JP2005140074A - 回転流体機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】 回転流体機械において、ロータの軸方向両端部をケーシングに支持する一対の軸受けのうち、ロータの軸方向荷重を支持する一方の軸受けとケーシングとの間に熱膨張係数の差による隙間が発生するのを防止する。
【解決手段】 ケーシング11を熱膨張係数が大きいアルミニウム系材料で構成し、ロータ22の軸方向荷重を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23r、ロータ22およびベアリングホルダ99を熱膨張係数が小さい鉄系材料で構成したので、ケーシング11および組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの熱膨張係数に差があっても、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびベアリングホルダ99間に隙間が発生するのを防止し、前記隙間によりロータ22が軸方向に移動してロータリバルブ71のシール性が低下するのを阻止することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ケーシング11を熱膨張係数が大きいアルミニウム系材料で構成し、ロータ22の軸方向荷重を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23r、ロータ22およびベアリングホルダ99を熱膨張係数が小さい鉄系材料で構成したので、ケーシング11および組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの熱膨張係数に差があっても、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびベアリングホルダ99間に隙間が発生するのを防止し、前記隙間によりロータ22が軸方向に移動してロータリバルブ71のシール性が低下するのを阻止することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ロータの両端部を第1軸受けおよび第2軸受けを介してケーシングに回転自在に支持し、ロータに作動媒体を供給・排出するロータリバルブと、作動媒体の圧力エネルギーおよびロータが回転する機械エネルギーを相互に変換するエネルギー変換手段とを該ロータに設けた回転流体機械に関する。
かかる回転流体機械は、下記特許文献1により公知である。この回転流体機械は高温高圧蒸気の圧力エネルギーを半径方向内外に2段に配置されたアキシャルピストンシリンダ群によって出力軸を回転させる機械エネルギーに変換するものであり、そのロータの軸方向両端部は各々1個のアンギュラベアリングによってケーシングに回転自在に支持されている。
上記従来の回転流体機械のロータの軸方向両端部をケーシングに支持する一対のアンギュラベアリングは、ロータの径方向荷重を支持するだけでなく、ロータを軸方向に位置決めすべく軸方向荷重も支持するようになっている。そのため、ロータとケーシングとの熱膨張係数の差によって、前記一対のアンギュラベアリング間の距離が変化して該ベアリングの耐久性が低下したり、ケーシングに対するロータの支持が不安定になってスムーズな回転が阻害されたり、アキシャルピストンシリンダ群のデッドボリューム(上死点にあるピストンの頂部とシリンダの頂部との間の空間)が変動して容積比(膨張比)が変化したりする問題があった。
この問題を解決するために、ロータの軸方向両端部をケーシングに支持する一対の軸受けのうち、一方の軸受けのみでロータの軸方向荷重を支持することで、ロータとケーシングとの間に熱膨張係数の差を吸収することが考えられる。
特開2002−256805号公報
しかしながら、上述したように一方の軸受けのみでロータの軸方向荷重を支持しても、一般に軸受けは、強度や剛性の観点から熱膨張係数の小さい鉄系材料で構成されているのに対し、ケーシングは軽量化等の観点から熱膨張係数の大きいアルミニウム系材料で構成されているため、図19に示すように回転流体機械の熱間時にケーシングと軸受けとの間に軸方向の隙間βが発生してしまい、この隙間βによってロータがケーシングに対して軸方向に変位し、ロータに作動媒体を供給・排出するロータリバルブのシール性が低下する可能性がある。
回転流体機械の熱間時にケーシングと軸受けとの間に軸方向の隙間が発生するのを防止するには、予め軸受けに軸方向の圧縮荷重を加えた状態でケーシングに組み付ければ良いが、このようにすると圧縮荷重を加えられた軸受けの摩擦抵抗が増加する問題がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ロータの軸方向両端部をケーシングに支持する一対の軸受けのうち、ロータの軸方向荷重を支持する一方の軸受けとケーシングとの間に熱膨張係数の差による隙間が発生するのを防止することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ロータの両端部を第1軸受けおよび第2軸受けを介してケーシングに回転自在に支持し、ロータに作動媒体を供給・排出するロータリバルブと、作動媒体の圧力エネルギーおよびロータが回転する機械エネルギーを相互に変換するエネルギー変換手段とを該ロータに設け、第1軸受けおよび第2軸受けのうち、第1軸受けのみで軸方向荷重を支持可能な回転流体機械であって、ロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数を略同じにし、ケーシングの熱膨張係数をロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数よりも大きくし、ケーシングにベアリングホルダを介して第1軸受けを支持し、ベアリングホルダの熱膨張係数をロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数と略同じにしたことを特徴とする回転流体機械が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記回転流体機械は膨張機であり、前記エネルギー変換手段は斜板により作動するアキシャルピストンシリンダ群であることを特徴とする回転流体機械が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、斜板を斜板ホルダを介してケーシングに支持し、斜板ホルダの熱膨張係数をベアリングホルダの熱膨張係数と略同じにしたことを特徴とする回転流体機械が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、斜板ホルダおよびベアリングホルダを同一部材で構成したことを特徴とする回転流体機械が提案される。
尚、実施例の組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは本発明の第1軸受けに対応し、実施例のラジアルベアリング24は本発明の第2軸受けに対応し、実施例のアキシャルピストンシリンダ群56は本発明のエネルギー変換手段に対応し、実施例の膨張機Eは本発明の回転流体機械に対応する。
請求項1の構成によれば、ロータの両端部をケーシングに回転自在に支持する第1軸受けおよび第2軸受けのうち、第1軸受けのみで軸方向荷重を支持するので、第1軸受けでロータをケーシングに対して軸方向に位置決めしながら、ケーシングおよびロータの軸方向の熱膨張係数の差によって第2軸受けとロータとの間に軸方向の荷重が加わるのを防止することができる。またロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数を略同じにし、ケーシングの熱膨張係数をロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数よりも大きくし、ケーシングにベアリングホルダを介して第1軸受けを支持し、ベアリングホルダの熱膨張係数をロータの熱膨張係数および第1軸受けの熱膨張係数と略同じにしたので、ケーシングおよび第1軸受けの熱膨張係数に差があっても、第1軸受けおよびベアリングホルダ間に隙間が発生するのを防止し、前記隙間によりロータが軸方向に移動してロータリバルブのシール性が低下するのを阻止することができるだけでなく、所望の強度および剛性を確保しながら軽量化を図ることができる。
請求項2の構成によれば、圧力エネルギーを機械エネルギーに変換する膨張機のエネルギー変換手段を軸方向長さが大であるアキシャルピストンシリンダ群で構成したので、低温時および高温時の温度差が大きいためにケーシングおよびロータの軸方向の熱膨張量の差が著しくなっても、第1、第2軸受けに過大な変動荷重が加わるのを防止することができる。しかもピストンおよびシリンダ間のデッドボリュームを安定させて膨張機の容積比(膨張比)が変化するのを防止することができる。
請求項3の構成によれば、斜板をケーシングに支持する斜板ホルダの熱膨張係数をベアリングホルダの熱膨張係数と略同じにしたので、アキシャルピストンシリンダ群のピストンと斜板との接触位置のずれを防止して焼付きの発生や摩擦抵抗の増加を防止することができ、しかも斜板に当接するピストンとロータに設けられたシリンダとの位置関係を安定させて膨張機の容積比(膨張比)が変化するのを一層効果的に防止することができる。
請求項4の構成によれば、斜板ホルダおよびベアリングホルダを同一部材で構成したので、膨張機の容積比(膨張比)が変化するのを一層効果的に防止することができるだけでなく、それらを別部材で構成する場合に比べて部品点数を削減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図14は本発明の第1実施例を示すもので、図1は膨張機の縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3−3線矢視図、図4は図1の4部拡大図、図5は図1の5部拡大図、図6はロータの分解斜視図、図7は図4の7−7線断面図、図8は図4の8−8線断面図、図9は図4の9部拡大図、図10は図5の10−10線断面図、図11は図5の11−11線断面図、図12は図5の12−12線断面図、図13は図5の13−13線断面、図14は組み合わせアンギュラベアリングの温度上昇と隙間の大きさとの関係を示すグラフである。
図1〜図9に示すように、本実施例の膨張機Eは例えばランキンサイクル装置に使用されるもので、作動媒体としての高温高圧蒸気の熱エネルギーおよび圧力エネルギーを機械エネルギーに変換して出力する。膨張機Eのケーシング11は、ケーシング本体12と、ケーシング本体12の前面開口部にシール部材13を介して複数本のボルト14…で結合される前部カバー15と、ケーシング本体12の後面開口部にシール部材16を介して複数本のボルト17…で結合される後部カバー18と、ケーシング本体12の下面開口部にシール部材19を介して複数本のボルト20…で結合されるオイルパン21とで構成される。
ケーシング11の中央を前後方向に延びる軸線Lまわりに回転可能に配置されたロータ22は、その前部を前部カバー15にベアリングホルダ99を介して保持されたアンギュラベアリング23f,23rによって支持され、その後部をケーシング本体12に設けたラジアルベアリング24によって支持される。前部カバー15の後面に斜板ホルダ28が一体に形成されており、この斜板ホルダ28にアンギュラベアリング30を介して斜板31が回転自在に支持される。斜板31の軸線は前記ロータ22の軸線Lに対して傾斜しており、その傾斜角は固定である。
ロータ22は、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rで前部カバー15に支持された出力軸32と、出力軸32の後部に相互に所定幅の切欠57,58(図4および図9参照)を介して一体に形成された3個のスリーブ支持フランジ33,34,35と、後側のスリーブ支持フランジ35にメタルガスケット36を介して複数本のボルト37…で結合され、前記ラジアルベアリング24でケーシング本体12に支持されたロータヘッド38と、3個のスリーブ支持フランジ33,34,35に前方から嵌合して複数本のボルト39…で前側のスリーブ支持フランジ33に結合された断熱カバー40とを備える。
3個のスリーブ支持フランジ33,34,35には各々5個のスリーブ支持孔33a…,34a…,35a…が軸線Lまわりに72°間隔で形成されており、それらのスリーブ支持孔33a…,34a…,35a…に5本のシリンダスリーブ41…が後方から嵌合する。各々のシリンダスリーブ41の後端にはフランジ41aが形成されており、このフランジ41aが後側のスリーブ支持フランジ35のスリーブ支持孔35aに形成した段部35bに嵌合した状態でメタルガスケット36に当接して軸線L方向に位置決めされる(図9参照)。各々のシリンダスリーブ41の内部にピストン42が摺動自在に嵌合しており、ピストン42の前端は斜板31に形成したディンプル31aに当接するとともに、ピストン42の後端とロータヘッド38との間に蒸気の膨張室43が区画される。
前部カバー15の内周に嵌合する概略円筒状のベアリングホルダ99は、その前面に重ね合わされた板状のセットプレート92と共にボルト93…で固定され、更に前部カバー15の前面にシール部材94を介してポンプボディ95が重ね合わされてボルト96…で固定される。従って、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは、ベアリングホルダ99の段部とセットプレート92との間に挟まれて軸線L方向に固定される。
ベアリングホルダ99、セットプレート92および組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは、ロータ22と同じく、熱膨張係数が比較的に小さい鉄系材料で構成される。
組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを支持する出力軸32に形成したフランジ32dと組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースとの間に所定厚さのシム97が挟持され、出力軸32の外周に螺合するナット98で組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースが締め付けられる。その結果、出力軸32は組み合わせアンギュラベアリング23f,23rに対して、つまりケーシング11に対して軸線L方向に位置決めされる。
組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは相互に逆向きに装着されており、出力軸32を径方向に支持するだけでなく、軸線L方向にも移動不能に支持している。即ち、一方の組み合わせアンギュラベアリング23fは出力軸32が前方に移動するのを規制し、他方の組み合わせアンギュラベアリング23rは出力軸32が後方に移動するのを規制するように配置される。
ロータ22の前部を支持する軸受けに組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを使用したので、膨張機Eの所定の運転状態において膨張室43…で発生する軸線L方向両側への荷重は、その一方がロータ22を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースに伝達され、その他方が斜板31および前部カバー15の斜板ホルダ28を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのアウターレースに伝達される。これら二つの荷重は、斜板31を支持するアンギュラベアリング30とロータ22を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとに挟まれた前部カバー15の斜板ホルダ28を圧縮するもので、機構部の剛性は高いものとなる。しかも本実施例の如く、斜板ホルダ28を前部カバー15と一体に構成することで、更に剛性が高く簡略な構造となる。
更に、斜板31を支持するアンギュラベアリング30とロータ22を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとを前部カバー15に組み込むことにより、「ロータ22およびピストン42…」、「前部カバー15のアセンブリ」、「ポンプボディ95」というユニット単位で組立作業が行え、ピストン42…の組み替えやオイルポンプ49の交換といった作業の効率が改善される。
またロータ22の後端部を構成するロータヘッド38を支持するラジアルベア24は径方向の荷重のみを支持する通常のボールベアリングであって、ロータヘッド38がラジアルベアリング24に対して軸線L方向に摺動できるように、ロータヘッド38とラジアルベアリング24のインナーレースとの間に隙間α(図5参照)が形成される。
ロータ22と一体の出力軸32内部に軸線L上に延びるオイル通路32aが形成されており、このオイル通路32aの前端は径方向に分岐して出力軸32の外周の環状溝32bに連通する。ロータ22の中央のスリーブ支持フランジ34の径方向内側位置において、前記オイル通路32aの内周にシール部材44を介してオイル通路閉塞部材45が螺合しており、その近傍のオイル通路32aから径方向外側に延びる複数のオイル孔32c…が出力軸32の外周面に開口する。
ポンプボディ95の前面に形成した凹部95aと、ポンプボディ95の前面にシール部材46を介して複数本のボルト47…で固定したポンプカバー48との間に配置されたトロコイド型のオイルポンプ49は、前記凹部95aに回転自在に嵌合するアウターロータ50と、出力軸32の外周に固定されてアウターロータ50に噛合するインナーロータ51とを備える。オイルパン21の内部空間はオイルパイプ52およびポンプボディ95のオイル通路95bを介してオイルポンプ49の吸入ポート53に連通し、オイルポンプ49の吐出ポート54はポンプボディ95のオイル通路95cを介して出力軸32の環状溝32bに連通する。
シリンダスリーブ41に摺動自在に嵌合するピストン42はエンド部61、中間部62およびトップ部63からなる。エンド部61は斜板31のディンプル31aに当接する球面部61aを有する部材であって、中間部62の先端に溶接で結合される。中間部62は大容積の中空空間62aを有する円筒状の部材であって、トップ部63に近い外周部に直径が僅かに減少した小径部62bを有しており、そこを半径方向に貫通するように複数のオイル孔62c…が形成されるとともに、小径部62bよりも前方の外周部に複数本の螺旋状のオイル溝62d…が形成される。膨張室43に臨むトップ部63は中間部62と一体に形成されており、その内面に形成された隔壁63aと、その後端面に嵌合して溶接された蓋部材64との間に断熱空間65(図9参照)が形成される。トップ部63の外周には2本の圧縮リング66,66と1本のオイルリング67とが装着されており、オイルリング67が嵌合するオイルリング溝63bは複数のオイル孔63c…を介して中間部62の中空空間62aに連通する。
ピストン42のエンド部61および中間部62は高炭素鋼製、トップ部63はステンレス製であり、そのうちエンド部61には高周波焼入れが、中間部62には焼入れが施される。その結果、斜板31に大きな面圧で当接するエンド部61の耐高面圧性と、厳しい潤滑条件でシリンダスリーブ41に摺接する中間部62の耐摩耗性と、膨張室43に臨んで高温高圧に晒されるトップ部63の耐熱・耐蝕性とが満たされる。
シリンダスリーブ41の中間部外周に環状溝41b(図6および図9参照)が形成されており、この環状溝41bに複数のオイル孔41c…が形成される。シリンダスリーブ41の回転方向の取付位置に関わらず、出力軸32に形成したオイル孔32c…と、ロータ22の中央のスリーブ支持フランジ34に形成したオイル孔34b…(図4および図6参照)とが環状溝41bに連通する。ロータ22の前側および後側のスリーブ支持フランジ33,35と断熱カバー40との間に形成された空間68は、断熱カバー40に形成したオイル孔40a…(図4および図7参照)を介してケーシング11の内部空間に連通する。
ロータ22の前側のスリーブ支持フランジ33の後面にボルト37…で結合されたロータヘッド38の前側もしくは膨張室43…側に環状の蓋部材69が溶接されており、蓋部材69の背面もしくは後面に環状の断熱空間70(図9参照)が区画される。ロータヘッド38はノックピン55により後側のスリーブ支持フランジ35に対して回転方向に位置決めされる。
尚、5個のシリンダスリーブ41…と5個のピストン42…とは本発明のアキシャルピストンシリンダ群56を構成する。
次に、ロータ22の5個の膨張室43…に蒸気を供給・排出するロータリバルブ71の構造を、図5および図10〜図13に基づいて説明する。
図5に示すように、ロータ22の軸線Lに沿うように配置されたロータリバルブ71は、バルブ本体部72と、固定側バルブプレート73と、可動側バルブプレート74とを備える。可動側バルブプレート74は、ロータ22の後面にノックピン75で回転方向に位置決めされた状態で、オイル通路閉塞部材45(図4参照)に螺合するボルト76で固定される。尚、ボルト76はロータヘッド38を出力軸32に固定する機能も兼ね備えている。
図5から明らかなように、可動側バルブプレート74に平坦な摺動面77を介して当接する固定側バルブプレート73は、バルブ本体部72の前面の中心に1本のボルト78で固定されるとともに、バルブ本体部72の外周部に環状の固定リング79および複数本のボルト80で固定される。その際に、固定リング79の内周に形成した段部79aが固定側バルブプレート73の外周にインロウ嵌合するように圧入され、かつ固定リング79の外周に形成した段部79bがバルブ本体部72の外周にインロウ嵌合することで、バルブ本体部72に対する固定側バルブプレート73の同軸性が確保される。またバルブ本体部72と固定側バルブプレート73との間に、固定側バルブプレート73を回転方向に位置決めするノックピン81が配置される。
従って、ロータ22が回転すると、可動側バルブプレート74および固定側バルブプレート73は摺動面77において相互に密着しながら相対回転する。固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74は、カーボンやセラミックス等の耐久性に優れた材質で構成されており、更にまたその摺動面77に耐熱性、潤滑性、耐蝕性、耐摩耗性を有する部材を介在させたりコーティングしたりすれば更に耐久性を向上できる。
ステンレス製のバルブ本体部72は、大径部72aおよび小径部72bを備えた段付き円柱状の部材であって、その大径部72aおよび小径部72bの外周面が、それぞれシール部材82,83を介して後部カバー18の円形断面の支持面18a,18bに軸線L方向に摺動自在に嵌合し、バルブ本体部72の外周面に植設したピン84が後部カバー18に軸線L方向に形成した切欠18cに嵌合することで回転方向に位置決めされる。後部カバー18に軸線Lを囲むように複数個のプリロードスプリング85…が支持されており、これらプリロードスプリング85…に大径部72aおよび小径部72b間の段部72cを押圧されたバルブ本体部72は、固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74の摺動面77を密着させるべく前方に向けて付勢される。
バルブ本体部72の後面に接続された蒸気供給パイプ86は、バルブ本体部72の内部に形成した第1蒸気通路P1と、固定側バルブプレート73に形成した第2蒸気通路P2とを介して摺動面77に連通する。またケーシング本体12および後部カバー18とロータ22との間にはシール部材87でシールされた蒸気排出室88が形成されており、この蒸気排出室88はバルブ本体部72の内部に形成した第6、第7蒸気通路P6,P7と、固定側バルブプレート73に形成した第5蒸気通路P5とを介して摺動面77に連通する。バルブ本体部72と固定側バルブプレート73との合わせ面には、第1、第2蒸気通路P1,P2の接続部を囲むシール部材89と、第5、第6蒸気通路P5,P6の接続部を囲むシール部材90とが設けられる。
軸線Lを囲むように等間隔で配置された5個の第3蒸気通路P3…が可動側バルブプレート74を貫通しており、軸線Lを囲むようにロータ22に形成された5個の第4蒸気通路P4…の両端が、それぞれ前記第3蒸気通路P3…および前記膨張室43…に連通する。第2蒸気通路P2の摺動面77に開口する部分は円形であるのに対し、第5蒸気通路P5の摺動面77に開口する部分は軸線Lを中心とする円弧状に形成される。
次に、上記構成を備えた本実施例の膨張機Eの作用を説明する。
蒸発器で水を加熱して発生した高温高圧蒸気は蒸気供給パイプ86からロータリバルブ71のバルブ本体部72に形成した第1蒸気通路P1と、このバルブ本体部72と一体の固定側バルブプレート73に形成した第2蒸気通路P2とを経て、可動側バルブプレート74との摺動面77に達する。そして摺動面77に開口する第2蒸気通路P2はロータ22と一体に回転する可動側バルブプレート74に形成した対応する第3蒸気通路P3に所定の吸気期間において瞬間的に連通し、高温高圧蒸気は第3蒸気通路P3からロータ22に形成した第4蒸気通路P4を経てシリンダスリーブ41内の膨張室43に供給される。
ロータ22の回転に伴って第2蒸気通路P2および第3蒸気通路P3の連通が絶たれた後も膨張室43内で高温高圧蒸気が膨張することで、シリンダスリーブ41に嵌合するピストン42が上死点から下死点に向けて前方に押し出され、その前端のエンド部61が斜板31のディンプル31aを押圧する。その結果、ピストン42が斜板31から受ける反力でロータ22に回転トルクが与えられる。そしてロータ22が5分の1回転する毎に、相隣り合う新たな膨張室43内に高温高圧蒸気が供給されてロータ22が連続的に回転駆動される。
ロータ22の回転に伴って下死点に達したピストン42が斜板31に押圧されて上死点に向かって後退する間に、膨張室43から押し出された低温低圧蒸気は、ロータ22の第4蒸気通路P4と、可動側バルブプレート74の第3蒸気通路P3と、摺動面77と、固定側バルブプレート73の円弧状の第5蒸気通路P5と、バルブ本体部72の第6、第7蒸気通路P6,P7とを経て蒸気排出室88に排出され、そこから凝縮器に供給される。
ロータ22の回転に伴って出力軸32に設けたオイルポンプ49が作動し、オイルパン21からオイルパイプ52、ポンプボディ95のオイル通路95b、吸入ポート53を経て吸入されたオイルが吐出ポート54から吐出され、ポンプボディ95のオイル通路95c、出力軸32のオイル通路32a、出力軸32の環状溝32b、出力軸32のオイル孔32c…、シリンダスリーブ41の環状溝41bおよびシリンダスリーブ41のオイル孔41c…を経て、ピストン42の中間部62に形成した小径部62bとシリンダスリーブ41との間の空間に供給される。そして前記小径部62bに保持されたオイルの一部は、ピストン42の中間部62に形成した螺旋状のオイル溝62d…に流れてシリンダスリーブ41との摺動面を潤滑し、また前記オイルの他の一部はピストン42のトップ部63に設けた圧縮リング66,66およびオイルリング67とシリンダスリーブ41との摺動面を潤滑する。
供給された高温高圧蒸気の一部が凝縮した水が膨張室43からシリンダスリーブ41およびピストン42の摺動面に浸入してオイルに混入することは避けられず、そのために前記摺動面の潤滑条件は厳しいものとなるが、必要量のオイルをオイルポンプ49から出力軸32の内部を通してシリンダスリーブ41およびピストン42の摺動面に直接供給することで、充分な油膜を維持して潤滑性能を確保するとともにオイルポンプ49の小型化を図ることができる。
シリンダスリーブ41およびピストン42の摺動面からオイルリング67によって掻き取られたオイルは、オイルリング溝63bの底部に形成したオイル孔63c…からピストン42の内部の中空空間62aに流入する。前記中空空間62aはピストン42の中間部62を貫通する複数のオイル孔62c…を介してシリンダスリーブ41の内部に連通しており、かつシリンダスリーブ41の内部は複数のオイル孔41c…を介して該シリンダスリーブ41の外周の環状溝41bに連通している。環状溝41bの周囲はロータ22の中央のスリーブ支持フランジ34によって覆われているが、スリーブ支持フランジ34にはオイル孔34bが形成されているため、ピストン42の中空空間62a内のオイルは遠心力で半径方向外側に付勢され、スリーブ支持フランジ34のオイル孔34bを通して断熱カバー40内の空間68に排出され、そこから断熱カバー40のオイル孔40a…を通してオイルパン21に戻される。その際に、前記オイル孔34bはスリーブ支持フランジ34の半径方向外端よりも軸線L寄りに偏倚した位置にあるため、そのオイル孔34bよりも半径方向外側にあるオイルは遠心力でピストン42の中空空間62aに保持される。
このように、ピストン42の内部の中空空間62aに保持されたオイルとピストン42の外周の小径部62bとに保持されたオイルとは、膨張室43の容積が増加する膨張行程において前記小径部62bからトップ部63側に供給され、また膨張室43の容積が減少する圧縮行程において前記小径部62bからエンド部61側に供給されるため、ピストン42の軸方向全域を確実に潤滑することができる。またピストン42の中空空間62aの内部でオイルが流動することで、高温高圧蒸気に晒されるトップ部63の熱を低温のエンド部61に伝えてピストン42の温度が局部的に上昇するのを回避することができる。
第4蒸気通路P4から高温高圧蒸気が膨張室43に供給されたとき、膨張室43に臨むピストン42のトップ部63と中間部62との間には断熱空間65が形成されており、また膨張室43に臨むロータヘッド38にも断熱空間70が形成されているため、膨張室43からピストン42およびロータヘッド38への熱逃げを最小限に抑えて膨張機Eの性能向上に寄与することができる。またピストン42の内部に大容積の中空空間62aを形成したので、ピストン42の重量を低減することができるだけでなく、ピストン42の熱マスを減少させて膨張室43からの熱逃げを更に効果的に低減することができる。
後側のスリーブ支持フランジ35とロータヘッド38との間にメタルガスケット36を介在させて膨張室43をシールしたので、肉厚の大きい環状のシール部材を介して膨張室43をシールする場合に比べて、シールまわりのデッドボリュームを減らすことができ、これにより膨張機Eの容積比(膨張比)を大きく確保し、熱効率を高めて出力の向上を図ることができる。またシリンダスリーブ41をロータ22と別体で構成したので、ロータ22の材質に制約されずに熱伝導性、耐熱性、強度、耐摩耗性等を考慮してシリンダスリーブ41の材質を選択することができ、しかも摩耗・損傷したシリンダスリーブ41だけを交換することができるので経済的である。
またロータ22の外周面に円周方向に形成した2個の切欠57,58からシリンダスリーブ41の外周面が露出するので、ロータ22の重量を軽減できるだけでなく、ロータ22の熱マスを減少させて熱効率の向上を図ることができ、しかも前記切欠57,58を断熱空間として機能させることでシリンダスリーブ41からの熱逃げを抑制することができる。更に、ロータ22の外周部を断熱カバー40で覆ったので、シリンダスリーブ41からの熱逃げを一層効果的に抑制することができる。
ロータリバルブ71は固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74間の平坦な摺動面77を介してアキシャルピストンシリンダ群56に蒸気を供給・排出するので、蒸気のリークを効果的に防止することができる。なぜならば、平坦な摺動面77は高精度の加工が容易なため、円筒状の摺動面に比べてクリアランスの管理が容易であるからである。しかも複数本のプリロードスプリング85…でバルブ本体部72にプリセット荷重を与えて固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74の摺動面77に面圧を発生させるので、摺動面77からの蒸気のリークを一層効果的に抑制することができる。
またロータリバルブ71のバルブ本体部72が熱膨張係数の大きいステンレス製であり、このバルブ本体72に固定される固定側バルブプレート73が熱膨張係数の小さいカーボン製あるいはセラミックス製であるため、熱膨張係数の差によって両者間のセンタリングがずれる可能性があるが、固定リング79の内周の段部79aを固定側バルブプレート73の外周に圧入によりインロウ嵌合させ、かつ固定リング79の外周の段部79bをバルブ本体部72の外周にインロウ嵌合させた状態で、固定リング79を複数本のボルト80…でバルブ本体部72に固定したので、インロウ嵌合の調芯作用により固定側バルブプレート73をバルブ本体部72に対して精密にセンタリングし、蒸気の供給・排出タイミングのずれを防止して膨張機Eの性能低下を防止することができる。しかもボルト80…の締結力で固定側バルブプレート73とバルブ本体部72との当接面を均一に密着させ、その当接面からの蒸気の漏れを抑制することができる。
更に、後部カバー18をケーシング本体12から取り外すだけで、ケーシング本体12に対してロータリバルブ71を着脱することができるので、修理、清掃、交換等のメンテナンス作業性が大幅に向上する。また高温高圧蒸気が通過するロータリバルブ71は高温になるが、オイルによる潤滑が必要な斜板31や出力軸32がロータ22を挟んでロータリバルブ71の反対側に配置されるので、高温となるロータリバルブ71の熱でオイルが加熱されて斜板31や出力軸32の潤滑性能が低下するのを防止することができる。またオイルはロータリバルブ71を冷却して過熱を防止する機能も発揮する。
ところで、膨張機Eを組み立てる際にシリンダスリーブ41の底部(即ち、ロータヘッド38に支持された蓋部材69)およびピストン42の頂部間のデッドボリュームの大きさ、つまりピストン42が上死点にあるときの作動室43の容積を調整する必要がある。出力軸32のフランジ32dと組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースとの間に介在するシム97を薄くすると、出力軸32が前方(図1の右側)に移動するため、ロータヘッド38も前方に移動するが、ピストン42は斜板31に規制されて前方に移動できないため、前記デッドボリュームは減少する。逆に、前記シム97を厚くすると、出力軸32と共にロータヘッド38が後方(図1の左側)に移動するため、前記デッドボリュームは増加する。その結果、シム97の交換だけでデッドボリュームを任意に調整することが可能になり、デッドボリュームの調整に要する工程を削除して時間を大幅に節減することができる。
また所定の厚さを有する単一のシム97を出力軸32のフランジ32dと組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとの間に挟み、斜板31を支持するアンギュラベアリング30およびロータ22を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを組み込んだ前部カバー15と、ピストン42…を組み込んだロータ22とを一つのナット98で締め付けるだけでデッドボリュームを調整することができるので、従来の前後2個のシムの厚さをそれぞれ調整する場合に比べて調整作業を簡単に行うことができる。しかもデッドボリュームの調整に際して、ピストン42…を組み込んだロータ22をケーシング本体12に組み付けたままで良いため、、調整後のデッドボリュームの確認作業がピストン42…および斜板31の接触状態を直接見ながら行えるようになる。
上述のようにして、シム97の厚さを変更することで組み合わせアンギュラベアリング23f,23rに対して出力軸32の位置を前後に調整すると、ロータ22の後端部のロータヘッド38の位置も前後に移動するが、そのロータヘッド38はケーシング本体12との間に設けたラジアルベアリング24のインナーレースに対して軸線L方向に摺動自在であるため、出力軸32の位置の調整に支障を来すことがない。
而して、膨張室43に供給された高温高圧蒸気の圧力でピストン42がシリンダスリーブ41から押し出される方向に付勢されると、ピストン42の押圧力は斜板31、アンギュラベアリング30、斜板ホルダ28および前部カバー15を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのアウターレースを前方(図1の右側)に押圧し、前記ピストン42の押圧力と逆向きのシリンダスリーブ41の押圧力は、ロータヘッド38および出力軸32を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースを後方(図1の左側)に押圧する。即ち、膨張室43に供給された高温高圧蒸気により発生する荷重は組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの内部で打ち消され、ケーシング本体12に伝達されることはない。
出力軸32、3個のスリーブ支持フランジ33,34,35、ロータヘッド38および断熱カバー40で構成されたロータ22は強度および剛性を得るために熱膨張係数が比較的に小さい鉄系材料で構成されているのに対し、そのロータ22を組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24を介して支持するケーシング11は軽量化を図るべく熱膨張係数が比較的に大きいアルミニウム系材料で構成されているため、膨張機Eの低温時と高温時とで特に軸線Lに沿う方向の熱伸びに差が発生する。
ロータ22よりも熱膨張係数が大きいケーシング11は、高温時にはロータ22よりも余分に膨張して軸線L方向の寸法が相対的に増加し、逆に低温時には余分に収縮して軸線L方向の寸法が相対的に減少する。このとき、ケーシング11とロータ22とは組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを介して軸線L方向に位置決めされているため、両者の熱膨張係数の差はラジアルベアリング24のインナーレースに対するロータヘッド38の摺動により吸収され、組み合わせアンギュラベアリング23f,23r、ラジアルベアリング24およびロータ22に軸線L方向の過大な荷重が作用するのが防止される。これにより、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24の耐久性が向上するだけでなく、ロータ22の支持を安定させてスムーズな回転を可能にすることができ、しかも温度変化に伴うシリンダスリーブ41の頂部およびピストン42の頂部間のデッドボリュームの変動を防止することができる。
なぜならば、仮にロータ22の両端部がケーシング11に軸方向に移動不能に拘束されているとすると、低温時にはロータ22に対してケーシング11が軸線L方向に収縮しようとするため、ケーシング11の一部である斜板ホルダ28に支持された斜板31に頭部が当接するピストン42が後方に押圧され、かつケーシング11にラジアルベアリング24を介して支持されたロータヘッド38が前方に押圧されることで、ピストン42がシリンダスリーブ41の内部に押し込まれてデッドボリュームが減少するからである。逆に、高温時にはロータ22に対してケーシング11が軸線L方向に伸長しようとするため、ピストン42がシリンダスリーブ41の内部から引き出されてデッドボリュームが増加することになり、暖機完了後の通常運転状態における高温高圧蒸気の初期容積の増大、つまり膨張機Eの容積比(膨張比)の低下による熱効率の低下が発生してしまう。
それに対して、本実施例ではロータ22がケーシング11に対して軸線L方向に浮動状態で支持されているため、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24の軸受け間の間隙の増大および予荷重の低下が防止され、温度変化に伴うデッドボリュームの変動が防止される。これにより、膨張機Eの容積比(膨張比)の変動を防止して安定した性能を確保することができる。
特に、高温高圧蒸気を作動媒体として使用する膨張機Eでは、高温時および低温時の温度差が大きくなるため、上記効果が有効に発揮される。また高温高圧蒸気が供給されるロータリバルブ71の近傍は高温時および低温時の温度差が大きくなるが、そのロータリバルブ71に近い側に配置されたラジアルベアリング24に対してロータヘッド38が軸線L方向に摺動可能なため、ケーシング11およびロータ22の熱膨張係数の差を支障なく吸収することができる。
またロータリバルブ71の固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74のうち、ケーシング11に支持された固定側バルブプレート73はロータ22に支持された可動側バルブプレート74に向けてプリロードスプリング85…の弾発力で付勢されているため、温度変化に伴ってケーシング11およびロータ22の軸線L方向の位置関係が変動しても、固定側バルブプレート73および可動側バルブプレート74の摺動面77のシール性が損なわれる虞はない。それどころか、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24に過大な荷重が作用するのが防止されてロータ22の回転面が安定するため、前記摺動面77のシール性が向上して蒸気のリーク量を減少させることができる。
それに加え、熱膨張係数が比較的に小さい鉄系材料で構成された組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを、熱膨張係数が比較的に大きいアルミニウム系材料で構成されたケーシング11に直接支持することなく、ケーシング11に固定した鉄系材料よりなるベアリングホルダ99を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rをケーシング11に支持したので、ケーシング11の熱膨張係数および組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの熱膨張係数に差があっても、図14に示すように、ベアリングホルダ99と組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとの間に熱伸びの差に起因する隙間β(図19参照)が発生するのを抑制し、この隙間βによりロータ22が軸線L方向に移動してロータリバルブの摺動面77のシール性が低下するのを防止することができる。
図15〜図18は本発明の第2実施例を示すもので、図15は膨張機の組み合わせアンギュラベアリングの周囲の拡大図、図16は熱伸びにより膨張機の容積比が変化する理由を説明する図、図17は膨張機のC1ゾーンおよびC2ゾーンの温度を比較するグラフ、図18はC2ゾーンの温度に対するアキシャルピストンシリンダ群のデッドボリュームの変化を示すグラフである。
第1実施例では斜板ホルダ28が前部カバー15と一体に形成されているが、図15に示す第2実施例では、斜板ホルダ28が前部カバー15から分離されてベアリングホルダ99と一体に形成されている。一体化されたベアリングホルダ99および斜板ホルダ28は、それらにボルト93…で固定されたセットプレート92と共に、ボルト100…によって前部カバー15に固定される。斜板ホルダ28およびベアリングホルダ99は、第1実施例のベアリングホルダ99と同様に、熱膨張係数の小さい鉄系材料で構成される。
この第2実施例によれば、アルミニウム系材料で構成された前部カバー15の熱膨張係数に比べて斜板ホルダ28の熱膨張係数が小さいことで、ケーシング11に対する斜板ホルダ28の熱伸びによる位置ずれを最小限に抑え、ピストン42のエンド部61と斜板31のディンプル31aとの接触位置のずれを防止して焼付きの発生や摩擦抵抗の増加を防止することができる。しかも斜板31に当接するピストン42とロータ22に設けられたシリンダスリーブ41との軸線L方向の位置関係を安定させ、膨張機Eの容積比(膨張比)が変化するのを一層効果的に防止することができる。
以下、その理由を図16に基づいて説明する。
組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの左端を熱伸びの起点とし、そこからロータ22のシリンダスリーブ41の頂部までをゾーンA1とすると、ゾーンA1はロータ22に対応するゾーンB1と出力軸32に対応するゾーンC1とで構成される。一方、熱伸びの起点から上死点にあるピストン42の頂部までをゾーンA2とすると、ゾーンA2はピストン42に対応するゾーンB2と斜板ホルダ28に対応するゾーンC2とで構成される。
ゾーンA1の軸線L方向の長さはゾーンA2の軸線L方向の長さよりも僅かに長く設定されており、その長さの差が、つまりシリンダスリーブ41の頂部と上死点にあるピストン42の頂部との距離がデッドボリュームとなる。ロータ22およびピストン42は共に鉄系材料で構成されているため、膨張機Eの冷間時と熱間時とでゾーンB1およびゾーンB2の軸線L方向の長さの差は殆ど変化しない。
またゾーンC2にある斜板ホルダ28は特別の冷却機能を持たないのに対し、ゾーンC1にある出力軸32は内部を流れる潤滑油により冷却されるため、ゾーンC2に対してゾーンC1は低温になる(図17参照)。しかも鉄系材料よりなる出力軸32は熱膨張係数が小さいにの対し、斜板ホルダ28を熱膨張係数が大きいアルミニウム系材料で構成した場合には、その相乗効果で膨張機Eの熱間時におけるゾーンC2の熱伸びは、ゾーンC1の熱伸びよりも大幅に大きくなる。その結果、ゾーンA1の熱伸びに比べてゾーンA2の熱伸びが大きくなり、シリンダスリーブ41の頂部およびピストン42の頂部間のデッドボリュームが減少し、膨張機Eの容積比が設計値から外れて熱効率の低下の原因となってしまう。
しかしながら、第2実施例では斜板ホルダ28を熱膨張係数が小さい鉄系材料で構成しているため、ゾーンC1およびゾーンC2の熱伸びの差を減少させ、図18に示すように、シリンダスリーブ41の頂部と上死点にあるピストン42の頂部との間のデッドボリューム(デッドストローク)の減少量を小さくし、膨張機Eの容積比が設計値から外れるのを最小限に抑えて熱効率の低下を防止することができる。
しかもベアリングホルダ99および斜板ホルダ28を同一部材で構成したので、部品点数の削減に寄与することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施例ではランキンサイクル装置の膨張機Eを例示したが、本発明の回転流体機械は前記膨張機E以外の任意の用途に適用可能である。
また実施例ではケーシング11をアルミニウム系材料とし、ロータ22、出力軸32、ベアリングホルダ99および斜板ホルダ28(第2実施例)を鉄系材料としているが、請求項1で規定された熱膨張係数の大小関係を満たすものであれば、上記以外の任意の材料を選択することができる。
また第2実施例ではベアリングホルダ99および斜板ホルダ28を同一部材で構成しているが、それらを別部材で構成することができる。
11 ケーシング
22 ロータ
23f 組み合わせアンギュラベアリング(第1軸受け)
23r 組み合わせアンギュラベアリング(第1軸受け)
24 ラジアルベアリング(第2軸受け)
28 斜板ホルダ
31 斜板
56 アキシャルピストンシリンダ群(エネルギー変換手段)
71 ロータリバルブ
99 ベアリングホルダ
E 膨張機(回転流体機械)
22 ロータ
23f 組み合わせアンギュラベアリング(第1軸受け)
23r 組み合わせアンギュラベアリング(第1軸受け)
24 ラジアルベアリング(第2軸受け)
28 斜板ホルダ
31 斜板
56 アキシャルピストンシリンダ群(エネルギー変換手段)
71 ロータリバルブ
99 ベアリングホルダ
E 膨張機(回転流体機械)
Claims (4)
- ロータ(22)の両端部を第1軸受け(23f,23r)および第2軸受け(24)を介してケーシング(11)に回転自在に支持し、ロータ(22)に作動媒体を供給・排出するロータリバルブ(71)と、作動媒体の圧力エネルギーおよびロータ(22)が回転する機械エネルギーを相互に変換するエネルギー変換手段とを該ロータ(22)に設け、第1軸受け(23f,23r)および第2軸受け(24)のうち、第1軸受け(23f,23r)のみで軸方向荷重を支持可能な回転流体機械であって、
ロータ(22)の熱膨張係数および第1軸受け(23f,23r)の熱膨張係数を略同じにし、ケーシング(11)の熱膨張係数をロータ(22)の熱膨張係数および第1軸受け(23f,23r)の熱膨張係数よりも大きくし、ケーシング(11)にベアリングホルダ(99)を介して第1軸受け(23f,23r)を支持し、ベアリングホルダ(99)の熱膨張係数をロータ(22)の熱膨張係数および第1軸受け(23f,23r)の熱膨張係数と略同じにしたことを特徴とする回転流体機械。 - 前記回転流体機械は膨張機(E)であり、前記エネルギー変換手段は斜板(31)により作動するアキシャルピストンシリンダ群(56)であることを特徴とする、請求項1に記載の回転流体機械。
- 斜板(31)を斜板ホルダ(28)を介してケーシング(11)に支持し、斜板ホルダ(28)の熱膨張係数をベアリングホルダ(99)の熱膨張係数と略同じにしたことを特徴とする、請求項2に記載の回転流体機械。
- 斜板ホルダ(28)およびベアリングホルダ(99)を同一部材で構成したことを特徴とする、請求項3に記載の回転流体機械。
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2003
- 2003-11-10 JP JP2003379929A patent/JP2005140074A/ja not_active Withdrawn
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JP2021124060A (ja) * | 2020-02-05 | 2021-08-30 | パナソニック株式会社 | レシプロ膨張機及びランキンサイクル装置 |
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