JP2005096064A - 軸対称回折曲面の切削加工方法及びそれによって作製される物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡便にして、高精度な切削加工を行うことができる軸対称回折曲面の切削加工方法及びそれによって作製される物品を提供する。
【解決手段】 軸対称回折曲面の切削加工方法において、先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)に加えてB軸の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって、回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】 軸対称回折曲面の切削加工方法において、先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)に加えてB軸の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって、回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、軸対称回折曲面の切削加工方法及びそれによって作製される物品に係り、特に、軸対称回折曲面の3軸(XZB)同時制御切削加工方法に関するものであり、具体的には、切削工具を軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で駆動・旋回させながら、フレネルレンズを精度良く作製する切削加工方法である。
近年、光学部品の高精度化、高集積化、小型化が進んでいる。特に、非球面レンズより更に薄型軽量化、集積化が可能で、低損失なレンズであるフレネルレンズの精密加工技術に対する要求が大きい。フレネルレンズとは、球面や非球面レンズの表面を同心円状の細かい幅に分割し、その傾斜角だけを平面上にプリズムとして置き換えたものであり、不連続な回折表面よりなる。フレネルレンズのレンズ母材としては、ガラスやプラスチック、光学結晶などがある。その中でもプラスチック製レンズは、射出成形技術により、比較的安価に生産を行えるようになってきている。しかし、各種光学結晶や一部のガラス等の脆性材料をレンズ基板としたときには、射出成形が不可能であり、機械加工に頼らざるを得ない。しかし、このような硬質脆性材料のフレネルレンズ形状の加工技術は現在確立されていない。
ところで、従来、金属に微細溝を形成させる技術としていくつかの報告(下記非特許文献1〜3参照)があったが、いずれも通常形状の切削工具を使用する単純な切込み加工方式であるため、延性金属材料の加工にしか使用できず、硬質脆性材料の加工には適用できない。
また、本発明に近い技術として下記非特許文献5、下記特許文献6、7が挙げられるが、まず、下記非特許文献5の加工方法は、連続表面である非球面レンズについての加工方法であり、本発明のような不連続な回折表面を有するフレネルレンズの切削加工ではなく、加工方法や工具軌跡の制御方法が異なる。
さらに、下記の特許文献6の加工方法は、断面が直線である鋸刃状を有する光学素子を製造するための加工方法であり、曲面加工ができない。
また、下記特許文献7の加工方法は、短い直線を理想曲線の内側でつないで擬似曲面を加工する方法であるが、工作物1回転あたりの切取り厚さに対して制御を行っていないため、光学素子成形加工用の金属製金型の製造においては有効であるが、脆性材料製フレネルレンズの加工には適用できない。
一方、近年、硬質脆性材料のフレネル形状の加工方法として、下記非特許文献4に示すものが開発された。
下記非特許文献4に開示された加工方法を要約して述べると、先端の尖った円盤状研削砥石を使用し、砥石の回転軸と工作物の回転軸を直交するように配置し、工作物上で接する研削砥石の回転方向と工作物の回転方向とが平行になるようにした研削加工方法である。
しかし、この加工方法では、複数の砥粒の形状およびその分布を精密に把握することが不可能であるため、硬質脆性材料に適した高品質・高安定性加工は困難である。また、加工対象となるフレネルレンズ等の光学部品について、砥石成形技術の制限により、表面回折部すなわち溝の底部において大きな円弧が残され(数十ミクロンレベル)、光学部品の性能に影響を及ぼす。さらに、加工中に断続的に加工を停止させ、砥石を成形修正しなければならない問題もある。
特開2000−237942号公報
特開平7−124813号公報
特開平10−138004号公報
特開2000−24801号公報
特公昭61−25481号公報
特開平10−309601号公報
特開平10−293205号公報
森田晋也、山形豊、樋口俊郎:単結晶銅を用いたホログラム光学素子の切削加工条件に関する研究;1998年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集
森田晋也、山形豊、樋口俊郎:超精密切削加工によるホログラム光学素子の製作(第2報)−光学性能の評価−;1998年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集
Sornsuwit他;マイクロ溝加工技術を用いたフレネルレンズ金型加工;1997年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集
鈴木浩文、樋口俊郎、和嶋直、北嶋孝之、奥山繁樹、山崎洋:マイクロフレネルレンズ成形型の超精密研削−超硬合金型の研削加工の可能性検証−;精密工学会誌,65(8)[1163−1168],(1999)
閻紀旺、庄司克雄、厨川常元:直線包絡法による単結晶シリコン製大口径非球面レンズの超精密切削;精密工学会誌,68(4)[561−565],(2002)
本発明は、上記状況に鑑み、簡便にして、高精度な切削加工を行うことができる軸対称回折曲面の切削加工方法及びそれによって作製される物品を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕軸対称回折曲面の切削加工方法において、先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)に加えてB軸の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって、回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成することを特徴とする。
〔1〕軸対称回折曲面の切削加工方法において、先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)に加えてB軸の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって、回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記剣状切削バイトは高硬度材で作られており、先端に負のすくい角を持たせるための微小な面取りが施されていることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記高硬度材はダイヤモンド、CBN、セラミックスであることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記被加工物は赤外線から紫外線までの全ての波長範囲において透過性のある硬質脆性光学材料からなることを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記硬質脆性光学材料は光学ガラス、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、石英、フッ化カルシウム(蛍石)であることを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項に記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記剣状切削バイトの直線状の切れ刃と目標とする曲面形状の接線との間に微小な角度を保持させながら前記剣状切削バイトを送らせ、前記被加工物の1回転あたりの切取り厚さをある臨界値以下に制御することによって前記被加工物表面の脆性破壊を抑制することを特徴とする。
〔7〕物品であって、上記〔1〕記載の軸対称回折曲面の切削加工方法によって作製される。
〔8〕上記〔7〕記載の物品であって、その物品が硬質脆性材料からなる光学部品である。
〔9〕上記〔8〕記載の物品であって、前記光学部品がフレネルレンズであることを特徴とする。
本発明は微小な剣状バイトを使用した切削加工方法であり、脆性材料の加工における脆性破壊を抑制するため、まず剣状バイトのすくい面に微小な面取りを施すことによって工具すくい角を適正な負の値(−15°〜−40°)にし、切削領域において静水圧応力を生成させた。また、単純な切り込み切削でなく、直線包絡法を使用し、切れ刃と加工面接線との角度(切れ刃角)を微小にすることによって切取り厚さを常にある臨界値(0.1μmレベル)以下に制御するため、脆性破壊の生じない延性モード加工ができる。さらに工具先端を非常にシャープにすることによって、フレネルレンズの回折部の円弧半径を極めて小さく(1μmレベル)することができるため、極めて高精度の光学部品製造、特に、球面や非球面などの任意の曲面断面形状を持つフレネルレンズの加工が可能である。しかも加工中に工具の修正が不要であり、連続的な加工が可能であるため、加工時間の著しい短縮も可能である。使用機械については、従来の方法(前記非特許文献4参照)ではXYZCの4軸制御が必要であったが、本発明ではXZBの3軸同時制御で加工が行える。
本発明によれば、各種の光学結晶やガラス等の脆性材料からなるフレネルレンズの、簡便にして、高精度な切削加工を行うことができ、その実用化により、光学機器の飛躍的な高機能化・小型化・軽量化が期待できる。
軸対称回折曲面の切削加工方法において、先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)制御に加えたB軸制御の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成する。よって、簡便にして、高精度な切削加工を行うことができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例を示す被加工物としてのフレネルレンズの断面形状を示す図、図2はそのフレネルレンズの加工方式の模式図、図3は図2の部分拡大図(その1)、図4は図2の部分拡大図(その2)である。
これらの図において、1はフレネルレンズ基板、2はそのフレネルレンズ基板1の回転中心、3は切削加工面、4は微細溝、4Aは微細溝4の垂直な壁面、4Bは微細溝4の一定あるいは可変の曲率を持つ曲面、5は微小な剣状バイト、5−1は第1のバイト位置、5−2は第2のバイト位置、5Aは微小な剣状バイト5の切れ刃、6は加工面接線(理想形状7の接線)、7は理想形状、dは微細溝4の深さ、bは微細溝4の幅、Rは曲率半径、kは切れ刃角、fは送り量、hは切取り厚さである。
ここでは、切削加工工具として、微小な剣状バイト5を用いる。この微小な剣状バイト5は、高硬度材であるダイヤモンド、CBN(cubic boron nitride:立方晶系窒化ホウ素)、セラミックスなどから構成することができる。このとき、脆性材料の加工における脆性破壊を防ぐため、剣状バイト5のすくい面に微小な面取りを施しておく。これにより剣状バイト5の工具すくい角が適正に負の値となり、切削領域において静水圧応力が生成される。
フレネルレンズ基板1としては、赤外線から紫外線までの全ての波長範囲において透過性のある硬質脆性材料、具体的には、光学ガラス、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、石英、フッ化カルシウムなどを用いる。特に、単結晶ゲルマニウム(Ge)は赤外線光学材料であり、サーマルイメージングシステムや暗視野集光デバイス用のレンズ基板材料として多用されている。
加工するフレネルレンズ形状の断面図が図1に示されている。それぞれの微細溝4は垂直な壁面4A(図3参照)と一定あるいは可変の曲率を持つ曲面4B(図3参照)からなる傾斜面を有している。
ここでは、加工例として、曲率半径Rの球面を深さdの複数の微細溝4からなる回折表面に置き換えたフレネルレンズの加工について説明する。
一般的に軸対称な球面、非球面加工を行う際に、以下の式が用いられる。
微細溝4の形状は、図1のように溝深さdを設定すると、曲率半径Rの球面上でZ軸方向に溝深さdだけ変化する点より決まる。そして、曲率半径Rの中心からこの点に対する角度の差から、以下の式により微細溝4の幅bを計算することができる。i(i=1,…)は、中心からの微細溝4の本数を示す。
なお、微細溝4の幅bは、次の式で決まる。
b=R(sinθi+1 −sinθi )
以上のようなフレネルレンズ形状を加工するために、図2に示すような加工方式を用いた。
以上のようなフレネルレンズ形状を加工するために、図2に示すような加工方式を用いた。
まず、フレネルレンズ基板1を主軸2の回転により回転させ、切削加工工具としての微小な剣状バイト5をZ方向に直線運動させ〔図2の(1)〕、微細溝4の垂直な壁面4Aを形成する。次に、微小な剣状バイト5をXZの2方向に運動させながら連動して回転B軸を同時に旋回させ〔図2の(2)〕、直線状の切れ刃5Aの包絡により微細溝4の曲面4Bを創成する。すなわち、本発明ではXZ2軸の同時制御と並行して、B軸を旋回させることによって、連続して断面が曲線の回折表面を加工する。
このように、本発明は微小な剣状バイトを使用した切削加工によっている。そして、脆性材料の加工における脆性破壊を抑制するため、まず、剣状バイト5のすくい面に微小な面取りを行うことによって工具すくい角を適正な負の値にし、切削領域において静水圧応力を生成させた。また、単純な切り込み切削でなく、直線包絡法を使用し、切れ刃5Aと加工面接線6との角度(切れ刃角)kを微小にすることによって切取り厚さhを常にある臨界値以下に制御するため、極めて高品質の延性モード加工ができる。さらに、工具(剣状バイト5)先端を非常にシャープにすることによって、フレネルレンズの回折部の円弧半径を極めて小さく(1μmレベル)することができるため、極めて高精度の光学部品製造が可能である。しかも、加工中に工具の修正が不要であり、連続的な加工が可能であるため、加工時間の著しい短縮も可能である。使用機械については、従来の方法(前記非特許文献4参照)ではXYZCの4軸制御が必要であったが、本発明ではXZB(X軸、Z軸、B軸回転)の3軸同時制御で加工を行うことができる。
表1は、以上のようなフレネルレンズを構成する微細溝の幅、X座標、加工する際のB軸回転角度などを示すものである。なお微細溝の深さはすべて50μmとした。
図5は本発明にかかる加工機の外観を示す代用図面としての写真、図6はその加工機におけるバイトの先端の位置を示す図、図7はフレネルレンズを加工する際の工具(バイト)軌跡を示す図、図8は加工用NC(数値制御)プログラムのフローチャートである。
具体例として、実験には、図5に示すような、(株)不二越製XZB同時3軸制御装置搭載の非球面加工機ASP−15を使用した。図5において、21はB軸回転テーブル、22はそのB軸回転テーブル21上に設けられる工具台、23はその工具台22に装着される剣状バイト、24は反時計方向に回転する工作物(被加工物)の主軸、25はその主軸24に固定される工作物(被加工物)である。
まず、図8によって、加工用NC(数値制御)プログラムのフローチャートを説明する。
(1)まず、最も外側の溝(最外溝)(n=0)の切削開始点のX座標へバイトを移動する(ステップS1)。
(2)次に、割り込みで工具を被切削材に接触させる(ステップS2)。
(3)溝本数(n=n+1)を設定する(ステップS3)。
(4)溝の垂直面を形成する(−Z方向へ移動)(ステップS4)。
(5)溝の円弧面を形成する(X,Z方向へ垂直運動かつB軸回転)(ステップS5)。
(6)溝の加工は完了したか否かチェックする(ステップS6)。
(7)溝の加工が完了したら、バイトを離し(Z方向+へ移動)作業を完了する(ステップS7)。溝の加工が完了していなければ、ステップS3へ戻り、溝の加工を続行する。
そのバイトの軌跡が図7に示されている。
図6に示すように、剣状バイトの先端が回転軸(B軸)の回転中心の延長線上にあるように、バイトの位置を合わせる。これによって、曲面の包絡創成は、直交するXZ軸の制御と回転B軸の制御の同時3軸制御で行われ、加工用のNCプログラムが非常に簡単になる。すなわち、B軸の回転角度θは、以下の式で示すように、目標とする微細溝の傾斜面の傾斜角度αに、切込み角(切れ刃角)kを加えた値となる。
θ=α+k
ここで、主軸24はエアベアリングで支持されている。直交するX、Z2軸のテーブルには、高剛性でかつ減衰性の高い油静圧案内と油静圧ねじを採用しており、機械的な接触部を持たない位置決め機構になっている。X、Z軸は、ACサーボモータによって駆動されている。テーブルの位置設定には、レーザスケールによるフルクローズド制御を用いており、最小設定単位は10nm/stepである。B軸はB軸回転テーブル21に油静圧軸受、駆動にバックラッシュのない摩擦駆動方式を採用し、0.001°の分解能が得られている。
ここで、主軸24はエアベアリングで支持されている。直交するX、Z2軸のテーブルには、高剛性でかつ減衰性の高い油静圧案内と油静圧ねじを採用しており、機械的な接触部を持たない位置決め機構になっている。X、Z軸は、ACサーボモータによって駆動されている。テーブルの位置設定には、レーザスケールによるフルクローズド制御を用いており、最小設定単位は10nm/stepである。B軸はB軸回転テーブル21に油静圧軸受、駆動にバックラッシュのない摩擦駆動方式を採用し、0.001°の分解能が得られている。
加工条件を表2に表す。
このように、切削加工工具として、刃先角60°、すくい角−30°、逃げ角6°の単結晶剣状ダイヤモンドバイトを使用した。
図9はその微小な剣状ダイヤモンドバイトの先端の構造を示すSEM写真であり、図9(a)はそのバイトの上面図、図9(b)はそのバイトの側面図である。ここで、23はバイト、23Aはそのバイトのすくい面、23Bはそのバイトの逃げ面を示している。
なお、Ge(110)を切削する場合、すべての結晶面において延性モード切削が可能である最小臨界切取り厚さdcminが約60nmであるため、本実験では、全ての工程において切取り厚さhを50nm未満になるように設定した。
図10は、加工したフレネルレンズの2次元断面形状と理想形状の間の差から計算した形状誤差である。形状誤差のP−V値は、約500nmであった。
図11は、レーザプローブ式非接触3次元形状測定器により測定した本発明の具体例の加工したフレネルレンズの形状を示す画像、図12は本発明の具体例の加工したフレネルレンズの2次元断面プロファイルを示す図である。
これらの図から明らかなように、微細溝の断面形状は理想的に形成されている。溝の表面粗さを測定した結果、切削方向で20nmRy、送り方向で50nmRyであった。
図13は、加工したフレネルレンズの表面をノマルスキ顕微鏡で観察した画像であり、この図によれば、仕上げ面は延性モード切削によって形成されており、脆性破壊は全く観察されないことが分かる。
図14は、加工中に形成された切りくずをSEMにより観察した画像である。このように切りくずは均一に形成されており、連続した流れ型となっている。このような切りくず形態は、脆性材料であるGeが塑性変形によって除去されていることを説明している。
上記のように構成したので、上記特許文献7に比べると、本発明の加工方法は、理想曲線の接線との間に微小な角度を保持させながら、理想曲線の外側で直線の包絡によって加工するため、上記特許文献7のような疑似曲線ではなく、曲面そのものを形成できる利点がある。
また、本発明の加工方法は、工作物1回転あたりの切取り厚さをある臨界値以下に制御することによって、脆性材料を延性モードで加工できるので、脆性材料製フレネルレンズの加工に好適である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の軸対称回折曲面の切削加工方法は、特に、脆性材料からなるフレネルレンズあるいは類似の形状を有するその他の光学部品の製造に適している。
1 フレネルレンズ基板
2 フレネルレンズ基板の回転中心
3 切削加工面
4 微細溝
4A 垂直な壁面
4B 一定あるいは可変の曲率を持つ曲面
5 微小な剣状バイト
5−1 第1のバイト位置
5−2 第2のバイト位置
5A 切れ刃
6 加工面接線(理想形状の接線)
7 理想形状
d 微細溝の深さ
k 切れ刃角
f 送り量
h 切取り厚さ
b 微細溝の幅
R 曲率半径
21 B軸回転テーブル
22 工具台
23 バイト
23A バイトのすくい面
23B バイトの逃げ面
24 主軸
25 工作物(被加工物)
2 フレネルレンズ基板の回転中心
3 切削加工面
4 微細溝
4A 垂直な壁面
4B 一定あるいは可変の曲率を持つ曲面
5 微小な剣状バイト
5−1 第1のバイト位置
5−2 第2のバイト位置
5A 切れ刃
6 加工面接線(理想形状の接線)
7 理想形状
d 微細溝の深さ
k 切れ刃角
f 送り量
h 切取り厚さ
b 微細溝の幅
R 曲率半径
21 B軸回転テーブル
22 工具台
23 バイト
23A バイトのすくい面
23B バイトの逃げ面
24 主軸
25 工作物(被加工物)
Claims (9)
- 先端の尖った微小な剣状切削バイトを軸対称被加工物の回転軸が所在する平面上で一定の軌跡に沿って駆動させながら、前記平面と垂直な直線を軸として旋回させ、1軸(Z)直線運動と、2軸(XZ)に加えてB軸の3軸同時制御による直線包絡を行い、前記剣状切削バイトの切れ刃の転写および包絡によって、回転する前記被加工物の表面に不連続な回折曲面を形成することを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項1記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記剣状切削バイトは高硬度材で作られており、先端に負のすくい角を持たせるための微小な面取りが施されていることを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項2記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記高硬度材はダイヤモンド、CBN、セラミックスであることを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項1記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記被加工物は赤外線から紫外線までの全ての波長範囲において透過性のある硬質脆性光学材料からなることを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項4記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記硬質脆性光学材料は光学ガラス、シリコン、ゲルマニウム、ZnSe、石英、フッ化カルシウム(蛍石)であることを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項1から5の何れか一項に記載の軸対称回折曲面の切削加工方法において、前記剣状切削バイトの直線状の切れ刃と目標とする曲面形状の接線との間に微小な角度を保持させながら前記剣状切削バイトを送らせ、前記被加工物の1回転あたりの切取り厚さをある臨界値以下に制御することによって前記被加工物表面の脆性破壊を抑制することを特徴とする軸対称回折曲面の切削加工方法。
- 請求項1記載の軸対称回折曲面の切削加工方法によって作製されることを特徴とする物品。
- 請求項7記載の物品において、該物品が硬質脆性材料からなる光学部品であることを特徴とする物品。
- 請求項8記載の物品において、前記光学部品がフレネルレンズであることを特徴とする物品。
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