JP2004218521A - 回転流体機械 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】膨張機はケーシング15に回転自在に支持されたロータ22と、ロータ22にその軸線Lを囲むように設けられたアキシャルピストン・シリンダ群55と、ロータ22の軸線Lに対して傾斜した回転面を有してケーシング15に回転自在に支持された斜板31とを備え、斜板31にシンクロピン46を介して固定したスライダ47を出力軸32の長孔32eに嵌合させることにより、斜板31およびロータ22が軸線Lまわりに相対回転するのを規制し、かつ斜板31およびロータ22が軸線L方向に相対移動するのを許容する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アキシャルピストン・シリンダ群および斜板を介して作動媒体の圧力エネルギーと機械エネルギーとを相互に変換する回転流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる回転流体機械は、下記特許文献1および下記特許文献2により公知である。下記特許文献1に記載されたものは、径方向内側に配置された第1のアキシャルピストン・シリンダ群と径方向外側に配置された第2のアキシャルピストン・シリンダ群とを備えており、第1のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンはその球状頭部が斜板に形成したディンプルに当接し、第2のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンはコネクティングロッドを介して斜板に連結されている。第1、第2のアキシャルピストン・シリンダ群を支持するロータの位相と斜板の位相とは、第1のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンの球状頭部と斜板のディンプルとの当接により同一に維持されている。
【0003】
また下記特許文献2に記載されたものは、ケーシングに配置されたアキシャルピストン・シリンダ群のピストンと出力軸に回転自在に支持された斜板とをコネクティングロッドで連結し、ケーシングの位相と斜板の位相とを両者に設けたギヤの噛み合いにより同一に維持している。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−256805号公報
【0005】
【特許文献2】
特開昭50−100406号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、第1のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンの球状頭部を斜板のディンプルに当接させることでロータおよび斜板の位相を同一に維持しているので、斜板から前記ピストンに作用する曲げモーメントにより、ピストンとシリンダスリーブとの間にコジリが発生して異常摩耗の原因となる可能性がある。特に、高温高圧蒸気を作動媒体として用いる膨張機では、蒸気が凝縮した水がオイルに混入することが避けられないため、ピストンおよびシリンダスリーブの潤滑条件が悪化して異常摩耗が促進される虞がある。
【0007】
また上記特許文献2に記載されたものは、ピストンと斜板とがコネクティングロッドで連結されているので、斜板からピストンに曲げモーメントが作用することはない。しかしながら、ケーシングに設けたギヤと斜板に設けたギヤとを噛み合わせて両者の位相を同一に維持しているので、斜板を支持する出力軸およびケーシングの軸方向の熱膨張量に差があると、前記ギヤの噛み合いが不良になってコジリが発生する可能性がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、アキシャルピストン・シリンダ群のピストンに作用する曲げモーメントを低減しながら、熱膨張による斜板およびロータ間のコジリの発生を防止することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ケーシングに回転自在に支持されたロータと、ロータにその軸線を囲むように設けられたアキシャルピストン・シリンダ群と、ロータの軸線に対して傾斜した回転面を有してケーシングに回転自在に支持された斜板と、アキシャルピストン・シリンダ群のピストンを斜板に連結するコネクティングロッドと、斜板をロータに連結する連結手段とを備え、前記連結手段は、斜板およびロータが軸線まわりに相対回転するのを規制し、かつ斜板およびロータが軸線方向に相対移動するのを許容することを特徴とする回転流体機械が提案される。
【0010】
上記構成によれば、回転流体機械のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンと斜板とをコネクティングロッドで連結し、斜板をロータに連結する連結手段により斜板およびロータが軸線まわりに相対回転するのを規制するので、斜板からの反力によりピストンが受ける曲げモーメントを最小限に抑え、ピストンおよびシリンダの摺動面のコジリを回避して異常摩耗の発生を防止するとともに、前記摺動面の摩擦力を低減して回転流体機械の効率を向上することができる。しかもコネクティングロッドを用いたことでピストンの軸方向寸法を短縮して回転流体機械を小型化し、かつピストンの要求強度を下げて軽量化を図ることができ、併せてピストンを通しての熱逃げを低減して回転流体機械の効率を高めることができる。また前記連結手段が斜板およびロータの軸線方向の相対移動を許容するので、熱膨張による斜板およびロータの軸線方向の相対移動を吸収して回転流体機械のスムーズな作動を可能にすることができる。
【0011】
尚、実施例の長孔32eおよびスライダ47は本発明の連結手段に対応する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は膨張機の縦断面図、図2は図1の2−2線拡大矢視図、図3は図1の3部拡大図、図4はロータおよび斜板の分解斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図3の6−6線断面図、図7は図3の7−7線断面図、図8は図3の8方向矢視図、図9は図8に対応する作用説明図である。
【0014】
図1〜図7に示すように、本実施例の膨張機Eは例えばランキンサイクル装置に使用されるもので、作動媒体としての高温高圧蒸気の熱エネルギーおよび圧力エネルギーを機械エネルギーに変換して出力する。膨張機Eのケーシング11は、ケーシング本体12と、ケーシング本体12の前面開口部にシール部材13を介して複数本のボルト14…で結合される前部カバー15と、ケーシング本体12の後面開口部にシール部材16を介して複数本のボルト17…で結合される後部カバー18と、ケーシング本体12の下面開口部にシール部材19を介して複数本のボルト20…で結合されるオイルパン21とで構成される。
【0015】
ケーシング11の中央を前後方向に延びる軸線Lまわりに回転可能に配置されたロータ22は、その前部を前部カバー15に設けた組み合わせアンギュラベアリング23f,23rによって支持され、その後部をケーシング本体12に設けたラジアルベアリング24によって支持される。前部カバー15の後面に斜板ホルダ28が一体に形成されており、この斜板ホルダ28にラジアルベアリング29およびスラストベアリング30を介して斜板31が回転自在に支持される。斜板31の軸線は前記ロータ22の軸線Lに対して傾斜しており、その傾斜角は固定である。
【0016】
ロータ22は、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rで前部カバー15に支持された出力軸32と、出力軸32の後部に一体に形成されたロータ本体33と、ロータ本体33の後面にメタルガスケット34を介して複数本のボルト35…で結合され、前記ラジアルベアリング24でケーシング本体12に支持されたロータヘッド36とを備える。
【0017】
ロータ本体33には5個のスリーブ支持孔33a…が軸線Lまわりに72°間隔で形成されており、それらのスリーブ支持孔33a…に5本のシリンダスリーブ37…が後方から嵌合する。各々のシリンダスリーブ37の後端にはフランジ37aが形成されており、このフランジ37aがロータ本体33のスリーブ支持孔33aに形成した段部33bに嵌合した状態でメタルガスケット34に当接して軸方向に位置決めされる(図3参照)。各々のシリンダスリーブ37の内部にピストン38が摺動自在に嵌合しており、ピストン38の外周には2本の圧縮リング39,39と1本のオイルリング40とが支持される。メタルガスケット34とロータヘッド36に接合された環状の蓋部材41とピストン38の頂面との間に蒸気の膨張室42が区画される。
【0018】
ピストン38の内部にコネクティングロッドホルダ43が嵌合してクリップ44で係止されており、コネクティングロッド45の後端の球状部45aがコネクティングロッドホルダ43に揺動自在に連結され、前端の球状部45bが斜板31に揺動自在に連結される。
【0019】
5個のシリンダスリーブ37…および5個のピストン38…はアキシャルピストン・シリンダ群55を構成する。
【0020】
ロータ本体33に近い出力軸32の後部を、軸線L方向に延びる長孔32eが径方向に貫通する。斜板31の中央を円形の開口31aが軸線L方向に貫通し、かつ前記開口31aに交差するピン孔31b,31cが径方向に形成される。一方のピン孔31bは開口31aから斜板31の外周面に貫通し、他方のピン孔31cはコネクティングロッド45の前端の球状部45bとの干渉を回避すべく、開口31aから斜板31の外周面に向かう盲孔となっている。一方のピン孔31bから他方のピン孔31cに挿入されるシンクロピン46の一端部にフランジ46aが形成されており、このフランジ46aが嵌合する凹部31dが一方のピン孔31bを囲むように斜板31の外周面に形成される。
【0021】
二つの平行面47a,47aを有する筒状のスライダ47が斜板31の開口31aの内周に径方向に嵌合し、その内部を前記シンクロピン46が貫通することでスライダ47が斜板31に固定される。シンクロピン46はスプリングピン48の圧入により斜板31に固定される。スライダ47の両端面47b,47bは、スライダ47の長手方向中央部に中心を有する球面の一部で構成されているので、それを斜板31の開口31aに嵌合させる際にコジリの発生を防止してスムーズな組み付けを可能にすることができる。
【0022】
シンクロピン46のフランジ46aには二つの平行な切欠46b,46bが形成されており、シンクロピン46をスプリングピン48で固定した状態では、凹部31dに嵌合するフランジ46aの一方の切欠46bが斜板31の後端面31eと面一になる(図8参照)。シンクロピン46をピン孔31b,31cから引き抜くには、スプリングピン48を取り外した後に凹部31d内でフランジ46aを90°ほど回転させる。その結果、フランジ46bの一部が斜板31の後端面31eから突出するので、その突出部に指を掛けてシンクロピン46を容易に引く抜くことができる(図9参照)。
【0023】
前部カバー15の前面にシール部材91を介して板状のベアリングホルダ92が重ね合わされてボルト93…で固定され、そのベアリングホルダ92の前面にシール部材94を介してオイルポンプ49のポンプボディ95が重ね合わされてボルト96…で固定される。組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは、前部カバー15の段部とベアリングホルダ92との間に挟まれて軸線L方向に固定される。
【0024】
出力軸32に形成したフランジ32d(図3参照)と組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースとの間に所定厚さのシム97が挟持され、出力軸32の外周に螺合するナット98で組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースが締め付けられる。その結果、出力軸32は組み合わせアンギュラベアリング23f,23rに対して、つまりケーシング11に対して軸線L方向に位置決めされる。
【0025】
組み合わせアンギュラベアリング23f,23rは相互に逆向きに装着されており、出力軸32を径方向に支持するだけでなく、軸線L方向にも移動不能に支持している。即ち、一方の組み合わせアンギュラベアリング23fは出力軸32が前方に移動するのを規制し、他方の組み合わせアンギュラベアリング23rは出力軸32が後方に移動するのを規制するように配置される。
【0026】
ロータ22の前部を支持する軸受けに組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを使用したので、膨張機Eの所定の運転状態において膨張室42…で発生する軸線L方向両側への荷重は、その一方がロータ22を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースに伝達され、その他方が斜板31および前部カバー15の斜板ホルダ28を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのアウターレースに伝達される。これら二つの荷重は、斜板31を支持するスラストベアリング30とロータ22を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとに挟まれた前部カバー15の斜板ホルダ28を圧縮するもので、機構部の剛性は高いものとなる。しかも本実施例の如く、斜板ホルダ28を前部カバー15と一体に構成することで、更に剛性が高く簡略な構造となる。
【0027】
更に、斜板31を支持するラジアルベアリング29およびスラストベアリング30と、ロータ22を支持する組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとを前部カバー15に組み込むことにより、「ロータ22およびピストン38…」、「前部カバー15のアセンブリ」、「ポンプボディ95」というユニット単位で組立作業が行え、ピストン38…の組み替えやオイルポンプ49の交換といった作業の効率が改善される。
【0028】
またロータ22の後端部を構成するロータヘッド36を支持するラジアルベア24は径方向の荷重のみを支持する通常のボールベアリングであって、ロータヘッド36がラジアルベアリング24に対して軸線L方向に摺動できるように、ロータヘッド36とラジアルベアリング24のインナーレースとの間に隙間α(図1参照)が形成される。
【0029】
ロータ22と一体の出力軸32内部に軸線L上に延びるオイル通路32aが形成されており、このオイル通路32aの後端部内周がオイル通路閉塞部材61で閉塞される。オイル通路32aの前端は径方向に分岐して出力軸32の外周の環状溝32bに連通し、オイル通路32aの中間部が長孔32eに連通する部分が2個のシール部材62,63で閉塞され、更にオイル通路32aの前後部がオイル通路32fで相互に連通するとともに、後側のオイル通路32aが径方向に延びるオイル孔32c…を介してスリーブ支持孔33a…に形成した環状溝33c…に連通する。そして前記環状溝33c…とピストン38の外周面とは、シリンダスリーブ37…を貫通するオイル孔37b…を介して連通する。
【0030】
ポンプボディ95の前面に形成した凹部95aと、ポンプボディ95の前面にシール部材56を介して複数本のボルト57…で固定したポンプカバー58との間に配置されたトロコイド型のオイルポンプ49は、前記凹部95aに回転自在に嵌合するアウターロータ50と、出力軸32の外周に固定されてアウターロータ50に噛合するインナーロータ51とを備える。オイルパン21の内部空間はオイルパイプ52およびポンプボディ95のオイル通路95bを介してオイルポンプ49の吸入ポート53に連通し、オイルポンプ49の吐出ポート54はポンプボディ95のオイル通路95cを介して出力軸32の環状溝32bに連通する。
【0031】
ロータ22の5個の膨張室42…に蒸気を供給・排出するロータリバルブ64が、ロータ22の後方の軸線L上に配置される。ロータリバルブ64はバルブ本体部65と、固定側バルブプレート66と、可動側バルブプレート67とを備える。可動側バルブプレート67は、ロータ22の後面にノックピン68で回転方向に位置決めされた状態で、オイル通路閉塞部材61に螺合するボルト69で固定される。可動側バルブプレート67に平坦な摺動面70を介して当接する固定側バルブプレート66はバルブ本体部65と一体に形成されており、バルブ本体部65はノックピン71で後部カバー18に軸線L方向に移動可能かつ回転方向に移動不能に係止される。軸線Lを囲むように配置した複数個のプリロードスプリング72…で後部カバー18に対してバルブ本体部65を前方に押圧することで、固定側バルブプレート66および可動側バルブプレート67が摺動面70において密着する。そしてバルブ本体部65の後面に蒸気供給パイプ73が接続される。
【0032】
次に、上記構成を備えた本実施例の膨張機Eの作用を説明する。
【0033】
蒸発器で水を加熱して発生した高温高圧蒸気は蒸気供給パイプ73からロータリバルブ64のバルブ本体部65および固定側バルブプレート66に形成した蒸気通路を経て、可動側バルブプレート67との摺動面70に達する。そして摺動面70に開口する蒸気通路はロータ22と一体に回転する可動側バルブプレート67に形成した対応する蒸気通路に所定の吸気期間において瞬間的に連通し、高温高圧蒸気は可動側バルブプレート67の蒸気通路からシリンダスリーブ37内の膨張室42に供給される。
【0034】
ロータ22の回転に伴って膨張室42への蒸気の供給が絶たれた後も膨張室42内で高温高圧蒸気が膨張することで、シリンダスリーブ37に嵌合するピストン38が上死点から下死点に向けて前方に押し出され、ピストン38に連結されたコネクティングロッド45が斜板31を押圧する。その結果、斜板ホルダ28から受ける反力で斜板31に回転トルクが与えられ、その回転トルクは斜板31に固定したシンクロピン46の外周に嵌合するスライダ47から長孔32eを介して出力軸32に伝達され、ロータ22と共に出力軸32を回転させる。そしてロータ22が5分の1回転する毎に、相隣り合う新たな膨張室42内に高温高圧蒸気が供給されてロータ22が連続的に回転駆動される。
【0035】
ロータ22の回転に伴って下死点に達したピストン38が斜板31に押圧されて上死点に向かって後退する間に、膨張室42から押し出された低温低圧蒸気は、ロータ22と一体の可動側バルブプレート67から摺動面70、固定側バルブプレート66およびバルブ本体部65を経て凝縮器に排出される。
【0036】
ロータ22の回転に伴って出力軸32に設けたオイルポンプ49が作動し、オイルパン21からオイルパイプ52、ポンプボディ95のオイル通路95b、吸入ポート53を経て吸入されたオイルが吐出ポート54から吐出され、ポンプボディ95のオイル通路95c、出力軸32の環状溝32b、出力軸32のオイル通路32a,32f,32a、出力軸32のオイル孔32c…、ロータ本体33の環状溝33c…およびシリンダスリーブ37のオイル孔37b…を経てピストン38…とシリンダスリーブ37…との摺動面に供給され、その摺動面を潤滑する。
【0037】
アキシャルピストン・シリンダ群55のピストン38…が発生する軸線L方向の推力を斜板31を介してロータ22の回転力に変換する際に、ピストン38…を直接斜板31に当接させることなく、ピストン38…をコネクティングロッド45…を介して斜板31に連結したので、斜板31から受ける反力によりピストン38…に作用する曲げモーメントを最小限に抑えることができる。これにより、高温高圧蒸気が凝縮した水がオイルに混入して潤滑条件が悪化しても、ピストン38…とシリンダスリーブ37…との摺動面のコジリを回避して異常摩耗の発生を防止し、かつ前記摺動面の摩擦力を低減して膨張機Eの効率を向上することができる。またピストン38…の曲げモーメントが最小限に抑えられるので、ピストン38…の軸線L方向寸法を短縮して膨張機Eを小型化し、かつピストン38…の要求強度を下げて軽量化を図ることができる。更に、ピストン38…の小型化によりヒートマスが低減するため、ピストン38…を通しての熱逃げを減少させて膨張機Eの効率を高めることができる。
【0038】
シンクロピン46に支持したスライダ47を出力軸32の長孔32eに摺動自在に嵌合させたので、斜板31およびロータ22が軸線L方向に相対移動するのを許容し、ロータ22およびケーシング11の軸線L方向の熱膨張量の差を吸収して膨張機Eのスムーズな作動を可能にすることができる。またシンクロピン46を直接長孔32eに嵌合させることなく、シンクロピン46に支持したスライダ47の平坦な平行面47a,47aを長孔32eの内面に面接触させたので、その摺動部の摩耗を最小限に抑えてガタの発生を防止することができる。
【0039】
ところで、膨張機Eを組み立てる際にシリンダスリーブ37の底部(即ち、蓋部材41を接合したロータヘッド36)およびピストン38の頂部間のデッドボリュームの大きさ、つまりピストン38が上死点にあるときの膨張室42の容積を調整する必要がある。出力軸32のフランジ32dと組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースとの間に介在するシム97を薄くすると、出力軸32が前方(図1の右側)に移動するため、ロータヘッド36も前方に移動するが、ピストン38は斜板31に規制されて前方に移動できないため、前記デッドボリュームは減少する。逆に、前記シム97を厚くすると、出力軸32と共にロータヘッド36が後方(図1の左側)に移動するため、前記デッドボリュームは増加する。その結果、シム97の交換だけでデッドボリュームを任意に調整することが可能になり、デッドボリュームの調整に要する工程を削除して時間を大幅に節減することができる。
【0040】
また所定の厚さを有する単一のシム97を出力軸32のフランジ32dと組み合わせアンギュラベアリング23f,23rとの間に挟み、ラジアルベアリング29、スラストベアリング30および組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを組み込んだ前部カバー15と、ピストン38…を組み込んだロータ22とを一つのナット98で締め付けるだけでデッドボリュームを調整することができるので、従来の前後2個のシムの厚さをそれぞれ調整する場合に比べて調整作業を簡単に行うことができる。しかもデッドボリュームの調整に際して、ピストン38…を組み込んだロータ22をケーシング本体12に組み付けたままで良いため、調整後のデッドボリュームの確認作業がピストン38…および斜板31の接触状態を直接見ながら行えるようになる。
【0041】
上述のようにして、シム97の厚さを変更することで組み合わせアンギュラベアリング23f,23rに対して出力軸32の位置を前後に調整すると、ロータ22の後端部のロータヘッド36の位置も前後に移動するが、そのロータヘッド36はケーシング本体12との間に設けたラジアルベアリング24のインナーレースに対して軸線L方向に摺動自在であり、かつ出力軸32に設けた長孔32eが斜板31に設けたスライダ47に対して軸線L方向に摺動可能なため、出力軸32の位置の調整に支障を来すことがない。
【0042】
而して、膨張室42に供給された高温高圧蒸気の圧力でピストン38がシリンダスリーブ37から押し出される方向に付勢されると、ピストン38の押圧力はコネクティングロッド45、斜板31、スラストベアリング30、斜板ホルダ28および前部カバー15を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのアウターレースを前方(図1の右側)に押圧し、前記ピストン38の押圧力と逆向きのシリンダスリーブ37の押圧力は、ロータヘッド36および出力軸32を介して組み合わせアンギュラベアリング23f,23rのインナーレースを後方(図1の左側)に押圧する。即ち、膨張室42に供給された高温高圧蒸気により発生する荷重は組み合わせアンギュラベアリング23f,23rの内部で打ち消され、ケーシング本体12に伝達されることはない。
【0043】
出力軸32、ロータ本体33およびロータヘッド36で構成されたロータ22は熱膨張量が比較的に小さい鉄系材料で構成されているのに対し、そのロータ22を組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24を介して支持するケーシング11は熱膨張量が比較的に大きいアルミニウム系材料で構成されているため、膨張機Eの低温時と高温時とで特に軸線Lに沿う方向の熱膨張量に差が発生する。
【0044】
ロータ22よりも熱膨張量が大きいケーシング11は、高温時にはロータ22よりも余分に膨張して軸線L方向の寸法が相対的に増加し、逆に低温時には余分に収縮して軸線L方向の寸法が相対的に減少する。このとき、ケーシング11とロータ22とは組み合わせアンギュラベアリング23f,23rを介して軸線L方向に位置決めされているため、両者の熱膨張量の差はラジアルベアリング24のインナーレースに対するロータヘッド36の摺動により吸収され、組み合わせアンギュラベアリング23f,23r、ラジアルベアリング24およびロータ22に軸線L方向の過大な荷重が作用するのが防止される。これにより、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24の耐久性が向上するだけでなく、ロータ22の支持を安定させてスムーズな回転を可能にすることができ、しかも温度変化に伴うシリンダスリーブ37の底部(即ち、蓋部材41を接合したロータヘッド36)およびピストン38の頂部間のデッドボリュームの変動を防止することができる。
【0045】
なぜならば、仮にロータ22の両端部がケーシング11に軸方向に移動不能に拘束されているとすると、低温時にはロータ22に対してケーシング11が軸線L方向に収縮しようとするため、ケーシング11の一部である斜板ホルダ28に支持された斜板31に接続されたピストン38が後方に押圧され、かつケーシング11にラジアルベアリング24を介して支持されたロータヘッド36が前方に押圧されることで、ピストン38がシリンダスリーブ37の内部に押し込まれてデッドボリュームが減少するからである。逆に、高温時にはロータ22に対してケーシング11が軸線L方向に伸長しようとするため、ピストン38がシリンダスリーブ37の内部から引き出されてデッドボリュームが増加することになり、暖機完了後の通常運転状態における高温高圧蒸気の初期容積の増大、つまり膨張機Eの容積比(膨張比)の低下による熱効率の低下が発生してしまう。
【0046】
それに対して、本実施例ではロータ22がケーシング11に対して軸線L方向に浮動状態で支持されているため、組み合わせアンギュラベアリング23f,23rおよびラジアルベアリング24の軸受間の間隙の増大および予荷重の低下が防止され、温度変化に伴うデッドボリュームの変動が防止される。これにより、膨張機Eの容積比(膨張比)の変動を防止して安定した性能を確保することができる。
【0047】
特に、高温高圧蒸気を作動媒体として使用する膨張機Eでは、高温時および低温時の温度差が大きくなるため、上記効果が有効に発揮される。また高温高圧蒸気が供給されるロータリバルブ64の近傍は高温時および低温時の温度差が大きくなるが、そのロータリバルブ64に近い側に配置されたラジアルベアリング24に対してロータヘッド36が軸線L方向に摺動可能なため、ケーシング11およびロータ22の熱膨張量の差を支障なく吸収することができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、本発明の回転流体機械の用途は圧縮性流体を作動媒体とする膨張機Eに限定されず、圧縮性流体を作動媒体とする圧縮機や、非圧縮性流体を作動媒体とするポンプあるいはモータであっても良い。
【0050】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、回転流体機械のアキシャルピストン・シリンダ群のピストンと斜板とをコネクティングロッドで連結し、斜板をロータに連結する連結手段により斜板およびロータが軸線まわりに相対回転するのを規制するので、斜板からの反力によりピストンが受ける曲げモーメントを最小限に抑え、ピストンおよびシリンダの摺動面のコジリを回避して異常摩耗の発生を防止するとともに、前記摺動面の摩擦力を低減して回転流体機械の効率を向上することができる。しかもコネクティングロッドを用いたことでピストンの軸方向寸法を短縮して回転流体機械を小型化し、かつピストンの要求強度を下げて軽量化を図ることができ、併せてピストンを通しての熱逃げを低減して回転流体機械の効率を高めることができる。また前記連結手段が斜板およびロータの軸線方向の相対移動を許容するので、熱膨張による斜板およびロータの軸線方向の相対移動を吸収して回転流体機械のスムーズな作動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】膨張機の縦断面図
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図1の3部拡大図
【図4】ロータおよび斜板の分解斜視図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】図3の6−6線断面図
【図7】図3の7−7線断面図
【図8】図3の8方向矢視図
【図9】図8に対応する作用説明図
【符号の説明】
11 ケーシング
22 ロータ
31 斜板
32e 長孔(連結手段)
38 ピストン
45 コネクティングロッド
47 スライダ(連結手段)
55 アキシャルピストン・シリンダ群
L 軸線
Claims (1)
- ケーシング(11)に回転自在に支持されたロータ(22)と、
ロータ(22)にその軸線(L)を囲むように設けられたアキシャルピストン・シリンダ群(55)と、
ロータ(22)の軸線(L)に対して傾斜した回転面を有してケーシング(11)に回転自在に支持された斜板(31)と、
アキシャルピストン・シリンダ群(55)のピストン(38)を斜板(31)に連結するコネクティングロッド(45)と、
斜板(31)をロータ(22)に連結する連結手段(32e,47)と、
を備え、
前記連結手段(32e,47)は、斜板(31)およびロータ(22)が軸線(L)まわりに相対回転するのを規制し、かつ斜板(31)およびロータ(22)が軸線(L)方向に相対移動するのを許容することを特徴とする回転流体機械。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2003006691A JP2004218521A (ja) | 2003-01-15 | 2003-01-15 | 回転流体機械 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
WO2018030373A1 (ja) * | 2016-08-09 | 2018-02-15 | 日本電産株式会社 | 駆動装置 |
JPWO2018030374A1 (ja) * | 2016-08-09 | 2019-06-13 | 日本電産株式会社 | 駆動装置 |
-
2003
- 2003-01-15 JP JP2003006691A patent/JP2004218521A/ja not_active Withdrawn
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018030345A1 (ja) * | 2016-08-09 | 2018-02-15 | 日本電産株式会社 | 駆動装置 |
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JPWO2018030374A1 (ja) * | 2016-08-09 | 2019-06-13 | 日本電産株式会社 | 駆動装置 |
JPWO2018030345A1 (ja) * | 2016-08-09 | 2019-06-13 | 日本電産株式会社 | 駆動装置 |
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