JP2005139104A - プリオン蛋白質の分離・採取方法 - Google Patents

プリオン蛋白質の分離・採取方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プリオン蛋白のチャレンジ試験に有用な、均質な無色透明で、且つ充分な感染力価を保持した高濃度プリオン蛋白の調製方法。
【解決手段】プリオン蛋白を含む溶液をプリオン蛋白より小さな固体を通過させる多孔性中空糸からなる濾過膜で濾過する工程、およびウイルスを捕足した濾過膜に対して、プリオン蛋白を凝集させない回収液を逆送してプリオン蛋白を濾過膜から脱離させる工程を実施することにより上記課題を解決した。
【選択図】なし

Description

本発明は、プリオン感染動物の脳ホモジネートなどからプリオン蛋白を分離・採取する方法に関する。更に詳しくは、感染力価が高く、プリオン蛋白のチャレンジ試験に用いることができる精製プリオン蛋白を容易に得る方法に関する。
プリオン蛋白は、伝染性海綿状脳症(TSE;Transmissible Spongiform Encephalopathy)の原因物質と考えられおり、このTSEは、正常プリオン蛋白が何らかの原因で、異常プリオン蛋白へ変異することにより発症すると考えられている。
また、この異常型プリオン蛋白は正常プリオン蛋白と比較すると熱、紫外線、プロテアーゼ等に高い抵抗性を示し、不活化が非常に困難な物質である。
異常プリオン蛋白による疾患はプリオン病と呼ばれ、いくつかの種類が知られているが、脳が変性して死に至る恐ろしい病気である。
プリオン病で死亡したヒトや動物の脳には、空洞が認められることから海綿状脳症ともいわれるが、動物では古くからヒツジのスクレイピーが知られており、ウシでは狂牛病(BSE)として近年注目されている。ヒトにおいても、パプアニューギニアのクール病が、ヒトの脳を食べる習慣が原因であることが知られている。近年ではクロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)あるいはCJD変種型のvCJDなどは一般にTSEと呼ばれている。これらの疾患は、前述の通り、異常型プリオン蛋白が原因であり、BSE感染牛の摂食やTSE患者の硬膜を移植することでヒトに伝播することが知られている。このため、牛の脳、脊髄などの摂食あるいは医薬品等の原料に使用することが制限されている。
血液を介してのTSE感染の可能性については、一般的には否定的ではあるが、血液を原料とする血液製剤、牛由来原料を用いた医薬品等の製造工程において、異常プリオン蛋白が混入した場合の危険性を鑑み、異常プリオンに対する製造工程中での除去あるいは不活化効果を確認するTSEバリデーション試験(プリオン蛋白のチャレンジ試験)の実施が、製剤の安全性を確保する観点から求められている。
従来、血液製剤等の水性液から異常な感染性プリオン蛋白を除去する方法としては、該溶液をデプスフィルターに通して除去する法が開示されている(特許文献1)。
TSE原因物質の汚染可能性のある蛋白質溶液を珪藻土等の吸着剤と懸濁させ、吸着剤を蛋白溶液より分離することでプリオン蛋白を分離する方法も知られている(特許文献2)。
また、TSE原因物質の汚染可能性のある蛋白質溶液に水溶性有機物質および可溶性塩を含ませたのち、メンブランフィルターでTSE原因物質を除去する方法が知られている(特許文献3)。
しかしながら、これらの方法は、蛋白質等の水溶液に混在するおそれのあるプリオン蛋白を除去することを目的としたものであり、プリオン蛋白のチャレンジ試験に供することができるようなプリオン蛋白を純度の高い状態で採取する方法を開示したものではない。
輸血あるいは血液製剤を介してこれらTSEが伝播するか否かについては、明確ではないものの、製剤の安全性を確認するため、TSE原因物質の除去・不活化工程の検証手段として、いわゆるプリオン蛋白のチャレンジ(添加)試験が実施されている。このプリオン蛋白のチャレンジ試験は、血液製剤等の現実の製造工程をスケールダウンしたTSE原因物質の除去・不活化効果の期待される各製造工程の前にプリオン蛋白をチャレンジし、処理前後のプリオン蛋白の力価あるいはプリオン蛋白量を測定することによりプリオン蛋白の除去・不活化効果を評価する試験である。
プリオン蛋白の除去・不活化効果を評価するチャレンジ実験において、チャレンジするプリオン蛋白として感染動物の脳ホモジネートを使用するのが一般的であるが、更に脳ホモジネートを遠心分離等により細胞核、ミトコンドリア等を除去し、超遠心分離操作によりミクロソーム画分を得て、このミクロソーム画分をチャレンジする場合もある。しかしながら、これらのチャレンジ実験に使用するプリオン蛋白画分には、脳ホモジネート由来の夾雑物質(大きな細胞、細胞膜片、脂質、その他脳構成成分)が多く含まれており、実験系に影響を与える可能性があるため、予め夾雑物を除去しておくことが望ましい。
また、これら従来のチャレンジ試験用のプリオン蛋白は、調製条件により品質が安定しないことが多く、チャレンジ実験の結果にばらつきが出て、正確な結果が得られないという問題が指摘されている。
エム.ベイ(M.Vey)らは、血漿蛋白のコーン分画のいくつかの精製工程に対して、プリオン感染ハムスター脳より種々の方法により調製したプリオン蛋白含有生成物を工程前に添加して、精製後のプリオン蛋白の力価を測定し、各精製工程におけるプリオン蛋白量減少が添加したプリオン蛋白の調製方法により結果が異なる場合があることを報告している(非特許文献1)。この文献中には、脳ホモジネートの調製の他、プリオン蛋白以外の夾雑物を除去するいくつかの試みが開示されている。その中のミクロソームについては、それ以上の精製は行われておらず、Caveolae-like domains(CLDs)の調製には、超遠心分離と複雑な後処理が必要であり、異常型プリオン蛋白(PrPsc)の調製にも、遠心分離とさらに多くの工程による精製が必要である。いずれにしても開示されたチャレンジ試験用プリオン蛋白の調製は非常に煩雑な操作を伴うものばかりである。
プリオン蛋白のチャレンジ試験を行う際に重要なことは、製造工程をスケールダウンした工程が妥当であり、現実の製造工程を十分に反映していること、およびチャレンジ実験の結果が、チャレンジするプリオン蛋白に共存する夾雑物等に影響されないことである。
また、脳ホモジネートをそのまま用いた場合には、プリオン蛋白の濃度が低いことから、チャレンジすべき工程に添加する際に、添加液量が多くなり、当該工程を厳密に再現できない恐れがある。一方、添加液量を少量にした場合には、試験に充分な力価が得られないことがあり、正確なバリデーション効果が期待できないといった問題がある。
一方、遠心分離で調製されたプリオン蛋白は粒子サイズが一定せず、十分に安定した感染力価を再現性よく得ることが困難であった。
また、プリオン蛋白を含む溶液を平均孔径10〜35nmの多孔性中空糸膜で濾過してプリオン蛋白を除去することは検討されているものの(特許文献3)、蛋白凝集物や、サイズの大きな微生物、ウイルスその他細胞なども同時に捕足するもので、この膜の捕足物を回収し用とする試みは全くなされたことがない。
特表2002-535292号 特表2002-503672号 特開2000-212097号 M.Vey et al., Biological(2002)20, 187-196
このような事情のもと、プリオン蛋白のチャレンジ試験に必要な力価を有し、且つチャレンジ試験において再現性のある安定且つ高純度、高濃度の均質なプリオン蛋白を調製することは、極めて意義のあることである。本発明は、この課題に対する解決方法を見出すことにある。
本発明者らは、前記課題を解決する為に種々検討を重ねた結果、TSE感染動物の脳ホモジネートを多孔性中空糸膜を用いて中空糸内に捕足したプリオン蛋白を、中空糸膜の外側にプリオン蛋白を回収するための液を満たして適当な圧力をかけると意外にも液が中空糸内に逆流してきてプリオン蛋白を中空糸膜内から離脱させ、高濃度のプリオン蛋白を含有する高純度で均質な液が回収されるという知見を得た。すなわち、多孔性中空糸濾過膜は、一般に外径400μm、膜厚30μmの多孔性チューブの束からなっており、プリオン蛋白を含む溶液を濾過後に中空糸の外から液を一定の圧力で逆送すれば、中空糸がその液の圧力で押し潰されて液が細孔から中空糸内に流入してくることはないと考えられていただけに、液を逆送することにより、プリオン蛋白が中空糸内壁から剥離してその感染力価を保持したまま回収することができるということは、全く予想外のことであった。さらに回収液量を濾過に供した液量の、たとえば1/10程度に減少させても、充分な回収率が得られることも判明し、少量添加で評価できるプリオン蛋白を調製できることも見出した。本発明者らは、これらの知見を基にさらに研究を重ねて完成したものである。
すなわち本発明は、
(1)
プリオン蛋白及び夾雑物を含む液をプリオン蛋白は通過させず、プリオン蛋白より小なる固体を通過させる多孔性中空糸からなる濾過膜(二次濾過膜)で濾過する工程、およびプリオン蛋白を捕足した濾過膜に対して、プリオン蛋白を凝集させない回収液を逆送してプリオン蛋白を濾過膜から脱離させる工程を含んでなるプリオン蛋白の分離・採取方法、
(2)
プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、予めプリオン蛋白を通過させ、プリオン蛋白より大なる個体を通過させない濾過膜(一次濾過膜)で濾過した濾液又は遠心分離操作により沈殿物を除去した上清である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(3)
プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、プリオン感染動物の脳由来蛋白である(1)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(4)
プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が脳ホモジネートを超遠心分離処理することにより得られたミクロソームである(1)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(5)
プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、脳ホモジネートを界面活性剤及び/又は超音波処理したものである(1)又は(2)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(6)
界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン界面活性剤である(5)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(7)
二次濾過膜が再生セルロース製である(1)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(8)
二次濾過膜が10〜20nmの細孔径を有する多孔性中空糸膜である(1)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
(9)
プリオン蛋白を凝集させない回収液が、PBS、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液又は蒸留水である(1)記載のプリオン蛋白の分離・採取方法、
である。
本発明におけるプリオン蛋白及び夾雑物を含む溶液としては、例えばTSE感染動物の脳ホモジネート、その希釈液または濃縮液、あるいは脳組織より脳蛋白を精製したプリオン蛋白質液などが挙げられる。TSE感染動物の脳は、TSEに感染したヒト、動物の脳であればどのようなものでも利用できるが、実際上は、TSE原因物質であるプリオン蛋白含有組成物をハムスター等の動物脳へ接種して、TSEを発病した動物を擬死せしめ、当該脳を摘出し、擂り潰した脳をPBS緩衝液下でホモジナイザーにて懸濁状態にして調製される。その後、必要に応じ、脂質、細胞塊を1000×G程度の遠心操作で処理し、その上清を用いる。脳ホモジネートに用いる添加液としては、一般に組織ホモジネートを作成する際に用いる緩衝液であれば特に限定はなく、後述する界面活性剤を添加して用いることも可能である。
プリオン感染動物の脳由来蛋白は、プリオン感染動物の脳より任意の方法で脳蛋白質を精製あるいは脳ホモジネートにして用いることができる。脳由来蛋白は、凝集塊を出来るだけ少なくし、会合していない純粋なプリオン蛋白として回収する為に、予め界面活性剤処理を行っておくことが好ましい。
また、ミクロソームを用いる場合には、常法に従い脳ホモジネートの遠心によって、核やミトコンドリア、リソゾームを沈降させた上清を100,000g、1時間程度の超遠心分離操作にかけて得られる沈殿分画に任意の水溶液を加えてホモジナイザーで再懸濁して調製することができる。
前記界面活性剤としては、天然由来の界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられるが、中でも天然由来の界面活性剤であるリン脂質、より好適にはレシチンに親水性を加えるために加水分解したリゾレシチンなどが好ましく、また、陰イオン界面活性剤であるザルコシルを用いることもできる。添加する界面活性剤の濃度は0.0001〜10重量%、より好ましくは0.01〜1.0%、特に好適には0.05〜0.1重量%である。界面活性剤を添加し、十分に撹拌懸濁してプリオン蛋白を可溶化させ、ホモジネートあるいは更に任意の蛋白精製処理により精製して用いる。界面活性剤処理は0〜40℃の温度条件下で実施するのがよく、不要な蛋白凝集物を沈殿させ、より多くの目的とするプリオン蛋白を可溶化しておくことにより収量を増加させることができる。また、ホモジネート懸濁液に界面活性剤を添加してホモジナイザー処理することも有効である。
さらに、脳由来蛋白を十分に微細化する目的で、超音波処理しておくことも好ましい。超音波処理としては、例えばカップ型ソニケータ(Cup-horn sonicater)を用い、氷冷下に冷却しながら2分/mLの処理を行う。
界面活性剤処理と超音波処理は単独又は両者を組み合わせで実施することができ、界面活性剤の存在下で超音波処理することでより効率よく、凝集塊の微細化および可溶化が容易に達成される。
プリオン蛋白の種類は特に限定されるものではない。その由来はヒト、ウシ、ヒツジなどのTSE感染脳などから採取した脳ホモジネートを小動物であるラット、マウス、ハムスターなどに接種し、当該小動物の脳より得たホモジネートあるいは更に精製したものなどが用いられる。
一次濾過膜は、プリオン蛋白は通過させるが、蛋白凝集物、細菌、サイズの大きな蛋白質あるいは細胞を通過させない孔径の細孔を有する濾過膜である。濾過膜の平均細孔径は、含まれる夾雑物質の大きさによるが、通常0.05〜0.45μmのものが用いられる。
この膜を用いて濾過することにより、プリオン蛋白よりも大きな細胞、その断片、大きな蛋白質、場合によっては夾雑する脂質などの夾雑物が除去される。一次濾過膜の材質は、例えばセルロースアセテート、再生セルロース、PVDF、ナイロンなどであるが特に限定されるものではない。膜の形態としてはメンブランフィルター、中空糸フィルター、深層濾過膜などが任意に使用できる。
また、プリオン蛋白を含む溶液を一次濾過および/又は多孔性中空糸濾過する前に予め1000×G程度の遠心分離操作を行うと、巨大な夾雑物質等を除去できるので、濾過膜の目詰まりを防止することができる。
二次濾過膜は、プリオン蛋白を通過させず、プリオン蛋白より小なる固体や液体を通過させる多孔性中空糸よりなる膜である。その材料としては銅アンモニア法、ビスコース法、セルロースエステルのけん化法などの再生セルロース、アセテートなどの酢化セルロース、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)等の合成高分子化合物があげられる。その中でも銅アンモニア法再生セルロース性多孔膜中空糸フィルターが特に好ましい。また、銅アンモニア法再生セルロース製多孔膜中空糸は該中空糸の内壁面から外壁面への膜厚方向に層状構造を有しているので、高い低分子物質の透過性と高いプリオン蛋白の阻止性能を併せ持っている。この中空糸の膜厚は10〜100μmが好ましく、50〜90μmが更に好ましい。中空糸フィルターの平均孔径は、通常5〜35nm、好ましくは10〜20nm、特に好ましくは15nmである。平均孔径が20nm以下のフィルターを用いるとプリオン蛋白の膜通過阻止率が良好で回収率高く、プリオン蛋白を回収することが可能である。平均孔径が大きくなると工程の処理時間の短縮、フィルターの目詰まりを防止できるが回収率が低くなるため、あまり大きな孔径の中空糸は適切ではない。現実的な調製工程を考慮すると、平均孔径15〜20nm程度が好適に用いられ、具体的にはプラノバ20Nあるいはプラノバ15N(いずれも旭化成株式会社の登録商標)である。また、多少収率を犠牲にして、平均孔径35〜75nmの中空糸による前処理で通過したプリオン蛋白をプラノバ15Nで捕足することで、より均質微細で且つ純度の高い夾雑物の少ないプリオン蛋白を得ることも可能である。
二次濾過膜を用いる濾過は、通常0.01〜0.3Mpa、好ましくは、0.05〜0.15Mpa程度の濾過圧で行う。
二次濾過膜は捕足したプリオン蛋白を回収しやすくする為、予め、界面活性剤、濾過助剤、シリコンなどでプレコートして用いることも可能であり、これらの操作で回収時にプリオン蛋白を中空糸膜よりはがれやすくすることも可能であるが、必ずしもこの工程は必要ではない。
ついで、二次濾過膜に対して、プリオン蛋白を凝集させない回収液を逆送してプリオン蛋白を二次濾過膜から脱離させる。
プリオン蛋白を凝集させない回収液としては、一般的な生理的な緩衝液であれば何れでもよく、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、生理食塩水、クエン酸緩衝液、蒸留水などプリオン蛋白のチャレンジ実験に影響を及ぼさないものが好適に用いられ、そのpHは通常5〜8、好ましくは6.5〜7.5である。
回収液の液量は、濃縮プリオン蛋白を得たい場合には、負荷したプリオン蛋白含有液量の1/20〜1/2、好ましくは1/15〜1/5程度である。特に濃縮されたプリオン蛋白を得る必要のない場合は、負荷した液量と同量あるいはそれ以上の量を用いてもよい。回収の際の圧力は、二次濾過を行った場合と反対側より逆圧をかけて回収液を負荷し、プリオン蛋白を負荷した側からプリオン蛋白を含む液を回収する。逆圧をかける際の圧力は、0.05〜0.15Mpa、好ましくは0.06〜0.1Mpa程度である。
本発明の各工程は、0〜30℃の温度で実施することができるが、一般に室温で操作することが可能である。
次に本発明の工程を順序に従って具体的に説明する。
まず、TSE感染動物の脳を得て、脳組織を適当なサイズに磨り潰し、任意の緩衝液中に入れ、常法に従いホモジナイザーにて、脳組織の懸濁液を調製する。この際緩衝液中に界面活性剤を添加しておいてもよい。
得られた脳ホモジネートを、例えば、所定の細孔径(0.22又は0.45μm、若しくはその両方)を有するフィルターを備えたフィルターで一次濾過し、プリオン蛋白より大きい夾雑物を除去し、濾液を得る。
一次濾液を、場合によっては界面活性剤添加又は超音波処理を行い、生理食塩水又はPBSにより50〜100倍に希釈し、二次濾過膜(中空糸膜)に連結した容器に入れ、加圧下に濾過を行って、プリオン蛋白を濾過膜に捕足する。次いで好ましくは界面活性剤含有溶液、緩衝液又は蒸留水等で加圧下にプリオン蛋白捕足中空糸を洗浄する。
次にプリオン蛋白回収液をプリオン蛋白負荷液量の1/20〜1/2程度、特に好ましくは1/15〜1/5程度の濾過膜の外側から内側へ加圧下に逆送して、濾過膜上に捕足されたプリオン蛋白質を剥離し、膜から回収する。
このようにして得られたプリオン蛋白含有液は、実質的に凝集塊、大きな蛋白質あるいは細胞を含まず、プリオン蛋白はホモジネート時の濃度の5〜10倍程度に濃縮されている。得られた濃縮プリオン液は、凍結乾燥、凍結保存、冷蔵保存すれば長期間にわたり保存が可能であり、随時プリオン蛋白のチャレンジ試験に供することが可能である。
本発明によれば、比較的簡単な操作で均質、無色透明な濃縮プリオン蛋白液を得ることができる。得られたプリオン蛋白含有液は、プリオン蛋白のチャレンジ試験に必要な力価を有し、且つ、脂質等の夾雑物質を除去でき、極めて利用価値の高いものである。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
プリオン蛋白質の調製
プリオン感染ハムスター(263K株)10匹を擬死させた後、脳を摘出し、すり鉢内で擂り潰しを生理食塩液10mLに懸濁させた。その後ポリトロンエコノマイザーホモジナイザーPT2100(KINEMATIC社製)を用いて、13,000rpm、10秒のホモジネーションを3回繰り返し、生理食塩液で希釈を行って10%脳ホモジネートを調製した。
実施例1と同様にプリオン感染ハムスター10匹を擬死させた後、脳を摘出し、すり鉢内で擂り潰した。その約3gを界面活性剤リゾレシチンを0.1%含む生理食塩液10mLに懸濁させ、以後実施例1と同様に10%脳ホモジネートを調製した。
実施例1で得られた10%脳ホモジネートをカップ型ソニケータ(Cup-horn sonicater)にて氷冷しながら、1mLに対して2分間超音波処理し、2分のインターバルの後に再度2分間の超音波処理をおこなった。この操作を合計3回実施した。
実施例1で得られた脳ホモジネート3.0mLを生理食塩水に1%となるよう添加した。この液を一次濾過膜として、ディラポアメンブランフィルター(ミリポア社製)、濾過孔径0.22μmメンブランフィルターで濾過した後、その濾液150mLを再生セルロース製の中空糸膜(中空糸の外径:400μm、平均孔径15nm、プラノバ15N(表面積:0.01m2)にて、約0.08Mpaの圧力にて濾過を行った。次に0.9%塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液(pH7.4)200mLを0.08Mpaの圧力で同様に濾過を行い濾過膜を洗浄した。
次に中空糸の外側に、50mLの0.9%塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液を入れ、中空糸の外側から内側に0.08Mpaの圧力で緩衝液を逆送し、中空糸膜内に捕足されていたプリオン蛋白を含む15mLの液(回収液)を回収した。
得られたプリオン蛋白は、外観上無色透明な蛋白溶液として調製できた。
実施例2で得られた脳ホモジネート3.0mLを生理食塩水に1%添加し、実施例4と同様の方法でプリオン蛋白を回収した。
得られたプリオン蛋白は、外観上無色透明な蛋白溶液として得られた。
中空糸膜をプラノバ20N(中空糸の外径:400μm、平均孔径20nm、表面積:0.01m2)を用いた点以外はすべて実施例4と同様に処理してプリオン蛋白を回収した。
得られたプリオン蛋白は、外観上無色透明な蛋白溶液として調製できた。
[比較例1]
中空糸膜をプラノバ75N(中空糸の外径:400μm、平均孔径75nm、表面積:0.01m2)を用いた点以外はすべて実施例4と同様の処理をしてプリオン蛋白を回収した。
[試験例1]
実施例4、実施例5、実施例6および比較例1で用いられた脳ホモジネートの希釈液(処理前液)、それぞれの濾過液およびそれぞれの回収液につき、ウエスタン・ブロットによる限界希釈により、プリオン蛋白量を測定した。その結果を表1に示す。プリオン蛋白量は回収液量と濃度による補正により添加した絶対量を基準として、Log表示で示した。測定方法はJournal of Virological Methods 84(2000) 77- 89, Douglas C. Lee et al.の方法に準じ、異常型プリオン蛋白量のみを測定した。濃縮度は単位液量当たりのプリオン蛋白量が何倍になったかの倍率で示した。なお、「<0.8」は検出限界以下の量であることを示す。
Figure 2005139104
表1から明らかな通り、平均孔径15nmの中空糸を用いた実施例4及び実施例5の回収液のプリオン蛋白の絶対量は、処理前と殆ど変わらないほど高く、平均孔径20nmの中空糸を用いた実施例6の回収液では、ややプリオン蛋白量が減少したものの、チャレンジ試験に使用するに十分なプリオン蛋白含量を有していた。一方、比較例1で用いたような平均孔径が75nmの中空糸では、プリオン蛋白の殆どが中空糸膜を通過し、プリオン蛋白含量の低い回収液しか得られなかった。
本発明は、プリオン感染動物の脳ホモジネートなどからプリオン蛋白を分離する方法に関するものであり、得られたプリオン蛋白質は他の夾雑物を殆ど含まず、プリオン蛋白含量も高く、プリオン蛋白のチャレンジ試験に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. プリオン蛋白及び夾雑物を含む液をプリオン蛋白は通過させずプリオン蛋白より小なる固体は通過させる多孔性中空糸からなる濾過膜(二次濾過膜)で濾過する工程、およびプリオン蛋白を捕足した濾過膜に対して、プリオン蛋白を凝集させない回収液を逆送してプリオン蛋白を濾過膜から脱離させる工程を含んでなるプリオン蛋白の分離・採取方法。
  2. プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、予めプリオン蛋白を通過させ、プリオン蛋白より大なる個体を通過させない濾過膜(一次濾過膜)で濾過した濾液又は遠心分離操作により沈殿物を除去した上清である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  3. プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、プリオン感染動物の脳由来蛋白である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  4. プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が脳ホモジネートを超遠心分離処理することにより得られたミクロソームである請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  5. プリオン蛋白及び夾雑物を含む液が、脳ホモジネートを界面活性剤及び/又は超音波処理したものである請求項1又は請求項2記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  6. 界面活性剤が、天然型界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン界面活性剤である請求項5記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  7. 濾過膜が再生セルロース製である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  8. 二次濾過膜が10〜20nmの細孔径を有する多孔性中空糸膜である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
  9. プリオン蛋白を凝集させない回収液が、PBS、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液又は蒸留水である請求項1記載のプリオン蛋白の分離・採取方法。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008260001A (ja) * 2007-04-14 2008-10-30 Seiichi Manabe 大きさが15nm以下の微粒子の膜隔離膜除去および膜濃縮方法。
CN104857857A (zh) * 2015-04-23 2015-08-26 北京科兴生物制品有限公司 一种清洗超滤膜包的方法
WO2022211014A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06 株式会社カネカ 凝集性タンパク質の測定方法及び凝集可視化方法、並びにこれらの方法に使用するためのキット

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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