JP2005143434A - 昆虫gaba受容体遺伝子 - Google Patents

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嘉久 尾添
Fumiyo Ozoe
富美代 尾添
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英則 大同
Yuji Nagatomi
友士 永冨
Hiroshi Uchida
博司 内田
Naokazu Naito
直和 内藤
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Abstract

【課題】ハスモンヨトウのγ−アミノ酪酸受容体遺伝子を発現する細胞を構築し、これを利用して当該受容体に作用するアゴニスト或いはアンタゴニストをスクリーニングすることにより、ハスモンヨトウ等の害虫に有効な殺虫剤を見出す。
【解決手段】ハスモンヨトウよりγ−アミノ酪酸受容体サブユニットの遺伝子をクローニングし、昆虫細胞内で発現させることによりGABA受容体様のイオンチャンネルが形成される。
【選択図】 なし

Description

GABA(ガンマ−アミノ酪酸:γ−aminobutyric acid)受容体クロライドイオンチャンネルは、殺虫剤の標的作用点として知られている。本発明は、日本の主要害虫であるハスモンヨトウ(鱗翅目昆虫)のGABA受容体クロライドイオンチャンネルを構成するサブユニット蛋白質をコードする遺伝子、その遺伝子を発現させた組換え細胞、および同細胞を用いたハスモンヨトウなど鱗翅目害虫に有効な殺虫剤のスクリーニング方法に関する。
GABA(γ−aminobutyric acid)は、興奮を抑制する働きを持つ神経伝達物質である。哺乳類の受容体の構造は、4回膜貫通疎水性領域を含むポリペプチド鎖が5個集合して、その中央に塩素イオン透過孔を形成している。哺乳類ではスプライスバリアントを除いて、17サブユニット(6α、3β、3γ、1δ、3ρ、1ε、1π、1θ)がクローニングされている。哺乳類脳のGABA受容体の主要な構成サブユニットはα1、β2、γ2であり、その化学量論は2α:2β:1γあるいは2α:1β:2γと考えられている。昆虫においては、1991年に初めてショウジョウバエからのサブユニット遺伝子Rdlのクローニングが報告された。このRdlのホモログが他の昆虫からも単離されていることから、このRdlがGABA受容体サブユニットをコードする普遍的な遺伝子と考えられる。しかし、昆虫のGABA受容体がRdlのホモオリゴマーか、未知のサブユニットを含むヘテロオリゴマーかについては、今日でも明らかになっていない。
最近になって、鱗翅目害虫のHeliothis virescensからRdl遺伝子が単離され、その遺伝子を単独でアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた際に、GABA受容体のクロライドイオンチャンネルがボルテージクランプ法で検出されることが報告された(Invertebr. Neurosci. 3(4):305−15,1998)。この遺伝子をアフリカツメガエルの卵母細胞やSf9昆虫細胞などに発現させた組換え細胞は、GABA受容体に作用するアゴニストやアンタゴニストなどの殺虫剤となりうる化合物のスクリーニングに有用である。
これまでに、Rdl遺伝子は、上記のHeliothis virescensのほか、ショウジョウバエやカでその遺伝子が単離されたのみであり、様々な昆虫に有効な、GABA受容体を作用点とする殺虫剤のスクリーニングを行うためには、昆虫ごとにRdl遺伝子を取得し、スクリーニング系を構築する必要がある。
Invertebr. Neurosci. 3(4):305−15,1998
日本における主要な鱗翅目害虫としてハスモンヨトウが知られている。ハスモンヨトウの全遺伝子は解読されておらず、ハスモンヨトウに対して有効なGABA受容体を作用点とする殺虫剤のスクリーニング系を構築することは、GABA受容体サブユニット遺伝子(Rdl)が単離されていないことから、これまで実施不可能であった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、これまで単離されたことのなかったハスモンヨトウのRdl遺伝子を初めて単離した。この遺伝子を昆虫細胞などの細胞に発現させるためには、細胞を形質転換可能なベクターに組み込み、常法のベクターで細胞を形質転換する方法により形質転換体を構築することができる。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有する遺伝子。
[2] 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質。
[3] 上記[1]に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
[4] 上記[3]に記載の組換えベクターで細胞を形質転換して得られる組換え細胞。
[5] 上記[4]に記載の組換え細胞を用いたハスモンヨトウGABA受容体に作用する合成化合物をスクリーニングする方法。
単離した遺伝子を、アフリカツメガエルの卵母細胞に遺伝子導入する方法やSf9昆虫細胞を同遺伝子含有の適当なベクターで形質転換させる方法により組換え細胞を構築し、その細胞を用いて殺虫剤のスクリーニングの実施が可能になる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の遺伝子は、配列番号1に記載のDNA塩基配列のものであるが数塩基の置換を含む配列も本特許の範疇である。本発明の遺伝子は、実施例に記載のようにハスモンヨトウの受精卵から、容易に調製可能である。
本発明の蛋白質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するものであるいが、数アミノ酸の置換、脱落、挿入された配列で、昆虫細胞等に発現させた際にGABA受容体イオンチャンネル機能を有するものも本発明の範疇である。本発明のタンパク質を調製する方法は、配列番号1に記載の遺伝子を昆虫細胞で発現可能なベクター(pXinsect、pIZT、いずれもINVITROGEN社)あるいはバキュロウイルス(INVITROGEN社)に組み込み、同細胞を培養し、その培養細胞から精製することにより容易に可能である。本発明のベクターは、配列番号1に記載の遺伝子を発現可能なベクターあるいはバキュロウイルスであればいずれのものでもよい。これらのベクターは、市販されているものを適宜選択して使用することができる。
本発明のスクリーニング方法の具体例としては、調製した蛋白質を用いて合成化合物との親和性を評価するバインディングアッセイや、GABA受容体を発現させた組換え昆虫細胞を用いたパッチクランプ法や蛍光プローブ法などが挙げられる。これらの方法により活性を有する合成化合物を効率的にスクリーニングすることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明を制限するものではない。また、制限酵素は市販のものを用い、その具体的使用方法は市販品のプロトコールに従った。
(A)ハスモンヨトウGABA受容体α2サブユニット遺伝子の取得
ハスモンヨトウ受精卵2塊を乾熱滅菌したホモジナイザーに入れ、ホモジナイズした。その後、QIAGEN社RNeasy midiキットを使用し、プロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。トータルRNA5μgを鋳型とし、QIAGEN社One−Step RT−PCRキットを用い、プロトコールに従って配列番号3及び配列番号4のプライマーを使用して一本鎖cDNAの合成とPCR法によるDNA断片の増幅を行った。このDNA断片を市販ベクターpT7blueに組み込み、同ベクターで大腸菌JM109を形質転換し、アンピシリン及びX−Galを含むLBプレート上で37℃、16時間培養しコロニーを形成させた。培養後、白色のコロニーを数個選び、2mlのLB培地で培養後、常法のアルカリ抽出法でプラスミドDNAを抽出した。
さらに、得られた配列を基に、再度一本鎖cDNAの合成とPCR法によるDNA断片の増幅を行った。5’側PCR用には配列番号:5および配列番号:6のプライマーを使用した。また、3’側PCR用には、配列番号:7および配列番号:8のプライマーを使用した。得られたDNAについて、上記の方法により、遺伝子のサブクローニング及びDNAのシーケンシングを行った。3’RACE PCRについては、Clontech社SMART RACE cDNA Amplificationキットのプロトコールに従った。まず、キット添付の3’RACE CDSプライマーAと配列番号:9に示すハスモンヨトウ特異的プライマーを用いてRT−PCRを行い、一本鎖cDNAを合成した。得られたcDNA2.5μgを鋳型とし、ユニバーサルプライマーミックスA(UPM)及び配列番号:10のハスモンヨトウ特異的プライマーを用いてNested PCRを行った。これにより得られたDNA断片について、常法に従いサブクローニングを行い、DNAシーケンシングにより3’側配列を取得した。上記と同様にClontech社SMART RACE cDNA Amplificationキットを使用し、5’RACE PCRを実施した。まずキットに添付されているSMART IIAオリゴヌクレオチドと配列番号:11に示すハスモンヨトウ特異的プライマー3(GSP3)を用いてRT−PCRを行い、一本鎖CDNAを合成した。得られたcDNA2.5μgを鋳型とし、ユニバーサルプライマーミックスA(UPM)及び配列番号:12に示すハスモンヨトウ特異的プライマー4(GSP4)を用いてNested PCRを行った。さらに、得られたDNA断片を50倍希釈にし、そのうちの2.5μgを使用して再度Nested PCRを行った。この際キットに添付されているネステッドユニバーサルプライマーA(NUP)と配列番号:13のハスモンヨトウ特異的プライマー5(GSP5)を使用した。得られたDNA断片について、常法に従ってサブクローニングを行い、DNAシーケンシングにより5’側配列を取得した。
(B)ハスモンヨトウGABA受容体α2サブユニット遺伝子のプラスミドベクターへのクローニング
トータルRNA5μgを鋳型とし、QIAGEN社One−Step RT−PCRキットを用い、プロトコールに従って、配列番号:14および配列番号:15のプライマーを用いて、ハスモンヨトウGABA受容体α2サブユニット全長配列の増幅を行った。得られたDNAをプラスミドベクターpT7blueとライゲーションした。同プラスミドで大腸菌JM109を形質転換した後、アンピシリン及びX−Galを含むLBプレート(40μg/mlのX−Gal及び25μg/mlのアンピシリンを含む)上で選択を行った。37℃で16時間培養後、白いコロニーのみ数個選び、2mlのLB培地で培養後、常法に従いアルカリ抽出法でプラスミドpT7−SIGABAを抽出した。
(C)発現ベクターの構築
プラスミドベクターpUC18をHindIII及びSphIで切断し、配列番号:16(合成DNA1)および配列番号:17(合成DNA17)に示すの混合液とライゲーションした。このベクターで大腸菌JM109を形質転換し、アンピシリン及びX−Galを含むLBプレート上で37℃、16時間培養後、白いコロニーを数個選び、2mlのLB培地で培養後、常法に従いアルカリ抽出法でプラスミドDNAを抽出した。さらに、プラスミドDNAをSphI及びSalIで切断後、プラスミドpBmA:neo(インビトロジェン社)を鋳型として配列番号:18及び配列番号:19に示すプライマーを用いてPCR法により増幅させたDNA断片とライゲーションした。プラスミドDNAは常法に従い、単一のプラスミドDNAに単離した。さらにプラスミドDNAをSalI及びSmaIで切断し、配列番号20および配列番号21のプライマーを用いてPCR法により増幅させたDNA断片とライゲーションした。プラスミドDNAは常法に従い単一のプラスミドDNAに単離した。さらに、プラスミドDNAをBst1107I及びEco035Iで切断後、プラスミドpT7−SIGABAを鋳型とし配列番号23及び配列番号24に示すプライマーを用いてPCR法により増幅させたDNA断片とライゲーションした。プラスミドDNAは常法に従い単一のプラスミドpUC−GABA−neoに単離した。インビトロジェン社Express Insectのマニュアルに従い、エントリークローン及びデスチネーションベクターを作成し、最終的にハスモンヨトウGABAα2サブユニット発現プラスミドpXINsect−SlGABAを構築した。
(D)昆虫細胞Sf9を用いたGABA受容体α2サブユニットの発現
昆虫細胞Sf9にプラスミドpXINsect−SlGABA1μgを添加しゆっくりと撹拌した後、セルフェクチンを加えた。ゆっくりと撹拌した後室温で15分静置した。60mmのディッシュに移液した後、27℃で4時間反応させた。新鮮な培地に置き換えた後、さらに27℃で72時間反応させた。96穴マイクロプレートに細胞を分注し細胞をプレートの底面に接着させた後、抗生物質G418及びGentamicinを含むグレース培地を加え27℃で培養することで細胞の選択を行った。約1週間培養後、コンフルエントに達したウェルの細胞のみ48ウェルプレートに移した。このような方法で24ウェル、6ウェル、25cmフラスコで培養することにより細胞のスケールアップを行い、GABA受容体α2サブユニットを発現させた。
(E)パッチクランプ法によるイオンチャンネル機能確認
上記のように構築したハスモンヨトウGABA受容体発現細胞のイオンチャンネル機能をパッチクランプ法により確認した。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有する遺伝子。
  2. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質。
  3. 請求項1に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  4. 請求項3に記載の組換えベクターで細胞を形質転換して得られる組換え細胞。
  5. 請求項4に記載の組換え細胞を用いたハスモンヨトウGABA受容体に作用する合成化合物をスクリーニングする方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108077191A (zh) * 2017-12-29 2018-05-29 四川省农业科学院植物保护研究所 一种斜纹夜蛾幼虫群体饲养方法

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