近年、無線LAN(Local Area Network)によるデータ通信を可能とする電子機器が普及しつつあり、多くのメーカが無線LAN関連機器の販売を開始している。無線LANは、従来の有線LANとは異なり、LANケーブルの敷設、配線が不要であるため、ネットワーク機器の配置場所に関して自由度が高いという利点を有し、また、比較的高速なデータ送受信も可能である。
こうした無線LANの利点のために、一部に無線LANを取り入れたネットワーク・システムを採用する企業も現れ始めている。また、駅構内や喫茶店といったエリアで、無線LANを利用したインターネット接続サービスも提供されるようになってきている。
現在、このような無線LANの規格の一つに、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11がある。この規格にはさらに、利用周波数帯や伝送方式等の違いにより、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g等がある。
これらの規格に従って電子機器間でデータの送受信を行うには、両方の電子機器に対して事前に一定の設定をしておくことが必要である。その設定には、例えば、無線LANでネットワークを識別するためのESS−ID(Extended Service Set−IDentification)や、通信方式を指定するモード(インフラストラクチャ・モード、またはアドホック・モード)等が含まれる。これらの設定内容は、データの送受信を行う両方の電子機器の間で一致していなければならないものが多く、これらが一致していない場合は通信ができない。ここで、ESS−IDは、BSS−ID(Basic Service Set IDentification)を文字列で定義したものであり、BSS−IDは、無線LANの基本ネットワーク構成を表す識別子である。
ここで、図17ないし図23を参照して、従来の無線LANによる接続方式について説明する。図17は、IEEE802.11規格の無線LANによるネットワーク接続を表した略線図であり、ここではインフラストラクチャ・モードを前提として記載がされている。無線LANによる通信は、アクセスポイント機器141(以降、単にアクセスポイントと称する)とステーション機器143A、143B(以降、ステーション機器は、単にステーションと称し、例えば、複数のステーション143A、143Bは、必要に応じてステーション143と総称する)で行われる。アクセスポイント141は、ステーション143から無線でデータを受信し、そのデータを他のステーション143や、(有線ネットワーク146を介して)上流回線、即ち、WAN(Wide Area Network)/Internet145等にパケット転送する。一方、ステーション143は、基本的には移動局として機能し、対応するホスト142A、142B(以降、必要に応じてホスト142と総称する)から受信したデータをアクセスポイント141に無線伝送し、逆にアクセスポイント141から受信したデータをホスト142に提供する。
ここで、アクセスポイント141は、分散した複数のBSS(Basic Service Set)同士の中継機能をもつステーションであり、基地局とみなすことができる。一方、ステーション143は、上記アクセスポイント141を除いた、端末などの無線局をいう。
ステーション143は、例えば、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)等のPC(Personal Computer)カードであり、各ホスト142のPCMCIAのカードスロットに挿入されることによりホスト142に接続される。
アクセスポイント141は、図17に示すように、複数のステーション143と通信することも可能であり、また、ステーション143は、アクセスポイント141を介さずにステーション143同士で直接通信することができる。IEEE802.11では、前者の通信方式をインフラストラクチャ・モード、後者をアドホック・モードと称している。
アクセスポイント141やステーション143が互いに通信する際には、共通の設定値によって設定が行われていなければならない。アクセスポイント141の場合、設定は、例えば、有線ネットワーク146を介して接続されている設定端末144上で起動される設定用ユーティリティを用いて行われる。この設定用ユーティリティによって、設定値のデータが有線ネットワーク146を介してアクセスポイント141に提供され、後述するアクセスポイント141のメモリが書き換えられ、結果的に設定値の内容が保存される。ステーション143の場合は、例えば、ステーション143が装着されているホスト142上で起動される設定用ユーティリティを用いて、あるいは、ホスト142上で稼働するデバイスドライバの設定値を操作することで設定することができる。設定端末144上で起動される設定用ユーティリティによる設定画面、およびホスト142上で起動される設定用ユーティリティによる設定画面については、後で、図21を参照して説明する。
次に、従来のアクセスポイント141の構成を図18に示すブロック図を参照して説明する。アクセスポイント141は、アンテナ150、RF(Radio Frequency)モジュール151、BB(Base Band)モジュール152、MAC(Media Access Control)モジュール153、メモリ157、およびWANインタフェース(I/F)158を備え、さらに、MACモジュール153は、物理インタフェース(I/F)154、メモリコントローラ155、およびイーサネット(登録商標)コントローラ156を含んでいる。
アンテナ150で受信された信号はRFモジュール151に渡され、そこで、I/Q信号に書き換えられる。このI/Q信号は次に、BBモジュール152に送信され、そこでディジタル化が行われる。ディジタル化されたデータは、物理I/F154を介してMACモジュール153に提供され、イーサネットコントローラ156およびWAN・I/F158を経由して、例えば、図17の有線ネットワーク146に提供される。その後、当該データは、有線ネットワーク146に接続されたパーソナル・コンピュータや、WAN/Internet145上の他のコンピュータ等に送信される。メモリ157には、前述のように、設定用ユーティリティによって設定された設定値等が記憶され、メモリコントローラ155は、メモリ157に対するデータの入出力を制御する。
逆に、有線ネットワーク146に接続されたパーソナル・コンピュータや、WAN/Internet145上の他のコンピュータから、アクセスポイント141を使用して無線LANにデータを送出する場合には、上記とは逆の手順で処理が行われる。また、アクセスポイント141は、これらの手順を用いて、ステーション143から受信したデータを他のステーション143に送信することもできる。
次に、従来のステーション143の構成を図19に示すブロック図を参照して説明する。ステーション143は、アンテナ160、RF(Radio Frequency)モジュール161、BB(Base Band)モジュール162、MAC(Media Access Control)モジュール163、メモリ167、およびカードインタフェース(I/F)168を備え、さらに、MACモジュール163は、物理インタフェース(I/F)164、メモリコントローラ165、およびカードインタフェース(I/F)コントローラ166を含んでいる。
ステーション143における受信処理は、上述したアクセスポイント141の処理と同様のものである。最初に、アンテナ160で受信された信号はRFモジュール161に渡され、そこで、I/Q信号に書き換えられる。このI/Q信号は次に、BBモジュール162に送信され、そこでディジタル化される。ディジタル化されたデータは、物理I/F164を介してMACモジュール163に渡され、カードI/Fコントローラ166およびカードI/F168を経由して、そのステーション143が装着されているホスト142に提供される。このとき使用される設定値は、上述したように、装着されているホスト142上で起動される設定用ユーティリティによって、あるいは、ホスト142上で稼働するデバイスドライバによって設定され、設定された設定値は通常、ホスト142のメモリ(例えば、後述するメモリ171)内に保持される。
逆に、ステーション143から無線ネットワークにデータを送出する場合は、上記とは逆の手順で処理が行われる。
次に、ホスト142の構成を図20に示すブロック図を参照して説明する。ホスト142は、CPU(Central Processing Unit)170、メモリ171、キーボード172、ビデオコントローラ173、およびカードインタフェース(I/F)174を備え、これらは、相互にバス175を介して接続されている。ホスト142は、ステーション143を介して無線によりデータの送受信を行う電子機器であり、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)である。CPU170は、プログラムの指令に基づいて、ホスト142の各構成要素の動作を制御し、ステーション143を介して受信したデータの取り扱い、およびステーション143を介して送信するデータの生成に関して制御を行い、さらに、当該データを無線を介して送受信を行うために、ステーション143とのインタフェース制御を行う。
メモリ171は、無線接続のための設定値や上記プログラム等、必要なデータを記憶する。キーボード172は、ユーザから、ホスト142の動作についての指示を上記プログラムに伝えるための入力を受け付ける。図20には示されていないが、マウス等のポインティングデバイスも同じ目的のためにホスト142に備えられ得る。ユーザは、キーボード172の所定のキーを押下することにより、当該指示を入力する。また、後述する、図21Bのホスト設定画面の各入力エリアにデータを入力する用途にも用いられる。
ビデオコントローラ173は、表示内容を、ホスト142が備える、あるいはホスト142に接続されるモニタに出力するように、所定の形式のデータを準備し、所定の制御を行う。カードI/F174は、例えば、PCMCIAカードがスロットに装着された場合に、当該カードとの接続を確立する。この例では、ステーション143がPCMCIAカードとして提供されるので、ホスト142は、カードI/F174を介してステーション143と接続され、無線ネットワークを介したデータの送受信が行われる。
次に、図21を参照して、従来の無線LANの設定画面について説明する。図21Aは、図17に示す設定端末144で起動される設定ユーティリティによって表示されるアクセスポイント設定画面180を示しており、図21Bは、ホスト142で起動される設定ユーティリティによって表示されるステーション設定画面190を示している。図21Aのアクセスポイント設定画面180において、ESS−ID、WEP(Wired Equivalent Privacy)キー、認証タイプ、チャネルの設定値は、それぞれ対応する入力欄181〜184に入力される。図21Bのステーション設定画面190についても同様に、ESS−ID、WEPキー、認証タイプ、チャネルの設定値が、それぞれ対応する入力欄191〜194に入力される。ここで、WEPは、IEEE802.11における標準暗号化方式であり、暗号化アルゴリズムにRC4(Rivest Cipher 4)を使用している。この暗号化には、鍵となる英数字5文字(16進数で10文字)または13文字(16進数で26文字)を必要とし、この文字列をWEPキーと呼ぶ。
アクセスポイント設定画面180、およびステーション設定画面190にはさらに、ボタン群185、195がそれぞれ表示されている。各ボタンは、ユーザがマウスをクリックすること等により選択される。ボタンには、設定値をメモリに反映させるよう指示する「OK」ボタン、設定値の更新を行わないことを指示する「CANCEL」ボタン、設定値としてデフォルト値を用いるよう指示する「DEFAULT」ボタン、次の設定画面に移動するよう指示する「NEXT」ボタンがある。
次に、従来のホスト142の処理手順について、図22のフローチャートを参照して説明する。最初に、ステップS101において、ステーション143がホスト142のカードスロットに装着され、物理的に接続される。その後、ステップS102において、デバイスドライバ等が起動されて、例えば、割り込み識別信号の付与などが行われ、ステーション143がホスト142の周辺機器として認識される。ステップS103では、図21Bのステーション設定画面で設定した設定値がメモリ171から読み出され、ホスト142に対して適用される。この適用は、一般には、レジストリの値やデバイスドライバの持つ変数として格納されることが多い。この後、ステップS104においてアクセスポイント141とステーション143の間の接続処理が開始される。
図23のフローチャートは、アクセスポイント141の設定から無線LANによる通信を行うまでの手順を概念的に示したものである。最初に、ステップS111において、アクセスポイント141の設定を行う。この設定は、例えば、前述のように、有線ネットワーク146を介して接続された設定端末144を用いて行われる。次に、ステップS112で、そのアクセスポイント141を利用しようとする各ステーション143の設定を行う。この設定は、前述のように、ステーション143が装着されるホスト142を用いて行われる。
アクセスポイント141および各ステーション143の設定が終わると、ステップS113において、アクセスポイント141とステーション143の間で所定のフレームをやりとりして、アクセスポイント141とステーション143の設定値が一致するかどうかが判定される。ここで設定値が一致しない場合、ステップS116に進み、接続できないことが、アクセスポイント141の表示部やステーション143が接続されているホスト142のモニタ等に表示される。
ステップS113で、設定値が一致すると判定された場合は、ステップS114に進み、そこで、IEEE802.11に準拠した接続手順で接続処理が行われる。次に、ステップS115に進み、例えば、ホスト142上で稼働するアプリケーションが所定のデータを他のホスト142から受信し、または他のホスト142に送信するといった、上位層における処理が行われる。
前述のように、無線LANによる通信を行うためには、アクセスポイント141とステーション143でそれぞれ設定される所定の設定値については、内容を一致させておく必要がある。特許文献1には、このような設定ファイルの内容を、近距離無線手段であるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を用いてアクセスポイント141からステーション143にコピーするシステムが提案されている。
最初に、図1のブロック図を参照して、この発明の一実施形態の無線接続システムのネットワーク構成について説明する。ここで、第1の電子機器はアクセスポイントに対応し、第2の電子機器はステーションに対応する。ただし、第1の電子機器には、無線接続に関する設定値を保持するだけで無線通信手段を備えない電子機器も含まれ、第2の電子機器には、無線接続に関する設定値を保存する記録手段を有し、無線通信手段を備えない電子機器も含まれる。
図1の無線接続システムは、基本的には、図17を参照して説明したネットワーク構成と同様であるが、この発明では、アクセスポイント1がスロットを有し、ステーション機器3A、または3B(以降、必要に応じてステーション3と総称する)がそこに装着される。アクセスポイント1には、例えば、IEEE802.11に準拠する無線LANの接続用設定値が記憶されており、装着されたステーション3には、その設定値の内容がコピーされる。
ステーション3は、その後、ホスト2A、2B(以降、必要に応じ、ホスト2と総称する)のスロットに装着され、アクセスポイント1からコピーされた接続用設定値を用いてホスト2(ステーション3)とアクセスポイント1の間の接続処理が行われる。このような構成によって、ユーザは、多くの接続用設定値をホスト2に入力する煩雑さから開放される。また、当該接続用設定値は人手を介さないでステーション3によってホスト2側に提供されるため、常に正確であり、頻繁に設定値の変更があっても、設定ミス等によって接続不可となることはない。また、コピーされた接続用設定値は、ステーション3という物理装置の内部に記録され、ホスト2との直接接続によってホスト2に提供されるため、途中で接続用設定値の内容が漏洩するといった危険性が排除される。
接続用設定値は、従来と同様、設定端末4を用いて、管理者等によって入力されうる(例えば、図21Aのアクセスポイント設定画面180を使用して行われる)。しかしながら、従来行われていた、ホスト2を用いた設定値の入力(例えば、図21Bのステーション設定画面を使用するもの)は行われない。
ここで、ステーション3は、PCMCIAカード、Cardbusカード、CF(Compact Flash)カード、SD(Secure Digital)メモリーカード、メモリースティック(商品名)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、IEEE1394接続機器、FTTH(Fiber to the Home)接続機器、またはシリアル接続機器といった様々な機器で構成されうる。
図2は、この発明の一実施形態のアクセスポイント1の構成および機能を概念的に示した略線図である。図2は、ステーション3が、アクセスポイント1のスロット16に挿入されたところを示したものである。設定端末4を用いて管理者等によって設定された設定値は、接続用設定値14としてメモリに記録されている。アクセスポイント1はまた、有線ネットワーク6と接続するインタフェース17や、無線通信を行うためのアンテナ13を備えている。
ここで、アクセスポイント1のダウンロードボタン12を押下することにより、接続用設定値14の内容が、ステーション3内に接続用設定値15としてコピーされる。
また、当該実施形態の変形例として、アクセスポイント1はさらに、WEPボタン11を備えうる。WEPボタン11を押下すると、例えば、ESS−IDとWEPキーが、ランダムな値として作成され、接続用設定値14の当該項目をその値に書き換える。
図3は、図2のアクセスポイント1の構成を表すブロック図である。図3に示すように、アクセスポイント1は、アンテナ20、RFモジュール21、BBモジュール22、MACモジュール23、メモリ28、WAN・I/F30、およびスロット16を備える。また、MACモジュール23は、物理I/F24、メモリコントローラ25、イーサネットコントローラ26、およびカードI/Fコントローラ27を含んでいる。
図3に示すアクセスポイント1の構成は、図18に示す従来のアクセスポイント141と比べて、カードI/Fコントローラ27に接続されたカードスロット16を有する点で大きく異なる。
また、この発明では、接続用設定値14は、ダウンロードボタン12が押下された場合に、ステーション3にコピーされる必要があるため、アクセスポイント1が保持しておく必要がある。そこで、接続用設定値14は、図3に示すように、メモリ28内に保持される。前述のように、設定端末4から管理者によって入力された内容、またはWEPボタン11の押下によってランダムに設定された内容が、この接続用設定値14に記憶される。
アクセスポイント1はまた、ステーション3と物理的に直接接続するためのスロット16を備え、MACモジュール内のカードI/Fコントローラ27に接続される。従って、ユーザがアクセスポイント1のダウンロードボタン12を押下すると、メモリコントローラ25が、メモリ28から接続用設定値14を読み出して、カードI/Fコントローラ27に送信し、次に、カードI/Fコントローラ27は、接続用設定値14の内容をカードスロット16を介してステーション3に書き込む。
ここで、ステーション3は、例えば、PCMCIAカードと仮定しているが、接続用設定値14の内容を一時的に記録できる限り、前述のメモリスティックのような他の電子機器でも良い。従って、スロット16も、これに対応した様々なものが考えられる。例えば、Cardbusカードスロット、CFカードスロット、SDカードスロット、メモリスティックスロット、USBスロット、IEEE1394スロット、FTTHスロット、シリアル接続口等である。さらに、カードI/Fコントローラ27も、これに対応して別のコントローラとすることができる。
図4には、接続用設定値14のデータ構造の例が示されている。自動フラグ41は、ホスト2にステーション3が装着された場合に、ステーション3に格納されている接続用設定値を実際の接続の設定に用いるかどうかを指定するものである。自動フラグ41の内容が「手動」である場合は、ステーション3に格納されている接続用設定値は使用されずに、ユーザが設定値を手入力し、「自動」である場合は、ステーション3に格納されている接続用設定値がそのまま使用される。
ESS−ID42は、接続先の無線ネットワークの識別名を示すIDである。現状では、IEEE802.11規格におけるESS−IDの規定に従い、原則として32文字までの半角英数文字が格納されることを想定するが、これに限られるものではない。他の規格の無線通信や、規定の変更、実装時の独自拡張等にも対応することは可能である。
WEPタイプ(WEP type)43は、IEEE802.11規格で、一般的な暗号化方式WEPを用いるか否か、および、これを使う場合はどのフォーマットを使うかを示すフラグである。現在存在するフォーマットとしては、5文字のWEPキーを使用する40ビットWEPと64ビットWEP、8文字のWEPキーを用いる104ビットWEP、128ビットWEP、その他メーカ独自の拡張仕様で用いられる152ビットWEP、256ビットWEPなどが挙げられる。
WEPキー(WEP key)44は、WEPその他暗号化時の鍵となる文字列である。少なくとも40ビットWEPと128ビットWEPに対応させるためには、半角英数8文字を格納できるだけの領域が必要である。WEPタイプ43とWEPキー44は、暗号化方式としてWEPが採用される場合に用いられる。従って、別の暗号化方法を採用する場合には、その方式に応じた項目が設定されうる。
認証タイプ(Auth type)45は、IEEE802.11規格の無線LANで接続を行う際に必要な認証処理の方式の種別を示すフラグである。一般にはOpenKey認証とSharedKey認証の2種が知られており、通信を開始する機器同士が互いに同じ認証処理の方式を選択しないと、接続に失敗し通信を行うことはできない。
モード(mode:Infrastructure/Adhoc)46は、ステーション3の通信モードであり、前述のインフラストラクチャ・モードとアドホック・モードのどちらを用いて接続を行うかを示すフラグである。IEEE802.11規格では、この2つのモードにおける通信方式に若干異なる部分があるため、通信開始時には自身と通信相手の通信モードが一致しないと、通信を開始することは難しい。前述の通り、ネットワーク内にアクセスポイントがある場合がインフラストラクチャ・モードであり、ない場合がアドホック・モードである。
チャネル(channel)47は、接続時に優先的に使用する無線チャネルを示す。これはアドホック・モードにおける接続時に必須となる値である。
図4に示した接続用設定値14の各項目は、原則として設定が必須な最低限の項目であり、これに限定されるものではない。例えば、実際の接続の際にIEEE802.11用でなく接続時に必須ではない項目や、より上位層における接続を行う際に必要な設定値をここに併せて格納し、ホスト2側にダウンロードすることも考えられる。このような拡張の例については、図12に関連して後述する。
図5は、ステーション3の構成を示すブロック図である。ステーション3は、図19に示す従来のステーション143に比べて、メモリ57内に接続用設定値15を記録している点で相違する。従来のステーション143は、アクセスポイント141に物理的に直接装着される場合はなく、カードI/F168を介してホスト142に接続し、無線通信における送受信機能を提供するのみであった。しかしながら、この発明のステーション3は、メモリ57内に接続用設定値15を記録し、ホスト2に装着されたときに、接続用設定値15をホスト2に提供する。ホスト2は、無線LANの設定時に接続用設定値15として提供された設定内容を用い、接続処理を開始する。接続用設定値15に格納される各項目は前述した接続用設定値14と同様のものである。
図6は、図2に示すアクセスポイント1の接続用設定値14内のESS−ID、およびWEPキーが生成される態様を示したフローチャートである。最初に、ステップS1で、イベントが発生したかどうかが判定される。ここで、イベントとは、前述したように、有線ネットワーク6で接続されている設定端末4から管理者等が入力操作を行った場合や、アクセスポイント1のWEPボタン11が押下された場合等である。また、ステーション3がアクセスポイント1に装着された場合、一定の時間が経過した場合や、不正アクセスを検知した場合等のタイミングもこのイベントに含めるようにすることができる。尚、不正アクセスを検知した場合は、関連するステーション3の全てに、その旨を知らせるブロードキャストメッセージが送信されるように構成することも考えられる。
ステップS1で所定のイベントが発生したと判定された場合は、ステップS2において、ESS−ID、およびWEPキーの生成が行われ、ステップS3において、その生成された値が接続用設定値14に記録される。例えば、イベントが、有線ネットワーク6で接続されている設定端末4から管理者等が入力操作を行った場合は、入力された設定値を元に当該生成が行われ、WEPボタン11が押下された場合は、ランダム関数等を用いて得られたランダムな値が、ESS−ID、WEPキーとして設定される。
一方、ステップS1で所定のイベントが発生しなかった場合は、何もせずに処理を終了する。また、当該ステップS1の判定を少なくとも所定の時間繰り返すように制御することも可能である。
また、ESS−IDを生成するためのイベントと、WEPキーを生成するためのイベントを別に管理してもよい。この場合、「ESS−IDを生成するためのイベント」と「WEPキーを生成するためのイベント」が同時に発生した場合にそれぞれを生成するように制御しても良いし、どちらかのイベントが発生するたびに、対応する生成処理を行うようにしても良い。また、「ESS−IDの生成」と「WEPキーの生成」は、同時に行ってもよいし、個別に行っても良い。
さらに、図2に示すアクセスポイント1のWEPボタン11を、ESS−ID生成用のボタンとWEPキー生成用のボタンに分けるように構成し、ボタンが押下された場合は、対応する項目のみが生成されるように制御することもできる。また、他の項目を生成するのに、その項目に対応したボタンを個別に設定することもできる。
次に、ホスト2側の処理手順について、図7のフローチャートを参照して説明する。最初に、ステップS11において、ステーション3がホスト2のスロットに装着され、物理的な接続が行われる。その後、ステップS12において、デバイスドライバ等が起動され、例えば、割り込み識別信号の付与などを行い、ステーション3がホスト2の周辺機器として認識される。
ステップS13において、ホスト2(で起動されるデバイスドライバ等)が、ステーション3のメモリ57にアクセスし、接続用設定値15が記録されているかどうかを判定する。記録されていると判定した場合、処理はステップS14に進み、そこでさらに、自動設定を行うかどうかを判定する。これは、接続用設定値15の自動フラグ41(図4参照)の内容をチェックすることによって判定される。自動フラグ41が自動設定を行うことを示している場合、処理はステップS15に進み、ESS−ID等、その他の接続用設定値15が、メモリ57から読み出される。
次に、ステップS15における読み出しが成功したかどうかがステップS16において判定され、成功した場合、ステップS17に進む。ステップS17では、ステップS15で読み出された接続用設定値15がホスト2(ステーション3)に対して適用される。この適用は、一般には、レジストリの値やデバイスドライバの持つ変数として格納されることによって行われることが多い。この後、ステップS18においてアクセスポイント1とホスト2(ステーション3)の間の接続処理が開始される。
また、ステップS13において接続用設定値15が記憶されていないと判定した場合、ステップS14において自動設定を行わないものと判定した場合、およびステップS16において接続用設定値15の読み出しが成功しなかった場合は、手動で設定を行うしかないため、ステップS19で、ユーザに手動設定を行わせるべく手動設定画面を表示する。この手動設定画面は、例えば、ステーション3が装着されているホスト2の表示装置等に表示される。次にステップS20において、ユーザは、当該手動設定画面にESS−IDやWEPキーなどを手入力することになる。その後、ステップS17およびステップS18に進み、この手動で設定された設定値が適用され、接続処理が開始される。
次に、アクセスポイント1の処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。最初に、ステップS21で、アクセスポイント1の設定が行われる。これは前述のように、例えば、ユーザが設定端末4を使用して設定値を入力し、入力された設定値は、有線ネットワーク6を介してアクセスポイント1に提供され、接続用設定値14に記録される。ステップS22では、ユーザがステーション3をアクセスポイント1のスロット16に挿入する。その後、ステップS23で、ユーザがダウンロードボタン12を押下する。
アクセスポイント1は、このユーザの動作に応答して、ステップS24で、接続用設定値14に記憶されている設定値をステーション3のメモリ57に書き込む。次に、ユーザはそのステーション3をアクセスポイント1から抜き取って、ホスト2のスロットに挿入する。このとき、ステップS25において、ステーション3からアクセスポイント1に対して接続要求を行い、アクセスポイント1は、この要求に応じてステーション3との無線接続を開始する(ステップS26)。
ホスト2上で動作するアプリケーションからユーザが接続の終了を指示したような場合は、ステーション3からの接続終了要求がアクセスポイント1に送信され、アクセスポイント1はその要求を受信する(ステップS27)。アクセスポイント1は、ステップS27でステーション3から接続終了要求を受け取ると、ステップS28において、ステーション3との接続を停止する。
図9のフローチャートは、この発明の無線接続システムにおける処理手順をホスト2の動作を中心として概念的に示したものである。最初に、ステップS31で、ユーザがアクセスポイント1のダウンロードボタン12を押下したのに応じて、アクセスポイント1内に記憶されていた接続用設定値14がステーション3のメモリ57に接続用設定値15としてコピーされる。
この後、ユーザは、ステップS32で、ステーション3をホスト2に装着する。ホスト2は、ステップS32でステーション3が装着されたことを検知すると(あるいは、ユーザの指示により)、ステップS33で、デバイスドライバを起動し、ステーション3から接続用設定値15を読み出す、その後、図7に関連して説明したようないくつかの判定を行い、問題がなければ、読み出した接続用設定値15の内容に従って接続処理を開始する(ステップS34)。
この図9のフローチャートに対応する従来の手順は、図23に示されている。従来は、図23のステップS113で設定値が一致しないと判定され(ステップS113のNO)、ステップS116に進む割合が圧倒的に多かったが、この発明のよる図9のフローチャートでは、設定値が一致しないと言う事象の発生する余地は基本的にない。図9のフローチャートからも、無線接続の実現が飛躍的に容易になっていることが分かる。
次に、図10および図11を参照して、この発明の別の実施形態のアクセスポイント70について説明する。アクセスポイント70は、上述したアクセスポイント1の変形例の一つである。図10は、アクセスポイント70の構成および機能を概念的に示した略線図である。図10は図2と同様、ステーション3が、アクセスポイント70のスロット76に挿入されたところを示したものである。アクセスポイント70が、図2に示すアクセスポイント1と大きく相違する点は、アンテナを備えていないことである。アンテナを備えていないため、アクセスポイントとしての機能を果たさないが、ここでは便宜上、アクセスポイント70と称することとする。
また、この例では、上流回線に接続するネットワーク・インタフェース(図2のインタフェース17に相当)も備えていない。従って、アクセスポイント70は、アクセスポイント1のように設定端末4を介して設定を行うことができない。そのため、接続用設定値74の設定を行えるように(図10には示していないが)、キーボードやマウスなどの入力装置、および入力内容を確認するためのディスプレイやLED(Light Emitting Diode)などの表示装置を備えることが好ましい。
アクセスポイント70は、上述のように通信に関する機能がない以外は、アクセスポイント1と変わりがない。即ち、WEPボタン71を押下することによってESS−IDとWEPキーが作成されて、接続用設定値74に保存され、ダウンロードボタン72を押下することによって接続用設定値74が、ステーション3の接続用設定値75にコピーされる。
図11は、図10のアクセスポイント70の構成を表すブロック図である。無線通信機能および有線通信機能を有していないため、図3に示すアクセスポイント1の構成に比べて、当該各通信機能に関する構成要素がない。アクセスポイント70は、図11に示すように、、メモリコントローラ81、カードI/Fコントローラ82、メモリ83、およびカードスロット85を備え、メモリ83内には、接続用設定値75が記録される。
また、アクセスポイント70がWAN・I/Fを備えるように構成し、有線LANを介して設定端末と接続すれば、当該端末から設定を行って接続用設定値75の内容を定義することもできる。
アクセスポイント1のメモリ28に記憶される接続用設定値14、ステーション3のメモリ57に記憶される接続用設定値15、およびアクセスポイント70のメモリ83に記憶される接続用設定値75は、ESS−IDやWEPキーなど、基本的に同一の設定項目を有する。ここでは、これまで示してきた設定項目以外の項目をも有する拡張された接続用設定値90について、図12を参照して説明する。
接続用設定値90のうち、基本項目として示されている項目は、自動フラグ91からチャネル97までの各項目であり、これらは今までに示してきた接続用設定値の内容である。この基本項目は、接続時に必須の設定項目であり、無線通信を行う機器の間で共通のものでないと接続が行えない性質のものである。この例では、この基本項目に加え、802.11用オプション98、および上位層オプション99を含む。
802.11用オプション98としては、パワーセーブ(PowerSave)、プリアンブル(Preamble)、ローミング(Roaming)、BSSベーシックレート(BSS Basic Rate)等が挙げられる。これらは、接続自体の可否には影響しないが、通信品質(接続の質)に影響を与える項目である。
パワーセーブは、待ち受け時にカードを休止状態とすることで実現される省電力方式である。一定時間(例えば、100ms)ごとに数msほど休止状態から復帰するのが一般的である。プリアンブルは、802.11b用のプリアンブル(802.11ヘッダ)の形式を指定する。形式にはLongとShortがあり、Longは旧仕様(単に”IEEE802.11”であって、後ろにa/b/g等がつかないもの)との互換性のためだけに残されているもの。Shortを用いると伝送速度が若干(例えば、802.11bで約700kbps程度)速くなる。
ローミングは、これがイネーブル(enable)に設定されていると、一定時間毎にアクセスポイントやステーション等の接続相手の検索処理を行う。検索中(例えば、数100msないし数秒程度)は、接続が途切れる。BSSベーシックレートは、制御通信速度の設定に関するものであり、混雑時(制御通信環境下)での接続速度上限値を指定する。
一方、上位層オプション99としては、802.1x、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)、DNS−IP(Domain Name System-Internet Protocol)、アカウント/パスワード等が考えられる。これらの項目も、802.11用オプション98と同様、接続の可否には影響しないものであり、アプリケーション等の上位層における設定を行う場合に必要となる項目である。
802.1xは、802.11の上位層で、RADIUSサーバを用いた認証を行うか否かを指定する。DHCPは、IPアドレスをDHCPサーバから自動的に割り振るか否かを指定する。割り振りを行う場合は、IPアドレスの格納場所も必要になる。DNS−IPは、LAN内にあるDNSサーバのIPアドレスであり、LANから外部のネットワークに接続する際に必要となる。アカウント/パスワードは、喫茶店等で提供されるインターネット接続サービスなどで要求されるユーザのアカウントとパスワードを指定する。
このような追加の設定値のうち、例えば、802.11用オプション98内の項目、BSSベーシックレートを用いてホスト2の接続処理を行うと、アクセスポイント1から指定されたホスト2の最低保証レートが間接的にホスト2に伝えられ、ネットワーク・システム全体の混雑度を調整することもできる。即ち、アクセスポイント1は、現在の無線通信のトラフィック量を監視し、新たな無線通信の設定値を設定する場合、あるいは今まで通信していたステーション3の設定値を更新する場合に、全体のトラフィック量が適正値となるように調整して、これらの設定値のうち、BSSベーシックレートを設定することができる。また、これらのBSSベーシックレートをユーザが支払った利用料に基づいて調整するようにしてもよい。
さらに、接続の開始時に、例えば、プリアンブルをShortに、ローミングを不可(disable)に設定することにより、接続時のスループットを向上させることが可能となる。
次に、図13を参照して、図7に示したホスト2側の処理手順の変形例について説明する。図7に示した例では、ステップS13において接続用設定値15が記憶されていないと判定した場合、ステップS14において自動設定を行わないものと判定した場合、およびステップS16において接続用設定値15の読み出しが成功しなかった場合は、手動で設定を行うしかないため、ステップS19で、ユーザに手動設定を行わせるべく手動設定画面を表示するものであったが、この例では、ステップS43において接続用設定値15が記憶されていないと判定した場合、およびステップS44において自動設定を行わないものと判定した場合には、ステップS49において、自動設定ができなかった事由を示す画面を表示し、その後、ステップS51において、手動設定画面を表示する。
また、ステップS46において接続用設定値15の読み出しが成功しなかった場合は、ステップS50に進み、当該読み出しが成功するまで(あるいは、所定の回数だけ)読み出しのリトライを行い、成功しない場合は、ステップS51に進み、そこで手動設定画面が表示される。手動設定画面が表示された場合、ユーザはステップS52において設定値を入力する。
この発明では、図6で示したように、アクセスポイント1の接続用設定値14を所定のイベントが発生するたびに、ESS−IDやWEPキーが更新される構成をとりうるが、例えば、アクセスポイント1が、ユーザから所定の時間だけアクセスポイント1経由の無線接続サービスを利用するための支払い(対価)を受ける手段を有している場合に、その支払い済みの所定時間内に限り、ESS−IDとWEPキーが切り替えられるたびに、所定のステーション3にそれらを送信するといった構成をとることもできる。
所定のステーション3は、例えば、所定のBSS−ID(Basic Service Set-Identification)を有するステーション3である。ここで、BSS−IDは、MACアドレス同様、12桁の16進数で定義されるBSS(Basic Service Set:無線LANの基本ネットワーク構成)の識別子である。
従来は、例えば、RADIUS(Remote Authentication Dial-IN User Services)サーバを用いた802.1xによる制御を行い、セッションごとに異なるESS−IDとWEPキーを提供するものがあるが、この例では、接続可能なステーション3をアクセスポイント1自身が選択するものである。
上記のように構成したアクセスポイント1の処理を図14を参照して説明する。最初に、ステップS61において、何らかのイベントにより接続用設定値14が変更される。その後、ステップS62において、所定の停止時間を経過したかどうかが判断される。例えば、ユーザが10分間の無線接続を100円で購入していたとすると、所定の停止時間は10分となる。
ステップS62で経過していると判断された場合は、ステップS63に進み、そこでアクセスポイント1はステーション3との接続を停止する。ステップS62で経過していないと判断された場合は、ステップS64に進み、そこで、アクセスポイント1から変更された接続用設定値14が無線接続により送信される。その変更された接続用設定値14は、ステーション3で受信され、接続用設定値15としてメモリ57内に記録される。そして、そのステーション3に直接接続されているホスト2からの指示により、ステップS65で、ステーション3からアクセスポイント1に対して接続要求が行われる。この接続要求には、接続用設定値15の内容が用いられる。その後、ステップS66で、アクセスポイント1とステーション3の接続が開始される。
次に、アクセスポイント1が、無線接続の権利を販売する自動販売機の機能を有した場合の処理の例について、図15を参照して説明する。最初に、ステップS71において、アクセスポイント1の接続用設定値14が適当な値に設定される。次に、ステップS72において、ステーション3をアクセスポイント1のスロット16に挿入する。その後、ユーザは、ステップS73において、使用時間分のコインをアクセスポイント1に投入する。アクセスポイント1は、このようにコインを受け付ける手段を有しており、例えば、100円で10分までといった料金体系のもとにコインが投入される。このとき、アクセスポイント1は、投入されたコインの枚数に応じてステーション3の使用終了時間を設定し、(図4または図12には示していないが)接続用設定値14、90の適当な領域にその時間が記録される。
次に、ステップS74でダウンロードボタンが押下されると、ステップS75で、アクセスポイント1が、ステーション3のBSS−IDを読み取り、これを現在時刻、および接続停止時間(現在時刻と投入されたコインの枚数等から算出される)とともに所定の記憶箇所に記憶する。この後、ステップS76で、接続用設定値14、90の内容が、ステーション3のメモリ57に記録される。
ステップS77で、ステーション3から接続要求があると、アクセスポイント1は、ステップS78でステーション3との接続を開始する。ステップS79で、ステーション3の接続を停止させる時刻(停止時刻)が到来したかどうかを判定する。例えば、100円で10分までという料金体系において、ユーザが200円をアクセスポイント1のコイン投入口に投入した場合は、接続が開始されてから20分後の時刻が停止時刻である。
ステップS79で、停止時刻が到来していると判定された場合は、支払われた以上の接続サービスを提供する必要がないので、ステップS80において、アクセスポイント1とステーション3との接続を停止する。ステップS79でまだ停止時刻になっていないと判定された場合は、ステップS81に進み、そこで、接続終了要求があったかどうかが判定される。接続終了要求があった場合は、ステップS80に進んで、接続を停止し、接続終了要求がなかった場合は、ステップS82に進み、そこでさらに、設定値が変更されているかどうかが判定され、変更されている場合は、アクセスポイント1から変更後の設定値が無線接続によりステーション3に送られ、その後、ステップS77に進み、ステーション3からの接続要求を待つ。変更がされていない場合は、そのままステップS79に進み、所定の間隔で、停止時刻になったかどうかを判定する。
ここまで、この発明を説明するために、ステーション3を、PCMCIAカード型の電子機器として説明してきた。しかしながら、ステーション3は、このようなカード型の電子機器に実装されるものに限定されるべきではない。上述のように、少なくとも接続用設定値15を記録することができるメモリ部を有したCardbusカード、CFカード、SDカード、メモリスティック(商品名)、USB機器(メモリ)、IEEE1394接続機器、FTTH接続機器、シリアル接続機器等の様々な電子機器を使用することができる。
また、上記実施形態においては、ステーション3は、アンテナ50を有し、無線通信機能を有する構成を含んでいるが、こうした機能を有しない単なる可搬型の記録媒体であっても良い。こうしたステーション3を用いて実現した無線接続システムの例を、図16を用いて説明する。ホスト132A、132B(以降、必要に応じてホスト132と総称する)は、無線通信によってアクセスポイント131とデータの送受信を行う。ホスト132は、それぞれステーション133A、133B(以降、必要に応じて、ステーション133と総称する)を介してアクセスポイント131と無線通信を行う。
この例では、アクセスポイント131の接続用設定値15は、ステーション133を介してではなく、メモリカード134A、134B(以降、必要に応じてメモリカード134と総称する)を介してホスト132に提供される。メモリカード134から読み出された接続用設定値15は、ホスト132がステーション133を用いて無線接続を開始する際に使用される。
この実施形態の場合、ステーション133は、既存の製品をそのまま利用することができる。但し、アクセスポイント131から提供される接続用設定値15の項目についての記録位置、記録順、データ表現形式等が、既存のステーション133のデバイスドライバ等で認識するものと異なる場合があるため、デバイスドライバにおける変換処理や変換テーブルを用いた変換処理等を実施して、そのような差異に対応する必要がある。
例えば、あるメーカのアクセスポイント131が接続用設定値15の「モード」の項目について、インフラストラクチャモードを「0」、アドホックモードを「1」とコード化して記録するものである場合であって、他のメーカのステーション133(あるいはそのデバイスドライバ)が、「1」のコードをインフラストラクチャモードと認識し、「2」のコードをアドホックモードと認識する場合には、これらの間の不整合を解消するような変換処理が必要となる。
また、この例では、ホスト132は、ステーション133を介して無線通信を行うように構成されているが、ステーション133に対応する機能をホスト132が内蔵するように構成しても良い。さらに、ステーション133に、メモリカード134が着脱可能な態様で含まれる構成となっていても良い。
さらに、この発明の実施形態を、IEEE802.11規格に準拠した無線LANによる無線接続に関連して説明してきたが、他の方式の無線接続について適用することも可能である。例えば、この発明のアクセスポイント、およびステーションを使用して、BluetoothやUWB(Ultra Wide Band)等を含むPAN(Personal Area Network)によるシステムを構築することも可能である。
次に、無線LANによるインターネット接続サービスを行っている喫茶店のようなエリアにおいて、この発明のアクセスポイントとステーションを適用した場合に、どのような手順で操作が行われるのか、その概略について説明する。
従来においては、以下のような手順で行われている。(1)WEBなどから、上記インターネット接続サービスに申し込む。この際、キャッシュカード引き落としのために個人情報の入力が必要となる場合もある。(2)ユーザのノートパソコン(ホスト)で802.11の共通の設定を行う。即ち、ESS−IDやWEPキー等がここで設定される。(3)ノートパソコンのネットワーク設定(IPアドレス取得手法設定等)を行う。(4)ブラウザの設定(使用するWEBプロキシサーバの指定等)を行う。(5)当該ノートパソコンを上記エリアに持参すると物理層、データリンク層、IP層でのセッションが張られる。また、IPアドレスが自動的に付与される。(6)ノートパソコンでWEBブラウザを起動し、任意のURLを指定すると、上記インターネット接続サービスの接続続開始画面が表示される。(7)接続開始画面にアカウントとパスワードを入力し、上位層での認証がされると、インターネットへの接続が自由に行えるようになる。この認証を通して、接続者や接続時間等を管理する場合が多い。
一方、この発明の無線接続システムを使用すると、例えば、以下のような手順となる。(1)上記エリアの対応窓口に無線LANカード(ステーション)を持参し、または窓口で借りて、申請接続時間に相当する料金を支払う。(2)そのLANカードをアクセスポイントに差し込み、設定値をダウンロードする。前述した接続用設定値にオプション(98、99)が含まれる場合、その内容は、この時点でダウンロードされる。(3)LANカードを例えば、ユーザのノートパソコン(ホスト)のスロットに差し込み、アクセスポイントとの接続を開始する。(4)支払い料金に対する接続終了時刻がきたら、アクセスポイントが、ESS−IDやWEPキーを変更することで接続を遮断する。
また、接続終了時刻がきた場合に、アクセスポイントからLANカードに対し明示的に接続終了パケットを投げ、ノートパソコン内の設定値をクリアするという方法も考えられる。
上記態様は、ユーザが接続料を前払いする例であったが、後払いにするよう構成することもできる。(1)まず、上記エリアの対応窓口に無線LANカード(ステーション)を持参し、または窓口で借りて、そのLANカードをアクセスポイントに差し込み、設定値をダウンロードする。この時点で、アクセスポイントが接続時間のカウント準備をする。(2)ユーザは、そのLANカードを自身のノートパソコンに差し込み、無線接続を開始する。このとき、接続時間がカウントされて、LANカードのメモリに記録される。(3)接続終了後、LANカードを再度アクセスポイントに差し込むと、アクセスポイントがLANカードに記憶されている接続時間を読み取って接続時間を算出する。この後、アクセスポイントは、LANカード内の接続時間をクリアしてもよい。(4)ユーザは、算出された接続時間に対応する料金を支払う。
またさらに、アクセスポイントがセキュリティ確保のために定期的に設定値を変更し、再接続を要求する場合は以下のような手順が考えられる。(1)ノートパソコン(ホスト)を喫茶店に持ち込んだユーザは、まず、窓口にあるアクセスポイントのスロットに、自身が所有する無線LANカード(ステーション)を挿入し、アクセスポイントのダウンロードボタンを押す。このとき接続料を支払う。(2)ユーザは、設定値のダウンロードが終了したら、LANカードをアクセスポイントのスロットから抜き取り、自席でノートパソコンのスロットにそのLANカードを差し込む。(3)そこで、このLANカードにダウンロードされた設定値に基づいて無線接続の初期設定等が行われ、ノートパソコンは、無線接続によってインターネットへの接続が可能になる。(4)インターネット接続を所定の時間継続していると、アクセスポイントからノートパソコンに、LANカードを介して、何分後かに設定値の変更が行われる旨の通知が送信される。この通知は、例えば、自動的にノートパソコンの画面上に表示される。(5)そこで、ユーザは、再び喫茶店の入り口付近に行き、アクセスポイントのスロットに、自身が所有するLANカードを挿入し、接続料を支払った上でアクセスポイントのダウンロードボタンを押す。これによって、変更された設定値がLANカードに記憶され、ユーザは、これを再度ノートパソコンのスロットに差し込むことによってインターネットへの接続が可能となる。
このように、従来であれば、定期的な設定値の変更もユーザに過度の負担を与えることなく行うことができ、ユーザに設定値の入力作業を強いることもない。また、設定値は無線LANカードのような物理媒体を介して行われるので、この設定値が第三者に漏洩する危険性は極めて小さくなる。
1・・・アクセスポイント、2・・・ホスト、3・・・ステーション、4・・・設定端末、11・・・WEPボタン、12・・・ダウンロードボタン、13・・・アンテナ、14,15・・・接続用設定値、16・・・スロット、20,50・・・アンテナ、21,51・・・RFモジュール、22,52・・・BBモジュール、23,53・・・MACモジュール、28,57・・・メモリ、30・・・WAN・I/F、59・・・カードI/F