JP2005147359A - 鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造 - Google Patents

鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造 Download PDF

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慶治 安藤
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照卓 小崎
Tadakatsu Maruyama
忠克 丸山
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Abstract

【課題】 ボルト接合に比べて施工の手間や部材点数を低減でき、溶接接合に比べて熟練技能が不要かつ全天候作業が可能であり、総合的にコストダウンを実現できる鋼材の接合構造を提供する。
【解決手段】 軸方向の端部を突き合せて2本のH形鋼1を配置し、その突き合せ部3を覆うようにH形鋼1の両側に跨って鉄系形状記憶合金で構成された矩形断面の接合部材2を配置する。接合部材2は、その加熱による記憶形状の回復で突き合せ部3を外側から拘束し、その得られた拘束力をH形鋼1との摩擦により材軸方向の抵抗力に置換することでH形鋼1間の荷重伝達可能に構成している。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造に関する。
鉄骨構造物における柱、梁、その他の構成部材は、H形鋼、溝形鋼、角形鋼管などの鋼材が用いられ、この複数の鋼材を接合部を介して接合されるのが一般的である。この鋼材は、一般にボルトや溶接にて接合される。
図5(a)、(b)は、H形鋼1をボルト接合した従来例を示し、2つのH形鋼1の端部同士を突き合せ、突き合せ部3を跨って両H形鋼1に伸びるように、フランジ4とウエブ7の側面に接合板8が配置され、その当接部に開設のボルト孔に高力ボルト9を挿入しナット10を締結することで、両H形鋼1と接合板8との間の摩擦接合により両H形鋼1を材軸方向に荷重伝達可能に接合するものである。この接合手段は、H形鋼1など鋼材の接合に一般的に用いられる方法である。
前記の高力ボルト摩擦接合では、H形鋼1のフランジ4やウエブ7の所定位置に複数のボルト孔を開設する製作手間がかかると共に、接合板8、高力ボルト9、ナット10等の取り扱う部材の点数が多くなるという施工面での問題がある。
図6(a)、(b)は、H形鋼1を溶接接合した従来例を示し、2つのH形鋼1の端部同士を突き合せ、突き合せ部3を切削加工して開先部11を設け、この開先部11に現場での溶接作業12を施して両H形鋼1を材軸方向に荷重伝達可能に接合するものである。
前記の溶接接合では、現場での溶接作業に際し、溶接技能が要求されると共に、天候に左右されることが多いという問題がある。
なお、鉄系形状記憶合金を用いて鋼材を接合する従来例としては、本出願人に係る、パイプを対象とした、特開平01−229192があり、鉄系形状記憶合金製の円筒形接合部材の形状回復による収縮力を活用して、パイプ同士を接続するものである。また、特開平11−37344があり、鉄系形状記憶合金製の円筒形接合部材の形状回復による収縮力に加えて、パイプ(被接合部材)と接合部材の両方に孔を開設し、ネジなどを貫通させて締結することで、機械的に荷重伝達可能に接合するものである。
パイプの場合、全周にわたって面接触すること、また、パイプは閉断面であることから断面内剛性が高く、接合部材の形状回復に伴う変形がないことから荷重伝達が期待できるが、H形鋼や溝型鋼の場合は、全周にわたる接触面を確保できないこと、また、開断面であることから断面内剛性が低く、接合部材の形状回復に伴い被接合部材のフランジが内側に変形を生じることにより、荷重伝達効率が低下するという問題がある。

特開平01−229192号公報 特開平11−37344号公報
H形鋼などの鋼材を高力ボルトによる摩擦接合で接合する場合は、部材数が多く、製作や施工の手間が増え、また、溶接接合にあっては、熟練技能が要求されると共に、天候に左右されがちである、という点でコスト削減の余地があった。また、パイプのような閉断面に比べて、接合部材間の接触面が少なく、かつ、断面内剛性が低いことから荷重伝達効率が低下するという問題があった。
本発明は、鉄系形状記憶合金を荷重伝達可能な矩形断面の接合部材として構成することにより、前記の問題点を解決することを目的とする。
第1発明は、軸方向の端部を突き合せて2本の鋼材を配置し、前記突き合せ部を覆うように鉄系形状記憶合金にて構成された矩形断面の接合部材を配置し、当該接合部材は、鉄系形状記憶合金の加熱による記憶形状の回復で前記両鋼材を外側から拘束し、その得られた拘束力を両鋼材間の摩擦により材軸方向の抵抗力に置換することで荷重伝達可能に構成していることを特徴とする。
また第2発明は、第1発明において、前記鋼材は、H形鋼、溝形鋼、角形鋼管の何れかであることを特徴とする。
第3発明は、第1または第2発明において、前記鋼材において、間隔を隔てて位置する鋼材各部間のスペースに、接合部材の形状回復による拘束力に抵抗する補剛材を設置したことを特徴とする。
第4発明は、第3発明において、鋼材はH形鋼であり、前記補剛材は、H形鋼における両フランジの内側への変形を阻止するように設置されていることを特徴とする。
第5発明は、第2発明〜第4発明において、矩形断面の接合部材は、全一体構造または、周方向適宜位置で切断された複数部材の溶接組立で構成されていることを特徴とする。
第6発明は、第2発明〜第4発明において、矩形断面の接合部材は、周方向適宜位置で切断された複数部材の溶接組立で構成されていると共に、鉄系形状記憶合金と鋼材との組み合わせで構成されていることを特徴とする。
本発明によると、鉄系形状記憶合金からなる接合部材の記憶形状の回復により2つの鋼材の突き合せ部を拘束し、その得られた拘束力を両鋼材間の摩擦により材軸方向の抵抗力に置換することで荷重伝達可能に構成するので、従来の高力ボルトによる摩擦接合や溶接接合に比べて、部材点数を低減できる(単一部品でよい)と共に施工手間を簡略化でき、さらに、接合作業は鋼材の突き合せ部に配置した鉄系形状記憶合金の接合部材を所定温度の加熱環境下に置くだけでよく、特別な熟練技能が要求されず、また天候に左右されず、これらの総合的なメリットが相俟って鋼材の接合に要するコストの削減が可能になる。
次に本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は本発明に係る、鉄系形状記憶合金を用いた接合部材による鋼材(鋼構造部材)の接合構造の斜視図、図1(b)は断面図を示す。図1では、前記鋼材はH形鋼1で構成された柱部材の例を示す。鉄系形状記憶合金を用いて構成された接合部材2は、矩形断面状に構成されており、上下に所定の長さ(L)を有していて、上下のH形鋼1の端部の突き合せ部3を含み、上下のH形鋼1の端部を所定の長さにわたって被覆している。
接合部材2は、鉄系形状記憶合金による製造過程において、矩形断面の内径(L1)が、接続されるH形鋼1の両フランジ4の間隔(L2)よりも僅かに小さい形状を記憶させておく。その後、接合部材2をH形鋼1の突き合せ部3の外側に被せ、高周波誘導加熱装置などにより熱を加える。そして所定の温度に達すると、接合部材2が記憶したもとの形状に回復し、それにより両H形鋼1の突き合せ部3における両フランジ4を外側から締め付ける形で固定している。
接合部材2の材料である鉄系形状記憶合金は、応力誘起マルテンサイト形態を利用した、鉄がベースの形状記憶合金であって、溶接を含む加工性がよく、記憶形状の回復は1度限りであり、鋼材の接合構造に最適な特徴をもつ。その代表的な成分系は、32Mn-―6Si―Fe、28Mn-―6Si―5Cr―Fe、20Mn-―5Si―8Cr―5Ni―Fe、16Mn-―5Si―12Cr―5Ni―Fe(重量%)等がある。
図2によってさらに説明すると、鉄系形状記憶合金からなる接合部材2が、加熱による記憶形状の回復で両H形鋼1の突き合せ部3を外側から締め付けることにより、当該接合部材2は、H形鋼1の両フランジ4を外側から拘束し、図2(a)矢印イの拘束力が生じ、その得られた拘束力により接合部材2と両フランジ4間で、図2(b)矢印(ロ)、(ハ)の方向の力(ロ)の大きさは、接合部材2の形状回復率に比例し、ハの大きさは、フランジ4の抵抗率に比例する)により摩擦力が発生し、この摩擦力を両H形鋼1の材軸方向の抵抗力に置換することで、図2(c)の矢印の線ニで示すような荷重の流れが生じ、これにより荷重伝達を可能に構成している。
図2(b)における矢印(ホ)は、図4に示す補剛材5をH形鋼1のフランジ4の内側に配置することにより発生する補剛力であり、拘束力の発現に有効に作用し、図2(c)の矢印ニで示すような荷重の流れによる荷重伝達がより確実になる。
鋼材の例としては、H形鋼1のほか溝形鋼、角形鋼管などの形鋼でもよい。また、矩形断面の接合部材2の成形手段は、溶接、切削、鋳造、プレス、ロール等各種あり、何れの手段を用いてもよい。また、矩形断面の接合部材2の全体を、鉄系形状記憶合金で構成してもよいし、または、鉄系形状記憶合金と鋼材との組み合わせで構成しても何れでもよい。さらに、接合部材2による拘束力が効率的にH形鋼1に作用するように、当該H形鋼1には補剛材を組み合わせることができる。
図3(a)〜(e)は、接合部材2の異なる成形手段による構造例を示す。図3(a)は、ロール加工、プレス加工、切削加工等により矩形断面の接合部材2を鉄系形状記憶合金を用いて一体的に構成された例を示す。図3(b)は、4枚の鉄系形状記憶合金板2aを矩形の4辺に配置し、溶接部6において溶接して矩形断面の接合部材2を構成した例を示す。図3(c)は、2つの断面コ字形の鉄系形状記憶合金板2a部材を向かい合わせて溶接部6において溶接接合して矩形断面の接合部材2を構成した例を示す。
図3(d)は、2枚の鉄系形状記憶合金板2aと2枚の鋼板2bとを矩形4辺の対向する辺にそれぞれ配置し、溶接部6において溶接接合して矩形断面の接合部材2を構成した例を示す。図(e)は、断面コ字形の2つの鉄系形状記憶合金板2aを向かい合わせ、かつ、その両部材2aを所定幅の鋼板2bを介して溶接部6において溶接接合し、矩形断面の接合部材2を構成した例を示す。なお、接合部材2の成形手段は、前記以外にも適宜の方式を用いて構わない。
図4(a)〜(e)は、接合部材2において、鉄系形状記憶合金の形状回復による拘束力をH形鋼1のフランジ4が効率的に受けるように、当該H形鋼1に補剛材を設置した例を示す。図(a)は、H形鋼1の両フランジ4のそれぞれの先端部の間にプレート状の補剛材5を配置した例を示す。この例では、接合部材2の形状回復により拘束力を受けるH形鋼1の両フランジ4が内側に撓むのをプレート状の補剛材5で支えることができ、これにより接合部材2とH形鋼1の両フランジ4との摩擦接合がより確実となり、H形鋼1の材軸方向への荷重伝達能力が向上する。
図4(b)は、H形鋼1の両フランジ4のそれぞれの先端部の間に、プレート端部に広幅部5aを有するの補剛材5を配置した例を示す。この例においても、接合部材2の形状回復により拘束力を受けるH形鋼1の両フランジ4が内側に撓むのをI型の補剛材5で支えることができ、これにより接合部材2とH形鋼1の両フランジ4との摩擦接合がより確実となり、H形鋼1の材軸方向への荷重伝達能力が向上する。
図4(c)は、H形鋼1の両フランジ4のそれぞれの先端部の間に、プレート端部に同じ方向に折り曲げ部5bを有する補剛材5を配置した例を示す。この例においても、接合部材2の形状回復により拘束力を受けるH形鋼1の両フランジ4が内側に撓むのを溝型の補剛材5で支えることができ、これにより接合部材2とH形鋼1の両フランジ4との摩擦接合がより確実となり、H形鋼1の材軸方向への荷重伝達能力が向上する。
図4(d)は、H形鋼1のウエブ7の両側に、折り曲げ方向を左右で反対向きとした、ほぼV字状断面の補剛材5を配置し、その先端部5cでH形鋼1の両フランジ4の先端部を内側から支持した例を示す。この例においても、接合部材2の形状回復により拘束力を受けるH形鋼1の両フランジ4が内側に撓むのを方杖型の補剛材5で支えることができ、これにより接合部材2とH形鋼1の両フランジ4との摩擦接合がより確実となり、H形鋼1の材軸方向への荷重伝達能力が向上する。
図4(e)は、H形鋼1の両フランジ4のそれぞれの先端部の内面に、断面L型の補剛材5(5d)を合計4個配置した例を示す。この例においても、接合部材2の形状回復により拘束力を受けるH形鋼1の両フランジ4が内側に撓むのを4個の補剛材5(5d)で確実に阻止することができ、これにより接合部材2とH形鋼1の両フランジ4との摩擦接合がより確実となり、H形鋼1の材軸方向への荷重伝達能力が向上する。なお、補剛材5は前記以外の構成であっても構わない。
本発明は、実施形態に示した他、適宜設計変更して実施することができる。したがって、実施形態を設計変更して実施形態することは、本発明に含まれる。
(a)は、本発明に係る鉄系形状記憶合金を用いた接合部材による鋼材の接合構造の斜視図、 図(b)は、断面図を示す。 (a)は、鉄系形状記憶合金を用いた接合部材の形状回復により得られる拘束力の作用方向を示す説明図、図(b)は、補剛材を設置した場合において、接合部材の形状回復により得られる、接合部材と鋼材(被接合部材)間の摩擦力発現機構を示す説明図、図(c)は、図(b)による荷重の流れる態様を矢印の線で示す説明図である。 (a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、鋼材(H形鋼)の突き合せ部の外側に配置する接合部材の5つの構成例を示す断面説明図である。 (a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、鋼材(H形鋼)に設ける補剛材の5つの構成例を示す断面説明図である。 (a)は、従来のボルト接合による鋼材の接合構造の斜視図、 図(b)は、断面図を示す。 (a)は、従来の溶接接合による鋼材の接合構造の斜視図、 図(b)は、断面図を示す。
符号の説明
1 H形鋼
2 接合部材
3 突き合せ部
4 フランジ
5 補剛材
6 溶接部
7 ウエブ
8 接合板
9 高力ボルト
10 ナット
11 開先部
12 現場溶接

Claims (6)

  1. 軸方向の端部を突き合せて2本の鋼材を配置し、前記突き合せ部を覆うように鉄系形状記憶合金にて構成された矩形断面の接合部材を配置し、当該接合部材は、鉄系形状記憶合金の加熱による記憶形状の回復で前記両鋼材を外側から拘束し、その得られた拘束力による両鋼材間の摩擦を材軸方向の抵抗力に置換することで荷重伝達可能に構成していることを特徴とする鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
  2. 前記鋼材は、H形鋼、溝形鋼、角形鋼管の何れかである請求項1記載の鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
  3. 前記鋼材において、間隔を隔てて位置する鋼材各部間のスペースに、接合部材の形状回復による拘束力に抵抗する補剛材を設置したことを特徴とする請求項1または2記載の鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
  4. 請求項3記載において、鋼材はH形鋼であり、前記補剛材は、H形鋼における両フランジの内側への変形を阻止するように設置されていることを特徴とする鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
  5. 矩形断面の接合部材は、全一体構造または、周方向適宜位置で切断された複数部材の溶接組立で構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
  6. 矩形断面の接合部材は、周方向適宜位置で切断された複数部材の溶接組立で構成されていると共に、鉄系形状記憶合金と鋼材との組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の鉄系形状記憶合金を用いた鋼材の接合構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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TWI576518B (zh) * 2015-11-03 2017-04-01 宏碁股份有限公司 卡合機構及其組裝方法

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