JP2005106524A - 標準試料、ならびに校正方法、分析方法およびデバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 昇温脱離ガス分析装置を容易かつ高精度に校正することが可能な校正方法を提供する。
【解決手段】 校正用成分1を含有している高分子シート2により構成された標準試料10を使用してMS(質量分析計)のスペクトル位置(スペクトル位置と質量電荷比との間の対応関係)を調整することにより、TDS装置(昇温脱離ガス分析装置)を校正する。標準ガスを使用していた従来のTDS装置の校正方法とは異なり、校正作業を実施するためにキャピラリーなどの校正用器具やマスフローコントローラなどのTDS装置以外の他の機器を使用する必要がないため、校正作業が容易になると共に、キャピラリーに付着していた異物等の存在やTDS装置内の真空度低下に起因して校正精度に誤差が生じないため、校正精度が向上する。
【選択図】 図2
【解決手段】 校正用成分1を含有している高分子シート2により構成された標準試料10を使用してMS(質量分析計)のスペクトル位置(スペクトル位置と質量電荷比との間の対応関係)を調整することにより、TDS装置(昇温脱離ガス分析装置)を校正する。標準ガスを使用していた従来のTDS装置の校正方法とは異なり、校正作業を実施するためにキャピラリーなどの校正用器具やマスフローコントローラなどのTDS装置以外の他の機器を使用する必要がないため、校正作業が容易になると共に、キャピラリーに付着していた異物等の存在やTDS装置内の真空度低下に起因して校正精度に誤差が生じないため、校正精度が向上する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、昇温脱離ガス分析装置を校正するために使用される標準試料、ならびにその標準試料を使用した校正方法、分析方法およびデバイスの製造方法に関する。
近年、低分子量の水(H2 O)や二酸化炭素(CO2 )などの無機ガスをリアルタイムで高精度に分析するための分析方法として、昇温脱離ガス分析方法(Thermal Desorption Spectroscopy ;以下、単に「TDS」ともいう。)が利用されている。このTDSは、減圧環境中において試料を昇温加熱することにより、その試料から放出される多成分の脱離ガスを検出して分析する手法であり、このTDSを実施するために使用される昇温脱離ガス分析装置(以下、単に「TDS装置」ともいう。)は、例えば、脱離ガスの検出分析手段として質量分析計(Mass Spectrometry ;以下、単に「MS」ともいう。)を備えている。このTDSでは、質量電荷比(m/z;mはイオンの質量,zはイオンの価数)の検出上限値が200程度のMSを使用することにより、上記した水や二酸化炭素よりも分子量が大きな高分子などの有機ガスも分析することが可能であり、さらに、質量電荷比の検出上限値がより大きなMS(例えばm/z≦1000)を使用すれば、有機ガスの分析範囲をより広げることが可能である。
このTDSを継続的に実施する際には、安定した分析精度を確保するために、任意の期間ごとにTDS装置(実際には検出分析手段としてのMS)を校正しなければならない。このTDS装置の校正方法としては、一般に、装置内に残留しているエアーを検出することにより、その検出結果をバックグラウンドとして設定する手法が知られているが、この手法の他にも、エアーに代えて所定の標準ガスを使用する手法が知られている。この標準ガスを使用した校正方法としては、例えば、ガスクロマトグラフ/質量分析計(Gas Chromatograph/Mass Spectrometry ;GCMS)の校正作業において一般的に使用されているPFTBA(パーフルオロトリブチルアミン)を標準ガスとして使用する手法が挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。このPFTBAを使用した校正作業では、例えば、PFTBAが常温常圧下において液体であるため、開閉弁付きのキャピラリーを使用し、真空差圧を利用してTDS装置にPFTBAを供給している。この場合には、PFTBAに関する質量分析データ(マススペクトルデータ)を利用し、そのPFTBAのフラグメントイオンスペクトル(例えば、m/z=69,131,219,502,614)に基づいて、質量電荷比に対応するスペクトル位置(いわゆる質量数)、分解能および感度を校正することが可能である。
島津製作所製GCMS(GCMS−QP5000シリーズ)の使用マニュアル(44頁〜46頁;2.8.2 チューニング)
島津製作所製GCMS(GCMS−QP5000シリーズ)の使用マニュアル(44頁〜46頁;2.8.2 チューニング)
また、標準ガスを使用した校正方法としては、例えば、上記したPFTBAに代えて、キセノン(Xe)を含むガスを標準ガスとして使用する手法が考えられる。このキセノンを含むガスを使用した校正作業では、例えば、マスフローコントローラを使用することにより、キセノンを含むガスを一定圧力でTDS装置に供給することが可能である。この場合においても、キセノンを含むガスに関する質量分析データ(マススペクトルデータ)を利用すれば、そのキセノンのフラグメントイオンスペクトル(例えば、m/z=129,131,132)に基づいて、質量電荷比に対応するスペクトル位置、分解能および感度を校正することが可能であると見込まれる。
なお、分析装置の校正方法に関しては、上記した以外にも他の関連技術がいくつか知られている。具体的には、例えば、マスフローコントローラを使用して混合ガス(例えば窒素とアルゴンとの混合ガス(N2 /Ar))を標準ガスとして供給することにより、MSの感度を校正する方法(例えば、特許文献1参照。)や、標準ガスに代えて標準試料を使用し、具体的には劈開後に表面処理したウェハを標準試料として使用することにより、同様にMSの感度を校正する方法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
特開平05−217549号公報
特開平08−233780号公報
ところで、TDS装置を校正する上では、校正作業を実施する作業者の負担を軽減すると共に作業者ごとに校正水準に差異が生じないようにするために、その校正作業が可能な限り容易であることが好ましい。しかしながら、従来のTDS装置に関する校正方法では、校正作業を実施するために校正用の器具やTDS装置以外の他の機器を使用しなければならないため、校正作業が煩雑であり、その校正水準に個人差が生じやすいという問題があった。具体的には、例えば、上記したように、標準ガスとしてPFTBAを使用する場合にはキャピラリーを取り扱わなければならず、一方、標準ガスとしてキセノンを含むガスを使用する場合にはマスフローコントローラを操作しなければならない。
また、TDS装置を校正する上では、上記したように校正作業が容易である上、校正精度が十分に高いことが好ましい。しかしながら、従来のTDS装置に関する校正方法では、上記したように校正用の器具やTDS装置以外の他の機器を使用することに伴い、意図せずに校正精度が低下し得るという問題もあった。具体的には、標準ガスとしてPFTBAを使用する場合には、例えば、キャピラリーに付着していた異物等の存在に起因して校正精度に誤差が生じ得る。この場合には、特に、TDS装置のガス導入路(配管)にPFTBAが吸着して残留すると、その残留したPFTBAの存在に起因して分析結果に悪影響(例えばゴーストピークの発生やバックグラウンドの上昇)を及ぼし得る。一方、標準ガスとしてキセノンを含むガスを使用する場合には、例えば、TDS装置がマスフローコントローラを介してガスボンベに接続され、すなわちガスボンベからTDS装置に至る標準ガスの導入経路が長くなるため、TDS装置内の真空度低下に起因して校正精度に誤差が生じ得る。
これらのことから、TDS装置を使用して分析作業を安定的に実施するために、容易かつ高精度な校正技術の確立が望まれている。特に、TDS装置は、例えば、ディスプレイや太陽電池などに代表される各種デバイスの製造工程において品質管理目的で使用されているため、それらの各種デバイスの製造品質を確保する上で、容易かつ高精度な校正技術の確立が急務である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、昇温脱離ガス分析装置を容易かつ高精度に校正することが可能な校正方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、本発明の校正方法を利用して、分析用試料を高精度に分析することが可能な分析方法を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、本発明の分析方法を利用して、デバイスを高品質に製造することが可能なデバイスの製造方法を提供することにある。
また、本発明の第4の目的は、本発明の校正方法、分析方法およびデバイスの製造方法を実施するために使用可能な標準試料を提供することにある。
本発明に係る標準試料は、質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を校正するために使用されるものであり、ハロゲン系溶剤を含有している高分子、あるいは溶剤を含有させた高分子により構成されたものである。
本発明に係る標準試料では、ハロゲン系溶剤を含有している高分子、あるいは溶剤を含有させた高分子により構成されているため、非加熱状態、すなわち非校正作業時において高分子中にハロゲン系溶剤または溶剤を保持しており、加熱状態、すなわち校正作業時において高分子中からハロゲン系溶剤または溶剤を揮発させることにより脱離ガスとして放出することが可能となる。
本発明に係る校正方法は、質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を校正する方法であり、校正用成分に関する質量分析データに基づいて、昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、質量分析計を使用して、校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、この標準試料に関する質量分析データに基づいて、基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、この対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているときに、対応スペクトルの位置が基準スペクトルの位置に一致するように質量分析計を調整することにより、昇温脱離ガス分析装置を校正するステップとを含むようにしたものである。
本発明に係る校正方法では、校正用成分を含有している高分子により構成された標準試料を使用して昇温脱離ガス分析装置を校正することにより、その標準試料を使用して通常の分析作業とほぼ同様の作業を経て校正作業を実施することが可能である。この場合には、標準ガスを使用して校正作業を行っていた従来の校正方法とは異なり、校正作業を実施するために校正用器具や昇温脱離ガス分析装置以外の他の機器を使用する必要がないため、校正作業が容易になると共に、校正用器具に付着していた異物等の存在や昇温脱離ガス分析装置内の真空度低下に起因して校正精度に誤差が生じないため、校正精度が向上する。
本発明に係る分析方法は、質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を使用して分析用試料を分析する方法であり、校正用成分に関する質量分析データに基づいて、昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、質量分析計を使用して、校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、この標準試料に関する質量分析データに基づいて、基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、この対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているときに、対応スペクトルの位置が基準スペクトルの位置に一致するように質量分析計を調整することにより、昇温脱離ガス分析装置を校正するステップと、校正済みの昇温脱離ガス分析装置を使用して分析用試料を分析するステップとを含むようにしたものである。
本発明に係る分析方法では、本発明の校正方法を利用しているため、校正精度の向上に基づいて分析精度が向上する。
本発明に係るデバイスの製造方法は、質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を使用してデバイスを製造する方法であり、校正用成分に関する質量分析データに基づいて、昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、質量分析計を使用して、校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、この標準試料に関する質量分析データに基づいて、基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、この対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、対応質量電荷比が基準質量電荷比からずれているときに、対応スペクトルの位置が基準スペクトルの位置に一致するように質量分析計を調整することにより、昇温脱離ガス分析装置を校正するステップと、校正済みの昇温脱離ガス分析装置を使用して、デバイスを構成するデバイス部品を分析するステップと、デバイス部品を使用してデバイスを製造する工程とを含むようにしたものである。
本発明に係るデバイスの製造方法では、本発明の分析方法を利用しているため、分析精度の向上に基づいてデバイスの品質が向上する。
なお、本発明に係る標準試料または校正方法では、校正用成分としてハロゲン系溶剤を使用する場合には50.5以上の分子量を有する化合物により構成されものを使用し、その他の溶剤を使用する場合には56.1以上の分子量を有する化合物により構成されたものを使用するのが好ましく、特に、高分子がシート状構造を有しているのが好ましい。ハロゲン系溶剤またはその他の溶剤を構成する化合物の分子量が上記した範囲であれば、その化合物の分子量が、従来の校正作業に使用されていた昇温脱離ガス分析装置内の残留エアー中に含まれている各種ガス成分のうち、通常条件で最大の分子量を有する二酸化炭素の分子量(=44)よりも大きくなるため、校正作業を高精度に実施することが可能となる。
また、本発明に係る校正方法では、標準試料として、高分子中にあらかじめ校正用成分として未反応の単量体、未揮発の溶剤またはハロゲン系溶剤を含有しているものを使用してもよいし、あるいは高分子中に校正用成分として溶剤を含有させたものを使用してもよい。特に、高分子中に校正用成分として溶剤を含有させたものを標準試料として使用する場合には、高分子中に溶剤を含有させることにより標準試料を形成する工程を含むようにしてもよい。この場合においても、溶剤を構成する化合物の分子量は、ハロゲン系溶剤またはその他の溶剤に関して上記した場合と同様であるのが好ましい。特に、校正用成分として未反応の単量体を使用する場合には、46.0以上の分子量を有する単量体を使用するのが好ましい。
本発明に係る標準試料によれば、ハロゲン系溶剤を含有している高分子、あるいは溶剤を含有させた高分子により構成されており、加熱状態において高分子中からハロゲン系溶剤または溶剤を脱離ガスとして放出することが可能な構成的特徴に基づき、この標準試料を使用して本発明の校正方法、分析方法およびデバイスの製造方法を実施することができる。
また、本発明に係る校正方法によれば、校正用成分を含有している高分子により構成された標準試料を使用して昇温脱離ガス分析装置を校正するプロセス的特徴に基づき、校正作業が容易になると共に校正精度が向上するため、昇温脱離ガス分析装置を容易かつ高精度に校正することができる。
また、本発明に係る分析方法によれば、本発明の校正方法を利用していることに基づいて分析精度が向上するため、分析用試料を高精度に分析することができる。
また、本発明に係るデバイスの製造方法によれば、本発明の分析方法を利用していることに基づいてデバイスの製造品質が向上するため、そのデバイスを高品質に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る分析方法において使用される標準試料の構成について説明する。図1は、標準試料10の外観構成の一例を表している。
標準試料10は、TDS(昇温脱離ガス分析方法)を実施するために使用されるTDS装置(昇温脱離ガス分析装置)に関して、そのTDS装置を校正するために使用されるものであり、例えば、図1に示したように、校正用成分1を含有している高分子(ポリマー)、具体的には高分子シート2により構成されている。この標準試料10は、非加熱状態において高分子シート2中に校正用成分1を保持しており、加熱状態において高分子2中から校正用成分1を揮発させて放出するものである。
校正用成分1は、TDS装置の校正作業を行うために実質的に使用される揮発性の化合物であり、例えば、比較的低い沸点および比較的大きな分子量を有する化合物である。より具体的には、校正用成分1は、例えば、単量体(モノマー)を重合反応させることにより高分子シート2を生成する過程において、その高分子シート2中に残留した未反応の単量体であり、すなわち高分子シート2中にあらかじめ(本質的に)含まれているものである。この「未反応の単量体」とは、高分子シート2の重合反応過程において、重合反応率が不十分であったために高分子シート2中に必要以上に残留したものではなく、重合反応率が十分であった上で結果的に高分子シート2中に残留したものである。
高分子シート2は、校正用成分1を放出可能に保持するものであり、例えば、重合反応過程を経て生成された高分子が薄手の厚さとなるようにシート化されたものである。この高分子シート2の構成材料としては、例えば、加熱時に熱分解して不要なガスを発生しにくいものが好ましい。なお、校正用成分1を含有している高分子は必ずしも図1に示したようにシート化されている必要はなく、その高分子の態様は自由に変更可能である。
これらの校正用成分1(未反応の単量体)と高分子シート2との組み合わせ(校正用成分1/高分子シート2)としては、例えば、(1)アクリル樹脂系として、メタクリル酸メチル(MMA)/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸エチル/ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル/ポリメタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル/ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル/ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル/ポリメタクリル酸ブチル、または上記した各単量体/上記した各単量体と他の単量体(例えばエチレンやスチレン等)との共重合体、(2)スチレン/ポリスチレン、スチレン/スチレンと他の単量体(例えばアクリロニトリル、ブタジエン、メタクリル酸メチルまたは無水マレイン酸等)との共重合体、(3)フッ素樹脂系として、フッ化ビニリデン/ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル/ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン,ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン,パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン/ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、または上記した各単量体/上記した各単量体と他の単量体(例えばエチレン等)との共重合体などが挙げられる。このうち、フッ化ビニルの分子量(=46)は上記に列挙した一連の単量体群の中では比較的小さいが、そのフッ化ビニルの分子量は、従来の校正作業で使用されていたTDS装置内の残留エアー中に含まれている各種ガス成分のうち、通常条件で最大の分子量を有する二酸化炭素の分子量(=44)よりも大きいため、フッ化ビニルを使用しても校正作業を高精度に実施することが可能である。もちろん、上記に列挙した一連の単量体のうち、フッ化ビニル以外の他の単量体の分子量はフッ化ビニルの分子量よりも大きいため、それらの他の単量体を使用しても正作業を高精度に実施し得ることは言うまでもない。
次に、図1〜図5を参照して、本実施の形態に係る分析方法について説明する。図2は、TDS装置30のブロック構成を表している。また、図3および図4は分析工程の流れを説明するためのものであり、図5は分析工程のうちの校正工程の内容を説明するためのものである。なお、本発明の校正方法は本実施の形態に係る分析方法に適用されるものであるため、その校正方法に関しては以下で併せて説明する。
本実施の形態に係る分析方法は、図2に示したTDS装置30を使用して分析対象としての分析用試料20を分析するものであり、特に、図1に示した標準試料10を使用してTDS装置30の校正作業を行ったのち、その校正済みのTDS装置30を使用して分析用試料20の分析作業を行うものである。なお、図2では、TDS装置30に分析用試料20が導入されている場合を示している。以下では、まず、図2を参照してTDS装置30の構成に関して簡単に説明したのち、図1〜図5を参照して分析工程の詳細に関して説明する。
TDS装置30は、例えば、図2に示したように、装置本体40と、この装置本体40に接続された加熱ユニット51、温度コントローラ52および制御ユニット53とを備えている。この装置本体40は、ゲートバルブ41を介して空間的に連通または分離可能な2つのチャンバ、すなわち分析チャンバ40Aおよびロードロックチャンバ40Bを含んで構成されている。
分析チャンバ40Aは、分析作業を実施するためのチャンバである。この分析チャンバ40Aの内部には、分析用試料20を載置するための石英製のステージ42が設置されており、このステージ42は、分析チャンバ40Aの下面を貫通するように配置された石英柱43により支持されている。また、分析チャンバ40Aの上面には、その分析チャンバ40Aを貫通するようにMS(質量分析計;例えば4重極質量分析計)44が設置されている。さらに、分析チャンバ40Aの側面側に部分的に突出するように設けられた部屋には、ステージ42上に分析用試料20を載置するための移載アーム45が格納されている。
ロードロックチャンバ40Bは、分析チャンバ40Aに分析用試料20を搬送するためのチャンバである。このロードロックチャンバ40Bの上面には、分析用試料20を導入するための導入窓46が設けられている。また、ロードロックチャンバ40Bの内部には、ロードロックチャンバ40Bから分析チャンバ40Aへ分析用試料20を搬送するための搬送アーム47が格納されている。
加熱ユニット51は、石英柱43を介してステージ42に連結され、そのステージ42上に載置された分析用試料20を加熱するためのものであり、例えば、ハロゲンランプなどの赤外線ランプにより構成されている。温度コントローラ52は、加熱ユニット51の加熱温度を制御するものである。制御ユニット53は、TDS装置30全体を制御するものであり、例えば、コンピュータなどの処理装置により構成されている。
なお、このTDS装置30は、上記した一連の構成要素と共に、図示しない他の構成要素も備えている。この「他の構成要素」としては、例えば、分析チャンバ40A内を減圧するための減圧ポンプや、分析用試料20の温度を測定するための熱電対や、分析結果等を表示するためのモニタなどが挙げられる。
このTDS装置30を使用して分析用試料20を分析する際には、まず、(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業を行う(図5参照)。
すなわち、まず、校正用試料、すなわち校正用成分1を単体の状態(高分子シート2に含有されていない状態)で準備したのち、例えば、TDS装置30(MS44)を使用して校正用試料を質量分析することにより(図3参照;ステップS101)、その校正用試料に関する質量分析データ(マススペクトルデータ)を採取する(ステップS102)。なお、TDS装置30(MS44)を使用した質量分析手順の詳細については、後述する。
続いて、校正用試料に関する質量分析データに基づいて、TDS装置30を校正するための基準となる基準スペクトルSPおよびその基準スペクトルSPの基準質量電荷比S(m/z)を設定する(ステップS103)。具体的には、校正用試料に関する質量分析データ(横軸:質量電荷比m/z,縦軸:イオン強度)中に見られる一連のスペクトルおよび質量電荷比m/zを参照して、後工程においてMS44に関する機械的な校正処理、すなわちスペクトル位置の位置合わせ処理を行う上で基準となり得るだけの十分なイオン強度を有するスペクトルを「基準スペクトルSP」として設定すると共に、その基準スペクトルSPの質量電荷比m/zを「基準質量電荷比S(m/z)」として設定する。これにより、基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業が完了する。
続いて、(2)対応スペクトルCPおよび対応質量電荷比C(m/z)の特定作業を行うことにより(図5参照)、TDS装置30の校正作業を行う。
すなわち、図1に示した標準試料10を準備し、具体的には校正用成分1を含有している高分子シート2を所定の寸法角に切断したのち、まず、TDS装置30(MS44)を使用して標準試料10を質量分析することにより(ステップS104)、その標準試料10に関する質量分析データ(マススペクトルデータ)を採取する(ステップS105)。
このTDS装置30(MS44)を使用した標準試料10の質量分析手順は、例えば、以下の通りである。すなわち、まず、ゲートバルブ41を閉めて分析チャンバ40Aとロードロックチャンバ40Bとを空間的に分離すると共に、そのロードロックチャンバ40B内を大気開放した状態において、搬送アーム47の先端に設けられた試料受けに、導入窓46を通じて標準試料10を載置する。続いて、導入窓46を閉めてロードロックチャンバ40B内を減圧したのち、ゲートバルブ41を開けてロードロックチャンバ40Bをあらかじめ減圧されている分析チャンバ40Aと空間的に連通させる。続いて、標準試料10が載置された搬送アーム47をロードロックチャンバ40Bから分析チャンバ40Aまで移動させることにより、その搬送アーム47をステージ42に隣接させる。続いて、移載アーム45を搬送アーム47上まで移動させたのち、その移載アーム45の先端に設けられた爪を利用して標準試料10を搬送アーム47上からステージ42上に移動させる。続いて、搬送アーム47を分析チャンバ40Aからロードロックチャンバ40Bまで後退させたのち、ゲートバルブ41を閉じる。これにより、ステージ42上に標準試料10が載置されると共に分析チャンバ40Aがロードロックチャンバ40Bから空間的に分離され、分析準備が完了する。最後に、加熱ユニット51および温度コントローラ52を使用して標準試料10を所定の温度となるまで昇温加熱し、その標準試料10から放出される脱離ガス(揮発した校正用成分1)をMS44で検出して分析する。この「所定の温度」とは、標準試料10を脱離ガスとして揮発させ得る温度である。標準試料10の加熱時には、加熱ユニット51において赤外線が発生すると、その赤外線は石英柱43において集光したのちにステージ42を透過して標準試料10へ照射される。これにより、標準試料10が赤外線を吸収して発熱(温度上昇)するため、高分子シート2中から放出された校正用成分1が脱離ガスとして分析チャンバ40A内に放出される。
続いて、標準試料10に関する質量分析データに基づいて、基準スペクトルSPに対応する対応スペクトルCPおよびその対応スペクトルCPの対応質量電荷比C(m/z)を特定する(ステップS106)。具体的には、標準試料10に関する質量分析データ(横軸:質量電荷比m/z,縦軸:イオン強度)中に見られる一連のスペクトルおよび質量電荷比m/zを参照して、例えばイオン強度や質量電荷比m/z等に基づいて基準スペクトルSPと定性的に同質であるものと見込まれるスペクトルを「対応スペクトルCP」として特定すると共に、その対応スペクトルCPの質量電荷比m/zを「対応質量電荷比C(m/z)」として特定する。
続いて、対応スペクトルCPの対応質量電荷比C(m/z)と先に設定した基準スペクトルSPの基準質量電荷比S(m/z)とを比較し、その対応質量電荷比C(m/z)が基準質量電荷比S(m/z)からずれているか否かを判定する(図4参照;ステップS107)。
対応質量電荷比C(m/z)が基準質量電荷比S(m/z)からずれている場合(C(m/z≠S(m/z);ステップS107Y)には、TDS装置30の使用に伴ってMS44の分析結果に誤差が生じているものと判断し、その誤差が修正されるようにTDS装置30を校正する(ステップS108)。具体的には、MS44の機械的処理、すなわち質量分析データ中のスペクトル位置(スペクトル位置と質量電荷比m/zとの間の対応関係)を設定する処理を使用して、対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)の値)が基準スペクトルSPの位置(基準スペクトルS(m/z)の値)に一致するようにMS44を調整する。この調整手順をより具体的に説明すれば、例えば、基準質量電荷比S(m/z)=50.0と設定したのち、対応質量電荷比C(m/z)=49.8であった場合には、対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)の値)に0.2だけ誤差が生じているものと判断し、MS44の機械的処理を使用して対応質量電荷比C(m/z)=50.0となるまで対応スペクトルCPの位置をシフトさせることにより、その対応スペクトルCPの位置に関して生じていた誤差を修正する。これにより、TDS装置30の校正作業が完了する。
上記した(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業(ステップS101〜S103)および(2)対応スペクトルCPおよび対応質量電荷比C(m/z)の特定作業を含むTDS装置30の校正作業(ステップS104〜S108)が、本発明の校正方法に該当する。
最後に、(3)TDS装置30を使用した分析用試料20の分析作業を行い、すなわち校正済みのTDS装置30を使用して分析用試料20をTDS分析する(ステップS109)。なお、TDS装置30を使用した分析用試料20のTDS分析手順は、標準試料10に代えて分析用試料20を使用する点を除き、上記した標準試料10の質量分析手順とほぼ同様であるので、その説明を省略する。
これにより、上記した(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業、(2)対応スペクトルCPおよび対応質量電荷比C(m/z)の特定作業を含むTDS装置30の校正作業、ならびに(3)分析用試料20の分析作業を含む工程が全て完了し、TDS装置30を使用した分析工程が完了する。なお、対応質量電荷比C(m/z)のずれ判定時(ステップS107)において、対応質量電荷比C(m/z)が基準質量電荷比S(m/z)からずれていない場合(C(m/z)=S(m/z);ステップS107N)には、TDS装置30の校正(ステップS109)を行う必要はなく、その未校正のTDS装置30を継続使用して分析用試料20を分析することが可能である(ステップS109)。
本実施の形態に係る分析方法では、校正用成分1を含有している高分子シート2により構成された標準試料10を使用してTDS装置30を校正したのち、その校正済みのTDS装置30を使用して分析用試料20を分析するようにしたので、TDS装置30(MS44)を校正する場合に、分析用試料20に代えて標準試料10を使用する点を除き、その標準試料10を使用して、分析用試料20をTDS分析する場合とほぼ同様の条件(減圧条件等)および作業を経て校正作業を実施することが可能である。この場合には、上記「背景技術」の項において説明した標準ガスを使用する従来の校正方法とは異なり、校正作業を実施するためにキャピラリーなどの校正用器具やマスフローコントローラなどのTDS装置30以外の他の機器を使用する必要がないため、校正作業が容易になると共に、キャピラリーに付着していた異物等の存在やTDS装置30内の真空度低下に起因して校正精度に誤差が生じないため、校正精度が向上する。したがって、TDS装置30を容易かつ高精度に校正することが可能になり、これによりTDS装置30を使用して分析用試料20を分析する際の分析精度が向上するため、分析用試料20を高精度に分析することができる。
また、本実施の形態に係る校正方法では、校正用成分1を含有している高分子シート2により構成された標準試料10を使用してTDS装置30を校正しているため、上記したように、TDS装置30を容易かつ高精度に校正することができる。
この校正方法では、特に、TDS装置30の校正作業として、校正用試料(校正用成分1)に関する質量分析データに基づいて設定した基準質量電荷比S(m/z)と標準試料10に関する質量分析データに基づいて特定した対応質量電荷比C(m/z)とを比較することにより、対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)の値)が基準スペクトルSPの位置(基準スペクトルS(m/z)の値)に一致するようにMS44を調整したので、質量電荷比m/z、すなわちスペクトル位置と質量電荷比m/zとの間の対応関係(いわゆる質量数)を高精度に校正することができる。
また、本実施の形態に係る標準試料10では、校正用成分1を含有している高分子シート2により構成されているため、非加熱状態、すなわち非校正作業時において高分子シート2中に校正用成分1を保持しており、加熱状態、すなわち校正作業時において高分子シート2中から校正用成分1を揮発させることにより脱離ガスとして放出することが可能となる。したがって、この標準試料10を使用して本実施の形態に係る分析方法および校正方法を実施することができる。
この標準試料10では、特に、薄手の高分子シート2を使用しているため、校正作業時において加熱された際に高分子シート2の全体に渡ってほぼ均等に熱エネルギーが供給され、その高分子シート2の全体に渡って校正用成分1がほぼ均等に揮発する。したがって、高分子シート2中に保持されていた校正用成分1を容易に揮発させることができると共に、その高分子シート2から十分な量の校正用成分1を脱離ガスとして放出させることができる。
また、標準試料10では、高分子シート2中にあらかじめ残留している未反応の単量体を校正用成分1として使用しているため、高分子シート2に校正用成分1を含有させる工程を別途必要としない。したがって、通常の重合反応を経て生成された高分子シート2をそのまま標準試料10として使用することができる。
なお、本実施の形態に係る分析方法において、TDS装置30を校正する頻度は、TDS装置30の分析結果に生じる誤差の程度等に応じて自由に設定可能である。具体的には、例えば、TDS装置30の校正作業を分析時ごとに実施するようにしてもよいし、あるいは分析作業を所定の回数(例えば10回)に渡って実施した度ごとに実施するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業を行うために、TDS装置30(MS44)を使用して校正用試料(校正用成分1)を分析することにより質量分析データを採取するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、校正用試料の質量分析データが既知であり、その校正用試料をあらためて質量分析しなくても基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)を設定することが可能である場合には、TDS装置30(MS44)を使用した校正用試料の分析作業(図3に示したステップS101,S102)を行わないようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態に係る標準試料10では、高分子シート2中にあらかじめ残留している未反応の単量体を校正用成分1として使用したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、未反応の単量体に代えて、高分子シート2中にあらかじめ残留している未揮発の溶剤を校正用成分1として使用してもよい。この「未揮発の溶剤」とは、「未反応の単量体」に関して上記した場合と同様に、高分子シート2の重合反応過程において重合反応率が不十分であったために高分子シート2中に必要以上に残留したものではなく、重合反応率が十分であった上で結果的に高分子シート2中に残留したものである。この場合の校正用成分1(未揮発の溶剤)と高分子シート2との組み合わせ(校正用成分1/高分子シート2)としては、例えば、(1)N−メチルピロリドン(NMP)/アラミド、(2)ポリイミド系として、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン等)/全芳香族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミドまたはポリビスマレイミドトリアジン、フェノール系溶剤(例えばクレゾール、クロロフェノール等)/上記した各ポリイミド、エーテル系溶剤(例えばジエチレングリコールジメチルエーテル)/上記した各ポリイミドなどが挙げられる。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記した一連の高分子シート2が耐熱性に優れている点に基づき、標準物質10が加熱された際に高分子シート2が熱分解することに起因してTDS装置30の分析チャンバ40A内が汚染されることを防止することができる。
参考までに、校正用成分1としては、例えば、上記した未反応の単量体や未揮発の溶剤に代えて、高分子シート2中にあらかじめ残留している比較的低分子量の副生成物も使用可能である。この「副生成物」とは、重合反応過程において副次的に生成されて高分子シート2中に残留することとなった生成物である。この場合の校正用成分1(副生成物)と高分子シート2との組み合わせ(校正用成分1/高分子シート2)としては、例えば、環状シロキサン,直鎖状シロキサン/シリコン樹脂(例えばメチルシリコン、メチルフェニルシリコン等)などが挙げられる。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、校正用成分1として環状シロキサンを使用すれば、低沸点条件において基準質量電荷比S(m/z)を高めに設定することができる。
また、標準試料10に関しては、上記したように、校正用成分1として未反応の単量体や未揮発の溶剤等をあらかじめ含有している高分子シート2を使用する以外に、例えば、校正用成分1として所望の溶剤を含有させた高分子シート2を使用してもよい。この「所望の溶剤を含有させた高分子シート2」とは、正常な重合反応過程を経た上で結果的に未揮発の溶剤を含むこととなった高分子シート2とは異なり、重合反応過程を経て生成された状態において含まれていなかった溶剤を人為的に別途含有させた高分子シート2である。この場合の校正用成分1(高分子シート2に含有される溶剤)としては、例えば、各種有機溶剤が挙げられ、具体的には、(1)アクロレイン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンまたはクメン等や、その他のハロゲン系溶剤として(2)1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、ジフルオロベンゼンまたはPFTBAに代表されるパーフルオロトリアルキルアミンなどのフッ素系溶剤、ならびに(3)塩化メチル、クロロホルム、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤などが挙げられる。この「ハロゲン系溶剤」とは、ハロゲン元素を構成元素として有する化合物(ハロゲン系化合物)を含む有機溶剤であり、上記したフッ素系溶剤やハロゲン化炭化水素系溶剤が「ハロゲン系溶剤」に該当する。アクロレインの分子量(=56.1)や塩化メチルの分子量(=50.5)は上記に列挙した一連の有機溶剤を構成する化合物群の中では比較的小さいが、アクロレインや塩化メチルの分子量は二酸化炭素の分子量(=44)よりも大きいため、それらのアクロレインや塩化メチルを使用しても校正作業を高精度に実施することが可能である。もちろん、上記に列挙した一連の有機溶剤を構成する化合物のうち、アクロレインや塩化メチル以外の他の化合物の分子量はアクロレインや塩化メチルの分子量よりも大きいため、それらの他の化合物により構成された有機溶剤を使用しても校正作業を高精度に実施し得ることは言うまでもない。特に、高分子シート2に校正用成分1を含有させる方法としては、例えば、高分子シート2に校正用成分1を含浸させる方法や、高分子シート2を校正用成分1と共に混合融解させたのちにシート化する方法などが挙げられる。高分子シート2としては、校正用成分1の含浸特性等を考慮して、上記実施の形態および上記変形例において例示した材料群の中から自由に選択可能である。
この校正用成分1として溶剤を高分子シート2に含有させた標準試料10を使用する場合には、例えば、図6に示したように、(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業(ステップS101〜S103)と(2)対応スペクトルCPおよび対応質量電荷比C(m/z)の特定作業を含むTDS装置30の校正作業(ステップS104〜S108;ただし、図6ではステップS104〜S106のみを示している。)との間に、上記したように高分子シート2に校正用成分1として溶剤を含有させることにより標準試料10を形成する作業(ステップS110)を新たに含む点を除き、上記実施の形態において説明した分析工程(図3および図4参照)と同様の工程を経て分析用試料20を分析することが可能である。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、校正用成分1としてトルエン等を使用すれば、低沸点条件において基準質量電荷比S(m/z)を高め(S(m/z)=91程度)に設定することができる上、さらに、PFTBAを使用すれば、低沸点条件において基準質量電荷比S(m/z)を極めて高め(S(m/z)=614)に設定することができる。
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る分析方法(本発明の校正方法および標準試料を含む)についての説明を終了する。
次に、本発明の分析方法を利用したデバイスの製造方法について説明する。図7および図8は、デバイスの製造工程の流れを説明するためのものである。
このデバイスの製造方法は、例えば、ディスプレイや太陽電池などに代表される各種デバイスの製造工程において、本発明の分析方法を利用してデバイス部品(デバイスを構成する部品)の品質を検査しながら、それらのデバイス部品を使用してデバイスを製造するものである。なお、上記した「ディスプレイ」としては、例えば、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、液晶ディスプレイまたはプラズマディスプレイなどが挙げられる。以下では、主に、デバイス部品として成膜用の「基板」およびその基板に成膜される「成膜物」を例に挙げ、それらの基板および成膜物の品質を検査しながらデバイスを製造する工程について説明する。
このデバイスを製造する際には、まず、上記実施の形態において説明した手順、すなわち(1)基準スペクトルSPおよび基準質量電荷比S(m/z)の設定作業,(2)対応スペクトルCPおよび対応質量電荷比C(m/z)の特定作業を含むTDS装置30の校正作業を経て、検査用のTDS装置30(図2参照)を校正する(図7;ステップS201)。
続いて、成膜用の基板を準備したのち、TDS装置30を使用して基板の検査作業を行う。すなわち、基板に清浄化処理を施したのち(ステップS202)、先工程において校正済みのTDS装置30を使用し、上記実施の形態において説明した手順、すなわち(3)分析用試料20の分析作業を経て、その分析用試料20としての基板を分析する(ステップS203)。この基板は、例えば、ガラス、シリコンまたは高分子などにより構成されたものである。上記した「清浄化処理」とは、後工程において基板に成膜処理を施すことを目的として、その基板の表面を清浄化するための処理であり、例えば、洗浄処理や加熱処理などである。TDS装置30を使用して基板を分析する際には、例えば、基板の表面に不要な有機物や揮発成分が必要以上に残留しているか否かを検査することにより、その基板の清浄度を判定する(ステップS204)。
基板の清浄度が良好であった場合(ステップS204Y)、すなわち基板の表面に残留している不要な有機物や揮発成分の残留量が所定量未満であった場合には、清浄化処理により基板の表面清浄性が確保されたものと判断し、必要に応じてさらに基板に前処理を施す。この「前処理」とは、例えば、後工程において形成する成膜物の基板に対する密着性を向上させるための表面処理などである。なお、基板の清浄度の判定時において、その基板の清浄度が不十分であった場合(ステップS204N)、すなわち基板の表面に残留している不要な有機物や揮発成分の残留量が所定量以上であった場合には、表面清浄性が確保される程度まで基板が清浄化されていないものと判断し、再び基板に清浄化処理を施す(ステップS202)。
続いて、基板に成膜処理を施して成膜物を形成する(ステップS205)。この成膜物は、例えば、フォトレジスト、絶縁膜、平坦化膜または封止材などである。
続いて、必要に応じて成膜物に後処理を施したのち、TDS装置30を使用して成膜物の検査作業を行う。すなわち、成膜物に清浄化処理を施したのち(ステップS206)、校正済みのTDS装置30を使用して成膜物を分析し(ステップS207)、先工程において基板を分析した場合と同様に成膜物の清浄度を判定する(図8;ステップS208)。なお、上記した「後処理」とは、例えば、露光処理、パターニング処理またはエッチング処理などである。
成膜物の清浄度が良好であった場合(ステップS208Y)には、成膜物の表面清浄性が確保されたものと判断し、その成膜物を使用してデバイスを形成する(ステップS209)。詳細には説明しないが、このデバイスの形成工程には、例えば、基板に対する新たな成膜工程や、その成膜済みの基板を他のデバイス部品と共に組み立てる工程などが含まれる。なお、成膜物の清浄度の判定時において、その成膜物の清浄度が不十分であった場(ステップS208N)には、成膜物の表面清浄性が確保されていないものと判断し、再び成膜物に清浄化処理を施す(ステップS206)。これにより、デバイスの製造工程が完了する。
このデバイスの製造方法では、本発明の分析方法を使用してデバイス部品(例えば基板や成膜物)の品質を検査しながらデバイスを製造するようにしたので、上記実施の形態において説明したように、TDS装置30を容易かつ高精度に校正した上で、その校正済みのTDS装置30を使用してデバイス部品の品質を高精度に検査することが可能となり、デバイスの製造品質が向上する。したがって、デバイスを高品質に製造することができる。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(1)まず、上記実施の形態において説明した標準試料、すなわち未反応の単量体を含有している高分子シートにより構成された標準試料を使用し、以下の手順を経てTDS装置の校正作業を行うことにより、その校正作業の有用性を調べた。
すなわち、まず、標準試料としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)シートを使用することを前提として、TDS装置(MS)を使用して校正用試料としてMMA(メタクリル酸メチル)を質量分析することにより、図9に示した質量分析データを採取した。図9は校正用試料(MMA)に関する質量分析データを表しており、「横軸」は質量電荷比m/zを示し、「縦軸」はイオン強度を示している。なお、図9中に示した数値(15,39,41,59,69,85,100)は、主なイオンピークの質量電荷比m/zを示している。
続いて、図9に示した校正用試料に関する質量分析データに基づいて、スペクトル位置の位置合わせ処理をする上で基準となり得るだけの十分なイオン強度を有するスペクトルとして質量電荷比m/z=69.0のスペクトルを「基準スペクトルSP」として設定すると共に、その基準スペクトルSPの質量電荷比m/z=69.0を「基準質量電荷比S(m/z)」として設定した。
続いて、標準試料としてのPMMAシート10mgを白金(Pt)板に挟んでTDS装置に導入し、そのTDS装置(MS)を使用してPMMAシートを質量分析することにより、図10に示した質量分析データを採取した。図10は標準試料(PMMAシート)に関する質量分析データの主要部を拡大して表しており、具体的には質量電荷比m/z=69.0近傍の質量分析データを表している。TDS装置(MS)を使用してPMMAシートを質量分析する際には、減圧条件を10-6Pa程度とすると共に、加熱条件を室温から220℃まで20℃/分の割合で昇温加熱したのちに220℃保持とした。なお、PMMAシートを質量分析する際には、あらかじめ示差熱熱重量同時測定装置(Thermogravimetry/Differential Thermal Analysis;TG/DTA)を使用してPMMAシートの熱分解温度が355℃であることを確認したと共に、ヘッドスペース/ガスクロマトグラフ/質量分析計(Head Space/Gas Chromatograph/Mass Spectrometry;HS/GC/MS)を使用して熱分解前にPMMAシートからMMAが発生することを確認した。
続いて、図10に示した標準試料に関する質量分析データに基づいて、基準スペクトルSPに対応するスペクトル(基準スペクトルと定性的に同質であるものと見込まれるスペクトル)として基準質量電荷比S(m/z)=69.0近傍のスペクトルを「対応スペクトルCP」として特定すると共に、その対応スペクトルCPの質量電荷比m/z=68.8を「対応質量電荷比C(m/z)」として特定することにより、対応質量電荷比C(m/z)が基準質量電荷比S(m/z)からずれており(C(m/z)≠S(m/z))、すなわちMSの分析結果に誤差が生じていることを確認した。
最後に、図11に示したように、対応質量電荷比C(m/z)と基準質量電荷比S(m/z)との間のずれを解消するようにTDS装置を校正した。図11は標準試料に関する校正後の質量分析データを表しており、図10に対応している。具体的には、MSの機械的処理、すなわち質量分析データ中のスペクトル位置(スペクトル位置と質量電荷比m/zとの間の対応関係)を設定する処理を使用して、対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)=68.8)が基準スペクトルSPの位置(基準スペクトルS(m/z)=69.0)に一致するように対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)の値)をシフトさせることによりMSを調整し、TDS装置の校正作業を完了した。
この標準試料としてPMMAシートを使用した校正作業を随時実施しながら、TDS装置を使用して分析作業を継続的に実施したところ、そのTDS装置の分析結果に関して優れた再現性が得られた。このことから、標準試料としてPMMAシートを使用して本発明の校正方法および分析方法を実施することにより、TDS装置を容易かつ高精度に校正した上で、その校正済みのTDS装置を使用して分析用試料を高精度に分析可能であることが確認された。
参考までに、図9に示した質量分析データに基づいて基準質量電荷比S(m/z)=69.0と設定した上、さらに基準質量電荷比S(m/z)=100.1と設定することにより、複数の基準質量電荷比S(m/z)を利用した点を除き、上記した手順と同様の手順を経てTDS装置の校正作業を行ったところ、図12および図13に示したように、この場合においても対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)=99.7)が基準スペクトルSPの位置(基準スペクトルS(m/z)=100.1)に一致するようにMSを調整することにより、TDS装置を校正可能であった。なお、図12および図13に示した質量分析データは、それぞれ図10および図11に対応している。
(2)続いて、上記実施の形態において変形例として説明した標準試料、すなわち未揮発の溶剤を含有している高分子シートにより構成された標準試料を使用し、上記(1)において説明した手順と同様の手順を経てTDS装置の校正作業を行うことにより、その校正作業の有用性を調べた。
すなわち、まず、標準試料としてアラミドシート(旭化成社製アラミカ(登録商標))を使用することを前提として、校正用試料としてNMP(N−メチルピロリドン)を質量分析することにより図14に示した質量分析データを採取し、この質量分析データに基づいて質量電荷比m/z=99.1のスペクトルを「基準スペクトルSP」として設定すると共に、その基準スペクトルSPの質量電荷比m/z=99.1を「基準質量電荷比S(m/z)」として設定した。続いて、TDS装置(MS)を使用して標準試料としてのアラミドシート10mgを質量分析することにより図15に示した質量分析データを採取し、この質量分析データに基づいて質量電荷比m/z=98.8のスペクトルを「対応スペクトルCP」として特定すると共に、その対応スペクトルCPの質量電荷比m/z=98.8を「対応質量電荷比C(m/z)」として特定することにより、MSの分析結果に誤差が生じていることを確認した(C(m/z)≠S(m/z))。TDS装置(MS)を使用してアラミドシートを質量分析する際には、減圧条件を10-6Pa程度とすると共に、加熱条件を室温から390℃まで20℃/分の割合で昇温加熱したのちに390℃保持とした。なお、アラミドシートを質量分析する際には、あらかじめTG/DTAを使用してアラミドシートの熱分解温度が545℃であることを確認したと共に、HS/GC/MSを使用して熱分解前にアラミドシートからNMPが発生することを確認した。最後に、図16に示したように、MSの機械的処理を使用して、対応スペクトルCPの位置(対応質量電荷比C(m/z)=98.8)が基準スペクトルSPの位置(基準スペクトルS(m/z)=99.1)に一致するようにMSを調整することにより、TDS装置の校正作業を完了した。
この標準試料としてアラミドシートを使用した校正作業を実施した場合においても、TDS装置の分析結果に関して優れた再現性が得られた。このことから、標準試料としてアラミドシートを使用した場合においても、本発明の校正方法を利用してTDS装置を容易かつ高精度に校正し、その校正済みのTDS装置を使用して分析用試料を高精度に分析可能であることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されず、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることが可能な限り、自由に変形可能である。
本発明に係る標準試料、ならびに校正方法、分析方法およびデバイスの製造方法は、ディスプレイや太陽電池などの製造工程における品質管理などに適用することが可能である。
1…校正用成分、2…高分子シート、10…標準試料、20…分析用試料、30…TDS装置(昇温脱離ガス分析装置)、40…装置本体、40A…分析チャンバ、40B…ロードロックチャンバ、41…ゲートバルブ、42…ステージ、43…石英柱、44…MS(質量分析計)、45…移載アーム、46…導入窓、47…搬送アーム、51…加熱ユニット、52…温度コントローラ、53…制御ユニット、CP…対応スペクトル、C(m/z)…対応質量電荷比、SP…基準スペクトル、S(m/z)…基準質量電荷比。
Claims (17)
- 質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を校正するために使用される標準試料であって、ハロゲン系溶剤を含有している高分子により構成されている
ことを特徴とする標準試料。 - 非加熱状態において前記高分子中に前記ハロゲン系溶剤を保持しており、加熱状態において前記高分子中から前記ハロゲン系溶剤を揮発させて放出する
ことを特徴とする請求項1記載の標準試料。 - 前記高分子は、シート状構造を有している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の標準試料。 - 質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を校正するために使用される標準試料であって、溶剤を含有させた高分子により構成されている
ことを特徴とする標準試料。 - 非加熱状態において前記高分子中に前記溶剤を保持しており、加熱状態において前記高分子中から前記溶剤を揮発させて放出する
ことを特徴とする請求項4記載の標準試料。 - 前記高分子は、シート状構造を有している
ことを特徴とする請求項4ないし請求項5に記載の標準試料。 - 質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を校正する方法であって、
校正用成分に関する質量分析データに基づいて、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、
前記質量分析計を使用して、前記校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、
この標準試料に関する質量分析データに基づいて、前記基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、
この対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、
前記対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているときに、前記対応スペクトルの位置が前記基準スペクトルの位置に一致するように前記質量分析計を調整することにより、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するステップと
を含むことを特徴とする校正方法。 - 前記標準物質として、非加熱状態において前記高分子中に前記校正用成分を保持しており、加熱状態において前記高分子中から前記校正用成分を揮発させて放出するものを使用する
ことを特徴とする請求項7記載の校正方法。 - 前記標準物質として、前記高分子がシート状構造を有しているものを使用する
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の校正方法。 - 前記標準試料として、前記高分子中にあらかじめ前記校正用成分として未反応の単量体を含有しているものを使用する
ことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の校正方法。 - 前記標準試料として、前記高分子中にあらかじめ前記校正用成分として未揮発の溶剤を含有しているものを使用する
ことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の校正方法。 - 前記標準試料として、前記高分子中にあらかじめ前記校正用成分としてハロゲン系溶剤を含有しているものを使用する
ことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の校正方法。 - 前記標準試料として、前記高分子中に前記校正用成分として溶剤を含有させたものを使用する
ことを特徴とする請求項7ないし請求高9のいずれか1項に記載の校正方法。 - さらに、前記高分子中に前記溶剤を含有させることにより、前記標準試料を形成するステップを含む
ことを特徴とする請求項13記載の校正方法。 - さらに、前記校正用成分を質量分析することにより、その校正用成分に関する質量分析データを採取するステップを含む
ことを特徴とする請求項7ないし請求項14のいずれか1項に記載の校正方法。 - 質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を使用して分析用試料を分析する方法であって、
校正用成分に関する質量分析データに基づいて、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、
前記質量分析計を使用して、前記校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、
この標準試料に関する質量分析データに基づいて、前記基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、
この対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、
前記対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているときに、前記対応スペクトルの位置が前記基準スペクトルの位置に一致するように前記質量分析計を調整することにより、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するステップと、
校正済みの前記昇温脱離ガス分析装置を使用して、前記分析用試料を分析するステップと
を含むことを特徴とする分析方法。 - 質量分析計を備えた昇温脱離ガス分析装置を使用してデバイスを製造する方法であって、
校正用成分に関する質量分析データに基づいて、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するための基準となる基準スペクトルおよびその基準スペクトルの基準質量電荷比を設定するステップと、
前記質量分析計を使用して、前記校正用成分を含有する高分子により構成された標準試料を質量分析することにより、その標準試料に関する質量分析データを採取するステップと、
この標準試料に関する質量分析データに基づいて、前記基準スペクトルに対応する対応スペクトルおよびその対応スペクトルの対応質量電荷比を特定するステップと、
この対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているか否かを判定するステップと、
前記対応質量電荷比が前記基準質量電荷比からずれているときに、前記対応スペクトルの位置が前記基準スペクトルの位置に一致するように前記質量分析計を調整することにより、前記昇温脱離ガス分析装置を校正するステップと、
校正済みの前記昇温脱離ガス分析装置を使用して、前記デバイスを構成するデバイス部品を分析するステップと、
前記デバイス部品を使用して、前記デバイスを製造する工程と
を含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
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2003
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