁・位相信号発生回路
15 EMIフィルター
16 測定回路
Sb センサー筺体
1 ベースリング
1a 周溝
2 磁性体部
3 リングコア
4 励磁コイル
6 検出コイル(ピックアップコイル)
7 駆動回路
8 2次高調波増幅回路
9 位相検波回路
10 フィードバック回路
11 ベクトルシグナルアナライザ
12 増幅器
13 LPF
14 励磁・位相信号発生回路
15 EMIフィルター
16 測定回路
Claims (4)
- 磁気センサー用のコアにおいて、磁気検出材料にナノ結晶化合金を用いたことを特徴とする磁気センサー用のコア。
- 磁気センサー用のコアにおいて、非磁性材料で形成されたベース部材と、前記ベース部材に形成された磁気検出材料からなる磁性体部とを有し、前記磁性体部はナノ結晶化合金により構成したことを特徴とする磁気センサー用のコア。
- 請求項1または2に記載の磁気センサー用のコアと、励磁信号の通電により前記コアを励磁する励磁コイルと、前記コアに発生する磁束の非対称成分を検知する検出コイルとを有することを特徴とする磁気センサー。
- 請求項3に記載の磁気センサーと、前記磁気センサーの励磁コイルへ励磁信号を通電すると共に、前記検出コイルからの検知信号に基づいて計測磁界を出力する計測装置とを有することを特徴とするフラックスゲート磁力計。
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JP2003388171A JP2005147947A (ja) | 2003-11-18 | 2003-11-18 | 磁気センサー用コア、磁気センサー及びフラックスゲート磁力計 |
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-
2003
- 2003-11-18 JP JP2003388171A patent/JP2005147947A/ja active Pending
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