JP2005113291A - 極短繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多数の長繊維からなる埋包処理した繊維束の端面を切削し、これによって、極短繊維を製造するのに好適な製造方法を提供する。
【解決手段】マルチフィラメント糸条(y)が巻かれた少なくとも1つの糸巻体(P)から糸条(y)を解舒して巻取に供するに際して、糸条(y)を合糸した後に巻取に供し、所定の総繊度を持った繊維束(F)を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所が形成される巻取枠(10)に所定の巻取張力を付与しながら巻取る。ついで加熱によって液化又は気化する埋包材を液体状又は気体状にし、繊維束の周囲を囲繞させながら繊維束(F)を形成する単繊維群間へ液体状又は気体状の埋包材を進入させて埋包処理をおこなう。その後繊維束部を切断して被切削材を作製し、そして、被切削材の切断端面を切削加工することによって繊維長が0.005〜1mmの極短繊維を製造する極短繊維の製造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】マルチフィラメント糸条(y)が巻かれた少なくとも1つの糸巻体(P)から糸条(y)を解舒して巻取に供するに際して、糸条(y)を合糸した後に巻取に供し、所定の総繊度を持った繊維束(F)を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所が形成される巻取枠(10)に所定の巻取張力を付与しながら巻取る。ついで加熱によって液化又は気化する埋包材を液体状又は気体状にし、繊維束の周囲を囲繞させながら繊維束(F)を形成する単繊維群間へ液体状又は気体状の埋包材を進入させて埋包処理をおこなう。その後繊維束部を切断して被切削材を作製し、そして、被切削材の切断端面を切削加工することによって繊維長が0.005〜1mmの極短繊維を製造する極短繊維の製造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、長繊維からマルチフィラメント糸条を束ねて繊維束とし、この繊維束から数mm未満(特に、1.0mm未満)の繊維長を有する極短繊維を製造するための製造方法に関する。
従来、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性合成ポリマーからなる長繊維を束ねて繊維束とし、この繊維束を切断して数mmから数十mmの長さの短繊維を得るために、各種の繊維束切断装置が慣用されている。例えば、このような切断装置として、繊維束を切断刃が放射状に多数設けられたカッターローラに巻付け、切断刃上に巻き付けられた繊維を切断刃に押圧しながら連続的に所定の長さに切断するローラカッター式繊維束切断装置が使用されている。また、固定刃と移動刃とを剪断刃として設け、これら剪断刃に対して所定の切断長だけ繊維束を押し出して切断するいわゆるギロチンカッター式繊維束切断装置も古くから知られている。
このような従来の繊維束切断装置が用いられている環境下で、最近、一部化粧品に混入させるための極めて短い合成繊維、柔らかい風合いのフロック加工品に使用する極細繊維、あるいは短く刻んだ弾性繊維などの需要が増えてくると、0.1mmから数mmの切断繊維長が要求されるようになってきた。ところが、例えば、前者のローラカッター式繊維束切断装置の場合では、回転するカッターローラ上に放射状に設ける切断刃群の隣接する切断刃の間隔を極めて小さくすることが要求されるために、切断刃間に切断された繊維が詰まって、その排出が困難となるばかりか、切断刃自体の厚みの問題もあって、切断繊維長を短くするのに限界がある。
これに対して、後者のギロチンカッター式繊維束切断装置の場合においては、0.5mm程度の切断繊維長であっても対応が可能である。しかしながら、従来タイプの繊維束切断装置を用いて単繊維繊度の小さな繊維を切断しようとすると、繊維自体が有する弾性のために繊維が湾曲したり、座屈したりして固定刃に直角に当接しなくなったり、固定刃と移動刃とのクリアランスの調整が極めて困難となったりして、斜め切りや切断長さの不揃いなどのミスカットが多量に発生する。そうすると、ミスカットされた多量の切断繊維の中から正常に切断されたもののみを選別し取り出すことが要求される。しかしながら、その作業は極めて繁雑であるばかりか、許容切断長に収まらないミスカットされた繊維が多くなると、正常に切断された繊維の収率そのものも悪くなる。
そこで、ギロチンカッター式繊維束切断装置が有する前記問題を解決するための装置が、例えば特開2003−119662号公報に提案されている。この従来技術では、供給する繊維束を切断するための切断部より前に繊維束をシート状物によって包む役割を果たさせるためのガイドを取り付け、連続シート状物を繊維束に併走させてガイドローラを介してシート状物を繊維束を包むように重ねて繊維束と一緒に切断するようにしている。そして、このようにすることによって、シート状物で包まれた繊維束は、シート状物の作用によって繊維が引き揃えられた状態のまま直線状で均斉に切断部に送られ、ミスカットされることなく所要の長さに切断されるというものである。
しかしながら、このようなギロチンカッター式繊維束切断装置を使用しても、切断可能な繊維長は0.1〜30mmであって、0.1mm未満の切断繊維を安定に得ることは極めて困難である。しかも、このような短繊維を得るために繊維束を被覆するのに使用するシート状物としては、紙やポリオレフィン、ポリエステル、セロハンなどの有機高分子フィルム、布帛、不織布を使用しなければならない。
ところが、このようなシート状物を使用するとなると、切断後に切断された繊維とシート状物とを分離することが要求されるが、これらを完全に分離することが困難であって、わずかであっても切断した繊維に混入する可能性がある。しかも、切断繊維長が0.1mmに近づくにしたがって、使用できるシート状物は、より剛直なものが必要とされ、更に切断可能な繊維束の径も大きくすることができず、小さくする必要が生じ、ミスカットも当然多くなって歩留まりも大幅に低下するために生産効率の面からも好ましくなく、実質的に0.1mmの切断繊維長を得るのは困難である。また、一旦多数の単繊維群を束ねて太い繊維束を形成させてしまうと、繊維束の周りをフィルム状シートで包み込んでも、繊維束を構成する単繊維同士には強い拘束力が作用することが無く自由に動ける状態にあるため、これを短く切断することは容易ではない。
次に、以上に述べた短繊維の製造技術とは別の技術であるが、長繊維からなる単繊維群を均一に引き揃えて配列させた繊維束を得ようとする技術として、例えば、連続的に供給されるマルチフィラメント糸条を収縮枠に巻いた後、収縮枠を収縮させて巻き取った糸条を綛取り(かせどり)する技術が知られている。また、特開昭57−171759号公報に提案されているように、連続的に供給されるマルチフィラメント糸条を直線的に適当な長さに引き出し、これを切断集積して繊維束を得る技術も周知である。なお、繊維束を製造するためのものではないが、繊維を平行に引き揃える機能だけをとるならば、製織工程に縦糸として供給するために、多数の糸条を並行して引き揃える整経機(ワーパー)も知られている。
前述の従来技術では、「繊維束を切断する」という技術思想では、長繊維束を構成する一本の単繊維(フィラメント)を取り出すと、この単繊維は極めて細く、しかも、弾性に富むために、切断時に切断刃から受ける力によって容易に変形して切断刃から逃げてしまって、繊維を0.1mm未満というような極めて短い長さにミスカットすることなく正常に歩留まりよく切断することは不可能とは言えないにしても極めて困難である。
そこで、「繊維束を切断する」のではなく、「繊維束を切削する」ことにすれば、0.1mm未満という極短繊維を得ることができることを着想し、繊維束をパラフィン、樹脂、あるいは氷等により埋包処理して一体化すれば、極めて良好な被切削体とすることができることを解明した上で、「多数の長繊維からなる単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成し、冷却によって固化し加熱によって気化又は液化する埋包材を気体状又は液体状にし、更に、気体状又は液体状になった埋包材によって前記繊維束を埋包処理し、前記埋包材が気化又は液化しない温度で埋包処理された前記繊維束の切削端面を薄片状に切削する」技術を新たに開発するに至った。
しかしながら、この技術では、「多数の長繊維からなる単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成すること」が要求される。そこで、このような背景の下で、本発明が解決しようとする課題は、多数の長繊維からなる単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成し、良好な引き揃え状態の繊維束を作製し、このようにして作製した繊維束に対して埋包材によって埋包処理し、そして、埋包処理した繊維束の端面を切削し、これによって、極短繊維を製造するのに好適な製造方法を提供することにある。
ここに前記課題を解決するための、請求項1に記載された製造方法に係る発明として、「多数の単繊維群から構成されるマルチフィラメント糸条が巻かれた少なくとも1つの糸巻体から糸条を解舒して巻取に供するに際して、複数の糸巻体から解舒された各糸条を巻き取る場合にあってはこれら糸条を合糸した後に巻取に供し、巻取に供された糸条が重ね巻されて所定の総繊度を持った繊維束を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所が形成される巻取枠に所定の巻取張力を付与しながら巻取り、加熱によって液化又は気化する埋包材を液体状又は気体状にし、繊維束を構成する単繊維群が少なくとも直線状に引き揃えられた状態にある前記箇所に対して繊維束の周囲を囲繞させながら繊維束を形成する単繊維群間へ液体状又は気体状の前記埋包材を進入させて埋包処理をし、埋包処理をした直線状に引き揃えられた繊維束部を切断して被切削材を作製し、そして、前記被切削材の切断端面を切削加工することによって繊維長が0.005〜1mmの極短繊維を製造することを特徴とする極短繊維の製造方法」が提供される。
その際、本発明は、請求項2に記載の発明のように、「前記埋包材が、ドライアイス、氷、パラフィン、及び前記繊維束よりも低融点を有する熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材である、請求項1に記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、「前記巻取枠を多角形状又は棒状にし、前記多角形状巻取枠の各頂点部分又は棒状巻取枠の両端部分で繊維束の折り曲げ部を形成させ、前記「繊維束を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所」を前記折り曲げ部間に形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、「前記巻取枠に巻き取る繊維束の巻取幅を規制するための巻取幅規制部材を前記折り曲げ部で設け、巻取枠に巻き取る繊維束の巻取幅を一定幅に制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、「前記繊維束を前記巻取枠に巻き取られたままの状態で液体状又は気体状の埋包材によって埋包処理することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、「前記巻取枠に形成された前記直線状の引き揃え箇所中の埋包処理に供する繊維束部分の外側両端に対して、前記両端を固定して繊維束を構成する単繊維群が互いにその位置を変えないようにする治具を取り付けるか、あるいは前記両端に接着剤を含浸させた後、巻取枠上の繊維束に大変形を与えることなく前記巻取枠から繊維束を取り出し、取り出した繊維束に対して所定の張力を付与した状態で前記埋包処理を行うことを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
そして、本発明は、請求項7に記載の発明のように、「単繊維の繊度が0.001〜10 dtexであって、これら単繊維群によって構成される前記繊維束の総繊度が1万〜1000万dtexであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の極短繊維の製造方法」とすることが好ましい。
以上に述べた本発明によれば、単繊維数がそれほど多くないマルチフィラメント糸条であっても、巻取枠にこの糸条を重ね巻することによって、所定の総繊度を持つように多数の単繊維群からなる太い繊維束を簡単に作製することができる。
しかも、このようにして作製された繊維束は、繊維束を構成する短繊維同士が互いに並行した良好な状態で直線状に引き揃えられている。このために、このように良好に引き揃えられた状態の繊維束を埋包処理へ供することによって、埋包材中に繊維束を構成する単繊維群を埋包させて各単繊維の運動の自由度を拘束することができる。したがって、埋包処理をして埋包材と一体に固化させた繊維束からなる被切削財の切断端面を切削刃によって切削加工することによって、従来技術では難しかった繊維長が0.005〜1mmの極短繊維を容易に製造することが可能となった。
また、埋包材として、「ドライアイス、氷、パラフィン、及び前記繊維束よりも低融点を有する熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材」を選定することによって、通常の作業条件で埋包材を低粘度で且つ任意形状に変形自在の液体状又は気体状に簡単にすることができる。このため、繊維束の周囲を囲繞して、繊維束を構成する単繊維群間に形成された空隙へ簡単に進入させることができる。
本発明において、極短繊維の製造に好適に供する繊維束としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどのポリマーからなる合成繊維、2種以上のポリマーを組み合わせた複合合成繊維などからも得ることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。つまり、絹糸、綿糸、麻糸などの天然繊維、あるいはセルロース繊維、アセテート繊維などのような半合成繊維からも得ることができる。
ここで、極短繊維を製造するための繊維束の製造方法とそのための装置を説明する都合上、本発明者らが新たに開発した極短繊維を製造する技術について、以下に簡単に説明する。
一般に、繊維長が1mmから数十mmにカットされた短繊維は、その単繊維の繊度が0.001〜10 dtexと非常に小さな単繊維群を束ねた繊維束を短く切断して製造される。しかしながら、このような単繊維は、一本々々は非常に細くて柔軟であって、切断力が作用する方向に容易に変形して逃げてしまうために、0.1mm未満の繊維長を有する極短繊維を製造するのは容易ではない。
そこで、本発明においては、埋包材を使用して、0.001〜10 dtexの単繊維繊度を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねて、その総繊度を1万〜1000万 dtexとした繊維束を埋包材中に埋め込んで一体化する。そして、これによって、繊維束を構成する単繊維が埋包材によって固定化して運動の自由度が拘束されることによって、容易に動くことができない状態を現出させ、この状態で切削刃によって薄片状に削り取る。なお、この目的を達成するために埋包材に要求される性質としては、低粘度の流動状態に変化することができることが要求され、これによって、容易に繊維束を囲繞してこれを包み込むようにその外周から繊維束内部の間隙に進入できることが要求される。
このような機能を有する埋包材としては、例えば加熱するとドライアイスのように固体から気体へと相変化を起こすか、例えば氷のように加熱すると固体から液体へと相変化を起こすような材料を使用する。そうすると、埋包材を加熱して気体又は液体のような無定形でかつ低粘度の流動状態とすることによって、繊維束を囲繞するように自由に変形することができ、しかも、低粘度であるために繊維束を構成する単繊維群間へ容易に進入することができる。そして、このような状態で、埋包材が固化する温度以下に冷却すれば、繊維束を構成する単繊維群は埋包材によって一体化された状態で固化するために、例え単繊維に切削力が作用しても、柳に腕押しといった風に単繊維が容易に切削刃から逃げてしまうことも無く、大きな力を作用させることができる状態を現出できる。
なお、このような埋包材としては、前述のドライアイスや氷の他に、パラフィンを好適に使用することができ、更には、埋包処理する繊維よりも大幅に低い分子量を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。なお、このような低分子量の熱可塑性樹脂としては、その溶融温度と溶融粘度とが低く、製造する極短繊維と容易に分離できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば低重合ポリエステル、低重合ポリスチレン、低重合ポリエチレンなど、周知の低分子量の熱可塑性樹脂を適宜使用条件に合わせて使用することができる。
以上に述べた極短繊維の製造技術によれば、製造時において、切削した極短繊維と埋包材とを切削後に容易かつ完全に分離できることも大きな特徴である。したがって、これらを容易かつ完全に分離するために、埋包材として、ドライアイスあるいは氷を使用することが好ましい。
本発明によれば、従来技術では得ることが難しかった0.005〜1.0mmのカット長を持った極短繊維を容易に得ることができるが、埋包材中に埋包処理された単繊維の一本々々が切削刃によって切削される方向に対して垂直となるように引き揃えられた状態で埋包材中に埋包されていなければ、良好な極短繊維を得ることができないという問題を内包している。そこで、本発明では、この問題を解決するために、多数の長繊維からなる単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成させることが必要となる。
しかしながら、「背景技術」欄で述べたような従来技術では、繊維束を準備する過程で、マルチフィラメント糸条を綛取りしたり、直線的に引き出して一旦切断して集積させたりする必要がある。このために、これらの従来技術では、マルチフィラメント糸条を巻き取ったり、引き出したりする過程で、マルチフィラメント糸条に作用していた引張力が一旦解除され、この引張力の解除によって繊維束内の単繊維間にずれが生じる。そうすると、埋包された単繊維は埋包材中で切削方向に対して垂直に固定されずに斜め方向に固定されるような事態を惹起し、この状態で切削すると単繊維は繊維軸に対して垂直に切削されずに、斜め方向に切削されてしまう。
このような問題を解決するために、本発明においては、先ず第1の実施態様として、多数の単繊維群からなるマルチフィラメント糸条を巻き取って糸巻体として形成された糸巻体を少なくとも1つ用意して、これらの糸巻体から糸条を引き出して、所定の張力を付与しながら、例えば周知の綛取り枠のような巻取枠上に重ね巻きして、引き揃えた状態の繊維束を得る。そして、このようにして得られた繊維束を巻取枠から取り外さずに、巻取時の張力が作用したままの状態で埋包処理して、張力が作用したままの繊維束を埋包材中に埋め込んで一体化する。
あるいは、第2の実施態様として、巻取時の張力が作用したままの状態で巻き取られた繊維束に対して、引き揃えられた繊維束の被切削材とされる部分の両端部を完全に拘束する。なお、この繊維束の両端部の拘束については、繊維束を構成する単繊維群が自由に移動できないように前記両端部の外周を粘着テープによって巻き付けたり、締め付け具によって強い力で把持したりすることによって行うこともできる。また、接着剤を前記両端部のみに含浸付着させて繊維束を構成する単繊維同士を接着固定することによっても行うことができる。このようにすれば、前記第1の実施態様とは異なって、繊維束の両端部を固定するテープ部、あるいは接着固定された部分で切断することによって、巻取枠から取り外すことができる。なお、この取り外しに際しては、繊維束が切断される両端部を把持して張力が作用したままの状態で繊維束の両端を固定するストレッチャーのような固定治具を取り付けるようにすると、巻取枠から切断した繊維束を取り外す時に張力を一旦緩和させずに緊張させたままの状態で取り外すことができる。
ただし、この第2の実施態様において、前記固定治具を使用しない場合では、埋包材によって繊維束を埋包処理して固定化する前に、両端部が切断された繊維束に対して、その両端部に対して改めて所定の張力を付与する。そうすると、切断された両端部では、単繊維群が互いの位置を変えることなく拘束されているために、改めて張力を与えると元の良好な引き揃え状態に容易に戻ることができる。そして、このようにして張力を付与した状態で、この繊維束を埋包材中に埋め込んで一体化し、繊維束を構成する単繊維群が引き揃えられて均一に配列した状態で埋包材により固定化される。すると、埋包処理された繊維束を構成する単繊維は、その運動の自由度が完全に拘束されて、切削時に切削刃が当接しても容易に動くことができない状態を現出させることができ、極短繊維を容易に切削することができる。
以上に述べた、本発明の極短繊維を製造するのに好適な繊維束の製造方法とそのための装置に係る実施形態について、以下、図面によって具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明の極短繊維の製造方法を説明するために、それぞれ模式的に例示した2つの実施態様を説明するための模式説明図である。この図1及び図2にそれぞれ例示した実施態様において、先ず図1に例示した実施態様から説明する。
図1の実施態様において、1は巻取機であって綛(かせ)を巻き取るための周知のハンク・ワインダーを使用することができ、2はヤーンガイドなどで構成される合糸手段である。また、Pは少なくとも1個の糸巻体から構成される糸巻体群であって、図示した例では3個の糸巻体(P1,P2,P3,…)から構成されている。したがって、各糸巻体(P1,P2,P3,…)には、多数のフィラメント(単繊維)から構成されるマルチフィラメント糸条(y1,y2,y3,…)がそれぞれ巻き取られており、これら各糸条(y1,y2,y3,…)はそれぞれ前記合糸手段2へ導かれ、この合糸手段2を介して合糸された後、前記巻取機1に巻き取られる。
本例では、巻取機1に巻き取る際に、糸巻体(P1,P2,P3,…)から各糸条(y1,y2,y3,…)をそれぞれ解舒して引き出した後に合糸しながら、同時に巻き取っているが、合糸工程を切り離すこともできる。すなわち、糸巻体(P1,P2,P3,…)から各糸条(y1,y2,y3,…)をそれぞれ解舒して引き出して合糸し、合糸した糸条yのみによって、巻取機1へ供給するのに好適な一個の糸巻体を形成させ、巻取機1へはこの合糸した糸条yを供給する方式である。なお、このような方式を使用すると、多数台の巻取機1によって多数の繊維束Fを供給する際には、それぞれの巻取機に対して、多数の糸巻体(P1,P2,P3,…)を用意する必要は無くなるため、より効率的な作業が可能となる。
本発明では、例えば、0.001〜10dtexの単繊維繊度を有するマルチフィラメント(多数の単繊維群)からなる各糸条(y1,y2,y3,…)が合糸された糸条群yを互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えてこれらを束にすることによって、その総繊度が1万〜1000万dtexとなるように繊維束Fを調整する。そこで、前記巻取機1には、糸巻体群Pから供給された糸条群yをその上に必要な回数だけ重ね巻きして、所定の総繊度を有する繊維束Fを得るための巻取枠10が設けられており、この巻取枠には、巻取枠10の構成部材として、繊維束Fの巻取幅を所定の長さに規制する巻取幅規制部材11が設けられている。
これを図1に即して説明すると、前記巻取枠10は六角形状をした枠(フレーム)で構成されており、この六角形状をした巻取枠10上の各頂点部に図示したように12個の巻取幅規制部材11が設けられている。したがって、合糸された糸条群yは、巻取枠10には直接接触せずに浮いた上体で、前記巻取幅規制部材11上に繊維束Fとして重ね巻されることになる。ただし、巻取張力をより安定化するためには、巻取枠10の形状は、本例の正六角形のように辺の数がより多い正多角形であることが好ましいが、正三角形や正四角形などであってもよい。なお、以下の本発明の実施例の説明においては、説明の便宜上、六角形状の巻取枠10を代表させて説明するが、前記のように、本発明はこのような実施例に限定されるものではないことは言うまでも無い。
このようにして巻取枠10上に形成される繊維束Fは、切削加工に適した直線状に引き揃えられた部分Fsのみが極短繊維を製造するための被切削材として利用される。したがって、図1に示した例の場合には、巻取枠10が六角形を形成しているから、6ヶ所の繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部が埋包材によって埋包処理された被切削材を製造するための材料として供される。
なお、図1において、12は張力検出手段であって、所定の張力範囲に入るように供給する糸条群yの張力を制御しながら、巻き取る際の張力制御のために使用される。このように、張力制御をしながら糸条群yを巻取機1へ供給することによって、巻取幅規制部材11上に糸条群yを巻き取る際に、その引き揃え性を向上させるために必要な張力を付与することができる。ただし、図1の例では、糸巻体(P1,P2,P3,…)から各糸条(y1,y2,y3,…)を解舒する方法は、“縦取り方式”を採用したが、この方式で糸条(y1,y2,y3,…)を解舒すると一回の解舒ごとに解舒撚りが一回入るため、このような解舒撚りが入らないようにするために、糸巻体(P1,P2,P3,…)を回転させることによって糸条を(y1,y2,y3,…)を解舒する“横取り方式”を採用することもできる。
更に、図1の例では図示省略したが、各糸巻体(P1,P2,P3,…)からそれぞれ糸条(y1,y2,y3,…)を解舒して引き出す際には、製織に供する縦糸を整経する整経機などの準備工程で慣用されるようなテンション・コンペンセーター3(31,32,33,…)を各糸条(y1,y2,y3,…)ごとに設けることが好ましい。ただし、前記テンション・コンペンセーター3は、糸巻体(P1,P2,P3,…)のそれぞれに設けられ、これによって、各糸巻体(P1,P2,P3,…)など糸条(y1,y2,y3,…)をそれぞれ解舒する際に、解舒張力が大幅に変動することが無いように解舒張力を安定化するために慣用されるものである。なお、このテンション・コンペンセーター3は、低摩擦係数と耐磨耗性を有するセラミック製の市販品を好適に使用することができるので、その詳細説明はここでは省略する。
以上に述べたように、本発明においては、解舒張力が急激に変化しないように、各糸巻体(P1,P2,P3,…)からそれぞれ糸条(y1,y2,y3,…)を解舒するが、更に、巻取枠10へ巻き取る繊維束Fの引き揃え性を向上させるために予め設定する一定の張力で巻き取ることが好ましい。これは合糸工程を切り離した場合にも、図1の例のように合糸工程を連続させた場合でも同様である。ただし、以下の説明においては、合糸工程を巻取機1による巻取枠10への巻取工程にドッキングさせた場合について説明する。
本発明の巻取機1は、巻取張力を制御するために、供給される糸条群yの張力を検出するための張力検出手段12を備え、この張力検出手段12によって検出された張力が一定となるように巻取機1の巻取速度を制御して巻き取るようにする。あるいは、巻取枠10を回転駆動する巻取機1の駆動モーター(図示せず)としてトルクモーターを採用し、一定トルクで巻き取るようにしても良い。すなわち、本発明は、巻取方式や巻取機構に関係なく、糸条群yを決められた一定張力で巻取枠10上に重ね巻することが肝要である。
また、本発明の巻取機1においては、トラバース機構13を有する巻取機とし、巻取幅規制部材11上に繊維束Fを巻き取る際に、巻取枠10へ供給する糸条群yを、巻取幅規制部材11の巻取幅に対応させてトラバースガイド(図示せず)によって綾振り運動させて巻き取ることは好ましい態様である。何故ならば、このようにして、巻取幅規制部材11上に糸条群yを幅方向に整然と揃えながら巻き取ることによって、繊維束Fの引き揃え性をより向上させることができるからである。
このようにして、巻取枠10上に巻き取られた繊維束F中で、六角形状巻取枠で各辺に相当する6箇所に巻き取られた各繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)は、巻取時に付与された張力によって緊張した状態にあり、しかも、直線状に巻き取られている。このため、この直線状部分の繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)は、極めて良好な引き揃え状態にあるから、この部分をそのまま前述の埋包材によって埋包処理すれば、極短繊維を得るための被切削材として好適な材料となる。
なお、巻取枠10上に巻き取った直線状部分の繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)以外の六角形枠の各頂点部に巻き取られた繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)に関しては、この部分に単繊維群中へ良好に浸潤する速乾性の接着剤を含浸させた後、この接着剤を固化することによって、この繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)を固定しておくことは本発明では好ましい実施態様である。
何故ならば、繊維束Fの切断、巻取枠10の収縮といった何らかの理由によって、繊維束Fが緊張状態から弛緩状態へ移行したとしても、このような状況を現出させておけば、少なくとも繊維束Fを構成する単繊維群が互いにその位置を変えるように動かないように運動の自由が拘束されているために、繊維束Fを再び緊張状態に復帰させることによって、元の良好な引き揃え状態へ容易に復帰させることができるからである。
しかも、この部分の繊維束は、直線状に引き揃えられていないために、極短繊維を得るために切削する被切削材としては不適であるから、この部分を被切削材として使用できない接着剤固定をすることが、本発明では好ましいのである。ただし、本発明においては、後述するように、繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)部を接着剤で固定することは好ましい実施態様ではあるが、これが必ず必要であるわけではないことをここで念のために付言しておく。
以上に述べた本発明の巻取枠10は、図1に例示した六角形枠のような正多角形枠であったが、本発明の巻取枠はこのような例に限定されるものではなく、図2に例示した正多角形枠以外の巻取枠10’を使用することもできる。この図2に例示した巻取枠は、棒状巻取枠10’の両端に2つの巻取幅規制部材11’が設けられており、この2つの巻取幅規制部材11’をそれぞれ折り返し部として糸条群y’を巻取幅規制部材11’に重ね巻きして所定の総繊度を有する繊維束F’を得ようとするものである。
ただし、このような例では、巻取幅規制部材11’で合糸された糸条群yが折り返し巻されるために、図1の六角形状巻取枠10のような多角形状巻取枠と比較すると、張力変動が大きくなる。したがって、このような例に使用する巻取機1’では、糸巻体群P’から糸条群y’をそれぞれ解舒する際に、解舒張力が大幅に変化するためこの影響を低減するために、各糸巻体P’に対して、テンション・コンペンセーター3’を設けて解舒張力の変動幅が大きくなるのを抑制することが好ましい。このようにして、解舒張力の変動幅を抑制した後、張力検出手段12’によって巻取張力を検出しながら、サーボモーター14’の回転を制御した上で、合糸手段2’によって合糸された糸条群y’を棒状巻取枠10’上にトラバース装置13’によって所定の巻取張力で巻き取る。
以上に述べたようにして、所定の総繊度1万〜1000万dtexとなるように調整された繊維束を良好な引き揃え状態で得ることができる。そこで、次に、極短繊維を切削加工によって得るために、このようにして良好に引き揃えられた繊維束を埋包材によって埋包処理する工程について、以下に図3〜図6を参照しながら詳細に説明する。
本発明においては、前記埋包処理を図1に例示したような多角形状巻取枠10、あるいは図2に例示したような棒状巻取枠10’に巻き取ったままで行うことができる。ここで、図3は、図1に例示した六角形状の巻取枠10を使用して巻き取った繊維束Fを埋包処理する方法を具体例として使用した実施態様であって、図3(a)は模式平面図、そして、図3(b)は模式側面図をそれぞれ示したものである。また、図4は繊維束Fを埋包材5によって埋包処理するための処理槽4を模式的に例示した説明図(平面図)である。また、図5は、液体状にされた埋包材5を充填した処理槽4中に繊維束Fを巻いたままの巻取枠10を浸漬して埋包処理するステップを説明するための模式説明図であって、図5(a)は模式平面図、そして、図5(b)は模式側面図をそれぞれ示している。更に、図6は、液体状の埋包材5を冷却して固化させた後、前記処理槽4から取り出した状態を模式的に例示した模式側面図である。なお、これら図3〜図6に示した例では、巻取枠は図1に例示した六角形を有するものを代表例として使用したが、本発明の主旨を満足する限り、これに限定されることはないことは言うまでも無い。
本発明では、繊維束Fを巻き取ったままの巻取枠10を直接用いて埋包処理することができるが、このときには最初のステップとして、巻取枠10を巻取機1から取り外す際に、前述のように巻取幅規制部材11上に巻き取られた繊維束Fの引き揃え状態を良好に維持しておくために、繊維束Fを緊張状態のままで変形させないことが必要となる。したがって、巻取枠10は回転駆動軸からロックを解除すれば、そのまま着脱自在となるような機構であることが好ましい。そうすれば、図3に例示したように、巻き取られた繊維束Fに直接あれずに巻取枠10を巻取機1からそのまま取り外すことができる。
そして、次のステップとして、本例の六角形状巻取枠10に対応させて、図4に例示したような六角形の形状を有する処理槽4を準備し、この処理槽4に液状の埋包材5(例えば、水、溶融パラフィン、溶融樹脂)を充填しておく。このとき、常温では溶融しないパラフィンや樹脂などについては、前記処理槽4に加熱装置を付設しておき、処理槽4を加熱することは言うまでも無い。
次に、図5に例示したように、前述のようにして液体状の埋包材5を充填した処理槽4中に繊維束Fを巻いたままの巻取枠10を浸漬する。なお、この処理に当っては、繊維束F内に存在する気泡を除去するために、繊維束Fを巻いた状態の巻取枠10を処理槽4と共に一旦真空容器中へ入れて真空脱泡し、真空脱泡した繊維束Fに対して埋包処理するようにしてもよい。このようにして液体状の埋包材5中に繊維束Fを浸漬して、繊維束Fを構成する単繊維群間へ埋包材5を十分に含浸させた後、冷却して埋方材5を固化させて繊維束Fを構成する単繊維群を埋包材5中に埋包させる。
そして、最後のステップとして、図6に例示したように、埋包処理された繊維束Fを切削して極短繊維とするために必要な直線状部分をカッターによって切り出して被切削材とする。例えば、図6においては、一転鎖線で示した部分をカッターによって切り出し、これによって、例えば、図1に示した直線状の繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部を極短繊維の製造時に切削に供することができる。
以上に述べた実施態様は、巻取枠10又は10’を巻取機1又は1’からそのまま取り出して、繊維束F又はF’を巻取幅規制部材11又は11’上に巻きつけたままの巻取枠10又は10’をそのまま使用して埋包処理するものであり、本発明においては、このような方法を使用することが好ましい。しかしながら、本発明はこのような例に限定されず、前述のように、巻取枠10又は10’から接着剤や締付治具などで処理した繊維束F又はF’を切り出して巻取枠10又は10’から切り離した状態で埋包処理することもできる。そこで、以下に、このような埋包処理について、図7及び図8を参照しながら詳細に説明する。
図7は、巻取枠10から繊維束Fを切り離した状態で行う埋包処理の実施態様を説明するために模式的に例示した模式説明図(平面図)である。この埋包処理においては、図7に例示したように、半割の埋包材充填容器6を図1に例示した直線状繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部に取り付ける。なお、この埋包材充填容器6は半割構造を有しており、半割部を合体させたときに、前記直線状繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部を締め付ける両端部と半割部から液体状の埋包材が漏れ出さないようにシリコンゴムなどのシール材を介して締め付けた状態で直線状繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部に装着する。なお、このとき、シール性を良くするために、液状又はペースト状のシール剤を前記シール部に補助的に使用するようにしても良い。
このようにして埋包材充填容器6を直線状繊維束(Fs1,Fs2,…,Fs6)部に取り付けた状態で、液体状の埋包材5を埋包材充填容器6中へ入口6aと出口6bとから循環させ、繊維策F中に存在する気泡や埋包材充填容器6に存在する空気を押し出すと共に、埋包材充填容器6中に埋包材を充填する。ただし、このとき、埋包材として、氷を使用することにすれば、粘度が低くいため繊維束Fへ良好に進入させることができる。したがって、このような状態で、埋包材充填容器6をマイナス温度に冷却すれば内部の水が氷結して、首尾よく繊維束Fを氷からなる埋包材によって埋包処理することができる。
また、既に述べたように、図1のように六角形状の巻取枠10の各頂点部に巻き取られた繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)部を接着剤によって固定し、この部分で各単繊維の運動の自由度を完全に拘束した後、この部分を切断して巻取枠から取り外す方法もある。ただし、このケースでは、繊維束Fの切断を行わずに、巻取枠10を収縮自在の構造として巻取枠10だけを収縮させて取り外し、繊維束Fだけを取り出すこともできる。なお、このような収縮構造の具体例としては、例えば、図1に示した巻取幅規制部材11を支持する放射状に延びた6本の棒状フレームをテレスコープ構造あるいはヒンジなどによって折り畳み自在構造にして伸縮自在とするような構造が考えられる。
このようにして、巻取枠10から繊維束Fを取り出すことができると、接着処理された部分を両持ちして所定の張力を付与すると、繊維束Fを再び良好な引き揃え状態へと復帰させることができる。ただし、この場合には、繊維束Fを巻取枠10から取り外す場合、取り出す繊維束Fがなるべく大変形しないように配慮する必要がある。何故ならば、取り出す繊維束Fを大変形させてしまうと、この変形時に接着剤で固定した部分以外の繊維策Fを単繊維群が変形して互いの位置を変えてしまうからである。そうすると、少しの張力を加えただけでは、繊維間摩擦などの影響を受けて、元の状態の位置に各単繊維を復帰させることが困難な事態が生じるからである。
したがって、図8に示すような繊維束Fの取り外し時に繊維束Fが大変形しないように、図示した矢印方向に所定の張力を付与するストレッチ式治具7を作成しておき、この治具7を巻取枠10に巻き取られた状態の直線形状繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)部に取り付けて、この治具7の外側で繊維束Fを切り出すような工夫をすることによって、この部分の繊維束(Fe1,Fe2,…,Fe6)が大きく変形しないように配慮することが好ましい。そして、このようにすれば、図3〜図6に例示した巻取枠10に代えて治具ごと埋包処理に供することができ、図3〜図6に例示したように埋包処理をより容易に行うことができる。
以下、実施例により本発明の極短繊維の製造方法を説明する。
まず、ポリエステルからなる10dtexの短繊維5本の集まり10組を枠の1辺の直線部長さが500mmで6角形状の枠を使用して図1に例示したのと同様の装置で4000回転巻取り、200万dtexの繊維束とした。かせ枠4の直線部に埋包材充填容器6を装填し、埋包材である水をカセット内に充填し、埋包材充填容器6の外周部に冷媒(ブライン)が循環するジャケットを設けて、−12℃の温度で15時間かけて埋包材充填容器6内を氷結させ、氷を埋包材とする幅100mmの繊維束(実施例1)を得た。
まず、ポリエステルからなる10dtexの短繊維5本の集まり10組を枠の1辺の直線部長さが500mmで6角形状の枠を使用して図1に例示したのと同様の装置で4000回転巻取り、200万dtexの繊維束とした。かせ枠4の直線部に埋包材充填容器6を装填し、埋包材である水をカセット内に充填し、埋包材充填容器6の外周部に冷媒(ブライン)が循環するジャケットを設けて、−12℃の温度で15時間かけて埋包材充填容器6内を氷結させ、氷を埋包材とする幅100mmの繊維束(実施例1)を得た。
更に、上記で得られた繊維束を枠直線部の両端を繊維束固定具7で固定し、一度張力を解除し、更に張力を付与した状態で埋包材充填容器6を装填し、埋包材である水を埋包充填容器6内に充填し、埋包材充填容器6の外周部に冷媒(ブライン)が循環するジェケットを設けて、−12℃の温度で15時間かけて埋包材充填容器6内を氷結させ、氷を埋包材とする幅100mmの繊維束(実施例2)を得た。
また一方、単繊維を手で束ねて200万dtexの繊維束を作り、該繊維束を埋包材充填容器6に装填し水を埋包材として埋包材充填容器6内に装填し、埋包材充填容器の外周部に冷媒が循環するジェケットを設けて−12℃の温度で15時間かけて氷結させて幅100mmの繊維束(比較例1)を得た。
これら繊維束の製作方法による効果を確認するために、固定刃と移動刃とを剪断刃として設け、これら剪断刃に対して所定の切断長だけ繊維束を押し出して切断するいわゆるギロチンカッター式繊維束切断装置(小野打製作所、型式:D100)にて切断した。ギロチンカッター式繊維束切断装置を使用した切断条件として、刃の幅120mm、刃の高さ90mm、刃の厚み12mm、刃先形状が片刃で先端各60°のものを使用し、1分間あたり200回往復、送り送り速度1分間あたり20mmの条件で切断長0.05mmの設定とし、カット後のサンプルを顕微鏡を使用してカット長を任意に抽出したサンプル200ヶについて測定した。
その結果、実施例1及び2ではミスカットの発生がほとんど診られなかったが、比較例1では多くのミスカットが発生していた。
本発明の製造方法によって得られる繊維束をカットすることにより得られる極単繊維は、極短の光学干渉性繊維を接着剤中に混入してこれを塗料として使用したり、化粧品に混入させたりして使用したり、あるいはフロック加工用、印刷機のトナー原料などとしても使用することができるなど広範な用途が期待できる。
1:巻取機
2:合糸手段
3(31,32,33,…):テンション・コンペンセーター
10:巻取枠
11:巻取幅規制部材
12:張力検出手段
13:トラバース機構
F:繊維束
Fs1,Fs2,…,Fs6:直線状部分の繊維束
Fe1,Fe2,…,Fe6:各頂点部に巻き取られた繊維束
P(P1,P2,P3):糸巻体(糸条パッケージ)
y(y1,y2,y3):マルチフィラメント糸条
2:合糸手段
3(31,32,33,…):テンション・コンペンセーター
10:巻取枠
11:巻取幅規制部材
12:張力検出手段
13:トラバース機構
F:繊維束
Fs1,Fs2,…,Fs6:直線状部分の繊維束
Fe1,Fe2,…,Fe6:各頂点部に巻き取られた繊維束
P(P1,P2,P3):糸巻体(糸条パッケージ)
y(y1,y2,y3):マルチフィラメント糸条
Claims (7)
- 多数の単繊維群から構成されるマルチフィラメント糸条が巻かれた少なくとも1つの糸巻体から糸条を解舒して巻取に供するに際して、複数の糸巻体から解舒された各糸条を巻き取る場合にあってはこれら糸条を合糸した後に巻取に供し、巻取に供された糸条が重ね巻されて所定の総繊度を持った繊維束を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所が形成される巻取枠に所定の巻取張力を付与しながら巻取り、加熱によって液化又は気化する埋包材を液体状又は気体状にし、繊維束を構成する単繊維群が少なくとも直線状に引き揃えられた状態にある前記箇所に対して繊維束の周囲を囲繞させながら繊維束を形成する単繊維群間へ液体状又は気体状の前記埋包材を進入させて埋包処理をし、埋包処理をした直線状に引き揃えられた繊維束部を切断して被切削材を作製し、そして、前記被切削材の切断端面を切削加工することによって繊維長が0.005〜1mmの極短繊維を製造することを特徴とする極短繊維の製造方法。
- 前記埋包材が、ドライアイス、氷、パラフィン、及び前記繊維束よりも低融点を有する熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材である、請求項1に記載の極短繊維の製造方法。
- 前記巻取枠を多角形状又は棒状にし、前記多角形状巻取枠の各頂点部分又は棒状巻取枠の両端部分で繊維束の折り曲げ部を形成させ、前記「繊維束を構成する単繊維同士が互いに並行した直線状の引き揃え箇所」を前記折り曲げ部間に形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の極短繊維の製造方法。
- 前記巻取枠に巻き取る繊維束の巻取幅を規制するための巻取幅規制部材を前記折り曲げ部で設け、巻取枠に巻き取る繊維束の巻取幅を一定幅に制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の極短繊維の製造方法。
- 前記繊維束を前記巻取枠に巻き取られたままの状態で液体状又は気体状の埋包材によって埋包処理することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の極短繊維の製造方法。
- 前記巻取枠に形成された前記直線状の引き揃え箇所中の埋包処理に供する繊維束部分の外側両端に対して、前記両端を固定して繊維束を構成する単繊維群が互いにその位置を変えないようにする治具を取り付けるか、あるいは前記両端に接着剤を含浸させた後、巻取枠上の繊維束に大変形を与えることなく前記巻取枠から繊維束を取り出し、取り出した繊維束に対して所定の張力を付与した状態で前記埋包処理を行うことを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の極短繊維の製造方法。
- 単繊維の繊度が0.001〜10 dtexであって、これら単繊維群によって構成される前記繊維束の総繊度が1万〜1000万dtexであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の極短繊維の製造方法。
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- 2003-10-06 JP JP2003346788A patent/JP2005113291A/ja active Pending
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