近年、電子写真方式の画像形成装置に対して、モノクロ画像形成だけでなくフルカラー画像形成の要請が高まっており、電子写真方式のフルカラー画像形成装置の開発が進められている。通常、フルカラー画像形成装置は、カラー画像を色分解した複数の色相の画像データ毎に、対応する色相のトナーを用いて画像形成を行う。例えば、加法混色の3原色の各色相(赤、緑、青)のフィルタを介して同一のカラー画像を読み取り、読み取ったデータから少なくとも減法混色の3原色の各色相(シアン、マゼンタ、イエロー)の画像データを作成し、各色相の画像データに基づいて対応する色相のトナーを用いて可視化像を作成し、各色相の可視化像を重ね合せることによってフルカラー画像を形成する。
このようなフルカラー画像形成装置では、色相毎に露光工程、現像工程及び転写工程が必要であるとともに、各色相の可視化像の位置合わせが問題となり、フルカラー画像の画像形成速度はモノクロ画像の画像形成速度に較べて遅いとの印象が強い。
このため、従来より、半導電性の無端ベルトを回転自在に設け、それぞれが互いに異なる色相の可視化像を個別に形成する複数の画像形成部を無端ベルトの外周面の移動方向に沿って一列に配置し、無端ベルトが少なくとも1回転する間に1枚のフルカラー画像を形成するタンデム方式のフルカラー画像形成装置が提案されている。
タンデム方式のフルカラー画像形成装置では、各画像形成部で形成された各色相の可視化像を無端ベルトの外周面において重ね合わせた後に用紙上に転写する中間転写方式、又は、無端ベルトの外周面に吸着して搬送される記録媒体の表面に各画像形成部で形成された各色相の可視化像を順次転写する転写搬送方式が用いられ、フルカラー画像形成の高速化が図られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
従来のタンデム方式のフルカラー画像形成装置では、ブラックのトナーを用いたモノクロ画像形成の頻度が高いことを考慮して、減法混色の3原色の各色相の画像を形成する3つの画像形成部に加えてブラックのトナーによる画像形成を行う画像形成部を含む合計4つの画像形成部を備えている。これら4つの画像形成部のそれぞれに含まれる像担持体に無端ベルトの外側面が順次対向する。フルカラー画像形成時には4つの画像形成部の全てにおいて画像形成が行われ、各画像形成部に含まれる像担持体から無端ベルトに各色相のトナー像が順次転写される。モノクロ画像形成時にはブラックの画像形成部のみにおいて画像形成が行われ、ブラックの画像形成部に含まれる像担持体のみから無端ベルトにブラックのトナー像が転写される。
フルカラー画像形成時とモノクロ画像形成時とにおいて無端ベルトの移動経路が同じであると、モノクロ画像形成時にはブラックの画像形成部以外の画像形成部では画像形成が行われないにも拘らず、これら画像形成が行われない画像形成部に含まれる像担持体にも無端ベルトが当接し、像担持体に損傷を与える可能性がある。
そこで、従来のタンデム方式のフルカラー画像形成装置では、無端ベルトの移動経路をフルカラー画像形成時とモノクロ画像形成時とで変化させている。フルカラー画像形成時には4つの画像形成部に含まれる像担持体の全てに無端ベルトの外側面を接触させ、モノクロ画像形成時にはブラックの画像形成部に含まれる像担持体のみに無端ベルトの外側面を接触させる。
例えば、図5に示す例では、駆動ローラ202、従動ローラ203、テンションローラ204及び1次転写ローラ211a〜211dによって無端ベルト201を張架し、無端ベルト201のループ状の移動経路の上側にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色相のトナー像を担持する像担持体221a〜221dを配置している。像担持体221a〜221dのそれぞれは無端ベルト201を挟んで転写ローラ211a〜211dのそれぞれそれに対向している。無端ベルト201を挟んで従動ローラ203に対向する位置には、2次転写ローラ212が配置されている。
フルカラー画像形成時には、図5(A)に示すように、1次転写ローラ211a〜211dのそれぞれが無端ベルト201を挟んで像担持体221a〜221dのそれぞれに当接し、像担持体221a〜221dから各色相のトナー像が位置を合せて無端ベルト201の外側面に順次転写される。各色相のトナー像は無端ベルト201の外側面で重ね合わされた後、従動ローラ203と2次転写ローラ212との間で無端ベルト201から用紙に転写される。
モノクロ画像形成時には、図5(B)に示すように、駆動ローラ202、テンションローラ204及び1次転写ローラ211a〜211dとともに無端ベルト201が回転支点230を中心に矢印A1方向に揺動し、転写ローラ211dのみが無端ベルト201を挟んでブラックの像担持体221dに当接する。像担持体221dからブラックのトナー像が無端ベルト201の外側面に転写された後、従動ローラ203と2次転写ローラ212との間で無端ベルト201から用紙に転写される。
図5に示す例ではフルカラー画像形成時とモノクロ画像形成時とで無端ベルト201の移動経路を変化させるために駆動ローラ202を変位させる必要があり、移動機構が複雑化及び大型化する。
図6に示す例では、駆動ローラ302、従動ローラ303、テンションローラ304及び1次転写ローラ311a〜311dによって無端ベルト301を張架し、無端ベルト301のループ状の移動経路の上側にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色相のトナー像を担持する像担持体321a〜321dを配置している。像担持体321a〜321dのそれぞれは無端ベルト301を挟んで転写ローラ311a〜311dのそれぞれそれに対向している。無端ベルト301を挟んで従動ローラ303に対向する位置には、2次転写ローラ312が配置されている。
フルカラー画像形成時には、図5(A)に示すように、1次転写ローラ311a〜311dのそれぞれが無端ベルト301を挟んで像担持体321a〜321dのそれぞれに当接し、像担持体321a〜321dから各色相のトナー像が位置を合せて無端ベルト301の外側面に順次転写される。各色相のトナー像は無端ベルト301の外側面で重ね合わされた後、従動ローラ303と2次転写ローラ312との間で無端ベルト301から用紙に転写される。
モノクロ画像形成時には、図5(B)に示すように、従動ローラ303、テンションローラ304及び1次転写ローラ311a〜311dとともに無端ベルト301が回転支点330を中心に矢印A2方向に揺動し、転写ローラ311dのみが無端ベルト301を挟んでブラックの像担持体321dに当接する。像担持体321dからブラックのトナー像が無端ベルト301の外側面に転写された後、従動ローラ303と2次転写ローラ312との間で無端ベルト301から用紙に転写される。
図6に示す例ではフルカラー画像形成時とモノクロ画像形成時とで無端ベルト301の移動経路を変化させるために駆動ローラ302を変位させる必要がなく、移動機構の複雑化及び大型化を招くことはない。但し、従動ローラ303が変位するために2次転写ローラ312との当接位置が変動し、無端ベルト301から用紙へのトナー像の転写状態を良好に維持することが難しい。
特開平10−039651号公報
特開平10−293437号公報
特許第2574804号公報
一般に、図7に示すように、駆動力の供給を受ける駆動ローラ402と駆動力の供給を受けない従動ローラ403とを含む複数のローラによって無端ベルト401をループ状に張架した場合、無端ベルト401の移動経路において駆動ローラ402を離れた後に従動ローラ403に接触するまでの間の領域401bは従動ローラ403を離れた後に駆動ローラ402に接触するまでの間の領域401aよりも張力の弱い弛み側となる。
しかしながら、従来のフルカラー画像形成装置では、無端ベルトを張架する複数のローラのうち、駆動力の供給を受けない従動ローラを挟んで2次転写ローラを配置し、無端ベルトの移動経路において従動ローラに接触する部分でトナー像を無端ベルトから用紙に転写するようにしていた。即ち、従動ローラを2次転写工程時のバックアップローラとしていた。このため、トナー像は無端ベルトの移動経路において張力が不十分な弛み側の領域を搬送されて2次転写工程で用紙に転写されることになり、無端ベルトの移動方向においてトナー像に変形を生じ易く、用紙上に正確に画像を形成することができなくなる問題がある。
この発明の目的は、トナー像を無端ベルトの移動経路において十分な張力が作用する領域を経由して2次転写工程が行われる位置に搬送することができ、トナー像に無端ベルトの移動方向の変形を生じることがなく、用紙上に正確に画像を形成することができる転写装置を提供することにある。
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えたものである。
(1)駆動力の供給を受ける駆動ローラと駆動力の供給を受けない従動ローラとを含む複数のローラに張架されてループ状の移動経路を形成し、外側面が複数の像担持体に順次対向する位置、及び、2次転写ローラに対向する位置をこの順に通過する無端ベルトを含み、
前記2次転写ローラを用紙及び前記無端ベルトを挟んで前記駆動ローラに当接する位置に配置したことを特徴とする。
この構成においては、1次転写位置で無端ベルト上に転写されたトナー像が、無端ベルトのループ状の移動経路において従動ローラを離れた後に駆動ローラに達するまでの大きな張力が作用する領域を経由して2次転写ローラが配置されている2次転写位置に搬送される。したがって、2次転写位置に達する前のトナー像に無端ベルトの移動方向の変形を生じることがない。
(2)前記無端ベルトは、前記ループ状の移動経路における下側の範囲で前記複数の像担持体に順次対向することを特徴とする。
この構成においては、ループ状の移動経路における下側の範囲に1次転写位置が形成される。したがって、無端ベルトの移動経路における1次転写位置の下流側に駆動ローラを配置することにより、無端ベルトの下方から給紙された用紙に対して2次転写位置において無端ベルトからトナー像が転写され、トナー像が転写された用紙は無端ベルトの上方に搬送される。
(3)前記駆動ローラは、金属材料を素材とする基材の周面に絶縁層を形成してなることを特徴とする。
この構成においては、周面に絶縁部を備えた金属製のローラによって駆動ローラが構成される。したがって、温度等の環境変化によって駆動ローラの径が変化することがなく、画質の低下の原因となる周速の変化を生じない。また、2次転写ローラから駆動ローラに流れ込む電流値が安定し、転写ムラを生じない。
(4)前記前縁層は、単層の樹脂コート層であることを特徴とする。
この構成においては、駆動ローラの周面に単層の樹脂コート層が絶縁層として構成される。したがって、温度変化によって過大な変形を生じることのない500μm以下、好ましくは数μmの絶縁層が形成される。
(5)前記移動経路において前記駆動ローラから離れた後に前記従動ローラに達するまでの間で前記無端ベルトに接触するテンションローラを備えたことを特徴とする。
この構成においては、無端ベルトの移動経路における駆動ローラの回転によって作用する張力が比較的小さい領域にテンションローラが当接する。無端ベルトの移動形成における駆動ローラの回転によって比較的大きい張力が作用する領域における像担持体との接触状態の変化に応じて、無端ベルトの移動経路における各領域に作用する張力を変動させることなく無端ベルトの移動経路が変形する。
(6)前記駆動ローラは、軸方向の中央部の径が両端部の径よりも大きいことを特徴すとする。
この構成においては、軸方向の中央部の径が両端部の径よりも大きい駆動ローラから無端ベルトに回転力が供給される。したがって、駆動ローラの周面に接触した際に無端ベルトには移動方向に直交する方向の両端部から中央部に向う力が作用する。
(7)前記2次転写ローラは、前記駆動ローラに対して接離自在に備えられ、前記無端ベルトの移動開始後に前記無端ベルトを挟んで前記駆動ローラに当接する位置に移動することを特徴とする。
この構成においては、無端ベルトが移動を開始した後に2次転写ローラが無端ベルトに圧接する。したがって、無端ベルトは一部が2次転写ローラと駆動ローラとの間に挟持されされた状態で移動を開始することがない。
(8)前記駆動ローラは、抵抗を介して接地されることを特徴とする。
この構成においては、転写電圧が印加される2次転写ローラと抵抗を介して接地された駆動ローラとの間に無端ベルトが挟持される。したがって、2次転写位置に供給された過剰の電流が駆動ローラを介して接地される。
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)1次転写位置で無端ベルト上に転写されたトナー像を、比較的大きな張力が作用する領域を経由して2次転写位置に搬送することにより、2次転写位置に達する前のトナー像に無端ベルトの移動方向の変形を生じることがなく、用紙に対してトナー像を正確に転写することができ、画像形成状態を良好に維持することができる。
(2)ループ状の移動経路における下側の範囲に1次転写位置を形成することにより、画像形成部の下方に配置された給紙部から給紙された用紙を画像形成部の2次転写位置を経由して画像形成部の上方に配置された排紙部に搬送する構成において、1次転写位置から2次転写位置までの距離を最短にすることができるとともに、最短の用紙搬送経路を構成することができ、画像形成速度の高速化を実現できる。
(3)周面に絶縁部を備えた金属製のローラによって駆動ローラを構成することにより、温度変化による駆動ローラの径の変化することがなく、駆動ローラの周速が変化することによる無端ベルトの移動速度の変動を防止できる。また、2次転写ローラから駆動ローラに流れ込む電流値を安定させることができ、2次転写時に無端ベルトから用紙に対してトナー像を安定して転写させることができる。これらによって、画像形成状態を良好に維持することができる。
(4)駆動ローラの周面に単層の樹脂コート層を形成することにより、厚さが500μm以下、好ましくは数μmの絶縁層を形成することができ、駆動ローラに周速が変動する程度の径の変化を生じることを防止でき、無端ベルトを暗転して回転させるために必要な表面抵抗値を得ることができる。
(5)無端ベルトの張力が比較的小さい領域にテンションローラを当接させることにより、無端ベルトの移動経路における各領域に作用する張力を変動させることなく無端ベルトの移動経路を容易に変形することができる。
(6)軸方向の中央部の径が両端部の径よりも大きい駆動ローラから無端ベルトに回転力を供給することにより、無端ベルトに移動方向に直交する方向の両端部から中央部に向う力を作用させることができ、無端ベルトの蛇行を防止できる。
(7)一部が2次転写ローラと駆動ローラとの間に挟持されされた状態で無端ベルトの移動を開始しないようにし、無端ベルトの移動開始時に無端ベルトに過大な負荷が作用しないようにして無端ベルトの滑り、蛇行及び損傷を防止することができる。
(8)2次転写位置に供給された過剰の電流を駆動ローラを介して接地することにより、2次転写位置の電位を所定値に維持することができ、無端ベルトから用紙に対して安定した状態でトナー像を転写することができる。また、高湿時なとにおいて表面絶縁層が導通状態となった場合においても、抵抗によって転写に必要な電流を確保できる。
以下に、この発明の最良の実施形態に係る転写装置を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る転写装置を備えた画像形成装置の構成を示す説明図である。画像形成装置100は、外部から伝達された画像データに応じて、用紙等の記録媒体に対して多色および単色の画像を形成する。このため、画像形成装置100は、露光ユニットE、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)101(101a〜101d)、現像ユニット102(102a〜102d)、帯電ローラ103(103a〜103d)、クリーニングユニット104(104a〜104d)、中間転写ベルト(この発明の無端ベルトに相当する。)11、1次転写ローラ(この発明の転写ローラであり、以下、転写ローラという。)13(13a〜13d)、2次転写ローラ14、定着装置15、用紙搬送路P1,P2,P3、給紙カセット16、手差し給紙トレイ17及び排紙トレイ18等を備えている。
画像形成装置100は、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)にブラック(K)を加えた4色の各色相に対応した画像データを用いて画像形成を行う。感光体ドラム101(101a〜101d)、現像ユニット102(102a〜102d)、帯電ローラ103(103a〜103d)、転写ローラ13(13a〜13d)及びクリーニングユニット104(104a〜104d)は、各色相に応じてそれぞれ4個ずつ設けられており、4つの画像形成部Pa〜Pdを構成している。画像形成部Pa〜Pdは、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に一列に配列されている。
帯電ローラ103は、感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電器である。帯電ローラ103に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、又は、帯電チャージャを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。露光ユニットEは、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー4及び反射ミラー8等を備えており、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビームのそれぞれを感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに照射することにより、感光体ドラム101a〜101dの表面に画像データに応じた潜像を形成する。感光体ドラム101a〜101dのそれぞれには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる潜像が形成される。
現像ユニット102は、潜像が形成された感光体ドラム101の表面に現像剤を供給し、潜像をトナー像に顕像化する。現像ユニット102a〜102dのそれぞれは、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の現像剤を収納しており、感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに形成された各色相の潜像をブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム101上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
感光体ドラム101の上方に配置されている中間転写ベルト11は、駆動ローラ11aと従動ローラ11bとの間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の外周面は、感光体ドラム101d、感光体ドラム101c、感光体ドラム101b及び感光体ドラム101aにこの順に対向する。この中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム101a〜101dに対向する位置に、転写ローラ13a〜13dが配置されている。中間転写ローラ13a〜13dには、感光体ドラム101a〜101dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の転写バイアスが印加される。これによって、感光体ドラム101(101a〜101d)に形成された各色相のトナー像は中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体ドラム101a〜101dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体101のみにおいて潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム101aのみにおいて潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
各転写ローラ13a〜13dは、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)を素材とする軸の表面を導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト11に均一に高電圧を印加する。中間転写ローラ103に代えて、ブラシ状の中間転写部材を用いることもできる。
上述のようにして、中間転写ベルト11の外周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、2次転写ローラ14との対向位置に搬送される。2次転写ローラ14は、用紙及び中間転写ベルト11を挟んで駆動ローラ11aに当接する2次転写位置に配置されている。2次転写ローラ14は、画像形成時において、中間転写ベルト11の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。給紙カセット16又は手差し給紙トレイ17から給紙された用紙が2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、2次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から用紙の表面にトナー像が転写される。
なお、2次転写ローラ14と中間転写ベルト11とのニップ圧を所定値に維持するために、2次転写ローラ14又は駆動ローラ11aの何れか一方を硬質材料(金属等)によって構成し、残る他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ等々)とする。2次転写ローラ14は、駆動ローラ11aに対して接離自在にされている。2次転写ローラ14は、画像形成動作の待機時において駆動ローラ11aから離間しており、画像形成時において中間転写ベルト11の移動が開始された後に駆動ローラ11aに当接する。移動開始時の中間転写ベルト11に過大な負荷が作用することがなく、中間転写ベルト11の滑りや蛇行等が防止されるとともに、中間転写ベルト11の損傷等による寿命の短縮を生じることがない。
また、感光体ドラム101から中間転写ベルト11に付着したトナーのうち用紙上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、クリーニングユニット12によって回収される。
トナー像を転写された用紙は、定着装置15に導かれ、加熱ローラ15aと加圧ローラ15bとの間を通過して加熱及び加圧を受ける。これによって、トナー像が、用紙の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した用紙は、排紙ローラ18aによって排紙トレイ18上に排出される。
画像形成装置100には、用紙カセット16に収納されている用紙を2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間及び定着装置15を経由して排紙トレイ18に送るための略垂直方向の用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、用紙カセット16内の用紙を一枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ16a、繰り出された用紙を上方に向けて搬送する搬送ローラr、搬送されてきた用紙を所定のタイミングで2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導くレジストローラ19、及び、用紙を排紙トレイ18に排出する排紙ローラ18aが配置されている。
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙トレイ17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ17a及び搬送ローラrを配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ18aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
排紙ローラ18aは、正逆両方向に回転自在にされており、用紙の片面に画像を形成する片面画像形成時、及び、用紙の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて用紙を排紙トレイ18に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排出ローラ18aは、用紙の後端が定着装置15を通過するまで正転方向に駆動された後、用紙の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて用紙を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された用紙は、表裏面及び前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
レジストローラ19は、用紙カセット16若しくは手差し給紙トレイ17から給紙され、又は、用紙搬送路P3を経由して搬送された用紙を、中間転写ベルト11の回転に同期したタイミングで2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導く。このため、レジストローラ19は、感光体ドラム101や中間転写ベルト11の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト11の回転に先立って給紙又は搬送された用紙は、前端をレジストローラ19に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ19は、2次転写ローラ14と中間転写ベルト11とが圧接する位置で、用紙の前端部と中間転写ベルト11上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
上記の構成において、中間転写ベルト11、駆動ローラ11a、従動ローラ11b、転写ローラ13a〜13d、テンションローラ20(後述する。)、及び2次転写ローラ14がこの発明の転写装置に含まれる。
図2は、上記画像形成装置に備えられる中間転写ベルトの移動経路を示す図である。図2(A)はフルカラー画像形成時の中間転写ベルトの移動経路を示し、図2(B)はモノクロ画像形成時の中間転写ベルトの移動経路を示している。中間転写ベルト11は、駆動ローラ11aと従動ローラ11bとの間に架け渡されて上下の略水平な範囲を含むループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の下方には、画像形成ステーションPa〜Pdの感光体ドラム101a〜101dが配置されている。感光体ドラム101a〜101dは中間転写ベルト11の移動経路の下側の範囲に沿って並設されており、中間転写ベルト11の外周面は移動経路の下側の範囲で感光体ドラム101a〜101dに対向しており、この部分に1次転写位置Pt1が形成されている。中間転写ベルト11は、駆動ローラ11aの矢印A方向の回転により、移動経路の下側の範囲で矢印B方向に移動する。
中間転写ベルト11のループ状の移動経路の内側には、画像形成ステーションPa〜Pdに含まれる転写ローラ13a〜13dが配置されている。転写ローラ13a〜13dのそれぞれは、中間転写ベルト11を挟んで感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに対向する位置において上下方向(Y−Y方向)に移動自在にして軸支されている。転写ローラ13a〜13dは、感光体ドラム101a〜101dに近接又は離間する。中間転写ベルト11を挟んで駆動ローラ11aに当接する位置に2次転写ローラ14が配置されており、この部分に2次転写位置Pt2が形成れている。中間転写ベルト11の移動経路における上側の範囲において、中間転写ベルト11の内側面にテンションローラ20が当接している。
フルカラー画像形成時には、図2(A)に示すように、転写ローラ13a〜13dの全てが感光体ドラム101a〜101dに近接しており、転写ローラ13a〜13dは中間転写ベルト11の内側面に接触している。中間転写ベルト11は、移動経路の下側の範囲において転写ローラ13a〜13dに対向する部分が下方に突出するように変形しており、外側面が感光体ドラム101a〜101dの周面に接触している。中間転写ベルト11の外側面には、移動経路における下側の範囲を移動する間に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色相のトナー像が感光体ドラム101d,101c,101b,101aからこの順に転写される。
モノクロ画像形成時には、図2(B)に示すように、転写ローラ13a〜13dのうち転写ローラ13aのみが感光体ドラム101aに近接しており、転写ローラ13aのみが中間転写ベルト11の内側面に接触している。転写ローラ13b〜13dは、感光体ドラム101b〜101dから離間しており、中間転写ベルト11の内側面に接触していない。中間転写ベルト11は、移動経路の下側の範囲において転写ローラ13aのみに対向する部分が下方に突出するように変形しており、外側面が感光体ドラム101aの周面のみに接触している。また、テンションローラ20が移動経路における上側の範囲で中間転写ベルト11を上方に突出させている。中間転写ベルト11の外側面には、移動経路における下側の範囲を移動する間に、ブラックのトナー像が感光体ドラム101aから転写される。
なお、画像形成動作の待機時には、転写ローラ13a〜13dの全てが感光体ドラム101a〜101dから離間しており、転写ローラ13a〜13の何れも中間転写ベルト11の内側面に接触しない。
また、中間転写ベルト11は殆ど伸縮しない素材によって構成されている。このため、少なくともフルカラー画像形成時及びモノクロ画像形成時に中間転写ベルト11に移動方向の所定の張力が作用した状態で、フルカラー画像形成時、モノクロ画像形成時及び画像形成動作の待機時のそれぞれにおいて中間転写ベルト11の移動経路の全長が一定になる。
図3は、上記画像形成装置における中間転写ベルト、駆動ローラ及び2次転写ローラの配置状態を示す図である。中間転写ベルト11は、モータ11cからの駆動力の供給を受ける駆動ローラ11aの矢印A方向の回転により、ループ状の移動経路を矢印B方向に移動する。中間転写ベルト11の移動経路において下側の範囲である駆動ローラ11の上流側は、駆動ローラ11の周面に引っ張られて比較的大きな張力が作用する引張側となる。中間転写ベルト11の移動経路において上側の範囲である駆動ローラ11の下流側は、駆動ローラ11の周面に押し出されて比較的小さな張力が作用する弛み側となる。
前述のように、中間転写ベルト11の移動経路における下側の範囲は感光体ドラム101a〜101dに対向する1次転写位置Pt1にされており、この範囲で感光体ドラム101a〜101dからトナー像が転写される。中間転写ベルト11に転写されたトナー像は駆動ローラ11aと2次転写ローラ14とに挟持される2次転写値Pt2において、矢印C方向に搬送されてきた用紙に転写される。したがって、1次転写位置Pt1で中間転写ベルト11に転写されたトナー像は、移動経路において中間転写ベルト11に比較的大きな張力が作用する部分を経由して2次転写位置に搬送される。このため、トナー像が中間転写ベルト11の移動方向に変形することがなく、用紙に正確に転写されて良好な画像形成状態が維持される。
図4は上記画像形成装置における駆動ローラの構成を示す図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は正面断面図である。駆動ローラ11aは、前面側の端部及び背面側の端部において回転軸1eによって画像形成装置100に軸支されている。駆動ローラ11aは、軸方向の中央部の径L1を両端部の径L2よりも大きくして所謂クラウン形状にされている。このため、中間転写ベルト11には駆動ローラ11aの周面に接触する際に幅方向の両端部から中央部に向う力が作用し、駆動ローラ11aが高速で回転した場合にも中間転写ベルト11に蛇行を生じることがない。
なお、中間転写ベルト11の内周面において幅方向の両端部にはビート11dが固定されている。このビート11dが駆動ローラ11aの周面に当接することによっても中間転写ベルト11の蛇行が防止される。
駆動ローラ11aは、円筒形状を呈する金属製の基材110の中央部に回転軸11eを固定し、周面に絶縁層としての単層の樹脂層111を形成して構成されている。基材110は熱膨張係数の小さい材料を素材としており、樹脂層111の厚さは500μm以下、好ましくは数μm程度にされている。このため、2次転写位置Pt2において2次転写ローラ14から用紙及び中間転写ベルト11に流れ込む電流値を安定化でき、転写ムラの発生を防止することができる。また、温度変化によって駆動ローラ11aの径が大きく変形することがなく、駆動ローラ11aの周速の変動による中間転写ローラ11の移動速度の変化を生じることがないため、良好な画像形成状態を維持することができる。
また、駆動ローラ11aは図示しない抵抗を介して接地されており、2次転写ローラ14を介して2次転写位置Pt2に過剰の電流が供給された場合にも、余剰の電流が駆動ローラ11aを介して接地される。これによって、2次転写位置Pt2の電位を所定値に維持することができ、無端ベルト11から用紙に対して安定した状態でトナー像を転写することができる。
なお、中間転写ベルト11の体積抵抗値は、1×108 〜1×1013Ω・cm、好ましくは1×1011Ω・cm以上にされている。このように、中間転写ベルト11の体積抵抗値を比較的高く設定することにより、駆動ローラ11aの周面に絶縁層を形成しても2次転写位置における中間転写ベルト11から用紙へのトナー像の転写状態を良好にできる。
また、駆動ローラ11aの周面の滑り抵抗値(C.R.S.)を1.0以上とすることにより、駆動ローラ11aの回転を中間転写ベルト11に確実に伝達することができる。さらに、駆動ローラ11aの周面の硬度(HS)を60度以上とすることにより、駆動ローラ11aの周面の変形を防止して中間転写ベルト11に作用する張力の低下を防止することができる。
以上のように、駆動ローラ11aを2次転写位置Ptにおけるバックアップローラとし、1次転写位置Pt1を中間転写ベルト11の移動経路における下側の範囲に形成することにより、画像形成部の下方に配置された給紙部(給紙カセット16及び手差し給紙トレイ17)から給紙された用紙を画像形成部を経由して画像形成部の上方に配置された排紙トレイ18に排出するために最短の葉身搬送路を形成することができる。また、中間転写ベルト11の移動経路におけるトナー像の搬送距離が最短になり、画像形成速度の高速化に適応できる。また、フルカラー画像形成時とモノクロ画像形成時とで中間転写ベルト11の移動経路を変形する際に、少なくとも駆動ローラ11aの位置を固定しておくことで2次転写位置Pt2も固定されるため、移動機構の小型化及び転写状態の安定化を両立することができる。