JP2005131493A - 気液分離方法及び装置 - Google Patents

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文子 白石
Yasunori Ichikawa
靖典 市川
Seiji Sugiyama
誠二 杉山
Kokichi Waki
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Abstract

【課題】反応に伴って発生する副生ガスを、反応液の流れを不安定化させることなく脱ガスすることのできる。
【解決手段】旋回流発生槽130内で反応液LMに旋回流を発生させることによって反応液LMに遠心力が作用する。この遠心力により、比重の重い反応液(液体)は旋回流発生槽130内の外周部に集まろうとし、比重の軽い副生ガス(気体)は旋回流発生槽130内の中心部に集まろうとするので、反応液LMは旋回流発生槽130の内周壁に沿って旋回しながら下降し、旋回流発生槽130の低部に溜まる。一方、比重の軽い副生ガスは旋回流発生槽130内の真ん中に集まって上昇し、旋回流発生槽130の上部に溜まる。これにより、旋回流発生槽130内に流入した反応液から副生ガスを連続的且つ効率的に脱ガスすることができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は気液分離方法及び装置に係り、特に金属微粒子の連続製造において、金属微粒子形成の反応で発生する副生ガスを脱ガスするのに好適な気液分離方法及び装置に関する。
磁気記録媒体を構成する磁性層に含有される磁性粒子としては、粒子サイズが小さく単分散性に優れていることが品質的に好ましい。この金属微粒子の製造においては、金属微粒子形成の反応で副生ガス(例えば水素ガス)の発生を伴う場合がある。
副生ガスを伴う反応は連続処理が難しく、上記した金属微粒子の製造を連続的に行うための連続装置が未だ実現していないのが実情である。その理由は、1モルの副生ガスが生成されたとすると、その副生ガスの体積は22.4Lの大きな体積になる為、連続処理の場合、副生ガスを連続処理の流れの中で効率的に除去できないと、色々な弊害が発生するためである。例えば、副生ガスを連続処理の流れの中で効率的に除去できないと、連続処理の流れが不安定になって混合場や反応場が不均一になると共に、反応の平衡が反応促進側に進みにくくなる。また、反応のための液温制御を行う場合、副生ガスを連続処理の流れの中で効率的に除去できないと、気体は熱伝導率が小さいので、反応温度を精度良く制御できなくなる。これらの弊害の結果、製造された金属微粒子の粒子サイズが大きくなったり、単分散性が悪くなったりする等の問題が生じる。
液体中のガスを分離除去する一般的な方法としては種々の方法があるが、その代表的なものとしては、分離膜で脱ガスする方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)、ガス吸着性の吸着剤で脱ガスする方法(例えば、特許文献4)、減圧することで脱ガスする方法、加熱することで脱ガスする方法、サイクロン法やトラップ法のメカニカル的な方法で脱ガスする方法(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7)がある。
特開平11−333236号公報 特開平7−253272号公報 特開2002−52325号公報 特開2001−113115号公報 特表2002−529228号公報 特表2002−529233号公報 特開平11−281637号公報
しかしながら、分離膜を用いる脱ガス方法の場合、膜材料として、反応性の原材料に対する耐性、反応により生成された生成物に対する耐性、原材料を溶解する溶剤に対する耐性等の種々の耐久性をもつことが求められるが、これらを満足する膜材料は存在しないという問題がある。従って、分離膜による脱ガスは、水中の溶存酸素等の脱ガスのように反応性の小さな液体や気体を扱う場合には問題ないが、反応により発生する副生ガス等の脱ガスには適用できない。
吸着を利用した脱ガス方法の場合、分離膜の場合と同様に、吸着剤の耐薬品性、溶剤耐性等の面で制約が多く、更には吸着を促進するためには加圧等の付帯設備が必要になり、装置が複雑化するという問題がある。
減圧を利用した脱ガス方法の場合、減圧操作により脱ガスは可能であるが、原材料、溶剤、反応生成物が揮発性の場合には減圧によってこれらのものまで揮発してしまうので、使用できないと共に、使用した場合には、脱ガス処理の後段にガスと一緒に揮発した原材料、溶剤、反応生成物の分離操作が必要になり装置が複雑になるという問題がある。
加熱を利用した脱ガス方法の場合、加熱操作により脱ガスは可能であるが、減圧を利用した場合と同様に、原材料、溶剤、反応生成物が揮発性の場合には加熱によってガスと一緒に揮発してしまうという問題がある。
従来のメカニカル的な脱ガス方法は、固体物とガスが混在したものからのガスの分離や、液体中に溶存したガスの脱ガスのように、連続的なガスの発生を伴わない対象物を前提とした脱ガスであり、反応によって発生する副生ガスのように反応の進行具合により連続的に発生するガスの連続分離に関しては考慮されていない。従って、金属微粒子の連続処理のための気液分離装置として、従来のメカニカル的な脱ガス方法を単に適用しても、粒子サイズが小さく単分散性の良い金属微粒子を製造することはできない。
このように、従来の脱ガス方法は、反応により急速に大量発生するガスの除去に適用できるものはなかった。この為、従来は、副生ガスの発生を伴う金属微粒子の製造は、1つのタンクで各工程を順次行う、いわゆるバッチ処理により製造せざるを得なかった。この結果、金属微粒子の粒子サイズの微小化が難しく、またバッチごとに製造される金属微粒子の分散性にバラツキがあり、一定の品質の金属微粒子を安定的に製造できないという問題がある。
このような背景から、反応に伴って発生する副生ガスを、反応液の流れを不安定化させることなく脱ガスすることのできる気液分離方法及び装置が要望されている。この要望を満足する気液分離装置は、上記した金属微粒子の連続製造を可能にすると共に、製造される金属微粒子の粒子サイズや単分散性を改善でき、極めて有効である。
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、反応に伴って発生する副生ガスを、反応液の流れを不安定化させることなく脱ガスすることのできる気液分離方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、反応に伴って発生する副生ガスを反応液から連続的に脱ガスする気液分離方法において、前記反応液が流れる配管途中に前記反応液に旋回流を発生させる旋回流発生槽を設けて該旋回流発生槽を反応液が通過するときに旋回流によって生じる遠心力によって前記反応液中の副生ガスを遠心分離させると共に、前記旋回流発生槽内の圧力が一定になるように前記旋回流発生槽内の圧力を制御することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、旋回流発生槽内で反応液に旋回流を発生させることによって反応液に遠心力が作用する。この遠心力により、比重の重い反応液(液体)は旋回流発生槽内の外周部に集まろうとし、比重の軽い副生ガス(気体)は旋回流発生槽内の中心部に集まろうとするので、反応液は旋回流発生槽の内周壁に沿って旋回しながら下降し、旋回流発生槽の低部に溜まる。一方、比重の軽い副生ガスは旋回流発生槽内の真ん中に集まって上昇し、旋回流発生槽の上部に溜まる。これにより、旋回流発生槽内に流入した反応液から副生ガスを連続的且つ効率的に脱ガスすることができる。この脱ガスにおいて、脱ガスされた副生ガスによって旋回流発生槽内の圧力が変動すると、配管から旋回流発生槽内に流入する流入速度が変動して配管を流れる反応液の流れを不安定化させる。また、旋回流発生槽の低部に溜まった反応液は、旋回流発生槽内の圧力と旋回流発生槽の底部に連結される配管の流れ抵抗とのバランスにより配管へ排出される。従って、副生ガスによって旋回流発生槽内の圧力が変動すると旋回流発生槽内の液面レベルが変動して旋回流発生槽内での反応液の滞留時間を変動させるので、反応の均一化を阻害する要因になる。そこで、本発明では、旋回流発生槽内の圧力が一定になるように前記旋回流発生槽内の圧力を制御して、配管から旋回流発生槽内に流入する流入速度や液面レベルを一定にしたので、反応の均一化を図ることができる。
請求項2は請求項1において、前記反応液が前記旋回流発生槽に流入してから流出するまでの実質滞留時間は、反応に伴って発生する副生ガスを前記反応液から遠心分離するのに必要とする時間よりも長いことを特徴とする。これにより、旋回流発生槽において、反応液から副生ガスを確実に遠心分離することができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記配管から旋回流発生槽内に流入する反応液の流速が前記配管を流れる反応液の流速の2倍以上であると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにすることを特徴とする。これは、旋回流発生槽内での脱ガスを促進するための反応液の流入速度と配管を流れる反応液の流速との関係を規定したもので、これにより反応液から副生ガスを効率的に脱ガスすることができる。
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記旋回流発生槽内の空気を予め不活性ガスでパージしておくことを特徴とする。これにより、反応が空気中の酸素を嫌う反応である場合の反応不良を防止でき、発生する副生ガスが水素ガスのように酸素があると危険なガスである場合に危険防止できる。更には、旋回流発生槽内を不活性ガスでパージして旋回流発生槽内を予め好ましい設定圧力に設定してから反応液を旋回流発生槽内に流入させれば、運転開始時における旋回流発生槽内の圧力変動もなくすことができる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記副生ガスを発生する反応は、還元剤を含有する第1の溶液と、周期律表の8、9、10族から選ばれる2種類以上の金属イオンを含有する第2の溶液とを混合して反応させて金属微粒子を生成する反応であるものであることを特徴とする。
これは、本発明の気液分離方法を適用するのに好適な反応の一例であり、かかる第1の溶液と第2の溶液とを混合させる反応は、反応の進行に伴って水素ガスを副生ガスとして発生させる。従って、本発明を適用すれば、反応が進行する配管途中に設けた気液分離装置で反応液の流れを不安定化することなく連続的に脱ガスすることができる。
請求項6は前記目的を達成するために、反応に伴って発生する副生ガスを反応液から連続的に脱ガスする気液分離装置において、前記反応液が流れる配管途中に接続されると共に前記反応液に旋回流を発生させる旋回流発生槽と、前記旋回流発生槽内に流入する反応液の流速が前記配管を流れる反応液の流速の2倍以上であると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにする旋回流速度調整手段と、前記旋回流発生槽内の圧力を調整する圧力調整手段とを備え、比重の異なる反応液と副生ガスとを旋回流によって発生する遠心力を利用して連続的に脱ガスすることを特徴とする。
請求項6は、本発明を装置として構成したものである。
請求項7は請求項6において、前記圧力調整手段は、前記旋回流発生槽内の圧力を測定する圧力センサと、前記旋回流発生槽内に溜まった副生ガスを排出するバルブ付きのガス抜き管と、前記圧力センサの測定値に基づいて前記バルブを開閉する制御部とで構成され、前記バルブは10ミリ秒以下の応答速度で開閉するバルブであることを特徴とする。
これは、旋回流発生槽内の圧力が所定圧力で一定になるように旋回流発生槽内の圧力を制御するのに好適な圧力調整手段の構成を示したもので、圧力調整手段のガス抜き管に設けるバルブとして10ミリ秒以下の応答速度で開閉するバルブを設けたものである。これにより、旋回流発生槽内の圧力を高精度に制御することができるので、旋回流発生槽内で副生ガスを連続的に脱ガスしても旋回流発生槽の前後の配管において反応液の流れが不安定になることがない。より好ましいバルブの応答速度は5ミリ秒以下である。
請求項8は請求項6において、前記圧力調整手段は、前記旋回流発生槽内の圧力を測定する圧力センサと、旋回流発生槽内に溜まった副生ガスを排出するバルブ付きのガス抜き管と、前記圧力センサの測定値に基づいて前記バルブを開閉する制御部とで構成され、前記ガス抜き管に前記副生ガスの放出速度を遅くする抵抗体を設けたことを特徴とする。
これは、旋回流発生槽内の圧力が所定圧力で一定になるように旋回流発生槽内の圧力を制御するのに好適な圧力調整手段の別の態様を示したもので、ガス抜き管に前記副生ガスの放出速度を遅くする抵抗体を設けたものである。抵抗体としてはオリフィスやフィルタを使用することができる。これにより、旋回流発生槽内の圧力制御がし易くなり旋回流発生槽内の圧力を高精度に制御することができるので、旋回流発生槽で副生ガスを連続的に脱気しても旋回流発生槽の前後の配管において反応液の流れが不安定になることがない。
尚、圧力調整手段には、上記の10ミリ秒以下の応答速度で開閉するバルブと上記の抵抗体の両方を備えるようにしてもよい。
請求項9は請求項6〜8において、前記旋回流発生槽に不活性ガスをパージするパージ手段を設けたことを特徴とする。これにより、請求項4で説明したように、反応が空気中の酸素を嫌う場合の反応不良の防止、発生する副生ガスが水素ガスのように酸素があると危険な場合の危険防止、更には運転開始時における旋回流発生槽内の圧力変動もなくすこともできる。
以上説明したように、本発明の気液分離方法及び装置によれば、反応に伴って発生する副生ガスを、反応液の流れを不安定化させることなく脱ガスすることができる。これにより、副生ガスの発生を伴う金属微粒子の連続製造を可能とし、しかも粒子サイズが小さく単分散性の良い一定品質の金属微粒子を安定的に製造することができる。
従って、製造する金属微粒子が磁気記録媒体の磁性層に含有する金属微粒子である場合には、磁気記録媒体の品質を向上させることができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る気液分離方法及び装置の好ましい実施態様について説明する。
図1は本発明の気液分離装置を、金属微粒子を連続製造する連続製造装置に組み込んだ一例である。
図1に示すように、金属微粒子の連続製造装置10は、主として、副生ガスの発生を伴う反応を行うための第1及び第2の溶液を連続的に供給混合する混合装置12と、前記反応で生成された金属微粒子を含む反応液LMを回収する回収タンク23と、混合装置12と回収タンクとを繋ぐ配管14の途中に設けられ、反応の進行に伴って発生する副生ガスを連続的に脱ガスする気液分離装置16とで構成される。
上記した構成の金属微粒子の連続製造装置10は、液相反応法(液液反応)において、反応の進行に伴って副生ガスを連続的に発生させる反応であれば適用可能であるが、例えば、磁気記録媒体の磁性層に含有する金属微粒子の連続製造に好適に使用することができ、この例で以下に説明する。
第1の溶液L1としては、還元剤溶液を好適に使用することができる。第2の溶液L2としては、周期律表の8、9、10族から選ばれる2種類以上の金属イオンを含有する溶液を好適に使用することができ、Fe,Pt,Co,Ni,Pdの金属イオンが好ましい。
また、液相反応法の中でも金属微粒子の粒子サイズを制御し易い逆ミセル法が好ましく、第1及び第2の溶液L1、L2を界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒を使用して逆ミセル溶液として調製することが好ましい。使用する界面活性剤としては油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製)、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)等が挙げられる。また、界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテル及びアルコール等が挙げられる。アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。また、還元剤溶液中の還元剤としては、アルコール類;ポリアルコール類;H2 ;HCHO、S2 6 2-、H2 PO2-、BH4-、N2 5+、H2 PO3-等を含む化合物を単独で使用することができるが、2種以上を併用することが好ましい。
第1の溶液L1と第2の溶液L2は、混合装置12の近傍に配設された第1の調製タンク22と第2の調製タンク24とで別々に調製される。即ち、第1の調製タンク22では、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを攪拌機22aで混合し、第1の溶液L1の逆ミセル溶液を調製する。第2の調製タンク24では、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と周期律表の8、9、10族から選ばれる2種類以上の金属イオンを含有する金属塩水溶液とを攪拌機24aで混合して第2の溶液L2の逆ミセル溶液を調製する。また、第1の調製タンク22と第2の調製タンク24のそれぞれの外周には、加熱ジャケット27、27が設けられ、反応を行う適切な温度まで加熱される。
第1及び第2の調製タンク22、24で調製された第1及び第2の溶液L1、L2は、それぞれの供給配管26、28を介して混合装置12に供給ポンプ29、29で供給される。混合装置12では、この2つの溶液L1、L2を瞬時に混合して混合装置12から速やかに排出し、配管14を流れて気液分離装置16に送液される。かかる配管14内で反応が進行し、反応の進行に伴って副生ガスが連続的に発生する。このように、化学反応のための溶液同士の混合を混合装置で行い、反応進行を混合装置12に接続された配管14内で行うフロー系反応の場合には、反応の進行に伴って連続的に発生する副生ガスを安定的に脱ガスすることで配管14を流れる反応液の流れを安定化し、反応の安定化及び均一化を図ることが非常に重要になる。この反応の安定化及び均一化により、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子を形成できる。気液分離装置16では、反応の進行に伴って連続的に発生する副生ガスの連続的且つ効率的に脱ガスしながら金属微粒子形成反応を終了させる。この場合、反応の進行に伴って連続的に発生する副生ガスを気液分離装置16で確実に脱ガスするには、配管14の長さは混合装置12での混合により開始された反応が回収タンク23に到達するまでに終了するのに十分な長さであることが必要であり、更には気液分離装置16に到達するまでに反応が終了する長さであることがより好ましい。
図2はサイクロン方式の気液分離装置16の斜視図、図3は(A)は気液分離装置16の縦方向断面図、図3(B)は横方向断面図である。図2及び図3に示すように、気液分離装置16は、主として、配管14途中に接続されると共に反応液LMに旋回流を発生させる旋回流発生槽130と、配管14から旋回流発生槽130内に流入する反応液LMの流入速度を配管14を流れる反応液LMの流速よりも増大させる旋回流速度調整手段132と、旋回流発生槽130内の圧力を調整する圧力調整手段120とで構成される。
旋回流発生槽130には、その上部壁面の接線方向に流入管136が設けられ、フランジ15を介して配管14に接続されると共に、流入管136の内部に旋回流速度調整手段132が設けられる。旋回流速度調整手段132は流入管136の内径を配管14の内径よりも絞るオリフィス等の絞り部材132Aを好適に使用することができる。この絞り部材132Aは、流入管136から旋回流発生槽130内に流入する反応液LMの流入速度が流入管136に繋がれた配管14を流れる反応液LMの流速の2倍以上になるようにすると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにすることができるものであることが好ましい。また、旋回流発生槽130の上面板を貫通して旋回流発生槽130と同芯軸となるように筒状のガス抜き筒138が設けられ、反応液LMから脱ガスされた副生ガスはガス抜き筒138を通って排出される。
圧力調整手段120は、主として、旋回流発生槽130内の圧力を測定する圧力センサ122と、旋回流発生槽130内の上部に溜まった副生ガスをガス抜き筒138を介して排出するバルブ124付きのガス抜き管126と、圧力センサ122の測定値に基づいてバルブ124を開閉する制御部128とで構成される。そして、圧力調整手段120により旋回流発生槽130内の圧力が一定になるように制御する。これにより、流入管136から旋回流発生槽130内に流入する反応液LMの流入速度を安定させ、流入管136に接続される配管14内を流れる反応液LMの流れを安定化させる。また、旋回流発生槽130の低部に溜まった反応液LMは、旋回流発生槽130内の圧力と旋回流発生槽130の底部に連結された配管14の流れ抵抗とのバランスにより配管14へ排出される。従って、旋回流発生槽130内に流入する流入量と旋回流発生槽130内から排出される排出量がバランスするように、旋回流発生槽130内の圧力を一定に制御するとよい。旋回流発生槽130内の圧力を一定にすれば、旋回流発生槽130内の液面レベルが変動しないので、旋回流発生槽130内での反応液LMの滞留時間が一定になる。これにより、流入量と排出量が安定し、旋回流発生槽130内での反応液LMの滞留時間を一定にすることができるので、第1混合装置12から回収タンク23まで反応液LMが流れる所要時間が一定になり、反応の均一化が図られる。また、図3のように、旋回流発生槽130に繋がる配管14にポンプ20を有する場合には、旋回流発生槽130内に流入する流入量と同じ量だけ引き抜くようにすれば、更に精度良く旋回流発生槽130内の液面レベルを一定にすることができる。
旋回流発生槽130内の圧力を精度良く一定に制御するために、バルブ124は10ミリ秒以下、より好ましくは5ミリ秒以下のレベルの応答速度で開閉するバルブを使用することが好ましい。5ミリ秒以下のレベルの応答速度で開閉するバルブとしては、サーボバルブを使用することができる。また、バルブの応答速度が10ミリ秒を超える場合には、バルブ124を含めたガス抜き管126内のどこかに副生ガスの放出速度を遅くする抵抗体(図示せず)を設け、圧力制御をし易くすることが好ましい。
また、旋回流発生槽130には例えば窒素ガス等の不活性ガスを旋回流発生槽130にパージするためのバルブ117A付きパージ配管117が接続される。このパージ配管117は、反応が空気中の酸素を嫌う反応であったり、反応に伴って発生する副生ガスが水素ガスのように酸素があると危険なガスの場合には、パージ配管117から旋回流発生槽130に不活性ガスをパージして旋回流発生槽130内の空気を不活性ガスで置換する。更には、旋回流発生槽130内を不活性ガスでパージして旋回流発生槽130内を予め好ましい設定圧力に設定してから反応液LMを旋回流発生槽130内に流入させれば、運転開始時における旋回流発生槽130内の圧力変動もなくすことができる。旋回流発生槽130内を予めどの程度の設定圧力にしておくかは、事前試験等により決めておくとよい。
上記の如く構成されたサイクロン方式の気液分離装置16では、流入管136の絞り部材132Aを通って旋回流発生槽130内に圧入された反応液LMは、旋回流発生槽130の内周壁に沿って下降する旋回流を生じ、反応液LMに遠心力を付与する。この遠心力によって反応液LMよりも比重の小さな副生ガスは脱ガスされて旋回流発生槽130内の上部に溜まると共に、脱ガスされた反応液LMは旋回流発生槽130内の底部に溜まる。旋回流発生槽130内の底部に溜まった反応液LMは、旋回流発生槽130内の圧力と配管14の流れ抵抗とのバランスにより連続的に排出される。図2、図3のように、配管14にポンプ20を設ける場合には、旋回流発生槽130内に流入する反応液LMの流入量と同じ量だけ連続的に引き抜くようにするとよい。これにより、反応液LMの流れを不安定化させることなく、反応に伴って発生する副生ガスを反応液LMから連続的に脱ガスすることができる。
従って、サイクロン方式の気液分離装置16を第1の混合装置12と回収タンク23とを結ぶ配管14の途中に設けるだけで簡単に金属微粒子の連続製造装置10を構成することができる。また、流入管136から旋回流発生槽130内に流入させる反応液LMの流速を配管14内の流速の2倍以上で、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにすることで、気液分離を促進することができるので、反応液LMから副生ガスを連続的且つ効率的に脱ガスすることができる。また、旋回流発生130槽内の圧力を一定に保って流入管136から旋回流発生槽130内へ流入する流入速度を安定化させると共に、旋回流発生槽130内の底部に溜まった脱ガス後の反応液LMを、流入した流入量と同じ量だけ引き抜くようにしたので、サイクロン方式の気液分離装置16の前後の配管14において、配管14内を流れる反応液LMの流れを安定化することができる。
図4は、サイクロン方式の気液分離装置16の変形例である。
図4に示すように、旋回流発生槽130内には、反応液LMを調製する際に使用した溶媒が流入管136位置の上方に気液界面131を形成するように貯留される。これにより、配管14を介して混合装置12、気液分離装置16、回収タンク23を繋ぐ連続的な液相が形成される。この溶媒が貯留された旋回流発生槽130内に流入管136から反応液LMを吐出する。吐出する反応液LMの流速は、上記したように、配管14を流れる反応液LMの流速の2倍以上になるようにすると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにする。これにより、旋回流発生槽130内の溶媒に旋回流が形成される。この場合にも、旋回流発生槽130内で反応液LMに旋回流を発生させることによって反応液LMに遠心力が作用する。この遠心力により、配管14を流れる間に反応して生成された反応液LM中の金属微粒子は比重が重いので旋回流発生槽130内の外周部に集まろうとし、比重の軽い副生ガス(気体)は旋回流発生槽130内の中心部に集まろうとする。これにより、反応液LMに含まれる金属微粒子は旋回流発生槽130の内周壁に沿って旋回しながら溶媒中を下降する。一方、比重の軽い副生ガスは旋回流発生槽130内の真ん中に集まって上昇し、旋回流発生槽130の上部に溜まる。これにより、旋回流発生槽130内に流入した反応液LMから副生ガスを連続的且つ効率的に脱ガスすることができる。更には、金属微粒子を含む反応液LMが旋回流発生槽130内の溶媒中に吐出されることで希釈されるので、粒子サイズの一層細かな金属微粒子が形成され易くなる。そして、旋回流発生槽130内の底部に下降し溶媒中に懸濁した状態の金属微粒子は、旋回流発生槽130内の溶媒と共に配管14に排出される。この場合にも、旋回流発生槽130内のヘッドスペース部130Aの圧力を一定にすることが重要であり、図4のように、配管14にポンプ20を設ければ更に良い。
次に、図1の金属微粒子の連続製造装置10に使用する混合装置12として好適な装置の構造について説明する。
本発明で使用する混合装置は、混合場で瞬時に混合でき且つ混合により反応する反応液を混合場に滞留させることなく速やかに排出できるものが、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子を形成する上で好ましく、高速攪拌混合方式、微小ギャップ混合方式、高圧混合方式の混合装置を好適に使用することができる。
(1) 高速攪拌混合方式
図5は、高速攪拌混合方式の混合装置12の断面図である。
図5に示すように、混合装置12は、円筒容器状に形成されると共に滞留時間が10秒以下の狭小な混合器30内に高速攪拌機32が設けられる。高速攪拌機32は、垂直な回転軸34の上部が混合器30の蓋板36に軸受38を介して回転自在に支持されると共に、回転軸34の上端に図示しない台座に固定されたモータ40が連結される。また、回転軸34の下端部には、上下2段のエッジタービー型の攪拌羽根42、42が液中に水没するように設けられる。攪拌羽根42同士の間隔は、攪拌羽根42の直径をdとした場合に1.0d〜0.5dの範囲にするのが好ましい。また、攪拌羽根42の直径dに対して混合器30の内径DをD=1.7d〜3.7dの範囲にするのが好ましい。更には、混合器30の静止液深さを2d〜3dの範囲にするのが好ましい。尚、図5では、攪拌羽根42の種類として、エッジタービー型で示したが、ディゾルバー型、櫂型、プロペラ型、フラット円板型等を使用でき、更にはタービン、ディスクタービン型等も使用できる。何れの攪拌羽根42を使用した場合でも、攪拌羽根42の先端での周速度が5m/秒以上になるように、更に好ましくは10m/秒以上になるように高速攪拌機32を構成する。
混合器30の外周には、水やオイル等の熱容量が比較的大きな熱媒体が流れるジャケット44が巻回され、ジャケット44の熱媒体流入口44Aと熱媒体流出口44Bとが図示しない熱媒体供給装置に接続される。そして、前記した第1の調製タンク22から第1の溶液L1が供給配管26を介して供給され、第2の調製タンク24から第2の溶液L2が供給配管28を介して供給される。この場合、それぞれの供給配管26、28の先端は混合器30の蓋板36を貫通して高速攪拌機32の回転軸34に沿って液面近傍まで延ばされることが好ましい。また、混合器30の底板30Aには、反応液LMの排出管46が連結され、排出管46にバルブ48が設けられる。
上記の如く構成された高速攪拌混合方式の混合装置12によれば、第1の調製タンク22で調製した第1の溶液L1を、供給配管26を介して混合器30に所定量供給したら、高速攪拌機32を駆動して攪拌羽根42を、該攪拌羽根42の先端での周速度が5m/秒以上になるように、好ましくは10m/秒以上になるように高速攪拌する。次いで、第2の調製タンク24から第2の溶液L2を供給配管28を介して混合器30内の第1の溶液L1に添加する。この場合、溶液L1、L2の温度及び混合器30内の温度は、結晶構造の金属微粒子を形成する初期反応に適した所定温度に設定される。これにより、適切な混合反応温度条件下で、混合器30内の第1の溶液L1には、回転軸34を中心として液面から液中に液を巻き込むVカット状の極めて強い旋回流が発生するので、回転軸34の近傍に添加された第2の溶液L2は、このVカット状の旋回流によって第1の溶液L1に瞬時に巻き込まれ、混合器30内の第1の溶液L1全体に均一に分散される。混合器30内で混合して反応した反応液LMは排出管46から直ちに排出される。混合器30内での滞留時間は10秒以下であることが好ましい。これにより、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子が形成される。尚、第2の溶液L2を混合器30に入れておいて、第1の溶液L1を添加するようにしてもよい。
図6は、高速攪拌混合方式の混合装置12の別態様を示したものである。即ち滞留時間が10秒以下の狭小な混合器55は連通口50を有する仕切板52で2つの混合室54、56に仕切られる。それぞれの混合室54、56には、攪拌羽根58、60を設けられ、モータ59、61により攪拌羽根58、60の先端での周速度が5m/秒以上になるように、好ましくは10m/秒以上になるように高速攪拌される。この混合装置12では、第1及び第2の溶液L1、L2が先ず一方の混合室54に供給されて攪拌羽根58で高速攪拌混合された後、連通口50からもう一方の混合室56に流入して更に攪拌羽根60で高速攪拌混合されてから排出される。図6の高速攪拌混合方式の混合装置12の場合、混合された液は各混合室54、56に滞留することなく速やかに移動するので、第1及び第2の溶液L1、L2を瞬時に混合し、反応液を速やかに排出することができる。これにより、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子が形成される。
尚、高速攪拌法を実施する混合装置12は、図5や図6の混合装置に限定されるものではなく、第1及び第2の溶液L1、L2を混合器30内に供給して液相反応法により混合反応させることができ、且つ攪拌羽根42の先端における周速度が5m/秒以上になるようにすることができる構造のものであればよい。
(2) 微小ギャップ混合方式
図7は、微小ギャップ混合方式の混合装置12の断面図である。
図7に示すように、混合装置12は、上下が密閉された円筒容器状の縦型の混合器62内に該混合器62の内径よりも僅かに直径が小さな円柱状の回転ドラム64が設けられる。回転ドラム64には、その回転中心Sに沿って垂直な回転軸66が設けられ、回転軸66の上部と下部とが混合器62の天板62Aと底板62Bとに軸受68、68を介して回転自在に支持される。また、回転軸66の上端には、図示しない台座に固定されたモータ70が連結される。
混合器62の内壁周面と回転ドラム64の外周面との間には、環状な微小間隙72(微小ギャップ)が形成される。この微小間隙72は、回転ドラム64の回転中心Sから先端までの距離D1 を1としたときに回転ドラム64の回転中心Sからの距離が最も近い混合器62の内壁までの距離D2 が1.001〜1.200の範囲に設定することにより形成される。また、混合器62の下端部両側面には、第1の溶液L1の供給口74と第2の溶液L2の供給口76が形成され、それぞれの供給口74、76がそれぞれ供給配管26、28に連結される。また、混合器62の上端部側面には、反応液LMの排出口75が形成され、配管14に接続される。混合器62の外周には、水やオイル等の熱容量が比較的大きな熱媒体が流れるジャケット78が巻回される。
上記の如く構成された微小ギャップ混合方式の混合装置12によれば、適切な混合反応温度条件下で、回転ドラム64をその先端(先端周面位置)での周速度が5m/秒以上、好ましくは10m/秒以上になるように超高速で回転させた状態で、第1の溶液L1と第2の溶液L2とが混合器62の微小間隙72内に送り込まれる。微小間隙72内に送り込まれた溶液L1、L2は、固定された混合器62の内壁周面と超高速で回転する回転ドラム64の外周面とによって均一な剪断力を受けながら微小間隙72内を混合器62の下端から上端に向けて螺旋状に移動しながら排出口75へ達し、配管14に排出される。これにより、第1及び第2の溶液L1、L2を、微小間隙72において瞬時に且つ効率的に混合させることができるので、微小サイズで単分散性に優れた金属微粒子が形成される。この場合、上記した距離D2 が1.001未満で小さ過ぎると、混合器62の内壁周面や回転ドラム64の外周面での表面粗さの影響で剪断力が不均一になり、形成される金属微粒子の単分散性が悪くなり易い。また、距離D2 が1.200を超えて大き過ぎると、溶液L1、L2に付与される剪断力が小さくなり、形成される金属微粒子粒子サイズが大きくなり易いと共に単分散性も悪くなり易い。
図8は微小ギャップ混合方式の混合装置12の別態様を示した断面図であり、図7と同じ部材には同符号を付して説明する。
図8に示すように、混合装置12は、回転ドラム64の外径に対して混合器62の内壁径を混合器62の下端から上端にいくに従って小さくなるようにし、微小間隙72が混合器62の下端から上端にいくに従って狭くなるようにしたものである。かかる混合装置12によれば、微小間隙72内に供給された第1及び第2の溶液L1、L2は、混合器62の下端から上端に移動するに従って流速が速くなるので、第1及び第2の溶液L1、L2に付与される剪断力を徐々に大きくすることができる。これにより、微小サイズで単分散性に優れた金属微粒子を形成することができる。この場合の回転ドラム64の中心から先端までの距離D1 及び回転ドラム64の回転中心Sからの距離が最も近い混合器62の内壁までの距離D2 は、図8に示したように、混合器62の上端位置の寸法となる。
図9は微小ギャップ混合方式の混合装置12の更に別態様を示した断面図であり、図7と同じ部材には同符号を付して説明する。
図9に示すように、混合装置12は、回転ドラム64の代わりに、ディスク状の複数のフラット円板80、80…を回転軸66に所定間隔を有して軸方向に配設したものである。この場合には、フラット円板80同士の距離はフラット円板80の外周面と混合器62の内壁周面とに形成される微小間隙72と同等にすることが好ましい。これにより、粒子サイズの小さな単分散性に優れた金属微粒子を形成することができる。
尚、微小ギャップ混合方式の混合装置12は、図7、図8、図9に限定されるものではなく、混合器62の内壁と高速回転する攪拌部材64、80との間に形成された微小間隙72を有する装置であって、該微小間隙72を形成するために、攪拌部材64、80の回転中心Sから先端までの距離を1としたときに攪拌部材64、80の回転中心Sからの距離が最も近い内壁までの距離を1.001〜1.200の範囲に設定した装置を用い、第1及び第2の溶液L1、L2を微小間隙72に供給して混合させると共に、混合による反応液LMを微小間隙72から排出する構造のものであればよい。
(3) 高圧混合方式
高圧混合方式の種類は、ワンジェット型、T字型・Y字型、ツージエット対向型を好適に使用することができる。
a)ワンジェット型
図10は、ワンジェット型の混合装置12の概念を示した断面図である。
図10に示すように、混合装置12は、第1及び第2の溶液L1と溶液L2とを混合して反応させる筒状の混合室82(混合場)が形成された混合器84の一端側開口に、第1の溶液L1を混合室82に導入する第1の導管86が接続されると共に、他端側開口に混合室82で混合され反応する反応液の排出管88が接続される。また、混合器84の側面側で第1の導管86の出口近傍に、第2の溶液L2を混合室82に導入する第2の導管90が接続される。第1の導管86と第2の導管90の先端内部には、それぞれ第1のオリフィス92と第2のオリフィス94が形成され、これにより、第1の導管86と第2の導管90には乱流の液体を噴射する第1のノズル96と第2のノズル98が形成される。図10では、第1の導管86から第1の溶液L1を導入し、第2の導管90から第2の溶液L2を導入するようにしたが、両液を逆にすることができる。また、排出管88の接続位置は、混合器84の他端側近傍であれば、混合器84の側面部に接続してもよい。
また、混合器84の外周には、水やオイル等の熱容量が比較的大きな熱媒体が流れるジャケット100が巻回され、ジャケットの熱媒体流入口100Aと熱媒体流出口100Bとが図示しない熱媒体供給装置に接続される。混合反応温度は、第1及び第2の溶液L1、L2の種類等によって、初期反応に適した所定温度に適宜設定することが好ましい。
尚、複数種の金属原子の数だけ第1の溶液L1を調製し、これら複数の溶液と第2の溶液L2を混合させる場合には、これらの溶液のうちの1つを1MPa以上の高圧ジェット流とすればよい。従って、混合器84の側面側に複数の第1の溶液L1を噴出するノズル位置を複数設けても良く、或いは1つのノズル位置から複数の第1の溶液L1を順番に噴出するようにしてもよい。従って、直進流の高圧ジェット流のノズルは基本的に1本であるが、直進流に対して直交する直交流のノズルは複数本あってもよい。
ブロック状のオリフィス材102に、第1及び第2のオリフィス92、94を穿設加工する方法としては、金属、セラミックス、ガラス等のオリフィス材102に100μm程度の噴出孔を精密に開ける加工方法として公知のマイクロ切削加工、マイクロ研削加工、噴射加工、マイクロ放電加工、LIGA法、レーザー加工、SPM加工等を好適に使用できる。
オリフィス材102の材質としては、加工性が良く、硬度がダイヤモンドに近い材質のものが好ましい。従って、ダイヤモンド以外の材質としては、種々の金属や金属合金に焼入れ、窒化処理、焼結処理等の硬化処理したものを好適に使用することができる。また、セラミックスも硬度が高く、ダイヤモンドよりも加工性が優れているので好適に使用できる。尚、本実施の形態では、第1のノズル96及び第2のノズル98の絞り構造としてオリフィスの例で説明するが、乱流の液体を噴射する機能を有するものであれば、オリフィスに限らず他の方法を用いることができる。
また、第1の導管86と第2の導管90には、図示しない加圧手段が設けられ、第1の溶液L1と第2の溶液L2とが第1及び第2ノズル96、98に加圧供給される。但し、第2のノズル98から混合室82に噴出する圧力は、第1のノズル96から混合室82に噴出する高圧ジェット流の圧力よりも小さくする。液体に高圧力をかける加圧手段としては、種々の手段が知られており何れの手段も使用可能であるが、比較的入手し易く安価な手段としてはプランジャーポンプや増圧ポンプのような往復ポンプを使用することが好ましい。また、往復ポンプほど高圧を発生することはできないが、ロータリポンプの中にも高圧発生型のものがあるので、このようなポンプを使用することもできる。
そして、第1のノズル96から第1の溶液L1が1MPa以上の高圧ジェット流で且つ混合室82に流入する時のレイノルズ数が10000以上の乱流として混合室82に噴出され、第2のノズル98から圧力が第1の溶液L1よりも低い第2の溶液L2が第1の溶液L1に対して略直交する直交流として混合室82に噴出する。この場合、第2の溶液L2が第1の溶液L1に対して90°の角度で完全に直交しなくても、直交する速度ベクトル成分を主成分とするものであればよい。これにより、第1の溶液L1と第2の溶液L2とを適切な混合反応温度条件下で瞬時に且つ効率的に混合し、反応した反応液LMは排出管88から直ちに排出される。この結果、微小サイズで単分散性のよい金属微粒子が形成される。
かかる混合反応は、図11に模式的に示すように、乱流の高速な高圧ジェット流の第1の溶液L1に、第1の溶液L1に対して略直交方向から噴出される第2の溶液L2を同伴させるように巻き込むことにより、第1の溶液L1と第2の溶液L2とが混ざり合って発生する大きな渦粘性を利用することで高性能な混合効率を得るものであり、混合装置12の上記した混合室82、第1及び第2ノズル96、98、排出管88は次の関係を有するように形成される。
即ち、混合室82に渦粘性が形成されることが必要であり、混合室82の筒径D1 が第1のノズル96のオリフィス径D2 、第2のノズル98のオリフィス径D3 よりも大径に形成される。特に直進流Aである第1の溶液L1の作る渦粘性は混合効率を良くする上で重要であり、第1のノズル96のオリフィス径D2 に対する混合室82の筒径D1 の寸法比は、1.1倍〜50倍の範囲が好ましく、更に好ましくは1.1倍〜20倍の範囲である。また、直進流Aに対して直交する直交流Bである第2の溶液L2が直進流Aの溶液L1に巻き込まれ易くするためには、直交流Bの圧力を直進流Aの圧力よりも低くして、噴出流速が直進流Aの噴出流速以下になるようにすることが好ましい。具体的には直進流Aの噴出流速に対する直交流Bの噴出流速の流速比は、0.05倍〜0.4倍、更に好ましくは0.1倍〜0.3倍がよい。
また、直進流Aが小径な第1のノズル96からそれよりも大径な混合室82に噴出されることにより形成される渦粘性Cが最大になる以前の位置で直交流Bを混合室82に噴出させることが必要であり、第1のノズル96と渦粘性Cの最大位置との間に第2のノズル98を配置することが必要である。従って、渦粘性Cが最大になる位置を知る必要があるが、渦粘性Cが最大になる混合室82の位置は、流動解析ソフトとして既に日本で市販されて流動解析ソフトとして良く知られているアールフロー社製の数値解析ソフト、R−Flowを用いて予めシミュレーションを行うことによって把握することができる。この場合、図11から分かるように、渦粘性Cが最大になる位置はピンポイントではなく領域を有するので、渦粘性Cの最大位置を渦粘性Cの略中心部であるポイントPとすればよい。従って、ポイントP以前に第2のノズル98を位置決めすればよいが、より好ましくは渦粘性Cの形成初期の段階で直交流Bを噴出できるように第2のノズル98を位置決めするのが好ましい。
また、上記の数値解析ソフトで解析すると、渦粘性Cが出現する領域の中心ポイントPは直進流Aの流速と関係があり、直進流Aの最大流速(通常は第1ノズル位置での流速)が1/10に減少する位置に略相当する。従って、直進流Aの最大流速が1/10に減少する位置を計算して、そのポイント以前に直交流Bを噴出できるように第2のノズル98を位置決めすれば、ポイントPを計算する必要もない。
また、最大の渦粘性Cを混合室82に形成するために必要な混合室82の長さL(図10参照)を確保する必要があるが、あまり長すぎると反応液LMが混合室82で滞留や逆流が生じ易くなり、金属微粒子の粒子サイズの微粒子化や単分散性に悪影響を及ぼす。従って、混合室82の長さLは第1のノズル96から渦粘性Cの最大位置であるポイントPまでの距離の2倍〜5倍が好ましく、更に好ましくは2倍〜3倍がよい。
更に、小径な第1のノズル96や第2のノズル98からそれよりも大径な混合室82に高速流で液体が噴出されると、キャビテーションを起こし易く、このキャビテーションにより混合室82に気液界面が形成されて混合効率を低下させる。従って、渦粘性Cを利用して混合効率を上げるためには、混合室82に気液界面が形成されないようにすることが必要である。従って、図10のように、排出管88の口径D4 を第3のオリフィス104で絞って混合室82の筒径D1 よりも小さくし、混合室82の圧力を上げた状態で混合することが必要である。これにより、キャビテーションを解消できるので、混合効率が一層向上する。尚、排出管88内の混合に寄与しない部分での滞留時間を極力短くする為、混合室82内の出口を絞ると共に、少なくとも混合室82の筒径D1 よりも小さな内径の排出管88を極力短くして配管14に接続するとよい。
また、第1のノズル96から混合室82へ噴出される噴出流形状は第1のノズル96に設けた第1のオリフィス92により規制され、この噴出流形状は混合性能に影響する。従って、混合反応の目的に応じて、糸線状、円錐状、スリット状、扇状等の噴出流形状を形成する第1のオリフィス92を適宜使用することが好ましい。例えば、ミリ秒オーダーの非常に反応速度の速い反応の場合には、瞬時にできるだけ狭い範囲で渦粘性Cが最大になるように直進流Aと直交流Bを噴出させることが必要であり、糸線状の噴出流形状を形成する第1のオリフィス92が好ましい。また、反応速度が比較的遅い場合には、できるだけ広い範囲で渦粘性Cが最大になるように直進流Aと直交流Bを噴出させて、直進流Aが作る同伴界面積を増やす方がよく、この場合には薄膜な噴出流形状を形成する第1のオリフィス92が好ましい。また、ミリ秒オーダーの非常に反応速度と比較的遅い反応速度との中間的な反応速度の場合には、円錐状の噴出流形状を形成する第1のオリフィス92が好ましい。
図12〜図15は糸線状、円錐状、スリット状、扇状の各噴出流形状を形成するための第1のオリフィス92を図示したものであり、それぞれの図における(a)はオリフィスを先端側から見た図、(b)はオリフィスの縦断面図、(c)はオリフィスの横断面図である。
図12は、糸線状の直進流Aを混合室82に噴出するための第1のオリフィス92であり糸線状に形成される。図13は、円錐状の直進流Aを混合室82に噴出するための第1のオリフィス92であり、先端部が開いたラッパ管状に形成される。図14は、薄膜の直進流Aを混合室82に噴出するための第1のオリフィス92であり矩形なスリット状に形成される。図15は、扇状な薄膜の直進流Aを混合室82に噴出するための第1のオリフィス92であり、先端部が扇状に拡径して形成される。
尚、ワンジェット混合方式の混合装置12は上述した図10に限定するものではなく、第1の溶液L1と第2の溶液L2とをそれぞれのノズルから該ノズルの口径よりも大径な混合場に噴出して混合反応させると共に混合反応液を前記混合場の径よりも小径な排出口から排出する静的混合装置を使用し、溶液L1と溶液L2の少なくとも一つの溶液を1MPa以上の高圧ジェット流で且つ混合場に流入する時のレイノルズ数が10000以上の乱流として混合場に噴出し、該高圧ジェット流が流れ方向に対して形成する渦粘性が最大になる以前の位置に、残りの溶液を前記高圧ジェット流よりも低い圧力で添加することのできるものであればよい。
b)T字型・Y字型
図16及び図17は、T字型・Y字型の混合装置12の断面図であり、図16はT字管、図17はY字管の場合である。
図16及び図17に示すように、T字管やY字管のような非常に細い配管の交点(混合場)で、第1の溶液L1と第2の溶液L2とを1MPa以上の高圧ジェット流で衝突させることにより両液を瞬時に混合させ、反応した反応液を排出管から短時間で排出する。即ち、第1の添加配管106から第1の溶液L1を1MPa以上の高圧ジェット流で混合場108に噴出させると共に、第2の添加配管110から第2の溶液L2を1MPa以上の高圧ジェット流で混合場108に噴出させて両溶液を衝突させる。衝突によるエネルギーで混合され、反応した反応液LMを排出管112から短時間で排出する。尚、第1の溶液L1と第2の溶液L2の圧力は1MPa以上であれば、同じでも異なっていてもよい。また、第1の添加配管106、第2の添加配管110、及び排出管112の外周にはジャケット114が巻回され、混合場108における第1及び第2の溶液L1、L2との混合反応温度が制御される。尚、図16、図17の符号114Aはジャケット114の熱媒体入口であり、符号114Bは熱媒体出口である。
これにより、第1の溶液L1と第2の溶液L2とは適切な混合反応温度条件下で瞬時に且つ効率的に混合して反応し、反応液が直ちに排出管112から排出されるので、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子を形成することができる。
c)ツージエット対向型
図18は、T字型に渦粘性の概念を加味した混合法であり、図10と同じ部材には同符号を付して説明する。この混合法は、第1の溶液L1と第2の溶液L2を対向する方向から1MPa以上の高圧ジェット流で、該L1溶液とL2溶液を噴出するノズル径よりも大径な混合室82(混合場)に噴出して衝突させ、両溶液に発生する渦粘性を利用して混合し、反応液LMを混合室82の径よりも小径な排出管88から排出するものである。
図18の混合装置12は、第1の溶液L1と第2の溶液L2とを混合して反応させる筒状の混合室82が形成された混合器84の一端側開口に、第1の溶液L1を混合室82に導入する第1の導管86が接続されると共に、他端側開口に第2の溶液L2を混合室82に導入する第2の導管90が接続される。また、混合器84の中央部開口には、混合室82で混合されて反応した反応液LMを該混合室82から排出する排出管88が接続される。
第1の導管86と第2の導管90の先端内部には、それぞれ第1のオリフィス92と第2のオリフィス94が設けられ、これにより、第1の導管86と第2の導管90には乱流の直進流A1 、A2 を噴射する第1のノズル96と第2のノズル98が形成される。尚、本実施の形態では、第1のノズル96から第1の溶液L1を噴出し、第2のノズル98から第2の溶液L2を噴出する例で説明するが、逆にしてもよい。
また、混合器84の外周にはジャケット100が巻回され、図10で説明したと同様に、混合器84内における第1及び第2の溶液L1、L2との混合反応温度が制御される。
また、混合室82の筒径D1 、第1のノズル96のオリフィス径D2 、第2のノズル98のオリフィス径D3 、及びこれらの寸法関係はワンジェット型と同様である。更に、第1及び第2のオリフィス92、94を形成する方法、オリフィス材102の材質、加圧手段もワンジェット型で説明したのと同様である。また、直進流A1 、A2 の形状もワンジェット型で説明した糸線状、円錐状、スリット状、扇状の各噴出流形状を形成することができる。
そして、図19に示すように、第1のノズル96と第2のノズル98から第1の溶液L1と第2の溶液L2とを1MPa以上の高圧ジェット流で混合室82の一方端と他方端から噴出し、対向する乱流の直進流A1 、A2 として混合室82で衝突させる。この2本の直進流A1 、A2 によって形成させる2つの渦粘性C、Dをオーバーラップさせることにより溶液L1と溶液L2とを適切な混合反応温度条件下で瞬時に混合され、反応した反応液LMは排出管88から直ちに排出される。これにより、微小サイズで単分散性の良い金属微粒子を形成することができる。
かかる混合反応は、対向する乱流の高速な2本の直進流A1 、A2 によって混合室82に形成されるそれぞれの渦粘性C、Dが最大になった時点で、重なる部分Eが極力大きくなるようにオーバーラップさせることで高性能な混合効率を得るものである。従って、直進流A1 、A2 は、混合室82に噴出直後で衝突することなく、且つ直進流A1 、A2 によって混合室82に形成される2つの渦粘性C、Dがオーバーラップする部分Eを極力大きくすることが好ましい。このためには、対向する第1のノズル96と第2のノズル98の離間距離L(図18参照)を、換言すると混合場の長さを適切に設定することが好ましい。このように、第1のノズル96と第2のノズル98の離間距離Lを適切に設定することで、最大になった渦粘性C、D同士のオーバーラップする部分Eを確実に大きくすることができ、2つの渦粘性C、D同士を略完全にオーバーラップさせることも可能である。従って、渦粘性C、Dが最大になる位置を知る必要があるが、渦粘性C、Dが最大になる混合室82の位置は、流動解析ソフトとして既に日本で市販されて流動解析ソフトとして良く知られているアールフロー社製の数値解析ソフト、R−Flowを用いて予めシミュレーションすることで、第1のノズル96から渦粘性Cまでの距離、及び第2のノズル98から渦粘性Dまでの距離を把握することができる。この場合、図19から分かるように、渦粘性C、Dが最大になる位置はピンポイントではなく領域を有する。従って、第1のノズル96と第2のノズル98の離間距離Lは、渦粘性C、Dの最大位置を渦粘性C、Dの略中心部であるポイントP1 、P2 とし、ポイントP1 とポイントP2 とを一致させたときの第1のノズル96からポイントP1 までと第2のノズル98からポイントP2 までの合計値とすればよい。また、ポイントP1 、P2 を把握する別の方法としては、上記の数値解析ソフトで解析すると、直進流A1 、A2 による渦粘性C、Dが最大になるポイントP1 、P2 は直進流A1 、A2 の流速と関係があり、直進流A1 、A2 の最大流速(通常は第1又は第2ノズル位置での流速)が1/10に減少する位置に略相当する。従って、直進流A1 、A2 の最大流速が1/10に減少する位置を計算して、ポイントP1 、P2 を把握してもよい。このように、渦粘性C、Dが最大になった位置で渦粘性C、D同士をオーバーラップさせることで、直進流A1 と直進流A2 の液液界面での接触効率を大きくして混合反応性能を向上させる効果の他に、直進流A1 と直進流A2 が衝突することによる液液摩擦に伴う発熱を抑制する効果もある。
以上説明した金属微粒子の製造装置10では、反応液LMが流れる配管14の途中に本発明の気液分離装置16を組み込むようにしたので、反応に伴って発生する副生ガスはサイクロン式の気液分離装置16によって脱ガスされる。この気液分離装置16での脱ガス中、旋回流発生槽130内の圧力が圧力調整手段120によって一定になるように制御されるので、旋回流発生槽130の前後の配管14において反応液LMの流れが不安定になることがない。
従って、本発明の気液分離装置16は、副生ガスを発生する反応を反応液LMの流れの中で行わせるフロー反応方式での脱ガスに好適であり、特に磁気記録媒体の磁性層に含有する金属微粒子の連続製造に本発明の気液分離装置16を採用すれば、副生ガスの発生を伴う反応の均一化が可能となり、結果的に製造される金属微粒子の単分散性を良くすることができる。また、連続的に脱ガスすることで反応の平衡が反応促進側に進むと考えられるので、迅速な反応を可能とし、結果的に金属微粒子の微小化を図ることができる。また、反応のための液温制御を行う場合、副生ガスを連続処理の流れの中で効率的に除去することができるので、液温制御の精度を向上させることができ、結果的に製造される金属微粒子の微小化や単分散性の向上を図ることができる。
更には、本発明の気液分離装置16を組み込むことで金属微粒子の連続製造を確立することができるので、従来のバッチ方式での製造のようにバッチごとに金属微粒子の品質にバラツキをなくすことができる。これにより、粒子サイズが小さく分散性の良い一定品質の金属微粒子を安定的に製造することができる。また、連続製造にしてフロー系反応を行うことで、反応液LMが流れる配管全体を反応温度を制御する温度制御ラインとして使用できるので、従来のバッチ式の反応に比べて反応温度制御がし易くなる。
尚、本発明の金属微粒子の連続製造装置で行う反応が酸素を嫌う反応の場合には、第1及び第2の調製タンク内、及び回収タンク内にも窒素(N2 )等の不活性ガスをパージするパージ手段を設けるとよい。
(実施例1)
高純度の窒素ガス中で下記の操作を行った。
NaBH4 (和光純薬製)0.50gをH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)16mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)10.8gとデカン(和光純薬製)80mlとオレイルアミン(東京化成製)2mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して第1の溶液L1の逆ミセル溶液を調製した。
三シュウ酸三アンモニウム鉄(Fe(NH4 ) 3 (C2 4 ) 3 )(和光純薬製)0.60gと塩化白金酸カリウム(K2 PtCl4 )(和光純薬製)0.50gとを、H2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)8mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)7.0gとデカン(和光純薬製)40mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して第2の溶液L2の逆ミセル溶液を調製した。
従来法による金属微粒子の製造方法では、バッチ式で1つのタンクで上記2つの逆ミセル溶液(L1、L2)を10分間攪拌混合して反応させた。これにより、得られた金属微粒子を従来法サンプルと呼ぶ。
これに対し、本発明の気液分離装置16を組み込んだ金属微粒子の連続製造方法では、逆ミセル溶液(L1)と逆ミセル溶液(L2)とを図4〜図18の混合装置12の何れかを用いて瞬時に混合した。混合終了と同時に混合装置12から反応液LMを取り出し、気液分離装置16により副生ガスを除去しながら、10分後に回収タンク23に反応液LMを回収した。これにより、得られた金属微粒子を本発明法サンプルと呼ぶ。
以下の操作は従来法及び本発明法ともに同様である。即ち、従来法サンプル及び本発明法サンプルともに、その後、マグネチックスターラで攪拌しながら、50°Cに昇温して60分間熟成した。次に、オレイン酸(和光純薬製)2ml添加、混合して室温まで冷却し、その後、大気中に取り出した。逆ミセルを破壊するため、H2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)100mlとメタノール100mlとの混合液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に金属ナノ粒子が分散した状態が得られた。油相側をH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)600mlとメタノール200mlとの混合液で5回洗浄した。その後、メタノールを1100ml添加して金属ナノ粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン(和光純薬製)20mlを添加して再分散した後、メタノール100mlを添加して金属ナノ粒子を沈降させた。この処理を3回繰り返して、最後にオクタン(和光純薬製)5mlを添加して、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)が2のFePtの金属ナノ粒子分散液を得た。
得られた従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子について、収率、組成、体積平均粒径と粒径分布(変動係数)、及び保磁力の測定を行った。尚、組成及び収率は、ICP分光分析(誘導結合高周波プラズマ分光分析)で測定し、体積及び平均粒径と粒径分布は、TEM撮影した粒子を計測して統計処理により求めた。また、保磁力の測定は、東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製のDATA処理装置を使用し、印加磁場790kA/m(10kOe)の条件で行った。測定用金属ナノ粒子は、調製した金属ナノ粒子分散液から金属ナノ粒子を捕集し、十分に乾燥させ、電気炉において550°Cで30分加熱後のものを使用して測定した。
実施例1における従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子の上記測定結果を表1に示す。
Figure 2005131493
表1の結果から分かるように、本発明法の金属ナノ粒子は、従来法の金属ナノ粒子に比べて、微小サイズで且つ単分散性に優れた粒子が得られた。また、本発明法は従来法に比べて組成もPtの含有率が増加した。
(実施例2)
第1の溶液L1の逆ミセル溶液中のH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)を40mlとし、第2の溶液L2の逆ミセル溶液中のH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)を20mlとした以外は実施例1と同様にして、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)が5のFePtの金属ナノ粒子分散液を得た。
得られた従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子について、実施例1と同様に、収率、組成、体積平均粒径と粒径分布(変動係数)、及び保磁力の測定を行った。これらの測定方法は実施例1と同様である。
実施例2における従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子の上記測定結果を表2に示す。
Figure 2005131493
表2の結果から分かるように、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)を5にした場合にも、本発明法の金属ナノ粒子は、従来法の金属ナノ粒子に比べて、微小サイズで且つ単分散性に優れた粒子が得られた。また、本発明法は従来法に比べて組成もPtの含有率が増加した。
(実施例3)
第1の溶液L1の逆ミセル溶液中のH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)を64mlとし、第2の溶液L2の逆ミセル溶液中のH2 O(溶存酸素が0.1mg/l以下に脱酸素処理済み)を32mlとした以外は実施例1と同様にして、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)が8のFePtの金属ナノ粒子分散液を得た。
得られた従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子について、実施例1と同様に、収率、組成、体積平均粒径と粒径分布(変動係数)、及び保磁力の測定を行った。これらの測定方法は実施例1と同様である。
実施例3における従来法の金属ナノ粒子と本発明法の金属ナノ粒子の上記測定結果を表3に示す。
Figure 2005131493
表3の結果から分かるように、水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)を8にした場合にも、本発明法の金属ナノ粒子は、従来法の金属ナノ粒子に比べて、微小サイズで且つ単分散性に優れた粒子が得られた。また、本発明法は従来法に比べて組成もPtの含有率が増加した。
本発明の気液分離装置を組み込んだ金属微粒子の連続製造装置の構成を示す概念図 本発明の気液分離装置を示す斜視図 本発明の気液分離装置の縦方向及び横方向の断面図 本発明の気液分離装置の変形例を示す断面図 高速攪拌混合方式の混合装置の断面図 高速攪拌混合方式の混合装置の別の態様を示す断面図 微小ギャップ方式の混合装置を示す断面図 微小ギャップ方式の混合装置の別の態様を示す断面図 微小ギャップ方式の混合装置の更に別の態様を示す断面図 ワンジェット型の高圧混合方式の混合装置を示す断面図 ワンジェット型の高圧混合方式の混合理論を説明する説明図 ワンジェット型の高圧混合方式の混合装置の第1のノズルの形状を説明する説明図 第1のノズルの別の形状を説明する説明図 第1のノズルの更に別の形状を説明する説明図 第1のノズルの他の形状を説明する説明図 T字型の高圧混合方式の混合装置を示す断面図 Y字型の高圧混合方式の混合装置を示す断面図 ツージェット対向型の高圧混合方式の混合装置を示す断面図 ツージェット対向型の高圧混合方式の混合理論を説明する説明図
符号の説明
10…金属微粒子の連続製造装置、12…混合装置、14…配管、16…気液分離装置、20…ポンプ、22…第1の調製タンク、23…回収タンク、24…第2の調製タンク、26、28…供給配管、27…ジャケット、29…供給ポンプ、30…混合器、32…高速攪拌機、34…回転軸、36…蓋板、38…軸受、40…モータ、42…攪拌羽根、44…ジャケット、50…連通口、52…仕切板、54、56…混合室、55…混合器、58、60…攪拌羽根、62…混合器、64…回転ドラム、66…回転軸、68…軸受、70…モータ、72…微小間隙、74、76…供給口、75…排出口、78…ジャケット、80…フラット円板、82…混合室、84…混合器、86…第1の導管、88…排出管、90…第2の導管、92…第1のオリフィス、94…第2のオリフィス、96…第1のノズル、98…第2のノズル、100…ジャケット、102…オリフィス材、106…第1の添加配管、108…混合場、110…第2の添加配管、112…排出管、114…ジャケット、117…パージ配管、120…圧力調整手段、122…圧力センサ、124…バルブ、126…ガス抜き管、130…旋回流発生槽、132…旋回流速度調整手段、132A…絞り部材、136…流入管、L1…第1の溶液、L2…第2の溶液、LM…反応液

Claims (9)

  1. 反応に伴って発生する副生ガスを反応液から連続的に脱ガスする気液分離方法において、
    前記反応液が流れる配管途中に前記反応液に旋回流を発生させる旋回流発生槽を設けて該旋回流発生槽を反応液が通過するときに旋回流によって生じる遠心力によって前記反応液中の副生ガスを遠心分離させると共に、前記旋回流発生槽内の圧力が一定になるように前記旋回流発生槽内の圧力を制御することを特徴とする気液分離方法。
  2. 前記反応液が前記旋回流発生槽に流入してから流出するまでの実質滞留時間は、反応に伴って発生する副生ガスを前記反応液から遠心分離するのに必要とする時間よりも長いことを特徴とする請求項1の気液分離方法。
  3. 前記配管から旋回流発生槽内に流入する反応液の流速が前記配管を流れる反応液の流速の2倍以上であると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにすることを特徴とする請求項1又は2の気液分離方法。
  4. 前記旋回流発生槽内の空気を予め不活性ガスでパージしておくことを特徴とする請求項1〜3の何れか1の気液分離方法。
  5. 前記副生ガスを発生する反応は、還元剤を含有する第1の溶液と、周期律表の8、9、10族から選ばれる2種類以上の金属イオンを含有する第2の溶液とを混合して反応させて金属微粒子を生成する反応であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1の気液分離方法。
  6. 反応に伴って発生する副生ガスを反応液から連続的に脱ガスする気液分離装置において、
    前記反応液が流れる配管途中に接続されると共に前記反応液に旋回流を発生させる旋回流発生槽と、
    前記旋回流発生槽内に流入する反応液の流速が前記配管を流れる反応液の流速の2倍以上であると共に、実際の流入速度が2m/秒以上になるようにする旋回流速度調整手段と、
    前記旋回流発生槽内の圧力を調整する圧力調整手段とを備え、
    比重の異なる反応液と副生ガスとを旋回流によって発生する遠心力を利用して連続的に脱ガスすることを特徴とする気液分離装置。
  7. 前記圧力調整手段は、前記旋回流発生槽内の圧力を測定する圧力センサと、前記旋回流発生槽内に溜まった副生ガスを排出するバルブ付きのガス抜き管と、前記圧力センサの測定値に基づいて前記バルブを開閉する制御部とで構成され、前記バルブは10ミリ秒以下の応答速度で開閉するバルブであることを特徴とする請求項6の気液分離装置。
  8. 前記圧力調整手段は、前記旋回流発生槽内の圧力を測定する圧力センサと、前記旋回流発生槽内に溜まった副生ガスを排出するバルブ付きのガス抜き管と、前記圧力センサの測定値に基づいて前記バルブを開閉する制御部とで構成され、前記ガス抜き管に前記副生ガスの放出速度を遅くする抵抗体を設けたことを特徴とする請求項6の気液分離装置。
  9. 前記旋回流発生槽に不活性ガスをパージするパージ手段を設けたことを特徴とする請求項6〜8の何れか1の気液分離装置。
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