JP2005124514A - ブドウ球菌属の温度感受性突然変異株の分離方法並びにそれを用いた抗菌剤検索方法 - Google Patents

ブドウ球菌属の温度感受性突然変異株の分離方法並びにそれを用いた抗菌剤検索方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ブドウ球菌属による感染症治療に用いる抗菌剤すなわち細菌の増殖阻害剤の効率的かつ有効な検索方法であって実用性の高い方法を提供する。
【解決手段】ブドウ球菌属に対する抗菌剤の新規探索方法、すなわち、ブドウ球菌属の野生型株からdnaA温度感受性突然変異株を分離し、温度感受性にかかわる遺伝子変異ならびにその遺伝子を同定し、さらにこの温度感受性にかかわる遺伝子産物を大量生産し、得られた遺伝子産物の活性測定法を確立し、その活性阻害剤を検索する方法。並びに、検索された活性阻害剤による活性阻害効果の機構を解明し、活性阻害剤によるブドウ球菌属に対する増殖阻害効果を調査する方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ブドウ球菌属の病原性微生物による感染症の治療に用いる抗菌剤の検索方法に関する。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のブドウ球菌属は、市中並びに院内感染の起因菌として問題となっている菌である。近年、種々の抗生物質に耐性となったMRSAと呼ばれる黄色ブドウ球菌が、病院内感染を引き起こし、問題となっており、その対策は臨床上極めて重要である。MRSAに対する治療薬としては、バンコマイシンやアルベカシン等が用いられるが、最近ではこれら治療薬に対して耐性を示す黄色ブドウ球菌(VRSA等)の出現が報告され、新しい抗菌剤の創製は国民医療の観点から急務の課題である。
従来、感染症治療に用いる抗菌剤は、ブドウ球菌属等の病原微生物の増殖を直接阻害することを指標に検索されている。すなわち、病原微生物の増殖阻害効果があるか否かを直接的に観察することにより抗菌剤の検索が行われていた。
黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌属は、グラム陽性の病原性細菌である。メチシリン耐性となった菌(MRSA)による日和見感染症に対する対策が臨床上深刻な問題となっており、新規抗菌剤の開発が望まれている。抗菌剤の有力な標的として、細胞増殖に必須なDNA複製にあずかるタンパク質が考えられるが、キノロン系抗菌剤を除いてブドウ球菌属のDNA複製を標的とする抗菌剤で臨床上有効であるものはない。しかるにそのキノロン系抗菌剤に対しても耐性菌が出現しているのが現状である。細菌のDNA複製に必須な遺伝子を同定する上で、高温感受性変異株を分離して解析することが有効であると考えられるが、ブドウ球菌属の高温感受性変異株の研究はきわめて限られていた(非特許文献1,2)。すでに、大腸菌のDNA複製タンパク質の黄色ブドウ球菌ホモログとして、dnaA(非特許文献3)、polC(非特許文献4)、dnaN(非特許文献5)、dnaK、dnaJ(非特許文献6)、gyrAおよびgyrB(非特許文献7)遺伝子がクローニングされていたが、これらの遺伝子の高温感受性変異株について報告は無かった。
そこで、本発明者らは、DNA複製が高温感受性を示すブドウ球菌属変異株を分離し、これらの株の温度感受性を相補する遺伝子を検索し、新たにdnaE遺伝子、および、polC遺伝子の高温感受性変異株を同定した。この結果は、ブドウ球菌属のDNA複製において、これらの遺伝子がコードするDNAポリメラーゼのDnaEおよびPolCが必須であることを示唆し、それをもちいた抗菌剤検索方法を開示した(特許文献1)。
一方、細菌における染色体DNAの複製にはDnaA蛋白が必須である(非特許文献8)。DnaA蛋白は細菌にのみ広く分布しており、ほ乳類を含む真核細胞にはそのホモログは知られていない。ATP結合型DnaA蛋白は複製開始に関して活性型であることから、DnaA蛋白のATP結合を阻害することによる抗菌活性の評価方法および抗菌活性を有する化合物のスクリーニング方法が開示されている(特許文献2、3)。
しかし、黄色ブドウ球菌のdnaA遺伝子の変異株並びに抗菌活性についての評価のための使用については、知られていなかった。
特開2001−309793公報 WO02/090548 パンフレット 特開2002−338595公報 J Gen Microbiol 128: 1735-1741(1982). J Gen Microbiol 106: 41-47(1978). Biol Pharm Bull 20: 820-822(1997). Gene 165: 51-56(1995). J Biol Chem 275: 26136-26143(2000). J Bacteriol 176: 4779-4783(1992). J Bacteriol 174: 1596-1603(1992). FEMS Microbiol Rev 26, 355-374(2002).
本発明は、ブドウ球菌属等の病原微生物による感染症治療に用いる抗菌剤すなわち細菌の増殖阻害剤のさらなる効率的かつ有効な検索方法であって実用性の高い方法を提供することである。
本発明は、従来の方法とは異なり、試験管内での病原微生物すなわち細菌において必須な生体反応を阻害する物質として抗菌剤を検索する方法である。従来、試験管内で細菌のもつ生体反応を阻害する物質については、いくつかのタンパク質を対象に研究がなされているが、抗菌剤の検索に利用され成功した例はない。本発明が提案する、試験管内での生体反応を模した反応の阻害を指標として抗菌剤を検索する方法が従来利用されてこなかった理由は、抗菌剤のターゲットとなる酵素や必須タンパク質を特定することが困難であったことが挙げられる。
本発明は、ブドウ球菌属等の病原微生物の野生株の中から温度感受性突然変異株を分離する方法と、それを用いて得られた変異遺伝子の同定から抗菌剤のターゲットとなる必須遺伝子を見出すことにより抗菌剤を検索する方法を提供するものである。本発明の構成は以下の通りである。
1) ブドウ球菌属のdnaA温度感受性突然変異株を含む野生型株から前記温度感受性突然変異株を分離する方法において、該dnaA温度感受性突然変異株を含む野生型株を培地上で30℃にて培養しコロニーを形成させるステップと、レプリカ法により該コロニーを2つの異なる培地上に移し、一方の培地を30℃にて、他方の培地を43℃にて保持することにより各々のコロニーを培養するステップと、30℃にてコロニーが現れるが43℃にては現れないコロニーを該dnaA前記温度感受性突然変異株として採取するステップとを含むことを特徴とするdnaA温度感受性突然変異株の分離方法、
2) 該dnaA温度感受性突然変異株を含む前記野生型株を培地上で30℃にて培養するステップに先立って、該dnaA温度感受性突然変異株の存在割合を高めるべく変異原物質で処理するステップを含むことを特徴とするdnaA温度感受性突然変異株の分離方法、
3)下記ステップ:(1)上記1)または2)に記載の分離方法によりdnaA温度感受性突然変異株を分離するステップと、(2)該dnaA前記温度感受性突然変異株のdnaA温度感受性遺伝子を同定するステップと、(3)該dnaA温度感受性遺伝子による遺伝子産物を大量生産するステップと、(4)該遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップを含むことを特徴とする抗菌剤の検索方法、
4) 前記の(3)の前記dnaA温度感受性遺伝子による遺伝子産物を大量生産するステップの後に、大量生産された該遺伝子産物の活性測定法を確立するステップを含むことを特徴とする3)に記載の抗菌剤の探索方法、
5) 前記(4)の大量生産された前記遺伝子産物の活性測定法を確立するステップの後に、大量生産された該遺伝子産物を精製するステップを含むことを特徴とする3)または4)に記載の抗菌剤の探索方法、
6) 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップの後に、検索された前記活性阻害剤による前記遺伝子産物に対する活性阻害効果の機構を解明するステップを含むことを特徴とする3)〜5)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
7) 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップの後に、該活性阻害剤による病原微生物に対する増殖阻害効果を調査するステップとを含むことを特徴とする3)〜6)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
8) 前記活性阻害剤による前記病原微生物に対する増殖阻害効果を調査するステップにおいて、前記活性阻害剤が病原微生物の細胞に入らない場合、該活性阻害剤を細胞内に入るようにデザインし直すステップを含むことを特徴とする3)〜7)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
9) 前記(2)の前記dnaA温度感受性突然変異株のdnaA温度感受性遺伝子を同定するステップにおいて、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成のいずれの機構に変異を生じているかを放射性同位元素で標識された前駆体を用いて決定するステップを含むことを特徴とする3)〜8)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
10) 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップにおいて、検索された前記活性阻害剤のもつ残基を改変して阻害活性の変化を調べるステップを含むことを特徴とする3)〜9)のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法、
11) 前記増殖阻害効果が、対象となる特定の前記遺伝子産物のみについて特異的であるか否かを確認するべく、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成のいずれの段階での前記遺伝子産物の作用に対して前記増殖阻害効果が及ぶかを調べるステップを含むことを特徴とする、3)〜10)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
12) 前記増殖阻害効果が、対象となる特定の前記遺伝子産物のみについて特異的であるか否かを確認するべく、前記活性阻害剤に耐性となった前記病原微生物を分離し、それが、対象となる特定の前記遺伝子産物をコードする遺伝子の変異株であるか否かを調べるステップを含むことを特徴とする、3)〜11)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法、
13) 前記3)〜12)のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法により、前記病原微生物に対する抗菌剤として認知された前記活性阻害剤について、種々の残基を改変することにより前記活性阻害効果及び前記増殖阻害効果に及ぶ効果を調べるステップをさらに含むことを特徴とする抗菌剤の検索方法、
14) 前記1)または2)に記載の温度感受性突然変異株を分離するステップによって得られたdnaA温度感受性突然変異株、
15) dnaA温度感受性突然変異株である黄色ブドウ球菌TS8822、
16) 14)または15)記載のdnaA温度感受性突然変異株を用いることを特徴とする、3)〜13)いずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法、
17) 前記(2)の前記温度感受性突然変異株の温度感受性遺伝子を同定するステップによって同定された遺伝子、
18) 配列番号:1で示される塩基配列からなる温度感受性遺伝子である、黄色ブドウ球菌のdnaA8822遺伝子、
19) 17)に記載された遺伝子または18)に記載されたdnaA8822遺伝子を用いることを特徴とする3)〜13)にいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法、
に関するものである。
ブドウ球菌属による感染症治療に用いる抗菌剤すなわち細菌の増殖阻害剤の効率的かつ有効な検索方法であって実用性の高い方法を提供する。
本発明によるブドウ球菌属等の病原微生物のdnaA温度感受性突然変異株の分離方法並びにそれを用いた抗菌剤検索方法を、黄色ブドウ球菌の増殖阻害剤の検索を例として説明する。
本発明の方法による抗菌剤の開発は、(1)温度感受性突然変異株の分離、(2)温度感受性遺伝子の同定、(3)遺伝子産物の大腸菌での大量生産、(4)遺伝子産物の活性測定法の確立、(5)遺伝子産物(タンパク質)活性阻害剤の検索、(6)活性阻害効果機構の解明、(7)ブドウ球菌属の増殖阻害効果の調査、(8)有機化学的手法による増殖阻害剤の構造改変、の手順で行われる。ステップ(7)までで抗菌剤の候補が得られる。ステップ(8)は、さらに有効な抗菌剤の候補を見出す目的ために好適なステップである。以下、各ステップについて詳細に説明する。
(1)温度感受性突然変異株の分離
温度感受性突然変異株とは、上記の通り、30℃では増殖するが43℃では増殖できない突然変異株のことである。野生型黄色ブドウ球菌は、43℃でも普通に増殖するが、増殖に必要不可欠な特定の遺伝子に変異が入ると、その中に、30℃では増殖するが、43℃では増殖できないものが見出されることがある。
具体的には、野生型黄色ブドウ球菌を変異原で処理して、突然変異体の存在割合を高めた上で、30℃で培養する。1個の黄色ブドウ球菌は一晩で10の8乗個までに増殖し、寒天を含む培地上でコロニーと呼ばれる細菌の集合体を形成する。通常は、直径12センチのシャーレに、500個程度のコロニーを作らせる。次に、レプリカと呼ばれるスタンプに似た方法で、500個のコロニーを2つの異なるシャーレの寒天培地上に移し、一方のシャーレを30℃で、他方のシャーレを43℃で培養する。すると翌日、30℃ではコロニーが現れるが43℃では現れないという、温度感受性突然変異株が採れる。ここで変異原とは突然変異誘起物質のことで、本発明においてはエチルメタンスルホン酸を用いた。エチルメタンスルホン酸はアルキル化剤で、DNAのグアニンあるいはアデニン基をアルキル化し、主にGC対からAT対への変異を誘起する。
(2)温度感受性遺伝子の同定
まず、野生型株から染色体DNAを抽出精製し、これを様々な制限酵素により断片化し、さらにベクターと呼ばれるDNAに繋ぎ込む。ベクターは、それ自身、黄色ブドウ球菌の中で増殖することができる、寄生性のプラスミドと呼ばれるDNAである。ベクターに繋いだ遺伝子断片を、対象となる温度感受性突然変異株に導入し、温度感受性が温度非感受性となる株を検索する。4000の遺伝子のうち、たまたま変異した遺伝子に相当する野生型遺伝子を取り込んだ温度感受性突然変異株は、本来増殖できないはずの43℃で増殖できるようになり、コロニーを形成する。この、細胞へのDNAの注入により細胞の形質が変化する現象は、形質導入(transformation)と呼ばれている。
形質導入体(transformant)からプラスミドDNAを抽出し、さらに、形質導入に必要なDNAの最小領域を決定する。これが、求める遺伝子の実体である。現在、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusの全遺伝子の塩基配列が決定されており、これらのデータから形質導入した遺伝子全体の塩基配列の決定を行う。さらに、用いた温度感受性突然変異株で、同定した遺伝子のどの塩基が野生型と異なっているかを確認する。
(3)遺伝子産物(タンパク質)の大腸菌での大量生産
遺伝子産物の大腸菌での大量生産とは、同定された遺伝子の産物を大量に得るために行う。遺伝子産物とは、通常の場合、タンパク質である。実際の生体内では、このタンパク質が、細胞内の様々な反応を触媒する役割を担っており、いわゆる生体触媒として機能している。温度感受性突然変異株では、細胞増殖に必須な役割をしている特定のタンパク質のアミノ酸が置換してしまい、高温では機能し得なくなっていると考えられる。このタンパク質の活性を阻害すれば、高温にしたのと同様、細胞増殖が抑えられるとの発想が、本発明の基礎となっている。
どのような生物種の遺伝子であれ、遺伝子産物を大腸菌内で多量に発現させる遺伝子工学の手法がすでに確立されている。本発明では、多量生産ベクターを用いて遺伝子産物(タンパク質)を大腸菌内で発現させ、精製の出発原料とする。遺伝子産物による生体反応の阻害物質を検索する(後述の(5)のステップ)ためには、その生体活性に影響を与える様々な物質の混入を避けるため、このタンパク質を精製する必要がある。このステップにおいて、大腸菌内で発現されている目的とするタンパク質は通常10%程度以下であるから、このタンパク質の精製が必要である。
(4)遺伝子産物(タンパク質)の活性測定法の確立
すでに、目的とするタンパク質の活性測定法が確立されている場合には、それを用いる。またそれまでに全く研究されたことのないタンパク質である場合には、新しく活性測定法を確立する必要がある。その場合、遺伝子の塩基配列から予想されるタンパク質のアミノ酸配列から活性を予測することがある程度可能である。
活性の測定法が確立して初めて、大量生産した大腸菌から目的とするタンパク質を精製することが可能となる。タンパク質の精製に当たっては、各種クロマトグラフィを用いて、生化学的に分離する。最終的には、電気泳動と呼ばれる分析法により90%以上の純度を持つ標品を得て、次の阻害剤の検索ステップに進む。
(5)遺伝子産物(タンパク質)活性阻害剤の検索
遺伝子産物(タンパク質)活性阻害剤の検索は、できるだけ自動化した系を確立して行うことが好適である。そのためには、前述のステップ(4)の活性測定法が充分に確立されていることが重要である。現在、製薬会社では、ロボットを利用した検索方法が確立されており、この方法を利用することが好適である。阻害剤の候補としては、国内外の有機化合物ライブラリーからできるだけ広い範囲のサンプルをて実施する。
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明は限定されない。
<dnaA遺伝子による高温感受性の相補>
配列番号:2で示される塩基配列からなる遺伝子を有する野生型黄色ブドウ球菌RN4220株をメタンスルホン酸エチルエステル(SIGMA)で処理し、20万株の中から650種の温度感受性突然変異株を分離することに成功した。黄色ブドウ球菌の培養は、LB培地(1%バクトトリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%NaCl)で行った。これらの変異株は、いずれもNaCl抜きのLB寒天培地上において、30℃ではコロニーを形成するが、43℃ではコロニーを形成しなかった。次に、黄色ブドウ球菌dnaA遺伝子を含む様々な遺伝子をpND450のシャトルベクターにクローニングし構築したプラスミドを混ぜ合わせたライブラリーを温度感受性変異株に導入して相補遺伝子を検索した。その結果TS8822株を相補するプラスミドとしてdnaA遺伝子とdnaN遺伝子とを含ませたプラスミドが見いだされた。pSdnaAFプラスミド(黄色ブドウ球菌のdnaA遺伝子領域である2023bpをRN4220株の染色体DNAを鋳型としてPCR法を用いて増幅し、これをシャトルベクターpND50のSma Iサイトに組み込んだもの)、pHYdnaAFプラスミド(黄色ブドウ球菌のdnaA遺伝子領域である2023bpをRN4220株の染色体DNAを鋳型としてPCR法を用いて増幅し、これをpHY300PLK(宝酒造)のSma IサイトにdnaA遺伝子の向きがテトラサイクリン耐性遺伝子と同じ向きに挿入したもの)の相補活性を調べた結果pSdnaAF,pHYdnaAFはTS8822株の温度感受性を相補できることが明かとなった(表1)。表1は各プラスミド100ngをTS8822株のコンペテント細胞22μLに対して形質導入を行った。 クロラムフェニコール、あるいはテトラサイクリンを含むLB培地で30℃及び43℃のコロニー数を計測した。
Figure 2005124514
pND50はTS8822株の温度感受性を相補できなった。これらの結果より、このTS8822株は、DNA複製の高温感受性変異株と判断した。
<温度感受性突然変異株TS8822株についての放射標識した前駆体による、DNA合成の測定>
DNAの測定は、終夜培養菌液5μLを0.1μmol/L[3H]-チミジンを含むLB培地5mLに希釈し、30℃でOD660値が0.1となるまで培養した。培養温度を30℃から43℃にシフト、あるいはそのままで継続培養した。菌液を経時的にサンプリングし、0.1mol/L ピロ燐酸を含む5%トリクロロ酢酸で沈殿させた。酸不溶性画分をミリポア社のガラスフィルターで濾過し、液体シンチレーションカウンターで測定した。その結果、LB培地中で対数増殖期の細胞を30℃から43℃にシフトするとき、親株としたRN4220株の合成は継続できるがTS8822株のDNA合成は停止した(図1)。DNA合成の停止のパターンはDNA複製開始が不全となった際の、残存DNA合成があるパターンとなった。この結果は、TS8822株は高温(43℃)でDNA複製ができないことを示している。
<フローサイトメトリーによる温度感受性突然変異株TS8822株の細胞内DNA量の測定>
温度感受性突然変異株TS8822株におけるDNA合成の停止が、開始段階で生じていることを確証するために、細胞内のDNA量をフローサイトメトリー法で測定した。TS8822株最終培養液5μLをLB培地5mL、30℃で培養した。OD600値が0.1となったところで、一部は100μg/mLリファンピシンと10μg/mLセファレキシンを加えて30℃で4時間、あるいは15μg/mLセファレキシンを加えて43℃で4時間培養した。それぞれの条件の細胞を遠心分離して回収し、1mLのリン酸緩衝液[PBS(−)]で洗浄し、TE緩衝液に懸濁し、70%エタノールを10倍量加えて固定した。固定した細胞を回収し、TE緩衝液に懸濁し、800μg/mL リボヌクレアーゼA存在下で50℃で2時間インキュベートした。リボヌクレアーゼA処理後細胞を集菌して10mmol/L Tris-HCl(pH 7.4)、10mmol/L MgCl2に懸濁させた。細胞をソニケーションにより解離させ、ナイロン膜でろ過し、1μmol/Lサイトックスグリーン(molecular probe)で染色した。サンプルはフローサイトメター(Becton Dickinson社、FACS Caliber)で解析した。
結果を図2に示す。30℃で対数増殖期のDNAのヒストグラムは、親株であるRN4220、TS8822株のどちらにおいても1本の幅の広いピークを示した。幅の広さはDNA複製の進行の程度が様々に異なる細胞集団を測定対象にしていることを示している。対数増殖期のTS8822変異株にRNAポリメラーゼ阻害薬であるリファンピシンと細胞分裂の阻害薬であるセファレキシンを加えて30℃で4時間培養した条件では複製開始は阻害されるが複製伸長反応は完了し、かつ細胞分裂は阻害されるので、薬物添加時のoriCの数だけ細胞内に染色体DNAが蓄積する。この際、親株であるRN4220株では、染色体2N、4Nの細胞が存在し染色体が2(n=0,1,2,3・・・)に一致するピークが主に見られたが(図2A)、TS8822株では2N、4Nのピークの他に3Nのピークが認められた(図2B)。この結果はTS8822株で複製開始の同調性が失われていることを示唆する。リファンピシンとセファレキシンを加えた後に43℃にシフトし4時間培養した細胞のヒストグラムは、RN4220株、TS8822株ともに同じ薬物を加えて30℃で4時間培養した際のヒストグラムとほぼ一致するものであった。この結果はTS8822株で高温(43℃)シフト後に既に進行中のDNA合成は最後まで完結していることを示す。セファレキシンを加え43℃で培養する際には、対照としたRN4220株では30℃での場合よりもピーク位置が右側にシフトした、より幅の広いピークが観察された(図2C)。これはRN4220株ではDNA合成が高温(43℃)下で継続し、細胞内に染色体DNAが蓄積していることを示している。一方、TS8822株では2N、3N、4Nの位置にピークが見られた(図2D)。また。薬物を加えずTS8822株を43℃で4時間培養した際には、1Nと2Nのピークがおよそ8:1の比で認められた。これらの結果は、TS8822株では高温(43℃)下で複製伸長反応は終了できるが、複製開始は不全となっていることを示唆する。
<TS8822株におけるdnaA遺伝子の変異部位の同定>
前述したように、dnaA遺伝子がTS8822の高温感受性を相補することを示唆する知見を得た。次に、これらの高温感受性突然変異株のdnaA遺伝子の全塩基配列を決定し、突然変異部位の同定を行った。
ゲノムDNAのdnaA領域2.3-kbpをプライマーX2LとX5Lを用いてPCRで増幅した。PCR産物反応液をアガロース電気泳動で分離後ゲルを切り出して、QIAquick ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて精製し、dnaAを含むDNA断片を得た。このDNA断片を鋳型として以下の9種のプライマーを用い、PRISM Bigdye terminator キットを用いてシークエンスを行った。反応産物をABI PRISMR3100DNAシークエンサー(Applied Biosystems)で解析した。
X2L; 5‘−GGATAAGTCGTCCAACTCATG-3’(配列番号:3)
X2R; 5‘−GATAGCTTCACCATCTTTGATCGTG-3’(配列番号:4)
X3L; 5‘−GCGAGTTTAGCTGTGGCCGAAGC-3’(配列番号:5)
X3R; 5‘−GTGTTAATGCACCTTCTAATTCACG-3’(配列番号:6)
X4L; 5‘−GTAGGCCAGTACTATAATGTTAGAATTG-3’(配列番号:7)
X4R; 5‘−GCTCATCTTGCCACATTAGCATATAGAAAT-3’(配列番号:8)
4.5L; 5‘−TGCTGTGGATTGGTGGATAA-3’(配列番号:9)
X5L; 5‘−GACTTATCCACCAATCCACAGCACCTAC-3’(配列番号:10)
X5R; 5‘−GAATTGCGTCATCTCTAGAAACTTGAGGTA-3’(配列番号:11)
シークエンスの結果、dnaA遺伝子に、ただ1つのアミノ酸置換を伴う点突然変異が生じていることを見出した。TS8822株においては、118番目のG:CからA:Tへの一塩基置換が生じており、40番目のアラニンからスレオニンほのアミノ酸置換が起こっていることが判明した。野生株としたRN4220株のDnaA蛋白質のアミノ酸配列はCowan I株(Genbank accession number D89066)およびN315株と一致していた。温度感受性遺伝子である、黄色ブドウ球菌のdnaA8822遺伝子の塩基配列を配列番号:1に示す。
<大腸菌での大量生産と黄色ブドウ球菌DnaAの精製>
pSAdnaA002を大腸菌(KA450;Δ oriC, rnhA)に導入し、50 mg/L チミン、50 mg/L アンピシリンを含む3LのLB10培地で、30℃で培養した。OD600= 0.5になった時点で、L-(+)アラビノースを終濃度1%になるように加え、さらに30°Cで3時間培養した。集菌し、湿菌重量1 gに対し1 mLのBuffer C’ + 0.25 mol/L KCl [50 mmol/L HEPES-KOH (pH7.6), 1 mmol/L エデト酸, 2 mmol/L ジチオスレイトール, 20% グリセロール, 0.25 mol/L 塩化カリウム] を加えて懸濁し、-80℃で保存した。菌体を氷上で溶かし、それぞれ終濃度0.3 mg/mL、20 mmol/Lとなるようにリゾチーム、スペルミジンを加えた。氷上で 30分の後、液体窒素で凍らせた後、氷上で溶かした。ソニケーション(BRANSON SONIFIER450, out put control 3で10 秒, 4 回)により菌を破砕し、遠心菅に移した。 Beckman 80Tiのローターで35 krpm、20分、4°Cで遠心後、上清を回収した(Fr. I)。Fr. Iに0.2 g/mLまで硫酸アンモニウムを加え、3時間撹拌した後、80Tiローターで30 krpm、20分、4°Cで遠心し、沈殿を回収した。沈殿を10mmol/L 酢酸マグネシウムを含むBuffer C’に溶かし(Fr. II)、Buffer C’+10mmol/L 酢酸マグネシウム800mLに対し2回透析した。透析はあわせて12時間行った。サンプルを80Tiローターで30 krpm、20分、4°Cで遠心後、上清をMonoSカラム(Pharmacia MonoS HR 5/5)にアプライした。Buffer C’ + 10 mmol/L 酢酸マグネシウムで洗浄し、0 mol/Lから1 mol/L 塩化カリウムのグラジエントをかけて黄色ブドウ球菌DnaA蛋白を溶出させた(Fr. III)(Pharmacia FPLC)。ATP結合活性を有するフラクションを、精製DnaA画分とした。精製DnaA画分はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のクマシーブリリアントブルー染色でシングルバンドを示した。
<DnaA蛋白のATP結合活性の測定>
黄色ブドウ球菌DnaA蛋白のATP結合の阻害実験は、50 pmol (1μmol/L) [α-32P]ATP (44000 cpm/pmol), 1から5pmolの精製した黄色ブドウ球菌DnaAを結合用緩衝液 [40 mmol/L HEPES-KOH (pH 7.6), 100 mmol/L グルタミン酸カリウム、40 μmol/L 酢酸マグネシウム、0.5 mmol/L エデト酸、1mmol/L ジチオスレイトール、0.05 mg/mL ウシ血清アルブミンBSA、10% スクロース] 中に加え、50μLとした。ジチオスレイトールは使用直前に加えた。4°Cで15分反応させて、DnaA-ATP複合体を形成させた。ニトロセルロースフィルター (Millipore HA 0.45 μm) にDnaA-ATP複合体を吸着させ、冷した洗浄用緩衝液 [40 mmol/L HEPES-KOH (pH 7.6), 152 mmol/L 塩化カリウム、10 mmol/L 酢酸マグネシウム、0.2 mmol/L エデト酸、1 mmol/L ジチオスレイトール、20%(v/v) グリセロール] 20 mLで洗った。フィルターを赤外線ランプ下で乾かし、放射活性を液体シンチレーションカウンターにより測定した。
<阻止円形成実験>
RN4220、TS8822、TS8822/pND50、TS8822/pSdnaAFの各株の終夜培養液250 μLを、滅菌後55℃にまで冷却したLB寒天培地25 mlと混合し、各シャーレに固めた。直径1 mm程の穴を穿ち、1 mg/mL No. 245, 0.1 mg/mL バンコマイシン、0.01 mg/mL ペニシリンG、0.l mg/mL エリスロマイシンを3 μLずつ添加した。39℃で終夜培養し、阻止円の大きさを測定した。
始めにDnaA蛋白のATP結合阻害物質は、抗菌活性があるものと仮定し、スクリーニングの対象とした23,061化合物の中に抗菌活性があるものを探索した。抗菌活性は、RN4220株を検定菌とし、3 μg/mLに化合物を用いる際の阻止円形成能を指標として選択した。その結果、抗菌活性を有する化合物として3,067化合物を得た。
次にDnaA蛋白のATP結合を阻害する化合物を探索した。DnaA蛋白と化合物をあらかじめ氷上で30分間インキュベーションし、その後終濃度1 μmol/Lとなるように放射ラベルされたATPを加え、DnaA蛋白へのATP結合の低下を観察した。化合物濃度40 μg/mlで90%の結合阻害するものを選択した。その結果、DnaA蛋白のATP結合を阻害する化合物として437化合物を得た。次に、これらの化合物を黄色ブドウ球菌に作用させる際にDNA合成を選択的に阻害するかについて検討した。黄色ブドウ球菌を[3H]-チミンあるいは[35S]-メチオニン存在下で対数増殖期まで培養し、OD600値が0.1となったところで薬剤を終濃度4.20 μg/mLで添加し、さらに2時間培養した。[3H]-チミジンの酸不溶性画分で検出するDNA合成が、[35S]-メチオニンの酸不溶性画分へのとりこみで検出する蛋白合成に比べ、強く阻害されている化合物を選択した。その結果、DNA合成を選択的に阻害する傾向のある化合物として3化合物が見出された。その構造を既存の抗菌剤と比較した結果、化合物2−(2−クロロフェニルイミノ)−5−(2−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−ニトロベンジリデン)−チアゾリジン−4−オン( [2-(2-Chlorophenylimino)-5-(2-hydroxy-3-methoxy-5-nitrobenzylidene)-thiazolidin-4-one] (化1, 以下No.254と呼ぶ) が新たな抗菌活性を持つ化合物であることが分かった。
Figure 2005124514
さらに、化合物No.254のDNA合成、蛋白合成の阻害効果の容量依存性について検討した。その結果、DNA合成に対するIC50は1μg/mL、蛋白合成に対するそれは8 μg/mLであり (図3)、DNA合成選択的な阻害効果が認められた。化合物No.254のDnaA-ATP結合阻害を表2に示す。
Figure 2005124514
化合物No.254の抗菌活性はRN4220株に対するMICは2 μg/mLであり、DNA合成の阻害に必要な濃度に近かった。一方化合物は大腸菌や緑膿菌のグラム陰性細菌の増殖は阻害しなかった。
次にdnaAの温度感受性変異株が化合物No.254に対し、野生株と比較して感受性が異なるかについて調べた。3 μgの化合物No.254に対する阻止円の大きさを測定した。その結果(表3)、野生株において6.1 mmであったものが、dnaA8822変異株では12.5 mmと大きくなり、dnaA8822変異株が化合物No.254に対し感受性を示した。表3は、野生株(RN4220)、dnaA変異株 (TS8822) およびそのプラスミド導入株を39℃で24時間培養する時に、各化合物によって形成される阻止円の大きさを求めた。三回の実験とも同様の結果を与えた。
Figure 2005124514
この感受性はdnaAを含むプラスミドの導入により相補された。dnaA変異株は、バンコマイシン、ペニシリンG、エリスロマイシンには温度変化による感受性変化を示さなかった。この結果は、化合物No.254が、黄色ブドウ球菌細胞内でDnaA蛋白に作用していること示唆する。
本発明の方法を用いることにより構造上新規なDnaA蛋白阻害物質である化合物No.254を迅速に見出すことができた。
本発明の提供する分子生物学的手法を抗菌剤の検索に利用することのメリットの1つに、副作用のない抗菌剤をデザインすることができる点があげられる。従来の方法で、単に細菌の増殖を阻害する物質をランダムにスクリーニングする方法では、見出された物質が人体に悪影響を与えるか否かは全く予想できなかった。この点、本発明においては、ターゲットとするタンパク質を絞り込むステップで、ヒトにはなく細菌細胞に特有な遺伝子を対象とすることにより、細菌の増殖に特異的な阻害剤を見出すことができる。
ターゲットタンパク質を選ぶ場合、そのタンパク質が細菌に特異的であり、類似の構造をしたタンパク質がヒトにはないことを、遺伝子のレベルで予め知ることができることは、本発明による抗菌剤検索の大きな特長である。
さらに本発明は、dnaA温度感受性突然変異株を分離して同定した遺伝子の産物であるタンパク質の活性を阻害する物質を系統的に検索しようとするものである。これは、これまでに全く発見されていなかった新規の細菌増殖阻害剤を見出す有効な手段となると考えられる。これまでに発見された抗菌物質の大部分の作用機構はきわめて限られている。すなわち、ペニシリン類による細菌細胞壁の合成阻害、キノロンによるDNAの切断、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシンなどによるタンパク質合成の阻害があげられる。この中に、DNA複製の阻害剤が1つも含まれていないことは注目に値する。すでに大腸菌の分子生物学的研究から、DNA複製は、数10種に及ぶタンパク質による反応であることが分かっている。そのいずれもが抗菌物質のターゲットとなり得るものであるが、今日に至るまで、細菌細胞のDNA複製を特異的に阻害する化学物質の存在はDNAジャイレース阻害薬を除くと極めて限られている。
本発明は、DNA複製に必須な遺伝子によりコードされているタンパク質の阻害剤を系統的に検索すれば、これまでの抗生物質とは全く作用機構が異なる細菌増殖阻害剤が見出されることが期待できる。さらに本発明の方法によれば、DNA複製だけでなく、他のすべてのターゲットとなりうるタンパク質の阻害剤を検索し、新規の抗菌剤を得ることが可能である。
本発明の方法は、ブドウ球菌属だけでなく、他のすべての病原微生物にあてはめることが可能である。遺伝子の機能の必要性は、細菌により大きく異なっていることが予想される。すなわち、ある細菌では必須でなかった遺伝子が、別の細菌では必須である場合が考えられる。そのような場合には、たとえ他の細菌では必須でなくとも、その病原菌の増殖を抑える薬のターゲットである可能性が期待される。したがって、本発明の方法は、病原微生物全てに普遍的に有効であると考えられる。
TS8822株におけるDNA合成の高温感受性を示すグラフ。
0.1mmol/L[H]−チミジンを含むLB培地で、30℃で対数増殖期まで培養した黄色ブドウ球菌RN4220株(A)及びTS8822株(B)を43℃(●)あるいは30℃(○)で培養した。
図に示した時間にサンプリングし、[H]−チミジンの酸不溶性画分への取り込み量を、温度シフト時の取り込み量に対する比として示した。
TS8822株における複製開始の同時性の欠損と制限温度下での開始不全を示す測定結果。
LB培地で30℃で対数増殖期まで培養した黄色ブドウ球菌RN4220株 (A, C)およびTS8822株 (B, D) を、リファンピシン、セファレキシンを添加し30℃でさらに4時間培養 (A, B)、あるいはセファレキシンを添加し43℃で4時間培養した。集菌後、細胞内の染色体量をフローサイトメトリー法により測定した。
化合物No.254の黄色ブドウ球菌のDNA合成に対する選択的阻害を示す測定結果。
0.1 μM[3H]−チミジン (黒丸)、あるいは[35S]−メチオニン (白丸) を含むLB培地で黄色ブドウ球菌RN4220株を30℃でOD660値が0.1となるまで培養した。菌液100 μlに図に示した終濃度の化合物254を加え、30℃で2時間継続培養し、酸不溶性画分への取り込みを測定した。薬剤添加前に対する高分子合成量の上昇比を示した。

Claims (19)

  1. ブドウ球菌属のdnaA温度感受性突然変異株を含む野生型株から該dnaA温度感受性突然変異株を分離する方法において、
    該dnaA温度感受性突然変異株を含む野生型株を培地上で30℃にて培養しコロニーを形成させるステップと、
    レプリカ法により該コロニーの各々を2つの異なる培地上に移し、一方の培地を30℃にて、他方の培地を43℃にて保持することにより各々のコロニーを培養するステップと、
    30℃にてコロニーが現れるが43℃にては現れないコロニーを該dnaA温度感受性突然変異株として採取するステップとを含むことを特徴とするdnaA温度感受性突然変異株の分離方法。
  2. 前記dnaA温度感受性突然変異株を含む前記野生型株を培地上で30℃にて培養するステップに先立って、該dnaA温度感受性突然変異株の存在割合を高めるべく変異原で処理するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のdnaA温度感受性突然変異株の分離方法。
  3. 下記のステップ:
    (1)請求項1または2に記載の分離方法によりdnaA温度感受性突然変異株を分離するステップ、
    (2)該dnaA温度感受性突然変異株のdnaA温度感受性遺伝子を同定するステップ、
    (3)該dnaA温度感受性遺伝子による遺伝子産物を大量生産するステップ、
    および、(4)該遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップを含むことを特徴とする抗菌剤の検索方法。
  4. 前記(3)の前記dnaA温度感受性遺伝子による遺伝子産物を大量生産するステップの後に、大量生産された該遺伝子産物の活性測定法を確立するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の抗菌剤の検索方法。
  5. 前記(4)前記大量生産された前記遺伝子産物の活性測定法を確立するステップの後に、大量生産された該遺伝子産物を精製するステップを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の抗菌剤の検索方法。
  6. 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップの後に、検索された前記活性阻害剤による前記遺伝子産物に対する活性阻害効果の機構を解明するステップを含むことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  7. 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップの後に、該活性阻害剤による病原微生物に対する増殖阻害効果を調査するステップを含むことを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  8. 前記活性阻害剤によるブドウ球菌属に対する増殖阻害効果を調査するステップにおいて、前記活性阻害剤が病原微生物の細胞の中に入らない場合、該活性阻害剤を細胞内に入るようにデザインし直すステップを含むことを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  9. 前記(2)の前記dnaA温度感受性突然変異株のdnaA温度感受性遺伝子を同定するステップにおいて、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成のいずれの機構に変異を生じているかを放射性同位元素で標識された前駆体を用いて決定するステップを含むことを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  10. 前記(4)の前記遺伝子産物の活性阻害剤を検索するステップにおいて、検索された前記活性阻害剤のもつ残基を改変して阻害活性の変化を調べるステップを含むことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  11. 前記増殖阻害効果が、対象となる特定の前記遺伝子産物のみについて特異的であるか否かを確認するべく、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成のいずれの段階での前記遺伝子産物の作用に対して前記増殖阻害効果が及ぶかを調べるステップを含むことを特徴とする、請求項3〜10のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  12. 前記増殖阻害効果が、対象となる特定の前記遺伝子産物のみについて特異的であるか否かを確認するべく、前記活性阻害剤に耐性となった前記病原微生物を分離し、それが、対象となる特定の前記遺伝子産物をコードする遺伝子の変異株であるか否かを調べるステップを含むことを特徴とする、請求項3〜11のいずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  13. 請求項3〜12のいずれかに記載の抗菌剤の検索方法により、前記病原微生物に対する抗菌剤として認知された前記活性阻害剤について、種々の残基を改変することにより前記活性阻害効果及び前記増殖阻害効果に及ぶ効果を調べるステップをさらに含むことを特徴とする抗菌剤の検索方法。
  14. 請求項1または2に記載の温度感受性突然変異株を分離するステップによって得られたdnaA温度感受性突然変異株。
  15. dnaA温度感受性突然変異株である黄色ブドウ球菌TS8822。
  16. 請求項14または15記載のdnaA温度感受性突然変異株を用いることを特徴とする、請求項3〜13いずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
  17. 前記(2)の前記温度感受性突然変異株の温度感受性遺伝子を同定するステップによって同定された遺伝子。
  18. 配列番号:1で示される塩基配列からなる温度感受性遺伝子である、黄色ブドウ球菌のdnaA8822遺伝子。
  19. 請求項17に記載された遺伝子または請求項18に記載されたdnaA8822遺伝子を用いることを特徴とする請求項3〜13いずれか1項に記載の抗菌剤の検索方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113621727A (zh) * 2021-06-24 2021-11-09 领航基因科技(杭州)有限公司 5种病原菌多重pcr检测的引物、探针及其试剂盒

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