JP2005113304A - 繊維構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、肌荒れが起こってしまう原因を積極的に排除することができる触感性に優れた繊維構造物を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の繊維構造物は、融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維表面に、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤が固着されてなることを特徴とするものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、肌への物理的刺激が少なく、さらには低下した肌の抵抗力を回復することができる触感性に優れた繊維構造物に関するものである。
従来、衣料素材、特に合成繊維衣料の改善策としてウォッシュアンドウェア性、各種機能性付与、さらにはそれの耐久性向上、物理特性の改良や風合い、触感、外観の改良などが主として行われていた。例えば、低温、低湿時の肌荒れを防止する目的で保湿剤をバインダーを用いて布帛に固着した衣料(特許文献1参照)が提案されている。
特開平2−300301号公報
しかしながら、これら従来の技術では、比較的軽度な肌荒れを解消する、もしくは、健康な肌を持った人に対する肌荒れ防止を目的としたもののみであり、その肌荒れが起こってしまう原因を積極的に排除するものではなく、アレルギーやアトピーに悩まされている人にまで配慮したものではなかった。
たとえば、比較的軽度な肌荒れ状態の人や、なんらトラブルのない健康な肌の人は多少の物理的刺激、化学的刺激、生理的刺激があっても、自らが持つ抵抗力や治癒力によって身体への悪影響を回避することができるため、着用する衣料品や食べ物に特に敏感に配慮することもなく、配慮することがあるとすれば、より健康に、より美しくなることを目的とした機能を持つ商品であり、従来の技術はこうした消費者に対して有効なものにすぎなかった。
アレルギーやアトピーに悩まされている人たちは、肌への物理的刺激、化学的刺激、生理的刺激を与えないよう日常的に努力されているが、中でも衣料品については、物理的刺激や化学的刺激が少ないとされている綿などの天然繊維を好んで使用する傾向にある。逆に、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は、硬さや静電気といった物理的刺激や染料や仕上げ剤などによる化学的刺激が多く、また、これらの刺激が助長しあってさらなる悪影響を及ぼす素材として避けられている。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、肌荒れが起こってしまう原因を積極的に排除することができる触感性に優れた繊維構造物を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような構成を採用するものである。すなわち、本発明の繊維構造物は、融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維表面に、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤が固着されてなることを特徴とするものである。
本発明によれば、肌への物理的刺激が少なく、さらには低下した肌の抵抗力を回復することができる触感性に優れた繊維構造物を安定して提供することができる。
本発明は、前記課題、つまり肌荒れが起こってしまう原因を積極的に排除することができ、かつ、触感性に優れた繊維構造物について、鋭意検討し、特定なポリエステル系繊維表面に、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤という特定な薬剤を固着させてみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明では、融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維を用いることが好ましい。さらに好ましくは、該脂肪族ポリエステルがL−乳酸を主成分とするものである。
繊維構造物に使用される素材としては、ポリエチレンテレフタレートを代表とする芳香族ポリエステル系繊維、ポリエステルに第3成分を共重合したポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアミドに第3成分を共重合したポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、セルロース系繊維、たんぱく質系繊維などが挙げられ、これらの混用繊維からなるものを用いることができるが、中でも芳香族ポリエステル系繊維は、強度、耐熱性、耐薬品性、ウォッシュアンドウェア性など各種の特性に優れるため、衣料品や衣料雑貨、寝装品などに広く用いられてきた。しかし、スキンケアを目的とした繊維構造物に使用するには、素材の剛性が高く柔軟性に劣るため、繊維構造物にした場合に肌へ与える物理的刺激が大きいと言う課題があった。
昨今、環境保護を目的とした生分解性樹脂が話題になっているが、衣料品についても、生分解性が高い脂肪族ポリエステルが注目されている。この脂肪族ポリエステルは従来の芳香族ポリエステルに比較して剛性が低いことが知られている。我々はこの特性が肌に対する刺激軽減に有効であることを見いだした。中でも、融点が130℃以上の脂肪族ポリエステル、さらには、L−乳酸を主成分とする脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維は柔軟性が高く、肌へ与える物理的刺激が小さいため、これまでにないより高いレベルでの肌荒れ防止効果が得られるのである。
ここで、脂肪族ポリエステルを主体とするとは、ポリエステル系繊維の80重量%以上が脂肪族ポリエステルから形成されていることを意味するものであり、脂肪族ポリエステルの割合を80重量%以下であると、脂肪族ポリエステルが有する生分解性を得ることができない。
本発明で用いられる脂肪族ポリエステルは、DSC測定で得られる溶融ピークのピーク温度が130℃以上であれば特に製薬はなく、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレート、およびこれらのブレンド物、変成物等を用いることができる。これらの脂肪族ポリエステル類は、生物分解性あるいは加水分解性が高いため、自然環境中で容易に分解されるという利点を有している。中でも汎用性の面からは、該脂肪族ポリエステルがL−乳酸を主成分とするポリエステルであることが好ましい。L−乳酸を主成分とするとは、構成成分の60重量%以上がL−乳酸からなっていることを意味し、40重量%を越えない範囲でD−乳酸を含有するポリエステルであってもよい。
かかるポリ乳酸の製造方法としては、乳酸を原料としていったん環状二畳体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いられるポリ乳酸は、いずれの製法によって得られたものであってもよい。
ラクチド法によって得られるポリマーの場合には、ポリマー中に含有される環状二畳体が溶融紡糸時に気化して糸斑の原因となるため、溶融紡糸以前の段階でポリマー中に含有される環状二畳体の含有量を0.1重量%以下とすることが望ましい。また、直接重合法の場合には、環状二畳体に起因する問題が実質的にないため、製糸性の観点からはより好ましいと言える。
ポリ乳酸の重量平均分子量は高いほど好ましく、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、より好ましくは10〜30万である。重量平均分子量が5万よりも低い場合には、繊維の強度物性が低下するため好ましくない。
ここで、重量平均分子量は以下の方法により測定したものである。
Waters(株)製ゲルパーミエーションマイクロマトグラフWaters2690およびWaters2410を連結して用いた。ポリスチレンを内部標準とし、昭和電工(株)製Shodex GPC K−805Lを2本連結し、カラム温度40℃、移動層クロロホルム、流速1m1/分、試料濃度0.1%(w/v)、注入量200μlの条件で、示差屈折計を検出器に用いて重量平均分子量を測定し、3回の測定値の平均値を求めた。
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する加工物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体があげられる。生分解性能を考えると、それらの共重合率は30モル%以下であることが好ましい。
また、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクロン、ポリブチレンサクシネートおよびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として用いることができる。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
本発明で用いられる脂肪族ポリエステルは、融点が130℃異常であることが重要である。融点が130℃よりも低い場合には、製糸時、特に紡糸時に単糸間の融着が著しくなり、さらに延伸性不良が発生するなど製品の品位が著しく損なわれる。融点は好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは160℃異常である。
ここで融点とは、DSC測定によって得られた融解ピークのピーク温度を意味する。このような脂肪族ポリエステルを用いることによって、芳香族ポリエステルよりも柔軟な風合いを得ることができる。この柔軟性は、脂肪族ポリエステル繊維のヤング率が芳香族ポリエステルのヤング率に比べて低いことに起因している。
本発明の脂肪族ポリエステルをしたいとするポリエステル系繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、扁平断面、ダルマ型断面、X型断面、その他の異形断面であってもよく、なんら限定されるものではない。光沢を付与する場合は、多葉型等の非円形もしくはその他の異形断面が好ましく、また、さらなる柔軟性を付与する場合は扁平断面であることが好ましい。軽量化を目的とする場合は、中空形状とすることも好ましい。また、芯鞘複合、バイメタル複合、海島複合および分割複合繊維のような複合繊維であってもよい。
本発明の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であってもよい。
本発明で用いる親油性保湿剤とは、肌に近接して存在させることによって、乾燥などによって奪われやすくなった皮膚の角質水分量を低下させないものをいう。具体的には、スクワラン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミツロウ、ラノリン、馬油およびパーセリン油、セラミドから選ばれた少なくとも1種が好ましく使用される。この他にも、米抽出液、ラベンダーやオレンジなどの植物油、グリセリン、プロペトなどが知られており、これらを使用することも可能である。
また、本発明で用いる抗酸化性整肌剤とは、皮膚の酸化を防止する性能を持った肌を整える成分を言う。近年、環境汚染やストレスなど様々な原因によって、身体の中の活性酸素が過剰に発生し身体の健康を害することが言われているが、SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)と呼ばれる抗酸化物質が、この身体で過剰となった活性酸素を取り除き、無毒化してくれる酵素として働くのである。皮膚も身体の一部であり皮膚表面でも同様の現象が起こっている。皮膚表面の皮脂や化粧品などに含まれる油分が、太陽光や外気、あるいはストレスなどによって酸化され、過酸化脂質と呼ばれる酸化物に変化し、たとえば、鉄表面が酸化によって鉄サビを発生するように、皮膚を傷つけダメージを与え、結果として肌荒れやシワなどの老化現象を起こすのである。ここで言う抗酸化性整肌剤とは、こうした肌荒れやシワなどの老化現象から皮膚の酸化を防止する性能を持った、肌を整える成分をいう。具体的には、各種アミノ酸、ビタミン類、ポリフェノール類、ガンマオリザノール、フェルラ酸、オリゴメリックプロアンソシアニジンおよびカテキンから選ばれた少なくとも1種が好ましく使用される。この他にも、プロポリス、パンテノール、リコピン、セサミノール、チオタウリン、多糖類などが知られており、これらを使用することも可能である。
本発明では、繊維表面に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を併用して固着することに特徴を有する。これまでは、親油性保湿剤こそが肌荒れ防止効果に優れていると言われてきたが、前述したように、皮膚表面の皮脂や、肌荒れを防止するための親油性保湿剤自身が酸化するため、それだけでは十分な肌荒れ防止効果を発揮することは困難であった。すなわち、皮膚表面の皮脂だけでなく、肌荒れ防止のために使用する親油性保湿剤が酸化することを抑制するためには、抗酸化性整肌剤の併用が必須なのである。これにより、これまでにないより高いレベルでの肌荒れ防止効果が得られるのである。
本発明で用いる親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を繊維構造物に付与する方法としては、そのままの状態もしくはマイクロカプセル化した状態で、バインダーにより付着させることが好ましい。
マイクロカプセル化された該親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を用いると、さらに洗濯耐久性が向上し、また、該親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤が徐々にマイクロカプセル内からしみ出してきて、その効果を長期間発揮せしめるので、さらに好ましい。
該親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤をマイクロカプセル化する場合に用いるマイクロカプセル用素材としては、無機質、有機質の微多孔微粒子であって、たとえば、シリカ、活性炭などの微多孔無機微粒子、中空微多孔メラミン樹脂粒子、アクリル酸エステル系樹脂粒子、ポリ尿素系樹脂粒子などがあげられる。アクリル酸エステル系樹脂粒子、ポリ尿素系樹脂粒子は、該親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤をマイクロカプセル化しやすく、マイクロカプセルの素材自体が肌荒れを防止できる理由からより好ましい素材である。また、これらの微粒子の外径は、0.1μm以上100μm以下であることが、バインダーによる繊維への保持性、すなわち、洗濯などによる脱落防止の面から好ましく、0.1μm以上40μm以下であることがより好ましい。
バインダーとしては、アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエーテルエステルブロックコポリマ、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂などを用いることができる。
シリコーン系樹脂は、洗濯耐久性および繊維構造物の柔軟性を向上させる上で好ましく、中でも、摂氏80度以下の低温でも造膜性に優れたシリコーン系樹脂、たとえば、ヒドロキシオルガノポリシロキサンにアルコキシシランをカップリング剤として添加したものなどは特に好ましい。
本発明では、さらに物理的、化学的刺激を軽減する手段として、特に下記化学式に示すホスホリルコリン基を10〜100mol%含有させた樹脂からなるバインダーであることがさらに好ましい。ホスホリルコリン基とは、生体膜の構成成分であるリン脂質分子が主として持つ基であり、生体に対する刺激を軽減する作用があることが知られている。すなわち、該バインダーがこのホスホリルコリン基を含有することによって、バインダーの皮膚表面への刺激をなくすことができ、より高いレベルでの肌荒れ防止性能を得ることができる。
Figure 2005113304
本発明において、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤の繊維構造物に対する付着量は、繊維構造物の全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましい。かかる付着量が0.01重量%未満であると十分な肌荒れ防止性能が得られにくい。また、繊維構造物の染色堅牢度を維持するために10重量%以下であることが好ましい。
また、高いレベルの肌荒れ防止性能と耐久性を持ち、ソフトな風合いを保ち、肌への刺激を軽減するために、バインダーの繊維構造物に対する付着量は、繊維構造物の全重量に対して、0.5重量%から10重量%、より好ましくは1重量%から8重量%の範囲で付着させるものである。すなわち、かかる付着量が0.5重量%未満であると、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤の保持が十分でなくなり、十分な肌荒れ防止性能と耐久性を得られにくい。また、10重量%を越えると、繊維構造物の風合いが硬くなり、着用時に肌への刺激が強くなる傾向がある。
次に本発明の繊維構造物を製造する方法を説明する。
まず、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を、そのままの状態およびマイクロカプセル化した状態のうち少なくともいずれかの状態で、必要に応じて界面活性剤を併用して、バインダー水分散液に混合分散させて処理液を調整する。繊維構造物を該処理液中に浸漬し、余分な液をマングルまたは遠心脱水機などの手段で除去した後、摂氏180度以下で乾燥するのが好ましく、より好ましくは摂氏50度から摂氏80度で乾燥し、必要に応じて常法により乾熱または湿熱セットを行うのが好ましい。
特に、マイクロカプセル化された親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を使用する際は、該マイクロカプセル化された親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を繊維構造物を構成する繊維表面に付着、接合させ、該繊維構造物を成す繊維間を目詰めすることなく、該繊維構造物が有する通気性をできるだけそのまま保持させておくのが、着用時のムレ防止の面から好ましい。
該処理液によって該繊維構造物に付着した親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤は、該バインダー樹脂被膜で覆われたものもあれば、付着部分のみに該バインダー樹脂が付着しているものもあり、いずれの状態でも本発明の効果は達成される。耐久性の面からは、バインダー薄膜で被覆されて付着している状態が好ましいが、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤の薬剤効果の面からは、該被膜を極めて薄くすることが好ましい。耐久性と薬剤効果の面から、被膜の厚さは0.01μmから1μmの範囲が好ましい。マイクロカプセル化された親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を用いる場合は、被膜表面に露出するマイクロカプセル化された親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤をできるだけ多くするのが好ましく、1個/cm2以上露出することが好ましい。
これらの繊維構造物は、直接肌に触れる用途に用いることが好ましい。
ここで言う衣料品とは、スリップ、キャミソール、ペチコート、ショーツ、アンダーパンツ、タイツ、Tシャツ、丸首シャツ、U首シャツ、ボディスーツ、ガードル、ランニングシャツ、アンダーパンツ、タイツ、ブリーフ、トランクス等をはじめとする肌着、タイツ、パンティストッキング、靴下などのレッグウェア類、ドレスシャツ、ブラウス、スラックス、スカートなどの一般衣料、ポロシャツ、ウォームアップウェア、水着、レオタードなどのスポーツウェア、パジャマ、浴衣などのリラックスウェア、などを言う。
また、衣料雑貨類とは、裏地、サポータ、タオル、ハンカチ、マフラー、スカーフ、化粧用フェイスマスクなどを言う。
さらに寝装品とは、布団側地、布団カバー、枕カバー、ベッドカバー、タオルケット、シーツ類、毛布、クッションカバー、椅子張りなどを言う。これらに用いることにより、肌荒れを積極的に予防し、起こってしまった肌の抵抗力の低下を改善することができるものである。
さらに必要に応じて仕上げ加工剤、例えば、抗菌防臭加工剤などを添加してもよい。抗菌防臭加工剤としては、たとえば、キチン・キトサン、光触媒、ナノメーター銀、グリチルリチン酸、ウンデシレン酸モノグリセリド、ヒノキチオール、カテキンなどが挙げられる。これらを処理液中に混合させ同時に処理をしたり、または上記処理後これら仕上加工剤だけの処理液を作成し、繊維に含浸させ、乾熱処理によって付与することができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例中に記載した各種性能は以下の方法により評価した。
[融点]
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られた溶融ピークのピーク温度を融点とした。
[肌荒れの程度の評価]
マイクロビデオスコープ((株)ハイロックス製)により、約100倍に皮膚表面を拡大し、その状態を観察することによって肌荒れの程度を判定した。
肌荒れの程度は次の5段階で表す。
5:かなり激しい肌荒れ状態である(かさぶたがある)。
4:激しい肌荒れ状態である(かさぶたはないが、赤く腫れ上がっている)。
3:肌荒れ状態である(赤みはあるが腫れ上がってはいない)。
2:軽度の肌荒れ状態である(赤みはないが乾燥状態である)。
1:肌荒れは認められない。
[風合い]
風合いについては、着用時の肌当たりの感覚を着用者の申告により評価した。
風合いの程度は次の5段階で表す。
5:非常に硬い
4:硬い
3:やや硬い
2:柔らかい
1:非常に柔らかい
[着用試験]
3名のパネラーを使用し、着用試験を行った。
着用試験は、洗濯をしていない所定の試料を1日8時間連続着用し、着用直前と5日間着用後の腕、脚などの所定の位置について、角質水分率の測定と肌荒れの有無を評価した。
さらに、家庭洗濯20回を行った該試料を着用し、同様に1日8時間連続着用し、着用直前と5日間着用後の腕、脚などの所定の位置について、角質水分率の測定と肌荒れの有無を評価した。
着用試験の詳細は実施例中に記載する。また、表1において、家庭洗濯0回のサンプルの着用試験結果を「HL−0」の欄に、家庭洗濯20回後の着用試験結果を「HL−20」の欄に記した。
実施例1
融点166℃のポリ乳酸チップ(重量平均分子量18.5万、L体比率95wt%、D体比率5wt%)を105℃の設定をした真空乾燥機で12時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度210℃にて溶融し紡糸温度220℃で36ホールの口金から紡出した。この紡出糸を20℃、25m/minのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、3000m/minで引き取って未延伸糸(122dtex−36フィラメント(f))を得た。この未延伸糸をホットローラー系の延伸機を用い、延伸温度90℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.45倍、延伸速度800m/minの条件で延伸して84dtex−36フィラメントの延伸糸を得た。さらにこの延伸糸をスピンドル仮撚機を使用して加工速度100m/min、仮撚温度130℃、加工延伸倍率1.2倍、仮撚数2948T/mの条件で仮撚加工を行い仮撚加工糸を得た。
こうして得た仮撚加工糸を用い、22Gの両面丸編機にて丸編地を編成し、通常の方法によってリラックス・精練と染色および乾燥を行い肌着用編地を得た。
次に、親油性保湿剤であるスクワランと抗酸化性整肌剤であるガンマオリザノールを用い、繊維重量に対して次のような配合で加工液を作成した。
スクワラン乳化分散剤(固形分20%) :5重量%
ガンマオリザノール乳化分散剤(固形分20%):5重量%
ホスホリルコリン基含有シリコーンバインダー(BY22−826:トー レ・シリコーン社製とMF−3:日本油脂社製):20重量%
帯電防止剤(水溶性ウレタン系) :20重量%
吸水剤{ポリアルキレングリコールブロック共重合体(ジメチルテレフタ レート:エチレングリコール:ポリエチレングリコール=5:4 :7のブロック共重合体、分子量3000)}:7重量%
ただし、上記シリコーンバインダーは、下記の割合で混合したものを使用した。
BY22−826:MF−3=20:1
この加工液に、上記肌着用編地を浸漬し、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、乾燥機で摂氏120度で3分乾燥、セットした。
この処理した肌着用編地における、スクワランおよびガンマオリザノールを含むバインダーの樹脂付着量は6.2重量%であった。
この親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた肌着用編地を用いて婦人用七分袖丸首シャツを作成し、12月から2月の冬場に、28歳、39歳、48歳の3名の女性パネラーにより着用試験を行った。この3名の女性パネラーは、アレルギー疾患および乾燥による肌荒れ症状に悩むものであった。着用試験は、1日8時間連続着用を5日間繰り返し、着用直前と5日後の上腕外側の肌荒れの程度を評価した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、脂肪族ポリエステルを使用した肌着用編地に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させたものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに優れるものであることが明かであった。
実施例2
実施例1で得た84dtex−36フィラメントの延伸糸を用い、経糸密度112本/インチ、緯糸密度86本/インチ、目付96g/m2の平織物を製織し、通常の方法によってリラックス・精練と染色および乾燥を行い裏地用織物を得た。
次に、親油性保湿剤であるスクワランと抗酸化性整肌剤であるポリフェノール類のエラグ酸を重量比にして1:1に混合し、この混合液に粒径2μmから6μmの微多孔質シリカ粒子を含浸して、スクワランとエラグ酸の混合物をマイクロカプセル化した。
このマイクロカプセル、アクリル酸エステル系バインダー(プライマールHA−16:日本ライヒホールド社製)、ホスホリルコリン基含有バインダー(MF−3)を重量比で1:1:1の割合に混合分散し、さらに帯電防止剤(水溶性ウレタン系)10重量%と吸水剤{ポリアルキレングリコールブロック共重合体(ジメチルテレフタレート:エチレングリコール:ポリエチレングリコール=5:4:7のブロック共重合体、分子量3000)7重量%を加え120g/リットルの水分散液を調整した。
この水分散液に、上記裏地用織物を浸漬し、ピックアップ率45%に設定したマングルで絞り、乾燥機で摂氏140度で3分乾燥、セットした。
この処理した裏地用織物における、スクワランおよびエラグ酸を内包したマイクロカプセルを含むバインダーの樹脂付着量は3.4重量%、内マイクロカプセルは固形分にして1.2重量%であった。
この親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた裏地用織物を使用して膝丈ストレートスカートを作成し、実施例1と同様の着用評価を行い、膝上部の肌荒れの程度を評価した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、脂肪族ポリエステルを使用した裏地用織物に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた裏地を使用したものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに優れるものであることが明かであった。
実施例3
実施例1で得た延伸糸を束ねて50万デニールのトウ状とし、クリンパーにより機械捲縮を与えた後、単繊維長が38mmになるようにカットし、ポリ乳酸ステープルを得た。
このようにして得られたポリ乳酸ステープルを用いてポリ乳酸65wt%綿35wt%の45番手紡績糸とした。この紡績糸を用い、経糸生機密度110本/インチ、緯糸生機密度76本/インチ、目付112g/m2 のブロード織物製織し、常法により糊抜き、精錬、漂白、マーセライズ処理し、スパン織物を得た。
次に実施例2において、親油性保湿剤としてセラミドを、抗酸化性整肌剤としてビタミンCとEを重量比にして1:1に混合したものを用いてマイクロカプセル化し、得られたマイクロカプセルを用いて実施例2と同様の処理を施した。処理したスパン織物における、セラミドおよびビタミンCとEを内包したマイクロカプセルを含むバインダーの樹脂付着量は6.8重量%、内マイクロカプセルは固形分にして2.7重量%であった。
この親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させたスパン織物を使用して肌掛け布団カバーおよび敷き布団用シーツを作成し、実施例1と同様の着用評価を行い、スネ部の肌荒れの程度を評価した。なお、着用試験中は5分丈のパジャマを着用した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、脂肪族ポリエステルを使用したスパン織物に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた掛け布団カバーおよび敷き布団用シーツを使用したものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに優れるものであることが明かであった。
比較例1
テレフタル酸/エチレングリコールを用いて通常の工程にてポリエステルチップを紡糸温度290℃で36ホールの口金から紡出し、この紡出糸を20℃、25m/minのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、3000m/minで引き取って未延伸糸(122dtex−36フィラメント(f))を得た。
この未延伸糸をホットローラー系の延伸機を用い、延伸温度90℃、熱セット温度180℃、延伸倍率1.8倍、延伸速度800m/minの条件で延伸して84dtex−36フィラメントの延伸糸を得た。さらにこの延伸糸をスピンドル仮撚機を使用して加工速度100m/min、仮撚温度130℃、加工延伸倍率1.2倍、仮撚数3200T/mの条件で仮撚加工を行い仮撚加工糸を得た。
こうして得た芳香族ポリエステルからなる仮撚加工糸を用い、22Gの両面丸編機にて丸編地を編成し、通常の方法によってリラックス・精練と染色および乾燥を行い肌着用編地を得た。
この肌着用編地を実施例1と同様の加工液に浸漬し、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、乾燥機で摂氏120度で3分乾燥、セットした。
この処理した肌着用編地における、スクワランおよびガンマオリザノールを含むバインダーの樹脂付着量は6.7重量%であった。
この肌着用編地に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた肌着用編地を使用して婦人用七部袖丸首シャツを作成し、実施例1と同様の着用評価を行い、上腕外側の肌荒れの程度を評価した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、通常の芳香族ポリエステルに親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた肌着用編地を使用したものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに劣るものであることが明かであった。
比較例2
比較例1で得た芳香族ポリエステルからなる延伸糸を用い、経糸密度112本/インチ、緯糸密度86本/インチ、目付96g/m2の平織物を製織し、通常の方法によってリラックス・精練と染色および乾燥を行い裏地用織物を得た。
この裏地用織物を実施例2と同様の水分散液に、上記裏地用織物を浸漬し、ピックアップ率45%に設定したマングルで絞り、乾燥機で摂氏140度で3分乾燥、セットした。
この処理した裏地用織物における、スクワランおよびエラグ酸を内包したマイクロカプセルを含むバインダーの樹脂付着量は3.1重量%、内マイクロカプセルは固形分にして1.4重量%であった。
この親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた裏地用織物を使用して膝丈ストレートスカートを作成し、実施例1と同様の着用評価を行い、膝上部の肌荒れの程度を評価した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、芳香族ポリエステルを使用した裏地用織物に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた裏地を使用したものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに劣るものであることが明かであった。
比較例3
比較例1で得た芳香族ポリエステルからなる延伸糸を束ねて50万デニールのトウ状とし、実施例3と同様の方法により45番手紡績糸を用いた、経糸生機密度110本/インチ、緯糸生機密度76本/インチ、目付114g/m2のブロード織物製織し、常法により糊抜き、精錬、漂白、マーセライズ処理し、スパン織物を得た。
さらに実施例3と同様の、親油性保湿剤としてセラミドを、抗酸化性整肌剤としてビタミンCとEを用いたマイクロカプセルを使用し、実施例2と同様の処理を施した。処理したスパン織物における、セラミドおよびビタミンCとEを内包したマイクロカプセルを含むバインダーの樹脂付着量は6.5重量%、内マイクロカプセルは固形分にして2.3重量%であった。
この親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させたスパン織物を使用して肌掛け布団カバーおよび敷き布団用シーツを作成し、実施例1と同様の着用評価を行い、スネ部の肌荒れの程度を評価した。なお、着用試験中は5分丈のパジャマを着用した。
結果を表1に示す。表からわかるとおり、芳香族ポリエステルを使用したスパン織物に親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤を付着させた掛け布団カバーおよび敷き布団用シーツを使用したものは、着用者の年代に関わらず、肌荒れ防止性、風合いに劣るものであることが明かであった。
Figure 2005113304

Claims (9)

  1. 融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルを主体とするポリエステル系繊維表面に、親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤が固着されてなることを特徴とする繊維構造物。
  2. 該脂肪族ポリエステルがL−乳酸を主成分とするポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物。
  3. 該親油性保湿剤が、スクワラン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミツロウ、ラノリン、馬油、パーセリン油、セラミドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造物。
  4. 該抗酸化性整肌剤が、各種アミノ酸、ビタミン類、ポリフェノール類、ガンマオリザノール、フェルラ酸、オリゴメリックプロアンソシアニジン、カテキンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
  5. 該親油性保湿剤および抗酸化性整肌剤が、バインダーによって、その表面に固着してなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造物。
  6. 該バインダーが、下記化学式で表されるホスホリルコリン基を含有した樹脂からなる請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
    Figure 2005113304
  7. 該請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物を少なくともその一部に用いてなる衣料品。
  8. 該請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物を少なくともその一部に用いてなる衣料雑貨類。
  9. 該請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物を少なくともその一部に用いてなる寝装品。
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JP2010144315A (ja) * 2008-12-18 2010-07-01 Daiwa Kagaku Kogyo Kk γ−オリザノールを光安定化し繊維に付着させる方法およびこれを処理した繊維製品
JP2010237098A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Shiseido Co Ltd 角層評価方法及び抗肌荒れ成分選別方法
JP2012502137A (ja) * 2008-09-08 2012-01-26 バスカ, エルエルシー 洗濯洗剤組成物およびその使用

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