JP2005143861A - 骨代替材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工が容易で、比較的軽量で、かつ靭性と強度に優れるとともに、骨組織親和性に優れ、体液中において従来よりも短時間で表面にアパタイト被膜を形成する骨代替材料を提供する。
【解決手段】少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデン合金からなる基体と、基体の表面に形成されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属を成分として含有する酸化モリブデンの被膜とを備えた構成とした。これにより、基体に従来よりも高く負に帯電した酸化物表面を与えることができ、早期に体液中のカルシウム・イオンを吸着し、アパタイト被膜を形成することが可能となる。また、チタンやタンタルに比べ靭性が大きく、加工も容易であるため、機械的強度を高めることができる。さらに、比重がタンタルの約3/5であり、股関節や大腿骨など、大きい骨欠損部を修復する材料として使用することが可能である。
【選択図】 図4



Description

本発明は人工骨、人工関節、人工歯根、生体埋込治療材料、生体埋込医療機器、器具等に利用される骨代替材料とその製造方法に関する。
病気や怪我などにより骨や関節に重大な損傷が生じた場合、これを修復する目的で骨移植が行われる。しかし、骨移植は、移植に用いる骨の供給量が十分ではないこと、未知の病因物質が混入している危険性をはらんでいること等の問題点がある。かかる問題を克服するためには、化学的に合成された骨の機能を代替し得る人工材料を骨の修復に使用することが有効であると考えられる。人工材料としては、セラミックス材料や金属材料を使用することが考えられる。
セラミックスの中には、生体が上記のような異物反応を示すことがなく、体内で骨組織と自然に結合する材料が知られている。これらの材料は、生体活性セラミックスと総称され、重要な人工骨材料として実用化されている。現在、生体活性セラミックスとしては、Na2O-CaO-SiO2-P2O5系のガラス、焼結水酸アパタイト[Ca10(PO4)6(OH)2]、酸素・フッ素アパタイト[Ca10(PO4)6(O,F)2]とβ-ウォラストナイトの微結晶を析出した結晶化ガラスA-W等が知られている(非特許文献1参照)。生体活性セラミックスは、体内に埋入されると、体液と化学反応をして表面に骨の主成分である水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の薄層を形成する。生体活性セラミックスの高い生体適合性は、その特異な表面構造に起因していると考えられている。
しかし、これらの生体活性セラミックスは破壊靭性が1〜2MPa・m1/2程度であり、人の皮質骨(2〜6 MPa・m1/2)には及ばない。そのため、上記生体活性セラミックスは、人工股関節や人工大腿骨のような大荷重の加わる部分の材料としては適さない。破壊靭性が加わる荷重に及ばないからである。そこで、かかる用途においては、人工材料として、大きな破壊靭性をもつチタン金属やチタン合金が使用される。
しかしながら、これらの金属材料を、骨の欠損部に埋入した場合、生体はこれを異物と認識する。そして、繊維性被膜でカプセル化し周囲の組織から隔離しようとする。従って、埋入された材料は、周囲の骨組織と直接接することができなくなる。その結果、長期間が経過すると、金属材料と骨との間に歪みやずれが生じ得る。従って、これらの骨代替材料として用いられる金属には、骨組織親和性を付与することが求められる。
現在、骨組織親和性を付与するために、チタン金属やチタン合金の表面に水酸アパタイトの皮膜をコーティングする技術が広く用いられている。そのひとつとして、金属表面へ生体活性セラミックスをコーティングする方法が提案されている。このコーティング技術は、大別すると、ドライ・プロセスと、ウエット・プロセスとに分類される。
ドライ・プロセスとしては、プラズマ溶射法(特許文献1,2参照)、スパッタリング法(特許文献3参照)、焼結法(特許文献4,5参照)等が知られている。そのなかでも代表的なものは、プラズマ溶射法を用いたチタン金属への水酸アパタイトのコーティングである。これは、プラズマ炎中に水酸アパタイトの粉末を導入し、チタン金属上に噴霧することにより水酸アパタイト薄膜を同金属表面に形成させるものである。この方法により、水酸アパタイトをコーティングしたチタン金属は既に実用化されている。
しかしながら、ドライ・プロセスでは、コーティング剤である水酸アパタイトが高温環境下に置かれることから、生体内のアパタイトとは異なる種類のアパタイト(例えば、酸素アパタイト[Ca10(PO4)6O]など)の膜が形成されてしまう。また、プラズマ溶射法では、噴霧時に水酸アパタイト粉末が10,000℃以上に加熱されるため、被膜の組成を制御することが容易ではない。しかも、水酸アパタイト層の金属への強固な付着が困難であるため、体内でコーティングの一部が溶解したり剥離したりする点が問題とされている。
一方、ウエット・プロセスとしては、金属材料を水酸アパタイト成分水溶液に浸漬する方法(特許文献6〜8)、金属材料をアルカリ処理した後に擬似体液に浸漬又は体内に埋入する方法(非特許文献2、特許文献9〜12)、ガラスとともにアルカリ水溶液に浸漬した後に擬似体液に浸漬又は体内に埋入する方法(特許文献13〜16)、陽極酸化法による方法(特許文献17)などが知られている。
これらのウエット・プロセスは、金属表面を化学処理により活性化し、水酸アパタイト層の形成を誘発させるものである。ドライプロセスに比べて均質の被膜形成が可能であり、また、金属と被膜の結合が強固であるという特徴を有する。
金属材料をアルカリ処理した後に擬似体液に浸漬又は体内に埋入する方法(非特許文献1)では、まず、チタン金属の基体の表面を水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で処理する。水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.5〜10kmol/m3とする。これにより、基体の表面には、チタン酸ナトリウムのゲル層が形成される。チタン酸ナトリウムの濃度には、基体表面でもっとも高く、表面から基体内部に向かうに従って低くなるように、濃度勾配が形成される。次に、アルカリ処理がされた基体を600℃で加熱処理をする。これにより、基体表面に濃度勾配をもった非晶質のチタン酸ナトリウムの薄層が形成される。以上の表面処理がされた基体を、擬似体液に浸漬し、又は生体内に埋入する。そうすると、まず、基体の表面のナトリウム・イオンNa+が周囲の液中のオキソニウム・イオン(H3O+)と交換し、基体表面にTi-OH基が形成される。このTi-OH基がアパタイト核の形成を誘起する。体液は通常の状態でもアパタイトに対して過飽和な状態にある。従って、基体表面に形成されたアパタイト核は、周囲の液からカルシウムとリン酸イオンとを取り込んで自然に生長する。
この方法で形成されるアパタイト被膜は、骨の無機物質と同じ構造・組成を有する。また、チタン基板とアパタイト層との界面に、アパタイト濃度の傾斜構造を形成するので、アパタイト被膜が基板に強固に付着する。従って、被膜の体内での溶解や剥離が生じにくいと考えられている。
また、基材に使用する金属としては、従来、チタンやチタン合金の他に、バナジウムを除く5a属(ニオブNb、タンタルTa)の金属またはこれらの金属を主成分とする合金を使用した例が知られている(特許文献12参照)。
特開昭62−34559号公報 特開昭63−160663号公報 特開昭58−109049号公報 特開昭62−231669号公報 特開昭63−024952号公報 特開平3−97466号公報 特開平6−293505号公報 特許2775523号公報 WO95/13100号公報 特表2003−512895号公報 特開2002−102330号公報 特開平9−238965号公報 特開平2−255515号公報 特開平2−144566号公報 特開平4−141177号公報 特開平6−293506号公報 特開2003−109272号公報 L.L.Hench and O.Anderson, "Bioactive glasses", in An introduction to Bioceramics, ed. by L.L.Hench and June Wilson, World Sci., Singapore, pp.41-62,.139-180, 75-88 (1993) 小久保正,金鉉敏,「バイオミメティック法によるアパタイトー有機高分子ハイブリッド材料の調製 (特集 有機化合物を利用した無機複合材料)」,無機マテリアル5(277),無機マテリアル学会編,1998年11月,449〜458頁
ところで、従来の金属を用いた骨代替材料の基体として使用されてきたタンタル金属は、その比重(16.65)が骨の比重(2.01)に比べて著しく大きい。そのため、股関節や大腿骨など、大きい骨欠損部を修復する場合に、基体としてタンタル金属を使用した場合、体に加わる重量負担が大きい。したがって、タンタル金属は、そのような大きい骨欠損部を修復する材料としては利用し難いという問題がある。
また、チタン金属やタンタル金属の基体を体液(または擬似体液)に浸漬した場合、基体表面にアパタイト被膜が形成されるのに3日程度の時間が必要とされる。従って、ウェット・プロセスで骨代替材料をアパタイト皮膜でコーティングするために要する時間や、骨代替材料を生体に埋入した後に骨組織と結合するまでの時間が長いという問題がある。
そこで、本発明の目的は、加工が容易で、比較的軽量で、かつ靭性と強度に優れるとともに、骨組織親和性に優れ、体液中において従来よりも短時間で表面にアパタイト被膜を形成する骨代替材料を提供することにある。
本発明に係る骨代替材料は、少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデンを主成分とする合金(以下、「モリブデン合金」という。)からなる基体と、前記基体の表面に形成されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属を成分として含有する酸化モリブデンの被膜とを備えていることを特徴とする。
この骨代替材料を擬似体液に浸漬し、又は生体内に埋入すると、酸化モリブデン被膜に含有されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンが液中のオキソニウム・イオンと交換し、基体表面にMo-OH基が生成される。そして、このMo-OH基が水酸アパタイト核の形成を誘起する。体液は通常の状態でも水酸アパタイトに対して過飽和な状態にある。従って、基体表面に形成された水酸アパタイト核は、周囲の液からカルシウムとリン酸イオンとを取り込んで自然に生長する。その結果、基体の表面に骨組織親和性の高い被膜が形成される。
このように、本発明においては、基体金属としてモリブデンを使用することとした。モリブデン(Mo)は、毒性が少ないので、人工関節や歯科材料においてチタン合金やコバルト−クロム合金などの成分として広く臨床使用されている。従って、モリブデンは骨代替材料の基体として使用することは安全性の面からは問題がない。
一方、従来基体として使用されてきたチタンの原子価は4価であり、タンタルは5価である。それに対して、モリブデンの原子価は6価である。一般に、原子価が大きい程、その金属表面が負に帯電しやすい。したがって、基体にモリブデンを使用することにより、従来よりも高く負に帯電した酸化物表面を基体に与えることができる。このことは、基体が体液(または擬似体液)に浸漬された場合に、体液(または擬似体液)中のプラス・イオンを引きつけやすいことを意味する。すなわち、少なくとも基体表面をモリブデン金属又はモリブデン合金とすることで、従来に比べてカルシウム・イオンを引き付けやすくなる。従って、体液(または擬似体液)に浸漬したときに、早期に体液中のカルシウム・イオンを吸着し、その結果、従来よりも早期に骨組織親和性に優れたアパタイト被膜を形成することが可能となる。
また、モリブデンは、チタンやタンタルと同程度の靭性を有する一方、強度はチタン金属が620MPa、タンタル金属が510MPa、モリブデン金属が840MPaであり、モリブデン金属が最も優れている。従って、モリブデン金属を使用することによって、骨代替材料の機械的強度をより高めることができる。
また、モリブデンは、その比重が10.28であり、タンタル(比重16.65)の約3/5である。従って、骨代替材料を軽量に構成することができるので、股関節や大腿骨など、大きい骨欠損部を修復する材料として使用することが可能である。
また、本発明において、被膜の厚さは、0.1〜10μmとするのが好適である。この範囲の厚さであれば、骨組織親和性と機械的特性との両方において優れているからである。0.1μmよりも薄いと、体液との反応によるアパタイト皮膜の形成が生じ難くなり、逆に、10μmよりも厚いと、基体表面に形成されるアパタイト皮膜の内部において破壊が生じやすく、被膜の剥離が生じやすい傾向がみられる。
また、本発明において、前記被膜は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、又はモリブデン酸カルシウムを含有するものとすることができる。
特に、被膜を構成する物質がモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、又はモリブデン酸カルシウムであることにより、体液中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンを溶出して、早期のアパタイト膜形成の効果が期待できる。ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、及びカルシウム・イオンは、何れも体液中に拡散しやすいからである。
本発明に係る骨代替材料の製造方法は、少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデン合金からなる基体をアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンを含有するアルカリ水溶液で処理し、前記基体表面に被膜を形成することを特徴とする。
この方法によれば、基体をアルカリ水溶液でアルカリ処理をすることにより、基体の表面にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属のモリブデン酸化物の薄いゲル層が形成される。このようにして、本発明の骨代替材料を製造することができる。
また、基体表面に形成されるゲル層は、基体表面におけるモリブデン酸化物の濃度が高く、基体内部に向かって次第に濃度が低下する濃度勾配を持った層となる。従って、上記方法により製造された骨代替材料を擬似体液に浸漬し又は生体内に埋入し、水酸アパタイトが形成された場合、基体内部から表面に向かって水酸アパタイトの濃度が高くなるような濃度勾配を有する界面が形成される。従って、水酸アパタイトの被膜と基体との結合強度が大きく、基体から剥離しにくい被膜を形成することができる。
上記アルカリ水溶液での処理において、アルカリ水溶液の水酸イオン(OH-)のモル濃度は1〜25kmol/m3とすることが好適である。体内で金属表面にアパタイト皮膜を形成させるのに適度な厚さのゲル層を形成させることが可能だからである。尚、モル濃度が1kmol/m3よりも低いと、アパタイト膜を形成させるために十分な厚さの酸化モリブデン膜が得難いという不都合が生じやすくなる。また、モル濃度が25kmol/m3よりも高いと、酸化モリブデン膜の内部に置いて破壊が生じやすいという不都合が生じやすくなる。すなわち、酸化モリブデン膜の強度は基体金属に比べ強度が低いので、酸化モリブデン膜の厚さはできる限り薄い方がよいが、一方でアパタイト膜を形成させるに十分な酸化モリブデン膜の厚さを確保する必要があることから、上記膜厚の範囲が好適とされる。
また、上記アルカリ水溶液での処理において、アルカリ水溶液の温度は、40〜80℃とし、12〜48時間処理することが好ましい。体内で金属表面にアパタイト膜を形成させるのに適度な厚さのゲル層を形成させることが可能だからである。
アルカリ処理に使用するアルカリ水溶液としては、できるだけpHの大きい溶液を使用することが好ましい。アルカリ処理に要する時間が短縮できるからである。従って、特に、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を使用するのが好適である。
また、上記製造方法において、前記基体を前記アルカリ水溶液に浸漬した後、カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬することにより前記基体表面に被膜を形成することもできる。
カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬することにより、アルカリ処理により基体表面に形成された酸化モリブデン被膜中にカルシウムイオンが担持される。そして、この基体を体液(または擬似体液)中に浸漬すると、カルシウム・イオンが体液(または擬似体液)中に溶出することにより、基体表面にアパタイト皮膜が形成されるまでの時間が短縮される。
すなわち、体液中のアパタイトに対する過飽和度は、イオン活動度積K=[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2により表される。ここで、[Ca2+]、[PO4 3-]、[OH-]は、それぞれ、体液中のカルシウム・イオン、リン酸イオン、水酸イオンの濃度を表す。体液のイオン活動度積Kの値が、アパタイトの飽和状態のイオン活動度積KSPの値よりも大きいほど、アパタイトの過飽和度が大きく、アパタイトが析出しやすい。
ここで、基体表面の酸化モリブデン膜内のアルカリ金属イオンが、ナトリウム・イオン(Na+)またはカリウム・イオン(K+)の場合、これらのイオンが体液に溶出した場合には、体液内の水酸イオン(OH-)の濃度が上昇する。したがって、ナトリウム・イオンまたはカリウム・イオンの溶出により、酸化モリブデン膜内のこれらのイオン濃度の2乗程度のオーダーに比例してイオン活動度積Kが上昇する。
それに対して、基体表面の酸化モリブデン膜内のアルカリ金属イオンが、カルシウム・イオン(Ca2+)の場合には、カルシウム・イオンが体液に溶出することにより、酸化モリブデン膜内のカルシウム・イオン濃度の約10乗程度のオーダーに比例してイオン活動度積Kが上昇する。従って、ナトリウム・イオンやカリウム・イオンに比べ、カルシウム・イオンのほうが遙かにアパタイトの析出を誘引しやすく、基体表面にアパタイト皮膜が沈着するまでの時間が短い。
従って、早期に基体と周囲の骨組織とが一体化でき、修復箇所に骨代替材料が安定的に固定される。
ここで、最初のアルカリ処理においては、水酸化カルシウムよりも、むしろ水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようにpHの大きい水溶液を使用するのが好ましい。処理時間を短縮することができるからである。従って、上記アルカリ処理を行った後に、カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬することで、アルカリ金属イオンをカルシウム・イオンに置換することによって、短時間で基体表面にアパタイト皮膜が形成される骨代替材料を短時間で製造することができる。
尚、カルシウム・イオンを含有する水溶液としては、できるだけ水に対する溶解度の大きいカルシウム含有物質の水溶液を使用することが好ましい。かかる水溶液としては、塩化カルシウム(CaCl2)水溶液、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)水溶液、酢酸カルシウム(Ca(CH3COO)2)水溶液などを使用することができる。
カルシウム・イオン含有水溶液の濃度は、0.1〜5kmol/m3とし、処理温度は20〜60℃とするのが好適である。この範囲であれば、アパタイト被膜を形成させるのに十分な量のカルシウム・イオンを酸化モリブデン膜に取り込ませることが可能だからである。
さらに、上記製造方法において、前記基体を前記アルカリ水溶液又は前記カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬した後、前記基体の加熱処理をすることにより前記基体表面の被膜を硬化させるようにしてもよい。
基体をアルカリ水溶液又はカルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬した後の時点では、基体の表面は水和状態(ゲル状態)にあるため、耐摩耗性が低い。そこで、この表面を加熱処理し、表面を脱水することにより、機体表面の膜を緻密で硬度の高いものとすることができる。
ここで、加熱処理は、常圧下で200〜800℃で、1〜5時間処理するのが好適である。酸化モリブデン被膜と基体との界面に形成されているモリブデン酸化物の濃度勾配を保持しながら、表面の酸化モリブデン被膜を緻密化させることができるからである。尚、あまり過度な加熱処理を行うと、酸化モリブデン被膜と基体との界面に形成されているモリブデン酸化物の濃度勾配が消滅し、基体表面に形成されるアパタイト被膜と基体との間の結合強度の低下を招くことになる。
以上のように、本発明によれば、基体として少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデンを主成分とする合金を使用したことにより、加工が容易で、比較的軽量で、かつ靭性と強度に優れるとともに、骨組織親和性に優れ、体液中において従来よりも短時間で表面にアパタイト被膜を形成する骨代替材料を提供することが可能となる。
また、本発明の骨代替材料の製造方法によれば、早期にアパタイト被膜を形成して、骨組織と一体化する作用を有する優れた骨代替材料の製造が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
10×10×1mm3の純モリブデン金属板を#400で研磨し、アセトンに引き続いて蒸留水で洗浄して基体を形成した。この基体を10kmol/m3,15kmol/m3,20kmol/m3,25kmol/m3の濃度の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液又は水酸化カリウム(KOH)水溶液5mLに60℃で24時間浸漬することによりアルカリ処理し、骨代替材料を製造した。
上記のようにアルカリ処理をした基体の表面の構造変化を、電子プローブ・マイクロ・アナリシス(EPMA)により検査した。
図2は20kmol/m3の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理をした基体表面のEPMAスペクトルであり、図3は20kmol/m3の水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理をした基体表面のEPMAスペクトルである。
水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理した基体表面においては、モリブデン、酸素、ナトリウムによるピークが観察された。また、水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理した基体表面においては、モリブデン、酸素、カリウムによるピークが観察された。以上の結果は、アルカリ処理により、アルカリ金属を含有する酸化モリブデン層が金属表面に形成されたことを示していると考えられる。
なお、水酸化カリウムの濃度が20kmol/m3以外の場合についてはここでは示していないが、濃度が20kmol/m3以下の場合には、モリブデンのピークのみが観測された。また、25kmol/m3の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理をした場合については、濃度が20kmol/m3の場合と同様の結果が得られた。
次に、上述のように製造された基体を、洗瓶を用いて超純水で洗浄した後に、細胞やタンパク質などの有機成分を含まず、無機イオン濃度をヒトの血漿成分(細胞外液)にほぼ等しくした擬似体液に浸漬した(図1参照)。実験に使用した擬似体液の成分は、(表1)に示す通りである。実際には、(表1)に示した成分を有する擬似体液を、50kmol/m3のトリ−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(Hydroxymethyl Aminomethan)(CH2OH)3CNH2及び塩酸HClを用いてpH=7.4に調整したものを用いた。
Figure 2005143861
上述の生体活性セラミックス表面における体内でのアパタイト形成は、この擬似体液中でもよく再現できることが確認されている。従って、この擬似体液を用いれば、人工材料の生体活性を実験的に簡便に評価することができるものと考えられる。
上記擬似体液に浸漬後、骨代替材料を取り出して乾燥した。そして、基体の表面の構造変化を、薄膜X線回折により検査した。
図4は水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理した基体を、擬似体液中に7日間浸漬したモリブデン金属表面の薄膜X線回折パターンである。20kmol/m3の以上のアルカリ水溶液で処理した基板において、擬似体液浸漬後にアパタイトに基属するピークが観測された。
上記結果から、あらかじめモリブデン金属に一定濃度のアルカリ処理を施しておくと、擬似体液中で基体表面にアパタイトを析出するようになることが明らかとなった。すなわち、上記アルカリ処理されたモリブデン金属が、体内で骨組織と自然に結合し得ることを示している。これは、アルカリ処理により基体表面にアルカリ金属を含有する酸化モリブデン層が形成され、この層が体液と反応してアパタイトを沈着したものと考えられる。
以上のように、本実施例によれば、モリブデン金属を基体とした、生体親和性の高い骨代替材料を調整することができる。
なお、基体表面の機械的強度を向上させるために、上記アルカリ処理をした後に、当該基体表面を加熱処理しておくことも、実用的見地からは有効である。
更に、アルカリ処理したモリブデン金属の基体を、擬似体液に浸漬しておき、あらかじめ表面にアパタイト層をコーティングした複合材料も有効である。アパタイト層により骨組織に対して生体親和性が最初から高く、骨組織との結合時間が早くなるからである。
基体を擬似体液に浸漬した状態を表す図である。 20kmol/m3の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理をした基体表面のEPMAスペクトルである。 20kmol/m3の水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理をした基体表面のEPMAスペクトルである。 水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液でアルカリ処理した基体を、擬似体液中に7日間浸漬したモリブデン金属表面の薄膜X線回折パターンである。

Claims (5)

  1. 少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデンを主成分とする合金からなる基体と、前記基体の表面に形成されたアルカリ金属を成分として含有する酸化モリブデンの被膜と、を備えていることを特徴とする骨代替材料。
  2. 前記被膜は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、又はモリブデン酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1記載の骨代替材料。
  3. 少なくとも表面がモリブデン金属又はモリブデンを主成分とする合金からなる基体をアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンを含有するアルカリ水溶液で処理し、前記基体表面に被膜を形成することを特徴とする骨代替材料の製造方法。
  4. 前記基体を前記アルカリ水溶液に浸漬した後、カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬することにより前記基体表面に被膜を形成することを特徴とする請求項3記載の骨代替材料の製造方法。
  5. 前記基体を前記アルカリ水溶液又は前記カルシウム・イオンを含有する水溶液に浸漬した後、前記基体を加熱処理をすることにより前記基体表面の被膜を硬化させることを特徴とする請求項3又は4記載の骨代替材料の製造方法。


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