JP2005098893A - 硬化体の強度測定方法及び装置 - Google Patents

硬化体の強度測定方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】所定材料の硬化体の強度を非接触的に測定する方法及び装置を提供する。
【解決手段】所定材料の硬化体1の測定部位7に、アブレーションにより硬化体1の強度反映プラズマ3を発生させるエネルギー特性のレーザーパルス2を照射し、当該プラズマ3の発光強度により硬化体1の強度を測定する。例えばパルス2として、硬化体1に強度を反映したプラズマ3を発生させる比較的低エネルギー特性のもの、又は硬化体1のアブレーション閾値より僅かに大きい程度の低エネルギー特性のものを用いる。好ましくは、パルス2を測定部位7に所定回数繰り返し照射してプラズマ3の発光強度を反復計測し、所定回数のパルス2の照射に対するプラズマ3の発光強度の平均値又は変化率により硬化体1の強度を測定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は硬化体の強度測定方法及び装置に関し、とくに所定材料の硬化体にレーザーパルスを照射したときに発生するプラズマによりその硬化体の強度を測定する方法及び装置に関する。本発明は、構造物の健全性調査等を目的としたコンクリートやモルタルの強度測定、及び一般的な材料評価等を目的とした自然物(岩石等)や人工物(各種工業製品等)の強度測定に有効に利用できる。
コンクリート構造物の安全性・健全性を評価するため、コンクリートの圧縮強度、曲げ強度、引張強度、硬さ等(以下、これらを纏めて単に強度ということがある。)の調査が求められる。従来からコンクリート構造物と同じ組成のコンクリート供試体を用いた強度試験が実施されているが、締固め・型枠・養生等の条件により構造物と供試体との間に相違が生じるので、供試体の強度試験のみでは構造物のコンクリートの品質を適切に評価できない場合がある。これに対し構造物からコンクリートのコアサンプルを採取して強度を試験する方法は、構造物のコンクリートの品質を直接的に把握できる利点がある。しかし、コアサンプルを用いる方法は、局部的ではあるが構造物に損傷を与えるので構造上重要な部位への適用が難しく、コアサンプルの採取本数が制限され、また調査のため、コアサンプルを実験室へ持ち帰る必要があるので結果を得るまでに非常に時間がかかる等の問題点がある。特許文献1は、このような問題点の解決を目的として、コアサンプルを直径15mm〜30mmの小径柱状体としたコンクリートの強度推定方法を提案している。
構造物コンクリートの強度を現場で非破壊的に検査する方法として、シュミットハンマーと呼ばれるバネで支持したハンマーによりコンクリート構造物の表面を打撃し、その打撃に対する反発量からコンクリートの強度を測定する方法(以下、反発硬度測定法ということがある。)が知られている。また、特許文献2及び3が開示するように、コンクリート構造物の表面に超音波を入射し、コンクリート中を伝播する超音波の伝播速度や減衰率からコンクリート強度を非破壊的に測定する方法(以下、超音波伝播測定法ということがある。)も提案されている。
更にコンクリート以外の硬化体にも適用可能な方法として、硬い部材を所定荷重で貫入させたときの貫入量から強度を試験する方法、硬い部材で表面を引き掻いたときの性状から強度を試験する方法、基準片を衝突させたときの反発力から強度を試験する方法等がある。例えば特許文献4は、コンクリートサンプルに所定寸法の針を貫入させ、針に加える荷重と針の貫入量との関係からコンクリートの強度を推定する方法を開示する。また特許文献5は、所定エア圧力に設定したエアハンマーを用いて硬化コンクリート表面にピンを打ち込み、ピンの貫入深さからコンクリートの圧縮強度を推定する硬化コンクリートの強度推定方法を開示している。
特許第3067016号公報 特許第2614152号公報 特開2001−116731号公報 特開平10−090150号公報 特開平10−197434号公報 特開2002−296183号公報 山中一司「レーザー超音波法の原理と応用」非破壊検査、第49巻5号、p292-299、2000年5月
しかし、上述した反発硬度測定法や超音波伝播測定法は、コンクリート構造物の表面の測定部位にハンマー打撃を加え又は超音波を入射する必要があるため、例えば測定部位が高所である場合に作業員が接近するための足場等を用意しなければならず、調査に手間がかかると共に危険が伴う問題点がある。また道路や鉄道等のコンクリート構造物等では、調査を効率的に行うために交通遮断など構造物の運用を停止しなければならない場合がある。構造物の運用を停止せずに調査することも不可能ではないが、1日の作業時間が限られるので構造物全体の調査期間が長くなると共に膨大な人手が必要となり、また異常箇所の早期発見が難しく管理コストが増える等の問題を生じる。足場等を用いずにコンクリートの強度を離れた場所から簡単・迅速に調査できる技術の開発が望まれている。
また、従来の反発硬度測定法や超音波伝播測定法は、コンクリート強度の推定値の精度が低い問題点もある。例えば反発硬度測定法では、コンクリート表面の状態により反発量が大きな影響を受けるので、反発量のバラツキが大きくなり、十分な精度で強度を推定できない場合がある。また、特許文献2の超音波による強度試験方法も、超音波を用いた推定式とコアサンプル等による実測値との差が±10%程度存在する(特許文献2の段落0008)。コンクリート構造物の安全性・健全性評価の信頼度を高めるため、強度推定の精度を更に高めることが望まれている。
そこで本発明の目的は、所定材料の硬化体の強度を非接触的に測定する方法及び装置を提供することにある。
本発明者は、レーザーパルスを利用した検査方法に注目した。従来から、比較的パワーの大きなレーザーパルスを被検査体に照射すると表面近傍の原子が急激に加熱されて溶融・気化するアブレーション(ablation)が起こり、被検査体の表面からプラズマが噴出することが知られている(非特許文献1参照)。本発明者は、被検査コンクリートにレーザー光を照射してアブレーションによるプラズマを発生させ、そのプラズマの発光のスペクトル強度分布からコンクリートの組成等を検査する方法を開発し、特許文献6に開示した。被検査体の表面にアブレーションを生じさせるレーザー光の照射エネルギー密度はアブレーション閾値と呼ばれている。例えば、コンクリートにアブレーション閾値以上のエネルギー密度のレーザー光を照射し、プラズマのスペクトル強度分布中の炭素成分又はイオウ成分の強度からコンクリートの中性化を検査し、スペクトル強度分布中のナトリウム成分又は塩素成分の強度からコンクリートの塩害の影響度合を検査する。
レーザー光の照射により被検査体表面から噴出する原子は被検査体の硬さに応じた反発力を得るため、アブレーションによるプラズマの発光強度には被検査体の強度が反映されていると考えられる。プラズマ発光から被検査体の強度を推定できれば、例えば構造物の表面に離れた場所からレーザーパルスを照射することにより、構造物のコンクリートの強度を非接触的に測定することが期待できる。
本発明者は、先ずプラズマ発光強度による被検査体の硬さの推定が可能であるか否かを確認するため、非常に硬い黒御影石(はんれい岩;ビッカース硬さ791(HV))と比較的柔らかい晶墨石(黒色頁岩;ビッカース硬さ148(HV))とを用い、各岩石に所定エネルギー特性のYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーパルス(波長1064nm)を繰り返し照射してプラズマ発光中のSiスペクトル強度(mV)を測定する実験を行った。実験結果を図2に示す。同図(A)は比較的高いエネルギー(25mJ)のレーザーパルスを繰り返し照射したときのプラズマ発光強度の変化を示す。また同図(B)は、25mJのレーザーパルスを50回照射したのち15%透過フィルターを用いてエネルギーを3.8mJ(=25×0.15)に調整したレーザーパルスを1回照射するという手順を繰り返し、その3.8mJのパルス照射時のプラズマ発光強度の変化を示す。
図2(A)から分かるように、25mJのレーザーパルス照射では、相当数のレーザーパルス照射により形成された空孔は深くなっているにもかかわらず、両岩石で発生するプラズマ発光強度に殆ど差がなく、発光強度の減少も見られないため、プラズマ発光強度から両岩石の硬さの差を検出することは困難である。これに対し、同図(B)のように3.8mJのレーザーパルス照射では、照射回数に応じ両岩石のプラズマ発光強度に有意な差が検出できる。両岩石は共に黒色であるためエネルギー吸収率(反射率)の差は僅かであり、同図(B)のプラズマ発光強度の相違は両岩石の硬さの反映であると考えられる。すなわち図2の実験結果から、プラズマ発光強度により被検査体の硬さを推定するためには、レーザーパルスのエネルギーをある程度低くすることが重要であるとの知見が得られた。本発明者は更なる実験により、プラズマ発光強度から被検査体の硬さを推定するためには、被検査体のアブレーション閾値より僅かに大きい程度の低エネルギー特性のレーザーパルスを用いることが有効であることを見出した。
次に本発明者は、プラズマ発光強度により被検査体の圧縮強度の推定が可能であるか否かを確認するため、3cm×3cm×1cmの木型枠内で固めて成形した水セメント比(以下、W/Cということがある。)が35%及び50%のセメントペーストサンプルを用い、上述したように25mJのレーザーパルスを50回繰り返し照射したのち15%透過フィルターによりエネルギーを3.8mJに調整してレーザーパルスを1回照射するという手順を繰り返し、プラズマ発光中のSiスペクトル強度(mV)の変化を測定する実験を行った。セメントペーストは加水量が多いほど圧縮強度が小さくなる。実験結果を図3に示す。同図の実験結果から、圧縮強度が小さいW/C=50%のセメントペーストは、圧縮強度が大きいW/C=35%のセメントペーストに比し照射回数毎のプラズマ発光強度が明らかに小さく、セメントペーストのプラズマ発光強度と圧縮強度との間には相関関係があることが分かる。
図2及び3の実験結果から、所定材料の硬化体に対し比較的低エネルギー特性のレーザーパルスを照射してプラズマを発生させれば、プラズマ発光強度により硬化体の強度を推定できるとの知見が得られた。例えば、強度が異なる所定材料の硬化体についてプラズマ発光強度と硬化体強度との関係式(対応関係)を予め求めておけば、強度不明の所定材料の硬化体から得られるプラズマ発光強度と関係式とからその硬化体の強度を求めることができる。また、複数の硬化体のプラズマ発光強度を相互に比較することにより、硬化体の各々の相対的な強度を求めることができる。本発明はこの知見に基づく更なる研究・開発の結果、完成に至ったものである。
図1の実施例を参照するに、本発明による硬化体の強度測定方法は、所定材料の硬化体1の測定部位7(図4参照)に、アブレーションにより硬化体1の強度反映プラズマ3を発生させるエネルギー特性のレーザーパルス2を照射し、当該プラズマ3の発光強度により硬化体1の強度を測定してなるものである。強度反映プラズマ3を発生させるレーザーパルス2の一例は、例えば上述したように硬化体1の強度を反映したプラズマ3を発生させる比較的低いエネルギー特性のものである。
好ましくは、レーザーパルス2を測定部位7に所定回数繰り返し照射して強度反映プラズマ3の発光強度を反復計測し、所定回数のパルス2の照射に対するプラズマ3の発光強度の平均値又は変化率により硬化体1の強度を測定する。更に好ましくは、強度反映プラズマ3を発生させるエネルギー特性のパルス2の照射前に、硬化体1のアブレーション閾値より十分大きいエネルギー特性のレーザーパルス2を測定部位7に所定回数照射する。
また図1のブロック図を参照するに、本発明による硬化体の強度測定装置は、所定材料の硬化体1の測定部位7(図4参照)に、アブレーションにより硬化体1の強度反映プラズマ3を発生させるエネルギー特性のレーザーパルス2を照射するレーザー装置10、強度反映プラズマ3の発光を入力して発光強度を計測する計測装置20、及び硬化体1の強度と強度反映プラズマ3の発光強度との関係式32を記憶し且つ計測装置20の計測値と関係式32とから硬化体1の強度を検出する検出装置(例えば、コンピュータ)30を備えてなるものである。
好ましくは、関係式32をレーザーパルス2の所定回数の繰り返し照射に対する硬化体1のプラズマ発光強度の平均値又は変化率と硬化体1の強度との関係式とし、検出装置(例えば、コンピュータ)30により所定回数のパルス照射に対する計測装置20の計測値の平均値又は変化率と関係式32とから硬化体1の強度を検出する。更に好ましくは、レーザー装置10に、レーザーパルス2を硬化体1のアブレーション閾値より十分大きいエネルギー特性に切り替える切替器12を設ける。
本発明による硬化体の強度測定方法及び装置は、材料の硬化体の測定部位に、アブレーションにより当該硬化体の強度反映プラズマを発生させるエネルギー特性のレーザーパルスを照射し、当該プラズマの発光強度により前記硬化体の強度を測定するので、次の顕著な効果を奏する。
(イ)硬化体の強度を、離れた場所からレーザーパルスを照射することにより非接触的に測定することができる。
(ロ)従って、硬化体の測定部位が高所にある場合でも、足場等を用いずに迅速且つ簡単に硬化体の強度を測定できる。
(ハ)測定対象の硬化体に対する加工や前処理が不要であり、硬化体の強度をその場で迅速に推定できる。
(ニ)非接触な手法であるため、所定軌道上を移動する車両や鉄道等から軌道に沿って構築されたコンクリート構造物の強度を調査することも可能である。
(ホ)硬化体表面に小孔が形成されるものの、極めて微小であるため、構造上又は外観上の問題を生じるおそれが少ない。
(ヘ)発光強度と硬化体の強度との間の相関係数が高いため、従来の反発硬度測定法や超音波伝播測定法に比し硬化体の強度の高精度測定が可能である。
(ト)不均質材料製であるモルタルやコンクリートだけでなく、様々な材料の硬化体にも適用可能である。
(チ)非破壊的な測定方法であるため、硬化体が非常に高温である場合や硬化体の位置が時間と共に変動するような場合にも適用可能である。
(リ)レーザーパルスの発振波長や集光器の精度の調整により、ミクロンオーダ・ナノオーダといった微小な材料の強度測定への適用も期待できる。
図1は、本発明による強度測定装置の一例のブロック図を示す。図示例の測定装置は、硬化体1にレーザーパルス2を照射するレーザー装置10と、硬化体1に発生したプラズマ3の発光強度を計測する計測装置20と、プラズマ3の発光強度から硬化体1の強度を検出する検出装置30としてのコンピュータとを有する。レーザーパルス2として、硬化体1に強度を反映したプラズマ3を発生させる比較的低エネルギー特性のもの、好ましくは硬化体1のアブレーション閾値より僅かに大きい程度の低エネルギー特性のものを用いる。上述したように、パルス2のエネルギー特性を低くすることにより硬化体1の強度に応じて発光強度が敏感に変化する強度反映プラズマ3が得られる。
図示例のレーザー装置10は、比較的高いエネルギー特性のレーザーパルス2を出力するレーザー光源を有し、光学フィルター等のエネルギー切替器12によりパルス2のエネルギー特性を適当に下げて硬化体1に照射する。好ましくは、パルス2を切替器12により、硬化体1のアブレーション閾値より十分大きい高エネルギー特性と強度反映プラズマ3を発生させる低エネルギー特性との間で切り替え可能とする。高エネルギー特性のパルス2を硬化体1の測定部位7に照射すると、強度反映プラズマ3の発生は期待できないが、汚れ等を除去すると共に測定部位7に硬化体1の材料の強度に応じた形状の小孔8(図4参照)を形成することができる。すなわち、高エネルギー特性のパルス2を所定回数照射すると、軟らかい材料では底部が尖った形状の小孔8が形成されてレーザーパルス2の照射面積は大きくなり、アブレーション閾値を超えるパワー密度で照射される箇所は底部周辺に限られるため、発光強度は低下する。これに対し硬い材料では、底部が比較的平坦な形状となり、レーザーパルス2の照射面積が拡がらないため、照射部位の大半でアブレーション閾値を超えて強い発光が観測される。低エネルギー特性のパルスを用いれば、上記の違いがより明瞭となるため、強度反映プラズマ3による強度測定精度の向上が期待できる。
また図示例のレーザー装置10は、光源から出力されたレーザーパルス2を硬化体1の測定部位7へ向けるミラー等の導光器11と、レーザーパルス2を測定部位7に集める凸レンズ等の集光器13とを有する。硬化体1がモルタルやコンクリートのように力学的・熱的性質が異なる粒子の集合体である不均質材料であるときは、測定部位7に存在する骨材や空隙等により強度反映プラズマ3の発光強度にバラツキが生じて測定誤差の原因となる。強度以外の要因によるプラズマ発光強度のバラツキを減らすため、集光器13によりレーザーパルス2の集光面積を小さく(例えば数百μm程度以下に)することが望ましい。レーザーパルス2の集光面積を十分小さくすれば、後述するようにプラズマ発光のスペクトル強度分析に基づいてセメント硬化体1と骨材等とを識別することが可能であり、照射位置の移動により骨材等の影響を避けることができ、骨材等のない(骨材等を避けた)測定部位7の強度反映プラズマ3により硬化体1の強度測定精度の向上を図ることができる。なお、導光器11は本発明に必須のものではない。
硬化体1に照射するレーザーパルス2のエネルギー特性は、レーザー光源の種類、切替器12の光学フィルター、集光器13の凸レンズの条件等によって定まる。レーザー光源にとくに制限はなく、YAGレーザー、炭酸ガス(CO2)レーザー等の適当なレーザー光源が利用できる。強度反映プラズマ3を発生させるパルス2のエネルギー特性は、測定対象の硬化体1に対する照射実験等により予め実験的に定めることができる。測定対象の硬化体1は材料(構成物質)が所定のものであれば種類を問わないので、様々な材料の硬化体1の強度測定に本発明を適用できる。硬化体1の材料だけでなく、結合力、光吸収係数、熱拡散係数、融点、沸点、ポーラス密度等の物性に関する情報が予め分かっている場合は、強度反映プラズマ3が得られるレーザーパルス2のエネルギー特性を理論的に算出することも可能である。
図示例の計測装置20は、硬化体1に生じた強度反映プラズマ3の発光を入力するための発光検知器22と、プラズマ発光中の特定スペクトル成分の強度を求める分光光度計25とを有する。例えば、硬化体1の測定部位7の正面にガラス板23を配置し、測定部位7から噴出する強度反映プラズマ3の像をガラス板23に写して発光検知器22で受ける。発光検知器22の一例は光ファイバーケーブルであり、例えば分光光度計25に接続した光ファイバーケーブルの端部へプラズマ3の発光を送り込む。ガラス板23に代えて、離れた位置からプラズマ3の発光を発光検知器22へ取り入れるための適当な集光装置を用いてもよい。背景等の雑音光の影響を避けるため、例えば照明等のない暗所でプラズマ3の発光を取り入れることが望ましいが、雑音光のレベルと比較して十分な強度のプラズマ3の発光が得られる場合、あるいは分光スペクトル上で雑音光と信号光が区別できる場合は太陽光や照明等があっても信頼性の高い強度測定を行うことができる。
図示例の分光光度計25は、光電子増倍管(PMT)26とデジタルオシロスコープ27とを有する。発光検知器22経由で入力したプラズマ3の発光をモノクロメータで分光し、プラズマ3の発光中の特定スペクトル成分(例えば、モルタル又はコンクリート製の硬化体1である場合は、セメント硬化体の主成分であるCaスペクトル成分又はSiスペクトル成分等)の強度を光電子増倍管26により増幅する。光電子増倍管26で電気信号に変換したプラズマ3の発光をデジタルオシロスコープ27へ送り、オシロスコープ27により数値化された信号を検出装置(コンピュータ)30へ出力する。但し、計測装置20の構成は図示例に限定されない。なお、図示例の計測装置20は、測定部位7の正面でプラズマ3の発光を受ける発光検知器22の他に、測定部位7の側方でプラズマ発光を観察する発光検知器21を有するが、発光検知器21の作用については後述する。
また図示例の計測装置20は、レーザーパルス2が測定部位7へ照射される時点を検知する照射検知器28を有する。図示例では、照射検知器28をPINフォトダイオード検出器とし、レーザー装置10の出口に臨ませたハーフミラー29により照射パルス2の一部を照射検知器28へ導く。照射検知器28は、レーザー装置10からのパルス2の入力に応じて電気的な検知信号(照射時点信号)をオシロスコープ27へ出力する。オシロスコープ27は、照射検知器28の検知信号をトリガーとして光電子倍増管26の電気信号を取り入れ、パルス2の照射毎に表示を更新し、更新された信号を数値化して検出装置(コンピュータ)30へ出力する。
図示例の検出装置(コンピュータ)30は、硬化体1の強度と強度反映プラズマ3の発光強度との関係式(対応関係)32を記憶する記憶手段31と、内蔵プログラムである強度検出手段35とを有する。硬化体1にレーザーパルス2を繰り返し照射すると強度反映プラズマ3の発光強度は照射回数に応じて徐々に減衰するが、所定回数のパルス2の照射に対応する強度反映プラズマ3の発光強度と硬化体1の強度との間には高い相関が認められる。関係式32の一例は、パルス2を高エネルギー特性で所定回数照射した後に低エネルギー特性で照射したときの強度反映プラズマ3の発光強度と、硬化体1の強度との相関関係を表す式である(後述の(1)式及び図6参照)。あるいは、パルス2の所定回数照射に対するプラズマ3の発光強度の平均値と硬化体1の強度との相関関係を関係式32としてもよい。
関係式32として、レーザーパルス2の所定回数照射に対する強度反映プラズマ3の発光強度の変化率と硬化体1の強度との相関関係を利用することもできる。本発明者は、パルス2の照射回数に対する強度反映プラズマ3の発光強度の変化率としての減衰率には、硬化体1の強度が反映されていることを実験的に見出した。発光強度の減衰率に硬化体1の強度が反映される原理の詳細は不明であるが、図4(A)に示すように硬化体1の測定部位7にパルス2を繰り返し照射すると、同図(B)に示すように照射回数に応じて深くなる小孔8が形成され、小孔8の底部の形状が硬化体1の強度を反映していることが一因であると考えられる。硬化体1がより軟らかい材料では小孔8の底部は尖った形状で深くなるため、照射面積が大きくなって実質的なパワー密度が低下し、プラズマ3の発生の閾値を超える部分が減少して発光強度がより早く減衰する。また、小孔8の底部が尖った形状で深くなると孔底で生じたプラズマ3は孔壁に遮られやすく、発光強度がより早く減衰する。
関係式32は、測定対象の硬化体1と同じ材料製の試験体等を用いて、予め実験的に求めることができる。例えば後述する実験例1のように、硬化体1と同じ材料製で強度(配合)が異なる複数の試験体を調製し、レーザー装置10により各試験体にレーザーパルス2を所定回数繰り返し照射し、パルス照射毎に各試験体で発生する強度反映プラズマ3の発光強度を計測装置20経由で検出装置(コンピュータ)30に入力し、試験体毎のプラズマ発光強度と(試験体毎の)強度との相関関係を関係式32として記憶手段31に記憶する。必要に応じて、所定回数照射に対するプラズマ発光強度の平均値又は変化率を平均値算出手段36又は変化率算出手段37により算出し、その平均値又は変化率と試験体毎の強度との相関関係を関係式32とする。
検出装置(コンピュータ)30の強度検出手段35は、測定対象の硬化体1の強度反映プラズマ3の発光強度を計測装置20経由で入力し、その発光強度を関係式32へ代入することにより測定対象の硬化体1の強度を求める。また、所定回数照射に対するプラズマ3の発光強度の平均値又は変化率を平均値算出手段36又は変化率算出手段37により算出し、その平均値又は変化率を関係式32へ代入することにより硬化体1の強度を求めてもよい。
なお、図示例の検出装置(コンピュータ)30はプラズマ3の発光強度から測定部位7の状態を判定する判定手段38を有する。上述したように、硬化体1がモルタル又はコンクリート等の不均質材料製である場合は、測定部位7に骨材等が存在すると、セメント硬化体ではなく骨材等のプラズマが発生するので、セメント硬化体の強度反映プラズマ3が得られない。判定手段38は、例えばプラズマ3の発光強度におけるSiスペクトル成分の急激な増加やCaスペクトル成分の急激な減少を検知し、その変化から測定部位7における骨材等の有無を判定する。判定手段38が骨材等を検出したときは、レーザーパルス2の照射を一旦中断し、照射位置(測定部位7)を変更して強度反映プラズマ3の測定を再開する。
[実験例1]
本発明による硬化体1の強度測定の有効性を確認するため、表1に示すように強度が異なる5種類のモルタル試験体を調製し、図1の強度測定装置を用いて各試験体の強度反映プラズマ3の発光強度と(各試験体の)強度との関係を確認する実験を行った。レーザー装置10としてNd:YAGレーザー(波長1064nm)を使用し、先ず各試験体の測定部位7にそれぞれ74mJのエネルギー特性のレーザーパルス2を20回照射したのち、切替器12によりパルス2のエネルギーを13mJに下げて測定部位7に160回パルス照射を繰り返した。照射毎に各試験体で発生した強度反映プラズマ3の発光を計測装置20に取り入れ、プラズマ3のSiスペクトル成分(2884オングストローム)及びCaスペクトル成分(4228オングストローム)の強度を計測し、各計測値を検出装置(コンピュータ)30へ入力した。各試験体の測定部位7へのレーザー照射径は数百μm程度と小さくし、検出装置(コンピュータ)30の判定手段38によりCaスペクトル成分の急激な変動を検知して測定部位7における骨材の有無を判定し、例えば測定部位7の小孔8が骨材に到達したような場合は照射位置を変更し、骨材の無い(骨材を避けた)測定部位7のプラズマ発光強度を測定した。
Figure 2005098893
図5は、プラズマ3の発光強度の10パルス照射毎の平均値の変化を示した実験結果である。同図から、プラズマ発光強度(この場合は、10パルス照射毎の発光強度の平均値)は各試験体の強度に応じて低くなることが分かる(水セメント比(W/C)が小さいものほど強度は大)。また図6は、パルス2の30回照射時点(高エネルギーパルス20回照射の後に、低エネルギーパルスを10回照射した時点)のプラズマ3の発光強度(x軸)と各試験体の圧縮強度(y軸)とを二次元平面上にプロットしたものである。図6におけるプラズマ3の発光強度を独立変数(又は説明変数)xとし、各試験体の強度を従属変数(又は目的変数)yとする単回帰分析を行って回帰直線を作成したところ、(1)式に示す関係式32が得られた。(2)式及び(3)式は、同時に測定した反発硬度測定法及び超音波伝播測定法の測定値xと試験体の強度yとの相関関係を示す回帰直線である。(2)式の反発硬度測定法(相関係数rxy=0.8746)及び(3)式の超音波伝播測定法(相関係数rxy=0.8762)に比し、(1)式の関係式32(相関係数rxy=0.981)を用いれば、試験体の強度を高い精度で推定できる。すなわちこの実験結果から、硬化体(モルタル)1の強度と強度反映プラズマ3の発光強度との間には強い相関関係があり、プラズマ発光強度に基づいて不均質材料であるモルタル強度を十分な精度で推定可能であり、本発明が強度測定に有効に利用できることを確認できた。
[数1]
本発明による試験体推定強度
y=0.0208x+52.028(相関係数rxy=0.981) …………………………………(1)
反発硬度測定法による試験体推定強度
y=1.8604x+15.612(相関係数rxy=0.8746)…………………………………(2)
超音波伝播測定法による試験体推定強度
y=0.0251x−37.336(相関係数rxy=0.8762)…………………………………(3)
本発明によれば、硬化体1の強度を離れた場所からレーザーパルス2を照射することにより測定できるので、例えば構造物のモルタルやコンクリートの強度を非接触的に且つその場で迅速に測定できる。非接触的に強度を測定できるので測定部位7に接近するための足場等を設ける必要がなく、例えば本発明の測定装置を車両や台船等に搭載して所定軌道上を移動させながらその軌道に沿って構築された構造物の強度を測定することも可能である。従って、道路や鉄道等に用いる構造物(例えば、トンネル壁面や管渠内壁面)の強度を、構造物の運用を停止させずに迅速且つ経済的に調査することが可能となる。本発明では硬化体の表面にアブレーションによる小孔8(図4(B)参照)ができるが、その小孔8は直径0.1mm程度と極めて微小であり、構造物の強度上又は外観上の問題となる損傷に至るおそれは殆どない。
また本発明は、モルタルやコンクリート以外の様々な材料の硬化体1に適用することが可能である。モルタルやコンクリート以外の材料の硬化体1に対する従来の強度試験方法は、例えば硬い部材を硬化体1に貫入させる必要があるため、硬化体1が非常に高温である場合や移動している場合(測定装置に対する硬化体1の位置が時間と共に変化する場合)は適用が困難であった。本発明は非接触的に強度を測定できるので、高温の硬化体1や移動中の硬化体1に対しても適用可能である。更に、照射レーザーパルス2の発振波長や集光器13の精度を調整することにより、ミクロンオーダ・ナノオーダの微小な材料の強度測定への適用も期待できる。
更に本発明は、モルタルやコンクリートの硬化体1の水セメント比、混和剤(例えばAE剤)、特殊混和剤(例えば急結剤)、空気量、セメント種類、スランプといった配合を推定する場合にも利用できる。例えば、モルタルやコンクリートの水セメント比と強度(圧縮強度)との間には高い相関があることが知られている。実験例1で用いた5種類のモルタル試験体のプラズマ発光強度と水セメント比との間にも、高い相関関係が認められる(図5参照)。従って、モルタルやコンクリートの硬化体1のプラズマ発光強度と水セメント比との関係式を予め求めて検出装置(コンピュータ)30に記憶しておけば、水セメント比が不明の硬化体1から得られるプラズマ3の発光強度と関係式とからその硬化体1の水セメント比を十分な精度で推定できる。
こうして本発明の目的である「所定材料の硬化体の強度を非接触的に測定する方法及び装置」の提供が達成できる。
以上、レーザーパルス2が誘起する強度反映プラズマ3の発光強度から硬化体1の強度を測定する手法について説明したが、パルス2の照射回数に応じた測定部位7の小孔8(図4参照)の深さの変化にも硬化体1の強度が反映されると考えられるので、照射回数と小孔8の深さとの関係から硬化体1の強度を測定できる可能性がある。小孔8の深さは例えば顕微鏡等により計測してもよいが、より実用的な方法として本発明者は、小孔8の底部で発生したプラズマ3が小孔8の出口へ到達し噴出する時間から小孔8の深さを推定できることを実験的に見出した。一般に小孔8の底部で発生するプラズマ3の膨張速度は数〜数十km/秒であり、小孔8の深さが数百μm程度であれば、パルス2の照射後にプラズマ3が小孔8から噴出するまでの遅れ時間(以下、発光遅れ時間ということがある。)は数十ナノ秒領域となる。照射回数に対する小孔8の深さの変化を求めるためには、ナノ秒領域の発光遅れ時間をパルス2の照射毎に計測する必要がある。
図1の強度測定装置の計測装置20は、測定部位7の近傍にレーザーパルス2の照射方向と交差する向きに配置され、小孔8から噴出するプラズマ3の発光を測定部位7の側方から検知する発光検知器21を有する。計測装置20は、上述した発光検知器22と併せて、2つの発光検知器を有することになる。図8は、発光検知器21により測定したパルス照射1回目、100回目、300回目及び600回目のプラズマ3の発光強度の時間変化をオシロスコープ27上の波形として示したものである。照射1回目の波形からは、パルス照射直後に発生する短寿命のプライマリ・プラズマの発光と、それに続くセコンダリ・プラズマの発光とがそれぞれ観測できる。100回目以降のパルス照射では、小孔8が深くなるので、小孔8の底部で発生したプライマリ・プラズマは観測できず、セコンダリ・プラズマのみが観測される。発光検知器21による照射1回目のプライマリ・プラズマの発光検知時刻t1と、発光検知器21による100回目、300回目、及び600回目のセコンダリ・プラズマの発光検知時刻t100、t300、t600との時間差(t100−t1)、(t300−t1)、(t600−t1)から、小孔8の深さに対応する発光遅れ時間を求めることができる。
本発明者は、図1の発光検知器21で計測した発光遅れ時間により試験体の強度の指標として硬さの推定が可能であるか否かを確認するため、黒御影石(ビッカース硬さ803.0HV)と晶墨石(ビッカース硬さ152.6HV)とW/C=35%セメントペーストサンプル(ビッカース硬さ115.4HV)とW/C=50%セメントペーストサンプル(ビッカース硬さ113.8HV)とを用い、上述した切替器12(透過フィルター)によりエネルギーを25mJに調整したレーザーパルス2を繰り返し照射して、照射回数と発光遅れ時間との関係を求める実験を行った。この実験結果を図9に示す。同図の実験結果から、試験体毎の照射回数と発光遅れ時間との間には直線的な相関関係があることが確認できた。また、照射回数に対する発光遅れ時間の変化率k(直線の傾き)と試験体毎の強度(ビッカース硬さ)との間には高い相関関係が認められた。
図1の検出装置(コンピュータ)30は、照射検知器28によるパルス2の検知時と発光検知器21による当該パルス2のプラズマ3の発光検知時との時間差から、プラズマ3が小孔8から噴出するまでの発光遅れ時間の変化率kを算出する遅れ算出手段39を有する。また記憶手段31に、硬化体1の強度とパルス照射回数に対する発光遅れ時間の変化率kとの関係式33(図11参照)を記憶している。関係式33は、測定対象の硬化体1と同じ材料製の試験体等を用いて、予め実験的に求めることができる。強度検出手段35は、測定対象の硬化体1の強度反映プラズマ3の発光を計測装置20経由で入力し、その発光遅れ時間の変化率kを遅れ算出手段39により算出し、算出した発光遅れ時間の変化率kを関係式33へ代入することにより測定対象の硬化体1の強度を求める。
[実験例2]
発光遅れ時間による硬化体1の強度測定の有効性を確認するため、表1のモルタル試験体No.1、No.3及びNo.5を用い、図1の強度測定装置により各試験体の発光遅れ時間と強度との関係を確認する実験を行った。各試験体の測定部位7に800回パルス照射を繰り返し、パルス照射毎の発光遅れ時間を遅れ算出手段39により算出した。実験結果を図10のグラフに示す。同図は、プラズマ発光強度の100パルス照射毎の発光遅れ時間の変化を表す。測定された発光遅れ時間には多少バラツキも見られるが、各モルタル試験体について照射回数を独立変数(又は説明変数)とし発光遅れ時間を従属変数(又は目的変数)とする単回帰分析を行って回帰直線を作成したところ、回帰直線の傾きkと試験体の強度との間には高い負の相関があることが確認できた。また図11に示すように、回帰直線の傾きkの逆数(x軸)とモルタル試験体の圧縮強度(y軸)とを二次元平面上にプロットしたところ、回帰直線の相関係数rxyは-0.958となり、従来の反発硬度測定法や超音波伝播測定法に比しモルタルのような不均質材料の強度を十分な精度で推定できることを確認できた。
硬化体1の強度と発光遅れ時間の変化率kとの間の相関関係は、以下のように説明できる。深さXの小孔8内で発生したプラズマ3の膨張速度をV(H)とすると、小孔8の底部で発生したプラズマ3が小孔8から噴出するまでの発光遅れ時間Δtは(11)式のように表される。膨張速度V(H)は、硬化体1の強度に依存する関数である。また小孔8の深さXは、照射1回当たりのプラズマ噴出量A(H)とパルス照射回数Nとにより(13)式のように表すことができる。プラズマ噴出量A(H)は、材料(硬化体1)の密度をr、1回の照射でできる小孔8の深さをx、小孔8の断面積をSとして(12)式で表され、硬化体1の強度に依存する関数である。従って、N回の照射でできる小孔8の深さXは(13)式のようになる。(14)式に示すように照射回数Nと発光遅れ時間Δtとの間には比例関係が成立し、その比例定数k'は膨張速度V(H)とプラズマ噴出量A(H)とに依存する。実験例2により、この比例定数k'と硬化体1の強度との間には比例関係があることが確認できた。なお、式(11)〜(14)から分かるように、発光遅れ時間により硬化体1の強度を測定する場合は、硬化体1のアブレーション閾値より大きい所定エネルギー特性のレーザーパルス2を照射すればよく、プラズマ発光強度から硬化体1の強度を測定する場合のように比較的低エネルギーのパルス2により強度反映プラズマ3を発生させる必要はない。
[数2]
Δt=X/V(H) ………………………………………………………(11)
A(H)=rxS ………………………………………………………(12)
X=A(H)N/rS ………………………………………………………(13)
∴Δt=(A(H)/(V(H)・rS))・N=k'・N ……………………(14)
図1の実施例では、測定部位7の側方からプラズマ発光を検知する発光検知器21により発光遅れ時間を検出しているが、発光検知器21に代えて、図7に示すように測定部位7の近傍に小孔8から噴出するプラズマ3の衝撃波5を検知する衝撃波検知器15を設け、プラズマ3の衝撃波5の検知に基づき発光遅れ時間を求めることも可能である。同図の衝撃波検知器15は、プラズマ3の衝撃波検知用の連続レーザー光19を出力するレーザー装置16と、連続レーザー光19を検知する光検知器17と、検知器17で検知したレーザー光19の波形を表示する波形表示装置18とを有する。レーザー装置16から測定部位7と交差する光軸の連続レーザー光19を出力し、測定部位7から噴出するプラズマ衝撃波5と連続レーザー光19との相互作用(干渉法等)を光検知器17及び波形表示装置18により検出する。連続レーザー光19とレーザーパルス2とは互いに影響を与えることはなく、連続レーザー光19がパルス2により干渉されることはない。本発明者は、図7の実験装置により、上述した実験例2と同様に、発光遅れ時間の変化率kとモルタル試験体の強度との間の強い相関関係を確認することができた。
また、硬化体1がモルタル製やコンクリート製である場合は、上述した発光遅れ時間の変化率kから硬化体1の水セメント比、混和剤、特殊混和剤、空気量、セメント種類、スランプといった配合を推定できる。この場合は、モルタルやコンクリートの硬化体1の発光遅れ時間の変化率kと硬化体1の強度(例えば、水セメント比)との関係式33を予め求めて検出装置(コンピュータ)30に記憶し、水セメント比が不明の硬化体1から得られるプラズマ3の発光遅れ時間の変化率kを算出し、算出した発光遅れ時間の変化率kと関係式33とから硬化体1の水セメント比を推定する。
本発明の一実施例のブロック図である。 強度が異なる岩石に(A)25mJのレーザーパルスを照射したときの照射回数とプラズマ発光強度との関係、及び(B)25mJのレーザーパルスを照射した後、3.8mJのレーザーパルスを照射したときの照射回数とプラズマ発光強度との関係を示す実験結果の一例である。 強度(水セメント比)が異なるセメントペーストサンプルに対するレーザーパルスの照射回数とプラズマ発光強度との関係を示す実験結果である。 硬化体へのレーザーパルスの照射回数に応じてプラズマ発光強度が減衰する仮説原理を示す説明図である。 強度(水セメント比)が異なるモルタル試験体に対するレーザーパルスの照射回数とプラズマ発光強度との関係を示す実験結果である。 図5の実験におけるモルタル試験体の圧縮強度とプラズマ発光強度との関係を示すグラフである。 本発明の他の実施例のブロック図である。 硬化体にレーザーパルスを繰り返し照射したときの測定部位側方から見たプラズマ発光強度の経時的変化を示す実験結果である。 強度が異なる硬化体に対するレーザーパルスの照射回数とプラズマの発光遅れ時間との関係を示す実験結果である。 強度が異なるモルタル試験体に対するレーザーパルスの照射回数とプラズマの発光遅れ時間との関係を示す実験結果である。 図9の実験におけるモルタル試験体の強度と照射回数に対する発光時間遅れの変化率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…硬化体 2…レーザーパルス
3…強度反映プラズマ 4…アブレーション
5…プラズマ衝撃波
7…測定部位 8…小孔
10…レーザー装置 11…導光器
12…エネルギー切替器(光学フィルター)
13…集光器 15…衝撃波検知器
16…レーザー装置 16a…反射器
17…光検知器 18…波形表示装置
19…(衝撃波検知用)連続レーザー光
20…計測装置
21…発光検知器 22…発光検知器
23…ガラス板 24…光ファイバーケーブル
25…分光光度計(モノクロメータ)
26…光電子増倍管(PMT)
27…(デジタル)オシロスコープ
28…照射検知器(PINフォトダイオード)
29…ハーフミラー 30…検出装置(コンピュータ)
31…記憶手段
32…硬化体強度と発光強度との関係式
33…硬化体強度と発光遅れ時間の変化率との関係式
35…強度検出手段 36…平均値算出手段
37…変化率算出手段 38…判定手段
39…遅れ算出手段
40…出力手段(ディスプレイ、プリンタ等)

Claims (13)

  1. 所定材料の硬化体の測定部位に、アブレーションにより当該硬化体の強度反映プラズマを発生させるエネルギー特性のレーザーパルスを照射し、当該プラズマの発光強度により前記硬化体の強度を測定してなる硬化体の強度測定方法。
  2. 請求項1の測定方法において、前記パルスを測定部位に所定回数繰り返し照射して前記強度反映プラズマの発光強度を反復計測し、前記所定回数のパルス照射に対するプラズマ発光強度の平均値又は変化率により前記硬化体の強度を測定してなる硬化体の強度測定方法。
  3. 請求項1又は2の測定方法において、前記強度反映プラズマを発生させるエネルギー特性のレーザーパルスの照射前に、前記硬化体のアブレーション閾値より十分大きいエネルギー特性のレーザーパルスを前記測定部位に所定回数照射してなる硬化体の強度測定方法。
  4. 所定材料の硬化体の測定部位に当該硬化体のアブレーション閾値より大きい所定エネルギー特性のレーザーパルスを繰り返し照射して小孔を穿ち、前記パルスの照射後に前記小孔内で発生したアブレーションによるプラズマが小孔から噴出するまでの遅れ時間を計測し、前記パルスの照射回数に対する前記遅れ時間の変化率により前記硬化体の強度を測定してなる硬化体の強度測定方法。
  5. 請求項1から4の何れかの測定方法において、前記硬化体をモルタル又はコンクリートとしてなる硬化体の強度測定方法。
  6. 請求項5の測定方法において、前記プラズマの発光スペクトル強度分布により前記硬化体の測定部位における骨材の有無を判定し、骨材の無い測定部位のプラズマ発光強度により前記硬化体の強度を測定してなる硬化体の強度測定方法。
  7. 請求項5又は6の測定方法において、前記プラズマの発光強度又は前記遅れ時間の変化率により前記硬化体の水セメント比を測定してなる硬化体の強度測定方法。
  8. 所定材料の硬化体の測定部位に、アブレーションにより当該硬化体の強度反映プラズマを発生させるエネルギー特性のレーザーパルスを照射するレーザー装置、前記プラズマの発光を入力して発光強度を計測する計測装置、及び前記硬化体の強度と前記プラズマの発光強度との関係式を記憶し且つ前記計測装置の計測値と前記関係式とから前記硬化体の強度を検出する検出装置を備えてなる硬化体の強度測定装置。
  9. 請求項8の測定装置において、前記関係式を前記パルスの所定回数の繰り返し照射に対する前記硬化体のプラズマ発光強度の平均値又は変化率と前記硬化体の強度との関係式とし、前記検出装置により前記所定回数のパルス照射に対する前記計測装置の計測値の平均値又は変化率と前記関係式とから前記硬化体の強度を検出してなる硬化体の強度測定装置。
  10. 請求項8又は9の測定装置において、前記レーザー装置に、レーザーパルスを前記硬化体のアブレーション閾値より十分大きいエネルギー特性に切り替える切替器を設けてなる硬化体の強度測定装置。
  11. 所定材料の硬化体の測定部位に当該硬化体のアブレーション閾値より大きい所定エネルギー特性のレーザーパルスを繰り返し照射して小孔を穿つレーザー装置、前記測定部位への照射パルスを検知する照射検知器、前記測定部位の側方から前記小孔より噴出するアブレーションによるプラズマの発光を検知する発光検知器、前記照射検知器によるパルス検知時と前記発光検知器による当該パルスのプラズマの発光検知時との時間差からプラズマが小孔から噴出するまでの遅れ時間を算出する遅れ算出手段、及び前記硬化体の強度と前記遅れ時間のパルス照射回数に対する変化率との関係式を記憶し且つ前記遅れ算出手段の算出値の変化率と前記関係式とから前記硬化体の強度を検出する検出装置を備えてなる硬化体の強度測定装置。
  12. 請求項11の装置において、前記発光検知器に代えて前記測定部位近傍に前記小孔から噴出するプラズマの衝撃波を検知する衝撃波検知器を設け、前記遅れ算出手段により前記照射検知器のパルス検知時から前記衝撃波検知器の衝撃波検知までの遅れ時間を算出してなる硬化体の強度測定装置。
  13. 請求項8から12の何れかの測定装置において、前記硬化体をモルタル又はコンクリートとし、前記計測装置又は発光検知器に前記プラズマの発光スペクトル強度分布を計測する分光分析装置を含め、前記検出装置に前記スペクトル強度分布に基づき前記測定部位における骨材の有無を判定する判定手段を含めてなる硬化体の強度測定装置。
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