次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る回転装置或いは時計の実施形態の正面図、図2は平面図、図3は右側面図である。この時計1000は、基台1001の上に各機構が配置されてなる。すなわち、時計1000は、錘体を持ち上げるための錘体持上機構100と、この錘体持上機構100によって持ち上げられた錘体によって動作する計時機構200とを備えている。また、計時機構200とともに動作する可動の装飾体300が配置されている。
最初に、図7乃至図11を参照して、回転装置或いは時計1000の錘体持上機構100の原理について説明する。本発明の錘体持上機構において、図7に示す駆動体10は、渦巻き状の駆動部11を有し、この駆動部の内面及び外面が駆動面11a,11bとなっている。駆動面11aは駆動部11の内面であり、駆動面11bは駆動部11の外面である。駆動体10の軸芯10Pは、渦巻きの中心点(中心軸)である。渦巻き(平面スパイラル)としては、種々のものがあるが、例えば、アルキメデスのスパイラル、双曲スパイラル、対数スパイラル(等角スパイラル)などが挙げられる。
アルキメデスのスパイラルは、中心点からの直線距離をr、角度をθとした平面極座標系において、r=aθ=(P/2π)・θで表される。ここで、a=v/ω(定数、vは中心から一定の速さで遠ざかる速度、ωは角速度)、P=2πaはピッチ距離である。この場合には、渦巻きのピッチが等間隔になるので、本発明の渦巻き形状としては最も好ましい。
双曲スパイラルは、同じ平面極座標系においてr=a/θで表される。ここで、aは定数である。この場合には、θが大きくなるとrは小さくなり、中心点が漸近点となる。この渦巻き形状では、中心に近づくに従って急激に間隔が狭くなる。
対数スパイラルはr=aexp[K・θ]で表される。ここで、a、Kは定数である。この渦巻き形状は動径と接線のなす角が一定である曲線であり、したがって、中心点から半径方向に移動したとき、常に接線方向が等しい方向を向いていることになる。接線方向の傾きφ=cot−1Kである。この場合には、外側へ進むほど渦巻きのピッチ間隔が少しずつ広くなっていく。
次に、図7に示すように、上記の駆動体10を用いて錘体15を駆動する。錘体15を駆動するには、駆動体10をその軸芯10Pを中心として回転させ、駆動体10の駆動面11a又は11bによって錘体15を半径方向に移動させる。ここで、錘体15は図7では駆動体10の半径に沿って(軸芯10Pを通過する直線の伸びる方向に沿って)並進移動(直線移動)するように設定されている。ただし、本発明では、錘体15の移動経路そのものは駆動体の半径方向と一致していなくてもよく、駆動体10の渦巻き方向と異なってさえいれば、任意の直線状若しくは曲線状の経路を採るように構成されていてもよい。
図7に示すように、錘体15を駆動体10の半径に沿って直線移動させるときには、案内部材12の案内縁12aを駆動体10の半径に沿って配置し、錘体15が案内縁12aに案内されて移動していくように設定する。
例えば、軸芯10Pを水平方向に設定し、駆動体10を回転させると、錘体15は上下方向(垂直方向)に直線移動することになる。ここで、図7に示すように図示時計周りに駆動体10をその軸芯10Pを中心として回転させる場合、図示実線のように錘体15を駆動面11b上に当接させた状態とすれば、錘体15は上方に移動していく。また、錘体15を駆動面11a上に当接させた状態とすれば、図7に点線で示すように下方に移動していく。これらの移動方向は、駆動体10の回転方向が逆になれば逆方向となる。
図8は、上記のように駆動体10の軸芯10Pを通過する垂直面上に錘体15を保持したときの錘体15の動作態様を示す。ここで、錘体15は、軸芯10Pと平行な軸線を有する円柱体若しくは円筒体、或いは、球体であり、並進移動とともに駆動面11b上において転動可能に構成されていることを前提とする。錘体15は、自身の質量に応じた引力Wを下方に受けるとともに、この引力Wと、駆動面11bの傾斜角ψ(より正確には駆動面の接面の傾斜角)に応じた力Fを案内部材12の案内縁12aから受ける。そして、錘体15が駆動面11b上で転動するとき、錘体15と案内部材12との摩擦力μF(μは動摩擦係数)はこの力Fによってほぼ決定される。
ここで、駆動体10の渦巻き形状がアルキメデスのスパイラルであると仮定すると、軸芯10Pを通過する垂直面上における駆動面11bの傾斜角ψ(駆動面の接面の傾斜角)は、ψ=2/π−tan−1θとなる。例えば、θ=1.5πのときψ=11.98°、θ=2πのときψ=9.04°、θ=3.5πのときψ=5.20°、θ=4πのときψ=4.55°、θ=5.5πのときψ=3.31°、θ=6πのときψ=3.04°、θ=7.5πのときψ=2.43°、θ=8πのときψ=2.28°となる。なお、この場合においては、錘体15の移動経路が半径に一致しているため、上記の計算では、駆動面11bと所定の半径方向の接線(接面)とのなす角度を算出していることになる。
次に、上記力Fは、傾斜角ψと引力Wとによって決定され、F=Wtanψとなる。ここで、駆動体10の回転によって錘体15が転動し、錘体15は案内部材12の案内縁12aに対して摺動することとすると、この摺動によって生ずる摩擦力は、μF=μWtanψである。上述のように、θが大きくなるほど傾斜角ψは小さくなるので、Fも小さくなり、したがって、摩擦力も小さくなるから、θの小さい領域は使用しないほうが摩擦損失は低減される。ただし、この場合には、錘体の移動ストロークを確保しようとすれば、駆動体10はその分大型化する。
この錘体15の摩擦力μFに起因する駆動体10の駆動負荷、すなわち摩擦損失をMFとする。ここで、駆動体10の軸芯10Pと案内縁12a(或いはその延長線)の距離は、高々錘体15の半径dから直径以内である。このため、例えば、当該距離が図8に示す半径dと等しい場合には、駆動体の負荷となる摩擦損失MFはμFdとなる。
また、駆動体10は、その自重WOと、錘体15の重量Wとによって軸損失MXを生ずるが、これは、駆動体10の軸支部の半径をe、軸支部の動摩擦係数をμOとすると、MX=μO(WO+W)eとなる。
上記の結果を総合すると、MF=μFd(dは錘体の半径)を転動による摩擦損失とすれば、全損失MTOTAL=MF+MX=μFd+μO(WO+W)e=μWdtanψ+μO(WO+W)eとなる。ここで、μ=0.2、μO=0.1、W=5g、WO=50g、tanψは上記の平均値を用いるとすれば、全損失は約2g・cm程度となる。したがって、時計のムーブメントなどの僅かな駆動トルクでも容易に駆動することができる。
なお、以上の結果は、いずれも単一の錘体15を駆動する場合を示すものであり、錘体15が同時に複数駆動される場合(例えば、図7の位置S1〜S6のうちの複数箇所に錘体15が配置される場合)には、摩擦損失MFでは損失全体に錘体15の数を乗算し、軸損失MXでは式中のWに錘体15の数を乗算すればよい。ここで、例えば、錘体15を移動させるスパイラルのピッチを15mmとし、3つの錘体15を同時に順次異なる周回位置にて上昇させるように構成するためには、錘体15を導入して導出するために4ピッチ分の半径の大きさ、15mm×4=6cmをもつ駆動体10が必要となる。そして、軸損失MXではWの代わりに3Wを用い、摩擦損失MFは全体を3倍すればよい。
従来の方法として、錘体を駆動体の外周部に保持して、錘体が駆動体の軸芯と等しい高さにある状態から軸芯の真上に配置される状態まで駆動体を回動させることによって錘体を持ち上げることができる。しかし、この場合には、駆動体が必要とする最大トルクは、外周円弧状を移動しはじめる時に生ずる。最大トルクは、錘体の重さWと、駆動体の軸芯から錘体までの距離(半径)Rとの積となるから、例えば、錘体の重さWが5g、半径Rが6cmであれば、必要な駆動トルクは30g・cmとなる。もちろん、この場合にも、錘体の数が増えれば、最大トルクも増大する。また、この場合でも全損失を求めるには上述と同様の軸損失がさらに加算される。したがって、本実施形態の全損失は従来の錘体持上機構の全損失に較べてきわめて小さい値となる。
次に、図9には、図7に示すものと同様の駆動体10、錘体15を用いた錘体持上機構であるが、錘体15の駆動面11b上における保持される位置が異なる例を示してある。この例では、錘体15を軸芯10Pを通過する垂直面上ではなく、図10に示すように、駆動面11bの頂点位置11bp上に設定してある。また、駆動面11bの頂点位置11bp上では、錘体15は安定しないので、両側に案内部材12A,12Bを配置し、それらの案内縁部12Aa,12Baによって錘体15を上下方向(垂直方向)に案内している。
この場合には、錘体15がほぼ頂点位置11bp上に配置されているので、その接線(接面)はほぼ水平であり、したがって、案内縁部12Aa,12Baから錘体15が受ける応力F′は上記力Fに較べて小さく(理想的には0に)なる。したがって、上述の摩擦損失MFがほとんどなくなるため、全損失も低減されるから、駆動負荷がさらに低減される。
図11(a)及び(b)には、錘体15を頂点位置11bp上よりもさらに駆動体の回転の向きと逆側にずらして配置した場合の錘体の近傍の様子を示す。この場合には、図10に示す場合に較べて、錘体15の図示左側にある案内縁12Baの位置を錘体15の位置とともに図示左側にずらして配置してある。この案内縁12Baとは反対側にある案内縁12Aaは図10に示す場合と同じ位置にある。この状態で、駆動面11bが図示時計周りに速度v1で回転したとすると、錘体15もまた周速度v1で転動することとなるが、実際には、駆動面11b及びその上の錘体15は、駆動面11bが渦巻き状に構成されているために速度v2で上方に移動する。ここで、v1とv2の関係は、渦巻きが上述の(図7を参照した説明にて記述した)アルキメデスのスパイラルであれば、a=v2/ω、v1=r・ωであるから、v2/v1=1/θとなり、θが大きくなるほど、v2/v1は小さくなる。したがって、θ=1.5π〜8π程度を考えると、v1>>v2となる。
ここで、錘体15の回転状態を調べて見る。駆動体10の時計周りの回転により錘体15自体の回転は反時計周りに転動する。このとき、駆動体10の回転によって錘体15は多少でも図の右側へ移動させようとする力f′を受けることになるため、錘体15と案内縁12Baとの間に生ずる力F″は、図8に示す力F=Wtanψに相当するf=Wtanψ′から上記のf′を引いた値になり、その結果、ψとψ′とが大きく異ならなければ、力F″は常にFよりも小さな値となる。したがって、この力F″に起因する摩擦力μF″も図8に示す場合よりも小さくなる。
このとき、案内縁12Baと錘体15との間に生ずる摩擦力μF″の方向は、v1>>v2であるため、図示上方向となる。ここで、案内部材12Bは固定されているため、案内縁12Baを基準としてみると、図11(b)に示すように、或る時点t1と、その後の時点t2とで比較すると、時点t1では錘体15は、案内縁12Baの下部位置に接していても、時点t2ではそれよりも上部位置に接することになる。すなわち、固定された案内縁12Baと錘体15との間のすべり速度はv1−v2となる。したがって、錘体15の転動によって生ずる摩擦損失は、図8及び図10に示す案内縁12Aaに対するものに較べて軽減されることになる。
なお、上記とは逆に、駆動面11aの最低位置上に錘体15を保持して駆動する場合でも、上記と同様に転動による案内部材との摩擦に起因する摩擦損失を低減することができる。この場合には、錘体15を引力によって駆動面11aの最低位置に保持することが可能であるため、回転速度が一定かつ充分に遅ければ、案内部材を必要としない。ただし、実用的には上記と同様に錘体15の両側を保持するための案内手段を設けることが望ましい。
次に、上述の原理を踏まえて、回転装置或いは時計1000の錘体持上機構100の実施例について説明する。図4は錘体持上機構100の斜め上方から見た様子を示す斜視図、図5は錘体持上機構100の正面図(a)、平面図(b)及び右側面図(c)、図6は、錘体持上機構100に錘体の導入部及び導出部を設置した場合の斜視図である。この錘体持上機構100は、図示のように内側から外側へ反時計周りの渦巻き状の駆動面が構成された駆動体110を有し、球状に構成された錘体(図示せず)を駆動体110の軸芯よりやや上方の下方位置にて駆動体110の駆動面上に供給したとき、駆動体110が(図示例では時計回りに)回転することによって錘体が徐々に上昇し、やがて上方位置に錘体が達したときに錘体を取り出すように構成したものである。
この駆動体110は、一対の渦巻き状帯材111A,111Bが図示前後方向(すなわち駆動体110の軸線方向)に並列に配置されている。渦巻き状帯材111A,111Bの内面及び外面はそれぞれ渦巻き状に構成され、上述の駆動面を構成している。一対の渦巻き状帯材111A,111Bの前後両側には板状の保持枠113A,113Bが配置されている。保持枠113A,113Bは、渦巻き状帯材111A,111Bの渦巻き形状に構成された駆動面上に配置される錘体が駆動面上から脱落しないように保持するためのものである。前面側に配置される保持枠113Aには、駆動体110の軸芯の近傍(中心側)にて前方に開口した導入口113Axが形成され、また、駆動体110の外周部において前方に開口した導出口113Ayが形成されている。上記の一対の渦巻き状帯材111A,111B及び保護枠113A,113Bは、支持部材114A,114Bによって一体に構成され、後述するハブに固定されている。
駆動体110の背後には、図5(b)及び(c)に示すように駆動源120が配置され、この駆動源120の駆動軸121はハブ122に接続されている。駆動源120としては適宜の駆動モータなどの回転駆動手段を用いることができるが、本実施形態では、時計駆動機構(ムーブメント)によって構成している。ハブ122は、上記の駆動体110の中心部に固定され、駆動源120の駆動力により駆動体110とともに回転するようになっている。
一方、基台101の前後位置にはそれぞれ支持枠102A,102Bが固定され、これらの支持枠102A,102Bは、上記ハブ122を介して駆動体110を回転自在に軸支している。後方の支持枠102Bには上方に延長された支持延長部102Bxが設けられ、この支持延長部102Bxは案内部材112の上部を支持固定している。この案内部材112は、上記一対の渦巻き状帯材111A,111Bの間を挿通して上下方向に伸びるように配置されている。案内部材112の下部は基台101に固定されている。
図4又は図6において、案内部材112は固定されており、駆動体110が回転しても常に一定位置(図示例では駆動体110の軸芯の上下に亘る位置)に配置されている。案内部材112は、図示上下方向に伸びる一対の案内部112A、112Bを有している。一対の案内部112A,112Bは駆動体110の軸芯の上方においてそれぞれほぼ上下方向に伸びるように配置されている。案内部112A,112Bには、それぞれ相互に対向配置された案内縁部122Aa,112Baが軸芯の上方に上下に伸びるように形成されている。より具体的には、駆動体110の回転方向(時計回り)側に形成された一方の案内部112Aは軸芯の上方をやや上記の回転方向側に傾斜した姿勢で上方に伸びている。また、駆動体110の回転方向とは逆側に形成された他方の案内部112Bは軸芯の上方のやや回転方向とは逆側をほぼ垂直に上方へ向けて伸びている。
図6に示すように、この錘体持上機構100では、上記の保持枠113Aに設けられた導入口113Axが駆動体110の軸芯の真上位置にきたときに図示しない錘体を導入口113Axを通して渦巻き状帯材111A,111Bの外面上に導入する導入ガイド132と、上記の保持枠113Aに設けられた図4に示す導出口113Ayが駆動体110の軸芯の真上位置にきたときに、駆動体110の回転によって案内部材112によって案内されながら上昇してきた図示しない錘体を導出口113Ayを通して導出する導出ガイド133とが設けられている。これらの導入ガイド132及び導出ガイド133は支持体131によって駆動体110の前方に支持固定されている。導入ガイド132及び導出ガイド133は、図示のように、錘体を転動させて導入若しくは導出させることができる樋状に構成されている。
この実施形態では、導入ガイド132から供給される錘体は、駆動体110の回転に伴って導入ガイド132の出口に導入口113Axが現れると、この導入口113Axを通して保持枠113Aの内側に導入され、渦巻き状帯材111A,111Bの面上に配置される。このとき、導入された錘体は案内部材112の対向する案内縁112Aa,112Baの間に配置され、これらの案内縁112Aa,112Baによってその回転方向の位置が規制される。その後、駆動体110の回転に伴って錘体は徐々に上方へ持ち上げられ、やがて、錘体が配置されている位置に導出口113Ayが現れると、この導出口113Ayを通して導出ガイド133へ錘体が排出される。実際には、上記のような手順で導入ガイド132から供給される複数の錘体がそれぞれ順次に持ち上げられ、導出ガイド133から順次に排出されるように構成されている。
上記のように構成された本実施形態では、駆動体110の或る所定位置に設けられた導入口113Axでのみ錘体が導入され、駆動体110の他の所定位置に設けられた導出口113Ayでのみ錘体が導出される。これらの導入口113Ax及び導出口113Ayはそれぞれ一つずつ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。いずれにしても、常に一定の位置で錘体が導入され、他の一定の位置で錘体が導出されるので、錘体の移動範囲(移動距離)は常に一定になる。
次に、図12を参照して上記実施例の導出口の構造を詳細に説明する。渦巻き状帯材111A,111Bは、基本的には案内部材112を挟んで両側に並列に設置されているので、渦巻き状帯材111Aの表面と、111Bの表面とは同じ角度位置では基本的に同じ高さとなっている。しかし、上記の導出口113Ayにおいては、導出口113Ayの設けられた側に存在する渦巻き状帯材111Aの排出部111Ayが低く、導出口113Ayの設けられた側とは反対側に存在する渦巻き状帯材111Bの排出部111Byが高くなっている。これによって、案内部材112により角度位置が保持された錘体115の前方位置に導出口113Ayが到達すると、錘体115は渦巻き状帯材111Bの排出部111Byから渦巻き状帯材111Aの排出部111Ayに移動し、導出口113Ayから重力に応じて自然に導出ガイド133上へ排出されるように構成できる。このような構成では、渦巻き状帯材111Aと111Bとを導出口113Ayに対して角度位置が接近するに従って徐々に高低差がつくように構成することが好ましい。これによって、錘体115は導出口113Ayが接近してくるに従って徐々に導出口113Ay側に移動し、導出口113Ayが現れたときには直ちに排出される。
図13には、上記の導出口113Ayの近傍の異なる構成を示す。この構成例では、導出口113Ayの設けられている位置では、渦巻き状帯材111A及び111Bに、導出口113Ay側に傾斜した傾斜部111Ay′及び111By′が形成されている。また、傾斜部111Ay′の導出口113Ayとは反対側の端部は、傾斜部111By′の導出口113Ay側の端部と同じか、それよりも低くなっている。このように構成することによって、錘体115を傾斜部111By′及び111Ay′によって導出口113Ayに導くことができるので、錘体115をよりスムーズかつ確実に排出することが可能になる。なお、この場合には、渦巻き状帯材111A及び111Bを、導出口113Ayに対して角度位置が接近するに従って徐々に傾斜角が大きくなっていくように構成することが好ましい。これによって錘体115をさらに円滑に導出口113Ayから排出できる。
図14は、駆動体110の導入口113Axの近傍の構造を示すものである。渦巻き状帯材111A,111Bは、導入口113Axの角度位置において、導入口113Ax側に存在する導入部111Axの方が反対側の導入部111Bxよりも高く形成されている。これによって、導入ガイド132から導入される錘体115が導入部111Ax,111Bx上に配置されたとき、勢い余って再び導入口113Axから外部へ飛び出ないように構成できる。この場合、渦巻き状帯材111A,111Bは、導入口113Axから角度位置が遠ざかるに従って徐々に高低差が低減されるように構成されていることが錘体115を円滑に駆動する上で好ましい。また、図13とは逆に、導入部111Ax,111Bxを導入口113Axとは反対側に下方に向けて傾斜させるようにしてもよい。この場合には、導入部111Axの導入口113Axとは反対側の端部は、導入部111Bxの導入口113Ax側の端部と同じ高さか、或いは、より高いことが望ましい。これによってさらにスムーズに錘体115を導入できる。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図15は本実施形態の計時機構200の主要部分の斜視図、図16は当該部分の正面図、図17は当該部分の右側面図(R)及び左側面図(L)、図18は当該部分の平面図である。
この計時機構200においては、回転輪210が回転自在に軸支されている。この回転輪210は、全体として円盤状に構成され、支持体202A,202Bによって回転自在に軸支されている。支持体202A,202Bは共に基台201に取り付け固定されている。回転輪210の回転軸は水平方向に設定されている。
回転輪210は、軸線方向両側に配置された一対の支持板210A,210Bに複数のバケット212が取り付けられ、これらのバケット212が回転輪210の外周に沿って配列されたものである。支持板210A,210Bの外周部には、回転方向に等分割された位置に(すなわち回転方向に周期的に)それぞれ係合部211A,211Bが形成されている。ここで、係合部211Aは図示前方に配置され、係合部211Bは図示後方に配置されている。係合部211Aには、最前部に配置された第1係合部位211Axと、この第1係合部位211Axのすぐ後方に隣接した第2係合部位211Ayとを有する。この第2係合部位211Ayは、第1係合部位211Axを構成する板状部と後述するバケット212との間に固定された部分に設けられている。第2係合部位211Ayの径方向の位置は、第1係合部位211Axの径方向の位置よりもやや回転輪210の中心寄りに設定されている。また、係合部211Bには、後方係合部位211Bxが形成されている。この後方係合部位211Bxは、第1係合部位211Axとほぼ同じ径方向の位置に設けられている。また、後方係合部位211Bxは、第1係合部位211Axとは回転方向逆側に向いており、第1係合部位211Ax及び第2係合部位211Ayと、後方係合部位211Bxとは、後述する各レバーに対して相互に逆側に係合可能な構造を有している。
回転輪210の外周部には、上記係合部211A,211Bに対応する角度位置にそれぞれバケット(上記受部材に相当する。)212が固定されている。図示例では、バケット212は、係合部211Aと211Bとの間に配置されている。このバケット212は、回転方向逆側から外周側に連続して開口する開口部212aを備えている。すなわち、開口部212aは、回転輪210の図示右側の中間高さ位置にバケット212が配置されているときには上方に開口する(すなわち、逆回転方向に開口する)部分と、回転輪210の外周側(半径方向外側)に開口する部分とが相互に連続するように構成された容器形状を有している。
また、上記の回転輪210の周囲には、第2係合部位211Ayに係合可能に構成された第1レバー213と、第1係合部位211Axに係合可能な姿勢を採ることが可能な第2レバー214と、第1レバー213にリンク215を介して連結された第3レバー216とを有している。ここで、第3レバー216の先端部には第2レバー214に係合して第2レバー214の先端部を持ち上げる可動フック217が回動可能に取り付けられている。さらに、後方係合部位211Bxに係合可能に構成される逆転防止レバー218も設けられている。
ここで、第1レバー213、第2レバー214、第3レバー216及び逆転防止レバー218は、全て所定の支持部材によって固定された支点を中心に回動自在に軸支されている。また、可動フック217は、第3レバー216の先端寄りの部分に回動自在に軸支されている。これらの各レバー或いはフックにおいては、支点の両側の重量バランスやストッパの位置などによって、その動作範囲や基準姿勢などを適宜に設定することができる。したがって、各レバー及びフックには、必要に応じて、適宜の位置に錘やストッパを配置することによって以下に説明する動作が実現される。なお、これらの各レバーにおいて、以下の説明では、支点よりも回転輪210に作用する側の端部を先端部と言い、この先端部とは支点を挟んで反対側にある端部を基端部と言うことにする。
上記回転輪210は上記錘体持上機構100で持ち上げられた錘体15を、上述のバケット212に供給することによって回転駆動される。図15に模式的に示すように錘体15を回転輪210の高さ方向中間部に配置されたバケット212の内部に開口部212aを通して導入すると、この錘体15の分だけ重量バランスが崩れるために回転輪210は時計回りに回転し、やがて、バケット212が斜め下方を向くようになると、開口部212aを通して錘体15が排出される。したがって、このような錘体15の供給と排出を繰り返すことによって回転輪210に繰り返し回転駆動力を付与することができる。
次に、上記の図16とともに、図19乃至図21を参照して、上記計時機構200の動作について説明する。なお、回転輪210は上述のように図示時計周りには回転自在に軸支され、図示反時計周りには逆転防止レバー218によって回転しないように構成されている。したがって、以下の説明では、図示例では時計周りで示される正規の方向の回転を順回転とし、その反対方向の回転を逆回転ということにする。図19乃至図21は、計時機構200の正面図であり、各図は順に時間の経過とともに変化する状態をそれぞれ示すものとなっている。
最初に、図16に示すように、回転輪210が停止している状態では、回転輪210は基準停止位置にある。この基準停止位置は、第1レバー213の先端部による逆回転方向への復元力と、逆転防止レバー218の逆回転防止のための規制作用とによって位置決めされる。すなわち、第1レバー213が回転輪210(第2係合部位211Ay)に対して逆回転方向に(図示下方から)当接し、逆転防止レバー218が後方係合部位211Bxに対して順回転方向に(図示斜め下方から)当接することにより、両レバー213,218によって回転輪210が回転方向に位置決めされた状態にある。上記の第1レバー213による復元力は、第1レバーの支点両側の重量バランスやリンク215を介した第3レバー216による反力をも加味した重量バランスによって発生する。この復元力を調整するために、第1レバー213の基端部に錘を取り付けてもよい。
上記の基準停止位置では、第2レバー214は第1係合部位211Axに係合可能な係合姿勢にある。この係合姿勢とは、第2レバー214の先端部が回転輪210の外周部に接近した姿勢であり、より具体的には、第2レバー214の先端部が第1係合部位211Axの通過軌道上に配置されていることを言う。このように第2レバー214が係合姿勢にあるとき、回転輪210が順回転しても、第1係合部位211Axが第2レバー214の先端部に当接すると、回転輪210のそれ以上の順回転は不可能になる。
上記の基準停止位置では第2レバー214が係合姿勢にあるけれども、この基準停止位置において第1係合部位211Axが第2レバー214の先端部に当接しているわけではなく、実際には、基準停止位置から所定角度分だけではあるが順回転方向に回転輪210が回転可能な状態となっている。すなわち、上記所定角度分とは、基準停止位置と、第1係合部位211Axが第2レバー214の先端部に当接し、係合する位置との間の回転輪210の回転角度である。
したがって、図16に示す基準停止位置においては、回転輪210を何らかの回転駆動力、例えば、上記のバケット212に導入される錘体の重量に起因する回転駆動力によって順回転方向に回転させることができる。このように回転輪210が順回転すると、図19に示すように、第1レバー213の先端部は回転輪210(第2係合部位211Ay)によって押し下げられ、これによって連動リンク215を介して第3レバー216が回動する。すなわち、第3レバー216の基端部が下降し、その先端部は逆に上昇する。このとき、可動フック217の先端フック部は第2レバー214の先端部に係合しているので、第3レバー216の回動によって第2レバー214が回転輪210から離反されるように持ち上げられる。そして、これによって第2レバー214は非係合姿勢となる。この非係合姿勢とは、第2レバー214の先端部が第1係合部位211Axの通過軌道上から外れた状態を言う。すなわち、第2レバー214が回転輪210の回転を阻止することができない姿勢である。
上記のように第2レバー214が非係合姿勢に設定されることによって、第1係合部位211Axは第2レバー214の内側を通過し、回転輪210はさらに順回転方向に回転し続ける。そして、そのように回転輪210がさらに順回転すると、第1レバー213はさらに押し下げられ、これによってリンク215を介して第3レバー216がさらに回動する。このように第3レバー216がさらに回動すると、可動フック217もまたさらに回転輪210から離反するので、やがて可動フック217から第2レバー214の先端部が外れ、図20に示すように第2レバー214の先端は回転輪210に向けて落下し、上記の係合姿勢に復帰する。
なお、第2レバー214が非係合姿勢から係合姿勢に復帰する前に、回転輪210の順回転により、第1係合部位211Axの一つは第2レバー214の先端部による規制位置を越える。そして、当該規制位置を越えてから第2レバー214が上記のように係合姿勢に復帰する。したがって、一つの係合部位を越えてから第2レバー214が係合位置に戻るため、係合部位一つ分(1歯分)だけ回転輪210の回転が許容されることとなる。
次に、回転輪210がさらに回転すると、第1レバー213は回転輪210(第2係合部位211Ay)に係合する角度範囲を越えるので、回転輪210から外れ、その後、図21に示すように、元の位置(回転輪210が基準停止位置にあるときの位置)に向けて復帰し始める。この過程で、リンク215を介して第3レバー216が復帰動作を開始し、その先端部は回転輪210に向けて移動を開始する。この途中で可動フック217は係合姿勢にある第2レバー214の先端部に当接するが、可動フック217は第3レバー216に対して回動可能に連結されているので、図21に示すように、第2レバー214の先端部の形状に追従して回動し、第2レバー214の係合姿勢には影響を与えない。
上記の過程において、第1レバー213が回転輪210から外れた後、元の位置に復帰する前までの期間において、回転輪210は基本的に第1レバー213及び第2レバー214に係合しておらず、上記の第1レバー213による回動負荷が存在しない状態で回転し続けることになる。したがって、この期間において回転輪210に与えられる回転駆動力が低下しなければ、回転抵抗が低下することから回転速度が上昇することが考えられる。このため、本実施形態では、少なくともこの期間において逆転防止レバー218の先端部を係合部211Bに上方から軽く当接した状態とし、逆転防止レバー218が回転輪210を制動するように構成されている。この逆転防止レバー218の制動作用による回転負荷は、第1レバー213による回転負荷と交代的に生ずるように構成されている。すなわち、第1レバー213による回転負荷が消失する時点で逆転防止レバー218の回転負荷が発生するように構成され、これによって回転輪210には常に所定の回転負荷を受けた状態で回転するため、その回転速度を安定させることができる。ここで、上記二つの回転負荷はほぼ等しいことがより望ましい。ただし、両回転負荷が異なっていても回転輪の回転速度の安定には寄与できる。また、両回転負荷が交代的に回転輪210に与えられなくても、例えば、両回転負荷が重複して与えられる期間が存在しても、或いは、両回転負荷のいずれもが与えられない期間が存在しても、逆転防止レバー218の回転負荷による回転輪210の回転速度の安定化効果自体は得られる。
そして、最終的には、第1レバー213が元の位置に復帰し、可動フック217も第2レバー214の先端部に係合した状態となり、図16に示す元の状況に復帰する。そして、このときに回転駆動力が消失していれば、回転輪210は、第1レバー213の復元力と、逆転防止レバー218の係合力とによって上記の基準停止位置に保持される。
本実施形態では、図19に示すように第2レバー214が非係合姿勢になっている状態で、脱進機構が追随できないほどの回転速度で回転輪210が回転したとき、回転輪210の2歯送りが発生するように思われるが、実際には、回転輪210の駆動による第1レバー213の順動作途中で図20に示すように第2レバー214が係合姿勢に復帰するので、回転輪210がどのように高速回転しようとも、係合姿勢に復帰した第2レバー214によって回転輪210の2歯送りが阻止される。すなわち、回転輪210が高速回転すればするほど、それによって動作する第1レバー213の動作速度も速くなり、その途中で第2レバー214が係合姿勢に復帰するから、タイミング的に2歯送りが発生することはない。これに対して、第1レバー213の順動作完了時或いはその後の復帰動作中に第2レバー214が係合姿勢に戻るようにすると、回転輪210の回転速度によっては2歯送りが発生する可能性が生ずる。
以上説明した計時機構200には、図1乃至図3に示すように、回転輪210の回転軸に接続された指針駆動用の輪列220が接続され、この輪列220によって文字盤230の前方に配置された指針231,232が駆動されるように構成されている。
回転輪210は、上述の錘体持上機構100から供給される錘体15によって駆動される。すなわち、錘体持上機構100の駆動体110が回転することによって錘体15は徐々に上方へ持ち上げられ、やがて保持枠113Aの導出口113Ay(上方位置)から排出され、導出ガイド133を通過してほぼ水平姿勢とされたバケット212に供給される。このバケット212は回転輪210の回転軸とほぼ同じ高さに配置されている。バケット212に開口部212aを通して錘体15が供給され収容されると、回転輪210の重量バランスが崩れて回転輪210は前述の如く回転を始め、回転輪210が一歯分回動すると、バケット212が傾くことによって錘体15が開口部212aを通して排出される。排出された錘体15は導入ガイド132を通過して錘体持上機構100の導入口113Ax(下方位置)へ戻される。
図22は、回転輪210のバケット(容器形状を有する受部材)の形状、並びに、当該バケットへの錘体の供給及びバケットからの錘体の排出を示す図である。ここで、図22(a)は従来の水運儀象台の枢輪に取り付けられているものと同様のバケット2を示す斜視図であり、図22(b)〜(d)は本実施形態の改良されたバケットを示す斜視図である。また、図22(A)〜(C)は図22(b)〜(d)のバケットを用いたときの錘体の供給及び排出を示す説明図である。
図22(A)に示すように、錘体15は、錘体持上手段100から導出された後に導出ガイド133を経てバケット212に供給され、これにより錘体15の重量によって回転輪210が回転する。そして、回転輪210が角度θだけ回転した時点で、バケット212から錘体15が排出され、導入ガイド132を経て錘体持上手段100に戻される。ここで、一つの錘体15がバケット212に供給されることによって回転輪210が一歯分回転するように構成する場合には、上記の角度θは、回転輪210の間欠動作の一周期とほぼ等しい角度に設定する必要がある。また、錘体の重量によって生み出される回転輪210の駆動力を高めるには、錘体を収容した状態で回転するバケットの角度範囲が回転輪210の軸線とほぼ等しい高さにある角度位置を含むように設定する必要がある。
このとき、図22(a)に示すように上部開口部のみが設けられてなる箱形状を有するバケット2では、バケット2に対して錘体を導入することのできる導入角度及び錘体を導入可能なバケット2の角度位置が制限されるとともに、バケット2がかなり傾斜した姿勢にならないと錘体を自然に排出することができない。したがって、錘体の供給から排出に至る回転輪210の角度範囲が回転輪210の軸線とほぼ等しい高さにある角度位置から大きくずれることになるために駆動効率が低下したり、錘体を急角度でバケット2に導入せざるを得ないために導入時の錘体の落差による錘体の位置エネルギーの損失が大きくなったり、或いは、錘体の供給から排出までの回転輪210の角度範囲θが大きくなり回転輪210の歯数を増やすことができなくなったりする。
ここで、角度範囲θを小さくするには、上記の水運儀象台のように回転輪に対して個々のバケット2を回動可能に構成する必要があるが、このような構成は、回転輪の構造を複雑にし、場合によっては水運儀象台のように脱進機構をも複雑化させる。さらに、バケット2には回転輪210の外周側に外側壁が存在するため、この外側壁が段差となってバケット2に対するスムーズな錘体の出し入れを阻害する。
また、上記のバケット2を固定した状態で角度範囲θを小さくする方法としてバケット2の側壁を低くすることが考えられるが、側壁を低くすると、既定の角度位置以外の角度位置において、或いは、外周側の側壁以外の部分(例えば内周側の側壁)から、バケット2から錘体が落下する危険性が大きくなり、この危険性を低減しようとすれば、錘体をゆっくりと穏やかにバケット2への導入するために錘体の導入構造に制約が生ずる。また、錘体のバケット2からの落下を防止するために大きな錘体を用いることができなくなるため、回転輪の駆動力を充分に得ることができなくなるという欠点もある。
一方、本実施形態のバケットは、回転輪210の回転方向逆側(図22では図示上側)から外周側まで連続する開口部212aが設けられている。例えば、図22(b)に示すバケット212においては、上記開口部212aによって外周側が完全に開放された形状(バケットの外周側の外側壁が完全に除去された形状)を有する。より具体的には、バケット212は、全体として立方体形状を有し、底壁(底面部)212b、内側壁(背面部)212c、側壁(側面部)212dを有するが、外側壁が形成されていない。したがって、図22(A)に示すように、錘体15の出し入れを円滑に行うことができるとともに、錘体15がバケット212内に収容されている回転輪210の角度範囲θは、回転輪210の軸線と同じ高さにある角度位置を含む範囲となるため、錘体15の重量を効率的に利用することができ、高い駆動力を得ることができる。また、錘体15の供給から排出に至る回転輪210の角度範囲θを小さく設定することができるため、回転輪210の歯数を支障なく多く設定することができる。
また、図22(c)に示すバケット212′では、底壁212b′によって構成される内底面の外周側に、開口部212a′の外周側部分に向けて上方に傾斜した傾斜面212gが設けられている。なお、内側壁212c及び側壁212dはバケット212と同様である。このバケット212′では、傾斜面212gが外周側底面部分に形成されているので、図22(B)に示すように、錘体15の導入及び排出をよりスムーズに行うことができる。また、この傾斜面212gの存在によって、一旦バケット212内に導入された錘体15が、内側壁212cに衝突した反動などにより正規の排出時点より前に外周側へ飛び出すといったことを抑制できる。また、傾斜面212gの存在により、ゆっくりと錐体を排出できるようになる。
上記の傾斜面212gの底壁212b′の内底面に対する傾斜角度は、上記角度範囲θに大きく影響する。したがって、傾斜面212gの傾斜角度を変更することによって、角度範囲θを調整することができる。例えば、他の条件(例えば、回転輪に対するバケットの取付角度、バケットの導入角度位置、バケットの寸法、錘体の寸法など)が同一であれば、バケット212に較べてバケット212′は上記の傾斜角度分だけ大きくなる。
図22(d)に示すバケット212″では、基本的には上記のバケット212と同様に開口部212a″を備えた容器形状に構成されているが、開口部212a″の外周側部分の開口縁(すなわち、底面の外周縁)に、底壁212bから上方へ突出する微小な突起部212pが設けられている点で相違する。この突起部212pが存在することによって、図22(C)に示すように、一旦バケット212″に導入された錘体15が、内側壁212cに衝突した反動などにより正規の排出時点よりも前に外周側へ飛び出すといったことを抑制できる。また、突起部212pの存在により、ゆっくりと錘体を排出できるようになる。
上記の突起部212pの高さ、或いは、突起部212pの高さの側壁の高さに対する割合は、上記角度範囲θに大きく影響する。したがって、突起部212pの上記高さ若しくは上記割合を変更することによって、角度範囲θを調整することができる。例えば、突起部212pの高さと、底壁212bと錘体の重心位置との距離の大小関係によって角度範囲θが決定される。
なお、図22(c)に示す傾斜面212gと、図22(d)に示す突起部212pとを共に設けることも可能である。すなわち、バケットの内底面の外周側に傾斜面を形成し、さらに、この傾斜面の外縁から上方へ突出する突起部を形成する。このようにすることにより、錘体の出し入れを妨げずに、錘体をゆっくりと安定した態様で排出させることができる。
以上説明した本実施形態では、錘体持上機構100の渦巻き状の駆動体110が回転するとともに上方位置から錘体15が案内板112の内側において上方へ徐々に上昇し、導出ガイド133を経て計時機構200の回転輪210の外周に設けられたバケット212に供給され、回転輪210が回転してバケット212から錘体15が導入ガイド132を経て再び下方位置において駆動体110へ戻るといった経路を循環する。そして、回転輪210は錘体15の供給の度に一歯ずつ送られ、計時を行う。したがって、回転装置或いは時計1000は単なる時計機能を有するだけでなく、からくり時計として高い鑑賞性を有するものであり、機械動作の醍醐味を存分に表現することができる。
次に、図23乃至図25を参照して、本発明に係る別の実施形態の構成について説明する。この実施形態では、回転輪210に設けられたバケット(受部材)及び上記係合部位のうちの一部のみが先に説明した実施形態と相違するだけであるので、この相違点のみを以下に説明し、他の構成については説明を省略する。
図23は、本実施形態の回転輪310の構造を示す概略斜視図である。この回転輪310においては、上記の回転輪210と同様に、軸線方向両側に配置された支持板310Aと310Bに対して外周に沿って配列された複数のバケット(受部材)312が固定されている。より具体的には、バケット312の左右側部には取付部312y,312zが設けられ、これらの取付部312y,312zが支持板310Aに設けられた被取付部(図示例では孔)311aと、支持板310Bに設けられた被取付部(図示例では孔)311bとにそれぞれ嵌合した状態で固定されている。支持板310Aの外周部には上記と同様の第1係合部位311Axが形成され、支持板310Bの外周部には上記と同様の後方係合部位311Bxが形成されている。
図24は、上記バケット312の概略斜視図である。このバケット312は容器形状部と、この容器形状部の左右両側に設けられた取付片部とを有する。容器形状部は全体としてほぼ直方体形状になっていて、底面部312b、背面部312c、左右の側面部312dを有し、上面及び正面の部分が連続して開口し、開口部312aを構成している。このバケット312は、その正面側が上記回転輪310の外周側に向く姿勢で固定されている。底面部312bの内底面のうち、その正面側の部分は先の実施形態で説明したものと同様の傾斜面となっている。また、底面部312bの正面側の外縁に先の実施形態と同様の突起部を設けてもよい。
側面部312dの外側には取付片部312e,312fが設けられている。取付片部312eの正面側の部分は先の実施形態の係合部の一部を構成する第2係合部位312xとなっており、また、取付片部312eの側縁には、支持板310Aの被取付部311aに固定される取付部312yが設けられている。一方、取付片部312fの側縁には、支持板310Bの被取付部311bに固定される取付部312z,312zが設けられている。
上記バケット312は、一体の板状材を用いた一体成形品として構成されている。すなわち、プレス加工や鍛造などの塑性加工、鋳造や射出成形などの注入型成形加工、切削加工などの各種成形方法によって一体に成形された部品となっている。より具体的には、本実施形態のバケット312は、一体の金属板などの板状材を折り曲げ加工することによって形成されている。
図25には、本実施形態のバケット312の展開形状を示す。図25に示す一体の板状材312Pは、プレスの打ち抜き加工などによってきわめて容易に形成できる。この板状材312Pにおいては、底面部312bと背面部312cとが連設され、背面部312cと左右の側面部312d,312dとが連設され、底面部312bと左右の取付片部312e,312fとがそれぞれ連設されている。この板状材312Pに対しては、底面部312bに対して背面部312cをほぼ直角に折り曲げ、背面部312cに対して左右の側面部312d,312dをそれぞれほぼ直角に折り曲げることにより、開口部312aを備えた容器形状が構成される。ここで、底面部312bの正面側に設けられた傾斜面を構成する部分は、底面部312bを僅かに折り曲げることによって構成され、左右の側面部312d、312dの間に配置される。
この実施形態のバケット312においては、容器形状部と取付片部312e,312fとが一体に構成されていることにより、回転輪310の部品点数を低減することができるので、組立作業の容易化や製造コストの低減を図ることができる。また、バケット312に第2係合部位312xを一体に設けることで、バケット312の容器形状部と、脱進機構に対して作用する係合部との位置関係若しくは角度関係が一義的に定まるので、両者に対する位置決め作業を何等行わなくても回転輪310の動作を確実に行わせることが可能になる。
[回転輪の回転動作]
最後に、本実施形態の作用効果を明確化するために、本実施形態と異なる構成を有するバケットを備えた回転輪について説明する。本実施形態においては、回転輪を脱進機構の係合によって間欠動作させるようにしているが、回転輪の1又は複数のバケットに錘体が常時配置されていると、常に回転輪に駆動トルクが与えられている状態となるので、脱進機構により回転輪にブレーキをかける必要があり、駆動効率が低下する。このため、上記各実施形態では、回転輪に対して錘体の重量が間欠的に及ぼされるようにしている。すなわち、錘体が回転輪のバケットに投入され、所定の角度範囲に亘って配置された後、錘体がバケットから脱落して、回転輪に錘体が存在しなくなるといったサイクルを繰り返すように構成されている。この場合、回転輪のバケットに錘体が配置されない期間があればよく、回転輪に同時に配置される錘体の数は1つでも2つ以上でも構わない。このようにすると、回転輪が脱進機構により停止しているタイミングでは錘体の重量が回転輪に及ぼされていないので、間欠回転のサイクル毎に回転輪に加えるブレーキ力を低減できるため、駆動効率を高めることができる。
上記のように構成したとき、バケットが等角度間隔で配置されることを前提とすれば、回転輪におけるバケットの数が少なすぎると、錘体がバケットに配置されている角度範囲が大きくなるため、大きな角度範囲θにおける駆動トルクの変動が大きくなるとともに、錘体の重量を回転輪の駆動トルクに効率的に変換することができなくなる。したがって、バケットの数nは4以上(すなわち、バケットの配置角度間隔は360度/4=90度以下)であることが好ましく、6以上(すなわち、バケットの配置角度間隔は360度/6=60度以下)であることが望ましい。この場合、間欠動作の1周期において回転輪に錘体が配置されている角度範囲はバケットの配置角度間隔以下であることが必要であるが、通常は上記角度範囲が配置角度間隔よりも小さくなり、バケットの配置角度間隔から錘体が配置されている角度範囲を差し引いた角度が空転角度、すなわち、回転輪に駆動トルクが加わっていない状態で(惰性で)回転する角度となる。
図26には、上述のジュネーブ時計博物館に展示されているからくり時計の回転輪の外周に設けられた凹部と同様の構成を有するバケット(受部)3を備えた回転輪の構造を模式的に示す。この場合、バケット3は、回転輪の半径方向外側に開口した容器形状を有しているので、錘体15を投入しやすい角度位置としては最上部に位置する角度位置が挙げられるが、実際には、回転輪は錘体15の重量による回転中心の左右のアンバランスによって駆動トルクを生ずるように構成されているので、バケット3が最上部の近傍にあるときにはほとんど駆動トルクが生じない。また、このバケット3では、上記の角度位置から回転輪が角度φだけ回転したときに錘体15がバケット3から排出されるか否かは、錘体15の重心位置を通過する垂直線の錘体15の外面位置との交点と、バケット3の側壁縁と錘体15の外面との交点の位置関係によって決定される。すなわち、バケット3の底面を基準として計測した、図示のバケット3の側壁高さKと、錘体15の重心位置を通過する垂直線の錘体15の外面位置との交点の高さLとの大小関係によって錘体15のバケット3からの排出位置が決まる。
したがって、このバケット3では、その側壁を高くすると錘体15が排出される角度φが90度に漸近していくので、錘体15の重量により発生する回転輪の駆動トルクを大きくしようとすれば、その側壁高さKを高くしなければならないが、それでも、角度φが90度を越えるように設定することはできないので、駆動効率を高めることが難しい。
これに対して、図27に示すバケット4では、回転輪の回転方向逆側に開口した容器形状を備えているので、上記角度φが90度の前後にわたる範囲において錘体15を保持し続けることができる。したがって、錘体15の重量により発生する駆動トルクを大きくすることができ、駆動効率を高めることができる。しかしながら、このバケット4では、側壁を低くすると、錘体15の回転輪への供給時において錘体15がバケット4から落下してしまう恐れが高くなり、逆に側壁を高くすると、錘体15が排出される位置が角度φ=90度から離れ、φ=180に近くなるので、駆動効率が低下してしまう。したがって、上記のような問題を回避するには、本実施形態の上記バケットのように、回転輪の回転方向逆側から外周側に亘って連続して開口する容器形状を採用すればよい。これによって、錘体15の安定保持と、駆動効率の向上とを両立できる。
尚、本発明の回転装置或いは時計は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記錘体15は球体であるが、例えば、錘体持上機構100や計時機構200に対する錘体の供給時や排出時の転がり方向を制御できれば、円柱体や円筒体であってもよい。また、錘体を摺動させて移動させるようにすれば、上記以外の任意の形状であってもよく、さらに、細かな粒体の集合物や液体であっても構わない。
また、上記錘体持上機構は、上述のように駆動面の渦巻き形状の軸線が水平方向に設定される場合に限らず、当該軸線が傾斜するように設置されていてもよく、この場合には錘体を傾斜方向に持ち上げることができる。
さらに、上記計時機構は、基本的に水平方向に設置された回転軸を有する回転輪に対して、重力作用によって動作する各レバーを装備しているが、このような態様に限らず、水平方向とは異なる方向に設置された回転軸を有する回転輪を備えたものであってもよく、また、各レバーは、重力以外の応力、例えばばねなどの弾性部材による弾性力などで動作するものであってもよい。また、上記回転輪には第1係合部位211Ax、第2係合部位211Ay及び後方係合部位211Bxが設けられ、これらの異なる係合部位に第1レバー213、第2レバー214、逆転防止レバー218がそれぞれ係合するように構成されているが、これらの各係合部位は適宜に共通のものとすることも可能であり、或いは、同一の係合部の異なる部分に異なるレバーが係合するように構成してもよい。いずれにしても、上記の各レバーは回転輪110の適宜の係合部位に対して回転方向に係脱可能に係合しさえすればどのような係合構造であっても構わない。
1000…回転装置或いは時計、100…錘体持上機構、110…駆動体、111A,111B…渦巻き状帯材、112…案内部材、113A,113B…保持枠、15,115…錘体、132…導入ガイド、133…導出ガイド、200…計時機構、210,310…回転輪、212,312…バケット(受部材)、212a…開口部、213…第1レバー、214…第2レバー、215…リンク、216…第3レバー、217…可動フック、218…逆転防止レバー、220…輪列、230…文字盤、231,232…指針、300…装飾部材