[実施例1]
以下では、下記記載の順番に沿って本実施例の吐出装置および吐出方法を説明する。
・A.吐出装置の全体構成
・B.キャリッジ
・C.ヘッド
・D.ヘッド群
・E.制御部
・F.吐出方法の一例
(A.吐出装置の全体構成)
図1に示すように、吐出装置100は、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から液状の材料111が供給される吐出走査部102と、を備える。吐出走査部102は、複数のヘッド114(図2)を保持するキャリッジ103と、キャリッジ103の位置を制御する第1位置制御装置104と、後述する基体10Aを保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108と、制御部112と、を備えている。タンク101と、キャリッジ103における複数のヘッド114と、はチューブ110で連結されており、タンク101から複数のヘッド114のそれぞれに液状の材料111が圧縮空気によって供給される。
第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、キャリッジ103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りでキャリッジ103を回転させる機能も有する。本実施例では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。なお、本明細書では、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108を、「走査部」と表記することもある。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、所定の材料を塗布すべき被吐出部を有する基体をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。なお、本明細書では、被吐出部を有する基体を「受容基板」と表記することもある。
本明細書におけるX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は、キャリッジ103およびステージ106のどちらか一方が他方に対して相対移動する方向に一致している。また、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向を規定するXYZ座標系の仮想的な原点は、吐出装置100の基準部分に固定されている。本明細書において、X座標、Y座標、およびZ座標とは、このようなXYZ座標系における座標である。なお、上記の仮想的な原点は、基準部分だけでなく、ステージ106に固定されていてもよいし、キャリッジ103に固定されていてもよい。
上述のように、キャリッジ103は第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は第2位置制御手段108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、キャリッジ103、ヘッド群114G(図2)、ヘッド114、またはノズル118(図3)は、ステージ106上で位置決めされた被吐出部に対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。ここで、静止した被吐出部に対してキャリッジ103がY軸方向に移動してもよい。そしてキャリッジ103がY軸方向に沿って所定の2点間を移動する期間内に、静止した被吐出部に対してノズル118から材料111を吐出してもよい。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部側)の少なくとも一方を他方に対して移動することを含む。
さらに、キャリッジ103、ヘッド群114G(図2)、ヘッド114、またはノズル118(図3)が相対移動するとは、ステージ106、基体、または被吐出部に対するこれらの相対位置が変わることである。このため、本明細書では、キャリッジ103、ヘッド群114G、ヘッド114、またはノズル118が吐出装置100に対して静止して、ステージ106のみが移動する場合であっても、キャリッジ103、ヘッド群114G、ヘッド114、またはノズル118が、ステージ106、基体、または被吐出部に対して相対移動すると表記する。また、相対走査または相対移動と、材料の吐出と、の組合せを指して「塗布走査」と表記することもある。
キャリッジ103およびステージ106は上記以外の平行移動および回転の自由度をさらに有している。ただし、本実施例では、上記自由度以外の自由度に関する記載は説明を平易にする目的で省略されている。
制御部112は、液状の材料111を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112の詳細な構成および機能は、後述する。
(B.キャリッジ)
図2は、キャリッジ103をステージ106側から観察した図であり、図2の紙面に垂直な方向がZ軸方向である。また、図2の紙面の左右方向がX軸方向であり、紙面の上下方向がY軸方向である。
図2に示すように、キャリッジ103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数のヘッド114を保持している。本実施例では、キャリッジ103に保持されるヘッド114の数は24個である。それぞれのヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれのヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。図2に示すように、ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。なお、ヘッド114同士の相対位置関係の詳細は、後述する。
本明細書では、Y軸方向に隣接する4つのヘッド114を「ヘッド群114G」と表記することもある。この表記によれば、図2のキャリッジ103は、6つのヘッド群114Gを保持していると表現し得る。
(C.ヘッド)
図3は、ヘッド114の底面を示す。ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPが約70μmとなるように配置されている。ここで、「ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXP」は、ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
本実施例では、ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bと、をなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、Y軸方向に並んでいる。そして、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔でX軸方向に一列に並んでいる。本実施例では、この一定間隔は約140μmである。つまり、ノズル列116AのノズルピッチLNPおよびノズル列116BのノズルピッチLNPは、ともに約140μmである。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さ(約70μm)だけX軸方向の正の方向(図3の右方向)にずれている。このため、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さ(約70μm)である。
したがって、ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。
もちろん、ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列の一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
さて、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズルからなるため、1つのヘッド114は180個のノズルを有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からは液状の材料111が吐出されない。このため、ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118が液状の材料111を吐出するノズルとして機能する。本明細書では、これら160個のノズル118を「吐出ノズル」と表記することもある。
なお、1つのヘッド114におけるノズル118の数は180個に、限定されない。1つのヘッド114に360個のノズルが設けられていてもよい。この場合には、ノズル列116Aおよび116Bのそれぞれが、180個のノズル118からなればよい。また、本発明において吐出ノズルの数は、160個に限定されない。1つのヘッド114にP個の吐出ノズルがあってもよい。ここで、Pは2以上の自然数であって、ヘッド114における全ノズル数以下であればよい。
本明細書では、ヘッド114同士の相対位置関係を説明する目的で、ノズル列116Aに含まれる90個のノズル118のうち、左から6番目のノズル118をヘッド114の「基準ノズル118R」と表記する。つまり、ノズル列116Aにおける80個の吐出ノズルのうち、最も左側の吐出ノズルがヘッド114の「基準ノズル118R」である。なお、すべてのヘッド114に対して、「基準ノズル118R」の指定の仕方が同じであればよいので、「基準ノズル118R」の位置は、上記位置でなくてもよい。
図4(a)および(b)に示すように、それぞれのヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれのヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128と、を備えている。振動板126と、ノズルプレート126と、の間には、タンク101から孔131を介して供給される液状の材料111が常に充填される液たまり129が位置している。
また、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の材料111が供給される。
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bと、を含む。この1対の電極124A、124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状の材料111が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の材料が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
ここで、本明細書において「液状の材料」とは、ノズルから吐出可能な粘度を有する材料をいう。この場合、材料が水性であると油性であるとを問わない。ノズルから吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。
制御部112(図1)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出される材料111の体積が、制御部112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。そのような場合には、ノズル118のそれぞれから吐出される材料111の体積は、0pl〜42pl(ピコリットル)の間で可変である。また、制御部112は、後述するように、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118と、を設定することでもできる。
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
(D.ヘッド群)
次に、ヘッド群114Gにおける4つのヘッド114の相対位置関係を説明する。図5には、図2のキャリッジ103においてY軸方向に隣接する2つのヘッド群114Gが示されている。
図5に示すように、それぞれのヘッド群114Gは、4つのヘッド114からなる。そして、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチGXPが、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPの1/4倍の長さとなるように、ヘッド群114において4つのヘッド114が配置されている。本実施例では、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは約70μmだから、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチGXPは、その1/4倍の約17.5μmである。ここで、「ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチGXP」は、ヘッド群114Gにおけるノズル118のすべてを、Y軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
もちろん、ヘッド群114Gが含むヘッド114の数は、4つだけに限定されない。ヘッド群114GはN個のヘッド114からなってもよい。ここで、Nは2以上の自然数である。この場合には、ノズルピッチGXPがノズルピッチHXPの1/N倍の長さになるように、ヘッド群114GにおいてN個のヘッド114が配置されればよい。
以下では、本実施例のヘッド114の相対位置関係をより具体的に説明する。
まず、説明を平易にする目的で、図5の左上のヘッド群114Gに含まれる4つのヘッド114を、上からそれぞれヘッド1141、ヘッド1142、ヘッド1143、ヘッド1144と表記する。同様に、図5の右下のヘッド群114Gに含まれる4つのヘッド114を、上からそれぞれヘッド1145、ヘッド1146、ヘッド1147、ヘッド1148と表記する。
そして、ヘッド1141におけるノズル列116A、116Bをノズル列1A、1Bと表記し、ヘッド1142におけるノズル列116A、116Bをノズル列2A、2Bと表記し、ヘッド1143におけるノズル列116A、116Bをノズル列3A、3Bと表記し、ヘッド1144におけるノズル列116A、116Bをノズル列4A、4Bと表記する。同様に、ヘッド1145におけるノズル列116A、116Bをノズル列5A、5Bと表記し、ヘッド1146におけるノズル列116A、116Bをノズル列6A、6Bと表記し、ヘッド1147におけるノズル列116A、116Bをノズル列7A、7Bと表記し、ヘッド1148におけるノズル列116A、116Bをノズル列8A、8Bと表記する。
これらノズル列1A〜8Bのそれぞれは、実際には90個のノズル118からなる。そして、上述したように、ノズル列1A〜8Bのそれぞれにおいて、これら90個のノズルは、X軸方向に並んでいる。ただし、図5では説明の便宜上、ノズル列1A〜8Bのそれぞれが、4つの吐出ノズル(ノズル118)からなるように描かれている。さらに、図5では、ノズル列1Aの最も左のノズル118がヘッド1141の基準ノズル118Rであり、ノズル列2Aの最も左のノズル118がヘッド1142の基準ノズル118Rであり、ノズル列3Aの最も左のノズル118がヘッド1143の基準ノズル118Rであり、ノズル列4Aの最も左のノズル118がヘッド1144の基準ノズル118Rであり、ノズル列5Aの最も左のノズル118がヘッド1145の基準ノズル118Rである。
本実施例では、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPと、ヘッド114における吐出ノズルの数と、の積を、「ヘッドの有効長HL」と表記することもある。図5の例の場合では、ノズルピッチHXPが70μmであるとともに、吐出ノズルの数が8なので、ヘッドの有効長HLは560μmである。また、本実施例では、1つヘッド114が、連続する4つのサブ領域SRからなる。それぞれのサブ領域SRのX軸方向の長さDLは、ヘッドの有効長HLの1/4倍である。以下では説明の便宜上、ヘッド114の4つのサブ領域SRを、X軸方向の正の方向(図面右)に向かって、サブ領域SR1、SR2、SR3、SR4と表記する。
以上のような表記に基づくと、各ヘッド114の基準ノズル118RのX座標は以下のように表現される。
ヘッド1142の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1141の基準ノズル118RのX座標から長さDLだけずれたX座標に対して、さらにノズルピッチHXPの1/2倍ずれている。図5の例では、ヘッド1142の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1141の基準ノズル118RのX座標に対して、長さDLに、ノズルピッチHXPの1/2倍を加えた長さだけ、X軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。
ヘッド1144の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1143の基準ノズル118RのX座標から長さDLだけずれたX座標に対して、さらにノズルピッチHXPの1/2倍ずれている。図5の例では、ヘッド1144の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1143の基準ノズル118RのX座標に対して、長さDLに、ノズルピッチHXPの1/2倍を加えた長さだけ、X軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。
ヘッド1143の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1142の基準ノズル118RのX座標から長さDLだけずれたX座標に対して、さらにノズルピッチHXPの1/4倍または3/4倍ずれている。図5の例では、ヘッド1143の基準ノズル118Rの位置は、ヘッド1143の基準ノズル118RのX座標に対して、長さDLからノズルピッチHXPの1/2倍を引いた長さだけ、X軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。なお、「X軸方向にずれる」と言う記載は、X軸方向の正の方向にずれることを含むだけでなく、X軸方向の負の方向にずれることも含む。
また、本実施例では、Y軸方向の負の方向(図面の下方向)に向かって、ヘッド1141、1142、1143、1144が、この順番で並んでいる。しかしながら、Y軸方向に並んだこれら4つのヘッド114の順番は、本実施例の順番でなくてもよい。具体的には、ヘッド1141とヘッド1142とが、Y軸方向に互いに隣接するとともに、ヘッド1143とヘッド1144とがY軸方向に互いに隣接していれば、いかなる並び方でもよい。
図5の右下のヘッド群114Gにおけるヘッド1145、1146、1147、1148の配置、つまりコンフィギュレーションも、ヘッド1141、1142、1143、1144の配置と同様である。
X軸方向に互いに隣接する2つのヘッド群114Gの間の相対位置関係を、ヘッド1145とヘッド1141との間の相対位置関係に基づいて説明する。
ヘッド1145の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1141の基準ノズル118RのX座標から、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPと、ヘッド114における吐出ノズルの数と、の積の長さだけX軸方向の正の方向にずれている。本実施例では、ノズルピッチHXPは約70μmであるとともに、1つのヘッド114における吐出ノズルの数は160個なので、ヘッド1145の基準ノズル118RのX座標は、ヘッド1141の基準ノズル118RのX座標から11.2mm(70μm×160)だけX軸方向の正の方向にずれている。ただし、図5では、説明の便宜上、ヘッド1141における吐出ノズルの数は8個なので、ヘッド1145の基準ノズル118RのX座標が、ヘッド1141の基準ノズル1141のX座標から560μm(70μm×8)だけずれているように描かれている。
ヘッド1141とヘッド1145とが上述のように配置されているので、ノズル列1Aの最も右の吐出ノズルのX座標と、ノズル列5Aの最も左の吐出ノズルのX座標とは、ノズルピッチLNPだけずれている。このため、2つのヘッド114G全体のX軸方向のノズルピッチが、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPの1/4倍である。
キャリッジ103全体としてのX軸方向のノズルピッチも、17.5μm、すなわち、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPの1/4倍の長さになるように、6つのヘッド群114Gが配置されている。
なお、本明細書では、ヘッド1141、ヘッド1144、ヘッド1145など、1つのヘッド群114Gにおける両端のヘッド114を「基準ヘッド」と表記することもある。
本実施例では、X軸方向に沿ったノズルピッチHPXの長さの範囲内に4つノズル118のX座標が収まる部分を、重畳部G(図5中ではG1〜G7)と表記する。例えば、図5において、重畳部G1には、ノズル列1Aの最も右のノズル118と、ノズル列2Aの右から3番目のノズル118と、ノズル列3Aの左から2番目のノズル118と、ノズル列4Aの最も左のノズル118と、が含まれる。同様に、重畳部G2には、ノズル列1Bの最も右のノズル118と、ノズル列2Bの右から2番目のノズル118と、ノズル列3Bの左から2番目のノズル118と、ノズル列4Bの最も左のノズル118と、が含まれる。また、重畳部G3には、ノズル列2Aの最も右のノズル118と、ノズル3Aの最も右のノズル118と、ノズル4Aの最も右のノズル118と、ノズル列5Aの最も左のノズル118と、が含まれる。
本実施例のヘッド配置によれば、重畳部G1〜G7のいずれにも、サブ領域SR1に属するノズル118と、サブ領域SR2に属するノズル118と、サブ領域SR3に属するノズル118と、サブ領域SR4に属するノズル118と、が含まれる。しかも、1つの重畳部(例えば重畳部G1)に含まれるサブ領域SR1のノズル数と、サブ領域SR2のノズル数と、サブ領域SR3のノズル数と、サブ領域SR4のノズル数とは、同じである。例えば、図5の場合では、重畳部G1には、サブ領域SR4の属するノズル118と、サブ領域SR3に属するノズル118と、サブ領域SR2に属するノズル118と、サブ領域SR1に属するノズル118と、が1つずつ含まれる。
さらに本実施例のヘッドの配置によれば、ノズル列1Bの最も右のノズル118のX座標は、ノズル列1Aの最も右のノズル118のX座標と、ノズル列5Aの最も左のノズル118のX座標と、の中間にほぼ一致する。そして、ノズル列2Aの右から2番目のノズル118のX座標は、ノズル列1Aの最も右のノズル118のX座標と、ノズル列1Bの最も右のノズル118のX座標と、の中間にほぼ一致する。ノズル列2Aの左から2番目のノズル118のX座標は、ノズル列1Aの最も右のノズル118のX座標と、ノズル列2Aの右から2番目のノズル118のX座標と、の中間にほぼ一致する。ノズル列3Aの左から2番目のノズル118のX座標は、ノズル列1Aの最も右のノズル118のX座標と、ノズル列2Aの右から2番目のノズル118のX座標と、の中間にほぼ一致する。ノズル列4Aの最も左のノズル118のX座標は、ノズル列2Aの右から2番目のノズル118のX座標と、ノズル列1Bの最も右のノズル118のX座標と、の中間にほぼ一致する。
(E.制御部)
次に、制御部112の構成を説明する。図6に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶手段202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。バッファメモリ202と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と記憶手段202とは、相互に通信可能に接続されている。処理部204と走査駆動部206とは相互に通信可能に接続されている。処理部204とヘッド駆動部20とは相互に通信可能に接続されている。また、走査駆動部206は、第1位置制御手段104および第2位置制御手段108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、複数のヘッド114のそれぞれと相互に通信可能に接続されている。
入力バッファメモリ200は、外部情報処理装置から液状の材料111の液滴の吐出を行うための吐出データを受け取る。吐出データは、基体上のすべての被吐出部の相対位置を表すデータと、すべての被吐出部に液状の材料111を所望の厚さにまで塗布するのに必要となる相対走査の回数を示すデータと、オンノズル118Aとして機能するノズル118を指定するデータと、オフノズル118Bとして機能するノズル118を指定するデータと、を含む。オンノズル118Aおよびオフノズル118Bの説明は後述する。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶手段202に格納する。図6では、記憶手段202はRAMである。
処理部204は、記憶手段202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、後述する吐出周期EP(図7)と、に応じた駆動信号を、第1位置制御手段104および第2位置制御手段108に与える。この結果、被吐出部に対してヘッド114が相対走査する。一方、処理部204は、記憶手段202に記憶された吐出データと、吐出周期EPと、に基づいて、吐出タイミング毎のノズル118のオン・オフを指定する選択信号SCをヘッド駆動部208へ与える。ヘッド駆動部208は、選択信号SCに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号ESをヘッド114に与える。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から、液状の材料111が液滴として吐出される。
制御部112は、CPU、ROM、RAMを含んだコンピュータであってもよい。この場合には、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
次に制御部112におけるヘッド駆動部208の構成と機能を説明する。
図7(a)に示すように、ヘッド駆動部208は、1つの駆動信号生成部203と、複数のアナログスイッチASと、を有する。図7(b)に示すように、駆動信号生成部203は駆動信号DSを生成する。駆動信号DSの電位は、基準電位Lに対して時間的に変化する。具体的には、駆動信号DSは、吐出周期EPで繰り返される複数の吐出波形Pを含む。ここで、吐出波形Pは、ノズル118から1つの液滴を吐出するために、振動子124の一対の電極間に印加されるべき駆動電圧波形に対応する。
駆動信号DSは、アナログスイッチASのそれぞれの入力端子に供給される。アナログスイッチASのそれぞれは、吐出部127のそれぞれに対応して設けられている。つまり、アナログスイッチASの数と吐出部127の数(つまりノズル118の数)とは同じである。
処理部204は、ノズル118のオン・オフを表す選択信号SC(図7中のSC1、SC2…)を、アナログスイッチASのそれぞれに与える。ここで、選択信号SCは、アナログスイッチAS毎に独立にハイレベルおよびローレベルのどちらかの状態を取り得る。一方、アナログスイッチASは、駆動信号DSと選択信号SCとに応じて、振動子124の電極124Aに吐出信号ES(図7中のES1、ES2…)を供給する。具体的には、選択信号SCがハイレベルの場合には、アナログスイッチASは電極124Aに吐出信号ESとして駆動信号DSを伝播する。一方、選択信号SCがローレベルの場合には、アナログスイッチASが出力する吐出信号ESの電位は基準電位Lとなる。振動子124の電極124Aに駆動信号DSが与えられると、その振動子124に対応するノズル118から液状の材料111が吐出される。なお、それぞれの振動子124の電極124Bには基準電位Lが与えられている。
図7(b)に示す例では、2つの吐出信号ES1、ES2のそれぞれにおいて、吐出周期EPの2倍の周期2EPで吐出波形Pが現れるように、2つの選択信号SC1、SC2のそれぞれにおいてハイレベルの期間とローレベルの期間とが設定されている。これによって、対応する2つのノズル118のそれぞれから、周期2EPで液状の材料111が吐出される。また、これら2つのノズル118に対応する振動子124のそれぞれには、共通の駆動信号生成部203からの共通の駆動信号DSが与えられている。このため、2つのノズル118からほぼ同じタイミングで液状の材料111が吐出される。
以上の構成によって、吐出装置100は、制御部112に与えられた吐出データに応じて、液状の材料111の塗布走査を行う。
(F.吐出方法の一例)
図8(a)および(b)を参照しながら、X軸方向に平行なストライプ状のターゲット、すなわち被吐出部18L、に対して、吐出装置100が液状の材料111を吐出する方法を説明する。なお、図8(a)に示す例では、キャリッジ103のY軸方向への相対移動によって、図5で説明したヘッド1141、1142、1143、1144、1145、1146、1147が、この順番で被吐出部18Lと重なり合う。また、図8には、図5における重畳部G1〜G7も示されている。
図8(a)に示すように、まず、キャリッジ103がステージ106に対してY軸方向に相対移動し始める。そして、ノズル列1Aが被吐出部18Lに重なると、ノズル列1Aのノズル118のうち、重畳部G1に含まれるノズル118から、被吐出部18Lに対して材料111が吐出される。図8(b)のラベル「1A」の右には、ノズル列1Aの吐出による着弾位置が黒丸で描かれている。図8(b)に示すように、ノズル列1Aの吐出によって、X軸方向にほぼ140μmのピッチで液状の材料111が被吐出部18Lに着弾する。
ノズル列1Aの次に、ノズル列1Bが被吐出部18Lに重なる。ノズル列1Bが被吐出部18Lに重なると、ノズル列1Bのノズル118のうち、重畳部G1に含まれるノズル118から、被吐出部18Lに対して液状の材料111が吐出される。図8(b)のラベル「1B」の右には、ノズル列1Bの吐出による着弾位置が黒丸で描かれており、また、ノズル列1Bに先行するノズル列の吐出による着弾位置が白丸で描かれている。
ノズル列1Bの次に、ノズル列2Aが被吐出部18Lに重なる。ノズル列2Aが被吐出部18Lに重なると、ノズル列2Aのノズル118のうち、重畳部G1に含まれるノズル118と、重畳部G2とに含まれるノズル118と、重畳部G3に含まれるノズル118と、重畳部G4に含まれるノズル118とから、被吐出部18Lに対して液状の材料111が同時に吐出される。図8(b)のラベル「2A」の右には、ノズル列2Aの吐出による着弾位置が黒丸で描かれており、また、ノズル列2Aに先行するノズル列による着弾位置が白丸で描かれている。
ノズル列2Aの次に、ノズル列2Bが被吐出部18Lに重なる。ノズル列2Bが被吐出部18Lに重なると、ノズル列2Bのノズル118のうち、重畳部G1に含まれるノズル118と、重畳部G2とに含まれるノズル118と、重畳部G3に含まれるノズル118と、重畳部G4に含まれるノズル118とから、被吐出部18Lに対して液状の材料111が同時に吐出される。図8(b)のラベル「2B」の右には、ノズル列2Bの吐出による着弾位置が黒丸で描かれており、また、ノズル列2Bに先行するノズル列の吐出による着弾位置が白丸で描かれている。
その後、ノズル列3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、6B、7A、7Bがこの順番で被吐出部18Lに重なり、ノズル列3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、6B、7A、7Bのそれぞれから被吐出部18Lに対して、ノズル列1A、1B、2A、2Bと同様に液状の材料111が吐出される。この結果、ヘッド群114Gが被吐出部18Lに対してY軸方向に1回だけ相対移動する間に、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPの1/4倍の長さ、すなわち17.5μm、のピッチで液状の材料111が着弾する。
上記のストライプ状の被吐出部18Lの例の一つは、金属配線が形成されるための部分である。したがって、本実施例の吐出装置100は、液状の配線材料を吐出することで金属配線を製造する配線製造装置に適用できる。例えば、後述のプラズマ表示装置50(図20〜22)における支持基板52上にアドレス電極54を形成する配線製造装置に適用できる。
図30(a)は、X軸方向に沿ったヘッド114の吐出量のプロファイルを模式的に示すグラフである。一方、図30(b)は、X軸方向に沿ったヘッド114Gにおける重畳部G1〜G7の吐出量のプロファイルを模式的に示すグラフである。図30(a)および(b)の2つのグラフの横軸は、X軸方向に平行な軸であるとともに、ヘッド114におけるノズル118の位置に対応する。一方、図30(a)および(b)の2つのグラフの縦軸は、ノズル118からの吐出量を表している。また、吐出量のプロファイルは、図5で説明したヘッドの有効長HLの範囲で、実測値を補間して描かれている。
図30(a)に示すように、ヘッド114の両端のノズル118からの吐出量が最も多く、ヘッド114のほぼ中央のノズル118からの吐出量が最も少ない。そして、X軸方向に沿ったノズル118の吐出量のプロファイルの形状は、ヘッドの中央に関してほぼ対称な形状である。図30のプロファイルがこのような形状を取る理由は、ヘッド114の製造工程上の理由に依存するが、ここではその理由の詳細は省略する。
一方、図30(b)に示すように、X軸方向に沿った重畳部G1〜G7の吐出プロファイルは、ほぼヘッドの有効長HLの長さの1/4倍(すなわち長さDL)の周期で繰り返される形状を有する。この理由は以下の通りである。
図5に示したようにしながら説明したように、Y軸方向に並んだ4つのヘッド114の1つにおける基準ノズル118RのX座標に対して、他の3つのヘッド114の基準ノズル118RのX座標が、ほぼ長さDLの整数倍程度づつ、重複なくX軸方向に互いにずれている。
しかも、本実施例のヘッド配置によれば、重畳部G(図5ではG1〜G7)のいずれにも、サブ領域SR1に属するノズル118と、サブ領域SR2に属するノズル118と、サブ領域SR3に属するノズル118と、サブ領域SR4に属するノズル118と、が含まれる。このため、ヘッド114の様々なサブ領域SRに属するノズル118が、X軸方向に隣接する。さらに、1つの重畳部Gに含まれるサブ領域SR1のノズル118の数と、サブ領域SR2のノズル118の数と、サブ領域SR3のノズル118の数と、サブ領域SR4のノズル118の数とは、同じである。このため、X軸方向に平行な線、例えば、1つのストライプ状の被吐出部18L、に対して、重畳部G1〜G7から吐出される液滴の総体積は、どれもほぼ同じである。
したがって、重畳部G1・G2のX軸方向に沿った吐出量のプロファイルと、重畳部G3・G4のX軸方向に沿った吐出量のプロファイルと、重畳部G5・G6のX軸方向に沿った吐出量のプロファイルと、重畳部G7・G8のX軸方向に沿った吐出量のプロファイルとは、どれもほぼ同じ形状である。なお、互いに隣接する2つの重畳部Gに対応するX軸方向の長さはDLに等しい。
このように、本実施例によれば、図30(b)に示すように、ヘッド114におけるノズル118の位置毎にノズル118からの液滴の吐出量が異なっていても、ヘッド群114Gから吐出された液滴の列に、吐出量の差が現れにくい。これは、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118がヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しており、このため吐出量の差が打ち消されるからである。さらに、ヘッドの有効長HLの範囲内には、上記の重畳部Gが8つ並ぶ。したがって、ヘッド114の有効長HLの範囲内でのX軸方向に沿った吐出量の差も、さらに小さくなる。
ここで、ヘッド群114Gが相対移動する方向に対して、基準ヘッド114が最も先頭に位置する重畳部Gにおいては、液状の材料111の液滴の着弾順序は以下のようになる。まず、X軸方向に所定の距離をおいた2つの位置に液滴が着弾する。そして、既に液滴で覆われたこの2つの位置の中間位置に、次の液滴が着弾する。そして、このような着弾位置のパターンが繰り返される。例えば、図8の重畳部G1およびG2によって、まずX軸方向にノズルピッチHXPだけ離れたP1とP2とに、それぞれ液滴が着弾する。次に、P1とP2との中間に位置するP3に液滴が着弾する。そしてさらに、P1とP3との中間に位置するP4に液滴が着弾する。そして、P3とP2との中間に位置するP5に液滴が着弾する。
このように、本実施例のヘッド配置によれば、液滴は、自らの着弾位置に対して対称な2つの位置において、先に着弾した2つの液滴と接し得る。このため、後に着弾する液滴には、相反する2つの方向への力が働き、この結果、後に着弾した液滴はその着弾位置から対称な形状に広がる。この理由から、本実施例の吐出方法によれば、液状の材料の塗布ムラが生じにくい。
なお、ヘッド114が、図30に示すような形状の吐出プロファイルを有していなくても、本発明を適用できる。具体的には、ヘッドの有効長HLの中心に関して対称な形状でなくても、本発明を適用できる。重畳部Gからの吐出量の合計が、どれも同じになるように、それぞれの重畳部Gにサブ領域SRが含まれていれば、上記の効果が得られるからである。
また、本実施例によれば、吐出装置100において、キャリッジ103が相対移動する方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)に、複数のノズル118が並んでいる。このため、X軸方向に延びた被吐出部18Lに対して、複数のノズル118からほぼ同時に液状の材料111を吐出できる。この結果、駆動信号DSを生成する駆動信号生成部203は、複数のノズル118に対して1つでよい。また、一方向に並んだ複数のノズル118からの吐出タイミングがほぼ同時なので、駆動信号生成部203からの駆動信号DSを遅延させるための回路構成などが不要である。この結果、駆動信号DSにおける波形になまりが生じる要因が少なく、このため、精密な吐出波形Pを振動子124に印加することができる。したがって、ノズル118からの液状の材料111の吐出がより安定している。
さらに、本実施例によれば、吐出装置100において、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチは、ヘッドのX軸方向のノズルピッチの1/N倍の長さである。ここで、Nはヘッド群114Gに含まれるヘッド114の数である。このため、吐出装置100のX軸方向のノズル線密度が、通常のインクジェット装置のX軸方向のノズル線密度よりも高い。この結果、キャリッジ103をY軸方向に1回だけ相対移動する期間内に、X軸方向に沿ってより細密な着弾パターンを形成できる。
[実施例2]
本発明をカラーフィルタ基板の製造装置に適用した例を説明する。
図9(a)および(b)に示す基体10Aは、後述する製造装置1(図10)による処理を経て、カラーフィルタ基板10となる基板である。基体10Aは、マトリクス状に配置された複数の被吐出部18R、18G、18Bを有する。
具体的には、基体10Aは、光透過性を有する支持基板12と、支持基板12上に形成されたブラックマトリクス14と、ブラックマトリクス14上に形成されたバンク16と、を含む。ブラックマトリクス14は遮光性を有する材料で形成されている。そして、ブラックマトリクス14とブラックマトリクス14上のバンク16とは、支持基板12上にマトリクス状の複数の光透過部分、すなわちマトリクス状の複数の画素領域、が規定されるように位置している。
それぞれの画素領域において、支持基板12、ブラックマトリクス14、およびバンク16で規定される凹部は、被吐出部18R、被吐出部18G、被吐出部18Bに対応する。被吐出部18Rは、赤の波長域の光線のみを透過するフィルタ層111FRが形成されるべき領域であり、被吐出部18Gは、緑の波長域の光線のみを透過するフィルタ層111FGが形成されるべき領域であり、被吐出部18Bは、青の波長域の光線のみを透過するフィルタ層111FBが形成されるべき領域である。
図9(b)に示す基体10Aは、X軸方向とY軸方向との双方に平行な仮想平面上に位置している。そして、複数の被吐出部18R,18G、18Bが形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。基体10Aにおいて、被吐出部18R、被吐出部18G、および被吐出部18Bは、Y軸方向にこの順番で周期的に並んでいる。一方、被吐出部18R同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、また、被吐出部18G同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、そして、被吐出部18B同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでいる。なお、X軸方向およびY軸方向は互いに直交する。
被吐出部18R同士のY軸方向に沿った一定の間隔LRY、すなわちピッチは、ほぼ560μmである。この間隔は、被吐出部18G同士のY軸方向に沿った間隔LGYと同じであり、被吐出部18B同士のY軸方向に沿った間隔LBYとも同じである。また、被吐出部18Rの平面像は、長辺と短辺とで決まる矩形である。具体的には、被吐出部18RのY軸方向の長さはほぼ100μmであり、X軸方向の長さはほぼ300μmである。被吐出部18Gおよび被吐出部18Bも、被吐出部18Rと同じ形状・大きさを有している。被吐出部18R同士の上記間隔および被吐出部18の上記大きさは、40インチ程度の大きさのハイビジョンテレビにおける同一色に対応する画素領域の間隔や大きさに対応する。
図10に示す製造装置1は、図9の基体10Aの被吐出部18R、18G、18Bのそれぞれに対して、対応するカラーフィルタ材料を吐出する装置である。具体的には、製造装置1は、被吐出部18Rのすべてにカラーフィルタ材料111Rを塗布する吐出装置100Rと、被吐出部18R上のカラーフィルタ材料111Rを乾燥させる乾燥装置150Rと、被吐出部18Gのすべてにカラーフィルタ材料111Gを塗布する100Gと、被吐出部18G上のカラーフィルタ材料111Gを乾燥させる乾燥装置150Gと、被吐出部18Bのすべてにカラーフィルタ材料111Bを塗布する100Bと、被吐出部18Bのカラーフィルタ材料111Bを乾燥させる乾燥装置150Bと、カラーフィルタ材料111R、111G、111Bを再度加熱(ポストベーク)するオーブン160と、ポストベークされたカラーフィルタ材料111R,111G、111Bの層の上に保護膜20を設ける吐出装置100Cと、保護膜20を乾燥させる乾燥装置150Cと、乾燥された保護膜20を再度加熱して硬化する硬化装置165と、を備えている。さらに製造装置1は、吐出装置100R、乾燥装置150R、吐出装置100G、乾燥装置150G、吐出装置100B、乾燥装置150B、吐出装置100C、乾燥装置150C、硬化装置165の順番に基体10Aを搬送する搬送装置170も備えている。
図11に示すように、吐出装置100Rの構成は、実施例1の吐出装置100の構成と基本的に同じである。ただし、タンク101とチューブ110とに代えて、吐出装置100Rが液状のカラーフィルタ材料111R用のタンク101Rとチューブ110Rとを備える点で、吐出装置100Rの構成は吐出装置100の構成と異なる。なお、吐出装置100Rの構成要素のうち、吐出装置100の構成要素と同様なものには実施例1と同じ参照符号を付して、重複する説明を省略する。
吐出装置100Gの構成と、吐出装置100Bの構成と、吐出装置100Cの構成とは、いずれも基本的に吐出装置100Rの構造と同じある。ただし、吐出装置100Rにおけるタンク101Rとチューブ110Rとの代わりに、吐出装置100Gがカラーフィルタ材料111G用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置100Gの構成は吐出装置100Rの構成と異なる。同様に、タンク101Rとチューブ110Rとの代わりに、吐出装置100Bがカラーフィルタ材料111B用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置100Bの構成は吐出装置100Rの構成と異なる。さらに、タンク101Rとチューブ110Rとの代わりに、吐出装置100Cが保護膜材料用のタンクとチューブとを備える点で吐出装置100Cの構成は吐出装置100Rの構成と異なる。なお、本実施例における液状のカラーフィルタ材料111R,111G、111Bは、本発明の液状の材料の一例である。
次に、吐出装置100Rの動作を説明する。吐出装置100Rは、基体10A上でマトリクス状に配置された複数の被吐出部18Rに同一の材料を吐出する。なお、実施例3〜5において説明するように、基体10Aは、エレクトロルミネッセンス表示装置用の基板に置き換わってもよいし、プラズマ表示装置用の背面基板に置き換わってもよいし、電子放出素子を備えた画像表示装置の基板に置き換わってもよい。
図12の基体10Aは、被吐出部18Rの長辺方向および短辺方向がそれぞれX軸方向およびY軸方向に一致するように、ステージ106に保持されている。
まず、第1の走査期間が始る前に、制御部112は、吐出データに応じて、重畳部G(図12中ではG1、G2…)に含まれるいくつかのノズル118のX座標が被吐出部18RのX座標範囲に収まるように、キャリッジ103、すなわちヘッド群114G、を基体10Aに対してX軸方向に相対移動させる。被吐出部18RのX座標範囲とは、被吐出部18Rの長辺の両端のX座標で決まる範囲である。本実施例では、被吐出部18Rの長辺の長さは約300μmであり、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチHXPは17.5μmである。このため、ヘッド群114Gにおける16個または17個のノズル118が、1つの被吐出部18RのX座標範囲に入る。X座標範囲外のノズル118からは、走査期間の内になんらカラーフィルタ材料111Rは吐出されない。
ところで、本実施例において「走査期間」とは、図29に示すように、キャリッジ103の一辺がY軸方向に沿って走査範囲134の一端E1(または他端E2)から他端E2(または一端E1)まで相対移動を1回行う期間を意味する。「走査範囲134」とは、基体10A上のすべての被吐出部18Rに材料を塗布するためにキャリッジ103が相対移動する範囲を意味し、走査範囲134によってすべての被吐出部18Rが覆われている。なお、場合によって、用語「走査範囲」は、1つのノズル118が相対移動する範囲を意味することもあるし、1つのノズル列116が相対移動する範囲を意味することもあるし、1つのヘッド114が相対移動する範囲を意味することもある。
制御部112は、吐出周期EP(図7(b))の整数倍の時間間隔毎に、1つのノズル118とY軸方向に並んだ被吐出部18Rとが重なるように、キャリッジ103の相対移動の速度を決定する。そうすれば、その1つのノズル118を含むノズル列における他のノズル118も、吐出周期EPの整数倍の時間間隔毎に、それぞれの被吐出部18Rと重なる。本実施例では、被吐出部18RのY軸方向のピッチがLRY(図9(b))なので、ステージ106に対するキャリッジ103の相対移動の速度をVとすると、V=LRY/(k・EP)である。ここで、kは整数である。
第1の走査期間が始ると、走査範囲134の一端E1からY軸方向の正の方向(図12の紙面上方向)に、ヘッド群114Gが相対移動し始める。そうすると、ノズル列1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、6B、7A、7Bの順番で、これらのノズル列が被吐出部18Rに対応する領域に侵入する。なお、第1の走査期間の間、ヘッド群114GのX座標は変化しない。
図12に示す例では、左下の被吐出部18Rの左から1番目から4番目の着弾位置に、重畳部G1に属するノズル118からカラーフィルタ材料111Rが吐出される。左から5番目から8番目の着弾位置へは、重畳部G2に属するノズル118からカラーフィルタ材料111Rが吐出される。左から9番目から12番目の着弾位置へは、重畳部G3に属するノズル118からカラーフィルタ材料111Rが吐出される。左から13番目から16番目の着弾位置へは、重畳部G4に属するノズル118からカラーフィルタ材料111Rが吐出される。
1つの被吐出部18R内には、複数の重畳部Gからカラーフィルタ材料111Rの液滴が吐出される。重畳部Gのそれぞれから吐出される液滴の総体積(つまり1つの重畳部Gに含まれるすべてのノズル118から吐出される液滴の総体積)は、どれも同じであるので、被吐出部18R内が、カラーフィルタ材料111Rによって均一に覆われる。しかも、実施例1で説明したように、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118が、ヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しているので、ノズル118の位置に依存した吐出量の差が打ち消されやすい。この結果、被吐出部18R同士の間の塗布ムラも目立たなくなる。
さらに、本実施例によれば、1つの走査期間内に、1つの被吐出部18Rに、必要とされる体積のカラーフィルタ材料111Rを吐出できる。これは、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチGXPが、1つのヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPのほぼ1/4であり、このため、1つの走査期間内に、より多くのノズル118が1つの被吐出部に重なるからである。
一方、図12に示すように、第1の走査期間内では、ノズル列1Aにおける最も左側のノズル118と、ノズル列2Aにおける右から2番目のノズル118と、ノズル列3Aにおける右から2番目のノズル118と、ノズル列4Aにおける右から2番目のノズル118とは、一度も被吐出部18Rに重ならない。したがって、これらのノズルからはなんらカラーフィルタ材料111Rの吐出は行われない。
第1の走査期間が終わると、制御部112は、ヘッド群114GをX軸方向に相対移動させてから次の走査期間を開始して、まだ塗布されていない被吐出部18Rにカラーフィルタ材料111Rを吐出する。
以上では、被吐出部18Rにカラーフィルタ材料111Rを塗布する工程のみを説明した。以下では、製造装置1によってカラーフィルタ基板10が得られるまでの一連の工程を説明する。
まず、以下の手順にしたがって図9の基体10Aを作成する。まず、スパッタ法または蒸着法によって、支持基板12上に金属薄膜を形成する。その後、フォトリソグラフィー工程によってこの金属薄膜から格子状のブラックマトリクス14を形成する。ブラックマトリクス14の材料の例は、金属クロムや酸化クロムである。なお、支持基板12は、可視光に対して光透過性を有する基板、例えばガラス基板である。続いて、支持基板12およびブラックマトリクス14を覆うように、ネガ型の感光性樹脂組成物からなるレジスト層を塗布する。そして、そのレジスト層の上にマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム密着させながら、このレジスト層を露光する。その後、レジスト層の未露光部分をエッチング処理で取り除くことで、バンク16が得られる。以上の工程によって、基体10Aが得られる。
なお、バンク16に代えて、樹脂ブラックからなるバンクを用いても良い。その場合は、金属薄膜(ブラックマトリクス14)は不要となり、バンク層は、1層のみとなる。
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基体10Aを親液化する。この処理によって、支持基板12と、ブラックマトリクス14と、バンク16と、で規定されたそれぞれの凹部(画素領域の一部)における支持基板12の表面と、ブラックマトリクス14の表面と、バンク16の表面と、が親液性を呈するようになる。さらに、その後、基体10Aに対して、4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理を行う。4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、それぞれの凹部におけるバンク16の表面がフッ化処理(撥液性に処理)され、このことで、バンク16の表面が撥液性を呈するようになる。なお、4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、先に親液性を与えられた支持基板12の表面およびブラックマトリクス14の表面は若干親液性を失うが、それでもこれら表面は親液性を維持する。このように、支持基板12と、ブラックマトリクス14と、バンク16と、によって規定された凹部の表面に所定の表面処理が施されることで、凹部の表面が被吐出部18R,18G、18Bとなる。
なお、支持基板12の材質、ブラックマトリクス14の材質、およびバンク16の材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性および撥液性を呈する表面が得られることもある。そのような場合には、上記表面処理を施さなくても、支持基板12と、ブラックマトリクス14と、バンク16と、によって規定された凹部の表面が被吐出部18R,18G、18Bである。
被吐出部18R,18G、18Bが形成された基体10Aは、搬送装置170によって、吐出装置100Rのステージ106に運ばれる。そして、図13(a)に示すように、吐出装置100Rは、被吐出部18Rのすべてにカラーフィルタ材料111Rの層が形成されるように、ヘッド114からカラーフィルタ材料111Rを吐出する。具体的には、吐出装置100Rは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部18Rにカラーフィルタ材料111Rを塗布する。基体10Aの被吐出部18Rのすべてにカラーフィルタ材料111Rの層が形成された場合には、搬送装置170が基体10Aを乾燥装置150R内に位置させる。そして、被吐出部18R上のカラーフィルタ材料111Rを完全に乾燥させることで、被吐出部18R上にフィルタ層111FRを得る。
次に搬送装置170は、基体10Aを吐出装置100Gのステージ106に位置させる。そして、図13(b)に示すように、吐出装置100Gは、被吐出部18Gのすべてにカラーフィルタ材料111Gの層が形成されるように、ヘッド114からカラーフィルタ材料111Gを吐出する。具体的には、吐出装置100Gは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部18Gにカラーフィルタ材料111Gを塗布する。基体10Aの被吐出部18Gのすべてにカラーフィルタ材料111Gの層が形成された場合には、搬送装置170が基体10Aを乾燥装置150G内に位置させる。そして、被吐出部18G上のカラーフィルタ材料111Gを完全に乾燥させることで、被吐出部18G上にフィルタ層111FGを得る。
次に搬送装置170は、基体10Aを吐出装置100Bのステージ106に位置させる。そして、図13(c)に示すように、吐出装置100Bは、被吐出部18Bのすべてにカラーフィルタ材料111Bの層が形成されるように、ヘッド114からカラーフィルタ材料111Bを吐出する。具体的には、吐出装置100Bは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部18Bにカラーフィルタ材料111Bを塗布する。基体10Aの被吐出部18Bのすべてにカラーフィルタ材料111Bの層が形成された場合には、搬送装置170が基体10Aを乾燥装置150B内に位置させる。そして、被吐出部18B上のカラーフィルタ材料111Bを完全に乾燥させることで、被吐出部18B上にフィルタ層111FBを得る。
次に搬送装置170は、基体10Aを、オーブン160内に位置させる。その後、オーブン160はフィルタ層111FR、111FG、111FBを再加熱(ポストベーク)する。
次に搬送装置170は、基体10Aを吐出装置100Cのステージ106に位置させる。そして、吐出装置100Cは、フィルタ層111FR、111FG、111FB、およびバンク16を覆って保護膜20が形成されるように、液状の保護膜材料を吐出する。フィルタ層111FR,111FG、111FB、およびバンク16を覆う保護膜20が形成された後に、搬送装置170は基体10Aをオーブン150C内に位置させる。そして、オーブン150Cが保護膜20を完全に乾燥させた後に、硬化装置165が保護膜20を加熱して完全に硬化することで、基体10Aはカラーフィルタ基板10となる。
本実施例によれば、吐出装置100R、100G、100Bのそれぞれにおいて、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチは、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチの1/N倍の長さである。ここで、Nはヘッド群114Gに含まれるヘッド114の数である。このため、吐出装置100R、100G、100BのX軸方向のノズル線密度が、通常のインクジェット装置のX軸方向のノズル線密度よりも高い。したがって、製造装置1は、吐出データを変更するだけで、さまざまな大きさの被吐出部にカラーフィルタ材料を塗布できる。さらに製造装置1は、吐出データを変更するだけで、さまざまなピッチのカラーフィルタ基板を製造できる。
また、本実施例によれば、被吐出部18R、18G、18Bのそれぞれに、複数の重畳部Gからカラーフィルタ材料111Rの液滴が吐出される。重畳部Gのそれぞれから吐出される液滴の総体積(つまり1つの重畳部Gに含まれるすべてのノズル118から吐出される液滴の総体積)は、どれも同じなので、被吐出部18R、18G、18B内が、カラーフィルタ材料111Rによって均一に覆われる。しかも、実施例1で説明したように、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118が、ヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しているので、ノズル118の位置に依存した吐出量の差が打ち消されやすい。この結果、被吐出部18R同士の間の塗布ムラや、被吐出部18G同士の間の塗布ムラや,被吐出部18B同士の間の塗布ムラも目立たなくなる。
さらに、本実施例によれば、カラーフィルタ材料111R、111G、111Bの液滴は、既に液滴で覆われた2つの位置の中間位置に着弾する場合がある。このため、後に着弾する液滴は、自らの着弾位置に対して対称な2つの位置において、先に着弾した2つの液滴と接し得る。このため、後に着弾する液滴には、相反する2つの方向への力が働き、この結果、後に着弾した液滴はその着弾位置から対称な形状に広がる。この理由から、本実施例の吐出方法によれば、カラーフィルタ材料111R、111G、111Bの塗布ムラが生じにくい。
[実施例3]
次に、本発明をエレクトロルミネッセンス表示装置の製造装置に適用した例を説明する。
図14(a)および(b)に示す基体30Aは、後述する製造装置2(図15)による処理によって、エレクトロルミネッセンス表示装置30となる基板である。基体30Aは、マトリクス状に配置された複数の被吐出部38R、38G、38Bを有する。
具体的には、基体30Aは、支持基板32と、支持基板32上に形成された回路素子層34と、回路素子層34上に形成された複数の画素電極36と、複数の画素電極36の間に形成されたバンク40と、を有している。支持基板は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えばガラス基板である。複数の画素電極36のそれぞれは、可視光に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である。また、複数の画素電極36は、回路素子層34上にマトリクス状に配置されており、それぞれが画素領域を規定する。そして、バンク40は、格子状の形状を有しており、複数の画素電極36のそれぞれを囲む。また、バンク40は、回路素子層34上に形成された無機物バンク40Aと、無機物バンク40A上に位置する有機物バンク40Bとからなる。
回路素子層34は、支持基板32上で所定の方向に延びる複数の走査電極と、複数の走査電極を覆うように形成された絶縁膜42と、絶縁膜42上に位置するともに複数の走査電極が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数の信号電極と、走査電極および信号電極の交点付近に位置する複数のスイッチング素子44と、複数のスイッチング素子44を覆うように形成されたポリイミドなどの層間絶縁膜45と、を有する層である。それぞれのスイッチング素子44のゲート電極44Gおよびソース電極44Sは、それぞれ対応する走査電極および対応する信号電極と電気的に接続されている。層間絶縁膜45上には複数の画素電極36が位置する。層間絶縁膜45には、各スイッチング素子44のドレイン電極44Dに対応する部位にスルーホール44Vが設けられており、このスルーホール44Vを介して、スイッチング素子44と、対応する画素電極36と、の間の電気的接続が形成されている。また、バンク40に対応する位置にそれぞれのスイッチング素子44が位置している。つまり、図13(b)の紙面に垂直な方向から観察すると、複数のスイッチング素子44のそれぞれは、バンク40に覆われるように位置している。
基体30Aの画素電極36とバンク40とで規定される凹部(画素領域の一部)は、被吐出部38R、被吐出部38G、被吐出部38Bに対応する。被吐出部38Rは、赤の波長域の光線を発光する発光層211FRが形成されるべき領域であり、被吐出部38Gは、緑の波長域の光線を発光する発光層211FGが形成されるべき領域であり、被吐出部38Bは、青の波長域の光線を発光する発光層211GBが形成されるべき領域である。
図14(b)に示す基体30Aは、X軸方向とY軸方向との双方に平行な仮想平面上に位置している。そして、複数の被吐出部38R,38G、38Bが形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。基体30Aにおいて、被吐出部38R、被吐出部38G、および被吐出部38Bは、Y軸方向にこの順番で周期的に並んでいる。一方、被吐出部38R同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、また、被吐出部38G同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、同様に、被吐出部38B同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでいる。なお、X軸方向およびY軸方向は互いに直交する。
被吐出部38R同士のY軸方向に沿った一定の間隔LRY、すなわちピッチは、ほぼ560μmである。この間隔は、被吐出部38G同士のY軸方向に沿った間隔LGYと同じであり、被吐出部18B同士のY軸方向に沿った間隔LBYとも同じである。また、被吐出部38Rの平面像は、長辺と短辺とで決まる矩形である。具体的には、被吐出部38RのY軸方向の長さはほぼ100μmであり、X軸方向の長さはほぼ300μmである。被吐出部38Gおよび被吐出部38Bも被吐出部38Rと同じ形状・大きさを有している。被吐出部38R同士の上記間隔および被吐出部38Rの上記大きさは、40インチ程度の大きさのハイビジョンテレビにおける同一色に対応する画素領域の間隔や大きさに対応する。
図15に示す製造装置2は、図14の基体30Aの被吐出部38R,38G、38Bのそれぞれに対して、対応する発光材料を吐出する装置である。製造装置2は、被吐出部38Rのすべてに発光材料211Rを塗布する吐出装置200Rと、被吐出部38R上の発光材料211Rを乾燥させる乾燥装置250Rと、被吐出部38Gのすべてに発光材料211Gを塗布する吐出装置200Gと、被吐出部38G上の発光材料211Gを乾燥させる乾燥装置250Gと、被吐出部38Bのすべてに発光材料211Bを塗布する吐出装置200Bと、被吐出部38B上の発光材料Bを乾燥させる乾燥装置250Bと、を備えている。さらに製造装置2は、吐出装置200R、乾燥装置250R、吐出装置200G、乾燥装置250G、吐出装置200B、乾燥装置250Bの順番に基体30Aを搬送する搬送装置270も備えている。
図16に示す吐出装置200Rは、液状の発光材料211Rを保持するタンク201Rと、チューブ210Rと、チューブ210Rを介してタンク201Rから発光材料211Rが供給される吐出走査部102と、を備える。吐出走査部102の構成は、実施例1の吐出走査部102(図1)の構成と同じであるため、同様な構成要素には同一の参照符号を付けるとともに、重複する説明を省略する。また、吐出装置200Gの構成と吐出装置200Bの構成とは、どちらも基本的に吐出装置200Rの構造と同じある。ただし、タンク201Rとチューブ210Rとの代わりに、吐出装置200Gが発光材料211G用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置200Gの構成は吐出装置200Rの構成と異なる。同様に、タンク201Rとチューブ210Rとの代わりに、吐出装置200Bが発光材料201B用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置200Bの構成は吐出装置200Rの構成と異なる。なお、本実施例における液状の発光材料211R、211B、211Gは、本発明の液状の材料の一例である。
製造装置2を用いたエレクトロルミネッセンス表示装置30の製造方法を説明する。まず、公知の製膜技術とパターニング技術とを用いて、図14に示す基体30Aを製造する。
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基体30Aを親液化する。この処理によって、画素電極36とバンク40とで規定されたそれぞれの凹部(画素領域の一部)における画素電極36の表面、無機物バンク40Aの表面、および有機物バンク40Bの表面が、親液性を呈するようになる。さらに、その後、基体30Aに対して、4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理を行う。4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、それぞれの凹部における有機物バンク40Bの表面がフッ化処理(撥液性に処理)されて、このことで有機物バンク40Bの表面が撥液性を呈するようになる。なお、4フッ化メタンを用いたプラズマ処理によって、先に親液性を与えられた画素電極36の表面および無機物バンク40Aの表面は、若干親液性を失うが、それでも親液性を維持する。このように、画素電極36と、バンク40と、によって規定された凹部の表面に所定の表面処理が施されることで、凹部の表面が被吐出部38R、38G、38Bとなる。
なお、画素電極36の材質、無機バンク40の材質、および有機バンク40の材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性および撥液性を呈する表面が得られることもある。そのような場合には、上記表面処理を施さなくても、画素電極36と、バンク40と、によって規定された凹部の表面は被吐出部38R、38G、38Bである。
ここで、表面処理が施された複数の画素電極36のそれぞれの上に、対応する正孔輸送層37R、37G、37Bを形成してもよい。正孔輸送層37R、37G、37Bが、画素電極36と、後述の発光層211RF、211GF、211BFと、の間に位置すれば、エレクトロルミネッセンス表示装置の発光効率が高くなる。複数の画素電極36のそれぞれの上に正孔輸送層を設ける場合には、正孔輸送層と、バンク40と、によって規定された凹部が、被吐出部38R、38G、38Bに対応する。
なお、正孔輸送層37R、37G、37Bをインクジェット法により形成することも可能である。この場合、正孔輸送層37R、37G、37Bを形成するための材料を含む溶液を各画素領域ごとに所定量塗布し、その後、乾燥させることにより正孔輸送層を形成することができる。
被吐出部38R,38G、38Bが形成された基体30Aは、搬送装置270によって、吐出装置200Rのステージ106に運ばれる。そして、図17(a)に示すように、吐出装置200Rは、被吐出部38Rのすべてに発光材料211Rの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料211Rを吐出する。具体的には、吐出装置200Rは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部38Rに発光材料211Rを塗布する。基体30Aの被吐出部38Rのすべてに発光材料211Rの層が形成された場合には、搬送装置270が基体30Aを乾燥装置250R内に位置させる。そして、被吐出部38R上の発光材料211Rを完全に乾燥させることで、被吐出部38R上に発光層211FRを得る。
次に搬送装置270は、基体30Aを吐出装置200Gのステージ106に位置させる。そして、図17(b)に示すように、吐出装置200Gは、被吐出部38Gのすべてに発光材料211Gの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料211Gを吐出する。具体的には、吐出装置200Gは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部38Gに発光材料211Gを塗布する。基体30Aの被吐出部38Gのすべてに発光材料211Gの層が形成された場合には、搬送装置270が基体30Aを乾燥装置250G内に位置させる。そして、被吐出部38G上の発光材料Gを完全に乾燥させることで、被吐出部38G上に発光層211FGを得る。
次に搬送装置270は、基体30Aを吐出装置200Bのステージ106に位置させる。そして、図17(c)に示すように、吐出装置200Bは、被吐出部38Bのすべてに発光材料211Bの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料211Bを吐出する。具体的には、吐出装置200Bは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部38Bに発光材料211Bを塗布する。基体30Aの被吐出部38Bのすべてに発光材料211Bの層が形成された場合には、搬送装置270が基体30Aを乾燥装置250B内に位置させる。そして、被吐出部38B上の発光材料211Bを完全に乾燥させることで、被吐出部38B上に発光層211FBを得る。
図17(d)に示すように、次に、発光層211FR,211FG、211FB、およびバンク40を覆うように対向電極46を設ける。対向電極46は陰極として機能する。その後、封止基板48と基体30Aとを、互いの周辺部で接着することで、図17(d)に示すエレクトロルミネッセンス表示装置30が得られる。なお、封止基板48と基体30Aとの間には不活性ガス49が封入されている。
エレクトロルミネッセンス表示装置30において、発光層211FR、211FG、211FBから発光した光は、画素電極36と、回路素子層34と、支持基板32と、を介して射出する。このように回路素子層34を介して光を射出するエレクトロルミネッセンス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
本実施例によれば、吐出装置200R、200G、200Bのそれぞれにおいて、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチは、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチの1/N倍の長さである。ここで、Nはヘッド群114Gに含まれるヘッド114の数である。このため、吐出装置200R、200G、200BのX軸方向のノズル線密度が、通常のインクジェット装置のX軸方向のノズル線密度よりも高い。したがって、したがって、製造装置2は、吐出データを変更するだけで、さまざまな大きさの被吐出部に発光材料を塗布できる。さらに製造装置2は、吐出データを変更するだけで、さまざまなピッチのエレクトロルミネッセンス表示装置を製造できる。
また、本実施例によれば、1つの被吐出部38R、38G、38Bのそれぞれに、複数の重畳部Gから発光材料211R、211G、211Bの液滴が吐出される。重畳部Gのそれぞれから吐出される液滴の総体積(つまり1つの重畳部Gに含まれるすべてのノズル118から吐出される液滴の総体積)は、どれも同じであるので、被吐出部38R、38G、38B内が、発光材料211R、211B、211Gによって均一に覆われる。しかも、実施例1で説明したように、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118が、ヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しているので、ノズル118の位置に依存した吐出量の差が打ち消されやすい。この結果、被吐出部38R同士の間の塗布ムラや、被吐出部38G同士の間の塗布ムラや,被吐出部38B同士の間の塗布ムラも目立たなくなる。
さらに、本実施例によれば、発光材料211R、211G、211Bの液滴は、既に液滴で覆われた2つの位置の中間位置に着弾する場合がある。このため、後に着弾する液滴は、自らの着弾位置に対して対称な2つの位置において、先に着弾した2つの液滴と接し得る。このため、後に着弾する液滴には、相反する2つの方向への力が働き、この結果、後に着弾した液滴はその着弾位置から対称な形状に広がる。この理由から、本実施例の吐出方法によれば、発光材料211R、211G、211Bの塗布ムラが生じにくい。
[実施例4]
本発明をプラズマ表示装置の背面基板の製造装置に適用した例を説明する。
図18(a)および(b)に示す基体50Aは、後述する製造装置3(図19)による処理によって、プラズマ表示装置の背面基板50Bとなる基板である。基体50Aは、マトリクス状に配置された複数の被吐出部58R、58G、58Bを有する。
具体的には、基体50Aは、支持基板52と、支持基板52上にストライプ状に形成された複数のアドレス電極54と、アドレス電極54を覆うように形成された誘電体ガラス層56と、格子状の形状を有するとともに複数の画素領域を規定する隔壁60と、を含む。複数の画素領域はマトリクス状に位置しており、複数の画素領域が形成するマトリクスの列のそれぞれは、複数のアドレス電極54のそれぞれに対応する。このような基体50Aは、公知のスクリーン印刷技術で形成される。
基体50Aのそれぞれの画素領域において、誘電体ガラス層56および隔壁60によって規定される凹部が、被吐出部58R、被吐出部58G、被吐出部58Bに対応する。被吐出部58Rは、赤の波長域の光線を発光する蛍光層311FRが形成されるべき領域であり、被吐出部58Gは、緑の波長域の光線を発光する蛍光層311FGが形成されるべき領域であり、被吐出部58Bは、青の波長域の光線を発光する蛍光層311FBが形成されるべき領域である。
図18(b)に示す基体50Aは、X軸方向とY軸方向との双方に平行な仮想平面上に位置している。そして、複数の被吐出部58R,58G、58Bが形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。基体50Aにおいて、被吐出部58R、被吐出部58G、および被吐出部58Bは、Y軸方向にこの順番で周期的に並んでいる。一方、被吐出部58R同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、また、被吐出部58G同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでおり、同様に、被吐出部58B同士はX軸方向に所定の一定間隔をおいて1列に並んでいる。なお、X軸方向およびY軸方向は互いに直交する。
被吐出部58R同士のY軸方向に沿った一定の間隔LRY、すなわちピッチは、ほぼ560μmである。この間隔は、被吐出部58G同士のY軸方向に沿った間隔LGYと同じであり、被吐出部58B同士のY軸方向に沿った間隔LBYとも同じである。また、被吐出部58Rの平面像は、長辺と短辺とで決まる矩形である。具体的には、被吐出部58RのY軸方向の長さはほぼ100μmであり、X軸方向の長さはほぼ300μmである。被吐出部58Gおよび被吐出部58Bも被吐出部58Rと同じ形状・大きさを有している。被吐出部58R同士の上記間隔および被吐出部58Rの上記大きさは、40インチ程度の大きさのハイビジョンテレビにおける同一色に対応する画素領域の間隔や大きさに対応する。
図19に示す製造装置3は、図18の基体50Aの被吐出部58R,58G、58Bのそれぞれに対して、対応する蛍光材料を吐出する装置である。製造装置3は、被吐出部58Rのすべてに蛍光材料311Rを塗布する吐出装置300Rと、被吐出部58R上の蛍光材料311Rを乾燥させる乾燥装置350Rと、被吐出部58Gのすべてに蛍光材料311Gを塗布する吐出装置300Gと、被吐出部58G上の蛍光材料311Gを乾燥させる乾燥装置350Gと、被吐出部58Bのすべてに蛍光材料311Bを塗布する吐出装置300Bと、被吐出部58B上の蛍光材料311Bを乾燥させる乾燥装置350Bと、を備えている。さらに製造装置3は、吐出装置300R、乾燥装置350R、吐出装置300G、乾燥装置350G、吐出装置300B、乾燥装置350Bの順番に基体50Aを搬送する搬送装置370も備えている。
図20に示す吐出装置300Rは、液状の蛍光材料311Rを保持するタンク301Rと、チューブ310Rと、チューブ310Rを介してタンク301Rからカラーフィルタ材料が供給される吐出走査部102と、を備える。吐出走査部102の構成は、実施例1において説明したため重複する説明を省略する。
吐出装置300Gの構成と吐出装置300Bの構成とは、どちらも基本的に吐出装置300Rの構造と同じある。ただし、タンク301Rとチューブ310Rとの代わりに、吐出装置300Gが蛍光材料311G用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置300Gの構成は吐出装置300Rの構成と異なる。同様に、タンク301Rとチューブ310Rとに代えて、吐出装置300Bが蛍光材料311B用のタンクとチューブとを備える点で、吐出装置300Bの構成は吐出装置300Rの構成と異なる。なお、本実施例における液状の蛍光材料311R、311B、311Gは、本発明の液状の材料の一例である。
製造装置3を用いたプラズマ表示装置の製造方法を説明する。まず、公知のスクリーン印刷技術によって、支持基板52上に、複数のアドレス電極54と、誘電体ガラス層56と、隔壁60と、を形成して、図18に示す基体50Aを得る。
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基体50Aを親液化する。この処理によって、隔壁60および誘電体ガラス層56によって規定されたそれぞれの凹部(画素領域の一部)の隔壁60の表面、誘電体ガラス層56の表面が、親液性を呈し、これらの表面が被吐出部58R,58G、58Bとなる。なお、材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性を呈する表面が得られることもある。そのような場合には、上記表面処理を施さなくても、隔壁60と、誘電体ガラス層56と、によって規定された凹部の表面は、被吐出部58R,58G、58Bである。
被吐出部58R,58G、58Bが形成された基体50Aは、搬送装置370によって、吐出装置300Rのステージ106に運ばれる。そして、図21(a)に示すように、吐出装置300Rは、被吐出部58Rのすべてに蛍光材料311Rの層が形成されるように、ヘッド114から蛍光材料311Rを吐出する。具体的には、吐出装置300Rは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部58Rに蛍光材料311Rを塗布する。基体50Aの被吐出部58Rのすべてに蛍光材料311Rの層が形成された場合には、搬送装置370が基体50Aを乾燥装置350R内に位置させる。そして、被吐出部58R上の蛍光材料311Rを完全に乾燥させることで、被吐出部58R上に蛍光層311FRを得る。
次に搬送装置370は、基体50Aを吐出装置300Gのステージ106に位置させる。そして、図21(b)に示すように、吐出装置300Gは、被吐出部58Gのすべてに蛍光材料311Gの層が形成されるように、ヘッド114から蛍光材料311Gを吐出する。具体的には、吐出装置300Gは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部58Gに蛍光材料311Gを塗布する。基体50Aの被吐出部58Gのすべてに蛍光材料311Gの層が形成された場合には、搬送装置370が基体50Aを乾燥装置350G内に位置させる。そして、被吐出部58G上の蛍光材料311Gを完全に乾燥させることで、被吐出部58G上に蛍光層311FGを得る。
次に搬送装置370は、基体50Aを吐出装置300Bのステージ106に位置させる。そして、図21(c)に示すように、吐出装置300Bは、被吐出部58Bのすべてに蛍光材料311Bの層が形成されるように、ヘッド114から蛍光材料311Bを吐出する。具体的には、吐出装置300Bは、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部58Bに蛍光材料311Bを塗布する。基体50Aの被吐出部58Bのすべてに蛍光材料Bの層が形成された場合には、搬送装置370が基体50Aを乾燥装置350B内に位置させる。そして、被吐出部58B上の蛍光材料311Bを完全に乾燥させることで、被吐出部58B上に蛍光層311FBを得る。
以上の工程によって、基体50Aはプラズマ表示装置の背面基板50Bとなる。
次に図22に示すように、背面基板50Bと、前面基板50Cと、を公知の方法によって貼り合わせてプラズマ表示装置50が得られる。前面基板50Cは、ガラス基板68と、ガラス基板68上で互いに平行にパターニングされた表示電極66Aおよび表示スキャン電極66Bと、表示電極66Aおよび表示スキャン電極66Bとを覆うように形成された誘電体ガラス層64と、誘電体ガラス層64上に形成されたMgO保護層62と、を有する。背面基板50Bと前面基板50Cとは、背面基板50Bのアドレス電極54と、前面基板50Cの表示電極66A・表示スキャン電極66Bとが、互いに直交するように位置合わせされている。各隔壁60で囲まれるセル(画素領域)には、所定の圧力で放電ガス69が封入されている。
本実施例によれば、吐出装置300R、300G、300Bのそれぞれにおいて、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチは、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチの1/N倍の長さである。ここで、Nはヘッド群114Gに含まれるヘッド114の数である。このため、吐出装置300R、300G、300BのX軸方向のノズル線密度が、通常のインクジェット装置のX軸方向のノズル線密度よりも高い。したがって、したがって、製造装置3は、吐出データを変更するだけで、さまざまな大きさの被吐出部に蛍光材料を塗布できる。さらに製造装置3は、吐出データを変更するだけで、さまざまなピッチのプラズマ表示装置を製造できる。
また、本実施例によれば、1つの被吐出部58R、58G、58Bのそれぞれに、複数の重畳部Gから蛍光材料311R、311G、311Bの液滴が吐出される。重畳部Gのそれぞれから吐出される液滴の総体積(つまり1つの重畳部Gに含まれるすべてのノズル118から吐出される液滴の総体積)は、どれも同じであるので、被吐出部58R、58G、58B内が、蛍光材料311R、311B、311Gによって均一に覆われる。しかも、実施例1で説明したように、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118が、ヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しているので、ノズル118の位置に依存した吐出量の差が打ち消されやすい。この結果、被吐出部58R同士の間の塗布ムラや、被吐出部58G同士の間の塗布ムラや,被吐出部58B同士の間の塗布ムラも目立たなくなる。
さらに、本実施例によれば、蛍光材料311R、311G、311Bの液滴は、既に液滴で覆われた2つの位置の中間位置に着弾する場合がある。このため、後に着弾する液滴は、自らの着弾位置に対して対称な2つの位置において、先に着弾した2つの液滴と接し得る。このため、後に着弾する液滴には、相反する2つの方向への力が働き、この結果、後に着弾した液滴はその着弾位置から対称な形状に広がる。この理由から、本実施例の吐出方法によれば、蛍光材料311R、311G、311Bの塗布ムラが生じにくい。
[実施例5]
次に本発明を、電子放出素子を備えた画像表示装置の製造装置に適用した例を説明する。
図23(a)および(b)に示す基体70Aは、後述する製造装置3(図24)による処理によって、画像表示装置の電子源基板70Bとなる基板である。基体70Aは、マトリクス状に配置された複数の被吐出部78を有する。
具体的には、基体70Aは、基体72と、基体72上に位置するナトリウム拡散防止層74と、ナトリウム拡散防止層74上に位置する複数の素子電極76A、76Bと、複数の素子電極76A上に位置する複数の金属配線79Aと、複数の素子電極76B上に位置する複数の金属配線79Bと、を備えている。複数の金属配線79AのそれぞれはY軸方向に延びる形状を有する。一方、複数の金属配線79BのそれぞれはX軸方向に延びる形状を有する。金属配線79Aと金属配線79Bとの間には絶縁膜75が形成されているので、金属配線79Aと金属配線79Bとは電気的に絶縁されている。
1対の素子電極76Aおよび素子電極76Bを含む部分は1つの画素領域に対応する。1対の素子電極76Aおよび素子電極76Bは、互いに所定の間隔だけ離れてナトリウム拡散防止層74上で対向している。ある画素領域に対応する素子電極76Aは、対応する金属配線79Aと電気的に接続されている。また、その画素領域に対応する素子電極76Bは、対応する金属配線79Bと電気的に接続されている。なお、本明細書では、基体72とナトリウム拡散防止層74とを合わせた部分を支持基板と表記することもある。
基体70Aのそれぞれの画素領域において、素子電極76Aの一部と、素子電極76Bの一部と、素子電極76Aと素子電極76Bとの間で露出したナトリウム拡散防止層74とが、被吐出部78に対応する。より具体的には、被吐出部78は、導電性薄膜411F(図27)が形成されるべき領域であり、導電性薄膜411Fは、素子電極76Aの一部と、素子電極76Bの一部と、素子電極76A,76Bの間のギャップとを覆うように形成される。図23(b)において点線で示すように、本実施例における被吐出部78の平面形状は円形である。このように、本発明の被吐出部の平面形状は、X座標範囲とY座標範囲とで決まる円形でも構わない。
図23(b)に示す基体70Aは、X軸方向とY軸方向との双方に平行な仮想平面上に位置している。そして、複数の被吐出部78が形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。つまり、基体70Aにおいて、複数の被吐出部78は、X軸方向およびY軸方向に並んでいる。なお、X軸方向およびY軸方向は互いに直交する。
被吐出部78同士のY軸方向に沿った一定の間隔LRY、すなわちピッチは、ほぼ190μmである。また、被吐出部78RのX軸方向の長さ(X座標範囲の長さ)はほぼ100μmであり、Y軸方向の長さ(Y座標範囲の長さ)もほぼ100μmである。被吐出部78同士の上記間隔および被吐出部の上記大きさは、40インチ程度の大きさのハイビジョンテレビにおける画素領域の間隔や大きさに対応する。
図24に示す製造装置4は、図23の基体70Aの被吐出部78のそれぞれに対して、導電性薄膜材料411を吐出する装置である。具体的には、製造装置4は、被吐出部78のすべてに導電性薄膜材料411を塗布する吐出装置400と、被吐出部78上の導電性薄膜材料411を乾燥させる乾燥装置450と、を備えている。さらに製造装置4は、吐出装置400、乾燥装置450の順番に基体70Aを搬送する搬送装置470も備えている。
図25に示す吐出装置400は、液状の導電性薄膜材料411を保持するタンク401と、チューブ410と、チューブ410を介してタンク401Rからカラーフィルタ材料が供給される吐出走査部102と、を備える。吐出走査部102の説明は、実施例1で説明したため省略する。なお、本実施例では、液状の導電性薄膜材料411は有機パラジウム溶液である。なお、本実施例における液状の導電性薄膜材料411は、本発明の液状の材料の一例である。
製造装置4を用いた画像表示装置の製造方法を説明する。まず、ソーダガラスなどから形成された基体72上に、SiO2を主成分とするナトリウム拡散防止層74を形成する。具体的には、スパッタ法を用いて基体72上に厚さ1μmのSiO2膜を形成することによってナトリウム拡散防止層74を得る。次に、ナトリウム拡散防止層74上に、スパッタ法または真空蒸着法によって厚さ5nmのチタニウム層を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、そのチタニウム層から、互いに所定の距離だけ離れて位置する1対の素子電極76Aおよび素子電極76Bを複数対形成する。
その後、スクリーン印刷技術を用いて、ナトリウム拡散防止層74および複数の素子電極76A上にAgペーストを塗布して焼成することで、Y軸方向に延びる複数の金属配線79Aを形成する。次に、スクリーン印刷技術を用いて、各金属配線79Aの一部分にガラスペーストを塗布して焼成することで、絶縁膜75を形成する。そして、スクリーン印刷技術を用いて、ナトリウム拡散防止層74および複数の素子電極76B上にAgペーストを塗布して焼成することで、X軸方向に延びる複数の金属配線79Bを形成する。なお、金属配線79Bを作製する場合には、金属配線79Bが絶縁膜75を介して金属配線79Aと交差するようにAgペーストを塗布する。以上のような工程によって、図23に示す基体70Aを得る。
次に、大気圧下の酸素プラズマ処理によって、基体70Aを親液化する。この処理によって、素子電極76Aの表面の一部と、素子電極76Bの表面の一部と、素子電極76Aと素子電極76Bとの間で露出した支持基板の表面とは、親液化される。そして、これらの表面が被吐出部78となる。なお、材質によっては、上記のような表面処理を行わなくても、所望の親液性を呈する表面が得られることもある。そのような場合には、上記表面処理を施さなくても、素子電極76Aの表面の一部と、素子電極76Bの表面の一部と、素子電極76Aと素子電極76Bとの間で露出したナトリウム拡散防止層74の表面とは、被吐出部78となる。
被吐出部78が形成された基体70Aは、搬送装置470によって、吐出装置400のステージ106に運ばれる。そして、図26に示すように、吐出装置400は、被吐出部78のすべてに導電性薄膜411Fが形成されるように、ヘッド114から導電性薄膜材料411を吐出する。具体的には、吐出装置400は、図12を参照しながら説明した吐出方法で被吐出部78に導電性薄膜材料411を塗布する。本実施例では、被吐出部78上に着弾した導電性薄膜材料411の液滴の直径が60μmから80μmの範囲となるように、制御部112はヘッド114に信号を与える。基体70Aの被吐出部78のすべてに導電性薄膜材料411の層が形成された場合には、搬送装置470が基体70Aを乾燥装置450内に位置させる。そして、被吐出部78上の導電性薄膜材料411を完全に乾燥させることで、被吐出部78上に酸化パラジウムを主成分とする導電性薄膜411Fを得る。このように、それぞれの画素領域において、素子電極76Aの一部と、素子電極76Bの一部と、素子電極76Aと素子電極76Bとの間に露出したナトリウム拡散防止層74と、を覆う導電性薄膜411Fが形成される。
次に素子電極76Aおよび素子電極76Bとの間に、パルス状の所定の電圧を印加することで、導電性薄膜411Fの一部分に電子放出部411Dを形成する。なお、素子電極76Aおよび素子電極76Bとの間の電圧の印加を、有機物雰囲気下および真空条件下でもそれぞれ行うことが好ましい。そうすれば、電子放出部411Dからの電子放出効率がより高くなるからである。素子電極76Aと、対応する素子電極76Bと、電子放出部411Dが設けられた導電性薄膜411Fと、は電子放出素子である。また、それぞれの電子放出素子は、それぞれの画素領域に対応する。
以上の工程によって、図27に示すように、基体70Aは電子源基板70Bとなる。
次に図28に示すように、電子源基板70Bと、前面基板70Cと、を公知の方法によって貼り合わせて画像表装置70が得られる。前面基板70Cは、ガラス基板82と、ガラス基板82上にマトリクス状に位置する複数の蛍光部84と、複数の蛍光部84を覆うメタルプレート86と、を有する。メタルプレート86は、電子放出部411Dからの電子ビームを加速するための電極として機能する。電子源基板70Bと前面基板70Cとは、複数の電子放出素子のそれぞれが、複数の蛍光部84のそれぞれに対向するように、位置合わせされている。また、電子源基板70Bと、前面基板70Cとの間は、真空状態に保たれている。
なお、上記の電子放出素子を備えた画像表示装置70は、SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display)またはFED(Field Emission Display)と呼ばれることもある。
本実施例によれば、吐出装置400において、ヘッド群114GのX軸方向のノズルピッチは、ヘッド114のX軸方向のノズルピッチの1/N倍の長さである。ここで、Nはヘッド群114Gに含まれるヘッド114の数である。このため、吐出装置400のX軸方向のノズル線密度が、通常のインクジェット装置のX軸方向のノズル線密度よりも高い。したがって、製造装置4は、吐出データを変更するだけで、さまざまな大きさの被吐出部に導電性薄膜材料411を塗布できる。さらに製造装置4は、吐出データを変更するだけで、さまざまなピッチの電子源基板を製造できる。
また、本実施例によれば、被吐出部78に、複数の重畳部Gから導電性薄膜材料411の液滴が吐出される。重畳部Gのそれぞれから吐出される液滴の総体積(つまり1つの重畳部Gに含まれるすべてのノズル118から吐出される液滴の総体積)は、どれも同じであるので、被吐出部78内が、導電性薄膜材料411によって均一に覆われる。しかも、実施例1で説明したように、さまざまなサブ領域SRに属するノズル118が、ヘッド群114GにおいてX軸方向に隣接しているので、ノズル118の位置に依存した吐出量の差が打ち消されやすい。この結果、被吐出部78同士の間の塗布ムラも目立たなくなる。
さらに、本実施例によれば、導電性薄膜材料411の液滴は、既に液滴で覆われた2つの位置の中間位置に着弾する場合がある。このため、後に着弾する液滴は、自らの着弾位置に対して対称な2つの位置において、先に着弾した2つの液滴と接し得る。このため、後に着弾する液滴には、相反する2つの方向への力が働き、この結果、後に着弾した液滴はその着弾位置から対称な形状に広がる。この理由から、本実施例の吐出方法によれば、導電性薄膜材料411の塗布ムラが生じにくい。