JP2005113192A - 転炉内スラグの流出防止具 - Google Patents

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Yuzo Tajiri
裕造 田尻
Toshimi Tsujimoto
利実 辻本
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Abstract

【課題】ガイド部の高温強度および高温耐食性を改善し、ガイド部の溶損や折損の少ないスラグ流出防止具(ダーツ)を提供する。
【解決手段】転炉の出鋼孔からのスラグの流出を防止するための耐火物からなるスラグ流出防止具5であって、出鋼終了時に出鋼孔を閉塞するためのヘッド部5aと、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部5bとを備え、ガイド部がAl23を45質量%以上含有する耐火物からなるスラグ流出防止具。
【選択図】図3

Description

本発明は、炉内で処理された溶銑または溶鋼を転炉から出鋼する際に、溶鋼上に浮遊しているスラグが出鋼孔から流出するのを防止するための転炉内スラグの流出防止具に関する。
溶銑の脱りん処理や精錬が終了すると、転炉は傾斜させられ、炉内の溶銑、溶鋼は転炉の側壁に設けられた出鋼孔を通して取鍋に移される。転炉内には溶銑、溶鋼とともにその上に浮遊しているスラグが存在する。そのスラグが流出して取鍋に入ると鋼の品質を低下させる。従って、出銑、出鋼が終わった段階でスラグの流出を防止する対策が必要である。出鋼孔の閉塞は、その対策の一つである。
図1は、出銑または出鋼(以下、これらを「出鋼」で、また溶銑および溶鋼を「溶鋼」で代表させる)の終了段階の状況を示す転炉の縦断面図で、転炉がほぼ水平状態にされ、溶鋼が転炉内に僅かに残っている状態を示す。出鋼が最終段階になると、図1に示すように溶鋼2の上面に浮遊するスラグ3が出鋼孔4から流出するのを防止するためにスラグの流出防止具5(形状が投げ矢に似ているため一般にダーツと呼ばれているので、以下「ダーツ」と記す)が転炉内に装入される。
図2は、図1に示す出鋼孔周辺の拡大図である。同図に示すように、ダーツ5はヘッド部5aとガイド部5bとを備えており、ヘッド部の上方の中央には把持棒5cが設けられている。この把持棒は、装入設備でダーツを転炉内に装入する場合に使用される。
出鋼が最終段階に入り、炉内の溶鋼が少なくなった段階でダーツが炉内に装入され、出鋼孔4の直上に投下される。ダーツ5は、図示のようにそのガイド部5bが出鋼孔内に侵入し、それによりダーツの溶鋼上での移動が規制される。ヘッド部は溶鋼量が減じるに従ってガイド部で誘導されて出鋼孔に近づき、溶鋼が全て排出されるとスラグが流出する前に出鋼孔はダーツのヘッド部5aにより閉塞される。このようにしてスラグ3の流出が防止される。図3は、出鋼が完了した時のダーツ5の状態を示す図である。
ヘッド部5aは、スラグ中で浮遊させておく必要があるのでスラグとほぼ同じ比重となるような材料で構成されている。例えば、クロム鉱石、マグネシア、ベイナイト等からなる耐火物等に比重調整材としての鉄鉱石、鉄鋼粒等を混合した耐火物である。
ダーツのガイド部は、高温の溶鋼およびスラグと接触して溶損し、かつ出鋼流により外力を受ける。従って、優れた耐高温腐食性(溶鋼および溶融スラグに対する耐食性)および高温強度を持つことが要求される。従来、ガイド部の材料としては、SiO2を60〜80%、Al23を18%程度含有する蝋石耐火物が使用されていた。
特許文献1(特開平11−6007号公報)にはクロマイト砂(主成分Cr23:45%以上、Fe23:32%以下、Al23:20%以下、MgO:11%以下)を90〜20%、珪砂を10〜80%含有するブレンド砂に、バインダーとしてブレンド砂に対して4〜7%の珪酸ソーダと0.4〜0.7%の有機酸エステルを混合・混錬したダーツ用の耐火物が開示されている。
しかし、このような耐火物をガイド部に用いても、その耐高温腐食性および高温強度が十分でなく、折損が頻発する。そうすると、ダーツが出鋼孔に的確に挿入されず、スラグの流出が生じて溶鋼の品質を低下させてしまう。
図4は、ダーツのガイド部が折損した場合に生じる現象を説明するための図で、同図の(a)はガイド部が折損したダーツが横転して浮遊している状態を、同図(b)は、ダーツが傾斜して浮遊している状態を、同図(c)はダーツが垂直に浮遊しながら出鋼孔直上からそれて移動した状態をそれぞれ示す。
ガイド部が図2に示すA部で折損した場合、ガイド部が出鋼孔内から抜けるので、ダーツは図4に示したように横転、傾斜または垂直のいずれかの状態で浮遊することになる。そのため、いずれの場合もダーツのヘッド部はガイド部で正常に出鋼孔に導入されなくなり浮遊することになるが、浮遊する領域は、出鋼孔4に向かう溶鋼の流れにより出鋼孔周辺上に限定される。したがって、出鋼が終了する時点ではダーツは横転または傾斜した状態で出鋼孔を塞ぐことになる。その場合、スラグの流出をある程度防止することができるが、ヘッド部と出鋼孔との間に生じる隙間からスラグが流出する。なお、ガイド部が折損した場合に図3の(a)、(b)および(c)のいずれの状態になるかは、折損位置とダーツの比重等により定まる。
特開平11−6007号公報
本発明の課題は、転炉から出鋼する際に、溶鋼上に浮遊するスラグが出鋼孔から流出するのを防止するために使用されるダーツにおいて、そのガイド部の耐高温腐食および高温強度を改善し、折損の少ないダーツを提供することにある。
本発明者らは、ダーツのガイド部に適した耐高温腐食性および高温強度に優れた耐火物を開発するため種々実験検討した結果、ガイド部をAl23を主体とする耐火物で形成すればよいことを確認した。
なお、従来、ダーツの損傷はヘッド部分の溶損と、ヘッド部とガイド部の取付け部の強度不足が原因と考えられており、従って、ガイド部を耐高温腐食性の高強度材料で構成するという発想はなかった。
本発明は、上記のような知見に基づきなされたもので、その要旨は下記の通りである。
(1)出鋼孔を閉塞するためのヘッド部と、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部とを備えた耐火物からなる転炉内スラグの流出防止具であって、ガイド部がAl23を45質量%以上含有する耐火物からなる転炉内スラグの流出防止具。
(2)出鋼孔を閉塞するためのヘッド部と、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部とを備えた耐火物からなる転炉内スラグの流出防止具であって、ガイド部がAl23および不純物からなる転炉内スラグの流出防止具。
本発明のスラグ流出防止具は、従来から使用されているダーツと同様に出鋼終了時に出鋼孔を閉塞するためのヘッド部と、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部とを備えている。ガイド部は図2に示すように、ヘッドの下部中央に設けられている。ヘッド上部中央には、ダーツを転炉内に搬入するのに使用するための炭素鋼等からなる把持棒を設けておくのが好ましい。
ヘッド部の形状は図3で示したように半球体状が好ましい。すなわち、半球状体とすることにより、ヘッド部を出鋼孔内にスム−ズに導入することができ、図3で示したようにヘッドの大径部で完全に出鋼孔を閉塞することができるからである。ヘッド部の材質は通常使用されている耐火物でよく、好適な耐火物としては、例えばクロム鉱石、マグネシア、ベイナイト等を挙げることができる。
ヘッド部は、図2に示すようにスラグ内で浮上させておく必要があるため、その比重はスラグと同じかまたは少し高めにするのがよい。ガイド部の中心には芯金が挿入され、その比重がヘッド部の耐火物よりも大きいので、ダーツ全体としては下部の比重が上部のそれよりも大きくなって、ダーツは溶鋼およびスラグ内で垂直に立つことになる。
また、ヘッド部の側面には上下方向に溝(図2の6)を多数設けておくのが好ましい。溝を設けておくことにより、出鋼末期に炉内溶鋼の排出を円滑にし、出鋼歩留りを上げることができる。
ガイド部は、先にも説明したようにヘッド部を出鋼孔に導くために必要であり、その先端から出鋼孔に挿入されて溶鋼が減じるに従いヘッド部を出鋼孔に近づけ、出鋼が完了すると図3で示した状態となってヘッド部が出鋼孔を閉塞する。したがって、ガイド部の断面形状や直径および長さ等の寸法は、上記の使用形態を考慮して適宜選定すればよい。
ガイド部は、高温の溶鋼およびスラグに触れ、しかも前記のように溶鋼流による外力を受ける。ガイド部の耐火物が溶損したり、耐火物に亀裂が生じたりすれば、侵入する溶鋼によって芯金が溶かされて、折損に到る。従って、ガイド部は、高温腐食に耐え、かつ高強度の耐火物で構成する必要がある。そのためにはAl23を45質量%以上含有する耐火物で構成するのがよい。
Al23含有量を45質量%以上としたのは、45%未満ではガイド部の溶損が著しくなるからである。好ましいAl23の含有量は50質量%以上である。Al23以外の組成成分は特に限定されるものではなく、一般に使用されている耐火物でよい。また、Al23と付随する不純物からなる耐火物でもよい。好ましい耐火物は、質量%で、Al23が50〜80%、SiO2が10〜40%のものである。
[曲げ強さ評価試験]
表1に示すAl23含有量が異なる9種の耐火物の曲げ強さを評価した。即ち、各耐火物のキャスタブルを型に流し込んで乾燥する方法で40×40×160(mm)の試験片を作製し、それを1500℃で3時間保持した後、曲げ強度を測定した。その値を曲げ強度指数として表1に示す。曲げ強度指数とは表1のガイドNo.9の曲げ強度を1.00として相対比較した値である。
[実用試験]
表1の耐火物からなるガイド部を備えた図2に示す形状のダーツを各100個づつ製作した。製作したダーツの寸法等は下記のとおりである。
ヘッド部
半球状体の最大直径:330mm
半球状体の最大厚さ:200mm
ガイド部
直径:50mm
長さ:1280mm
中心に直径10mmの炭素鋼棒(芯金)を挿入
把持棒
材質:炭素鋼
直径:16mm
長さ:220mm
ヘッド部の主要組成は、質量%で、Cr23:37%、Fe23:25%、MgO:12%、SiO2:11%、Al23:13%である。
上記の耐火物、表1の耐火物および芯金等を用いて、ダーツを作製した。即ち、ヘッド部を構成する上記の耐火物のキャスタブルおよびガイド部を構成する耐火物のキャスタブルと芯金をそれぞれ型に入れて成形し、200℃で10時間焼き固めた。その後、ヘッド部にガイド部を挿入し、接合部をモルタルで固定した。
転炉を用い炭素鋼を精錬し、精錬後の出鋼が最終段階に入った時、具体的には転炉内に溶鋼が約150トンになった時に上記のダーツを転炉内に入れ、出鋼が完了した後、下記の評価をおこなった。なお、ダーツを転炉内に投下してから出鋼が完了するまでの時間は3分であった。評価結果を表1に示す。
同表に示す評価項目の定義は下記のとおりである。
1)成功率:100個のダーツのうちの折損しなかった個数
2)出鋼後のスラグ流出量:取鍋内のスラグの厚さから流出量を算出し、その量を溶鋼量(230トン)で割って溶鋼1トン当たりの流出量を求めた。
表 1
Figure 2005113192
表1から明らかなように、ガイド部が主にAl23からなる本発明のダーツ、およびガイド部が45%以上のAl23を含む耐火物からなる本発明のダーツを用いれば、曲げ強度指数は1.14以上であり、実用試験での成功率は80%以上とすることができ、スラグ流出量を出鋼量1トン当たり6.5Kg以下とすることができる。本発明のダーツを用いて出鋼した炭素鋼の品質には何ら問題はなかった。
本発明によれば、転炉からの出鋼時にダーツのガイド部の溶損が極めて少なく、使用時の折損率も小さくなるので、取鍋へのスラグの流出が防止できる。本発明は、製鋼工程における鋼の品質の向上に大きく寄与する。
出鋼の終了段階の状況を示す転炉の縦断面図である。 図1に示す出鋼孔周辺の拡大図である。 出鋼が完了した時のダーツの状態を示す図である。 ダーツのガイド部が折損した場合に生じる現象を説明するための図で、(a)はガイド部折損によりダーツが横転して浮遊しているた状態を、(b)はダーツが傾斜して浮遊している状態を、(c)はダーツが垂直に浮遊しながら出鋼孔直上から移動した状態をそれぞれ示す。
符号の説明
1:転炉、 2:溶鋼、 3:スラグ、 4:出鋼孔、5:スラグ流出防止具(ダーツ)
5a:ヘッド部、 5b:ガイド部、 5c:把持棒、 6:溝

Claims (2)

  1. 出鋼孔を閉塞するためのヘッド部と、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部とを備えた耐火物からなる転炉内スラグの流出防止具であって、ガイド部がAl23を45質量%以上含有する耐火物からなることを特徴とする転炉内スラグの流出防止具。
  2. 出鋼孔を閉塞するためのヘッド部と、このヘッド部を出鋼孔に導入するためのガイド部とを備えた耐火物からなる転炉内スラグの流出防止具であって、ガイド部がAl23 および不純物からなることを特徴とする転炉内スラグの流出防止具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103184309A (zh) * 2013-03-30 2013-07-03 马钢(集团)控股有限公司 一种应用于转炉的挡渣装置
CN110358889A (zh) * 2018-04-11 2019-10-22 江苏永钢集团有限公司 一种适用于50-180吨转炉出钢挡渣用的新型挡渣棒

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